説明

食品材料被覆用シートの製造方法

【課題】過熱水蒸気加熱によって、中身の食品材料がジューシーさを保持した状態で仕上げることができる食品材料被覆用シートの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】食品材料に被せて過熱水蒸気により加熱調理して衣付き食品を作るための食品材料被覆用シートの製造方法であって、大豆蛋白質含有原料と水からなるペースト状物をシート状に成形した後、70℃以下の雰囲気下で低温乾燥することを特徴とする食品材料被覆用シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過熱水蒸気による加熱調理で唐揚げのような様々な衣付き食品を得ることができる食品材料被覆用シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子レンジで加熱するだけですぐに唐揚げ風の食品が得られるように加工された被覆食品材料が開発されている。例えば、熱凝固性ゲル化剤を含有した電子レンジ用調味料がある(特許文献1)。この調味料に肉や魚等の材料を添加して電子レンジで調理することにより、材料からの離水や肉汁(以下、ドリップという)の遊離を防止してこんがりとした外観の食品を得ることができる。また、近年、スチームオーブン等と呼ばれる過熱水蒸気で加熱するオーブンが注目されている。しかし、上記調味料に添加した肉や魚等の材料を過熱水蒸気で加熱調理すると、加熱中の肉からドリップが流れ出ると共に上記調味料が流れおちてしまうという問題が新たに発生した。
【0003】
また、油脂を含む可食材料シートで包んだ食品材料をオーブンや電子レンジなどの乾式加熱することで、油で揚げたものと同等の食感、風味、外観を有する食品を作ることができる方法がある(特許文献2)。しかし、前記乾式加熱では食品材料がジューシーに仕上がり難く、また、上記油脂を含む可食材料シートで包んだ食品材料を過熱水蒸気で調理を行っても、衣にボリュームがなく、食感も好ましくないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−332506号公報
【特許文献2】特開平7−99897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、過熱水蒸気で加熱調理することにより、中身の食品材料の有するジューシーさを保持した状態で仕上げることができる食品材料被覆用シートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、食品材料に被せて過熱水蒸気により加熱調理して衣付き食品を作るための食品材料被覆用シートの製造方法であって、大豆蛋白質含有原料と水からなるペースト状物をシート状に成形した後、70℃以下の雰囲気下で低温乾燥することを特徴とする食品材料被覆用シートの製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、色々な食品材料を過熱水蒸気で加熱調理するだけでさまざまな食品乃至は料理を作ることのできる食品材料被覆用シートを提供することができるので、食品乃至は料理の幅を広げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず、前記食品材料被覆用シートの製造方法について述べる。
当該食品材料被覆用シートは、大豆蛋白質含有原料と水とを用いて製造される。当該大豆蛋白質含有原料としては、大豆蛋白質を50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは80〜95質量%含有する原料であって、具体的には、脱脂大豆粉末、分離大豆蛋白粉末、濃縮大豆蛋白粉末、豆乳粉末等を例示することができる。
【0009】
次に、前記大豆蛋白質含有原料と水を撹拌混合して均一なペースト状の混合物を得る。前記ペースト状物における大豆蛋白質含有原料と水との混合比率は、大豆蛋白質含有量が86質量%の原料としたときに、大豆蛋白質含有原料100質量部に対して水300〜700質量部であること、即ち、前記混合物中における大豆蛋白質の含有量が10.0〜22.0質量%になるように大豆蛋白質含有原料の量と水の量を調製することが好ましい。当該比率で大豆蛋白質含有原料と水を混合することにより、該大豆タンパク質含有原料に十分な吸水が行われて均一なペースト状混合物が作成でき、シート状への成型が容易にできるという点から好ましい。
【0010】
なお、前記大豆蛋白質含有原料と水以外に、例えば、食塩、粉末醤油、胡椒やジンジャー、ガーリック、オニオン等の香辛料、アミノ酸、グルタミン酸ナトリウム等のうま味調味料、肉類や魚介類のエキス類等を必要に応じて添加してもよい。
【0011】
よって得られたペースト状の混合物を好ましくは0.1〜2.0mm、より好ましくは0.5〜1.0mmの厚さに延ばしてシート状に成形する。当該範囲のシート厚を有することにより得られるシートを食品材料に被覆する際に、当該シートが少しの衝撃等で破れたりすることがなく、喫食時のサクッとした歯切れのよい食感が得られ、シートと食品材料の一体感が得られ易くなる等の点から好ましい。
【0012】
当該シート状に成形する方法としては、一定の厚みをもつ型にペースト状の混合物を多めに充填し、厚みが均一になるように平らな板をスライドさせる方法等の方法を例示することができる。そして、上記方法等によって得られるシートの形状としては、例えば、矩形状、円形状、三角形状等の色々な形状であってよく、食品材料を被覆できる形状であれば、特に限定されるものではない。
【0013】
次に、前記シート状物からシートを作製するために、該シート状物を70℃以下の低温雰囲気下、好ましくは20〜70℃の雰囲気で乾燥する。この乾燥条件を70℃よりも低く設定しているのは、70℃よりも高温になると大豆蛋白質に熱による変性が起こり、シート状物からシートが得られなくなるという理由からである。乾燥温度が70℃よりも高くなってくると、急激な乾燥によりシートが不均一な乾燥状態になるだけでなく、大豆蛋白質の熱変性が起こって大豆蛋白質が凝集してしまいシート状物が得られなくなってしまう。
【0014】
前記乾燥方法としては、低温熱風乾燥、通風乾燥等の方法があるが、前述したように大豆蛋白質を熱変性させない温度での乾燥と、効率的な乾燥条件を考慮して実施者が適宜、決定すればよい。かくして本発明の食品材料被覆用シートを得ることができる。
