説明

食品改質剤

【課題】食品に弾力性のある食感および伸展性を付与できる食品改質剤を提供すること。
【解決手段】本発明は、大豆蛋白および多糖類を混合し、加熱して得られる、食品改質剤を提供する。本発明はまた、大豆蛋白、多糖類および無機塩を混合し、加熱して得られる、食品改質剤を提供する。本発明の食品改質剤を用いて、食感および物性を改良した食品を製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品改質剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の品質改良の目的で、小麦蛋白が広く利用されている。例えば、特許文献1および2には、改質グルテン粉末が、畜肉加工食品、水産練り加工食品、および麺類を含む小麦粉食品に対して、硬さ、ねばり、滑らかさなどの食感および伸展性を付与できることが記載されている。
【0003】
大豆蛋白もまた、食品の品質改良のために広く利用されている。大豆蛋白は、大豆蛋白自体が蛋白源として優れるので、栄養の強化のために、そして小麦蛋白の代替材料としても注目されている。大豆蛋白は、畜肉加工食品および水産練り加工食品に添加されて、そのゲル化力によって、これらの食品に硬さのある歯切れのよい食感を付与できる。しかし、もちもち感、ねばり感、弾力感などの弾力性のある食感の食品への付与はできなかった。
【0004】
また、大豆蛋白を含有する麺類が開発されている。例えば、特許文献3には、麺類の栄養価を強化するために、酵素分解処理した大豆蛋白を配合した麺類が記載されている。しかし、分離大豆蛋白を配合した麺類では、製麺性が悪化し、麺質が劣化するという問題点があった。特許文献4には、大豆ペプチドの機能性を付与しかつ麺質が劣化しない即席麺を製造することを目的として、大豆ペプチド、サイリウムガム、および乳酸カルシウムを含有する麺生地を調製することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−204649号公報
【特許文献2】特開2007−000046号公報
【特許文献3】特公昭63−56789号公報
【特許文献4】特開2007−202519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、食品に弾力性のある食感および伸展性を付与できる食品改質剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の食品改質剤は、大豆蛋白および多糖類を混合し、加熱して得られる。
【0008】
本発明の食品改質剤はまた、大豆蛋白、多糖類および無機塩を混合し、加熱して得られる。
【0009】
1つの実施態様では、上記多糖類はサイリウムシードガムである。
【0010】
1つの実施態様では、上記無機塩はカルシウム塩である。
【0011】
1つの実施態様では、上記カルシウム塩は乳酸カルシウムである。
【0012】
本発明はまた、上記食品改質剤を含む食品を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の食品改質剤は、食品の食感および物性を改良できる。本発明の食品改質剤によれば、特に大豆蛋白ではこれまで付与できなかった弾力性のある食感および伸展性を、食品に付与することができる。本発明の食品改質剤を用いて、食感および物性を改良した食品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の食品改質剤は、大豆蛋白および多糖類ならびに必要に応じて無機塩を混合し、加熱して得られる。
【0015】
大豆蛋白としては、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白、大豆蛋白分解物などが挙げられる。分離大豆蛋白は、脱皮大豆から非蛋白性化合物が除去され、蛋白が乾物換算で90%以上含有量まで精製されたものである。濃縮大豆蛋白は、脱皮大豆から油脂の大部分と水溶性非蛋白性化合物が除去され、蛋白が乾物換算で70%以上含有量まで精製されたものである。大豆蛋白分解物は、大豆蛋白を酸、酵素などにより加水分解して得られたものであり、食品に付与される食感および物性を損なわない程度に加水分解されていてもよい。大豆蛋白は、脱皮した大豆から当業者が通常用いる方法に従って調製できる。分離大豆蛋白および濃縮大豆蛋白が好ましく、分離大豆蛋白がより好ましい。大豆蛋白の形状としては、粉末状、粒状、繊維状などが挙げられるが、好ましくは粉末状である。
【0016】
多糖類としては、アラビアガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カードラン、カシアガム、ガティガム、カラギナン、カラヤガム、カロブビーンガム(ローカストビーンガム)、キサンタンガム、グァーガム、サイリウムシードガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、タラガム、ファーセレラン、プルラン、ペクチン、モモ樹脂などが挙げられる。好ましくは、食品において増粘剤、ゲル化剤、または安定剤として使用できる多糖類、より好ましくは、サイリウムシードガムである。サイリウムシードガムは、オオバコ科ブロンドサイリウム(Plantago ovata FOESK.)または同種植物の種子外皮に含まれる多糖類である。多糖類の形状としては、粉末状、粒状などが挙げられるが、好ましくは粉末状である。多糖類の精製方法および粒度は、特に限定されないが、精製度が高い方が色調の点で好ましい。
【0017】
無機塩としては、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられ、好ましくは、カルシウム塩、より好ましくは、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸二カルシウムなど、さらにより好ましくは、乳酸カルシウムである。
