説明

食品用ほぐれ剤

【課題】食品本来の風味や食味を損なうことなく、食品のほぐれ性を効果的に改良し、また、低コストでの食品のほぐれ性の改良が可能な食品用ほぐれ剤を提供すること、及び該食品用ほぐれ剤を用いて、ほぐれ性に優れ、味覚の良好な食品を製造する方法を提供すること。
【解決手段】加工澱粉を超音波処理し、5質量%水溶液における粘度が100mPa・s以下とした加工澱粉超音波処理物を含有する食品用ほぐれ剤からなる。本発明は、該ほぐれ剤を用いて、優れたほぐれ性と本来の風味や食味を保持した味覚の良好な食品の製造方法を提供する。本発明のほぐれ剤は、加工澱粉の超音波処理という手段によって調製することができることから、低コストで提供することが可能である。本発明のほぐれ剤を用いることにより、茹でや蒸煮或いは炊飯等によって食品中の澱粉をα化させて喫食する食品において、食品本来の風味や食味を損なうことなく、食品のほぐれ性を効果的に改良し、ほぐれ性に優れ、味覚の良好な食品を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茹でや蒸煮或いは炊飯等によって食品中の澱粉をα化させて喫食する麺類、米飯等の食品のほぐれ性を改良する食品用ほぐれ剤、及び該食品用ほぐれ剤を用いたほぐれの良好な食品の製造方法に関する。特に、加熱調理され、α化された麺類或いは炊飯米等の食品の製造の段階、又は流通、販売、喫食の段階でのほぐれ性を有効に改善し、しかも、食品本来の風味や食味を損なうことなく、更に、ほぐれ剤の調製に際して煩雑な工程を必要とすることなく、簡便、安価な方法で提供できる食品用ほぐれ剤を提供すること、及び、該食品用ほぐれ剤を用いて、良好なほぐれ性と高い味覚とを有するほぐれ性の良好な食品を製造する方法を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
うどん、そば、中華麺、スパゲッティ、マカロニ、はるさめ、ビーフン、フォーなどの麺類においては、製麺して得られた麺線を、茹でや蒸煮によって加熱して、澱粉をα化し、可食状態にする。一方、米飯類は、水に浸漬した生米を炊飯或いは蒸煮してα化し、喫食に供する。この麺線や米飯において、α化された澱粉は、糊状を呈し、粘着性の強い状態となる。更に、時間が経過すると、麺線や米飯の表面の水分が減少し、麺線や米飯の表面の粘着力がより強くなる。この加熱後の澱粉のα化による麺線や米飯の表面の粘着力の増加は、麺線や米飯どうしの結着を促進させ、ほぐれを悪くして喫食しにくいという不都合を生じさせる。また、インスタント化した食品においては、湯戻しに際しては、ほぐれが悪くなり、加熱ムラを生じるなどして、食味を低下させる等の問題が発生する。
【0003】
近年、スーパーやコンビニエンスストアー等を介した流通形態では、うどん、そば、中華麺、スパゲッティ、マカロニ、はるさめ、ビーフン、フォーなどの麺類が、加熱調理され、α化された麺類の形態で、流通、販売されている。米飯においても近年、米飯の製造は外食産業のチェーンストア化、無菌包装技術の進歩、冷凍食品の増加等により、工場での一括生産のような形態が多く見られるようになってきた。また、炊飯した米飯自体を、流通販売する形態も多く見られるようになり、おにぎり、焼きおにぎり、かやくご飯、寿司、ちらし寿司などの米飯についても麺類と同様に、コンビニエンスストアー等を介した流通形態が採られるようになった。このような麺類や米飯の製造、流通販売、及び喫食形態で特に問題となるのが、α化された麺線や米飯のほぐれ性の悪化からくる味覚の低下による商品価値の低下ということがある。
【0004】
例えば、麺類においては、加熱調理され、α化された麺類の流通、販売形態では、麺線の結着が、麺のほぐれを悪くし、商品価値を低下させることになる。また、α化した麺類を冷凍して流通する冷凍麺においては、喫食時にボイル解凍や流水解凍等のなんらかの方法で解凍して喫食することになるが、ほぐれ性が悪いと解凍時間が遅延され、業務用よりも弱い火力で解凍する家庭用冷凍麺でしばしば問題となっている。即席麺においては、ほぐれ性が悪いと復元が不均一になり、復元不良部分ができて即席性を大きく損なう。また、麺類のおいしさは麺類そのものの味や風味以外に、喫食時に麺類をすする行為からも得られる。喫食時に麺線が一本一本ほぐれていることにより、しなやかでつるみのある食感が感じやすくなる為おいしさを感じることができる。したがって、α化麺のほぐれ性の改善は、麺の喫食時の味覚の向上の点からも重要な課題となる。
【0005】
一方、米飯類においては、おにぎり、焼きおにぎり、かやくご飯、寿司、ちらし寿司などの米飯類は、米を水で磨いだ後、水に浸漬し加熱して、澱粉をα化し、可食状態に調製されるが、このα化された米飯は、粘着性の強い状態にある。この米飯を用いておにぎりなどを調製後、時間が経過すると、米粒の表面の水分が減少し、米粒の表面の粘着力がより強くなる。この加熱後の澱粉のα化による米粒の表面の粘着力の増加は、米粒どうしの結着を促進させ、おにぎりが喫食しにくい、べたつくという不都合を生じさせる。
【0006】
また、近年、米飯の製造は外食産業のチェーンストア化、無菌包装技術の進歩、冷凍食品の増加等により、工場での一括生産が多く見られるようになってきた。米飯製品を工場で大量製造する際には、炊き上がった米飯がほぐれやすく機械に付着しないことが求められている。更に、米飯については無菌包装の形態で提供が行われている。無菌包装米飯については、炊飯後の米飯を無菌殺菌して製造される一般的な無菌包装米飯に加え、炊飯と無菌包装を兼ねて製造される加圧加熱殺菌米飯(いわゆるレトルト米飯)がある。このレトルト米飯は、生米と水をレトルト処理することによって製造されるが、このようにして製造された米飯は、餅様の板状となり、ほとんどほぐれないことが問題となっている。
【0007】
以上のような理由から、従来、α化麺や米飯のような食品中の澱粉をα化した食品においては、そのほぐれ性の改善について、α化麺や米飯それぞれにおいて、ほぐれを改善するための各種の方法が提案されてきた。
【0008】
