説明

食品用包装材及びその製造方法

【課題】封緘強度が高く、遮光性に優れ、かつ、焼却後の残渣の少ない食品用包装材及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】保護層と、空洞含有樹脂フィルム層と、ヒートシール層とを有してなり、前記空洞含有樹脂フィルム層が、結晶性を有するポリマーからなり、長尺状の空洞をその長さ方向が一方向に配向した状態で内部に含有する空洞含有樹脂フィルムであって、前記空洞含有樹脂フィルム表面から所定の距離においては前記空洞が形成されておらず、かつ、前記空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比が10以上である空洞含有樹脂フィルムからなることを特徴とする食品用包装材、及び、前記保護層と、前記空洞含有樹脂フィルム層と、前記ヒートシール層とを積層する工程を含むことを特徴とする食品用包装材の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な食品を包装する用途に適した包装材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品の包装に用いられているフイルム包装材としては、アルミ箔、ポリエチレンテレフタレートフイルム(以下、PETという)、ポリエチレンフイルム(以下、PEという)、或いは薄紙等の材料を用いて、例えば、PET/アルミ箔、のように複合したものや、PE/紙/PE/アルミ箔/PE等のように積層したものが用いられている(例えば、非特許文献1参照)。従来のこのようなフイルム包装材は、一般的にはシート状に形成され、これを型枠で連続的に打ち抜き、個々の包装材に成形されるが、型枠で打ち抜いた際に出るシート端部の抜き残りの処分や、また、食品を摂取した後の包装材の処分に際し、アルミ箔を遮光材料として用いているため、焼却に困難性を伴い、例え焼却できたとしても焼却率が悪いために残渣が多くなり、その残渣がゴミとして残るといった問題があった。
また、従来から、食品の包装材としては、食品の酸化などを防ぐ目的から、封緘強度が高いことが望まれ、また、照明下での食品の変色や風味の低下などを防ぐ目的から、遮光性が高いことが望まれていた。
【0003】
このような問題を解決するために、従来では、保護層、金属フィラー入り樹脂をパターンコートした層、ナイロンフィルム層、及び、ヒートシール層が積層された食品包装材(特許文献1)が提案されている。しかしながら、該技術では、封緘強度が高く、遮光性が高い食品包装材が得られるものの、その焼却率は満足のいく程度のものではなく、そのため、より焼却率の高い(焼却残渣率の低い)食品包装材が望まれているのが現状である。
【0004】
【非特許文献1】総説:食品用プラスチック−その種類、その見分け方社団法人 日本食品衛生協会 1988年8月20日発行
【特許文献1】特開平10−245073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、封緘強度が高く、遮光性に優れ、かつ、焼却後の残渣の少ない食品用包装材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の結晶性ポリマーのみからなるポリマー成形体(ポリマーフィルム)を、適度な温度条件下で高速延伸することにより得られる空洞含有樹脂フィルムからなる層(空洞含有樹脂フィルム層)と、保護層と、ヒートシール層とを有してなる食品用包装材が、高い封緘強度、高い遮光性、並びに、高い焼却率(低い焼却残渣率)を示すという知見である。前記空洞含有樹脂フィルム層は、樹脂層(PBTの場合、屈折率約1.5)と空洞層(空気層、屈折率1)からなる多重層構造をとるために、これらの層間の構造的な光干渉(構造発色)作用により、高い遮光性を示す。そのため、前記空洞含有樹脂フィルム層を少なくとも有する本発明の食品用包装材は、従来使用されているアルミ箔や金属フィラー入り樹脂を使用しなくとも、照明の影響などによる食品の変色や風味の低下を抑制することができ、品質を高度に保持できるという利点を有する。また、前記食品用包装材は、前記保護層と、前記空洞含有樹脂フィルム層と、前記ヒートシール層とを少なくとも有するために、封緘強度が高く、そのため、保存時や流通過程における食品の酸化等を抑制することができ、品質を高度に保持できるという利点を有する。更に、前記食品用包装材は、従来のようなアルミ箔や、金属フィラー入り樹脂等を使用しないため、全て燃焼可能な有機物で構成され、そのため、焼却率が極めて高く、焼却が容易となり、また、焼却後の残渣も少ない(焼却残渣率が低い)という利点を有する。更に、不完全な燃焼が行われた場合であっても、前記PBT等は生分解性ポリマーであることから、自然分解が可能であり、そのため、前記食品用包装材は環境に優しい包装材であるということができる。
【0007】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 保護層と、空洞含有樹脂フィルム層と、ヒートシール層とを有してなり、前記空洞含有樹脂フィルム層が結晶性を有するポリマーからなり、長尺状の空洞をその長さ方向が一方向に配向した状態で内部に含有する空洞含有樹脂フィルムであって、
前記空洞含有樹脂フィルムにおける、前記空洞の配向方向に直交する断面において、前記空洞の中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離が最も短い10個の前記空洞について、各中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)が、次式、h(avg)>T/100、の関係を満たし、
[但し、Tは、前記断面における厚みの算術平均値を表し、10個の前記空洞は、前記厚み方向に平行な任意の一の直線と、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線とで挟まれた領域内に存在する空洞の中から選択される。]
かつ、前記空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比が10以上である空洞含有樹脂フィルムからなることを特徴とする食品用包装材である。
<2> 更に、ナイロンフィルム層を有する前記<1>に記載の食品用包装材である。
<3> 結晶性を有するポリマーが、ポリオレフィン類、ポリエステル類、及び、ポリアミド類から選択される少なくともいずれかである前記<1>から<2>のいずれかに記載の食品用包装材である。
<4> 結晶性を有するポリマーが、ポリエステル類である前記<1>から<3>のいずれかに記載の食品用包装材である。
<5> 結晶性を有するポリマーが、生分解性ポリマーである前記<1>から<4>のいずれかに記載の食品用包装材である。
<6> 150℃以上の封緘温度で容器の開口部を封緘した際の封緘強度が33.3kPa以上である前記<1>から<5>のいずれかに記載の食品用包装材である。
<7> 遮光率が90%以上である前記<1>から<6>のいずれかに記載の食品用包装材である。
<8> 600℃まで空気中で昇温させた際の焼却残渣率が3%以下である前記<1>から<7>のいずれかに記載の食品用包装材である。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の食品用包装材の製造方法であって、
保護層と、空洞含有樹脂フィルム層と、ヒートシール層とを積層する工程を含むことを特徴とする食品用包装材の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、封緘強度が高く、遮光性に優れ、かつ、焼却後の残渣の少ない食品用包装材及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(食品用包装材)
本発明の食品用包装材は、保護層と、空洞含有樹脂フィルム層と、ヒートシール層とを有し、好ましくは更にナイロンフィルム層を有し、必要に応じて更にその他の層を有してなる。前記食品用包装材は、前記空洞含有樹脂フィルム層を有することに特徴を有しており、前記空洞含有樹脂フィルム層の詳細は後述する通りである。
また、前記食品用包装材は、保護層と、空洞含有樹脂フィルム層と、ヒートシール層とが、この順に積層されてなることが好ましい。この場合、前記保護層は最外面(包装する食品から最も遠い面)となり、前記ヒートシール層は最内面(包装する食品に最も近い面)となる。
【0010】
<保護層>
前記保護層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フイルム、ポリプロピレンフイルムなどを使用することができる。これらの中でも、前記保護層は、前記食品用包装材の最外面(包装する食品から最も遠い面)に位置するため、透明性や耐熱性が高く、表面印刷が可能であるものが望ましく、このような観点から、PETフィルムが特に好ましい。
【0011】