【0015】
かくして得られた食品材料被覆用シートを食品材料に被覆する際の水分含量としては、好ましくは40〜70質量%、より好ましくは55〜65質量%に調製しておくのがよい。シートの水分含量を前記のように調製することで、当該シートの柔軟性が保持され、シートが手に付着することがなく取り扱い易いものになる。延いては、食品材料への被覆も容易にでき、また、過熱水蒸気による加熱によって形成される衣に程良いサクッ、サクッとした食感と程良い焼き色を味わうことができるという点で好ましい。
【0016】
なお、シートは、水分含量が好ましくは40〜70質量%の状態で食品材料を被覆すればよいのである。したがって、上記水分含量のシートを保存しておいてもよいが、保存時は低水分含量、例えば40質量%よりも低い水分含量にまで乾燥したシートとし、使用時に上記水分含量にまで復元して使用する方法を採用してもよい。
【0017】
上記方法により、過熱水蒸気加熱によって中身の食品材料がジューシーさを保持した状態で仕上げることができる、食品材料被覆用シートが得られる。
【0018】
かかる食品材料被覆用シートで被覆される食品材料の種類は、特に限定されるものではなく肉類、魚類、野菜類、きのこ類等の中の1種又は2種以上を適宜組み合わせてもよい。例えば、一口程度の大きさにカットした鶏肉を前記食品材料被覆用シートで被覆して、過熱水蒸気加熱で加熱して唐揚げ風にしたり、人参や大根、シイタケを千切りにし、薄く切った牛肉で包み、それを前記食品材料被覆用シートで被覆して、過熱水蒸気加熱で加熱調理したりして、色々な衣付き料理を作ることができる。
【0019】
かくして、前記食品材料被覆用シートで被覆され、過熱水蒸気で加熱調理することによって中身の食品材料がジューシーさを保持した状態で調理することができる、過熱水蒸気用の被覆食品材料を得ることができるのである。
前記過熱水蒸気で加熱調理する手段としては、シャープ株式会社製のウォーターオーブン、ヘルシオがある。また、加熱調理の条件としては、100〜250℃の過熱水蒸気で5〜30分間という条件を例示することができる。
【実施例1】
【0020】
蛋白質含量86質量%の大豆蛋白質含有原料 (原料名 フジプロMC、フジプロテインテクノロジー(株)社製)10gと水50gを泡立て器で均一に混合し、ペースト状物を得た。上記ペースト状物を目開き0.50mmストレーナーを通過させてダマのない、より均一な状態とした。次に、直径15cm、厚さ1.0mmの円形状の型に上記ペースト状混合物を多めに流し込み、平らな板をスライドさせて余剰のペーストをすり切って重さ14gのシート状物を得た。これを温度50℃、湿度30%RHの雰囲気下で30分間熱風乾燥させ、水分含量60質量%の食品材料被覆用シートを得た。
【0021】
次に、鶏肉25gの大きさにカットし、前記シートを当該鶏肉の周りに巻きつけ、継ぎ目を下にして並べ、過熱水蒸気で加熱調理して、ノンフライ鶏肉の唐揚げ風調理品を得た。上記過熱条件は、ウォーターオーブンで250℃、予熱なし、16分間で調理した。
【0022】
(比較例1)
実施例1と同様の方法で得た被覆鶏肉をオーブンで加熱調理して、ノンフライ鶏肉の唐揚げ風調理品を得た。加熱条件は、オーブンで250℃、予熱なし、16分間で調理した。
【0023】
(比較例2)
実施例1と同様の方法で得た被覆鶏肉をオーブンで加熱調理して、ノンフライ鶏肉の唐揚げ風調理品を得た。加熱条件は、オーブンで250℃、予熱あり、14分調理した。
【0024】
上記各方法で得られたノンフライ鶏肉の唐揚げ風調理品について、食品材料被覆用シート(衣)と中身の鶏肉の官能評価を行った。結果を表1に示す。また、評価基準を表2に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
表1に示すように、本発明の食品材料被覆用シート(衣)で被覆された鶏肉は、過熱水蒸気で加熱されたものが食品材料被覆用シート(衣)の食感、焼き色、中身の鶏肉の食感の全項目において、Aとの評価を得ている。
【実施例2】
【0028】
鶏肉と人参、アスパラガスを短冊状にカットし、当該鶏肉、人参、アスパラガスを適量ずつ束ねるように前記シートをその周りに巻きつけ、継ぎ目を下にして並べ、過熱水蒸気で加熱調理して、ノンフライ揚げ物を得た。前記過熱条件は、ウォーターオーブンで250℃、予熱なし、14分間で調理した。その結果、衣は好ましい焼き色とカリッとした食感を有しており、中身の鶏肉や野菜はジューシーな食感を有するシート巻を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の食品材料被覆用シートにより、過熱水蒸気を使った料理の幅を広げることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品材料に被せて過熱水蒸気により加熱調理して衣付き食品を作るための食品材料被覆用シートの製造方法であって、大豆蛋白質含有原料と水からなるペースト状物をシート状に成形した後、70℃以下の雰囲気下で低温乾燥することを特徴とする食品材料被覆用シートの製造方法。
【請求項2】
前記シート状の成型物の厚みが0.1〜2.0mmであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記シートの低温乾燥の温度が20〜70℃であることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
乾燥後のシートの水分含量が40〜70質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項の記載の方法。
【請求項5】
前記食品材料が肉類、魚介類、野菜類、きのこ類の中から選択された1種又は2種以上の大きさを整えるためにカットされたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項の記載の方法。

【公開番号】特開2011−254769(P2011−254769A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133150(P2010−133150)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000111487)ハウス食品株式会社 (262)
【Fターム(参考)】