例えば、麺類においては、麺線同士が結着するのを防止し、麺線をほぐれやすくする従来の方法として、麺線表面をゼラチンでコーティングする方法(特開昭63−283547号公報)、油脂又は乳化油脂を麺線に付着させる方法(特開平3−247249号公報)、デキストリンを麺線表面に付着させる方法(特開平6−327427号公報)が開示されている。
【0009】
また、油脂組成物からなるほぐれ剤として、構成脂肪酸中のオレイン酸含量が65%以上の高オレイン酸型油脂に水添処理を施した油脂に、乳化剤を添加した麺用ほぐれ油脂組成物(特開2001−352926号公報)及び油脂、ソルビタン脂肪酸エステル、或いは、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含む麺類用油脂組成物(特開2006−6132号公報、特開2011−19412号公報)が開示されている。更に、コラーゲンペプチド(特開2000−342209号公報)や、アラビヤガム、ガティガムを含有させた麺類のほぐれ改良剤(特開2008−283888号公報、特開2009−136230号公報、特開2010−187655号公報)や、コラーゲン、大豆食物繊維及びゼラチンに、キサンタガム、グァーガム、カラギーナン及びローカストビーンガムを併用した麺用ほぐれ改良剤(特開2000−139386号公報)が開示されている。また、ポリアクリル酸ナトリウムを含有する麺用ほぐれ向上剤(特開2004−242570号公報)や、油脂、増粘多糖類と、水溶性ヘミセルロースを含む混合物を乳化したほぐれ改良剤(特開2003−265128号公報、特開2005−13135号公報)が開示されている。
【0010】
炭水化物を用いたほぐれ改良剤としては、例えば、大豆由来の水溶性多糖類とたんぱく質の酵素分解物を有効成分として含有するほぐれ剤(特開2001−238622号公報)が、生澱粉の分解物であるデキストリンを含有したほぐれ剤(特開2002−65191号公報)が開示されている。また、ポテトパルプを繊維質分解酵素やペクチン分解活性を持つ酵素で分解し、水抽出して乾燥した食品用ほぐれ剤(特開2006−51012号公報)が、ヒドロキシプロピルセルロース或いはヒドロキシプロピルセルロースと水溶性ヘミセルロースからなる麺ほぐれ改良剤(特開2006−311849号公報)が、タマリンド種子のようなガラクトキシログルカン又は低粘性ガラクトキシログルカンからなるほぐれ性改良剤(特開2006−333796号公報)が開示されている。更に、加工澱粉を酵素等で分解することからなるα化麺用ほぐれ剤(特開2009−11313号公報)が、イヌリンと環状デキストリンとを含むゆで麺のほぐれ向上剤(特開2011−83210号公報)が開示されている。
【0011】
また、米飯類においては、麺線同士が結着するのを防止し、麺線をほぐれやすくする従来の方法として、米飯製品を大量製造する際に、炊き上がった米飯をほぐれやすくして成型や計量を容易にしたり、機械に付着するのを防いだりといった機械適性の向上のために、澱粉質や糖質、乳化剤等を加えた炊飯用油や、油脂と水を乳化剤によって乳化させた乳化油脂、更には卵黄等の蛋白製剤などが添加される。該澱粉質や糖質としては、マルチトール、蔗糖、トレハロース、デキストリン、キサンタンガム、グアーガム、ローカストガム、タラガム、ペクチン、水溶性ヘミセルロースなどが用いられ、乳化剤等を加えた炊飯用油や、油脂と水を乳化剤によって乳化させた乳化油脂には、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、蔗糖脂肪酸エステルなどのような乳化剤が用いられる。
【0012】
澱粉質や糖質を添加して、米飯のほぐれ性を改善する例としては、デキストランを添加するもの(特開2005−328728号公報)、大豆多糖類に、トレハロース、マルチトール、蔗糖等の少糖類を添加するもの(特開2006−238758号公報)、澱粉分解酵素と、トレハロース、ペクチン等を添加するもの(特開2001−275589号公報、特開2003−52319号公報)、難消化デキストリン及びペクチンを添加するもの(特開平9−75022号公報)、水溶性ヘミセルロースを添加するもの(特開平6−121647号公報)、加工澱粉を含有するもの(特開2002−65184号公報)、及び、アミラーゼと増粘多糖類若しくは寒天を配合したもの(特開2007−228834号公報)などが開示されている。
【0013】
また、油脂に乳化剤を加えた乳化油脂を米飯のほぐれ性改善に用いる例としては、例えば、乳化剤として、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを用いるもの(特開2004−65216号公報)、ジアセチル酒石酸、コハク酸、クエン酸などの有機酸モノグリセライドを用いるもの(特開2004−49065号公報)、プロピレングリコール脂肪酸エステル、トリグリセリン脂肪酸エステル、テトラグリセリン脂肪酸エステルを用いるもの(特開2009−82025号公報)などが開示されている。更に、蛋白製剤などを米飯のほぐれ性改善に用いる例としては、卵黄又は全卵のホスホリパーゼ処理物を脂質中に分散させた米飯のバラケ性改善剤(特開2004−41046号公報、特開2005−295957号公報)等が開示されている。その他、アルギン酸類の分解物を米飯のほぐれ性の改良剤として用いるもの(特開2006−296259号公報)が開示されている。
【0014】
以上は、炊飯後の米飯を無菌密封して製造される一般的な無菌包装米飯用の米飯改良剤に関する従来技術であるが、炊飯と無菌包装を兼ねて製造される加圧加熱殺菌米飯(いわゆるレトルト米飯)用の米飯改良剤も検討されている。レトルト米飯は、生米と水をレトルト処理することによって製造されるが、このようにして製造された米飯は、餅様の板状となり、ほとんどほぐれず、通常の米飯とは程遠いものとなる。
【0015】