【0018】
本発明の食品改質剤を製造するための工程では、まず大豆蛋白と多糖類とを混合する。必要に応じて、無機塩をさらに混合する。混合は、好ましくは粉末混合である。混合比率は、材料に応じて適宜設定されるが、例えば、大豆蛋白(分離大豆蛋白)100質量部に対して、多糖類(サイリウムシードガム)を1〜400質量部、好ましくは5〜50質量部、必要に応じて無機塩(乳酸カルシウム)を1〜30質量部、好ましくは5〜15質量部混合する。混合により、これらの材料が均一に分散した状態にする。
【0019】
次いで、均一に分散した混合物を加熱する。加熱方法としては特に限定されないが、例えば、恒温・恒湿度熱風乾燥機を用いる方法が挙げられる。コンベヤー式、ミキサー式、または回転式ドラムにて流動させながら加熱してもよい。加熱の温度および時間は特に限定されないが、加熱温度は、好ましくは60℃〜200℃、より好ましくは90℃〜150℃である。加熱時間は、好ましくは30秒から240分、より好ましくは60秒から90分である。加熱の温度および時間の組み合わせは特に限定されないが、加熱の温度が高いほど加熱時間は短くてよい。例えば、加熱時間は、加熱温度が60℃程度であれば好ましくは120〜240分、より好ましくは180〜240分、90℃程度であれば好ましくは90〜240分、より好ましくは90〜120分、120℃程度であれば好ましくは1〜10分、より好ましくは2.5〜10分、150℃程度であれば好ましくは1〜5分、より好ましくは2.5〜5分、180℃〜200℃であれば好ましくは1〜2.5分である。
【0020】
混合工程では、加熱後、通常は室温まで冷却される。冷却方法は特に限定されない。
【0021】
本発明の食品改質剤は、粉末状であり得る。
【0022】
本発明の食品改質剤は、食品原料に予め添加および混合することで食品に適用できる。食品原料への添加および混合の方法は、本発明の食品改質剤が原料に均一に分散できる限り、特に限定されない。本発明の食品改質剤が予め添加および混合された食品原料から、通常通りに食品を製造することができる。
【0023】
本発明は、上記食品改質剤を含む食品もまた提供する。好ましくは、穀粒、穀粉、および澱粉からなる群より選択される少なくとも1種を主成分として含む食品、ならびに動物性蛋白質または植物性蛋白質を主成分として含む食品である。好ましくは、弾力性のある食感(例えば、もちもち感、ねばり感、弾力感)が望ましい食品および伸展性が良好であることが望ましい食品である。
【0024】
上記穀粒、穀粉、および澱粉からなる群より選択される少なくとも1種を主成分として含む食品としては、例えば、麺類、団子状食品、およびシート状食品が挙げられる。麺類としては、例えば、うどん、きしめん、日本そば、中華麺、素麺、パスタなどの小麦粉またはそば粉を主成分とする麺類;春雨などの緑豆澱粉を主成分とする麺類;およびビーフンなどの米粉またはジャガイモなどに由来する澱粉を主成分とする麺類が挙げられる。団子状食品としては、例えば、わらび餅、かしわ餅などの餅類、および白玉団子が挙げられる。シート状食品としては、例えば、餃子の皮およびワンタンが挙げられる。上記穀粒、穀粉、および澱粉からなる群より選択される少なくとも1種を主成分として含む食品としては、例えば、ピザ、中華饅頭、饅頭、どら焼、パンなどの生地、スポンジケーキ、ホットケーキ、クッキー、マフィン、ブッセ、およびシュー皮も挙げられる。
【0025】
上記動物性蛋白質または植物性蛋白質を主成分として含む食品としては、例えば、豆腐、凍り豆腐、変わり豆腐、豆腐ステーキ、豆腐竹輪、油揚げ(調味付けしたものも含む)、がんもどき、湯葉、大豆ハンバーグなどの大豆加工食品;ハンバーグ、ハム、ソーセージなどの畜肉加工食品(レトルト食品またはその具材も含む);かまぼこ、ちくわなどの水産練り加工食品;ならびにゼリー、ババロアなどの菓子類が挙げられる。
【0026】
これらの食品は、例えば、常温または低温下で流通される調理済み食品(市販弁当の具材、調理麺など)、乾燥食品(即席麺類など)、冷蔵食品(チルド食品)、冷凍食品などとして利用される食品であってもよい。
【0027】
これらの食品に含有される食品改質剤の量は、食品の食感または物性を改良できる範囲内である限り特に制限されず、適宜設定できる。例えば、上記麺類(特に生麺、茹で麺)では、食品改質剤は、原料の粉(例えば、小麦粉)の質量に対して、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.3〜3質量%で添加される。油揚げでは、食品改質剤は、原料の豆乳の質量に対して、好ましくは0.05〜1質量%、より好ましくは0.1〜0.5質量%で添加される。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。また、以下の実施例において、特に断らない限り、「質量部」は「部」と表す。
【0029】
(実験例1:大豆蛋白およびサイリウムシードガムの配合比率によるゲル物性評価)
分離大豆蛋白(以下、単に「大豆蛋白」という)およびサイリウムシードガムの配合量を以下の表1に示すようにして混合し、均一に分散させた。
【0030】
試料に水を、試料:水=15部:100部の割合で添加して、ミキサーにて均一に混合した。得られた混合物をテフロン(登録商標)樹脂製の円柱枠(直径20mm×高さ10mm)に流し込み、恒温乾燥機を用いて90℃にて120分間加温し、次いで室温まで冷却し、10℃にて24時間保管した後、円柱枠より取り出した。取り出した混合物は、ゲル状であった。
【0031】
得られたゲルの物性評価のために、テキソグラフ(株式会社日本食品開発研究所)を用いた。ゲルを測定用のステイに載せ、直径3cmの円盤型プランジャーを0.1mm/秒の速度にて75%圧縮まで押し込んで、10秒間保持した。除重後、ゲルの物性をもちもち感および伸展性に関して感覚評価した。それぞれ、「×」悪い、「△」少し良い、「○」良いの三段階の評価基準で評価した。
【0032】
【表1】

