説明

食品用包装材料

【課題】保温性を有し、低コストで安全な、紙を主原料とする食品用包装材料を提供する。
【解決手段】鱗片状アルミニウム粉末を含有する製剤をアルミニウム成分が2〜20重量%となるよう配合した水性インキを、アルミニウム濃度が0.04〜3g/mの塗布量となるよう印刷してなることを特徴とする紙を主原料とする食品用包装材料3。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保温性に優れた、紙を主原料とする食品用包装材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品用包装材料は、食品の保存の際に汚染を防止して食品の衛生状態を保持するとともに、取り扱い時や食事の際に手指等に食品が付着するのを防ぐ目的で使用される。ハンバーガーやサンドイッチ、おにぎり等には紙を主原料とする包装材料が使用されることが多いが、紙を主原料としたものは、食品の汚染防止や衛生状態の保持には一定の効果を有するものの、外部環境、特に、外気温の影響を受けやすいために内部の食品が冷めやすく、食事の際に十分な温かさを保持することが困難であった。紙をポリエチレンなどの各種コーティング剤で被覆したり、これらの材料を複数積層したりした包装材料を使用することで保温性をある程度高めることができるが、十分とはいえなかった。
【0003】
紙を主原料とする包装材料として、アルミニウムを使用した包装材料がある。紙を主原料とする包装材料にアルミニウムを使用する方法として、アルミニウムを蒸着する方法やアルミニウム箔を用いる方法がある。蒸着法は薄膜で光沢もよく、バリアー性や保温効果が期待できる方法であるが、金属光沢を現出させるためにアンダーコート層を設ける必要があり、その上に蒸着を施すために、製造コストが大きくなるという欠点を有する。
【0004】
また、アルミニウム箔をラミネートなどの方法で包装材料に加工する方法では、アルミニウムの持つ熱伝導性が高く放熱を促進するため、かえって保温性が得られない場合がある。さらには、内容物包装品の検品時に金属探知器に反応してしまい、異物検査ができない事態が生じる。また、アルミニウム箔を使用した場合は製造コストが大きくなることに加え、内容物包装品を電子レンジにて加熱した場合、マイクロ波によりスパークを起こし包装材料にダメージを与える点が指摘される。また、紙として廃棄できないため、使用後の分別の際不利であった。
【0005】
一方で、鱗片状アルミニウム粉末を使用した印刷インキは、従来、有機溶剤型が主流であった。有機溶剤型の印刷インキは頻繁に包装材料用途に使用されてきたが、製法上、多量の鉱物油を含む形態で供給されているため、鉱物油の残留臭気が抜けず、食品包装用としては大きな課題があった。このため、鱗片状アルミニウム粉末を含有する印刷インキは単なる意匠上の目的のための印刷に使用されるのみであった。
【0006】
ところで、鱗片状アルミニウム粉末を安定的に水性インキに応用する場合、従来、アルミニウムと水とが反応して水素ガスが発生したり、安定に分散しない等の問題があり、化学的・技術的な課題の解決を要していたが、近年のコーティング技術の進歩に伴い、塗料中で安定に分散し、高輝度のまま水性化ができる材料が供給されるようになった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題を解決し、保温性を有し、低コストで安全な、紙を主原料とした食品用包装材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の紙を主原料とする食品用包装材料は、鱗片状アルミニウム粉末を含有する製剤をアルミニウム成分が2〜20重量%となるよう配合した水性インキを、アルミニウム濃度が0.04〜3g/mの塗布量となるよう印刷してなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の紙を主原料とする食品用包装材料は、前記水性インキの印刷面積が30%以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の紙を主原料とする食品用包装材料は、鱗片状アルミニウム粉末を含有する製剤をアルミニウム成分が2〜20重量%となるよう配合した水性インキを、アルミニウム濃度が0.04〜3g/mの塗布量となるよう印刷してなることで、食品から輻射される熱線を反射して内部にかえすこと、鱗片状アルミニウム粉末が塗膜中に平行に配列し包装材からの蒸気の通過を抑制することで、内容物が冷めにくい食品用包装材料を提供することができる。
さらに、鱗片状アルミニウム粉末を含有する水性インキの印刷面積が30%以上とすることにより、保温効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例、比較例における保温性能試験での温度測定用のセンサーの挿入位置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の紙を主原料とする食品用包装材料は、鱗片状アルミニウム粉末を含有する製剤をアルミニウム成分が2〜20重量%となるよう配合した水性インキを、アルミニウム濃度が0.04〜3g/mの塗布量となるよう印刷してなることを特徴とする。
【0013】
本発明に使用される鱗片状アルミニウム粉末を含有する製剤は、鱗片状アルミニウム粉末がコーティング剤により表面処理され、水性インキ中に安定に分散するものを使用する。鱗片状アルミニウムの被膜としては、モリブデン、シリカ等が挙げられるが、水性インキとして使用できるものであれば、本発明の機能を阻害しない限りあらゆるものが使用できる。鱗片状のアルミニウム粉末は塗布した際に塗膜中に平行に配列し、粒状、板状、塊状などの他の形状のアルミニウム粉末に比べ、塗膜に優れ、メタリック感及び輝度が高い。このため、熱線の反射性能が高く、包装材からの蒸気の通過を抑制する効果も併せ、最も保温効果に優れている。また、鱗片状アルミニウム粉末は、保温性向上のため効率的に熱線を反射できるよう、高輝度のものを使用することが望ましい。
【0014】
水性インキに使用される樹脂成分は、スチレン/アクリル系共重合体樹脂のほか、スチレン/ブタジエン系共重合体樹脂、メタクリレート/ブタジエン系共重合体樹脂、アクリルニトリル/ブタジエン系共重合体樹脂、アクリル系共重合体樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂、ポリウレタン系共重合体樹脂などが挙げられるが、本願発明の鱗片状アルミニウム粉末による保温性等の機能を阻害しない限り、どのようなものを使用してもよい。
【0015】
本発明の紙を主原料とする食品用包装材料は、鱗片状アルミニウム粉末を印刷インキとして使用することにより、アルミニウムを蒸着した場合やアルミニウム箔を使用した場合に比較して、製造コストを大幅に下げることができる。
【0016】
また、印刷インキを水性とすることで、水性インキの製造過程で必然的に鱗片状アルミニウムから鉱物油を洗浄、除去されるため、印刷面積を大きくしても残留臭気が発生せず、食品用包装材料として好ましい。
【0017】
また、本発明の紙を主原料とする食品用包装材料は、前記水性インキの印刷面積が30%以上であることを特徴とする。印刷は網点印刷でもベタ印刷でもよく、印刷面積の総和が30%以上であればよい。
【0018】
本発明の紙を主原料とする食品用包装材料には、他の保温・断熱手段を併用することが好適である。本発明と同時に併用することができる保温・断熱手段は特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルムで紙を被覆する方法、さらに複数の材料を積層する方法、包装材料に空気を保持することで保温効果を得るために、パルプ、合成樹脂製等の不織布やクレープ加工を施した紙と組み合わせる方法等が挙げられる。
【0019】
通常、包装材料の表面には様々な意匠の印刷を施すことが多い。本願発明に係る食品用包装材料の鱗片状アルミニウム粉末を含有する印刷インキによる印刷は、その意匠の一部として他の印刷インキと同時に印刷することができるため、製造コストの低下や短納期化に大幅に寄与することができるだけでなく、アルミニウム粉末独特のメタリック感により意匠の向上も望むことができる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。実施例、比較例中の配合比は、すべて重量比を示す。
【0021】
1.ワニスaの製造
スチレン/アクリル共重合体樹脂a(ジョンクリル74、BASF社製)82.6部、水15部、ワックス(PE系)2部、消泡剤0.4部を混合し、ワニスaを製造した。
2.鱗片状アルミニウム含有水性インキの製造
鱗片状アルミニウム、スチレン/アクリル共重合体樹脂b、ワニスaを表1に示す比率で混合し、A、B、C三種類の水性インキを得た。
【0022】
【表1】