レトルト米飯のほぐれ性を改善するための技術として、例えば、加熱時間を延長するレトルト米飯の製造方法(特開2006−158233号公報)、原料米を一部糊化した後冷却し、レトルト殺菌する方法(特開平6−303926号公報)等が開示されているが、いずれも工程が複雑で、既存の設備をそのまま適用出来ない場合がある。また、ヤーコン又はキクイモの塊根部及び抽出物を混合する方法(特開2006−67824号公報)、マンナンを添加する方法(特開平9−84535号公報)等も開示されているが、それぞれ米飯の呈味性及び食感に悪影響を及ぼすことは避けられない。
【0016】
このように各種のほぐれ剤が開示されているが、これらのほぐれ剤は、そのまま食品にふりかけるものや、水に懸濁後麺表面にコーティングする使用法が例示されている。しかしながら、これらの従来のほぐれ剤は、油脂組成物のように、食品自体の本来の味覚に影響を及ぼすものや、大豆由来の水溶性多糖類とたんぱく質の酵素分解物のように、乾燥により色が褐変したり、アレルゲンを含有しているため、そのことが問題となるような場合がある。更に、食品の風味や食味を劣化させるという問題を抱えている。また、ほぐれ剤の成分として生澱粉を分解したデキストリンを用いたものでは、十分なほぐれ性を示さず、満足のいく品質とはいえないものもある。加工澱粉を酵素等で分解することからなるα化麺用ほぐれ剤は、風味の点から非常に良いものであるが、その製造において、添加した酵素等の除去が必要であり、煩雑な工程を必要とする為にコスト面に問題がある。したがって、従来のほぐれ剤は、簡便に製造出来、コスト面で従来のほぐれ剤と同等以上のメリットがあり、かつα化麺本来の風味や食味を損なうことなく、α化麺のほぐれ性を効果的に改良するという観点からは、必ずしも満足のいくものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開昭63−283547号公報。
【特許文献2】特開平3−247249号公報。
【特許文献3】特開平6−121647号公報。
【特許文献4】特開平6−303926号公報。
【特許文献5】特開平6−327427号公報。
【特許文献6】特開平9−75022号公報。
【特許文献7】特開平9−84535号公報。
【特許文献8】特開2000−139386号公報。
【特許文献9】特開2000−342209号公報。
【特許文献10】特開2001−238622号公報。
【特許文献11】特開2001−275589号公報。
【特許文献12】特開2001−352926号公報。
【特許文献13】特開2002−65184号公報。
【特許文献14】特開2002−65191号公報。
【特許文献15】特開2003−52319号公報。
【特許文献16】特開2003−265128号公報。
【特許文献17】特開2004−41046号公報。
【特許文献18】特開2004−49065号公報。
【特許文献19】特開2004−65216号公報。
【特許文献20】特開2004−242570号公報。
【特許文献21】特開2005−13135号公報。
【特許文献22】特開2005−295957号公報。
【特許文献23】特開2005−328728号公報。
【特許文献24】特開2006−6132号公報。
【特許文献25】特開2006−51012号公報。
【特許文献26】特開2006−67824号公報。
【特許文献27】特開2006−158233号公報。
【特許文献28】特開2006−238758号公報。
【特許文献29】特開2006−296259号公報。
【特許文献30】特開2006−311849号公報。
【特許文献31】特開2006−333796号公報。
【特許文献32】特開2007−228834号公報。
【特許文献33】特開2008−283888号公報。
【特許文献34】特開2009−11313号公報。
【特許文献35】特開2009−82025号公報。
【特許文献36】特開2009−136230号公報。
【特許文献37】特開2010−187655号公報。
【特許文献38】特開2011−19412号公報。
【特許文献39】特開2011−83210号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の課題は、茹でや蒸煮或いは炊飯等によって食品中の澱粉をα化させて喫食する食品のほぐれ性を改良する食品用ほぐれ剤、及び該食品用ほぐれ剤を用いたほぐれの良好な食品の製造方法を提供すること、特に、食品本来の風味や食味を損なうことなく、食品のほぐれ性を効果的に改良し、また、低コストでの食品のほぐれ性の改良が可能な食品用ほぐれ剤を提供すること、及び該食品用ほぐれ剤を用いて、ほぐれ性に優れ、味覚の良好な食品を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は、上記の課題を解決するために、食品本来の風味や食味を損なうことなく、食品のほぐれ性を効果的に改良し、また、実用上の要求から低コストでの食品のほぐれ性の改良が可能な食品用ほぐれ剤を提供すべく鋭意検討する中で、加工澱粉を超音波処理により、所定粘度以下にその粘度を低減化した加工澱粉超音波処理物をほぐれ剤として用いることにより、該ほぐれ剤を表面にコーティングした食品が、食品本来の風味や食味を損なうことなく、食品のほぐれ性が効果的に改良されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
すなわち、本発明は、加工澱粉を超音波処理し、5質量%水溶液における粘度が100mPa・s以下とした加工澱粉超音波処理物を含有することを特徴とする食品用ほぐれ剤、及び、該ほぐれ剤を用いた優れたほぐれ性と本来の風味や食味を保持した味覚の良好な食品の製造方法からなる。本発明のほぐれ剤は、加工澱粉の超音波処理という手段によって調製することができることから、低コストで提供することが可能であり、煩雑な処理を要求された従来のほぐれ剤提供の不具合を改良することが可能となった。
【0021】
