説明

食品用乳化剤又は可溶化剤

【課題】食品の風味に影響せず、高親水性で乳化力、可溶化力に優れた食品用ポリグリセリン脂肪酸エステルを提供すること。
【解決手段】グリセリンを含まず、ジグリセリンの含量が3質量%以下のポリグリセリン、、更にはトリグリセリン以下の低重合度ポリグリセリンの含量が20質量%以下であるポリグリセリンと脂肪酸とのエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステルは、食品の風味に影響せず、高親水性で、可溶化力、乳化力に優れ、食品用乳化剤又は可溶化剤として極めて有用である事を見出し、本発明を完成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
新規な組成のポリグリセリンを原料として合成した高親水性ポリグリセリン脂肪酸エステルからなる新規な食品用乳化剤、可溶化剤に関する。更に詳しくは食品の風味に影響せず、乳化力、可溶化力等に優れる高機能な高親水性の食品用乳化剤又は可溶化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食品を滅菌処理する方法としては、高温滅菌処理する方法が一般的である。食品に高温滅菌処理を施すことを考慮すると、食品に使用される乳化剤や可溶化剤は、乳化系又は可溶化系の高温安定性を向上させるため、高親水性である必要がある。また、親水性の界面活性剤は水溶性高分子、糖類と相互作用して親油化する性質を持つため、このような系で使用できる乳化剤や可溶化剤はより高親水性である事が望ましい。
【0003】
ジュース類などの飲料は、香料、ペクチン、糖類などを含むが、極性の高い香料を可溶化するためには、可溶化剤が高親水性であるほど、少量で香料を可溶化できるため、風味に優れた飲料とする事ができる。
【0004】
麺、パンなどの小麦粉製品には、パンや麺に腰のある食感を与えたり、老化防止などの機能を付与するためステアリン酸モノグリセリドが添加されている。ステアリン酸モノグリセリドは親油性で水には分散、溶解しないため、親水性の界面活性剤が併用されエマルションとして使用されている。親水性の界面活性剤はHLBが高ければ高いほど、少量で多量のステアリン酸モノグリセリドが乳化できるため、食品の風味に影響を及ぼさない優れた製品とする事ができる。
【0005】
このように食品で使用される乳化剤、可溶化剤は、その乳化力や可溶化力が優れるだけでなく、高親水性なもの、例えば、乳化力、可溶化力に優れる高親水性の乳化剤や可溶化剤が望まれている。
【0006】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは食品用乳化可溶化剤として広く使用されている。これらポリグリセリン脂肪酸エステルはポリグリセリンと脂肪酸とを高温、塩基性の雰囲気下でエステル化して得られる。原料ポリグリセリンはグリセリンを重合して得る方法、エピクロルヒドリンを重合して得る方法、グリシドールを付加重合する方法により合成されたものが市販されている。グリセリンを重合して得られるポリグリセリンの重合度分布は広く、エピクロルヒドリン法、グリシドール法で得られるポリグリセリンは比較的分子量分布の狭いポリグリセリンが得られる。
【0007】
食品では、安全性の面からグリセリンを原料とするポリグリセリンを利用したポリグリセリン脂肪酸エステルのみが認可されている。そして市販ポリグリセリン脂肪酸エステルは広い重合度分布を持っており、エステル化度も分布を持っている複雑な混合物である。
【0008】
従って、このように多くの成分の混合物であるポリグリセリン脂肪酸エステルを高親水性化するのは大変難しく、いろいろな検討が成されている。高親水性化の度合いは親水性乳化可溶化剤で最も汎用されるデカグリセリンもしくはオクタグリセリンモノステアリン酸エステルで、HLBで表現すると12〜13である。
【0009】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの高親水性化方法については次のような方法が公知化されている。
【0010】
合成したポリグリセリン脂肪酸エステルを精製する方法として、ポリグリセリンと脂肪酸との反応物をイオン交換膜により精製、溶媒抽出などにより高純度化しようとする方法(特許文献1〜3)、新規なエステル化方法で高親水性化しようとする方法(特許文献4、5)、ポリグリセリンと脂肪酸との反応物を分子蒸留によってもモノ、ジ、トリエステルを分離精製する方法(特許文献6)が開示されている。
【0011】
また、精製したポリグリセリンを利用して高親水性ポリグリセリン脂肪酸エステルとする方法としては、原料ポリグリセリンを蒸留などの方法により、グリセリン、ジグリセリンを分離除去してポリグリセリン脂肪酸エステルとする方法(特許文献7)、トリグリセリンモノエステル含量を高純度化して高親水性化する方法(特許文献8)、強酸性イオン交換樹脂を利用する方法(特許文献9)等が開示されている。近年本発明者らは、分子蒸留法がもつ課題、例えば、加温によるポリグリセリンの変質、また、強酸性イオン交換樹脂を利用する方法がもつ課題、例えば、処理工程の煩雑化等の問題点を解決するする方法として分子膜による分別方法により得られるポリグリセリンを利用する方法(特許文献10)を報告している。
【特許文献1】特開平06−41007号公報
【特許文献2】特開平06−228052号公報
【特許文献3】特開平06−279359号公報
【特許文献4】特開2000−287631号公報
【特許文献5】特開平8−217725号公報
【特許文献6】特開2004−331607号公報
【特許文献7】特開平06−192065号公報
【特許文献8】特開2002−60783号公報
【特許文献9】特開平05−310625号公報
【特許文献10】特願2007−244387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
食品の風味に影響を及ぼさない、高親水性で乳化力、可溶化力に優れた食品用のポリグリセリン脂肪酸エステルを提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0013】
