説明

食品用包装紙

【課題】紙の通気性や透湿性を損なうことなく、耐水性、耐油性、対カール性、リリース性を有し、さらに、再加熱によっても食品から発生する蒸気や油分の熱で融着することなく、容易に開封可能な食品用包装紙を提供する。
【解決手段】1種又は2種以上の(メタ)アクリレート系モノマーと1種又は2種以上のビニル系モノマーとから形成され、ガラス転移点が−10℃〜50℃である酸含有コポリマーを主成分とし、フィラーを含有する水性ニスからなるコート層を、秤量19〜700g/mの紙にフレキソ印刷法により塗工・乾燥して形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の水分や油分の外面への浸み出し防止や、水分を含んだ食品が包装紙に付着することを防止するため、コーティング剤をコーティングした食品用包装紙に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ハンバーガーなどのファストフードの包装紙は、食品の水分や油分の外面への浸み出し防止や、水分を含んだ食品の包装紙への付着防止(リリース性)、さらにヒートシールによる袋体への加工のため、食品に直接接する面にポリエチレンをラミネートしたポリエチレンラミネート紙が大部分である(下記特許文献1参照)。しかし、紙に比較して著しく透湿性や通気性の劣るポリエチレンをラミネートすると、熱い食品から発生する蒸気がポリエチレン表面で結露し、食品がべたつきやすい傾向がある。
【0003】
さらに、ファストフードは再度電子レンジにて加熱する場合があり、ポリエチレンラミネート紙は、食品から発生する蒸気の熱や油分でポリエチレンが軟化・融着して、包装紙を容易に開封できなくなることもある。
【0004】
また、ポリエチレンラミネート紙は古紙として再離解出来ないため、一般古紙リサイクルラインではリサイクルが不可能で、専用リサイクルラインのみしか処理が出来ない問題点がある。
更に環境面では、ポリエチレンを代表とするプラスチックフィルムは、石油などの化石原料を主原料としているが、その生産には多量の『温室効果ガス』が排出されている。これら包装材料も含め商品のライフサイクルの各過程で排出された『温室効果ガスの量』を合算し、得られた全体の量を二酸化炭素量に換算して包装材等に表示する『カーボンフットプリント』の導入が全世界で広がっている。特にファーストフード包装に代表されるいわゆる‘使い捨て’の包装材料は、特に『温室効果ガス』の削減義務があると叫ばれており、特に包装の簡素化、プラスチック使用量の削減等の取り組みが求められている。更に排出量の少ない商品は消費者イメージ向上にもつながり、新たなビジネスチャンスとなりうる可能性がある。
【0005】
ファストフードの包装紙に耐水性、耐油性を付与する方法として、紙にフッ素系樹脂およびフッ素を含む撥水・撥油剤をコーティングする方法もあるが、このような紙を焼却処分する際は、環境に影響を与える可能性のある様々な含フッ素分解物が発生することもありうる。現在、食品衛生法ではフッ素系樹脂およびフッ素を含む撥水・撥油剤に対しての規定は無いが、フッ素系樹脂およびフッ素を含む撥水・撥油剤は地球環境、人の健康に影響を与える可能性が拭いきれないため、なるべくフッ素樹脂を用いない食品用包装紙が求められている。
【0006】
さらに、ファストフードの包装紙に耐水性、耐油性を付与した紙としては、パラフィンワックス、カルナバワックス等のワックス類を紙に含浸もしくは表面コートしたワックス紙があるが、特にハンバーガー等の蒸気と油を多量に含む食品を包装したときには、耐水性、耐油性に問題がある。また加熱された食品の熱量によっては、ワックスが再溶融し、食品に付着する可能性もある。
【0007】
通常水系のコーティング剤を特に薄用紙の様な薄紙に塗工した場合、紙が膨潤し、その間に含浸した樹脂が乾燥して皮膜化することにより、コーティング側に、カールが発生し、紙の裁断時や成型加工時の加工適性を著しく低下させることがある。これを解決する一般的な方法として、紙の水分調整剤として保湿性の高いグリセリン、プロピレングリコールといった多価アルコール系溶剤をコーティング剤に添加する方法があるが、水分を含むファストフードの包装紙として使用する場合、コーティング剤の耐水性の低下や、これら保湿剤の成分のブリードによる食品への付着の可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−2540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、紙の通気性や透湿性を損なうことなく、食品の包装用として不可欠な耐水性、耐油性、耐カール性、リリース性を有し、さらに、電子レンジ等による再加熱を行っても、食品から発生する蒸気や油分の熱で融着することなく、容易に開封可能な食品用包装紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)1種又は2種以上の(メタ)アクリレート系モノマーと1種又は2種以上のビニル系モノマーとから形成され、ガラス転移点が−10℃〜50℃である酸含有コポリマーを主成分とし、フィラーを含有する水性ニスを、秤量19〜700g/mの紙にフレキソ印刷法により塗工・乾燥して形成されるコート層を有する、通気性、透湿性と耐水性・耐油性とを兼ね備え、耐カール性、食品リリース性に優れることを特長とする食品用包装紙。
(2)さらに、前記水性ニスが、ワックスと、消泡剤と、分散剤と、レベリング剤とから選ばれる添加剤のうち少なくとも1種を含有することを特徴とする前記(1)記載の食品用包装紙。
(3)前記酸含有コポリマーが、ブチルアクリレート(BA)、エチルアクリレート(EA)、エチルメタクリレート(EMA)、メチルアクリレート(MA)、メチルメタクリレート(MMA)、N−プロピルメタクリレートから選ばれる1種以上のモノマーを、酸含有コポリマーを構成するモノマー全体の50重量%以上となるよう含有し、アクリル酸(AA)、フマル酸、グリシジルメタクリレート(GMA)、N−ヘキシルメタクリレート(HMA)、イタコン酸、メタクリル酸(MAA)から選ばれる1種以上のモノマーを、各モノマーについて酸含有コポリマーを構成するモノマー全体の5重量%以下となるよう含有し、アクリロニトリル、ブタジエン、2−エチルヘキシルアクリレート、スチレン、ビニルアセテート、ビニルクロライド、ビニリデンクロライドから選ばれる1種以上のモノマーを、酸含有コポリマーを構成するモノマー全体の50重量%以下となるよう含有して、共重合させてなるポリマーであることを特長とする前記(1)または(2)記載の食品用包装紙。
(4)前記フィラーが、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、マイカから選ばれる1種又は2種以上のフィラーであることを特長とする前記(1)乃至(3)いずれか一項に記載の食品用包装紙。
(5)前記コート層の乾燥塗布重量が3〜15g/mであることを特長とする前記(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の食品用包装紙。