【0033】
表1は、大豆蛋白およびサイリウムシードガムの配合比率ならびにゲルの物性評価の結果を示す。表1に示されるように、大豆蛋白に対するサイリウムシードガムの質量基準の配合比率が5%を超える(試料2)ともちもち感、伸展性が少し良くなる。配合比率が10%〜37.5%(試料3〜7)では、もちもち感および伸展性共に良くなった。しかし、配合比率が42.5%を超えると(試験区8〜10)、もちもち感および伸展性が低下した。
【0034】
(実験例2:大豆蛋白およびサイリウムシードガムの加熱の温度および時間の調整とゲル物性への影響)
大豆蛋白3部およびサイリウムシードガム1部を混合し、均一に分散させた。この混合物を恒温・恒湿度熱風乾燥機を用いて以下の表2に示す時間および温度で加熱した後、室温まで冷却し、試料とした。表2中「−」で表されている箇所は、加熱試験を行っていない。
【0035】
得られたゲルの物性評価のために、テキソグラフ(株式会社日本食品開発研究所)を用いた。ゲルを測定用のステイに載せ、直径3cmの円盤型プランジャーを0.1mm/秒の速度にて75%圧縮まで押し込んで、10秒間保持した。除重後、ゲルの物性をもちもち感および伸展性に関して感覚評価した。加熱を全く行わない場合と比較したゲルの状態を、「×」変化なし、「○」変化ありの二段階の評価基準で評価した。
【0036】
【表2】

