説明

食品改質剤

【課題】簡易な製造工程で、優れた食感および老化防止効果を有するグルテン含有食品を調製し得る食品改質剤および該食品改質剤を含む食品を提供すること。
【解決手段】本発明は、生グルテンと還元糖とを混練し、乾燥、粉砕することによって得られる、改質グルテン粉末を提供する。また、上記改質グルテン粉末を含む食品を提供する。さらに、小麦粉から生グルテンを得る工程、該生グルテンに還元糖を練りこみ、還元糖含有混練物を得る工程、該還元糖含有混練物を乾燥、粉砕して還元糖改質グルテン粉末を得る工程を含む、食品改質剤の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質グルテン粉末および該粉末を含む食品に関する。
【背景技術】
【0002】
グルテンは、穀類特有の粘質性のタンパク質であり、古くから焼麸、生麸、水産練り製品、パン類、麺類などの食品の原料として用いられている。
【0003】
グルテンは、通常、小麦粉から小麦澱粉を製造する際の副産物として得られる。例えば、小麦粉に水を加えて練り、得られた混練物を水洗することによって、水中に小麦澱粉が懸濁する。他方、水に懸濁せずに、残留した固形の塊がグルテン(生グルテン)であり、懸濁液から分離回収することによって得られる。このような生グルテンは、通常、約60〜70質量%の水分を含む。グルテンは、通常、生グルテンの冷凍物、あるいは生グルテンを乾燥粉末化してグルテン粉末として流通され、食品に利用されている。
【0004】
ところで、現在、上記グルテンを用いて食品の食感を改良することが検討されている。例えば、特許文献1には、粉末状のグルテンとグルコース(還元糖)とを水溶液に分散させた小麦タンパク質分散液を得、この小麦タンパク質分散液を加熱処理した後、未反応の低分子量成分を除去して水溶性画分を回収し、凍結乾燥して食品品質改良剤を得る方法が記載されている。しかし、この方法は、小麦タンパク質分散液調製工程、加熱工程(2時間〜30日間)、低分子量成分除去工程、凍結乾燥工程の4段階からなるため、製造工程が複雑であり、製造に長期間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4129259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、簡易な製造工程で、優れた食感および老化防止効果を有するグルテン含有食品を調製し得る食品改質剤および該食品改質剤を含む食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、生グルテンと還元糖とを混練して乾燥、粉砕することによって得られる改質グルテン粉末が、食品の風味、食感、および外観を損なわず、むしろさらに良好な食感および外観を付与できること(食品改質剤)を見出した。さらにこの食品改質剤が食品の老化を抑制できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の改質グルテン粉末は、生グルテンと還元糖とを混練し、乾燥、粉砕することによって得られる。
【0009】
1つの実施態様では、上記改質グルテン粉末は、上記生グルテン100質量部に対して、上記還元糖0.1質量部〜40質量部を含む。
【0010】
1つの実施態様では、上記記還元糖は、フルクトース、キシロース、グルコース、マルトース、ショ糖、ラクトース、キシロオリゴ糖からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0011】
本発明はまた、上記改質グルテン粉末を含む食品を提供する。
【0012】
本発明はまた、小麦粉から生グルテンを得る工程、該生グルテンに還元糖を練りこみ、還元糖含有混練物を得る工程、該還元糖含有混練物を乾燥、粉砕して還元糖改質グルテン粉末を得る工程を含む、食品改質剤の製造方法を提供する。
【0013】
1つの実施態様では、上記食品改質剤の製造方法は、上記還元糖含有混練物を加熱する工程をさらに含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の食品改質剤は、簡易な工程で製造することができ、得られる食品の風味、食感、および外観を損なうことなく、さらに良好な食感(弾力、口溶け、滑らかさ、ジューシー感)を付与することができる。さらに得られる食品の老化を抑制することができる。これらの効果は、グルテン粉末と還元糖とを単に粉体混合した場合には得られない優れた効果である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】還元糖改質グルテン粉末から作製した加熱ゲルの弾性率の測定結果を示すグラフである。
【図2】還元糖改質グルテン粉末から作製した加熱ゲルの応力緩和量の測定結果を示すグラフである
【図3】還元糖改質グルテン粉末から作製した加熱ゲルおよび糖アルコール改質グルテン粉末から作製した加熱ゲルの弾性率の測定結果を示すグラフである。
【図4】還元糖改質グルテン粉末から作製した加熱ゲルおよび糖アルコール改質グルテン粉末から作製した加熱ゲルの応力緩和量の測定結果を示すグラフである。
【図5】水分量の多い配合で製造した、還元糖改質グルテン粉末を含むハンバーグの歩留り結果を示すグラフである。
【図6】油脂量の多い配合で製造した、還元糖改質グルテン粉末を含むハンバーグの歩留り結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の改質グルテン粉末は、生グルテンと還元糖とを混練し、乾燥、粉砕することによって得られる。必要に応じて、その他の成分を含有してもよい。この改質グルテン粉末は、主に穀粉を主成分とする食品に用いられる。
【0017】
(生グルテン)
本発明において、生グルテンとは、例えば、穀類から直接、洗浄法、抽出法などの当業者が通常行う方法によって得られるグルテンのうち、乾燥、粉末化などの処理を受けていないもの、あるいは乾燥、粉末化した後に水を加えて混練したものをいう。この生グルテンは、通常、水分を約60質量%〜70質量%含有する。
【0018】
本発明に用いられる生グルテンの原料としては、小麦、ライ麦などの穀類が挙げられる。好ましくは小麦である。上記穀類には、タンパク質であるグルテンが豊富に含有される。グルテンは、S−S結合を含むため弾力性に富むことが知られており、種々の食品の食感に重要な役割を果たしている。
【0019】
上記洗浄法は、例えば、小麦粉などの穀粉に少量の溶媒(例えば、水)を加えて練った生地(ドウ)を、上記溶媒で洗浄すること、あるいは多量の溶媒中でさらに練ることによって行われる。この方法により、澱粉が溶媒中に懸濁して除去され、グルテンが粘弾性の塊として得られる。上記溶媒としては、通常、水が用いられるが、希リン酸ナトリウム溶液、食塩水などを用いてもよい。
【0020】
上記抽出法は、例えば、上記ドウに希酢酸−エタノール混合液などを加えて、グルテンを溶解させ、澱粉を不溶物として分別することによって行われる。
【0021】
(還元糖)
本発明に用いられる還元糖は、一般に食品に使用される還元糖であればよく、特に制限されない。例えば、フルクトース、キシロース、グルコース、マルトース、ショ糖、ラクトース、キシロオリゴ糖、イソマルツロース、ラクトスクロース、ラムノース、N−アセチルグルコサミン、L−アラビノース、D−リボース、L−フコース、L−ソルボースなどが挙げられる。好ましくはフルクトース、キシロース、グルコース、ラクトース、L−アラビノースであり、さらに好ましくはフルクトース、キシロース、グルコースである。これらの還元糖は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
(その他の成分)
本発明の改質グルテン粉末は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、還元剤または酸化防止剤(ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、グルタチオン、システイン、ビタミンEなど)などのその他の成分を含有し得る。
【0023】
(改質グルテン粉末)
本発明の改質グルテン粉末は、上記の生グルテン、還元糖、および必要に応じてその他の成分を混練し、乾燥、粉砕することによって得られる。その他の成分については、その種類に応じて適宜含有され得る。例えば、上記混練時に合わせて添加してもよく、乾燥後に混合してもよい。
【0024】
混練工程において、生グルテンと還元糖との割合に特に制限はない。好ましくは、生グルテン100質量部に対して、還元糖0.1質量部〜40質量部、より好ましくは1.0質量部〜20質量部である。0.1質量部未満の場合、十分なグルテン改質効果が得られない。40質量部を超える場合、食品の風味、食感などを著しく損なう。得られる食品の風味、食感などを損なうことなく、十分なグルテン改質効果が得られる点から、還元糖を3.0質量部〜10質量部とすることが特に好ましい。混練は、例えば、ニーダー、ミキサーなどを用いて行われる。
【0025】
上記混練物は、加熱処理してもよい。加熱処理は、混練物を40〜60℃で1分〜1時間加熱することにより行われる。
【0026】
次いで、上記混練物を乾燥する。乾燥は、例えば、混練物中の水分量が10質量%以下になるまで行われる。乾燥方法は、真空乾燥、凍結乾燥などの当業者が通常行う乾燥方法であれば特に制限はない。品質保持の点から、60℃以下の乾燥または凍結乾燥が好ましい。短時間で乾燥させる点からは真空乾燥が好ましく、例えば50℃〜60℃にて乾燥され得る。生グルテンを取り扱う作業性の点からは凍結乾燥が好ましい。凍結乾燥の場合、凍結させた後、予め粉砕機などで粉砕してから乾燥してもよい。このようにして、本発明の改質グルテン粉末が得られる。
【0027】
得られた改質グルテン粉末は、必要に応じて、粉砕される。粉砕は、例えば、ミル、ブレンダーなどの当業者が通常用いる機械または道具により行われ得る。粉砕物の粒径は、食品に応じて適宜設定すればよく特に制限はない。粉砕後、粒径を均一にするために篩い分けなどを行ってもよい。
【0028】
本発明の改質グルテン粉末は、食品に弾力、口溶け、滑らかさ、ジューシー感を付与することができる。さらに得られる食品の老化を抑制することができる。これらの効果は、グルテン粉末と還元糖とを単に粉体混合した場合には得られない優れた効果である。
【0029】
(改質グルテン粉末を含む食品)
本発明の食品は、穀粉を主成分とし、さらに上記改質グルテン粉末を含む。穀粉としては、麦類(小麦など)、米、とうもろこし、あわ、ひえ、いも類(地下茎を含む)、豆などの植物の澱粉質およびタンパク質を主体とする粉末などが挙げられる。中でも、麦粉、特に小麦粉(例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉など)、米粉などが好ましく用いられる。このような穀粉を主成分とする食品としては、例えば、麺(そば、うどん、中華麺など)、餃子の皮、ピザ、中華饅頭、饅頭、どら焼、パン、スポンジケーキ、ホットケーキ、クッキー、マフィン、ブッセ、シュー皮などが挙げられる。これらの食品に含有される改質グルテン粉末の量は特に制限されないが、好ましくは得られる食品中に、0.05〜10質量%、より好ましくは0.1〜5.0質量%、さらに好ましくは0.3〜2.0質量%の割合で含有される。