本発明の食品用ほぐれ剤において、含有される加工澱粉超音波処理物は、加工澱粉を超音波処理し、5質量%水溶液における粘度が100mPa・s以下とすることにより調製されるが、通常、その粘度は、5〜100mPa・sの範囲に調整されるのが好ましい。ここで、本発明において規定する粘度は、加工澱粉の分解度の度合を表示し、該粘度の表示において、「5質量%水溶液の粘度」は、「固形分換算で10gの該当試料と添加する水の合計量で200gにしたものを、内容量200mlのビーカーに秤取し、試料が冷水可溶の場合はそのまま溶解し、熱水可溶の場合は90℃まで昇温後冷却し、蒸発水分補正後、B型回転粘度計によって30℃の粘度を測定した値」として定義されるものである。
【0022】
本発明に用いられる加工澱粉としては、タピオカ澱粉及び/又はワキシ種澱粉を原料澱粉として加工して得られる加工澱粉が特に好ましく、該加工澱粉としては、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化澱粉、及びリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉のうちの一種類以上を用いることが特に好ましい。本発明の食品用ほぐれ剤において、加工澱粉超音波処理物の含量は、固形分換算で0.1%〜100質量%であることが好ましい。
【0023】
本発明は、本発明の食品用ほぐれ剤を食品の表面に塗布するか、或いは本発明の食品用ほぐれ剤を含有する溶液に食品を浸漬するかして、該食品用ほぐれ剤を食品の表面にコーティングすることにより、ほぐれ性の良好な食品を製造する方法を包含する。かかるほぐれ剤をコーティングし、そのほぐれ性を改良する食品としては、α化麺又は米飯のような食品を挙げることができる。本発明により、ほぐれ剤をコーティングし、ほぐれ性の良好な食品を製造するには、食品への加工澱粉超音波処理物の添加量が、食品の重量に対して、α化麺の場合は、固形物換算量で0.05〜3.0質量%になるように、又は、米飯の場合は、固形物換算量で0.05〜3.0質量%になるように、添加することが好ましい。
【0024】
すなわち具体的には本発明は、(1)加工澱粉を超音波処理し、5質量%水溶液における粘度が100mPa・s以下とした加工澱粉超音波処理物を含有することを特徴とする食品用ほぐれ剤や、(2)加工澱粉が、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化澱粉、及びリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉からなる群から選択される一種類以上であることを特徴とする前記(1)に記載の食品用ほぐれ剤や、(3)加工澱粉の原料澱粉がタピオカ澱粉及び/又はワキシスターチであることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の食品用ほぐれ剤からなる。
【0025】
また、本発明は、(4)加工澱粉超音波処理物の含量が、固形分換算で0.1%〜100質量%であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載の食品用ほぐれ剤や、(5)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の食品用ほぐれ剤を、食品の表面に塗布するか、或いは、上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の食品用ほぐれ剤を含有する溶液に食品を浸漬するかして、食品の表面に食品用ほぐれ剤をコーティングすることを特徴とするほぐれ性の良好な食品の製造方法や、(6)食品が、α化麺又は米飯であることを特徴とする上記(5)記載のほぐれ性の良好な食品の製造方法や、(7)食品への加工澱粉超音波処理物の添加量が、食品の重量に対して、α化麺の場合は、固形物換算量で0.05〜3.0質量%になるように、又は、米飯の場合は、固形物換算量で0.05〜3.0質量%になるように、添加することを特徴とする上記(6)記載のほぐれ性の良好な食品の製造方法からなる。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、茹でや蒸煮或いは炊飯等によって食品中の澱粉をα化させて喫食する麺類や、米飯等の食品のほぐれ性を改良する食品用ほぐれ剤、及び該食品用ほぐれ剤を用いたほぐれの良好な食品の製造方法を提供することにより、α化された麺類或いは炊飯米等の食品の製造の段階、又は流通、販売、喫食の段階でのほぐれ性を有効に改善し、食品本来の風味や食味を損なうことなく、良好なほぐれ性と高い味覚とを有するほぐれ性の良好な食品を提供することができる。また、本発明のほぐれ剤は、ほぐれ剤の調製に際して煩雑な工程を必要とすることなく、簡便、安価な方法で提供できることから、本発明は、実用性に富んだ食品用ほぐれ剤を提供することができる。
【0027】
すなわち、本発明により、茹、蒸煮で或いは炊飯等によってα化した麺類や、米飯等のα化食品のほぐれ性を効果的に改良することにより、ほぐれの良好なα化食品を製造し、該ほぐれ性の改善により、喫食時の味覚に優れたα化食品を提供することができることのみならず、該ほぐれ剤をインスタント食品の場合に適用して、湯戻しのような調理における復元性を改善して、商品価値の高いα化食品を提供することができる。特に、本発明の加工澱粉超音波処理物からなるほぐれ剤は、加工澱粉超音波処理物の特性から、α化食品本来の風味や食味を損なうことなく食品にほぐれ性を付与することができ、また、本発明の加工澱粉超音波処理物からなるほぐれ剤は、α化食品のほぐれ性を効果的に改良することができることから、低コストでのα化食品のほぐれ性の改善が可能であり、コストパフォーマンスの観点からも優れたα化食品のほぐれ性を提供することができる。
【0028】