鋭意研究した結果、原料ポリグリセリンからグリセリン、ジグリセリンを除いて、これを使用して脂肪酸エステルを合成すると、驚異的に親水性の高い食品用乳化剤又は可溶化剤が得られる事を見出した。また、トリグリセリン以下の低重合度品を除いた原料ポリグリセリンを使用して脂肪酸エステルを合成すると、更に高親水性の食品用乳化剤又は可溶化剤とする事が出来た。そして、それらのポリグリセリン脂肪酸エステルの高親水性の度合いもHLB15以上の高親水性乳化可溶化剤となる事を見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、食品の風味に影響を及ぼさない、高親水性で乳化力及び可溶化力に優れた新規な食品用ポリグリセリン脂肪酸エステルを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の高親水性食品用乳化剤又は可溶化剤は、ポリグリセリンからグリセリン、ジグリセリン、更にはトリグリセリンのような低重合度物、及び水溶性低分子量有機物を分子膜で除去したポリグリセリンを用いてポリグリセリン脂肪酸エステルを合成することで得ることができる。
【0016】
水溶性低分子量有機物を分子膜により除去したポリグリセリンは、具体的にはグリセリンは含まず、ジグリセリンは3%以下のポリグリセリンであり、更に好ましくは、グリセリンを含まず、ジグリセリンの含量が3%以下であり、且つトリグリセリン以下の低重合度物の含量が20%以下のポリグリセリンである。平均重合度は特に限定するものではないが、6以上が好ましく、さらに好ましくは6〜10である。重合度は高速液体クロマトグラフィーにより、分子量既知のポリエチレングリコールを基準として算定した。
【0017】
本発明でいうグリセリンなどの低重合ポリグリセリンの除去法は、分子膜を用いることを特徴とするものである。本発明者らが開発した分子膜による分画方法であり、分画法の詳細は特願平2007−244387に示している。分子膜としては、特に限定するものではないが、逆浸透膜(RO膜)、ナノ膜(ナノフィルトレーション膜、NF膜)、限外濾過膜(UF膜)等が挙げられる。本法によりポリグリセリンの低重合度物及び水溶性の低分子量有機物が除去される。水溶性有機物の詳細は不明であるが、乳酸などが知られている。
【0018】
本発明におけるポリグリセリンの組成分析は、ポリグリセリンをトリメチルシリル化誘導体とし、その上でガスクロマトグラフィー(GLC)にて分析を行い、各成分のピーク面積を百分率として求めることができる。GLC法による分析は、メチルシリコーンなど低極性液相を化学結合せしめた、フューズドシリカキャピラリー管を用いて100〜320℃まで10℃/分の昇温分析を行えば容易に実施することができる。また、ガスクロマトグラム上のピークの同定は、例えば、ガスクロマトフラフ/質量分析計(GC/MS)にて各ピークの分子量を求めることにより行うことができる。
【0019】
本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、食品で許可されている天然脂肪酸である。目的とする食品及び用途により特に限定されるものではないが、炭素数8以上の脂肪酸が好ましく、更に好ましくは乳化及び/又は可溶化剤として優れた性能を発揮する炭素数14以上の脂肪酸である。また、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0020】
本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルは、目的とする食品及び用途により特に限定されるものではないが、脂肪酸エステル化は、公知の方法でおこなうことができる。また、エステル化度は特に限定するものではないが、低いものほど高親水性となるため、エステル化度の低いものが望ましい。好ましくは、ポリグリセリンに対して1モル以下の脂肪酸とのエステルである。
【0021】
HLBとは、Hydrophile―Lipophile Balanceの略称であり、界面活性剤等の親水性を示す指標であり、理論上求められる計算値又は乳化試験によって求められる実測値の何れか又は双方を反映するものであるが、本発明でいうHLBの値は、乳化法で得られる実測値であり、実施例にてこの測定法を示す。
【0022】
本発明で言う親水性乳化可溶化剤の親水性を定量的に表現すると、HLBで15以上であることが望ましい。
【0023】
本発明における食品は、ジュース、スープ、コーヒーホワイトナー、ケーキミックス、麺、パン、豆腐などで、特に限定するものではないが、好ましくは、ジュース、スープ、コーヒーホワイトナー、パンなどの食品、加工食品をいう。
【0024】
本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルの食品に対する配合量については、特に限定するものではないが一般的には食品に対して1%以下添加される。
【0025】
また、本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルは、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンは、分子膜にて分画するため、ポリグリセリンの低重合度物、及び水溶性の低分子量有機物が除去される。そのため、本法では分子蒸留など他の分画法と異なる組成のポリグリセリンが得られるため、このポリグリセリンを原料として合成したポリグリセリン脂肪酸エステルは、いずれも食品の味に影響を及ぼさず、優れた乳化性能、可溶化性能を有したものであった。
【0027】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の「%」は「質量%」を意味する。
【実施例1】
【0028】
(ポリグリセリンの合成と水溶性低重合度物の除去)
グリセリンに対して、苛性ソーダを0.1%加え、250℃で3時間、反応させてデカグリセリンを合成し、限外濾過膜(UF膜)にて精製した。こうして得られた精製ポリグリセリンの組成は、トリメチルシリル化誘導体とし、ガスクロマトグラフィー(GLC)条件(カラム充填剤:Diasolid ZT(3mm×0.5m、日本クロマト工業株式会社製)、昇温速度:50〜320℃、10℃/分、キャリアガス及び流量:窒素、40mL/分、検出器:FID)で分析を行い、ガスクロマトフラフ面積法にて各成分の量を測定した。比較例として、未精製品についても同様の測定をおこなった。
【表1】

