説明

食品用品質改良剤、水産練り製品および畜産練り製品

【課題】耐熱性に優れ、処理工程を増やすことなく、油脂の分離を抑制して食品内部まで食感を改善することができる食品用品質改良剤、水産練り製品および畜産練り製品を提供する。
【解決手段】食品用品質改良剤は、ゼラチン水溶液とトランスグルタミナーゼと動物性油脂とを混合し乳化および架橋させて成る。全体量に対しゼラチンは乾燥重量で5乃至7.5質量%、動物性油脂は25乃至40質量%、トランスグルタミナーゼは0.005乃至0.015質量%、水は18.5乃至94質量%の範囲で含まれる。水産練り製品では植物性タンパク質を5乃至10質量%含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用品質改良剤、水産練り製品および畜産練り製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、保存性を高めるために、畜産練り製品や水産練り製品などのレトルト食品が広く利用されている。しかし、畜産練り製品に対して、レトルト処理や加熱処理を行うと、硬くなったり、ぱさついたりするという問題があった。また、水産練り製品に対して、レトルト処理や加熱処理を行うと、しなやかな弾力性が失われるという問題があった。これらの大きな要因として、油脂の分離が考えられる。
【0003】
このような問題を解決するために、トランスグルタミナーゼおよびゼラチンを動物性食品素材の表面にコーティングした後、食品素材を加熱処理することにより、食感の低下や油脂の分離を抑制しようとする加工食品の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2007−60920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の加工食品の製造方法では、トランスグルタミナーゼおよびゼラチンを食品素材の表面にコーティングする方法のため、食品素材の内部まで食感の改善を図ることはできないという課題があった。また、コーティング処理を必要とするため、処理工程が増えるという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、耐熱性に優れ、処理工程を増やすことなく、油脂の分離を抑制して食品内部まで食感を改善することができる食品用品質改良剤、水産練り製品および畜産練り製品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る食品用品質改良剤は、ゼラチンとトランスグルタミナーゼと動物性油脂とを含むことを、特徴とする。特に、本発明に係る食品用品質改良剤は、ゼラチン水溶液とトランスグルタミナーゼと動物性油脂とを混合し乳化および架橋させて成ることが好ましい。
【0008】
本発明に係る食品用品質改良剤は、加工食品に混合させて使用される。用いられる加工食品としては、畜産練り製品や水産練り製品が挙げられ、特にレトルト食品に効果的である。
【0009】
本発明に係る食品用品質改良剤は、ゼラチンによる動物性油脂の乳化とトランスグルタミナーゼによるゼラチンの架橋によって、油脂の分離を抑制することができる。それにより、畜産練り製品では柔らかく、かつジューシーな食感を得ることができ、水産練り製品ではしなやかな弾力的な食感を得ることができる。本発明に係る食品用品質改良剤は、耐熱性に優れており、このため、レトルト処理や加熱処理による食感の低下を抑制することができる。食品全体に混ぜて使用することにより、食品の表面だけでなく、食品全体の食感の低下を抑制することができる。
【0010】
本発明に係る畜産練り製品用品質改良剤で、全体量に対しゼラチンは乾燥重量で5乃至7.5質量%、動物性油脂は25乃至40質量%、トランスグルタミナーゼは0.005乃至0.015質量%、水は18.5乃至94質量%の範囲で含まれることが好ましい。植物性タンパク質を含む場合、全体量に対し5乃至10質量%の範囲で含むことが好ましい。