また、本発明の食品用ほぐれ剤を用いて、例えば、α化冷凍麺を製造することにより、冷凍麺の喫食時の解凍を著しく促進することができ、例えば、家庭用の火力が弱い解凍系でも短時間で十分な解凍ができ、より一層手軽になった冷凍麺を供給することができる。更に、米飯においては同様に、ほぐれ性の改善により喫食事の味覚や見栄えを向上させ商品価値の高い食品を提供することが出来る。無菌包装米飯及びレトルト米飯の製造にも適用でき、特に、従来、その製造が困難であった、生米を直接加圧加熱するレトルト米飯を容易に製造することが可能となる。このようにして得られる長期保存可能な無菌包装米飯やレトルト米飯は、レンジや湯煎等で再加熱して喫食でき、また、温水、調味液、スープ等を加えてほぐすことで手軽にお茶漬け、雑炊等への加工が可能であり、非常食としても有用である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、加工澱粉を超音波処理し、5質量%水溶液における粘度が100mPa・s以下とした加工澱粉超音波処理物を含有することを特徴とする食品用ほぐれ剤、及び、該ほぐれ剤を用いた優れたほぐれ性と本来の風味や食味を保持した味覚の良好な食品の製造方法からなる。
【0030】
(原料澱粉)
本発明において、用いる加工澱粉超音波処理物を調製するための加工澱粉の原料澱粉としては、自然界に見出される天然澱粉、或いは、交雑育種、転座、逆位、形質転換、またはそれらの変形を含むあらゆる他の遺伝子工学又は染色体工学の手法を含む標準的育種技術により得られた植物に由来する澱粉、或いは、人工的突然変異、及び既知の標準的な突然変異育種方法により生産することが可能な植物により得られた澱粉も、本発明に使用する原料澱粉に適している。澱粉への代表的な供給源は、穀類、塊茎、根、豆果及び果物である。天然源の具体例として、トウモロコシ、エンドウ、ジャガイモ、サツマイモ、バナナ、オオムギ、コムギ、米、サゴ、アマランス、タピオカ、カンナ、モロコシ、及びそれらのワキシ種又は高アミロース品種が挙げられるが、特に好ましい原料澱粉としては、タピオカ澱粉及びワキシ種澱粉を挙げることができる。
【0031】
(加工澱粉超音波処理物)
本発明で使用する加工澱粉超音波処理物とは、加工澱粉を水に懸濁後、加熱して糊化後、超音波を糊液に照射して、粘度を低下させたもの及びこれを水素添加した還元物を指称する。形態的には液状でも、要すれば噴霧乾燥、凍結乾燥、或いはドラム乾燥した粉末状であってもよい。更に、溶解性を向上させるために造粒などの物理的処理等によって溶解しやすい形態に加工されたものでもよい。
【0032】
(加工澱粉超音波処理物の調製)
本発明で用いられる加工澱粉超音波処理物を製造するために用いられる加工澱粉としては、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、リン酸架橋澱粉等のいずれの加工澱粉でも良いが、特に好ましくは、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化澱粉、及びリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉のうちの一種類又は二種類以上を含有するものを挙げることができる。
【0033】
(加工澱粉超音波処理物の粘度)
本発明における食品用ほぐれ剤には、加工澱粉超音波処理物の粘度が、5質量%水溶液において100mPa・s以下の範囲に属する加工澱粉超音波処理物を使用する。粘度がこの範囲にない加工澱粉超音波処理物では本発明の効果が十分に発揮し得ない。すなわち、粘度が5質量%水溶液において100mPa・s以上の加工澱粉超音波処理物を用いた場合には、α化された食品の表面にコーティングされても、加工澱粉超音波処理物の粘度が高い為に逆に結着力を増し、ほぐれ効果とは逆の効果を示す傾向となる。
【0034】
(粘度の測定)
本発明において、加工澱粉の分解度の度合として用いる粘度は、固形分換算で10gの該当試料と添加する水の合計量で200gにしたものを、内容量200mlのビーカーに秤取し、試料が冷水可溶の場合はそのまま溶解し、熱水可溶の場合は90℃まで昇温後冷却し、蒸発水分補正後、B型回転粘度計によって30℃の粘度を測定した値として表示される。
【0035】
(α化麺)
本発明でいうα化麺とは、茹で或いは蒸煮処理された麺類を指称し、具体的には、うどん、そば、中華麺、スパゲッティ、マカロニ、はるさめ、ビーフン、フォーなどの麺類を茹で或いは蒸煮によってα化処理されたものを意味し、常温、チルド、冷凍、或いは即席麺の状態で流通し、何も手を加えないか、水さばきのみをするか、解凍するか或いは湯もどしなどの再加熱後喫食されるものをいう。
【0036】
(米飯)
本発明において、米飯に使用される米は粳米が望ましいが、粳米の一部、若しくは全部を糯米に置き換えて、強米としても良い。また、稗、粟、麦、大麦、胡麻といった米飯の栄養強化を主な目的として使用されている各種雑穀類を適宜加えても差し支えない。
【0037】
本発明でいう米飯には、味付けをしない白飯、塩やふりかけ等を用いて塩味をつけた塩飯、加水量を増加した白粥、梅、シャケ、玉子等を加えた各種お粥、酢、砂糖、みりん、出汁等が添加されたすし飯等に加え、出汁、醤油、酒、みりん、酢、香料等の各種調味液、塩、砂糖、コショウ等の各種粉末調味料や小豆やササゲ豆といった豆類、野菜、山菜、魚介類、玉子、肉類、加工肉類など各種具材を適宜、炊飯前、もしくは炊飯後に混ぜた炊き込みご飯や混ぜご飯、ピラフ、チャーハン、リゾット類、赤飯や各種おこわ類、更には炊飯後の白飯に前述の各種調味液、各種粉末調味料、各種具材を適宜加え、加熱調理した調理米飯、お茶漬け、雑炊等が含まれる。これらの米飯類の形態としては、給食、弁当、無菌包装パック、レトルトパック、缶詰等が例示されるが、これらに限定されない。この際、各種ふりかけ、お茶漬けの素、雑炊の素等を予め混合するか別添として添えることもできる。
【0038】
また、各種の栄養強化剤や市販の米飯改良剤を併用することもできる。例えば、食物繊維を増強する目的で、難消化性デキストリンやポリデキストロース等を炊飯前、もしくは炊飯後に加えてもよい。また、マンナンライス等のこんにゃく米や、スターライス等の人造米、アルファー化米等に用いても差し支えない。このようにして得られる米飯類は常温、冷蔵及び冷凍のいずれの形態でも保存可能であり、喫食時には必要に応じてレンジアップ等の再加熱を行うことも可能である。
【0039】
(ほぐれ剤調製品)