【実施例2】
【0029】
(ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB測定)
ポリグリセリンとして、デカグリセリン、オクタグリセリン、ヘキサグリセリンを一般的な方法で合成した。更にこれらのポリグリセリンをUF膜にて低重合ポリグリセリンを除去し、原料ポリグリセリンを得た。この原料ポリグリセリンを使用してポリグリセリンモノ脂肪酸エステルを合成した。
【0030】
また比較品として、低重合度ポリグリセリンを除去しないポリグリセリンを原料として、同じようにポリグリセリンモノ脂肪酸エステルを合成した。
【0031】
(HLB測定法)
乳化剤として、表2に示すポリグリセリン脂肪酸エステル(a)とソルビタンモノステアリン酸エステル(HLB=4.7)(b)を種々の組み合わせ比率で用いて、下記処方でエマルションを調製した。このとき得られたエマルションの粒径が最小となる乳化剤の比率から、ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBを下記式から算出した。この時流動パラフィンのHLBは10.5とした。
HLB=(10.5−4.7×b/4)4/a
【0032】
(乳化処方)
油相 流動パラフィン 40(%)
乳化剤(a+b) 4
水相 精製水 56
【0033】
(乳化法)
油相を80℃に加温して、攪拌しながら同温度以上に加温した水相を加えて乳化した。冷却しながら、攪拌を続けて40℃で放置した。得られたエマルションは一日放置後粒経測定した。
【0034】
(結果)
HLB値の測定結果を表2に、デカグリセリンモノステアリン酸エステルのHLB測定時のエマルションの粒径測定値を表3に示した。本発明品のHLBはいずれも比較品よりも大きく、15以上の値を示した。また本発明品で乳化したエマルションの粒径は、比較品に比べて小さく本発明品の乳化力が優れていることが確認された。
【表2】