【0037】
表2は、大豆蛋白およびサイリウムシードガムの混合物の加熱の温度および時間、ならびにゲルの物性評価の結果を示す。表2に示されるように、加熱を全く行わない場合(「0分」の列)と比較して、60℃〜200℃の加熱温度範囲および1分〜240分の加熱時間範囲においてゲル物性の変化が見られた。
【0038】
(実験例3:実施例1〜6および比較例1〜6の調製物の物性評価)
以下の表3に示す混合組成および加熱条件としたこと以外は、実験例1と同様にして、実施例1〜6および比較例1〜6の調製物を得た。比較例1、4、5および6は大豆蛋白単独、実施例1、3および5ならびに比較例2は大豆蛋白とサイリウムシードガムとの混合物、実施例2、4および6ならびに比較例3は大豆蛋白とサイリウムシードガムと乳酸カルシウムとの混合物であり、そして比較例1〜3は加熱せず、実施例1〜6および比較例4〜6は表3に示す条件で加熱した。
【0039】
実施例1〜6および比較例1〜6の調製物のいずれかに水を、調製物:水=15部:100部の割合で添加して、ミキサーにて均一に混合した。得られた混合物をテフロン(登録商標)樹脂製の円柱枠(直径20mm×高さ10mm)に流し込み、恒温乾燥機を用いて90℃にて120分間加温処理した後、次いで室温まで冷却し、10℃にて24時間保管した後、円柱枠より取り出し、10℃で保持した。取り出した混合物は、ゲル状であった。
【0040】
得られたゲルの物性をテキソグラフ(株式会社日本食品開発研究所)にて測定した。ゲルを測定用のステイに載せ、直径1.15cmの円柱型プランジャーを0.1mm/秒の速度にて動かしてゲルを圧縮し、ゲルの破断変形を測定した(測定回数 n=4)。破断荷重(Pa)および変形率(%)で物性を評価した。
【0041】
【表3】

【0042】
表3は、実施例1〜6および比較例1〜6の調製物の混合組成および加熱条件ならびにゲルの物性評価の結果を示す。表3に示されるように、大豆蛋白単独で加熱処理なし(比較例1)と比較すると、大豆蛋白とサイリウムシードガムとの混合物(比較例2)で破断荷重および変形率が向上したが、大豆蛋白とサイリウムシードガムとの混合物の加熱処理物(実施例1、3および5)では破断荷重および変形率がさらに向上した。大豆蛋白とサイリウムシードガムと乳酸カルシウムとの混合物(比較例3)は、優れた破断荷重および変形率であったが、大豆蛋白とサイリウムシードガムと乳酸カルシウムとの混合物の加熱処理物(実施例2、4および6)は、さらに優れた破断荷重および変形率であった。
【0043】
(実験例4:実施例および比較例の調製物を添加した調理麺うどんの物性評価)
実施例1、2、4および6ならびに比較例1〜4の調製物のいずれかを練り水(食塩2gおよび水40gを含む食塩水)へ投入し(調製物1.0g/42g練り水)、撹拌した後、3分間放置し、分散液を得た。調製物を投入しない練り水をコントロールとした。
【0044】
次いで、得られた分散液を、小麦粉80gおよび加工でん粉20gに添加し、8分間ミキシング(混練)を行い、60分間熟成し、生地を得た。生地を延ばし、9番角刃(2.7mm)を用いて22cm麺線を切り出し、400gの生麺を製造した。生麺を8分間茹で(茹で水にはpH調整剤0.05%を添加)、水洗および冷却し、調理麺うどんを得た。調理麺うどんを100gずつ盛り付け、10℃にて冷蔵保管した。
【0045】
得られた調理麺うどんの物性をテキソグラフ(株式会社日本食品開発研究所)にて測定した。冷蔵保管から取り出した調理麺うどんを5cm長さに切断し、測定用のステイに載せ、くさび型プランジャーを0.1mm/秒の速度にて動かしてうどんを圧縮し、うどんの破断変形を測定した(測定回数 n=4)。破断荷重(N/m2)、変形率(%)および圧縮仕事量(Nm/m2)で物性を評価した。
【0046】
【表4】

【0047】
表4は、麺の物性評価の結果を示す。表4に示されるように、実施例1、2、4および6の調製物のいずれかを添加した調理麺うどんでは、比較例1〜4の調製物のいずれかを添加した調理麺うどんと比較して、麺の物性において、コントロールからの向上効果が顕著であった。
【0048】
(実験例5:実施例および比較例の調製物を添加した調理麺うどんの食感評価)
実験例4で得られた調理麺うどんについて、食感評価を行った。冷蔵保管24時間後の調理麺うどんを、6名のパネラーに試食させ、もちもち感、弾力感、ねばり感に関して、五段階の評価基準で評価した。五段階評価は、もちもち感、弾力感、ねばり感のいずれにおいても点数が高いほど良好であることを表す。
【0049】
【表5】