(6)全ての構成成分が、FDA176.170のポジティブリストに記載され、さらにFDA使用条件(食品タイプ、温度制限)に制限がない組成にて構成されていることを特長とする前記(1)乃至(5)いずれか一項に記載の食品用包装紙。
(7)ファストフード用であることを特長とする前記(1)乃至(6)のいずれか一項に記載の食品用包装紙。
【発明の効果】
【0011】
本発明の食品用包装紙は、上記構成を有するため、紙の通気性や透湿性を保ちながら、食品の包装用として不可欠な耐水性、耐油性、リリース性も有し、さらに、電子レンジ等による再加熱を行っても、食品から発生する蒸気や油分の熱で融着することなく、容易に開封可能である。リサイクル性も高く、既存の古紙リサイクル設備でリサイクル可能である。さらに、フィラーを含む水性のコーティング剤を使用することで、表面を平滑にするとともに紙のカールする傾向の抑制に有効である。また、フレキソ印刷法によってコート層を形成することにより、別ラインや別の場所へ移動することなく図柄の印刷とコート層の形成を行うことができ、従来のポリエチレンラミネート紙に比較して、設備投資や維持管理費の削減、納期の短縮化、輸送コストの低減など経済的であり、また、輸送距離が少なくなるため、COなどの環境への負担も軽減できる。コーティング剤にフィラーを含有することで相対的に安価な天然由来の無機物が増え、コストの低減になるとともに、消費の過程で必然的に発生するCOの低減にも寄与できる。現在、日本の食品衛生法では紙に関する明確な衛生規格がないため、全ての構成成分を、FDA176.170のポジティブリスト(紙、板紙成分−油、水分を含む食品接触用)に基づくことで、より安全性の高い食品用包装紙を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の食品用包装紙は、1種又は2種以上の(メタ)アクリレート系モノマーと1種又は2種以上のビニル系モノマーとから形成され、ガラス転移点が−10℃〜50℃である酸含有コポリマーを主成分とし、フィラーを含有する水性ニスを、秤量19〜700g/mの紙にフレキソ印刷法により塗工・乾燥して形成されるコート層を有する
【0013】
前記酸含有コポリマーを構成する(メタ)アクリレート系モノマーとしては、ブチルアクリレート(BA)、エチルアクリレート(EA)、エチルメタクリレート(EMA)、メチルメタクリレート(MMA)、N−プロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート(GMA)、N−ヘキシルメタクリレート(HMA)、2−エチルヘキシルアクリレート、メタクリル酸(MAA)等が挙げられ、前記酸含有コポリマーを構成するビニル系モノマーとしては、アクリル酸(AA)、フマル酸、イタコン酸、メチルアクリレート(MA)、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン、ビニルアセテート、ビニルクロライド、ビニリデンクロライド等が挙げられる。
【0014】
本発明に使用する前記酸含有コポリマーは、ブチルアクリレート(BA)、エチルアクリレート(EA)、エチルメタクリレート(EMA)、メチルアクリレート(MA)、メチルメタクリレート(MMA)、N−プロピルメタクリレートから選ばれる1種以上のモノマーを、酸含有コポリマーを構成するモノマー全体の50重量%以上となるよう含有し、アクリル酸(AA)、フマル酸、グリシジルメタクリレート(GMA)、N−ヘキシルメタクリレート(HMA)、イタコン酸、メタクリル酸(MAA)から選ばれる1種以上のモノマーを、各モノマーについて酸含有コポリマーを構成するモノマー全体の5重量%以下となるよう含有し、アクリロニトリル、ブタジエン、2−エチルヘキシルアクリレート、スチレン、ビニルアセテート、ビニルクロライド、ビニリデンクロライドから選ばれる1種以上のモノマーを、酸含有コポリマーを構成するモノマー全体の50重量%以下となるよう含有して、共重合させてなるポリマーであるのが、通気性や透湿性、耐水性、耐油性、リリース性が効果的に発現し、好ましい。
【0015】
本発明において、前記酸含有コポリマーのガラス転移点は、−10℃〜50℃である必要がある。前記酸含有コポリマーのガラス転移点が−10℃〜50℃であるよう構成することにより、紙が本来有する通気性や透湿性を保ちながら、食品の包装用として不可欠な耐水性、耐油性、リリース性も有する。さらに、電子レンジ等による再加熱を行っても、食品から発生する蒸気や油分の熱で融着することなく、容易に開封可能である。
【0016】
前記酸含有コポリマーの製造方法は特に限定されず、乳化重合等の一般的な重合方法を使用できる。
【0017】
本発明において、コート層を形成する前記水性ニスに含有される前記酸含有コポリマーの配合割合は、塗工時の水性ニス全体に対し、10重量%以上となるようにするのが好ましい。塗工時の水性ニス全体に対し、10重量%未満の場合は、食品用包装紙の耐水性、耐油性が低下しやすい。
【0018】
本発明において、コート層を形成する水性ニスには、フィラーが含有される。前記フィラーとしては、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、マイカ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、リザルダイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、スメクタイト、ベントナイト、ヘクトライト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石等の各種粘土鉱物が挙げられるが、特に、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、マイカから選ばれる1種又は2種以上のフィラーであるのが好ましい。フィラーを含有することにより、従来の水系のコーティング剤を塗工した場合コーティング側にカールが発生するという問題が解決され、水性ニスによってコート層を形成しても耐カール性に優れる。また、食品のリリース性、コート層形成時のブロッキング防止性も向上する。
【0019】
本発明において、コート層を形成する前記水性ニスに含有されるフィラーの配合割合は、塗工時の水性ニス全体に対し、5〜50重量%となるようにするのが好ましい。塗工時の水性ニス全体に対し、5重量%未満の場合は耐カール性が低下しやすく、50重量%を超えると、水性ニスの粘度が高くなり、フレキソ印刷性が低下しやすい。
【0020】
本発明において、コート層を形成する水性ニスには、ワックスが含有されるのが好ましい。ワックスを含有することにより、耐水性、耐油性が向上する。ワックスとしては、植物系蝋(木蝋、カルナバ蝋)、動物性蝋(蜜蝋、ラノリン)、石油ワックス(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム)、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス)、ポリアマイド系ワックス、シリコンワックスエチレンアクリル酸系ワックス等が挙げられる。