なお、前記保護層としては、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記保護層の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、4.5〜25μmが好ましく、6〜20μmがより好ましく、12〜20μmが更に好ましい。前記厚さが、4.5μm未満であると、破れやすく包装材として充分な強度を得ることができないことがあり、25μmを超えると、剛性(スティフネス)が大きくなりフイルムの貼り合わせ不良やヒートシール時に熱が伝わりにくくヒートシール不良が発生することがある。
【0012】
<空洞含有樹脂フィルム層>
前記空洞含有樹脂フィルム層は、空洞含有樹脂フィルムからなる層であり、前記空洞含有樹脂フィルムは、以下のように、結晶性を有するポリマー(本明細書中において、単に「結晶性ポリマー」と称することがある)からなり、内部に空洞を含有することを特徴とする。
【0013】
−結晶性ポリマー−
一般に、ポリマーは、結晶性ポリマーと非晶性(アモルファス)ポリマーとに分けられるが、結晶性ポリマーといえども100%結晶ということはなく、分子構造の中に長い鎖状の分子が規則的に並んだ結晶性領域と、規則的に並んでいない非結晶(アモルファス)領域とを含んでいる。
したがって、前記結晶性ポリマーとしては、分子構造の中に少なくとも前記結晶性領域を含んでいればよく、結晶性領域と非結晶領域とが混在していてもよい。
【0014】
前記結晶性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高密度ポリエチレン、ポリオレフィン類(例えば、ポリプロピレンなど)、ポリアミド類(PA)(例えば、ナイロン−6など)、ポリアセタール類(POM)、ポリエステル類(例えば、PET、PEN、PTT、PBT、PPT、PHT、PBN、PES、PBSなど)、シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンサルファイド類(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン類(PEEK)、液晶ポリマー類(LCP)、フッ素樹脂、などが挙げられる。その中でも、空洞含有樹脂フィルムの力学強度や製造の観点から、ポリオレフィン類、ポリエステル類、及び、ポリアミド類の少なくともいずれかが好ましく、ポリエステル類がより好ましい。また、これらのうち2種以上のポリマーをブレンドしたり、共重合させたりして使用してもよい。
なお、環境保護の観点からは、前記結晶性ポリマーとしては、生分解性ポリマーを使用することが好ましく、このような生分解性ポリマーとしては、例えば、微生物でつくる高分子(セルロース、ポリアミノ酸など)、植物や動物のつくる天然高分子(セルロース、デンプン、キチン、コラーゲンなど)、及びそれらの官能基変成化合物、化学合成でつくる高分子(PBT等の芳香環を有するポリエステル、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネートなど)などが挙げられる。このような生分解性ポリマーを使用することにより、製造時に型枠で打ち抜いた際などに出るシート端部の抜き残りの処分や、食品を摂取した後の包装材の処分に際して、不完全な燃焼が行われた場合であっても、自然分解がされ易い点で、有利である。
【0015】
前記結晶性ポリマーの溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜700Pa・sが好ましく、70〜500Pa・sがより好ましく、80〜300Pa・sが更に好ましい。前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、溶融製膜時にダイヘッドから吐出される溶融膜の形状が安定し、均一に製膜しやすくなる点で好ましい。また、前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、溶融製膜時の粘度が適切になって押出ししやすくなったり、製膜時の溶融膜がレベリングされて凹凸を低減できたりする点で好ましい。
ここで、前記溶融粘度は、プレートタイプのレオメーターやキャピラリーレオメーターにより測定することができる。
【0016】
前記結晶性ポリマーの極限粘度(IV)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.4〜1.2が好ましく、0.6〜1.0がより好ましく、0.7〜0.9が更に好ましい。前記IVが0.4〜1.2であると、製膜されたフィルムの強度が高くなり、効率よく延伸することができる点で好ましい。
ここで、前記IVは、ウベローデ型粘度計により測定することができる。
【0017】
前記結晶性ポリマーの融点(Tm)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40〜350℃が好ましく、100〜300℃がより好ましく、100〜260℃がより好ましい。前記融点が40〜350℃であると、通常の使用で予想される温度範囲で形を保ちやすくなる点で好ましく、高温での加工に必要とされる特殊な技術を特に用いなくても、均一な製膜ができる点で好ましい。
ここで、前記融点は、示差熱分析装置(DSC)により測定することができる。
【0018】
−−ポリエステル樹脂−−
前記ポリエステル類(以下、「ポリエステル樹脂」と称する。)は、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子化合物の総称を意味する。したがって、前記結晶性ポリマーとして好適な前記ポリエステル樹脂としては、前記例示したPET(ポリエチレンテレフタエレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPT(ポリペンタメチレンテレフタレート)、PHT(ポリヘキサメチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PES(ポリエチレンサクシネート)、PBS(ポリブチレンサクシネート)だけでなく、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合反応によって得られる高分子化合物が全て含まれる。
【0019】
前記ジカルボン酸成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、オキシカルボン酸、多官能酸などが挙げられる。
【0020】
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられ、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸がより好ましい。
【0021】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、エイコ酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、フマル酸が挙げられる。前記脂環族ジカルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。前記オキシカルボン酸としては、例えば、p−オキシ安息香酸などが挙げられる。前記多官能酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。前記脂肪族ジカルボン酸及び脂環族ジカルボン酸の中では、コハク酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸が好ましく、コハク酸、アジピン酸がより好ましい。
【0022】
前記ジオール成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコールなどが挙げられ、中でも、脂肪族ジオールが好ましい。
【0023】
前記脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコールなどが挙げられ、中でも、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールが特に好ましい。前記脂環族ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。前記芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどが挙げられる。
【0024】
前記ポリエステル樹脂の溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜700Pa・sが好ましく、70〜500Pa・sがより好ましく、80〜300Pa・sが更に好ましい。前記溶融粘度が大きいほうが延伸時にボイド(空洞)を発現しやすいが、前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、製膜時に押出しがしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しづらくなり、品質が安定したりする点で好ましい。また、前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、破断しづらくなる点で好ましい。また、前記溶融粘度が50〜700Pa・s以上であると、製膜時にダイヘッドから吐出される溶融膜の形態が維持しやすくなって、安定的に成形できたり、製品が破損しにくくなったりするなど、物性が高まる点で好ましい。