【0023】
ここで、鱗片状アルミニウム粉末を含有する製剤として、鱗片状アルミニウムA[エメラル EMR−5660(東洋アルミ製)、アルミニウム比率:50%、粒径:10μm]、鱗片状アルミニウムB[エメラル D125(東洋アルミ製)、アルミニウム比率:55%、粒径:18μm]、鱗片状アルミニウムC[ロトバリオアクア610 015(エカルト製)、アルミニウム比率:36%、粒径:10μm]を使用した。また、スチレン/アクリル共重合体樹脂bとして、ジョンクリル61(BASF社製)を使用した。
【0024】
3.実施例
(1)実施例1
水性インキAをバーガーラップ紙(坪量21g)/PE(厚さ10μm)の紙面にバーコーターにて塗布量約10g/m、印刷面積100%にて印刷し、実施例1の包装材料を得た。
【0025】
(2)実施例2
水性インキBを使用した以外は実施例1と同様にして実施例2の包装材料を得た。
【0026】
(3)実施例3
水性インキCを使用した以外は実施例1と同様にして実施例3の包装材料を得た。
【0027】
(4)実施例4
水性インキAを印刷面積30%として印刷した以外は実施例1と同様にして実施例4の包装材料を得た。
【0028】
(5)実施例5
水性インキAを印刷面積20%として印刷した以外は実施例1と同様にして実施例5の包装材料を得た。
【0029】
(6)実施例6
水性インキAを上質紙(坪量21g)に実施例1と同様にして印刷面積100%として印刷した後、印刷面にエクストルーダーを用いてPE(厚さ10μm)をラミネートして、実施例6の包装材を得た。
【0030】
(7)実施例7
紙(坪量21g)/PE(厚さ10μm)/紙(坪量21g)/PE(厚さ10μm)の4層をキルティング状にラミネートしたマクドナルド社「BIG AMERICA NEW YORK」包装材の最外装の表側になる紙面に、水性インキAを使用して印刷したもの(アルミニウムインキ印刷面積約33%、アルミニウムインキ印刷部分塗布量約10g/m)を実施例7の包装材料とした。
【0031】
(8)実施例8
実施例7の包装材料に、水性インキAを同じ塗布量で残り面に追加印刷してアルミニウムインキの印刷面積を100%にしたものを実施例8とした。
【0032】
4.比較例
(1)比較例1
包装材を使用しない状態を比較例1とした。
【0033】
(2)比較例2
パール顔料[イリオジン 120 ルスターサテン(メルク社製)]8.5部、スチレン/アクリル共重合体樹脂b 39部、ワニスa 49部、水3.5部を混合し、水性インキを得た。得られた水性インキをバーガーラップ紙(坪量21g)/PE(厚さ10μm)の紙面にバーコーターにて塗布量約10g/m、印刷面積100%にて印刷し、比較例2の包装材料を得た。
【0034】
(3)比較例3、4
各材料を下記の比率で混合し、サンドミルで分散して一般的なベースインキA、Bを得た。
ベースインキA:顔料(フタロシアニンブルー)30部、スチレン/アクリル共重合体樹脂b 39部、水30部、消泡剤0.5部
ベースインキB:顔料(カーボンブラック)30部、スチレン/アクリル共重合体樹脂b 29.5部、水40部、消泡剤0.5部
表2に示す比率で混合して比較例3、4として使用する水性インキを得た。
【0035】
【表2】

