説明

食品用コンベア装置

【課題】 従来の食品用コンベア装置は、2つのエンドレスコンベアを使用していたため2つの駆動装置や、速度を同期させる装置等が必要であったため、構成が複雑で、操作、保守に手間が掛かる課題があった。
【解決手段】 1つのエンドレスチェーンと、エンドレスチェーンの周回移動を支持するチェーン支持部と、駆動モータと、エンドレスチェーンに着脱可能な複数の区分移動板と、液槽と、加熱源とを有する食品用コンベア装置であり、エンドレスリンクチェーンは、チェーン支持部の外周面に沿ってエンドレス回転移動を行なうとともに、チェーン支持部はエンドレスチェーンが水平に移動し区分移動板が液槽内を移動する水平移動部と、エンドレスチェーンが斜面状に移動し区分移動板も斜面状に液槽から上方に離れて移動する斜面移動部とを有してエンドレス回転することを特徴とする食品用コンベア装置による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食品用コンベアに関する。詳細には、食品素材を回転するエンドレスコンベアに付設される区分移動板によって液槽の油や湯等の中を潜らせつつ移動させて加工食品化する食品用コンベア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の素材、例えばコロッケやトンカツの素材を油で揚げて食品化したり、生そばや生のウドンを湯によって茹で食品化するために、エンドレスコンベアを使用して、食品素材を油槽や湯槽の中を通過させる食品用コンベア装置は、様々なものが知られている。
【0003】
一般的に、食品素材を加工するために油槽や湯槽である液槽の中を通過させる状態では食品素材を水平方向に移動させ、コロッケが適切な時間で揚げられた、或いはウドンが茹で上がったというような素材が食品化されたときに、それを液槽から自動的に引き上げる必要がある。
【0004】
そのため従来は、例えば2つのネットエンドレスコンベアを使用して液槽を水平方向に移動させるための水平エンドレスコンベアと、液槽から食品化されたものを上方に引き上げるための斜状に設けられた斜状コンベアとを組み合わせた食品用コンベアが知られていた。この食品用コンベア装置は、食品素材をネットコンベアに乗せて移動させる方式である。(従来技術1)
【0005】
また、1つのエンドレスコンベアを使用して液槽から食品化されたものを上方に引き上げる方式の食品コンベア装置としては、液槽の水平な液面に対してネット上のエンドレスコンベア全体を一定の角度を有する斜面状に設けて、素材を液槽に潜らせた後、自動的に液中より食品化されたものを引き上げる構成の装置が知られていた(従来技術2)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術1のように2つのエンドレスコンベアを使用すると、駆動源をそれぞれに配設する必要があるとともに、水平エンドレスコンベアと斜状エンドレスコンベアとの速度を同期させる装置や、一方が緊急停止した場合に他方を停止させる装置等が必要であった。そのため、装置の構成が複雑となり、操作、保守に手間が掛かる課題があった。
【0007】
また従来技術2のように液槽の液中をネットコンベアで移動するため、食品素材は液槽の深浅によって液の温度差が変わり、揚げむら等が起こりやすい課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、1つのエンドレスチェーンと、エンドレスチェーンの周回移動を支持するチェーン支持部と、エンドレスチェーンを駆動するモータと、エンドレスチェーンに着脱可能な複数の区分移動板と、液槽と、加熱源とを有する食品用コンベア装置であり、
1つのエンドレスチェーンは、チェーン支持部の外周面に沿ってエンドレス回転移動を行なうとともに、チェーン支持部はエンドレスチェーンが水平に移動し区分移動板が液槽内を移動する水平移動部と、エンドレスチェーンが斜面状に移動し区分移動板も斜面状に液槽から上方に離れて移動する斜面移動部とを有してエンドレス回転することを特徴とする食品用コンベア装置を提案する。
【0009】