【0021】
本発明において、コート層を形成する水性ニスには、消泡剤が含有されるのが好ましい。消泡剤を含有することにより、コート層をフレキソ印刷法で塗工する際の塗工適性が向上する。消泡剤としては、疎水性シリカ系、金属石鹸系、アマイド系、シリコン系、ポリエーテル系、鉱物油系、ワックス系、アクリル系、アセチレンジオール系等の消泡剤が挙げられる。
【0022】
本発明において、コート層を形成する水性ニスには、分散剤が含有されていてもよい。分散剤を含有することにより、コート層をフレキソ印刷法で塗工する際の塗工適性が向上する。分散剤としては、界面活性剤系(アニオン系、ノニオン系、カチオン系)、ポリカルボン酸系、ナフタレン縮合系、脂肪族アルコールサルフェート系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ビニルポリマー系、アセチレンジオール系、ポリアミノアマイド系等の分散剤が挙げられる。
【0023】
本発明において、コート層を形成する水性ニスには、レベリング剤が含有されていてもよい。レベリング剤を含有することにより、コート層をフレキソ印刷法で塗工する際の塗工適性が向上する。レベリング剤としては、界面活性剤系(アニオン系、ノニオン系、カチオン系)、シリコン系ビニルポリマー系、アルコールアルコキシレート系、アセチレンジオール系等のレベリング剤が挙げられる。
【0024】
本発明において、コート層を形成する前記水性ニスに含有されるワックス、消泡剤、分散剤、レベリング剤の各配合割合は、所望のコート層の性質に応じて適宜設定される。ワックスは、塗工時の水性ニス全体に対し40重量%以下となるのが好ましい。ワックスが、塗工時の水性ニス全体に対し40重量%を超えると通気性が低下しやすくなる。消泡剤は、塗工時の水性ニス全体に対し3重量%以下となるのが好ましい。消泡剤が、塗工時の水性ニス全体に対し3重量%を超えると、塗工時にピンホール(抜け)が発生しやすくなる。レベリング剤または分散剤はそれぞれ、塗工時の水性ニス全体に対し3重量%以下となるのが好ましい。レベリング剤または分散剤が、塗工時の水性ニス全体に対し3重量%を超えると耐水性・耐油性が低下しやすくなる。
【0025】
本発明においては、前記水性ニスには、必要に応じ、増粘剤、脱泡剤、表面調整剤、防腐剤、顔料、滑剤、粘着付与剤、湿潤剤、耐水化剤、架橋剤等の添加剤を本発明の作用を阻害しない範囲で含有しても良い。
【0026】
本発明においては、前記水性ニスの構成成分は、水または水/エタノール=10/0〜5/5等の溶媒に溶解・分散されてニスとして使用される。
【0027】
本発明の食品用包装紙に基材として使用する紙は秤量19〜700g/mのものである必要がある。坪量19g/m未満であると、製紙及び印刷(コート層の形成)過程で紙切れが発生しやすく、安定した食品用包装紙の生産が困難である。また本発明の食品用包装紙がハンバーガーラップに使用される場合の紙の坪量としては19〜40g/mであるのが望ましい。ハンバーガーラップに使用する場合、秤量40g/mを超える紙を用いた場合はハンバーガーを包装したときの紙戻り、風合い低下等の問題が生じやすい。本発明の食品用包装紙がカートン等の素材に使用される場合には、200〜700g/mの板紙が好適である。秤量200g/m未満の場合は製函後の剛性が弱く、700g/mを超えると成形性が著しく低下する。基材として使用する紙の構成は特に限定されず、通常食品用包装紙に使用される紙が使用できる。本発明の食品用包装紙は食品に使用される紙の為、食品衛生法の基準を満たした紙を使用する必要がある。具体的には材質中のPCB含有量が5ppm以下(環食第442号)、蛍光物質の溶出が無いこと(環食第244号)、重金属(鉛として)の溶出量が1ppm以下である事である。
【0028】
本発明においては、全ての構成成分が、FDA176.170のポジティブリストに記載され、さらにFDA使用条件(食品タイプ、温度制限)に制限がない組成にて構成されているのが、より安全性の高い食品用包装紙を提供でき、好ましい。
【0029】
本発明において、コート層はフレキソ印刷法により、上記水性ニスを塗工・乾燥して形成される。フレキソ印刷法によってコート層を形成することにより、フレキソ印刷装置を有していれば、従来のポリエチレンラミネート紙のように別ラインや別の場所へ移動することなく図柄の印刷とコート層の形成を行うことができる。さらに、反転して同時両面フレキソ印刷を行う設備があれば、1パスで同時に図柄とコート層の形成が可能となる。従って、従来のフレキソ印刷装置を利用でき、ラミネート設備が必要なポリエチレンラミネート紙に比較して、設備投資や維持管理費の削減、納期の短縮化、輸送コストの低減など経済的でコストダウンが可能となり、また、輸送距離が少なくなるため、COなどの発生も少なく環境への負担も軽減できる。
【0030】
本発明における、フレキソ印刷法によるコート層の塗工および乾燥条件は、水性ニスの成分等により適宜設定できるが、コート層の乾燥塗布重量は3〜15g/mであるのが好ましい。乾燥塗布重量が3g/m未満であると耐油、耐水性が著しく低下する。また15g/mを超えると、機能面では通気性、紙の風合いの低下、フレキソ印刷適性としては紙にシワが発生し均一に塗工できない等の不具合が発生しやすい。なお、コート層は、水性ニスの1回の塗布で塗工を行ってもよいし、複数回の塗工を重ねて行ってもよい。また、前記コート層の形成は、紙の片面のみでも、両面であっても良い。紙の表面には、図柄等が印刷されていても良い。本発明の食品用包装紙は、コート層の形成をフレキソ印刷法で行うため、上述のように、図柄の印刷がある場合により有利であるため、図側の印刷はフレキソ印刷法で行うのが好ましい。図柄の印刷用インク等は通常一般に使用するものを使用できる。
【実施例】
【0031】
実施例1
(酸含有コポリマーAの合成)
圧力計、温度計、攪拌機、窒素ガス導入管及び2つの滴下槽を備えた密閉型圧力反応装置に、脱イオン水120重量部、N−(1,2−ジカルボキシエチル)−N−オクタデシルスルホサクシネートのテトラナトリウム塩0.02重量部、モノマー成分がスチレン:アクリル酸:メタクリル酸=2:1:1(重量比)であるポリマー12重量部、及び25重量%アンモニア水2重量部を仕込み、85℃の条件下で攪拌溶解した。
滴下槽1にエチルアクリレート20重量部、エチルメタクリレート54重量部、2−エチルヘキシルアクリレート14重量部を仕込み、3時間かけて反応槽に滴下し、滴下槽2に水30重量部、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.2重量部の溶解物を仕込み、4時間かけて反応槽に滴下した。重合の間、反応槽は85℃の温度に調整した。
こうしてTg=32℃の酸含有コポリマーAが得られ、その固形分は約40重量%であった。