【表3】

【実施例3】
【0035】
(ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB測定)
分子蒸留によってオクタグリセリンを作り,本発明オクタグリセリンモノオレイン酸エステルを合成した。比較品として分子蒸留しないオクタグリセリンを用いて同じ方法で合成しHLBを実施例1と同様な方法で測定し結果を下表に示した。
【0036】
(結果)
HLB値の測定結果を表4に示した。本発明オクタグリセリンモノオレイン酸エステルは、比較品より微細で安定なエマルションが得られ、高HLBであった。
【表4】

【実施例4】
【0037】
(トコフェロールの可溶化試験)
実施例2で得られたポリグリセリン脂肪酸エステルを使用して、トコフェロールの可溶化試験を行った。
【0038】
(処方)
トコフェロール 0.1(%)
ポリグリセリン脂肪酸エステル X
精製水 残部
【0039】
(可溶化試験)
トコフェロールとポリグリセリン脂肪酸エステルとを70℃に加温して、攪拌しながら同温度に加温した精製水を添加した。攪拌しながら、室温まで放冷した。
【0040】
(可溶化液の味試験)
【0041】
可溶化試験で得られた水溶液を10倍に精製水で希釈し、モニター5人により味の試験を行った。この時の試料は比較例と同一の処方とした。
【0042】
(結果)
透明となるトコフェロールの最少可溶化剤量を表5に示した。低重合度ポリグリセリンを除去しないヘキサグリセリンを利用して合成したヘキサグリセリンモノステアリン酸エステルは水に透明に溶解せずトコフェロールを加えても透明にならなかった。本発明品は比較品に比べ、いずれも優れた可溶化能を示した。味については、本発明品は比較品に比べて、いずれも味が良いという評価であった。
【表5】

【実施例5】
【0043】
(可溶化液の耐熱性及び耐糖度性)
【0044】
実施例4で得られた可溶化液に砂糖を10%添加し、経時変化、加熱試験を行った。本試験では本発明品のみ、経時変化、加熱試験とも変化が無く、優れた耐熱性、耐糖、耐塩性を示した。
【実施例6】
【0045】
(ジュース)
実施例2で得られたデカグリセリンモノオレイン酸エステル及びその比較品を使用して、下記処方でリンゴジュースを作成した。その結果、従来可溶化の難しいとされていたペクチン配合の透明なリンゴジュースを作ることができた。
【0046】
(処方)
香料 0.01(%)
デカグリセリンモノオレイン酸エステル 0.02
ペクチン 0.03
砂糖 10.0
クエン酸ソーダ 0.1
精製水 残部
【0047】
(調製方法)
ペクチン、砂糖、クエン酸の精製水溶液を攪拌しながら、香料とデカグリセリンモノオレイン酸エステルの混合溶液を加えて、均一溶液とした。
【0048】
(結果)
比較品を用いて調整したリンゴジュースは白濁したが、本発明品を用いて調整したリンゴジュースは透明で、経時安定性に優れていた。得られたリンゴジュースを5人のモニターにて味試験を行ったところ、全てのモニターが本発明品を用いて調整したリンゴジュースの方が比較品に比べて味が良いという評価であった。
【実施例7】
【0049】
(オリーブ油の乳化試験)
下記の処方でオリーブ油の乳化試験を行った。
【0050】
(処方)
オリーブ油 40(%)
ポリグリセリン脂肪酸エステル 1
精製水 59
(乳化法)
オリーブ油に乳化剤を加温して溶解し、60℃に加温した精製水を加えて、ホモミキサーを用いて攪拌した。
【0051】
(乳化試験の評価)
得られたエマルションを試験管にとり、室温にて一日放置後の外観を観察した。
○:均一なエマルション
×:分離、クリーミング等不均一なエマルション
【0052】
(結果)
乳化試験の結果を表6に示した。本発明品を用いることで、その使用量が少量でも良好なエマルションを得る事ができた。
【表6】