【0025】
前記ポリエステル樹脂の極限粘度(IV)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.4〜1.2が好ましく、0.6〜1.0がより好ましく、0.7〜0.9が更に好ましい。前記IVが大きいほうが延伸時にボイドを発現しやすいが、前記IVが0.4〜1.2であると、製膜時に押出しがしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しづらくなり、品質が安定したりする点で好ましい。さらに、前記IVが0.4〜1.2であると、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、装置に負荷がかかりにくい点で好ましい。加えて、前記IVが0.4〜1.2であると、製品が破損しにくくなって、物性が高まる点で好ましい。
【0026】
前記ポリエステル樹脂の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐熱性や製膜性などの観点から、150〜300℃が好ましく、180〜270℃がより好ましい。
【0027】
なお、前記ポリエステル樹脂として、前記ジカルボン酸成分と前記ジオール成分とが、それぞれ1種で重合してポリマーを形成していてもよく、前記ジカルボン酸成分及び/又は前記ジオール成分が、2種以上で共重合してポリマーを形成していてもよい。また、前記ポリエステル樹脂として、2種以上のポリマーをブレンドして使用してもよい。
【0028】
前記2種以上でのポリマーのブレンドにおいて、主たるポリマーに対して添加されるポリマーは、前記主たるポリマーに対して、溶融粘度及び極限粘度が近く、添加量が少量であるほうが、製膜時や溶融押出し時に物性が高まり、押出ししやすくなる点で好ましい。
【0029】
また、前記ポリエステル樹脂の流動特性の改良、光線透過性の制御、塗布液との密着性の向上などを目的として、前記ポリエステル樹脂に対してポリエステル系以外の樹脂を添加しても良い。
【0030】
このように、前記空洞含有樹脂フィルムは、前記したような結晶性ポリマーからなるものである。前記空洞含有樹脂フィルムとしては、少なくとも1種類の結晶性ポリマーからなるものが好ましく、また、1種類の結晶性ポリマーのみからなるものがより好ましい。
前記空洞含有樹脂フィルムは、従来のボイド(空洞)形成技術においてボイドを形成するために添加されていた無機系微粒子、相溶しない樹脂などの空洞形成剤を特に添加しなくても、結晶性ポリマーのみから、簡便な工程でボイドを形成させることができるものであり、そのため、前記空洞含有樹脂フィルムからなる空洞含有樹脂フィルム層を有する本発明の食品用包装材は、コスト性、製造性に優れたものであり、また、リサイクル性にも優れるという利点を有する。さらに、製造において、不活性ガスを予め樹脂の中に溶け込ませるための特殊な設備も必要としない。なお、前記空洞含有樹脂フィルムの製造方法は、後述する本発明の食品用包装材の製造方法の項目に記載の通りである。
【0031】
ここで、前記空洞含有樹脂フィルムは、空洞の発現に寄与しない成分であれば、必要に応じて前記結晶性ポリマー以外のその他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分としては、耐熱安定剤、酸化防止剤、有機の易滑剤、核剤、染料、顔料、分散剤、カップリング剤、蛍光増白剤などが挙げられる。前記その他の成分が空洞の発現に寄与したかどうかは、空洞内又は空洞の界面部分に、結晶性ポリマー以外の成分(例えば、後記する各成分など)が検出されるかどうかで判別できる。
【0032】
前記酸化防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知のヒンダードフェノール類を添加してもよい。前記ヒンダードフェノール類としては、例えば、イルガノックス1010、同スミライザーBHT、同スミライザーGA−80などの商品名で市販されている酸化防止剤が挙げられる。
また、前記酸化防止剤を一次酸化防止剤として利用し、更に二次酸化防止剤を組み合わせて適用することもできる。前記二次酸化防止剤としては、例えば、スミライザーTPL−R、同スミライザーTPM、同スミライザーTP−Dなどの商品名で市販されている酸化防止剤が挙げられる。
【0033】
前記蛍光増白剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばユビテック、OB−1、TBO、ケイコール、カヤライト、リューコプア、EGMなどの商品名で市販されているものを用いることができる。なお、前記蛍光増白剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。このように蛍光増白剤を添加することで、より鮮明で青味のある白色性を与え、高級感を持たせることができる。
【0034】
−空洞−
前記空洞含有樹脂フィルムは、長尺状の空洞を、その長さ方向が一方向に配向した状態で内部に含有し、前記空洞の空洞含有率及びアスペクト比に特徴を有している。
前記空洞とは、前記空洞含有樹脂フィルム内部に存在する、真空状態のドメイン又は気相のドメインを意味する。
【0035】
前記空洞含有率とは、空洞含有樹脂フィルムの固相部分の総体積と含有される空洞の総体積の和に対する、前記含有される空洞の総体積を意味する。
前記空洞含有率としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、3体積%以上、50体積%以下が好ましく、5〜40体積%がより好ましく、10〜30体積%が更に好ましい。
ここで、前記空洞含有率は、比重を測定し、前記比重に基づいて算出することができる。
具体的には、前記空洞含有率は、下記の(1)式により求めることができる。
空洞含有率(%)={1−(延伸後の空洞含有樹脂フィルムの密度)/(延伸前のポリマー成形体の密度)} ・・・(1)
【0036】
前記アスペクト比とは、空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比を意味する。
前記アスペクト比としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10以上が好ましく、15以上がより好ましく、20以上が更に好ましい。
前記アスペクト比が10以上であると、前記空洞含有樹脂フィルムからなる空洞含有樹脂フィルム層を有する本発明の食品用包装材の、遮光性を増大させることができる点で、有利である。
【0037】
図2A〜2Cは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、図2Aは、空洞含有樹脂フィルムの斜視図であり、図2Bは、図2Aにおける空洞含有樹脂フィルムのA−A’断面図であり、図2Cは、図2Aにおける空洞含有樹脂フィルムのB−B’断面図である。
【0038】
前記空洞含有樹脂フィルムの製造工程において、前記空洞は、通常、第一の延伸方向に沿って配向する。したがって、前記「空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さ(r(μm))」は、空洞含有樹脂フィルム1の表面1aに垂直で、かつ、第一の延伸方向に直角な断面(図2AにおけるA−A’断面)における空洞100の平均の厚みr(図2B参照)に相当する。また、「前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さ(L(μm))」は、空洞含有樹脂フィルム1の表面1aに垂直で、かつ、前記第一の延伸方向に平行な断面(図2AにおけるB−B’断面)における空洞100の平均の長さL(図2C参照)に相当する。
【0039】
なお、前記第一の延伸方向とは、延伸が1軸のみの場合には、その1軸の延伸方向を示す。通常は、製造時に成形体の流れる方向に沿って縦延伸を行うため、この縦延伸の方向が前記第一の延伸方向に相当する。
また、延伸が2軸以上の場合には、空洞形成を目的とした延伸方向のうち少なくとも1方向を示す。通常は、2軸以上の延伸においても、製造時に成形体の流れる方向に沿って縦延伸が行われ、かつ、この縦延伸により空洞を形成することが可能であるため、この縦延伸の方向が前記第一の延伸方向に相当する。
【0040】
ここで、空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さ(r(μm))は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。同様に、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さ(L(μm))は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。