【0030】
本発明の食品はまた、畜肉または卵を主成分とし、さらに上記改質グルテン粉末を含む。畜肉としては、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉、山羊肉、馬肉などが挙げられ、卵としては、鶏卵、うずら卵、アヒル卵、ダチョウ卵などが挙げられる。このような畜肉を主成分とする食品としては、例えば、ハンバーグ、餃子、焼売、中華饅頭、ミートボール、つくね、ソーセージ、ハム、ベーコン、チキンナゲット、鶏唐揚げ、とんかつ(ピックル液)などの畜肉加工食品が挙げられる。また、卵を主成分とする食品としては、卵焼き、だし巻き卵、厚焼き卵、薄焼き卵、炒り卵、オムレツ、スクランブルエッグ、かに玉、茶碗蒸しなどの卵加工食品などが挙げられる。これらの食品に含有される改質グルテン粉末の量は特に制限されないが、好ましくは得られる食品中に、0.05〜10質量%、より好ましくは0.1〜5.0質量%、さらに好ましくは0.3〜2.0質量%の割合で含有される。
【0031】
本発明の食品は、上記改質グルテン粉末を含むため、従来に比べて、同等以上の外観を有し、かつ弾力、口溶け、滑らかさなどの優れた食感を有している。さらに得られる食品の老化を抑制することができる。これらの効果は、グルテン粉末と還元糖とを単に粉体混合した場合には得られない優れた効果である。
【実施例】
【0032】
(実施例1:還元糖改質グルテンのゲル物性評価)
還元糖によるグルテンの改質効果を検証するために、種々の還元糖を用いて改質グルテン粉末を調製し、該粉末から作製した加熱ゲルの物性を評価した。
【0033】
(還元糖改質グルテン粉末の調製1)
小麦粉100質量部に水70質量部を加えて混練して生地(ドウ)を得た。このドウを水洗して澱粉を除去し、小麦グルテン(生グルテン)を得た。この生グルテン100質量部(グルテン量33質量部)に還元糖3.7質量部を添加し、フードカッターを用いて均一になるまで混練した。混練物を凍結乾燥した後、粉砕して還元糖改質グルテン粉末を得た。
【0034】
(測定サンプルの作製1)
還元糖改質グルテン粉末60gに水90gを加え、フードカッターを用いて均一になるまで混練してドウを得た。このドウを40gずつ遠心チューブに入れ、遠心分離(10000rpm、20℃、50分間)によって内部の気泡を除去した後、遠心チューブ内に出てきた余分な水分を捨て、蒸し器で85℃にて60分間加熱し、加熱ゲルを得た。この加熱ゲルを水道水にて冷却し、冷蔵庫(5℃)にて一晩保存した。冷却されたゲルを、ゲル高さが15mmになるようにカットし、インキュベーター(25℃)にて保存したものを測定サンプルとした。
【0035】
(対照サンプルの作製1)
対照として、還元糖を添加していない生グルテンを凍結乾燥した後、粉砕して得た非改質グルテン粉末を用い、測定サンプルと同様に調製して対照サンプル(無添加区)とした。
【0036】
(物性評価1)
測定サンプル(加熱ゲル)の物性評価を、レオメーター(EZ−test:島津製作所製)を用いて行った。測定条件は表1に示す通りである。歪率10〜20%の弾性率、および歪率20%で圧縮を停止後3分間の応力緩和量を測定した。得られたデータを、無添加区の測定値を100%とした時の相対値としてグラフ化した。弾性率の測定結果を図1に、応力緩和量の測定結果を図2に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
図1および図2の結果からわかるように、還元糖改質グルテン粉末から作製した加熱ゲルの弾性率および応力緩和量は、いずれの還元糖を用いたものであっても、非改質グルテン粉末から作製した加熱ゲルと比較して非常に低かった。このことは、グルテンに還元糖を混練することにより、加熱ゲルに著しい柔軟性と弾力が付与されることを示す。
【0039】
(実施例2:還元糖改質グルテンおよび糖アルコール改質グルテンのゲル物性評価)
還元糖によるグルテンの改質効果と、糖アルコールによるグルテンの改質効果を比較するために、還元糖または糖アルコールを用いて改質グルテン粉末を調製し、該粉末から作製した加熱ゲルの物性を評価した。
【0040】
(還元糖改質グルテン粉末の調製2)
還元糖としてキシロースを用い、それぞれ0.35質量部(グルテン量に対して1%、キシロース1%とする)、1.8質量部(グルテン量に対して5%、キシロース5%とする)、3.7質量部(グルテン量に対して10%、キシロース10%とする)を添加したこと以外は、実施例1と同様にして、還元糖改質グルテン粉末を得た。
【0041】
(糖アルコール改質グルテン粉末の調製2)
還元糖の代わりに糖アルコール(キシリトール)を用いたこと以外は、還元糖改質グルテン粉末の調製2と同様にして、糖アルコール改質グルテン粉末を得た(それぞれ、キシリトール1%、キシリトール5%、キシリトール10%とする)。
【0042】
(測定サンプルの作製2)
上記(還元糖改質グルテン粉末の調製1)で調製した還元糖改質グルテン粉末の代わりに、(還元糖改質グルテン粉末の調製2)で調製した還元糖改質グルテン粉末または(糖アルコール改質グルテン粉末の調製2)で調製した糖アルコール改質グルテン粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、測定サンプルを作製した。
【0043】
(対照サンプルの作製2)
実施例1と同様にして、対照サンプルを作製した。
【0044】
(物性評価2)
実施例1と同様にして、測定サンプル(加熱ゲル)の物性評価を行った。弾性率の測定結果を図3に、応力緩和量の測定結果を図4に示す。
【0045】
図3および図4の結果からわかるように、糖アルコール(キシリトール)改質グルテン粉末から作製した加熱ゲルの弾性率および応力緩和量は、還元糖(キシロース)改質グルテン粉末から作製した加熱ゲルの弾性率および応力緩和量よりも高く、非改質グルテン粉末から作製した加熱ゲルとほぼ変わらなかった。このことは、グルテンに還元糖を混練することにより得られる柔軟性および弾力性は、糖アルコールを混練しても得られず、還元糖特有の効果であることを示す。
【0046】
(実施例3:還元糖改質グルテン粉末の調製)
小麦粉100質量部に、水70質量部を加えて混練して生地(ドウ)得た。このドウを水洗して澱粉を除去し、小麦グルテン(生グルテン)を得た。この生グルテン100質量部(グルテン量33質量部)に、還元糖としてフルクトースをそれぞれ0.35質量部(グルテン量に対して1%)、1.8質量部(グルテン量に対して5%)、3.7質量部(グルテン量に対して10%)添加し、フードカッターを用いて均一になるまで混練した。混練物を凍結乾燥した後、水冷型石臼粉砕機(ミクロパウダー:有限会社ウエスト製)を用いて粉砕し、還元糖改質グルテン粉末を得た(それぞれ、還元糖改質グルテン粉末1、還元糖改質グルテン粉末5、還元糖改質グルテン粉末10とする)。
【0047】
(実施例4:うどんの製造および評価)
中力粉100質量部および実施例3で得られた還元糖改質グルテン粉末2質量部を、万能ミキサー(株式会社品川工業所製)を用いて混合した後、さらに、水38質量部および食塩2質量部を加えて8分間混合して生地を得た。この生地から製麺機(株式会社福田麺機製)を用いて製麺し、室温で1時間熟成させた。熟成後、厚さ2.5mmになるまで圧延し、切刃9番角を用いて切断して生うどんを得た(還元糖改質グルテン粉末1を含有する生うどんを実施例4−1、還元糖改質グルテン粉末5を含有する生うどんを実施例4−2、還元糖改質グルテン粉末10を含有する生うどんを実施例4−3とする)。
【0048】
得られた生うどんを沸騰水中で11分間茹で、1分間流水冷却して水切りしたものを被験者に試食させ、食感(硬さ、弾力、および滑らかさ)および外観(麺の艶)について官能評価を行った。また、上記製造工程において、生地のつなぎ性を評価した。なお、評価は、還元糖改質グルテン粉末を添加しなかったこと以外は、上記と同様にして得られた生うどんを対照例として設け、この対照例の各評価項目をそれぞれ5点として、これらに対する1〜10の10段階の相対評価で行った。結果を表2に示す。
【0049】
(比較例1)
実施例3で得られた生グルテンを凍結乾燥した後、粉砕してグルテン粉末を得た(非改質グルテン粉末とする)。次いで、還元糖改質グルテン粉末の代わりに、非改質グルテン粉末または混合粉末(非改質グルテン粉末にフルクトースをグルテン量に対して10%混合した粉末)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして生うどんを得た(比較例1−1および1−2とする)。得られた生うどんについて、上記と同様にして、食感(硬さ、弾力、および滑らかさ)、外観(麺の艶)および生地のつなぎ性を評価した。結果を表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
表2の結果からわかるように、還元糖改質グルテン粉末を用いて製造されたうどんは、非改質グルテン粉末を用いて製造されたうどんと同等以上の外観(麺の艶)および生地のつなぎ性を有し、また、非改質グルテン粉末を用いて製造されたうどんよりも柔らかく、弾力および滑らかさが向上していた。一方、混合粉末を用いて製造されたうどんでは、このような効果が得られなかった。このことは、還元糖改質グルテン粉末を食品に含有させることによって優れた食感が得られることを示す。
【0052】
(実施例5:中華麺の製造および評価)
準強力粉100質量部および実施例3で得られた還元糖改質グルテン粉末2質量部を、万能ミキサー(株式会社品川工業所製)を用いて混合した後、さらに、かん水(ボーメ6°)38質量部および食塩1質量部を加えて8分間混合して生地を得た。この生地から製麺機(株式会社福田麺機製)を用いて製麺し、室温で1時間熟成させた。熟成後、厚さ1.5mmになるまで圧延し、切刃20番角を用いて切断して中華麺を得た(還元糖改質グルテン粉末1を含有する中華麺を実施例5−1、還元糖改質グルテン粉末5を含有する中華麺を実施例5−2、還元糖改質グルテン粉末10を含有する中華麺を実施例5−3とする)。
【0053】
得られた中華麺を沸騰水中で2.5分間茹でたものを被験者に試食させ、食感(硬さ、弾力、および滑らかさ)および外観(麺の艶)について官能評価を行った。また、上記製造工程において、生地のつなぎ性を評価した。なお、評価は、還元糖改質グルテン粉末を添加しなかったこと以外は、上記と同様にして得られた中華麺を対照例として設け、この対照例の各評価項目をそれぞれ5点として、これらに対する1〜10の10段階の相対評価で行った。結果を表3に示す。
【0054】
(比較例2)
実施例3で得られた生グルテンを凍結乾燥した後、粉砕してグルテン粉末を得た(非改質グルテン粉末とする)。次いで、還元糖改質グルテン粉末の代わりに、非改質グルテン粉末または混合粉末(非改質グルテン粉末にフルクトースをグルテン量に対して10%混合した粉末)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして中華麺を得た(比較例2−1および2−2とする)。得られた中華麺について、上記と同様にして、食感(硬さ、弾力、および滑らかさ)、外観(麺の艶)および生地のつなぎ性を評価した。結果を表3に示す。
【0055】
【表3】