【0011】
本発明に係る食品用品質改良剤は、乳由来タンパク質または植物性タンパク質を含んでもよい。この場合、耐熱性をさらに向上させることができる。乳由来タンパク質としては、カゼイン、カゼインナトリウム、その他の乳タンパク質が挙げられる。植物性タンパク質としては特に大豆タンパク質が適している。本発明に係る食品用品質改良剤は、その他のタンパク質、例えば、卵白を含んでいてもよい。
【0012】
前記動物性油脂は牛脂または豚脂、特に豚脂から成ることが好ましい。この場合、特に油脂分離の抑制効果が高く、耐熱性に優れている。また、食感にも優れている。本発明に係る食品用品質改良剤は、食品中に含まれる菌を抑制するため、乳酸ナトリウムを含んでいてもよい。油脂分離の抑制効果をさらに高めるため、食物繊維やキサンタンガムを含んでいてもよい。
【0013】
本発明に係る水産練り製品は、本発明に係る食品用品質改良剤を含むことを、特徴とする。
本発明に係る水産練り製品は、本発明に係る食品用品質改良剤を含むため、油脂の分離を抑制することができる。それにより、しなやかな弾力的な食感を得ることができる。また、耐熱性に優れ、レトルト処理や加熱処理による食感の低下を抑制することができる。本発明に係る水産練り製品は、植物性タンパク質を含むことが好ましく、特に、5質量%乃至10%含むことが好ましい。本発明に係る水産練り製品は、かまぼこ、魚肉ソーセージ、レトルトおでん用の練り物などに適用可能であり、特にレトルト食品に適している。
【0014】
本発明に係る畜産練り製品は、本発明に係る食品用品質改良剤を含むことを、特徴とする。
本発明に係る畜産練り製品は、本発明に係る食品用品質改良剤を含むため、油脂の分離を抑制することができる。それにより、柔らかく、かつジューシーな食感を得ることができる。また、耐熱性に優れ、レトルト処理や加熱処理による食感の低下を抑制することができる。本発明に係る畜産練り製品は、豚脂を25質量%以上含むことが好ましい。本発明に係る畜産練り製品は、ハンバーグ、おでん用粗挽きソーセージ、肉まん等のウォーマー商品の具、ぎょうざの具、ミートボール、レトルトおでん用の練り物などに適用可能であり、特にレトルト食品に適している。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、耐熱性に優れ、処理工程を増やすことなく、油脂の分離を抑制して食品内部まで食感を改善することができる食品用品質改良剤、水産練り製品および畜産練り製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態の食品用品質改良剤は、畜産練り製品用品質改良剤または水産練り製品用品質改良剤から成り、それぞれ好適な配合から成っている。
【0017】
本発明の実施の形態の畜産練り製品用品質改良剤は、ゼラチンとトランスグルタミナーゼと動物性油脂とゼラチン以外のタンパク質とを含んでいる。ゼラチンおよびトランスグルタミナーゼの配合量、油脂の種類および配合量、ゼラチン以外のタンパク質の種類を検討するために、以下の試験を行った。なお、トランスグルタミナーゼを配合するために、トランスグルタミナーゼを1質量%含む市販の商品「アクティバTG−S」(味の素株式会社製;以下、「TG−S」と表す)を使用している。
【0018】
[ゼラチンの配合量の検討]
ゼラチンの配合量を変えた畜産練り製品用品質改良剤の試料を作成し、食感や乳化性などに基づいてゼラチンの配合量の検討を行った。作成した試料の各成分の配合量を、表1に示す。なお、動物性油脂は豚脂を使用し、タンパク質は豚すじ肉を使用した。また、50%乳酸ナトリウムおよび水も配合している。
【0019】
【表1】