更に、それぞれの区分移動板状体が、エンドレスチェーンの移動に対して一定の負荷を掛けると、エンドレスチェーンの移動が自動的に停止され、負荷が排除されると自動的に連結する0008欄に記載の食品用コンベア装置を提案する。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、1つのエンドレスチェーンを使用して、このエンドレスチェーンに複数の区分移動板を着脱自在に付設することにより、1つのエンドレスチェーンを水平移動部と斜面移動部を連続して折曲部を通して移動させ、それぞれの区分移動板を水平移動部においては液槽内を通過させて、食品素材を加工させつつ、斜面移動部では、加工させた食品を液槽から斜め上に搬送して出すことができる。
【0011】
したがって、エンドレスチェーンが1つであるため、駆動源である駆動モータも1つでよく、構成が簡素であるため、操作、保守が容易になったという利点がある。
【0012】
更に、従来技術2のように液槽が斜めに成らず、液槽内に深浅がなく均一の深さであるため、食品素材の移動による加熱ムラが起きることが少なく、液槽内の液体の加熱や温度操作が容易になる利点がある。
【0013】
更にまた、請求項2に係る発明によれば、作業者等に引っかかったりして何らかの支障により1つの区分移動板が停止した場合、自動的にエンドレスチェーンの移動も停止されるため安全性が向上した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明の食品用コンベア装置の1つの実施形態を示す斜視図を示す図1、区分移動板を取り付けてない平面図を示す図2、区分移動板を取り付けてない正面図を示す図3、側面図を示す図4、駆動モータの駆動軸と従動軸を連結する連結部の拡大説明図を示す図5、エンドレスリンクチェーンと駆動ローラーの一部拡大平面図である図6,図6のAA線断面図でエンドレスリンクチェーンと移動用支持枠の断面図である図7に基づいて説明する。
【0015】
この発明の1つの実施形態である食品用コンベア装置は、移動キャスター90を設けた移動台車9に付設される1つのエンドレスチェーン1と、エンドレスチェーンの周回移動を支持するチェーン支持部2と、エンドレスチェーン1を駆動する駆動モータ3と、エンドレスチェーン1に着脱可能な複数の区分移動板4と、液槽5と、加熱源6と、仕上げ部8を有している。移動台車9には制御盤91を備えてある。
【0016】
この実施形態ではエンドレスチェーン1は、多数の長円形のリンクを連結して成るエンドレスリンクチェーンからなり、それぞれのリンクが隣接するリンクと90度角ずらして連結する構成である。このエンドレスリンクチェーン1は、適宜の間隔で複数の区分移動板4の取付部40によって区分移動板4を着脱自在に付設することが可能である。
【0017】
このエンドレスリンクチェーン1は、この発明の食品用コンベア装置の平面視略中央部に設けられた長円形のチェーン支持部2の側周面に周回状に形成される移動用支持枠20にエンドレスリンクチェーン1の長円リンクが水平状態である1つ置きのリンクが係合して移動する。移動用支持枠20は、図7に示すように外ガイド板20aと内ガイド板20bの2つの平行な垂直方向の板状体からなり、この2つの板状体の高さ方向の略中間位置で対向して開いた水平方向及び斜め方向のエンドレス長孔20cを有する。エンドレス長孔20cにエンドレスリンクチェーン1の長円リンク1aが水平状態で係合し、このとき隣接する垂直状態で移動する長円リンク1bは、移動用支持枠20の外ガイド板20aと内ガイド板20bの間で移動する。
【0018】
チェーン支持部2の移動用支持枠20は、長い平行の直線部と、その直線部の両端には180度リターンする半円状の回転部23を形成しており、一方側の回転部23aは駆動ローラー21を設けておりエンドレスリンクチェーン1を係合している。駆動ローラー21の回転軸(従動軸)22は、駆動モータ3の駆動軸30と連結部7によって連結しており、駆動モータ3の回転をエンドレスリンクチェーン1に伝動する(図5参照)。駆動ローラー21の代りにスプロケット、ギアなどで構成してもよい。移動用支持枠20の回転部23a、23bの付近では、外ガイド板20aのみが駆動ローラー21及び従動ローラーの回転中心付近まで配設されるが、内ガイド板20bは、図6に示すように駆動ローラー21の手前までしか設けられていない。図6に示す24は、ブラケットである。チェーン支持部2は、ブラケット24により装置本体に取り付けられる。
【0019】
この連結部7の構成は、図5に示すように駆動モータ3の駆動軸30に固定された厚い円柱状の内連結体71と、内連結体71の側周面に設けられ駆動ローラー21側の回転軸(従動軸)22に固定された外覆体74とからなり、外覆体74には等間隔に設けられた複数個のプランジャー70を固定して設けており、この実施形態では180度対向位置にある2つのプランジャー70を固定して設けている。プランジャー70の先端は円錐突起状に形成されている。内連結体74の円柱状の側周面にはプランジャー70の数と対応する凹溝72、この実施形態では180度離れた2つの凹溝72を形成している。