【0056】
表3の結果からわかるように、還元糖改質グルテン粉末を用いて製造された中華麺は、非改質グルテン粉末を用いて製造された中華麺と同等以上の外観(麺の艶)および生地のつなぎ性を有し、弾力および滑らかさが向上していた。一方、混合粉末を用いて製造された中華麺では、このような効果が得られなかった。このことは、還元糖改質グルテン粉末を食品に含有させることによって優れた食感が得られることを示す。
【0057】
(実施例6:餃子皮の製造および評価)
準強力粉100質量部および実施例3で得られた還元糖改質グルテン粉末2質量部を、万能ミキサー(株式会社品川工業所製)を用いて混合した後、さらに、水40質量部および食塩1質量部を加えて8分間混合して生地を得た。この生地から製麺機(株式会社福田麺機製)を用いて製麺し、室温で1時間熟成させた。熟成後、厚さ1.2mmになるまで圧延し、直径80mmの円形に型抜きし、餃子皮を得た(還元糖改質グルテン粉末1を含有する餃子皮を実施例6−1、還元糖改質グルテン粉末5を含有する餃子皮を実施例6−2、還元糖改質グルテン粉末10を含有する餃子皮を実施例6−3とする)。
【0058】
得られた餃子皮を蒸し器で6分間蒸したものを被験者に試食させ、食感(硬さおよび弾力)および外観(皮の艶)について官能評価を行った。また、上記製造工程において、生地の伸展性を評価した。さらに、蒸した皮を室温で3分間放置し、皮が硬くなる傾向(老化)の有無を評価した(老化防止効果)。なお、評価は、還元糖改質グルテン粉末を添加しなかったこと以外は、上記と同様にして得られた餃子皮を対照例として設け、この対照例の各評価項目をそれぞれ5点として、これらに対する1〜10の10段階の相対評価で行った。結果を表4に示す。
【0059】
(比較例3)
実施例3で得られた生グルテンを凍結乾燥した後、粉砕してグルテン粉末を得た(非改質グルテン粉末とする)。次いで、還元糖改質グルテン粉末の代わりに、非改質グルテン粉末または混合粉末(非改質グルテン粉末にフルクトースをグルテン量に対して10%混合した粉末)を用いたこと以外は、実施例6と同様にして餃子皮を得た(比較例3−1および3−2とする)。得られた餃子皮について、上記と同様にして、食感(硬さおよび弾力)、外観(皮の艶)、伸展性および老化防止効果を評価した。結果を表4に示す。
【0060】
【表4】