【0041】
前記空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均の個数Pとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5個以上が好ましく、10個以上がより好ましく、15個以上が更に好ましい。
【0042】
前記空洞含有樹脂フィルムの製造工程において、前記空洞は、通常、第一の延伸方向に沿って配向する。したがって、前記「空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の個数」は、空洞含有樹脂フィルム1の表面1aに垂直で、かつ、第一の延伸方向に直角な断面(図2AにおけるA−A’断面)において、膜厚方向に含まれる空洞100の個数に相当する。
ここで、前記空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均の個数Pは、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。
【0043】
結晶性ポリマー層と空洞層との屈折率差ΔNは、具体的には、波長400〜800nmから選択される1つの波長の光に対する結晶性ポリマー層の屈折率をN1として、前記選択される1つの波長の光に対する空洞層の屈折率をN2とした際に、N1とN2との差であるΔN(=N1−N2)の値を意味する。ここで、より具体的には、結晶性ポリマー層の屈折率N1は、別途押し出し成形した、前記空洞含有樹脂フィルムと同じ種類の結晶性ポリマーからなり、空洞を含有しない樹脂フィルムを用いるか、あるいは前記空洞含有樹脂フィルムそのものをアッベ屈折計により測定することができる。なお、前記空洞含有樹脂フィルムにおける空洞部分の屈折率は、空洞を形成したフィルムを水中で切断した際に発生する気泡を分析した結果、空気であることが認められたため、空洞層の屈折率は空気の屈折率=N2の屈折率=1とすることができる。これらの差を算出し、ΔN(=N1−N2)を求めることができる。また、前記屈折率N1、N2は、波長589nmの光について測定することが好ましい。
【0044】
更に、前記空洞含有樹脂フィルムは、前記空洞を含有しつつも、空洞を発現するための無機系微粒子、相溶しない樹脂、不活性ガスなどが添加されていないため、優れた表面平滑性を有している。
前記空洞含有樹脂フィルムの表面平滑性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、Ra=0.3μm以下が好ましく、Ra=0.25μm以下がより好ましく、Ra=0.1μm以下が更に好ましい。
【0045】
更に、前記空洞含有樹脂フィルムは、フィルム表面だけでなく、フィルム表面から所定の距離においても空洞が形成されていないことを特徴とする。
即ち、前記空洞含有樹脂フィルムにおける、前記空洞の配向方向に直交する断面において、前記空洞の中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離が最も短い10個の前記空洞について、各中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)が、次式、h(avg)>T/100、の関係を満たす。
但し、Tは、前記断面における厚みの算術平均値を表し、10個の前記空洞は、前記厚み方向に平行な任意の一の直線と、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線とで挟まれた領域内に存在する空洞の中から選択される。
【0046】
前記「空洞の中心」とは、前記断面における空洞の断面形状が、真円である場合にはその中心を意味し、それ以外の形状の場合には、例えば、最大二乗中心法により任意に設定した基準円からの偏差の二乗和が最小となる円の中心を決定し、これを空洞の中心とする。
前記「空洞含有樹脂フィルムの表面」とは、厚み方向における、空洞含有樹脂フィルムの最外面を意味する。通常、前記空洞含有樹脂フィルムを載置したときの上面を意味する。
【0047】
具体的には、空洞含有樹脂フィルムの表面に垂直で、かつ、縦延伸方向に直角な断面(図2D参照)を、走査型電子顕微鏡を用いて300〜3000倍の適切な倍率で検鏡し、断面写真を撮像する。前記断面写真内において、厚みの算術平均値Tを算出する。厚みの算術平均値Tとして、ロングレンジ接触式変位計などを用いて測定された厚さを用いてもよい。
次に、前記断面写真内において、厚み方向に平行な任意の一の直線を描画し、更に、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線を描画する。
そして、断面写真内の各空洞において、最大二乗中心法により任意に設定した基準円からの偏差の二乗和が最小となる円の中心を決定し、これを空洞の中心とする。
そして、前記一の直線と前記他の直線とで挟まれた領域内において、空洞の中心から空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離が最も短い10個の空洞を選択する。なお、前記「空洞の中心から空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離」は、前記「空洞の中心」を中心とした円を描画する際に、描画する円の半径を順次大きくし、円弧が最初に空洞含有樹脂成形体の表面に接したときの円の半径とする。
そして、選択した10個の空洞について、各中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)を下記(1)式により算出する。
h(avg)=(Σh(i))/10 ・・・(1)
なお、前記「各中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離h(i)」は、前記空洞含有樹脂フィルムが、湾曲していたり、応力がかかっていたりすると、正確に測定することができないため、測定の際には平面状に載置した状態で測定することが好ましい。
なお、図2Dは空洞の各中心から空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離h(i)を具体的に説明するための図であって、図2Aにおける空洞含有樹脂フィルムのA−A’断面図である。
前記空洞含有樹脂フィルムは、このように、空洞を含有しつつも、空洞含有樹脂フィルムの表面近くに空洞が形成されていないため、優れた表面平滑性を有している。
【0048】
前記h(avg)が、h(avg)>T/100の関係を満たすことにより、前記空洞含有樹脂フィルムからなる空洞含有樹脂フィルム層を有する本発明の食品用包装材は、高い平面性を有したものとなる。そのため、前記食品用包装材を、高輝度性で、印刷等に適したものとすることができる点で、有利である。また、前記空洞含有樹脂フィルムが、前記h(avg)>T/100の関係を満たし、高い平面性を有することにより、前記空洞含有樹脂フィルムからなる空洞含有樹脂フィルム層は、他の層(例えば、保護層、ヒートシール層)との接着性に優れたものとなり、そのため、より丈夫な食品用包装材を得ることができる点でも、有利である。
【0049】
なお、前記したような空洞含有樹脂フィルムは、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
このような空洞含有樹脂フィルムからなる前記空洞含有樹脂フィルム層の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20〜150μmが好ましく、20〜100μmがより好ましく、20〜40μmが更に好ましい。前記厚さが、20μm未満であると、空洞の数が少なくなり遮光性が悪化することがあり、150μmを超えると、剛性(スティフネス)が大きくなり、フイルムの貼り合わせ不良やヒートシール時に熱が伝わりにくくヒートシール不良が発生したりすることがある。一方、前記厚さが、前記更に好ましい範囲内であると、加工性や遮光性の点で、有利である。
【0050】
<ヒートシール層>
前記ヒートシール層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン系シーラントフィルム、ホットメルト接着剤、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを使用することができる。
これらの中でも、前記ヒートシール層は、前記食品用包装材の最内面(包装する食品から最も近い面)に位置し、また、食品用の容器はポリスチレン製であることが汎用的であるため、このような観点から、ポリスチレン系シーラントフィルムが特に好ましい。
【0051】
なお、前記ヒートシール層としては、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ヒートシール層の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10〜50μmが好ましく、20〜30μmが更に好ましい。前記厚さが、10μm未満であると、容器のフランジに対して接着不良を起こすことがあり、50μmを超えると、ヒートシール時に熱が伝わりにくくヒートシール不良が発生したりすることがある。一方、前記厚さが、前記更に好ましい範囲内であると、フランジへの接着性の点で、有利である。
