説明

食品容器

【課題】 蓋の裏面と連続して接触した場合や突発的な衝撃があった場合であっても、蓋の裏面で発生した水を容器本体に収容された調理済み食品が吸収する現象を極めて効果的に防止することができる、食品容器を提供する。
【解決手段】 上方に開口部を有し、調理済み食品を収容するための容器本体と、容器本体の開口部を覆う蓋体とを、備えた食品容器であって、蓋体はイオン交換水に60分間浸漬した場合の吸収倍率が20g/g〜200g/gである吸収シートを蓋体の裏面に装着した、食品容器により課題を達成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚げ物、ご飯、総菜類などの調理済み食品を収容するための食品容器に関する。
【背景技術】
【0002】
持ち帰り弁当に代表されるように、調理済みの食品を持ち帰る場合には、調理済みの食品を、保温性及び断熱性を備えた、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂やポリスチレン等のスチレン系樹脂などの発泡合成樹脂製の容器に収容する。
【0003】
発泡合成樹脂製の容器に、温かい調理済み食品を収容すると、容器内部に存在する水蒸気が、容器の蓋の裏面で冷却され、結露して水となる。この水が揚げ物の衣、ご飯、総菜類などの調理済み食品に触れた場合には、揚げ物の衣、ご飯、総菜類などが柔らかくなり、調理済み食品の味、風味、食感、質感、香り等が低下してしまうという問題が発生する。
【0004】
発泡合成樹脂製の容器の蓋の裏面に発生する水が引き起こす問題に対し、特許文献1には、蓋の裏面で発生した水を、蓋の内面側に設けられた多数の微細な凹陥部に貯溜させることにより、容器に収容された食品が水分に接触しにくくなる食品容器の蓋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−16250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された食品容器の蓋においては、発生した水が、毛細管現象により、食品容器の蓋の裏面の凹陥部に単に貯留されているにすぎないため、調理済み食品が食品容器の蓋の裏面と20分程度連続して接触した場合には、調理済み食品が凹陥部に貯留されている水を吸収してしまい、調理済み食品の味、風味、食感、質感、香り等が低下するという問題点があった。
【0007】
また、食品容器の移動などが原因で発生する突発的な衝撃により、凹陥部に貯留されている水が食品容器の裏面から落下することもあり得る。このような場合には、食品容器の蓋の裏面で発生した水を調理済み食品が吸収する可能性が高く、食品容器の裏面から落下した水を調理済み食品が吸収した場合には、調理済み食品の味、風味、食感、質感、香り等が低下するという問題点もあった。
【0008】
本発明の目的とするところは、蓋の裏面と連続して接触した場合や突発的な衝撃があった場合であっても、蓋の裏面で発生した水を容器本体に収容された調理済み食品が吸収する現象を極めて効果的に防止することができる、食品容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者は、前記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、調理済み食品を収容する容器本体と吸収シートを裏面に装着した蓋体とを備えた食品容器により、上記目的を達成することを見出し、本発明をするに至った。
【0010】
即ち、本発明の食品容器は、上方に開口部を有し、調理済み食品を収容するための容器本体と、該容器本体の開口部を覆う蓋体とを、備えた食品容器であって、前記蓋体は、イオン交換水に60分間浸漬した場合の吸収倍率が20g/g〜200g/gである吸収シートを、前記蓋体の裏面に装着したものである。
【0011】
本発明の好適態様は、上記調理済み食品は、揚げ物を含むものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、蓋体の裏面で発生した水は、容器本体に収容された調理済み食品に吸収されることなく、蓋体の裏面に装着された吸収シートに吸収されるため、本発明の食品容器に収容された調理済み食品は、長時間に渡り、味、風味、食感、質感、香り等が維持される。
【0013】
本発明の食品容器に収容された調理済み食品が揚げ物であった場合には、特に、揚げ物の衣のサクサク状態が長時間維持される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の食品容器は、容器本体と、蓋体とを備える。
【0015】
本発明に用いる容器本体は、上方に開口部を有し、調理済み食品を収容する。
【0016】