【0061】
表4の結果からわかるように、還元糖改質グルテン粉末を用いて製造された餃子皮は、非改質グルテン粉末を用いて製造された餃子皮と同等以上の外観(皮の艶)および伸展性を有し、また、非改質グルテン粉末を用いて製造された餃子皮よりも柔らかく、弾力およびモチモチ感が向上していた。また、グルテンが添加された餃子皮は、蒸した後に冷えると非常に硬くなる傾向があるが、還元糖改質グルテン粉末を用いて製造された餃子皮にはそのような傾向が見られなかった。一方、混合粉末を用いて製造された餃子皮では、このような効果が得られなかった。このことは、還元糖改質グルテン粉末を食品に含有させることによって優れた食感および調理後の食品の老化防止効果が得られることを示す。
【0062】
(実施例7:食パンの製造および評価)
実施例3で得られた還元糖改質グルテン粉末と表5に記載の各成分とを、表5に記載の配合比でホームベーカリーSPM−KP1(三洋電機株式会社製)に投入し、食パンコースにて食パンを製造した(還元糖改質グルテン粉末1を含有する食パンを実施例7−1、還元糖改質グルテン粉末5を含有する食パンを実施例7−2、還元糖改質グルテン粉末10を含有する食パンを実施例7−3とする)。
【0063】
【表5】