【0052】
<ナイロンフィルム層>
前記食品用包装材は、前記した保護層、空洞含有樹脂フィルム層、ヒートシール層以外にも、更にナイロンフィルム層を有していることが好ましい。
前記ナイロンフィルム層としては、特に制限はなく、従来公知のナイロンフィルムを適宜使用することができる。前記ナイロンフィルム層を積層することによれば、前記食品用包装材にカーリング性を付与することができ、そのため、前記食品用包装材をカップ型容器の開口部の蓋として使用した場合などに、蓋を開けやすく、内容物である食品を摂取し易い形態の包装とすることができる点で、有利である。
【0053】
前記ナイロンフィルム層としては、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ナイロンフィルム層の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10〜30μmが好ましく、15〜25μmがより好ましく、15〜20μmが更に好ましい。前記厚さが、10μm未満であると、カーリング力が弱く剥離しても剥離時の形状を維持できないことがあり、30μmを超えると、剛性(スティフネス)が大きくなり、フイルムの貼り合わせ不良が起こったりすることがある。一方、前記厚さが、前記更に好ましい範囲内であると、カーリング性や加工性の点で、有利である。
【0054】
<その他の層>
前記その他の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カスバリア層などが挙げられる。
前記ガスバリア層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化ビニリデン、ポリビニルアルコールフィルムなどを使用することができる。前記ガスバリア層を積層することによれば、前記食品用包装材のガスバリア性を更に向上させることができ、そのため、保存時や流通過程における食品の酸化等を、より抑制することができると考えられる。前記ガスバリア層としては、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記カスバリア層の厚さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、10〜30μmが好ましい。
【0055】
なお、前記保護層と、前記空洞含有樹脂フィルム層と、前記ヒートシール層とは、この順に積層されてなることが好ましい。この場合、前記保護層は最外面(包装する食品から最も遠い面)となり、前記ヒートシール層は最内面(包装する食品に最も近い面)となる。なお、前記以外の層を積層する位置としては、特に制限はなく、層の種類に応じて適宜選択することができ、前記各層の層間、又は、前記各層の最外面若しくは最内面に、適宜積層することができる。なお、前記ガスバリア層を積層する場合には、空洞含有樹脂フィルム層とヒートシール層との間に、また、前記ナイロンフィルム層を積層する場合には、空洞含有樹脂フィルム層とヒートシール層の間に積層することが好ましい。
【0056】
<特性>
本発明の食品用包装材は、保護層と、前記したような空洞含有樹脂フィルム層と、ヒートシール層とを少なくとも有することから、例えば、封緘強度、遮光性、焼却性などにおいて、様々な優れた特性を有している。
【0057】
−封緘強度−
前記食品用包装材の封緘強度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、150℃以上の封緘温度で容器の開口部を封緘した際の封緘強度が、33.3kPa以上であることが好ましく、35.9kPa以上であることがより好ましく、39.9kPa以上であることが更に好ましい。前記封緘強度は、〔乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和54年4月16日厚生省令第17号)〕(以下乳等省令という)の封緘強度試験法に準じて測定することができる。ただし、前記値は、容器内に空気を流入しつづけ、空気漏れする時点の内圧を測定した値である。
本発明の食品用包装材は、前記したような好ましい封緘強度を有することにより、保存時や流通過程における酸化等を抑制することができ、食品の品質を高度に保持できるという優れた効果を奏することが可能となる。
【0058】
−遮光性−
前記遮光性の指標として遮光率があり、この遮光率はJIS L 1055に規定される。前記食品用包装材の遮光率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上が更に好ましい。前記遮光率は、具体的には、例えば以下のようにして測定することができる。蛍光灯の下にルックスメーターを置き、蛍光灯とルックスメーターの距離を変化させて照度を調節する。次にルックスメーターの上に、食品用包装材を置き、遮光率を次式により求める。
a=(b−c)/b×100
a:遮光率(%)
b:ルックスメーターの照度(LX)
c:ルックスメーターの上に食品用包装材を置いた時の照度(LX)
本発明の食品用包装材は、前記したような好ましい遮光性を有することにより、照明の影響などによる食品の変色や風味の低下等を抑制することができ、食品の品質を高度に保持できるという優れた効果を奏することが可能となる。
【0059】
−焼却性−
前記食品用包装材の焼却性の指標となる焼却残渣率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、食品用包装材を600℃まで空気中で昇温させ、重量減少を測定した際の焼却残渣率が、3%以下であることが好ましく、1%以下であることが好ましく、0.1%以下であることが特に好ましい。具体的には、前記焼却残渣率は、例えば以下のようにして測定することができる。熱重量測定装置(TGA、例えば、TG/DTA6200 セイコ−インスツルメンツ製)を使い、白金セルに食品用包装材を約10mg入れ、昇温速度20℃/minで600℃まで空気雰囲気下で昇温したときの重量残渣を測定する。次いで、焼却残渣率を次式により求める。
d=e/f×100
d:焼却残渣率(%)
e:焼却後の残渣重量(mg)
f:焼却前の食品用包装材の重量(mg)
本発明の食品用包装材は、前記したような好ましい焼却性を有することにより、製造時に型枠で打ち抜いた際などに出るシート端部の抜き残りの処分や、食品を摂取した後の包装材の処分に際して、焼却が容易となり、また、焼却後の残渣も少ないという優れた効果を奏することが可能となる。
【0060】
以上のように、前記食品用包装材は、保護層と、空洞含有樹脂フィルム層と、ヒートシール層とを少なくとも有することにより、封緘強度が高く、遮光性に優れ、かつ、焼却後の残渣も少なく、そのため、様々な食品の包装材として好適に利用可能なものである。
【0061】
前記食品用包装材を用いて包装され得る食品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、野菜、食肉等の生鮮食品、ハム、チーズ、練り物等の加工食品、ケーキ、クッキー等の菓子類、冷凍保存食品、ヨーグルトなどの発酵乳製品、ゼリー等のデザート類などが挙げられる。中でも、前記食品用包装材は、封緘強度が高く、遮光性に優れ、保存時や流通過程における変色や風味の低下、酸化等を抑制できることから、鮮度や風味の維持が求められる、生鮮食品や加工食品用の包装材として、特に好適であると考えられる。
また、前記食品用包装材は、前記食品用包装材のみで、食品を被覆し、包装する用途に使用されてもよいし、他の容器と組み合わせて、食品を包装する用途に使用されてもよい。前記他の容器としては、例えば、カップ型容器などが挙げられ、前記カップ型容器の開口部を、前記食品用包装材で封緘する(前記食品用包装材を蓋として使用する)ことにより、カップ型容器内の食品を包装することができる。前記食品用包装材には、ヒートシール層が積層されてなるため、前記カップ型容器などの開口部に容易に接着させることが可能である。
【0062】
(食品用包装材の製造方法)
本発明の食品用包装材の製造方法は、保護層と、空洞含有樹脂フィルム層と、ヒートシール層とを積層する工程を少なくとも含み、必要に応じてその他の工程を含んでなる。前記その他の工程としては、例えば、前記空洞含有樹脂フィルム層を構成する、空洞含有樹脂フィルムの製造工程などが挙げられる。
【0063】
<空洞含有樹脂フィルムの製造>
前記食品用包装材における空洞含有樹脂フィルム層を構成する空洞含有樹脂フィルムは、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0064】
前記空洞含有樹脂フィルムは、少なくともポリマー成形体を延伸(例えば、2倍〜8倍に延伸)し、空洞を形成させることにより製造することができる。