【0020】
連結部7の外覆体74に設けられた2つのプランジャー70の円錐突起状の先端が、対応する位置にある内連結体74の凹溝72に嵌合しており、外覆体74と内連結体71とは、その他の部位ではベアリンク73によって摺動している。
【0021】
チェーン支持部2の長円方向の一方側のおおよそ3/4ほどは移動用支持枠20が水平に設けられる水平移動部201として形成し、残りのおおよそ1/4ほどは水平から20度乃至30度ほど上方に向かう斜面状に形成される斜面移動部202として形成される。203は移動用支持枠20の折曲部である。斜面移動部202は、登り傾斜から最上位置にある回転部23bで180度方向を変え下り傾斜になり、連続して水平移動部201に移行する。
【0022】
チェーン支持部2の移動用支持枠20の水平移動部201の周囲には、液槽5が設けられている。エンドレスチェーン1は、水平移動部201である移動用支持枠20に沿って移動している状態ではエンドレスチェーン1に付設されている区分移動板4が液槽5内を移動する。
【0023】
液槽5内の適宜底面位置には複数のヒータからなる加熱源6が設けられて、液槽5内に入れられる食用油、又は水を加熱する。52は、液槽5のエンドレスリングチェーン1に付設される区分移動板4が入り始める最上流部である。液槽5内の一端側の底面は、大きめの網状、又は平行な棒状の底面として形成した漉し部50を有しており、漉し部50には油や湯に沈んだ天かす等の不必要物が集められる。51は、漉し部50の底部に設けられた廃油バルブである。
【0024】
仕上げ部8は、チェーン支持部2の移動用支持枠20の斜面移動部202の登り傾斜の周囲に設けられる登り傾斜板80と、登り傾斜板80の開放されている最上端部の下方に配設された傾斜しているシューター81と、シューター81の下部に配設される網状体からなる油切り部82とからなる。移動用支持枠20の斜面移動部202の下り傾斜の周囲には下り傾斜板83が設けられて区分移動板4の下辺を支持している。登り傾斜板80と下り傾斜板83の傾斜は、斜面移動部202の傾斜と同じ傾斜である。
【0025】
次にこの発明の実施形態である食用コンベア装置の作用について説明する。この食用コンベア装置の液槽5には、うどんや蕎麦を茹でるときは水を入れ、コロッケやカツを揚げる場合は、食用油を入れる。制御盤91を作動させ加熱源6を加熱して調理のため適温の油、又はお湯とする。この実施形態の説明では液槽5は、油槽とコロッケ、トンカツ等を上げる食用コンベア装置とする。
【0026】
次いで制御盤91により駆動モータ3を駆動させ、駆動軸30、連結部7、従動軸22を介して駆動ローラー21を回転させ、エンドレスリンクチェーン1を一方向に低速度で回転させる。エンドレスリンクチェーン1は、この実施形態では多数の長円形のリンクを、それぞれのリンクが隣接するリンクと90度角ずらして連結する構成であるため、水平方向にリンク1aによって移動用支持枠20のエンドレス長孔20cに係合して移動できる。また、エンドレスリンクチェーン1のリンクは、移動用支持枠20の水平移動部201と斜面移動部202との上下30度角前後の折曲部203でもスムースに移動できる。
【0027】
連結部7においては、外覆体74に設けられた2つのプランジャー70の円錐突起状の先端が、対応する位置にある内連結体74の凹溝72に嵌合しており、外覆体74と内連結体71は、その他の部位ではベアリンク73によって摺動しているため、通常は駆動モータ3の駆動軸30の回転が、プランジャー70と凹溝72との嵌合により従動軸22へ伝動し駆動ローラー21が回転する。
【0028】
しかし、エンドレスリンクチェーン1の移動に何らかの負荷、例えば取り付けられた区分移動板4が何かに引っ掛かり駆動ローラー21側の回転軸(従動軸)22に負荷が掛かると、プランジャー70が凹溝72から外れ空回りとなり、駆動モータ3の駆動軸30の回転力は、従動軸22に伝達されなくなり、エンドレスリンクチェーン1は停止する。更に時間が経過してエンドレスリンクチェーン1に掛かった負荷が排除されると、再びプランジャー70の円錐突起状の先端が内連結体74の凹溝72に嵌合し自動的に結合するため、駆動モータ3の駆動軸30の回転は従動軸22へ伝動し駆動ローラー21が回転し始める。