【0064】
得られた食パンを室温で一晩保管したものを被験者に試食させ、食感(弾力、口溶けおよび滑らかさ)および外観(ボリューム)について官能評価を行った。なお、評価は、表5に記載の各成分を表5に記載の配合比で用いて、上記と同様にして得られた食パンを対照例として設け、この対照例の各評価項目をそれぞれ5点として、これらに対する1〜10の10段階の相対評価で行った。結果を表6に示す。
【0065】
(比較例4)
実施例3で得られた生グルテンを凍結乾燥した後、粉砕してグルテン粉末を得た(非改質グルテン粉末とする)。次いで、還元糖改質グルテン粉末の代わりに、非改質グルテン粉末または混合粉末(非改質グルテン粉末にフルクトースをグルテン量に対して10%混合した粉末)を用いたこと以外は、実施例7と同様にして食パンを得た(比較例4−1および4−2とする)。得られた食パンについて、上記と同様にして、食感(弾力、口溶けおよび滑らかさ)および外観(ボリューム)を評価した。結果を表6に示す。
【0066】
【表6】

【0067】
表6の結果からわかるように、還元糖改質グルテン粉末を用いて製造された食パンは、非改質グルテン粉末を用いて製造された食パンと同等の外観(ボリューム)および弾力を有し、クラム(食パンの内側の柔らかい部分)の口溶けおよび滑らかさが著しく向上していた。また、クラスト(食パンの表皮)が柔らかくなっていた。一方、混合粉末を用いて製造された食パンでは、このような効果が得られなかった。このことは、還元糖改質グルテン粉末を食品に含有させることによって優れた食感が得られることを示す。
【0068】
(実施例8:スポンジケーキの製造および評価)
実施例3で得られた還元糖改質グルテン粉末と表7に記載の各成分とを、表7に記載の配合比で万能ミキサー(株式会社品川工業所製)を用いて生地比重が0.46g/mLになるまで混合した。この生地120gを、オーブンを用いて170℃にて30分間焼成し、スポンジケーキを得た(還元糖改質グルテン粉末1を含有するスポンジケーキを実施例8−1、還元糖改質グルテン粉末5を含有するスポンジケーキを実施例8−2、還元糖改質グルテン粉末10を含有するスポンジケーキを実施例8−3とする)。
【0069】
【表7】