なお、前記ポリマー成形体とは、前記結晶性ポリマーのみからなり、特に空洞を含有していないものを示し、例えば、ポリマーフィルム、ポリマーシートなどが挙げられる。
前記ポリマー成形体の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性ポリマーがポリエステル樹脂である場合には、溶融製膜方法により好適に製造することができる。また、前記ポリマー成形体の製造は、前記ポリマー成形体の延伸とは独立に行ってもよく、連続的に行ってもよい。
【0065】
前記空洞含有樹脂フィルムの製造においては、前記ポリマー成形体が少なくとも1軸に延伸される。そして、前記延伸により、ポリマー成形体が延伸されるとともに、その内部に第一の延伸方向に沿って配向した空洞が形成されることで、空洞含有樹脂フィルムが得られる。
【0066】
延伸により空洞が形成される理由としては、前記ポリマー成形体を構成する少なくとも1種類の結晶性ポリマーが、複数種類の結晶状態からなり、延伸時に伸張し難い結晶を含む相で、硬い結晶間の樹脂が引きちぎられるような形で剥離延伸されることにより、これが空洞形成源となって空洞が形成されるものと考えられる。
なお、このような延伸による空洞形成は、結晶性ポリマーが1種類の場合だけではなく、2種類以上の結晶性ポリマーが、ブレンド又は共重合されている場合であっても可能である。
【0067】
前記延伸の方法としては、特に制限はなく、例えば、1軸延伸、逐次2軸延伸、同時2軸延伸が挙げられるが、いずれの延伸方法においても、製造時に成形体の流れる方向に沿って縦延伸が行われることが好ましい。
【0068】
一般に、縦延伸においては、ロールの組合せやロール間の速度差により、縦延伸の段数や延伸速度を調節することができる。
前記縦延伸の段数としては、1段以上であれば特に制限はないが、より安定して高速に延伸することができる点及び製造の歩留まりや機械の制約の点から、2段以上に縦延伸することが好ましい。また、2段以上に縦延伸することは、1段目の延伸によりネッキングの発生を確認したうえで、2段目の延伸により空洞を形成させることができる点においても、有利である。
【0069】
−延伸速度−
前記縦延伸の延伸速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10〜36,000mm/minが好ましく、800〜24,000mm/minがより好ましく、1,200〜12,000mm/minが更に好ましい。前記延伸速度が、10mm/min以上であると、充分なネッキングを発現させやすい点で好ましい。また、前記延伸速度が、36,000mm/min以下であると、均一な延伸がしやすくなり、樹脂が破断しづらくなり、高速延伸を目的とした大型な延伸装置を必要とせずにコストを低減できる点で好ましい。したがって、前記延伸速度が、10〜36,000mm/minであると、充分なネッキングを発現させやすく、かつ、均一な延伸がしやすくなり、樹脂が破断しづらくなり、高速延伸を目的とした大型な延伸装置を必要とせずにコストを低減できる点で好ましい。
【0070】
より具体的には、1段延伸の場合の延伸速度としては、1,000〜36,000mm/minが好ましく、1,100〜24,000mm/minがより好ましく、1,200〜12,000mm/minが更に好ましい。
【0071】
2段延伸の場合には、1段目の延伸を、ネッキングを発現させることを主なる目的とした予備的な延伸とすることが好ましい。前記予備的な延伸の延伸速度としては、10〜300mm/minが好ましく、40〜220mm/minがより好ましく、70〜150mm/minが更に好ましい。
【0072】
そして、2段延伸における、前記予備的な延伸(1段目の延伸)によりネッキングを発現させた後の2段目の延伸速度は、前記予備的な延伸の延伸速度と変えることが好ましい。前記予備的延伸によりネッキングを発現させた後の、2段目の延伸速度としては、600〜36,000mm/minが好ましく、800〜24,000mm/minがより好ましく、1,200〜15,000mm/minが更に好ましい。
【0073】
−延伸温度−
延伸時の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、
延伸温度をT(℃)、ガラス転移温度をTg(℃)としたときに、
(Tg−30)(℃)≦T(℃)≦(Tg+50)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することが好ましく、
(Tg−25)(℃)≦T(℃)≦(Tg+50)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することがより好ましく、
(Tg−20)(℃)≦T(℃)≦(Tg+50)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することが更に好ましい。
【0074】
一般に、延伸温度(℃)が高いほど延伸張力も低めに抑えられて容易に延伸できるが、前記延伸温度(℃)が、{ガラス転移温度(Tg)−30}℃以上、{ガラス転移温度(Tg)+50}℃以下であると、空洞含有率が高くなり、アスペクト比が10以上になりやすく、かつ、充分に空洞が発現する点で好ましい。
ここで、前記延伸温度T(℃)は、非接触式温度計により測定することができる。また、前記ガラス転移温度Tg(℃)は、示差熱分析装置(DSC)により測定することができる。
【0075】
なお、前記延伸において、空洞の発現の妨げにならない範囲で、横延伸はしてもよく、しなくてもよい。また横延伸をする場合には、横延伸を利用してフィルムを緩和させたり、熱処理を行ったりしてもよい。
また、延伸後の空洞含有樹脂フィルムは、形状安定化などの目的で、更に熱を加えて熱収縮させたり、張力を加えたりする等の処理をしても良い。
【0076】
図1は、空洞含有樹脂フィルムの製造方法の一例を示す図であって、二軸延伸フィルム製造装置のフロー図である。
図1に示すように、原料樹脂11は、押出機12(原料形状や、製造規模によって、二軸押出機を用いたり、単軸押出し機を用いたりする)内部で熱溶融、混練された後、Tダイ13から柔らかい板状(フィルム又はシート状)に吐出される。
次に、吐出されたフィルム又はシートFは、キャスティングロール14で冷却固化されて、製膜される。製膜されたフィルム又はシートF(「ポリマー成形体」に相当する)は、縦延伸機15に送られる。
そして、製膜されたフィルム又はシートFは、縦延伸機15内で再び加熱され、速度の異なるロール15a間で、縦に延伸される。この縦延伸により、フィルム又はシートFの内部に延伸方向に沿って空洞が形成される。そして、空洞が形成されたフィルム又はシートFは、横延伸機16の左右のクリップ16aで両端を把持されて、巻取機側(図示せず)へ送られながら横に延伸されて、空洞含有樹脂フィルム(空洞含有樹脂成形体)1となる。なお、前記工程において、縦延伸のみを行ったフィルム又はシートFを横延伸機16に供さず、空洞含有樹脂フィルム(空洞含有樹脂成形体)1として使用してもよい。
【0077】
以上のようにして、空洞含有樹脂フィルムを得ることができ、この空洞含有樹脂フィルムからなる空洞含有樹脂フィルム層と、保護層と、ヒートシール層とを積層することにより、本発明の食品用包装材を得ることができる。
【0078】
<積層>
前記保護層と、前記空洞含有樹脂フィルム層と、前記ヒートシール層とをそれぞれ積層する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、接着剤を、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、デップコート、スプレイコート、その他のコーティング法でコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥させて、各層を積層する方法等が挙げられる。前記接着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、エポキシ系、ポリ(メタ)アクリル系、ポリ酢酸ビニル系、ポリオレフィン系ないし変性ポリオレフィン系、カゼイン、ワックス、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリブタジエン系、その他等をビヒクルの主成分とする溶剤型、水性型、無溶剤型、或いは、熱溶融型等の各種の接着剤を挙げることができる。また、前記以外の層(例えば、ナイロンフィルム層、ガスバリア層等)についても、前記と同様な方法で積層することができる。
前記各層を積層する順番としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、得られる食品用包装材において、少なくとも、保護層と、空洞含有樹脂フィルム層と、ヒートシール層とが、この順となるように積層されることが好ましい。この場合、前記保護層は最外面(包装する食品から最も遠い面)となり、前記ヒートシール層は最内面(包装する食品に最も近い面)となる。以上のように各層を積層することにより、本発明の食品用包装材を得ることができる。