【0050】
表5は、麺の食感評価の結果を示す。表5に示されるように、実施例1、2、4および6の調製物のいずれかを添加した調理麺うどんでは、比較例1〜4の調製物のいずれかを添加した調理麺うどんと比較して、もちもち感、弾力感およびねばり感のいずれにおいても、コントロールからの向上効果が顕著であった。
【0051】
(実験例6:実施例および比較例の調製物を添加した調味付け油揚げの物性評価比較)
実施例1、2、4および6ならびに比較例1〜4の調製物のいずれかを4.6%蛋白質含有豆乳(70℃加温)に投入し(調製物0.5g/100g豆乳)、均一に分散撹拌した。調製物を投入しない豆乳をコントロールとした。
【0052】
続いてにがりを投入し、軽く撹拌して、得られた豆乳混合物を型枠に注入して、ゲル化させた後脱水することにより圧搾成型した生地を縦4cm×横7cm×厚1cmの大きさに切断した。続いて切断した生地を130℃にて2分間、次いで170℃にて4分間油調し、冷却し、調味液漬けをし、調味付け油揚げを得た(油調により約2倍に膨化した:縦7cm×横12cm×厚さ2cm、20g)。引き続き殺菌および冷却を行い、10℃にて冷蔵保管した。
【0053】
得られた調味付け油揚げの物性をレオメーター(株式会社島津製作所 EZ−TEST)にて測定した。冷蔵保管中の調味付け油揚げを縦6cm×横3cmに切断して試料とした。引っ張り試験用アジャスターに試料を挟み込み、1mm/秒の速度にて試料を引っ張り、試料の破断時の最大試験力(N)および変位(mm)を測定した(測定回数 n=4)。最大試験力(N)が低いほど油揚げがやわらかいことを表し、変位(mm)が長いほど油揚げに伸展性があることを表す。
【0054】
【表6】

【0055】
表6は、調味付け油揚げの物性評価の結果を示す。表6に示されるように、実施例1、2、4および6の調製物のいずれかを添加した調味付け油揚げでは、比較例1〜4の調製物のいずれかを添加した味付け油揚げと比較して、やわらかさおよび伸展性のいずれにおいても、コントロールからの向上効果が顕著であった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の食品改質剤を用いて、食感および物性を改良した食品を製造することができる。本発明の食品改質剤は、例えば、穀粒、穀粉、および澱粉からなる群より選択される少なくとも1種を主成分として含む食品、あるいは動物性蛋白質または植物性蛋白質を主成分として含む食品に対して用いられる。本発明の食品改質剤によれば、特に大豆蛋白ではこれまで付与できなかった弾力性のある食感(例えば、もちもち感、ねばり感、弾力感)および伸展性を、食品に付与することができる。さらに、栄養面の強化が期待できる。本発明の食品改質剤は、調理麺、即席麺、茹麺、生麺などの麺類の品質改良に利用できる。特に調理麺などの低温下で流通する麺において、麺の破断を抑制し、そしてもちもちした食感を付与できる。本発明の食品改質剤はまた、大豆加工食品の品質改良に利用でき、特に油揚げ、調味付けした油揚げなどの生地の伸展性を改善して破れを抑制できる。本発明の食品改質剤はさらに、かまぼこ、ちくわなどの水産練り加工製品の食感の改良、ハンバーグ、ハム、ソーセージなどの畜肉加工製品の食感および物性の改良、ならびに上記成分を主成分として含む菓子類の食感および物性の改良に利用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆蛋白および多糖類を混合し、加熱して得られる、食品改質剤。
【請求項2】
大豆蛋白、多糖類および無機塩を混合し、加熱して得られる、食品改質剤。
【請求項3】
前記多糖類がサイリウムシードガムである、請求項1または2に記載の食品改質剤。
【請求項4】
前記無機塩がカルシウム塩である、請求項2または3に記載の食品改質剤。
【請求項5】
前記カルシウム塩が乳酸カルシウムである、請求項4に記載の食品改質剤。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の食品改質剤を含む、食品。

【公開番号】特開2013−57(P2013−57A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134621(P2011−134621)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(591021028)奥野製薬工業株式会社 (132)
【Fターム(参考)】