【0070】
得られたスポンジケーキを室温で一晩保管したものを被験者に試食させ、食感(弾力、口溶けおよび滑らかさ)および外観(ボリューム)について官能評価を行った。なお、評価は、表7に記載の各成分を表7に記載の配合比で用いて、上記と同様にして得られたスポンジケーキを対照例として設け、この対照例の各評価項目をそれぞれ5点として、これらに対する1〜10の10段階の相対評価で行った。結果を表8に示す。
【0071】
(比較例5)
実施例3で得られた生グルテンを凍結乾燥した後、粉砕してグルテン粉末を得た(非改質グルテン粉末とする)。次いで、還元糖改質グルテン粉末の代わりに、非改質グルテン粉末または混合粉末(非改質グルテン粉末にフルクトースをグルテン量に対して10%混合した粉末)を用いたこと以外は、実施例8と同様にしてスポンジケーキを得た(比較例5−1および5−2とする)。得られたスポンジケーキについて、上記と同様にして、食感(弾力、口溶けおよび滑らかさ)および外観(ボリューム)を評価した。結果を表8に示す。
【0072】
【表8】

【0073】
表8の結果からわかるように、還元糖改質グルテン粉末を用いて製造されたスポンジケーキは、非改質グルテン粉末を用いて製造されたスポンジケーキと同等の外観(ボリューム)を有し、口溶けおよび滑らかさが著しく向上していた。一方、混合粉末を用いて製造されたスポンジケーキでは、このような効果が得られなかった。このことは、還元糖改質グルテン粉末を食品に含有させることによって優れた食感が得られることを示す。
【0074】
(実施例9:ハンバーグの製造および評価1:水分量の多い配合)
主原料(合挽きミンチ肉、牛肉:豚肉=6:4)に食塩および冷水を表9に記載の配合比で加え、ビーターを取り付けた縦型ミキサー(株式会社品川工業所製)を用いて低速で30秒間混合した。さらに、表9に記載の副原料、食塩以外の調味料およびグルテンを表9に記載の配合比で加え、低速で1分間混合した。なお、粒状大豆たん白としては、乾燥粒状大豆たん白(不二製油株式会社製)に3倍量の水を加えて戻したものを使用した。この生地65g(焼成前重量)を小判型に成形し、コンベクションオーブンを用いて200℃にて19分間焼成し、ハンバーグを得た(還元糖改質グルテン粉末1を含有するハンバーグを実施例9−1、還元糖改質グルテン粉末5を含有するハンバーグを実施例9−2、還元糖改質グルテン粉末10を含有するハンバーグを実施例9−3とする)。
【0075】
【表9】

【0076】
得られたハンバーグを室温にて1時間冷却後、重量測定を行い(焼成後重量)、次いで袋詰めして−30℃以下にて12時間冷凍保存後、100℃にて10分間ボイルすることにより解凍した。ハンバーグを袋から取り出して重量測定を行い(ボイル後重量)、次いで被験者に試食させ、食感(弾力およびジューシー感)および風味について官能評価を行った。なお、評価は、還元糖改質グルテン粉末を添加しなかったこと以外は、上記と同様にして得られたハンバーグを対照例として設け、各評価項目について1〜7の7段階の評価で行った。結果を表10に示す。
【0077】
さらに、下記の式を用いて、焼成後およびボイル後のハンバーグの歩留りを算出した(n=5)。結果を表11および図5に示す。
【0078】
【数1】

【0079】
(比較例6)
実施例3で得られた生グルテンを凍結乾燥した後、粉砕してグルテン粉末を得た(非改質グルテン粉末とする)。次いで、還元糖改質グルテン粉末の代わりに、非改質グルテン粉末または混合粉末(非改質グルテン粉末にフルクトースをグルテン量に対して10%混合した粉末)を用いたこと以外は、実施例9と同様にしてハンバーグを得た(比較例6−1および6−2とする)。また、還元糖改質グルテン粉末の代わりに、大豆たん白粉末(不二製油株式会社製)を用いたこと以外は、実施例9と同様にしてハンバーグを得た(比較例6−3とする)。得られたハンバーグについて、上記と同様にして、食感(弾力およびジューシー感)および風味を評価した。結果を表10に示す。
【0080】
さらに、実施例9と同様にして、焼成後およびボイル後のハンバーグの歩留りを算出した。結果を表11および図5に示す。
【0081】
【表10】