(水性ニスAの調製
上記の方法で得られた酸含有コポリマーAを用いて、下記処方の水性ニスAを調製した(単位:重量部)。
食品添加物用タルク: 10(平均粒子径:8μm)
酸含有コポリマーA : 80
パラフィンワックス :1
デヒドラン1513 :0.3(シリコン系消泡剤 BASFジャパン(株)
1、2−ベンズイソチアゾリン−3−オン:0.05(防腐剤)
サーフィノール420:0.3
(アセチレンジオール系レベリング剤 エアープロダクツジャパン(株)
水 :8.35
合計 :100重量部
以上の配合からなる溶液をサンドミルにて分散し、水性ニスAを調製した。

(食品用包装紙No.1の作成)
上記水性ニスAを、離合舎製ザーンカップ#3で25秒になるまで水にて希釈し、400線/inセラミックアニロックスロールを用いたフレキソ印刷機にてフレキソ印刷法により王子特殊紙社製21g/m薄用紙にインライン3度塗工し、乾燥して、乾燥塗布重量5.5〜6.0g/mのコート層を形成した。
【0032】
実施例2
(酸含有コポリマーBの合成)
圧力計、温度計、攪拌機、窒素ガス導入管及び2つの滴下槽を備えた密閉型圧力反応装置に、脱イオン水120重量部、N−(1,2−ジカルボキシエチル)−N−オクタデシルスルホサクシネートのテトラナトリウム塩0.02重量部、モノマー成分がスチレン:アクリル酸:メタクリル酸=2:1:1(重量比)であるポリマー12重量部、及び25重量%アンモニア水2重量部を仕込み、85℃の条件下で攪拌溶解した。
滴下槽1にブチルアクリレート20重量部、エチルメタクリレート36重量部、2−エチルヘキシルアクリレート34重量部を仕込み、3時間かけて反応槽に滴下し、滴下槽2に水30重量部、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.2重量部の溶解物を仕込み、4時間かけて反応槽に滴下した。重合の間、反応槽は85℃の温度に調整した。
こうしてTg=−3℃の酸含有コポリマーBが得られ、その固形分は約40重量%であった。