【0029】
エンドレスリンクチェーン1には、区分移動板4を適宜の間隔で取付部40によって装着する。区分移動板4は、チェーン支持部2の移動用支持枠20の水平移動部201の周囲では液槽(油槽)5に入り、液槽5の最上流部52から下流に移動するが、各区分移動坂4の間の油に、コロッケやトンカツを揚げる前の素材を投入する。投入された素材は、適温の油で揚げられつつ移動して行き、最下流に設けられる仕上げ部8に入り、登り傾斜板80へ当接して、登り傾斜板80に下辺が当接する区分移動坂4によって登り傾斜板80を上昇し、開放端部からシューター81へ落ち、シューター81を滑って油切り部82で停止する。このときコロッケ等の素材は、油で揚げられたコロッケという食品となっている。区分移動坂4は、エンドレスに周回するエンドレスリンクチェーン1に付随して再び液槽(油槽)5の最上流部52から油の中に入り、新たなコロッケやトンカツを揚げる前の素材を投入する。これを繰り返すことによって短時間の内に多数のコロッケやトンカツを適切に揚げることができる。
【0030】
コロッケやトンカツ等の素材を多数揚げると、油槽5の中に衣や天かす等の不純物が沈み始めるが、漉し部50の網から下方に落ち、容易に取り除くことができる。更に長時間油を使用することにより廃油とする場合は、廃油バルブ51から廃棄する。
【産業上の利用可能性】
【0031】
コロッケやトンカツ等の油で揚げる食品を提供する食品販売店や、蕎麦、うどん、餃子等のお湯で茹で上げる食品を提供する食品販売店等での利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の1つの実施形態を示す食品用コンベア装置の斜視図
【図2】同じく区分移動板を取り付けてない平面説明図
【図3】同じく区分移動板を取り付けてない正面説明図
【図4】同じく側面説明図
【図5】同じく駆動モータの駆動軸と従動軸を連結する連結部の拡大説明図
【図6】同じくエンドレスリンクチェーンと駆動ローラーの一部拡大平面図
【図7】同じく図6のAA線断面図でエンドレスリンクチェーンと移動用支持枠の断面図
【符号の説明】
【0033】
1 エンドレスリンクチェーン
1a 水平状態の長円リンク
1b 垂直状態の長円リンク
2 チェーン支持部
20 移動用支持枠
20a 外ガイド板
20b 内ガイド板
20c エンドレス長孔
201 水平移動部
202 斜面移動部
203 折曲部
21 駆動ローラー
22 回転軸(従動軸)
23a 回転部(駆動ローラーを設けた)
23b 回転部(斜面側)
3 駆動モータ
30 駆動軸
4 区分移動板
40 取付部
5 液槽(油槽)
50 漉し部
51 廃油バルブ
52 最上流部
6 加熱源(ヒータ)
7 連結部
70 プランジャー
71 内連絡体
72 凹溝
73 ベアリング
74 外覆体
8 仕上げ部
80 登り傾斜板
81 シューター
82 油切り部
83 下り傾斜板
9 移動台車
90 移動キャスター
91 制御盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのエンドレスチェーンと、エンドレスチェーンの周回移動を支持するチェーン支持部と、エンドレスチェーンを駆動するモータと、エンドレスチェーンに着脱可能な複数の区分移動板と、液槽と、加熱源とを有する食品用コンベア装置であり、
1つのエンドレスチェーンは、チェーン支持部の外周面に沿ってエンドレス回転移動を行なうとともに、チェーン支持部は、エンドレスチェーンが水平に移動し区分移動板が液槽内を移動する水平移動部と、エンドレスチェーンが斜面状に移動し区分移動板も斜面状に液槽から上方に離れて移動する斜面移動部とを有してエンドレス回転することを特徴とする食品用コンベア装置。
【請求項2】
それぞれの区分移動板が、エンドレスチェーンの移動に対して一定の負荷を掛けると、エンドレスチェーンの移動が自動的に停止され、負荷が排除されると自動的に連結する請求項1に記載の食品用コンベア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−230740(P2008−230740A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70578(P2007−70578)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(500409127)株式会社大道産業 (6)