【0082】
【表11】

【0083】
表10の結果からわかるように、還元糖改質グルテン粉末を用いて製造されたハンバーグは、非改質グルテン粉末を用いて製造されたハンバーグおよび大豆たん白粉末を用いて製造されたハンバーグと同等以上のジューシー感および弾力を有し、特に還元糖改質グルテン粉末10ではジューシー感が著しく向上していた。一方、混合粉末を用いて製造されたハンバーグでは、このような効果が得られなかった。また、非改質グルテン粉末を用いて製造されたハンバーグおよび混合粉末を用いて製造されたハンバーグにはグルテン臭が、大豆たん白粉末を用いて製造されたハンバーグには大豆臭が残っており、風味が損なわれていたのに対し、還元糖改質グルテン粉末を用いて製造されたハンバーグにはそのような臭いがなく、風味が良好であった。このことは、還元糖改質グルテン粉末を食品に含有させることによって優れた食感および風味が得られることを示す。
【0084】
表11および図5の結果からわかるように、還元糖改質グルテン粉末を用いて製造されたハンバーグは、非改質グルテン粉末、混合粉末または大豆たん白粉末を用いて製造されたハンバーグよりも、焼成後、ボイル後ともに重量の損失が少なく、特に還元糖改質グルテン粉末5および10では歩留りが著しく向上していた。このことは、還元糖改質グルテン粉末を食品に含有させることによって水分の減少を抑制し、歩留りが向上することを示す。
【0085】
(実施例10:ハンバーグの製造および評価2:油脂量の多い配合)
実施例3で得られた還元糖改質グルテン粉末と表12に記載の各成分とを、表12に記載の配合比で混合したこと以外は、実施例9と同様にしてハンバーグを得た(還元糖改質グルテン粉末1を含有するハンバーグを実施例10−1、還元糖改質グルテン粉末5を含有するハンバーグを実施例10−2、還元糖改質グルテン粉末10を含有するハンバーグを実施例10−3とする)。
【0086】
【表12】

【0087】
得られたハンバーグについて、実施例9と同様にして、食感(弾力およびジューシー感)および風味を評価した。結果を表13に示す。
【0088】
さらに、実施例9と同様にして、焼成後およびボイル後のハンバーグの歩留りを算出した。結果を表14および図6に示す。
【0089】
(比較例7)
実施例3で得られた生グルテンを凍結乾燥した後、粉砕してグルテン粉末を得た(非改質グルテン粉末とする)。次いで、還元糖改質グルテン粉末の代わりに、非改質グルテン粉末または混合粉末(非改質グルテン粉末にフルクトースをグルテン量に対して10%混合した粉末)を用いたこと以外は、実施例10と同様にしてハンバーグを得た(比較例7−1および7−2とする)。また、還元糖改質グルテン粉末の代わりに、大豆たん白粉末を用いたこと以外は、実施例10と同様にしてハンバーグを得た(比較例7−3とする)。得られたハンバーグについて、上記と同様にして、食感(弾力およびジューシー感)および風味を評価した。結果を表13に示す。
【0090】
さらに、実施例10と同様にして、焼成後およびボイル後のハンバーグの歩留りを算出した。結果を表14および図6に示す。
【0091】
【表13】

【0092】
【表14】

【0093】
表13の結果からわかるように、還元糖改質グルテン粉末を用いて製造されたハンバーグは、非改質グルテン粉末を用いて製造されたハンバーグおよび大豆たん白粉末を用いて製造されたハンバーグと同等以上のジューシー感および弾力を有し、特に還元糖改質グルテン粉末10ではジューシー感が著しく向上していた。一方、混合粉末を用いて製造されたハンバーグでは、このような効果が得られなかった。また、非改質グルテン粉末を用いて製造されたハンバーグおよび混合粉末を用いて製造されたハンバーグにはグルテン臭が、大豆たん白粉末を用いて製造されたハンバーグには大豆臭が残っており、風味が損なわれていたのに対し、還元糖改質グルテン粉末を用いて製造されたハンバーグにはそのような臭いがなく、風味が良好であった。このことは、還元糖改質グルテン粉末を食品に含有させることによって優れた食感および風味が得られることを示す。
【0094】
表14および図6の結果からわかるように、還元糖改質グルテン粉末を用いて製造されたハンバーグは、非改質グルテン粉末、混合粉末または大豆たん白粉末を用いて製造されたハンバーグよりも、焼成後、ボイル後ともに重量の損失が少なく、特に還元糖改質グルテン粉末5および10では歩留りが著しく向上していた。このことは、還元糖改質グルテン粉末を食品に含有させることによって、油脂の減少を抑制し、歩留りが向上することを示す。
【0095】
(実施例11:だし巻き卵の製造および評価1)
表15に記載の各成分を、表15に記載の配合比で混合し、調味液とした。この調味液と、実施例3で得られた還元糖改質グルテン粉末およびコーンスターチとを、表16に記載の配合比でプロペラミキサーを用いて均一になるまで混合した。次いで、全卵液を表16に記載の配合比で加えて混合し、だし巻き卵原料液とした。このだし巻き卵原料液を、一般的な卵焼きの焼成方法に従って焼成し、だし巻き卵を得た。得られただし巻き卵を室温まで冷却後、真空パックし、次いで85℃にて25分間殺菌後、5℃にて3日間保存し、加熱殺菌だし巻き卵を得た(還元糖改質グルテン粉末1を含有する加熱殺菌だし巻き卵を実施例11−1、還元糖改質グルテン粉末5を含有する加熱殺菌だし巻き卵を実施例11−2、還元糖改質グルテン粉末10を含有する加熱殺菌だし巻き卵を実施例11−3とする)。
【0096】
【表15】

【0097】
【表16】

【0098】
得られた加熱殺菌だし巻き卵を室温まで冷却したものを被験者に試食させ、食感(ジューシー感)および風味について官能評価を行った。また、上記製造工程において、混合時の作業性(ダマの生じにくさ)を評価した。なお、評価は、還元糖改質グルテン粉末を添加しなかったこと以外は、上記と同様にして得られた加熱殺菌だし巻き卵を対照例として設け、この対照例の各評価項目をそれぞれ4点として、これらに対する1〜7の7段階の相対評価で行った。結果を表17に示す。
【0099】
(比較例8)
実施例3で得られた生グルテンを凍結乾燥した後、粉砕してグルテン粉末を得た(非改質グルテン粉末とする)。次いで、還元糖改質グルテン粉末の代わりに、非改質グルテン粉末または混合粉末(非改質グルテン粉末にフルクトースをグルテン量に対して10%混合した粉末)を用いたこと以外は、実施例11と同様にして加熱殺菌だし巻き卵を得た(比較例8−1および8−2とする)。得られた加熱殺菌だし巻き卵について、上記と同様にして、食感(ジューシー感)、風味および作業性を評価した。結果を表17に示す。
【0100】
【表17】