【0079】
得られた食品用包装材は、任意の形に成形して使用することができる。例えば、前記食品用包装材は、包装する食品の形状、或いは、食品を充填する容器の開口部の形状に合わせ、型枠を用いて打ち抜くことで、それぞれの食品の包装体や食品充填容器の蓋材として供給することができる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全ての本発明の技術的範囲に包含される。
【0081】
[実施例1]
極限粘度(IV)=0.72であるPBT(ポリブチレンテレフタレート100%樹脂、ポリエステル類)を、溶融押出機を用いて245℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚さ約120μmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を得た。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、40℃の加温雰囲気下で、100mm/minの速度で1軸延伸し、ネッキングが発生したことを確認した後、6,000mm/minの速度で、はじめと同一方向に更に1軸延伸し、80μm厚の空洞含有樹脂フイルムを得た。
この空洞含有樹脂フイルムを、厚さが12μmからなるPETフイルムの内面に、接着剤として「セイカボンドA−342、C−60」(大日精化(株)製)を用い、ドライラミネートして積層フィルムを得た。さらにこの積層フィルムにおける空洞含有樹脂フイルム側(内面側)に、厚さ15μmのナイロンフイルムと厚さ30μmのポリスチレン系シーラントフイルムを順次貼り合わせて積層し、厚さ137μmのシート状フイルムからなる実施例1の食品用包装材を得た。
【0082】
[実施例2]
実施例1において、ポリマーフィルムの厚さを約50μmとしたこと、延伸温度を30℃としたこと、1段目の延伸速度を100mm/minとしたこと、2段目の延伸速度を12,000mm/minとしたこと以外は、実施例1と同様にして、30μm厚の空洞含有樹脂フィルムを得た。得られた空洞含有樹脂フィルムを、実施例1と同様に、厚さ12μmのPETフィルムの内面に積層し、さらにこの積層フィルムにおける空洞含有樹脂フイルム側(内面側)に、厚さ15μmのナイロンフイルムと厚さ30μmのポリスチレン系シーラントフイルムを順次貼り合わせて積層し、厚さ87μmのシート状フィルムからなる実施例2の食品用包装材を得た。
【0083】
[実施例3]
実施例1において、厚さ15μmのナイロンフィルムを積層しないこと以外は、実施例1と同様にして、62μm厚のシート状フィルムからなる実施例3の食品用包装材を得た。
【0084】
[実施例4]
アイソタクティック ポリプロピレン(ポリプロピレン100%樹脂、Aldrich社製、重量平均分子量19万、数平均分子量5万、MFI:35g/10min(ASTM D1238、230℃・2.16kg)、Tm:170〜175℃)を、溶融押出機を用いて210℃でTダイから押出し、キャスティングド
ラムで固化させて、厚さ約150μmのポリマーフィルムを得た。このポリマーフィルムを1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、35℃の加温雰囲気下で、12,000mm/minの速度で、1段で1軸延伸し、50μm厚の空洞含有樹脂フイルムを得た。
この空洞含有樹脂フイルムを、厚さが12μmからなるPETフイルムの内面に、接着剤として「セイカボンドA−342、C−60」(大日精化(株)製)を用い、ドライラミネートして積層フィルムを得た。さらにこの積層フィルムにおける空洞含有樹脂フイルム側(内面側)に、厚さ15μmのナイロンフイルムと厚さ30μmのポリスチレン系シーラントフイルムを順次貼り合わせて積層し、厚さ107μmのシート状フイルムからなる実施例4の食品用包装材を得た。
【0085】
[実施例5]
相対粘度2.7、MI=2であるナイロンMXD6 S6007(三菱ガス化学(株)製)(ポリアミド類)を、溶融押出機を用いて260℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚さ約120μmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を得た。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、80℃の加温雰囲気下で、100mm/minの速度で1軸延伸し、ネッキングが発生したことを確認した後、6,000mm/minの速度で、はじめと同一方向に更に1軸延伸し、40μm厚の空洞含有樹脂フイルムを得た。
この空洞含有樹脂フイルムを、厚さが12μmからなるPETフイルムの内面に、接着剤として「セイカボンドA−342、C−60」(大日精化(株)製)を用い、ドライラミネートして積層フィルムを得た。さらにこの積層フィルムにおける空洞含有樹脂フイルム側(内面側)に、厚さ15μmのナイロンフイルムと厚さ30μmのポリスチレン系シーラントフイルムを順次貼り合わせて積層し、厚さ97μmのシート状フイルムからなる実施例5の食品用包装材を得た。
【0086】
[比較例1]
厚さが12μmからなるPETフイルムの内面に、ウレタン樹脂に対して25重量%のアルミニウムフィラーの入った金属フィラー入り樹脂を、両端部を除いて均一に塗布して乾燥した。金属フィラー入り樹脂の塗布量は4g/m(乾燥後)とした。
さらにこの金属フィラー入り樹脂の上に厚さ15μmのナイロンフイルムと厚さ30μmのポリスチレン系シーラントフイルムを貼り合わせて積層し、厚さ61μmのシート状フイルムからなる比較例1の食品用包装材を得た。
なお、前記金属フィラー入り樹脂層が空洞を含有しないものであることを、走査型電子顕微鏡(S−4800日立ハイテクノロジー社製)により確認した。
【0087】
[比較例2]
実施例1と同様のPBT(ポリブチレンテレフタレート100%樹脂、ポリエステル類)を用い、実施例1と同様の方法で、厚さ120μmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を得た。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を、延伸せずに用い、実施例1の空洞含有樹脂フィルムに代えて、厚さ12μmのPETフィルムの内面に積層した。さらにこの積層フィルムにおけるポリマー成形体(ポリマーフィルム)側(内面側)に、厚さ15μmのナイロンフイルムと、厚さ30μmのポリスチレン系シーラントフイルムを順次貼り合わせて積層し、厚さ177μmのシート状フィルムからなる比較例2の食品用包装材を得た。
なお、前記ポリマー成形体(ポリマーフィルム)が空洞を含有しないものであることを、走査型電子顕微鏡(S−4800日立ハイテクノロジー社製)により確認した。
【0088】
[比較例3]
実施例1において、厚さ80μmの空洞含有樹脂フィルムを積層しないこと以外は、実施例1と同様にして、57μm厚のシート状フィルムからなる比較例3の食品用包装材を得た。
【0089】
実施例1〜5及び比較例1〜3の食品用包装材の製造につき、表1にまとめて示す。
【0090】
−厚さの測定方法−
キーエンス社製、ロングレンジ接触式変位計AF030(測定部)、AF350(指示部)を用いて測定した。
【0091】
−空洞含有率の測定方法−
比重を測定し、この比重に基づいて算出した。
具体的には、空洞含有率を下記の(1)式により算出した。
空洞含有率(%)={1−(延伸後の樹脂フィルムの密度)/(延伸前のポリマーフィルムの密度)} ・・・(1)
【0092】
−アスペクト比の測定方法−
樹脂フィルムの表面に垂直で、かつ、縦延伸方向に直角な断面(図2B参照)と、前記樹脂フィルムの表面に垂直で、かつ、前記縦延伸方向に平行な断面(図2C参照)を、走査型電子顕微鏡を用いて300〜3000倍の適切な倍率で検鏡し、前記各断面写真において測定枠をそれぞれ設定した。この測定枠は、その枠内に空洞が50〜100個含まれるように設定した。また、前記走査型電子顕微鏡による検鏡により、空洞が縦延伸方向に沿って配向していることを確認した。
次に、測定枠に含まれる空洞の数を計測し、前記縦延伸方向に直角な断面の測定枠(図2B参照)に含まれる空洞の数をm個、前記縦延伸方向に平行な断面の測定枠(図2C参照)に含まれる空洞の数をn個とした。
そして、前記縦延伸方向に直角な断面の測定枠(図2B参照)に含まれる空洞の1個ずつの厚み(r)を測定し、その平均の厚さをrとした。また、前記縦延伸方向に平行な断面の測定枠(図2C参照)に含まれる空洞の1個ずつの長さ(L)を測定し、その平均の長さをLとした。
即ち、r及びLは、それぞれ下記の(2)式及び(3)式で表すことができる。
r=(Σr)/m ・・・(2)
L=(ΣL)/n ・・・(3)
そして、L/rを算出し、アスペクト比とした。
【0093】
−フィルム表面に最も近くに位置する空洞からフィルム表面までの距離の測定方法−
樹脂フィルムの表面に垂直で、かつ、縦延伸方向に直角な断面(図2D参照)を、走査型電子顕微鏡を用いて300〜3000倍の適切な倍率で検鏡し、断面写真を撮像した。