本発明のほぐれ剤は、5質量%水溶液における粘度が100mPa・s以下の加工澱粉超音波処理物を単独又はこれに他の成分を併用して調製することができる。たとえば、本発明の加工澱粉超音波処理物に、更に、大豆多糖類、デキストリン、デキストラン、サイクロデキストリン、高度分岐環状デキストリン、イソマルトオリゴ糖、卵白粉末、卵黄粉末、全卵粉末、カゼイン、カゼインナトリウム、乳蛋白、コラーゲン、ゼラチン、血漿蛋白、小麦蛋白、大豆蛋白、エンドウ豆蛋白、キサンタンガム、グァーガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、グルコマンナン、カードラン、アラビアガム、カラヤガム、サイリウムシードガム、ジェランガム、タラガム、プルラン、ペクチン、フコイダン、アガロペクチン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水溶性大豆多糖類、大豆食物繊維、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、レシチン、ポリアクリル酸ナトリウム、乳化油脂、油脂、上記以外の乳化剤、及びそれらの酵素分解などの処理によって派生して得られた物質等の中から少なくとも1種以上を適量併用してもよい。また、本発明のほぐれ剤は、造粒した形態で調製することができる。かかる造粒の際には、加工澱粉超音波処理物を単品で造粒しただけでなく、該物質を他の物質と混合後造粒してもよい。
【0040】
(ほぐれ性α化麺の製造)
本発明において、本発明のほぐれ剤を適用するα化麺の製造は、従来のα化麺の製造法に従って行うことができる。すなわち、小麦粉又はソバ粉、及び必要に応じて澱粉類を主原料として、水、食塩、かんすい等の副原料、及び必要に応じて重合リン酸塩、色素、卵粉、カゼイン、天然ガム、有機酸などのように通常用いられる添加物を使用して製麺した麺類を、沸騰浴中で茹でてα化、或いは、蒸煮によってα化、或いはその両方を用いてα化し、製造することができる。
【0041】
ほぐれ剤は、該α化した麺類の表面に塗布するか、或いは、α化麺用ほぐれ剤を含有する溶液に、α化麺を浸漬することにより、麺の表面にコーティングして、添加することができる。この時、麺類の最終形態によっては、麺類を沸騰浴中で茹でてα化し、或いは、蒸煮によってα化した後の冷却中、或いは、冷却後に加工澱粉超音波処理物を添加してもよい。
【0042】
α化した麺類をそのまま包装してチルド流通或いは、常温流通される形態において、又は、α化した麺類を冷凍して流通させる形態においては、麺類を茹で或いは蒸煮によってα化した後水洗いし、水切りした麺に加工澱粉超音波処理物の水溶液を均一に噴霧する方法によって、或いは、加工澱粉超音波処理物の水溶液に麺を浸漬させて吸着させる方法によって、又は、冷水に溶解する粉末状の加工澱粉超音波処理物を、水切りした麺にふりかける方法によって、ほぐれ剤をα化麺に適用することができる。更に、蒸煮殺菌前に有機酸処理されるロングライフ麺には、この有機酸溶液に溶解して添加する方法も実施することができる。
【0043】
また、α化後熱風乾燥或いは油フライ乾燥して流通する即席麺においては、蒸煮或いは茹で或いはその併用によってα化された直後に、加工澱粉超音波処理物を含有したほぐれ剤を麺線に均一に噴霧する方法、加工澱粉超音波処理物を含有したほぐれ剤に浸漬させて表面にコーティングする方法によって、ほぐれ剤を麺に適用することができる。
【0044】
加工澱粉超音波処理物をα化麺に添加する量としては、麺に使用される原材料、麺線の太さや形状、或いは貯蔵や流通期間の長短などによって、一概には言えないが、一般にはα化した麺重量に対して、加工澱粉超音波処理物の固形分換算量が0.05から3.0質量%程度の範囲になる様に添加する事が望ましい。固形分換算量が0.05質量%未満では本発明の効果が乏しくなる傾向を示し、3.0質量%を超えて添加しても麺線のほぐれ効果に差は見られずコストパフォーマンスに劣る。
【0045】
このようにして製造されたα化麺は、常温やチルド・冷凍という従来と全く変わらない形態を取って流通させることができ、保存中或いは流通段階での麺線の付着が改善され、湯もどしする場合にも麺線のほぐれが容易であるα化麺が得られる。
【0046】
以下に、実施例、参考例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。なお、以下の実施例、参考例に於ける部は、質量部を表す。
【実施例】
【0047】
(澱粉及び加工澱粉の超音波処理物の調製)
(1)ワキシコーン澱粉100部に対してオキシ塩化リン0.1部を添加し、常法に従って反応させた。得られた試料にプロピレンオキサイド10部を加え、同様に常法に従って反応させた後、水洗、脱水、乾燥して比較試料1(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシコーン澱粉)を得た。
(2)比較試料1の5質量%濃度スラリーを加熱して糊化後、超音波分散機((株)ギンセン GSD600HAT)に供し、流速0.5L/minで1回処理して超音波処理液を得た。これをドラムドライヤーにて粉末化し、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシコーン澱粉の超音波処理物を得た。5質量%粘度は633mPa・sであり、これを比較試料2とした。
【0048】
(3)比較試料1の5質量%濃度スラリーを加熱して糊化後、超音波分散機に供し、流速0.5L/minで2回処理して超音波処理液を得た。これをドラムドライヤーにて粉末化し、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシコーン澱粉の超音波処理物を得た。5質量%粘度は298mPa・sであり、これを比較試料3とした。
(4)比較試料1の5質量%濃度スラリーを加熱して糊化後、超音波分散機に供し、流速0.5L/minで4回処理して超音波処理液を得た。これをドラムドライヤーにて粉末化し、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシコーン澱粉の超音波処理物を得た。5質量%粘度は38mPa・sであり、これを試料1とした。