【0020】
試験の結果、ゼラチンの配合量が多いほど、強いゲルになり、乳化性が高く、脂浮きを防止できることが確認された。粗挽き感や食感を考慮すると、試料3乃至試料4が優れていることも確認された。なお、ゲル強度が高いほど、油脂分離の抑制効果および乳化性が高く、耐熱性に優れているといえる。これにより、ゼラチンを5乃至7.5質量%配合することより、特に耐熱性および食感に優れた畜産練り製品用品質改良剤を得ることができる。
【0021】
[トランスグルタミナーゼの配合量の検討]
トランスグルタミナーゼの配合量を変えた畜産練り製品用品質改良剤の試料を作成し、反応性や作業性などに基づいてトランスグルタミナーゼの配合量の検討を行った。なお、トランスグルタミナーゼの反応性は、タンパク質を架橋する反応の効果を示しているため、その反応性の高さは、乳化性や油脂分離の抑制効果、耐熱性が高いことを示している。作成した試料の各成分の配合量を、表2に示す。なお、動物性油脂は豚脂を使用し、タンパク質は豚すじ肉を使用した。また、50%乳酸ナトリウムおよび水も配合している。
【0022】
【表2】

【0023】
試験の結果、試料2乃至試料5でトランスグルタミナーゼの反応性が確認された。また、反応性が高すぎると作業性が悪くなるため、試料2乃至試料4が優れていることも確認された。これにより、TG−Sを0.5乃至1.5質量%、すなわちトランスグルタミナーゼを0.005乃至0.015質量%配合することより、特に耐熱性および作業性に優れた畜産練り製品用品質改良剤を得ることができる。
【0024】
[油脂の種類の検討]
油脂の種類を変えて畜産練り製品用品質改良剤の試料を作成し、油脂の分離や食感・オイル感、歩留などに基づいて、油脂の種類の検討を行った。油脂の種類および試験の結果を表3(a)に、作成した試料の各成分の配合量を表3(b)に示す。なお、タンパク質は豚ミンチを使用した。また、50%乳酸ナトリウムおよび水も配合している。
【0025】
【表3】

【0026】
表3(a)に示すように、試験の結果、牛脂および豚脂が、油脂分離の抑制効果、食感・オイル感および歩留に優れていることが確認された。
【0027】
[油脂の配合量の検討]
表3に基づいて、油脂として豚脂を使用し、油脂の配合量を変えた畜産練り製品用品質改良剤の試料を作成し、食感や乳化性、反応性などに基づいて油脂の配合量の検討を行った。作成した試料の各成分の配合量を、表4に示す。なお、タンパク質は豚すじ肉を使用した。また、50%乳酸ナトリウムおよび水も配合している。
【0028】
【表4】

【0029】
試験の結果、動物性油脂の配合量が多いほど、風味が強くなることが確認された。また、試料3乃至試料5で、適度な固さが得られることも確認された。乳化性やトランスグルタミナーゼとの反応性を考慮すると、試料3乃至試料4が優れていることも確認された。これにより、動物性油脂を25乃至30質量%配合することより、特に食感や耐熱性等に優れた畜産練り製品用品質改良剤を得ることができる。
【0030】
[タンパク質の種類の検討]
タンパク質の種類を変えて畜産練り製品用品質改良剤の試料を作成し、食感や歩留などに基づいて、タンパク質の種類の検討を行った。タンパク質の種類および試験の結果を表5(a)に、作成した試料の各成分の配合量を表5(b)に示す。なお、動物性油脂は豚脂を使用した。また、50%乳酸ナトリウムおよび水も配合している。
【0031】
【表5】

【0032】
表5(a)に示すように、試験の結果、大豆タンパク質、牛肉、豚肉および鶏肉が、食感および歩留に優れていることが確認された。
【0033】
以上の検討結果を考慮して、本発明の実施の形態の畜産練り製品用品質改良剤として、表6に示す配合のものを作成した。すなわち、本発明の実施の形態の畜産練り製品用品質改良剤は、ゼラチンとトランスグルタミナーゼと豚脂と豚すじ肉と食物繊維とキサンタンガムと50%乳酸ナトリウムと水と日持ち向上剤とを含んでいる。なお、食物繊維は、市販品(商品名「セオラス」、旭化成ケミカルズ株式会社製)から成り、日持ち向上剤は、市販の酢酸ナトリウム・アミノ酸製剤(商品名「AKフレッシュ#2」、青葉化成株式会社製)から成っている。
【0034】
【表6】

【0035】
本発明の実施の形態の畜産練り製品用品質改良剤は、以下のようにして製造される。まず、豚すじ肉と50%乳酸ナトリウムと豚脂と食物繊維とキサンタンガムと水と65℃で溶解させたゼラチンとを、65℃で90分間加熱して混合する。加熱後、さらにトランスグルタミナーゼと日持ち向上剤とを混合して容器に充填し、5〜8℃で一晩反応させた後、冷凍する。
【0036】
本発明の実施の形態の水産練り製品用品質改良剤は、ゼラチンとトランスグルタミナーゼと動物性油脂と植物性タンパク質とを含んでいる。ゼラチン、トランスグルタミナーゼおよび油脂の配合量、植物性タンパク質の配合量およびタンパク質の種類を検討するために、以下の試験を行った。なお、トランスグルタミナーゼを配合するために、トランスグルタミナーゼを1容量%含む市販品(商品名「アクティバTG−S」、味の素株式会社製;以下、「TG−S」と表す)を使用している。「アクティバTG−S」は、トランスグルタミナーゼ1容量%以外に、トランスグルタミナーゼの安定化剤であるポリリン酸ナトリウム5容量%、無水ピロリン酸ナトリウム5容量%及びL-アスコルビン酸ナトリウム0.5容量%、賦形剤である乳糖等88.5容量%を含んでいる。「アクティバTG−S」に含まれるトランスグルタミナーゼの酵素活性は、7800 〜 12600IU/gである。
【0037】
[ゼラチンの配合量の検討]
ゼラチンの配合量を変えた水産練り製品用品質改良剤の試料を作成し、練り込み易さや乳化性などに基づいてゼラチンの配合量の検討を行った。作成した試料の各成分の配合量を、表7に示す。なお、動物性油脂は豚脂を使用した。また、水も配合している。
【0038】
【表7】