撮像の際には、前記樹脂フィルムを平面状に載置した状態で走査型電子顕微鏡にセットして撮像した。
前記断面写真内において、厚みの算術平均値Tを算出した。各樹脂フィルムにおいて算出された厚みの算術平均値Tは、上記「−厚さの測定方法−」で測定された厚さ(表1参照)と同じであった。
次に、前記断面写真内において、厚み方向に平行な任意の一の直線を描画し、更に、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線を描画した。また、前記走査型電子顕微鏡による検鏡により、空洞が縦延伸方向に沿って配向していることを確認した。
そして、断面写真内の各空洞において、最大二乗中心法により任意に設定した基準円からの偏差の二乗和が最小となる円の中心を決定し、これを空洞の中心とした。
そして、前記一の直線と前記他の直線とで挟まれた領域内において、空洞の中心から樹脂フィルム上面までの距離が最も近い10個の空洞を選択した。なお、前記「空洞の中心から樹脂フィルム上面までの距離」は、前記「空洞の中心」を中心とした円を描画する際に、描画する円の半径を順次大きくし、円弧が最初に樹脂フィルムの表面に接したときの円の半径とした。
そして、選択した10個の空洞について、各中心から前記樹脂フィルムの上面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)を下記(4)式により算出した。
h(avg)=(Σh(i))/10 ・・・(4)
【0094】
【表1】

【0095】
[評価]
実施例1〜5及び比較例1〜3の食品用包装材について、下記の評価を行った。
【0096】
(1)封緘強度の評価
各食品用包装材を直径71mmに型枠で切り抜き蓋材を成形した。この蓋材を用いて容器の開口部を封緘し、〔乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和54年4月16日厚生省令第17号)〕(以下乳等省令という)の封緘強度試験法に準じて封緘強度試験を行った。ただし、容器内に空気を流入しつづけ、空気漏れする時点の内圧を測定した。なお、封緘温度は180℃とした。
−封緘強度の評価基準−
○:封緘強度(空気漏れする時点の内圧)が33.3kPa以上。
×:封緘強度(空気漏れする時点の内圧)が33.3kPa未満。
【0097】
(2)遮光性の評価(遮光率の測定)
蛍光灯の下にルックスメーター(商品名LX2、三和電気計器製)を置き、蛍光灯とルックスメーターの距離を変化させて照度を調節した。次にルックスメーターの上に、各食品包装材を置き、遮光率を測定した。なお、遮光率は次式により求めた。
a=(b−c)/b×100
a:遮光率(%)
b:ルックスメーターの照度(LX)
c:ルックスメーターの上に食品用包装材を置いた時の照度(LX)
−遮光性の評価基準−
○:遮光率が90%以上である。
×:遮光率が90%未満である。
【0098】
(3)焼却性の評価(焼却残渣率の測定)
熱重量測定装置(TGA、TG/DTA6200 セイコ−インスツルメンツ製)を使い、白金セルに各食品用包装材を約10mg入れ昇温速度20℃/minで600℃まで空気雰囲気下で昇温したときの重量残渣を測定した。
d=e/f×100
d:焼却残渣率(%)
e:焼却後の残渣重量(mg)
f:焼却前の食品用包装材の重量(mg)
−焼却性(残渣の少なさ)の評価基準−
○:焼却残渣率が3%以下である。
×:焼却残渣率が3%を超える。
【0099】
(4)風味変化測定試験
常法に従って製造されたヨーグルトを100mlの容器に入れ、各食品用包装材で蓋を成形し、それぞれを、この蓋で封緘して10℃で500ルックスの照明下に14日間置き、風味を測定した。尚、風味の評価方法は、ヨーグルトを口に含み、製造直後の風味を10点とし、ムレ臭や日なた臭が激しく、食品として適さないものを5点とした。その間を5段階(9点、8点、7点、6点、5点)に区切って風味の変化を評価測定した。
以上の評価結果を、表2に示す。
【0100】
【表2】

【0101】
表2によれば、実施例1〜5のみが、封緘強度が高く、遮光性に優れ、かつ、焼却後の残渣も少ない(焼却残渣率が低い)食品用包装材であることがわかる。また、実施例1〜5の食品用包装材は、照明の影響などによる保存時の食品の風味の低下を抑制することができ、品質を高度に保持できるものであることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】図1は、本発明の食品用包装材における空洞含有樹脂フィルム層を構成する空洞含有樹脂フィルムの製造方法の一例を示す図であって、二軸延伸フィルム製造装置のフロー図である。
【図2A】図2Aは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、空洞含有樹脂フィルムの斜視図である。
【図2B】図2Bは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、図2Aにおける空洞含有樹脂フィルムのA−A’断面図である。
【図2C】図2Cは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、図2Aにおける空洞含有樹脂フィルムのB−B’断面図である。
【図2D】図2Dは、空洞の各中心から空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離h(i)を具体的に説明するための図であって、図2Aにおける空洞含有樹脂フィルムのA−A’断面図である。
【符号の説明】
【0103】
1 空洞含有樹脂フィルム(空洞含有樹脂成形体)
1a 表面
100 空洞
L 空洞の配向方向における空洞の長さ
r 空洞の配向方向に直交する厚み方向における空洞の長さ
h(i) 空洞の中心から空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離
T 空洞の配向方向に直交する断面における厚みの算術平均値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護層と、空洞含有樹脂フィルム層と、ヒートシール層とを有してなり、
前記空洞含有樹脂フィルム層が、結晶性を有するポリマーからなり、長尺状の空洞をその長さ方向が一方向に配向した状態で内部に含有する空洞含有樹脂フィルムであって、
前記空洞含有樹脂フィルムにおける、前記空洞の配向方向に直交する断面において、前記空洞の中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離が最も短い10個の前記空洞について、各中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)が、次式、h(avg)>T/100、の関係を満たし、
[但し、Tは、前記断面における厚みの算術平均値を表し、10個の前記空洞は、前記厚み方向に平行な任意の一の直線と、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線とで挟まれた領域内に存在する空洞の中から選択される。]
かつ、前記空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比が10以上である空洞含有樹脂フィルムからなることを特徴とする食品用包装材。
【請求項2】
更に、ナイロンフィルム層を有する請求項1に記載の食品用包装材。
【請求項3】
結晶性を有するポリマーが、ポリオレフィン類、ポリエステル類、及び、ポリアミド類から選択される少なくともいずれかである請求項1から2のいずれかに記載の食品用包装材。
【請求項4】
結晶性を有するポリマーが、ポリエステル類である請求項1から3のいずれかに記載の食品用包装材。
【請求項5】
結晶性を有するポリマーが、生分解性ポリマーである請求項1から4のいずれかに記載の食品用包装材。
【請求項6】
150℃以上の封緘温度で容器の開口部を封緘した際の封緘強度が33.3kPa以上である請求項1から5のいずれかに記載の食品用包装材。
【請求項7】
遮光率が90%以上である請求項1から6のいずれかに記載の食品用包装材。
【請求項8】
600℃まで空気中で昇温させた際の焼却残渣率が3%以下である請求項1から7のいずれかに記載の食品用包装材。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の食品用包装材の製造方法であって、
保護層と、空洞含有樹脂フィルム層と、ヒートシール層とを積層する工程を含むことを特徴とする食品用包装材の製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【公開番号】特開2009−190745(P2009−190745A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31055(P2008−31055)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】