(水性ニスBの調製
上記の方法で得られた酸含有コポリマーBを用いて、下記処方の水性ニスBを調製した(単位:重量部)。
食品添加物用タルク:20 (平均粒子径:8μm)
酸含有コポリマーB : 60
パラフィンワックス :1
デヒドラン1513 :0.3(シリコン系消泡剤 BASFジャパン(株)
1、2−ベンズイソチアゾリン−3−オン:0.05(防腐剤)
サーフィノール420:0.3
(アセチレンジオール系レベリング剤 エアープロダクツジャパン(株)
水 :18.35
合計 :100重量部
以上の配合からなる溶液をサンドミルにて分散し、水性ニスBを調製した。

(食品用包装紙No.2の作成)
上記水性ニスBを、離合舎製ザーンカップ#3で25秒になるまで水にて希釈し、400線/inセラミックアニロックスロールを用いたフレキソ印刷機にてフレキソ印刷法により王子特殊紙社製21g/m薄用紙にインライン3度塗工し、乾燥して、乾燥塗布重量5.5〜6.0g/mのコート層を形成した。
【0033】
実施例3
(酸含有コポリマーCの合成)
圧力計、温度計、攪拌機、窒素ガス導入管及び2つの滴下槽を備えた密閉型圧力反応装置に、脱イオン水120重量部、N−(1,2−ジカルボキシエチル)−N−オクタデシルスルホサクシネートのテトラナトリウム塩0.02重量部、モノマー成分がスチレン:アクリル酸:メタクリル酸=2:1:1(重量比)であるポリマー12重量部、及び25重量%アンモニア水2重量部を仕込み、85℃の条件下で攪拌溶解した。
滴下槽1にエチルアクリレート34重量部、エチルメタクリレート50重量部、スチレン6重量部仕込み、3時間かけて反応槽に滴下し、滴下槽2に水30重量部、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.2重量部の溶解物を仕込み、4時間かけて反応槽に滴下した。重合の間、反応槽は85℃の温度に調整した。
こうしてTg=44℃の酸含有コポリマーCが得られ、その固形分は約40重量%であった。

(水性ニスCの調製
上記の方法で得られた酸含有コポリマーCを用いて、下記処方の水性ニスCを調製した(単位:重量部)。
食品添加物用タルク : 8 (平均粒子径:8μm)
酸含有コポリマーC : 82
パラフィンワックス :1
デヒドラン1513 :0.3(シリコン系消泡剤 BASFジャパン(株)
1、2−ベンズイソチアゾリン−3−オン:0.05(防腐剤)
サーフィノール420:0.3
(アセチレンジオール系レベリング剤 エアープロダクツジャパン(株)
水 :8.35
合計 :100重量部
以上の配合からなる溶液をサンドミルにて分散し、水性ニスCを調製した。

(食品用包装紙No.3の作成)
上記水性ニスCを、離合舎製ザーンカップ#3で25秒になるまで水にて希釈し、400線/inセラミックアニロックスロールを用いたフレキソ印刷機にてフレキソ印刷法により王子特殊紙社製21g/m薄用紙にインライン3度塗工し、乾燥して、乾燥塗布重量5.5〜6.0g/mのコート層を形成した。
【0034】
実施例4
(水性ニスDの調製
酸含有コポリマーとして、市販のポリマー(商品名:PDX−7326 BASF(株) ガラス転移点:9℃)を用いて、下記の処方で水性ニスDを調製した(単位:重量部)。
食品添加物用タルク :20 (平均粒子径:8μm)
PDX−7326 :60 (スチレンアクリル系ポリマー BASF(株))
パラフィンワックス:1
デヒドラン1513 :0.3(シリコン系消泡剤 BASFジャパン(株)
サーフィノール420:0.3
(アセチレンジオール系レベリング剤 エアープロダクツジャパン(株)
水 :18.4
合計 :100重量部
以上の配合からなる溶液をサンドミルにて分散し、水性ニスDを調製した。