【0049】
(5)比較試料1の5質量%濃度スラリーを加熱して糊化後、超音波分散機に供し、流速0.5L/minで15回処理して超音波処理液を得た。これをドラムドライヤーにて粉末化し、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシコーン澱粉の超音波処理物を得た。5質量%粘度は8mPa・sであり、これを試料2とした。
(6)比較試料1の5質量%濃度スラリーを加熱して糊化後、超音波分散機に供し、流速0.5L/minで30回処理して超音波処理液を得た。これをドラムドライヤーにて粉末化し、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシコーン澱粉の超音波処理物を得た。5質量%粘度は7mPa・sであり、これを試料3とした。
【0050】
(7)タピオカ澱粉100部に対してオキシ塩化リン0.1部を添加し、常法に従って反応させた。得られた試料にプロピレンオキサイド10部を加え、同様に常法に従って反応させた後、水洗、脱水、乾燥して比較試料4(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉)を得た。
(8)比較試料4の5質量%濃度スラリーを加熱して糊化後、超音波分散機に供し、流速0.5L/minで2回処理して超音波処理液を得た。これをドラムドライヤーにて粉末化し、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉の超音波処理物を得た。5質量%粘度は118mPa・sであり、これを比較試料5とした。
【0051】
(9)比較試料4の5質量%濃度スラリーを加熱して糊化後、超音波分散機に供し、流速0.5L/minで4回処理して超音波処理液を得た。これをドラムドライヤーにて粉末化し、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉の超音波処理物を得た。5質量%粘度は27mPa・sであり、これを試料4とした。
(10)タピオカ澱粉5質量%濃度スラリーを加熱して糊化後、超音波分散機に供し、流速0.5L/minで1回処理して超音波処理液を得た。これをドラムドライヤーにて粉末化し、タピオカ澱粉の超音波処理物を得た。5質量%粘度は、376mPa・sであり、これを比較試料6とした。
【0052】
(11)タピオカ澱粉5質量%濃度スラリーを加熱して糊化後、超音波分散機に供し、流速0.5L/minで2回処理して超音波処理液を得た。これをドラムドライヤーにて粉末化し、タピオカ澱粉の超音波処理物を得た。5質量%粘度は、114mPa・sであり、これを比較試料7とした。
(12)タピオカ澱粉5質量%濃度スラリーを加熱して糊化後、超音波分散機に供し、流速0.5L/minで4回処理して超音波処理液を得た。これをドラムドライヤーにて粉末化し、タピオカ澱粉の超音波処理物を得た。5質量%粘度は、34mPa・sであり、これを比較試料8とした。
【0053】
(13)タピオカ澱粉100部に対してプロピレンオキシドを5部添加し、常法に従って反応させ、水洗、脱水、乾燥して比較試料9(ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉)を得た。
(14)比較試料9の5質量%濃度スラリーを加熱して糊化後、超音波分散機に供し、流速0.5L/minで4回処理して超音波処理液を得た。これをドラムドライヤーにて粉末化し、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉の超音波処理物を得た。5質量%粘度は35mPa・sであり、これを試料5とした。
【0054】
(15)比較試料9の5質量%濃度スラリーを加熱して糊化後、超音波分散機に供し、流速0.5L/minで15回処理して超音波処理液を得た。これをドラムドライヤーにて粉末化し、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉の超音波処理物を得た。5質量%粘度は22mPa・sであり、これを試料6とした。
(16)ワキシコーン澱粉100部に対して無水オクテニルコハク酸を3部添加し、常法に従って反応させた後、水洗、脱水、乾燥して比較試料10(オクテニルコハク酸ワキシコーン澱粉ナトリウム)を得た。
【0055】
(17)比較試料10の5質量%濃度スラリーを加熱して糊化後、超音波分散機に供し、流速0.5L/minで1回処理して超音波処理液を得た。これをドラムドライヤーにて粉末化し、オクテニルコハク酸ワキシコーン澱粉ナトリウムの超音波処理物を得た。5質量%粘度は779mPa・sであり、これを比較試料11とした。
【0056】
(澱粉及び加工澱粉の酵素処理物の調製)
(1)ワキシコーンスターチ澱粉固形物100部に対して、大和化成株式会社製のαアミラーゼ(製品名:クライスターゼKM)0.15部を常法によって作用させ、ワキシコーンスターチ澱粉の酵素処理物を得た。5質量%粘度は、4mPa・sであり、これを比較試料12とした。
(2)比較試料1の固形物100部に対して、大和化成株式会社製のαアミラーゼ
(製品名:クライスターゼKM)0.15部を常法によって作用させ、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシコーンスターチの酵素処理物を得た。5質量%粘度は4mPa・sであり、これを比較試料13とした。
【0057】
(チルド麺でのほぐれ評価方法)
ほぐれの評価には、市販のチルド麺(ゆでうどん)を用いた。チルド麺200gを熱湯で3分間茹で、冷水にて冷却して茹で麺とした。表1に示すほぐれ液を茹で麺重量100部に対して3部噴霧したものをポリエチレン袋に200g量りとり、密封した状態で冷蔵庫にて1日保存した後、ほぐれ効果を評価した。すなわち、箸でほぐした時のほぐれ易さを10点満点て評価した。