本発明に用いる容器本体としては、調理済み食品の状態を可能な限り維持する保温性及び断熱性を備えた発泡合成樹脂であれば、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂が挙げられ、中でも、ポリスチレン系樹脂は、容易に加工することができ、得られた容器は軽量で適度の剛性を持っているので、好ましい。なお、ポリスチレンとしては、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等のスチレン単量体の単独重合体、又はアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、ブタジエン等のビニル単量体との共重合体が挙げられる。具体的には、ポリスチレン樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン三元共重合体等が挙げられ、これらを単独であるいは混合して使用することができる。
【0017】
本発明に用いる蓋体は、容器本体の開口部を覆う。
【0018】
本発明に用いる蓋体としては、上述した容器本体と同様に、保温性及び断熱性を備えた合成樹脂であれば特に限定されず、上述した容器本体と同様のものを使用することができる。
【0019】
本発明に用いる蓋体の裏面には、吸収シートが装着される。吸収シートは蓋体の裏面で発生した水を吸収するため、蓋体の裏面で発生した水は容器本体に収容された調理済み食品に吸収されなくなることから、本発明の食品容器に収容された調理済み食品は、長期間に渡り、味、風味、食感、質感、香り等が維持されるようになる。
【0020】
本発明に用いる吸収シートは、所定の吸水性能(イオン交換水に60分間浸漬した場合の吸収倍率が20g/g〜200g/g)を満たすものであれば、特に限定されない。本発明に用いる吸収シートの材質としては、例えば、レーヨン、綿、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン製の不織布、高吸水性樹脂を含む不織布、ポリアクリル酸塩系樹脂、ビニルアルコール−アクリル酸系共重合樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、デンプン系共重合樹脂等の吸水性高分子、無水シリカ等の高分子吸収材、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレンを素材とする不織布複合品、吸湿性を有するパルプ構造体などが挙げられる。
【0021】
本発明に用いる蓋体の裏面に装着される吸収シートは、イオン交換水に60分間浸漬した場合の吸収倍率が20g/g〜200g/gであるものに限定される。吸収シートの吸収倍率が20g/g未満の場合には、吸収シートが蓋体の裏面で発生した水を十分に吸収できないため、蓋体の裏面で発生した水の一部が容器本体に収容された調理済み食品に吸収されてしまうからであり、逆に、吸収倍率が200g/gを超える吸収シートについては、蓋体の裏面で発生した水が容器本体に収容された調理済み食品の温度を低下させてしまうため、保温性において問題が生じるからである。
【0022】
イオン交換水に60分間浸漬した場合の吸収倍率は、例えば、以下の方法により求めることができる。試料の重量(W1)を測定した後、試料を過剰のイオン交換水に浸漬する。1時間後、浸漬した試料を引き上げ、静置して15分間水切り処理をする。その後、水切り処理後の試料の重量(W2)を測定する。そして、吸収倍率(g/g)=W2/W1を計算する。
【0023】
本発明に用いる吸収シートは、吸収シートを構成する繊維が、毛羽立ちにくい性状の方が好ましく、容器本体に収容された調理済み食品に、付着したり、混入しないものが好ましい。繊維の毛羽立ちが気になる場合には、吸収シートを構成する繊維の表面に、多数の微細な孔を均等に配置した通気性フィルムを、被覆してもよい。
【0024】
本発明に用いる吸収シートは、容器本体に収容された調理済み食品の余分な水分や油分を吸収する働きもあるため、所定の吸水性能に加えて、一定の吸油性能も備えていた方が好ましい。
【0025】
本発明に用いる吸収シートは、一層であっても、多層であっても、いずれであってもよい。
【0026】
吸収シートの蓋体の裏面への装着方法については、吸収シートの吸水性能が低下しない方法であれば特に限定されない。吸収シートの蓋体の裏面への装着方法としては、例えば、シートの全周をシール接着する方法、ホットメルト法によって貼着する方法、シートの全面をヒートシールで接着する方法などが挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口部を有し、調理済み食品を収容するための容器本体と、該容器本体の開口部を覆う蓋体とを、備えた食品容器であって、前記蓋体は、イオン交換水に60分間浸漬した場合の吸収倍率が20g/g〜200g/gである吸収シートを、前記蓋体の裏面に装着したものであることを特徴とする食品容器。
【請求項2】
前記調理済み食品は、揚げ物を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の食品容器。

【公開番号】特開2013−18529(P2013−18529A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155118(P2011−155118)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(511153769)株式会社エールサービス (1)
【Fターム(参考)】