【0101】
表17の結果からわかるように、非改質グルテン粉末および混合粉末を用いて製造されただし巻き卵は、グルテン粉末を添加しないで製造されただし巻き卵よりも硬くボソボソしていたのに対し、還元糖改質グルテン粉末を用いて製造されただし巻き卵は、グルテン粉末を添加しないで製造されただし巻き卵よりも柔らかく、ジューシー感を有し、特に還元糖改質グルテン粉末10ではジューシー感が著しく向上していた。また、非改質グルテン粉末を用いて製造されただし巻き卵および混合粉末を用いて製造されただし巻き卵はグルテン臭が強く、風味が損なわれていたのに対し、還元糖改質グルテン粉末を用いて製造されただし巻き卵にはグルテン臭がなく、風味が良好であった。さらに、還元糖改質グルテン粉末は、非改質グルテン粉末および混合粉末よりも分散性に優れ、製造時にダマが生じにくく、作業性が良好であった。このことは、還元糖改質グルテン粉末を食品に含有させることによって、作業性を損なうことなく優れた食感および風味が得られ、冷凍処理後も保たれることを示す。
【0102】
(実施例12:だし巻き卵の製造および評価2)
実施例11と同様にして加熱殺菌だし巻き卵を得た。得られた加熱殺菌だし巻き卵を、−35℃にて急速冷凍し、冷凍だし巻き卵を得た(還元糖改質グルテン粉末1を含有する冷凍だし巻き卵を実施例12−1、還元糖改質グルテン粉末5を含有する冷凍だし巻き卵を実施例12−2、還元糖改質グルテン粉末10を含有する冷凍だし巻き卵を実施例12−3とする)。
【0103】
得られた冷凍だし巻き卵を自然解凍したものを被験者に試食させ、食感(ジューシー感)および風味について官能評価を行った。なお、評価は、還元糖改質グルテン粉末を添加しなかったこと以外は、上記と同様にして得られた冷凍だし巻き卵を対照例として設け、この対照例の各評価項目をそれぞれ4点として、これらに対する1〜7の7段階の相対評価で行った。結果を表18に示す。
【0104】
(比較例9)
実施例3で得られた生グルテンを凍結乾燥した後、粉砕してグルテン粉末を得た(非改質グルテン粉末とする)。次いで、還元糖改質グルテン粉末の代わりに、非改質グルテン粉末または混合粉末(非改質グルテン粉末にフルクトースをグルテン量に対して10%混合した粉末)を用いたこと以外は、実施例11と同様にして冷凍だし巻き卵を得た(比較例9−1および9−2とする)。得られた冷凍だし巻き卵について、上記と同様にして、食感(ジューシー感)および風味を評価した。結果を表18に示す。
【0105】
【表18】

【0106】
表18の結果からわかるように、非改質グルテン粉末および混合粉末を用いて製造されただし巻き卵は、グルテン粉末を添加しないで製造されただし巻き卵よりも硬くボソボソしていたのに対し、還元糖改質グルテン粉末を用いて製造されただし巻き卵は、グルテン粉末を添加しないで製造されただし巻き卵よりも柔らかく、ジューシー感を有し、特に還元糖改質グルテン粉末10ではジューシー感が著しく向上していた。また、非改質グルテン粉末を用いて製造されただし巻き卵および混合粉末を用いて製造されただし巻き卵はグルテン臭が強く、風味が損なわれていたのに対し、還元糖改質グルテン粉末を用いて製造されただし巻き卵にはグルテン臭がなく、風味が良好であった。このことは、還元糖改質グルテン粉末を食品に含有させることによって、優れた食感および風味が得られ、加熱処理後も保たれることを示す。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の食品改質剤は、簡易な工程で製造することができ、得られる食品の風味、食感、および外観を損なうことなく、さらに良好な食感(弾力、口溶け、滑らかさ、ジューシー感)を付与することができる。さらに得られる食品の老化を抑制することができる。これらの効果は、グルテン粉末と還元糖とを単に粉体混合した場合には得られない優れた効果である。本発明の食品改質剤は、特に穀粉、畜肉または卵を主成分とするグルテン含有食品に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生グルテンと還元糖とを混練し、乾燥、粉砕することによって得られる、改質グルテン粉末。
【請求項2】
前記生グルテン100質量部に対して、前記還元糖0.1質量部〜40質量部を含む、請求項1に記載の改質グルテン粉末。
【請求項3】
前記還元糖が、フルクトース、キシロース、グルコース、マルトース、ショ糖、ラクトース、キシロオリゴ糖からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の改質グルテン粉末。
【請求項4】
請求項1から3に記載の改質グルテン粉末を含む、食品。
【請求項5】
食品改質剤の製造方法であって、
小麦粉から生グルテンを得る工程、
該生グルテンに還元糖を練りこみ、還元糖含有混練物を得る工程、
該還元糖含有混練物を乾燥、粉砕して還元糖改質グルテン粉末を得る工程
を含む、方法。
【請求項6】
前記還元糖含有混練物を加熱する工程をさらに含む、請求項5に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−44985(P2012−44985A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149286(P2011−149286)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(591021028)奥野製薬工業株式会社 (132)
【Fターム(参考)】