(食品用包装紙No.4の作成)
上記水性ニスDを、離合舎製ザーンカップ#3で25秒になるまで水にて希釈し、400線/inセラミックアニロックスロールを用いたフレキソ印刷機にてフレキソ印刷法により王子特殊紙社製21g/m薄用紙にインライン3度塗工し、乾燥して、乾燥塗布重量5.5〜6.0g/mのコート層を形成した。
【0035】
実施例5
(食品用包装紙No.5の作成)
実施例1で作成した水性ニスAを、離合舎製ザーンカップ#3で25秒になるまで水にて希釈し、1度目400線/in、2度目235線/in、3度目235線/inの塗布量の異なるセラミックアニロックスロールを用いたフレキソ印刷機にてフレキソ印刷法により王子特殊紙社製21g/m薄用紙にインライン3度塗工し、乾燥して、乾燥塗布重量10.0〜10.5g/mのコート層を形成した。
【0036】
実施例6
(食品用包装紙No.6の作成)
実施例1で作成した水性ニスAを、離合舎製ザーンカップ#3で25秒になるまで水にて希釈し、235線/inのセラミックアニロックスロールを用いたフレキソ印刷機にてフレキソ印刷法により王子特殊紙社製21g/m薄用紙の食品接触面となる側にインライン2度塗工し、乾燥した。さらに、前記紙の反対側の面(食品非接触面となる側)に、400線/inのセラミックアニロックスロールを用いたフレキソ印刷機にてフレキソ印刷法によりインライン1度塗工し、乾燥して、総乾燥塗布重量10.0〜10.5g/mのコート層を形成した。
【0037】
実施例7
(水性ニスEの調製
実施例2で得られた酸含有コポリマーBを用いて、下記処方の水性ニスEを調製した(単位:重量部)。
含水カオリン:20 (平均粒子径:0.4μm)
酸含有コポリマーB : 60
パラフィンワックス :1
デヒドラン1513 :0.3(シリコン系消泡剤 BASFジャパン(株)
1、2−ベンズイソチアゾリン−3−オン:0.05(防腐剤)
サーフィノール420:0.3
(アセチレンジオール系レベリング剤 エアープロダクツジャパン(株)
水 :18.35
合計 :100重量部
以上の配合からなる溶液をサンドミルにて分散し、水性ニスEを調製した。

(食品用包装紙No.7の作成)
上記水性ニスEを、離合舎製ザーンカップ#3で25秒になるまで水にて希釈し、400線/inセラミックアニロックスロールを用いたフレキソ印刷機にてフレキソ印刷法により王子特殊紙社製21g/m薄用紙にインライン3度塗工し、乾燥して、乾燥塗布重量5.5〜6.0g/mのコート層を形成した。
【0038】
実施例8
(水性ニスFの調製
実施例1で得られた酸含有コポリマーAを用いて、下記処方の水性ニスFを調製した(単位:重量部)。
食品添加物用タルク:10 (平均粒子径:8μm)
酸含有コポリマーA :80
パラフィンワックス :1
デヒドラン1513 :0.3(シリコン系消泡剤 BASFジャパン(株)
1、2−ベンズイソチアゾリン−3−オン:0.05(防腐剤)
SNディスパーサント5040:0.5
(ポリカルボン酸系分散剤 サンノプコ(株))
水 :8.15
合計 :100重量部
以上の配合からなる溶液をサンドミルにて分散し、水性ニスFを調製した。

(食品用包装紙No.8の作成)
上記水性ニスFを、離合舎製ザーンカップ#3で25秒になるまで水にて希釈し、400線/inセラミックアニロックスロールを用いたフレキソ印刷機にてフレキソ印刷法により王子特殊紙社製21g/m薄用紙にインライン3度塗工し、乾燥して、乾燥塗布重量5.5〜6.0g/mのコート層を形成した。
【0039】
参考例1
(食品用包装紙No.9の作成)
実施例1で作成した水性ニスAを、離合舎製ザーンカップ#3で25秒になるまで水にて希釈し、400線/inセラミックアニロックスロールを用いたフレキソ印刷機にてフレキソ印刷法により王子特殊紙社製21g/m薄用紙に一回塗工し、乾燥して、乾燥塗布重量1.2〜1.5g/mのコート層を形成した。
【0040】
参考例2
(食品用包装紙No.10の作成)
実施例1で作成した水性ニスAを、離合舎製ザーンカップ#3で25秒になるまで水にて希釈し、200線/inセラミックアニロックスロールを用いたフレキソ印刷機にてフレキソ印刷法により王子特殊紙社製21g/m薄用紙にインライン3度塗工し、乾燥して、乾燥塗布重量16.0〜16.5g/mのコート層を形成した。
【0041】
参考例3
(水性ニスJの調製
酸含有コポリマーとして市販ポリマー(商品名:PDX−7341 BASF(株) ガラス転移点:15℃)を用いて、下記の処方で水性ニスJを調製した(単位:重量部)。なお、PDX−7341は、FDA176.170の使用条件の制限(食品タイプ、使用温度)に制限がある。
食品添加物用タルク :20 (平均粒子径:8μm)
PDX−7341 :60 (スチレンアクリル系ポリマー BASF(株))
パラフィンワックス:1
デヒドラン1513 :0.3(シリコン系消泡剤 BASFジャパン(株)
サーフィノール420:0.3
(アセチレンジオール系レベリング剤 エアープロダクツジャパン(株)
水 :18.4
合計 :100重量部
以上の配合からなる溶液をサンドミルにて分散し、水性ニスJを調製した。

(食品用包装紙No.11の作成)
上記水性ニスJを、離合舎製ザーンカップ#3で25秒になるまで水にて希釈し、400線/inセラミックアニロックスロールを用いたフレキソ印刷機にてフレキソ印刷法により王子特殊紙社製21g/m薄用紙にインライン3度塗工し、乾燥して、乾燥塗布重量5.5〜6.0g/mのコート層を形成した。
【0042】
比較例1
(酸含有コポリマーEの合成)
圧力計、温度計、攪拌機、窒素ガス導入管及び2つの滴下槽を備えた密閉型圧力反応装置に、脱イオン水120重量部、N−(1,2−ジカルボキシエチル)−N−オクタデシルスルホサクシネートのテトラナトリウム塩0.02重量部、モノマー成分がスチレン:アクリル酸:メタクリル酸=2:1:1(重量比)であるポリマー12重量部、及び25重量%アンモニア水2重量部を仕込み、85℃の条件下で攪拌溶解した。
滴下槽1にエチルアクリレート10重量部、エチルメタクリレート50重量部、スチレン28重量部を仕込み、3時間かけて反応槽に滴下し、滴下槽2に水30重量部、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.2重量部の溶解物を仕込み、4時間かけて反応槽に滴下した。重合の間、反応層は85℃の温度に調整した。
こうしてTg=71℃の酸含有コポリマーEが得られ、その固形分は約40重量%であった。