【0036】
尚、ワックス、消泡剤はワニスaに使用したワックス、消泡剤と同じものを使用した。得られた各々の水性インキをバーガーラップ紙(坪量21g)/PE(厚さ10μm)の紙面にバーコーターにて塗布量約10g/m、印刷面積100%にて印刷し、比較例3、4の包装材料を得た。
【0037】
(4)比較例5
印刷のないバーガーラップ紙(坪量21g)/PE(厚さ10μm)を比較例5とした。
【0038】
(5)比較例6
アルミ箔(厚さ8μm)/紙でキルティング状にラミネートしたマクドナルド社「McSKILLET BURRIT」包装材を比較例6とした。
【0039】
(6)比較例7
アルミ箔[クッキングホイル(東洋アルミエコープロダクツ株式会社) 厚さ12μm]を比較例7の包装材料とした。
【0040】
5.比較試験
(1)保温性能試験
実施例、比較例で得た保温性材料を寸法230×290mm大きさに裁断して使用した。予め、実施例1〜3に使用したものと同じバーガーラップ紙(坪量21g)/PE(厚さ10μm)で同様の大きさに裁断したものにてマクドナルド社のハンバーガーを、PE層を内側にして包み、950Wの家庭用電子レンジで90秒間加熱し、直ちに、当該実施例および比較例の包装材に包み替えた。その際に、比較例6は紙層を内側に、比較例7はアルミ箔単体であるためそのまま、その他はPE層を内側にしてハンバーガーを包んだ。
さらに、図1のようにハンバーガーの中心部に温度測定用のセンサーの中心がくるように、センサーを挿入し、外気温度25℃、外気湿度60%にしてハンバーガー中心部の温度が90℃になる点を開始として50分間の温度変化を測定した。温度測定にはサーモプリンターAP−210(足立計器株式会社製)を使用した。
【0041】
(2)光沢度測定
実施例1〜3及び8、比較例2〜7をデジタル携帯用光沢計VG−2P−D3型(日本電色工業株式会社製)にて光学条件JIS 8742に準拠60°−60°にて光沢度を測定した。
【0042】
(3)L値測定
実施例1〜3及び8、比較例2〜7を分光測色濃度計X−Rite 530(エックスライト株式会社製)にてCIE LのL値の測定を行った。
(1)〜(3)の評価結果を表3に示す。
【0043】
【表3】

【0044】
表3に示すように実施例1〜8において、紙を主原料とする包装材料に鱗片状のアルミニウム粉末を含有する水性インキを印刷することにより、内容物が冷めにくい包装材料を提供することができた。特に、実施例1〜4及び6〜8において、特に好ましい結果が得られた。比較例6〜7では実施例と同等の保温性が得られたものの、アルミニウム箔を使用しているため、電子レンジ適正、リサイクル性等の問題を有する。
【符号の説明】
【0045】
1 温度測定用のセンサー
2 ハンバーガー
3 包装材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鱗片状アルミニウム粉末を含有する製剤をアルミニウム成分が2〜20重量%となるよう配合した水性インキを、アルミニウム濃度が0.04〜3g/mの塗布量となるよう印刷してなることを特徴とする紙を主原料とする食品用包装材料。
【請求項2】
前記水性インキの印刷面積が30%以上であることを特徴とする請求項1記載の紙を主原料とする食品用包装材料。

【図1】
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【公開番号】特開2013−23220(P2013−23220A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156056(P2011−156056)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000205410)大阪印刷インキ製造株式会社 (12)
【出願人】(511172210)株式会社ヨシモト印刷社 (2)
【Fターム(参考)】