【実施例8】
【0053】
(乳化油脂の調製)
【0054】
食品に添加するための乳化油脂は、食品への配合のしやすさから、低粘度であること、また水に分散しやすいことが望ましい。
ステアリン酸モノグリセリド(MGS)を本発明のポリグリセリンモノステアリン酸エステルで乳化し、得られた乳化油脂の粘度の経時変化を測定した。
【0055】
(乳化油脂処方)
油相 オリーブ油 5(%)
モノステアリン酸グリセリン 15
ポリグリセリンモノステアリン酸エステル 10又は5
油相 マルトース 10
精製水 残部
【0056】
(乳化油脂の作成法)
水相を80℃に加温しながら攪拌し、均一にする。水相に同温度に加温した油相を加えて、ホモミキサーを用いて攪拌する。攪拌しながら室温まで放冷する。
【0057】
(評価)
室温に1日及び30日間保管した乳化油脂を、25℃での粘度を測定し、粘度の経時変化を下記式から算出し、評価した。
粘度の経時変化(%)=(30日後の粘度−1日後の粘度)/1日後の粘度)×100
◎:30日後の粘度1万mPa・s>、経時変化は20%以下
○:30日後の粘度3万mPa・s>、経時変化は20〜50%
△:30日後の粘度10万mPa・s>、経時変化は50〜100%
×:30日後の粘度10万mPa・s<
【0058】
(結果)
本発明のポリグリセリンモノステアリン酸エステルを少量配合することでで、多量のMGSを安定に乳化できた。乳化油脂の粘度の経時変化についての結果を表7に示した。本発明で得られた乳化油脂は何れも比較例に比べて粘度変化が小さく、流れるような粘性を示し、お湯に分散しやすく、小麦粉に配合しやすいものであった。
【表7】

【実施例9】
【0059】
(パン)
実施例8で作成した乳化油脂を1%配合してパンを作成した。
【0060】
(パンの生地の処方)
小麦粉 70.0部
イースト菌 2.0
フード菌 0.1
実施例8の乳化油脂 1.0
精製水 40.0
【0061】
(結果)
本発明品含むエマルションはパン生地に対する混和性に優れていた。また、発明品含むエマルションは、パン生地にボリューム感や滑らかさ、老化防止性等を付与し、腰のある風味豊かなパンが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性低分子量有機物を分子膜により除去し、ガスクロマトグラフィーによる定量値で、グリセリンを含まず、ジグリセリンの含量が3%以下のポリグリセリンと脂肪酸からなるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することを特徴とする高親水性の食品用乳化剤又は可溶化剤。
【請求項2】
上記ポリグリセリンの平均重合度が6〜10で、且つガスクロマトグラフィーによる定量値でトリグリセリン以下の低重合度ポリグリセリンの含量が20質量%以下であるポリグリセリンと炭素数8以上の脂肪酸とのエステルである高親水性の食品用乳化剤又は可溶化剤。
【請求項3】
HLB15以上のポリグリセリン脂肪酸エステルである請求項1又は2に記載の高親水性の食品用乳化剤又は可溶化剤。

【公開番号】特開2010−99017(P2010−99017A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274008(P2008−274008)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000226437)日光ケミカルズ株式会社 (60)
【出願人】(000228729)日本サーファクタント工業株式会社 (44)
【出願人】(301068114)株式会社コスモステクニカルセンター (57)
【Fターム(参考)】