(水性ニスGの調製
上記の方法で得られた酸含有コポリマーEを用いて、下記処方の水性ニスGを調製した(単位:重量部)。
食品添加物用タルク :5 (平均粒子径:8μm)
酸含有コポリマーE : 85
パラフィンワックス :1
デヒドラン1513 :0.3(シリコン系消泡剤 BASFジャパン(株)
1、2−ベンズイソチアゾリン−3−オン:0.05(防腐剤)
サーフィノール420:0.3
(アセチレンジオール系レベリング剤 エアープロダクツジャパン(株)
水 :8.35
合計 :100重量部
以上の配合からなる溶液をサンドミルにて分散し、水性ニスGを調製した。

(食品用包装紙No.12の作成)
上記水性ニスGを、離合舎製ザーンカップ#3で25秒になるまで水にて希釈し、400線/inセラミックアニロックスロールを用いたフレキソ印刷機にてフレキソ印刷法により王子特殊紙社製21g/m薄用紙にインライン3度塗工し、乾燥して、乾燥塗布重量5.5〜6.0g/mのコート層を形成した。
【0043】
比較例2
(水性ニスHの調製
酸含有コポリマーとして、市販のポリマー(商品名:PDX−7326 BASF(株) ガラス転移点:9℃)を用いて、下記の処方で水性ニスHを調製した。
PDX−7326 : 92 (スチレンアクリル系ポリマー BASF(株))
パラフィンワックス:1
デヒドラン1513 :0.3(シリコン系消泡剤 BASFジャパン(株)
サーフィノール420:0.3
(アセチレンジオール系レベリング剤 エアープロダクツジャパン(株)
水 :6.4
合計 :100重量部
以上の配合からなる溶液をサンドミルにて分散し、水性ニスHを調製した。

(食品用包装紙No.13の作成)
上記水性ニスHを、離合舎製ザーンカップ#3で25秒になるまで水にて希釈し、400線/inセラミックアニロックスロールを用いたフレキソ印刷機にてフレキソ印刷法により王子特殊紙社製21g/m薄用紙にインライン3度塗工し、乾燥して、乾燥塗布重量5.5〜6.0g/mのコート層を形成した。
【0044】
比較例3
(水性ニスIの調製
実施例1で得られた酸含有コポリマーAを用いて、下記処方の水性ニスIを調製した(単位:重量部)。
酸含有コポリマーA : 92
パラフィンワックス :1
デヒドラン1513 :0.3(シリコン系消泡剤 BASFジャパン(株)
1、2−ベンズイソチアゾリン−3−オン:0.05(防腐剤)
サーフィノール420:0.3
(アセチレンジオール系レベリング剤 エアープロダクツジャパン(株)
水 :6.35
合計 :100重量部
以上の配合からなる溶液をサンドミルにて分散し、水性ニスIを調製した。

(食品用包装紙No.14の作成)
上記水性ニスIを、離合舎製ザーンカップ#3で25秒になるまで水にて希釈し、400線/inセラミックアニロックスロールを用いたフレキソ印刷機にてフレキソ印刷法により王子特殊紙社製21g/m薄用紙にインライン3度塗工し、乾燥して、乾燥塗布重量5.5〜6.0g/mのコート層を形成した。
【0045】
比較例4
(食品用包装紙No.15の作成)
実施例1で作成した水性ニスAを、離合舎製ザーンカップ#3で20秒になるまで水/エタノール=1/1溶剤で希釈し、175線/in、∠0、スタイラス120°、ヘリオ版を用いたグラビア印刷機にて、グラビア印刷により王子特殊紙社製21g/m薄用紙に2回塗工し、乾燥して、乾燥塗布重量5.0〜5.5g/mのコート層を形成した。
【0046】
比較例5
(食品用包装紙No.16)
ポリエチレンラミネート紙として、21g/m薄用紙に約10μmの膜厚のポリエチレンをラミネートした、マクドナルド社“フィレオフィシュ”包装紙を、食品用包装紙No.16とした。
【0047】
比較例6
(食品用包装紙No.17)
ワックス紙として、21g/m薄用紙に約10μmの膜厚のワックスを塗布した、マクドナルド社“マッククリスピー”包装紙を、食品用包装紙No.17とした。
【0048】
試験方法
(1)水分浸透試験(耐水性)
実施例、参考例、および比較例の包装紙のコート層面に水100%に湿潤させた白綿布を置き、5分間静置後の紙への水分の染みこみ度合いを目視判定する。
評価基準:優10← →1劣

(2)油分浸透試験(耐油性)
実施例、参考例、および比較例の包装紙のコート層面にサラダ油を塗布し、約30分間静置後のサラダ油の染みこみ度合いを目視判定する。
評価基準:優10← →1劣