【0039】
試験の結果、練り込み易さおよび乳化性を考慮すると、試料3乃至試料4が優れていることが確認された。なお、試料2では軟らかすぎ、試料5では硬すぎて練り込めない。これにより、ゼラチンを5乃至7.5質量%配合することより、特に練り込み易さおよび耐熱性に優れた水産練り製品用品質改良剤を得ることができる。
【0040】
[トランスグルタミナーゼの配合量の検討]
トランスグルタミナーゼの配合量を変えた水産練り製品用品質改良剤の試料を作成し、反応性や作業性などに基づいてトランスグルタミナーゼの配合量の検討を行った。作成した試料の各成分の配合量を、表8に示す。なお、動物性油脂は豚脂を使用した。また、水も配合している。
【0041】
【表8】

【0042】
試験の結果、試料2乃至試料5でトランスグルタミナーゼの反応性が確認された。また、反応性が高すぎると作業性が悪くなるため、試料2乃至試料4が優れていることも確認された。これにより、TG−Sを0.5乃至1.5質量%、すなわちトランスグルタミナーゼを0.005乃至0.015質量%配合することより、特に耐熱性および作業性に優れた水産練り製品用品質改良剤を得ることができる。
【0043】
[油脂の配合量の検討]
動物性油脂として豚脂を使用し、油脂の配合量を変えた水産練り製品用品質改良剤の試料を作成し、食感などに基づいて油脂の配合量の検討を行った。作成した試料の各成分の配合量を、表9に示す。なお、水も配合している。
【0044】
【表9】

【0045】
試験の結果、動物性油脂の配合量が多いほど、風味が強くなることが確認された。また、試料3乃至試料5で、適度な固さが得られることも確認された。これにより、動物性油脂を5%以上配合することより、特に食感に優れた水産練り製品用品質改良剤を得ることができる。
【0046】
[植物性タンパク質の配合量の検討]
植物性タンパク質の配合量を変えた水産練り製品用品質改良剤の試料を作成し、練り込み易さや反応性などに基づいて植物性タンパク質の配合量の検討を行った。作成した試料の各成分の配合量を、表10に示す。なお、動物性油脂は豚脂を使用した。また、水も配合している。植物性タンパク質と豚脂との配合比を、1:0.5に固定して試験を行った。
【0047】
【表10】

【0048】
試験の結果、練り込み易さおよびトランスグルタミナーゼとの反応性を考慮すると、試料3乃至試料4が優れていることが確認された。これにより、植物性タンパク質を3乃至13質量%配合することより、特に練り込み易さおよび耐熱性に優れた水産練り製品用品質改良剤を得ることができる。
【0049】
[タンパク質の種類の検討]
タンパク質の種類を変えて水産練り製品用品質改良剤の試料を作成し、食感などに基づいて、タンパク質の種類の検討を行った。タンパク質の種類および試験の結果を表11(a)に、作成した試料の各成分の配合量を表11(b)に示す。なお、動物性油脂は豚脂を使用した。また、水も配合している。
【0050】
【表11】

【0051】
表11(a)に示すように、試験の結果、大豆タンパク質が、食感に優れていることが確認された。
【0052】
以上の検討結果を考慮して、本発明の実施の形態の水産練り製品用品質改良剤として、表12に示す配合のものを作成した。すなわち、本発明の実施の形態の水産練り製品用品質改良剤は、ゼラチンとトランスグルタミナーゼと豚脂と大豆タンパク質と水とを含んでいる。
【0053】
【表12】