【0058】
(チルド麺での評価結果)
ほぐれ液配合及びほぐれ評価の結果を表1に示す。なお、表中、ソヤファイブは、不二製油株式会社製の水溶性大豆多糖類を示す。加工澱粉の超音波処理物は、生澱粉の分解物や加工澱粉の酵素処理物よりもほぐれ効果の評価が高く、特にその中でも試料2及び3のほぐれ効果の評価が高かった。
【0059】
【表1】

【0060】
(ノンフライ麺でのほぐれ評価方法)
ほぐれの評価には、小麦粉80部、松谷桜2(松谷化学工業製アセチル化澱粉)20部、食塩1部及び水38部をミキサーで混練し、複合・圧延して麺帯を1.00mmにした後、切り刃♯10角で切り出し蒸煮した。この蒸煮した後の麺に、表2に示すほぐれ液を、蒸煮した麺に対して30%添加混合して枠形成し、熱風乾燥してノンフライ麺を試作した。このノンフライ麺をカップに移して熱湯で4分間湯戻しして評価を行った。評価はチルド麺の評価と同様に行った。
【0061】
(ノンフライ麺での評価結果)
ほぐれ液配合及びほぐれ評価の結果を表2に示す。なお、表中、ソヤファイブは、不二製油株式会社製の水溶性大豆多糖類を示す。加工澱粉の超音波処理物は、生澱粉の分解物や加工澱粉の酵素処理物よりもほぐれ効果の評価が高く、特にその中でも試料2及び3でほぐれ効果の評価が高かった。
【0062】
【表2】

【0063】
(米飯での評価方法)
市販の無洗米(きらら397)2合(300g)を手早く洗米し、十分量の水で30分浸漬した。得られた米の水分をザルで切り、ほぐれ剤を1.5g添加混合して加水し、総重量を810gとして家庭用の電気炊飯器で自動炊飯を行った。得られた白飯は釜から取り出し、しゃもじで全体をほぐしつつ均質になるようにかき混ぜた。水分が飛ばないようにラップをし、常温で冷ましてから、米飯の評価を行った。評価は手でほぐした時のほぐれ易さを10点満点で評価した。
【0064】
(米飯での評価結果)
ほぐれ評価の結果を表3に示す。なお、表中、SM700は、市販の米飯改良剤である三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の大豆食物繊維を示す。加工澱粉の超音波処理物は、生澱粉の分解物や加工澱粉の酵素処理物よりもほぐれ効果の評価が高く、特にその中でも試料2及び3でほぐれ効果の評価が高かった。
【0065】
【表3】

【0066】
(レトルト米飯での評価方法)
市販の米を手早く洗米し、生米に対して1.4倍重の水を加え、ほぐれ剤を対生米5%又は10%添加し、パウチに封入した後、120℃30分の条件でレトルト処理を行った。得られたレトルト製品をパウチから出し、かぶる程度のお湯をかけてお湯漬けごはんとし、ほぐれ性を評価した。評価は箸でほぐした時のほぐれ易さを10点満点で評価した。
【0067】
(レトルト米飯での評価結果)
ほぐれ評価の結果を表4に示す。本発明の加工澱粉の超音波処理物は、ほぐれ効果の評価が高かった。
【0068】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明により、茹でや蒸煮或いは炊飯等によって食品中の澱粉をα化させて喫食する麺類や、米飯等の食品のほぐれ性を改良する食品用ほぐれ剤、及び該食品用ほぐれ剤を用いたほぐれの良好な食品の製造方法を提供することにより、α化された麺類或いは炊飯米等の食品の製造の段階、又は流通、販売、喫食の段階でのほぐれ性を有効に改善し、食品本来の風味や食味を損なうことなく、良好なほぐれ性と高い味覚とを有するほぐれ性の良好な食品を提供することができる。また、本発明のほぐれ剤は、ほぐれ剤の調製に際して煩雑な工程を必要とすることなく、簡便、安価な方法で提供できることから、本発明は、実用性に富んだ食品用ほぐれ剤を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工澱粉を超音波処理し、5質量%水溶液における粘度が100mPa・s以下とした加工澱粉超音波処理物を含有することを特徴とする食品用ほぐれ剤。
【請求項2】
加工澱粉が、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化澱粉、及びリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉からなる群から選択される一種類以上であることを特徴とする請求項1に記載の食品用ほぐれ剤。
【請求項3】
加工澱粉の原料澱粉がタピオカ澱粉及び/又はワキシスターチであることを特徴とする請求項1又は2に記載の食品用ほぐれ剤。
【請求項4】
加工澱粉超音波処理物の含量が、固形分換算で0.1〜100質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の食品用ほぐれ剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の食品用ほぐれ剤を、食品の表面に塗布するか、或いは、請求項1〜4のいずれか1項に記載の食品用ほぐれ剤を含有する溶液に食品を浸漬するかして、食品の表面に食品用ほぐれ剤をコーティングすることを特徴とするほぐれ性の良好な食品の製造方法。
【請求項6】
食品が、α化麺又は米飯であることを特徴とする請求項5記載のほぐれ性の良好な食品の製造方法。
【請求項7】
食品への加工澱粉超音波処理物の添加量が、食品の重量に対して、α化麺の場合は、固形物換算量で0.05〜3.0質量%になるように、又は、米飯の場合は、固形物換算量で0.05〜3.0質量%になるように、添加することを特徴とする請求項6記載のほぐれ性の良好な食品の製造方法。


【公開番号】特開2013−34414(P2013−34414A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171920(P2011−171920)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000188227)松谷化学工業株式会社 (102)
【Fターム(参考)】