(3)耐内容物試験(耐ハンバーガーテスト)
[1]バンズリリース試験
実施例、参考例、および比較例の包装紙を25×29cm幅にカットし、試験試料とする。

調理直後のマクドナルド社“フィレオフィシュ”を上記試験試料で包装し、約1時間静置する。

包装を解き、試験試料と“フィレオフィシュ”のバンズとの離型性を官能評価する。
評価基準:優10← →1劣

[2]水・油分の浸透性評価(耐水性・耐油性)
実施例、参考例、および比較例の包装紙を25×29cm幅にカットし、試験試料とする。

調理直後のマクドナルド社“マックポーク”を上記試験試料で包装し、約1時間静置する。

1700W電子レンジで1分間加熱する。

加熱5分後、試験試料への水・油分の浸透度合いを目視にて判定する。
評価基準:優10← →1劣

[3]バンズベタ付き評価
上記[2]にて使用した、電子レンジ加熱5分後の包装を解き、“マックポーク”に使用のバンズのベタ付き度合いを目視及び指触にて判定する。
評価基準:優10← →1劣

(4)カール角測定(耐カール性)
測定方法:JAPAN TAPPI 規格No.15−3 紙−カール試験方法−第3部:カール角測定法
・温湿度:25℃、60%
・調湿時間:4時間
・包装紙の横方向をカール軸とし、コート層面を外側にして測定
※数値が低いほどカールが少ない

(5)通気性
測定方法:
JIS P8117 −紙及び板紙の透気度試験方法−に準拠
645mmの面積の試料を空気100ml通過するのに要した時間(秒)
※数値が低いほど通気性が良い

(6)透湿性
測定方法:
JAPAN TAPPI 規格No.7 −紙及び板紙 透湿度試験方法−に準拠
※数値が高い程、透湿性が高い

(7)FDA評価
評価: ○・・・FDA176.170の使用条件の制限(食品タイプ、使用温度)にて制限はかからず、食品包装に使用される紙のコート剤として適している。
評価: △・・・FDA176.170の使用条件の制限規格(食品タイプ、使用温度)より、使用可能な食品が限定される。特にハンバーガー等のファストフード包装紙としては適さない。
【0049】
実施例、参考例、及び比較例の包装紙について、上記試験を行った試験結果を表1〜5に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】


*1:測定不能(1000秒以上)
*2:塗工時に紙に“シワ”が入り、均一に塗布することが困難であった。
【0053】
【表4】


*3:水性ニス塗工後、ロール状に巻き取り、常温下(20〜30℃)で7日間保管すると、ニスと紙の背面とでブロッキングが発生。
【0054】
【表5】


*4:斑模様に染みこみムラがある。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の食品用包装紙は、紙の通気性や透湿性を保ちながら、優れた耐水性、耐油性、耐カール性、リリース性を有し、さらに、電子レンジ等による再加熱を行っても、食品から発生する蒸気や油分の熱で融着することなく、容易に開封可能であり、食品の包装用として好適である。特に、ファストフード、中でもハンバーガーのラップ紙は、耐水性、耐油性、バンズのリリース性が重要であり、本発明の食品用包装紙が好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種又は2種以上の(メタ)アクリレート系モノマーと1種又は2種以上のビニル系モノマーとから形成され、ガラス転移点が−10℃〜50℃である酸含有コポリマーを主成分とし、フィラーを含有する水性ニスを、秤量19〜700g/mの紙にフレキソ印刷法により塗工・乾燥して形成されるコート層を有する、通気性、透湿性と耐水性・耐油性とを兼ね備え、耐カール性、食品リリース性に優れることを特長とする食品用包装紙。
【請求項2】
さらに、前記水性ニスが、ワックスと、消泡剤と、分散剤と、レベリング剤とから選ばれる添加剤のうち少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1記載の食品用包装紙。
【請求項3】
前記酸含有コポリマーが、ブチルアクリレート(BA)、エチルアクリレート(EA)、エチルメタクリレート(EMA)、メチルアクリレート(MA)、メチルメタクリレート(MMA)、N−プロピルメタクリレートから選ばれる1種以上のモノマーを、酸含有コポリマーを構成するモノマー全体の50重量%以上となるよう含有し、アクリル酸(AA)、フマル酸、グリシジルメタクリレート(GMA)、N−ヘキシルメタクリレート(HMA)、イタコン酸、メタクリル酸(MAA)から選ばれる1種以上のモノマーを、各モノマーについて酸含有コポリマーを構成するモノマー全体の5重量%以下となるよう含有し、アクリロニトリル、ブタジエン、2−エチルヘキシルアクリレート、スチレン、ビニルアセテート、ビニルクロライド、ビニリデンクロライドから選ばれる1種以上のモノマーを、酸含有コポリマーを構成するモノマー全体の50重量%以下となるよう含有して、共重合させてなるポリマーであることを特長とする請求項1または2に記載の食品用包装紙。
【請求項4】
前記フィラーが、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、マイカから選ばれる1種又は2種以上のフィラーであることを特長とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の食品用包装紙。
【請求項5】
前記コート層の乾燥塗布重量が3〜15g/mであることを特長とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の食品用包装紙。
【請求項6】
全ての構成成分が、FDA176.170のポジティブリストに記載され、さらにFDA使用条件(食品タイプ、温度制限)に制限がない組成にて構成されていることを特長とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の食品用包装紙。
【請求項7】
ファストフード用であることを特長とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の食品用包装紙。

【公開番号】特開2013−35600(P2013−35600A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−55189(P2012−55189)
【出願日】平成24年3月12日(2012.3.12)
【出願人】(000205410)大阪印刷インキ製造株式会社 (12)
【出願人】(511172210)株式会社ヨシモト印刷社 (2)
【出願人】(591005888)睦化学工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】