【0054】
本発明の実施の形態の水産練り製品用品質改良剤は、以下のようにして製造される。まず、水に完全溶解させたゼラチンと豚脂とを、60℃で30分間加熱して混合する。加熱後、さらに大豆タンパク質とトランスグルタミナーゼとを混合して容器に充填し、5〜8℃で一晩反応させた後、冷凍する。
【0055】
以下に、本発明の実施の形態の畜産練り製品用品質改良剤、および本発明の実施の形態の水産練り製品用品質改良剤を、ハンバーグやかまぼこに使用した実施例を示す。
【実施例1】
【0056】
本発明の実施の形態の畜産練り製品用品質改良剤を使用して、レトルト食品のハンバーグ(以下、「本ハンバーグ」という)を製造した。比較例として、一般的なレトルト食品のハンバーグ(以下、「比較ハンバーグ」という)を製造した。本ハンバーグおよび比較ハンバーグの各原料の配合割合を、表13に示す。表13に示すように、本ハンバーグは、比較ハンバーグの豚脂の代わりに、本発明の実施の形態の畜産練り製品用品質改良剤(表13中の「本品質改良剤」)を配合したものである。
【0057】
【表13】

【0058】
その結果、比較ハンバーグは、ボソボソした食感であるのに対し、本ハンバーグは、粗挽き感があり食感が良いことが確認された。また、本ハンバーグは、比較ハンバーグに比べて、脂分の浮き出しが少ないことも確認された。比較ハンバーグは、製品の歩留まりが約75.5%であるのに対して、本ハンバーグは、約80.5%であることが確認された。このように、本発明の実施の形態の畜産練り製品用品質改良剤を使用することにより、レトルト処理や加熱処理による食感の低下や、脂分の溶出を抑制することができ、耐熱性に優れることが確認された。また、使用しない場合に比べて、製品の歩留まりが高いことも確認された。
【実施例2】
【0059】
本発明の実施の形態の水産練り製品用品質改良剤を使用して、レトルトタイプのかまぼこ(以下、「本かまぼこ」という)を製造した。比較例として、一般的なレトルトタイプのかまぼこ(以下、「比較かまぼこ」という)を製造した。本かまぼこおよび比較かまぼこの各原料の配合割合を、表14に示す。表14に示すように、本かまぼこは、比較かまぼこの魚のすり身(表14中の「スケソウFA」)の一部を、本発明の実施の形態の畜産練り製品用品質改良剤(表14中の「本品質改良剤」)に置き換えたものである。
【0060】
【表14】

【0061】
その結果、比較かまぼこは、歯切れが悪いのに対し、本かまぼこは、歯切れが良く、しなやかな食感であることが確認された。また、本かまぼこは、比較かまぼこに比べて、脂分の浮き出しが少なく、製品の歩留まりが高いことも確認された。このように、本発明の実施の形態の水産練り製品用品質改良剤を使用することにより、レトルト処理や加熱処理による食感の低下や、脂分の溶出を抑制することができ、耐熱性に優れることが確認された。また、使用しない場合に比べて、製品の歩留まりが高いことも確認された。
【0062】
なお、本発明の実施の形態の畜産練り製品用品質改良剤および水産練り製品用品質改良剤は、ハンバーグおよびかまぼこだけでなく、おでん用粗挽きソーセージ、肉まん等のウォーマー商品、魚肉ソーセージ、ぎょうざ、ミートボール、レトルトおでん用の練り物などの、畜産練り製品や水産練り製品などのレトルト食品に使用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチンとトランスグルタミナーゼと動物性油脂とを含むことを、特徴とする食品用品質改良剤。
【請求項2】
ゼラチン水溶液とトランスグルタミナーゼと動物性油脂とを混合し乳化および架橋させて成ることを特徴とする食品用品質改良剤。
【請求項3】
乳由来タンパク質または植物性タンパク質を含むことを、特徴とする請求項1または2記載の食品用品質改良剤。
【請求項4】
前記動物性油脂は豚脂から成ることを、特徴とする請求項1,2または3記載の食品用品質改良剤。
【請求項5】
請求項1乃至4記載の食品用品質改良剤を含むことを、特徴とする水産練り製品。
【請求項6】
請求項1乃至4記載の食品用品質改良剤を含むことを、特徴とする畜産練り製品。



【公開番号】特開2009−22176(P2009−22176A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186159(P2007−186159)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(591219566)青葉化成株式会社 (21)
【Fターム(参考)】