説明

食品用X線異物検査装置およびその方法

【課題】被検査物中の異物を高精度または高速度で検出できる食品用X線異物検査装置およびその方法を提供する。
【解決手段】本発明の食品用X線異物検査装置10は、被検査物12にX線を照射するX線発生部20と、前記被検査物12を透過した前記X線を検出するX線検出部30とを備えたX線異物検査装置において、前記X線検出部30のX線透過画像データを、異なる分割数で複数の画像に分割し、分割画像毎に閾値を設定して2値化して、得られた各ピクセルの2値化結果を多数決で異物13の有無の判定を行う画像処理部40を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用X線異物検査装置およびその方法に関し、特に食品などの製品に混入された異物を検出する食品用X線異物検査装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加工食品などの製品は予め定められた品質に維持するため、製造ラインの後工程で製品に異物が混入していないか検査を行っている。ガラスや樹脂の小片などの微細な異物を目視により検出することは困難であるため、従来X線を用いた異物検査装置が利用されている。
【0003】
図10は従来の食品用X線異物検査装置の構成概略を示す図である。図示のようにX線異物検査装置1は、製品の搬送コンベア2上にX線発生部3と、対向する搬送ライン2下にX線検出部4を取り付け、データ処理部5を備えている。
X線発生部3は、食品などの被検査物6にX線を照射している。X線検出部4は、被検査物6を透過したX線を検出している。
【0004】
このような構成による食品用X線異物検査装置1は、X線発生部3から放射されたX線が被検査物6を透過して対向するX線検出部4で受光される。X線検出部4は、一例として1ラインで素子の1番目から1280番目までスキャン(走査)している。そして被検査物6が搬送コンベア2を移動すると2次元の画像となる。データ処理部5では、X線検出部4のX線画像データが入力されて、予め設定してある異物が混入されたときの基準データなどの閾値と比較して、比較結果に基づいて被検査物6の異物混入の有無を判断している。
【0005】
従来の食品用X線異物検出装置として特許文献1、2が挙げられる。このうち特許文献1は食品パックにX線を照射し、得られたデータから異物を検査する際に、トレンド表示による閾値選定を行っている。このとき閾値を手動で選択している。
【0006】
また特許文献2は、食品パックにX線を照射し、得られたデータから異物を検査する際に、統計的手法を用いて閾値選定を行い、新たな食品パックを検査するごとに閾値が更新されている。
【特許文献1】特開2004−28685号公報
【特許文献2】特開2007−333562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来一般の食品用X線異物検査装置では、検出感度が比較的高い金属片は容易に検出することができるが、金属片以外の樹脂、ガラス等の小片は検出し難いという問題があった。これは樹脂、ガラス片などは淡い画像として表示され、異物か否かの判定が難しいためである。また高速なベルトコンベア上でリアルタイムに異物検出処理を行うことは困難であった。
【0008】
また特許文献1に示す異物検出装置では、異常の有無を検出するための基準となる検出リミット値(閾値)をキー操作、すなわち手動により設定している。したがって検査対象が変化するたびに閾値の設定を再設定し直さなければならない。また異物判定の際に、毎回煩わしいパラメータの設定を行わなければならない。
【0009】
さらに特許文献2に示す異物検出装置では、検査対象数が増加するに従い、閾値が更新され改良されることになるが、データ更新する前の初期状態では誤検出する可能性が高い。
【0010】
そこで本発明は、被検査物中の異物を高精度で検出できる食品用X線異物検査装置およびその方法を提供することを目的としている。
また本発明は、被検査物中の異物の判定処理を高速化できる食品用X線異物検査装置およびその方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の食品用X線異物検査装置は、被検査物にX線を照射するX線発生部と、前記被検査物を透過した前記X線を検出するX線検出部とを備えた食品用X線異物検査装置において、前記X線検出部が出力したX線透過画像データから分割数の異なる複数の分割画像を生成し、前記分割画像のブロック毎に閾値を算出し2値化して、前記分割画像のピクセル毎の2値化結果に基づいて異物の有無を多数決で判定する画像処理部を備えたことを特徴としている。
【0012】
この場合において、前記画像処理部は、前記X線検出部から出力された前記X線透過画像データを記憶する記憶手段と、前記X線透過画像データの画像領域を分割数の異なる複数の分割画像に分割する分割手段と、得られた前記分割画像のピクセル毎の2値化結果に基づいて多数決で異物の判定を行う判定手段と、を備えているとよい。
また前記画像処理部は、前記分割画像のブロック毎に濃度ヒストグラムを作成し、前記濃度ヒストグラムに基づいて閾値を算出し2値化する2値化処理手段を備えているとよい。
【0013】
本発明の食品用X線異物検査方法は、搬送ライン上の被検査物にX線を照射して、前記被検査物のX線透過画像データを収集して、前記被検査物の異物を検査する食品用X線異物検査方法において、前記X線透過画像データを分割数の異なる複数の分割画像に分割し、前記分割画像のブロック毎に閾値を算出し2値化し、前記分割画像のピクセル毎の2値化結果に基づいて異物の存在を多数決で判定することを特徴としている。
【0014】
また本発明の食品用X線異物検査方法は、搬送ライン上の被検査物にX線を照射して、前記被検査物のX線透過画像データを収集して、検査対象内の異物を統計量に基づいた閾値選定を用いて判定する食品用X線異物検査方法において、前記閾値選定は、X線透過量の濃度ヒストグラムを前記異物と前記被検査物の2クラスに分け、その2つのクラスを正規分布と仮定し、平均誤認識率を最小とするような閾値を計算する過程において、前記閾値をkとしたときの分散をσ2k、各濃度レベルをi、前記閾値をkとしたときの平均をμk、濃度レベルが現れる確率をpiとしたときに
【数1】

を利用することにより求めることを特徴としている。
【0015】
本発明の食品用X線異物検査方法は、搬送ライン上の被検査物にX線を照射して、前記被検査物のX線透過画像データを収集して、被検査物の異物を検査する食品用X線異物検査方法において、前記X線透過画像データを分割数の異なる複数の分割画像に分割し、前記分割画像のブロック毎に、X線透過量の濃度ヒストグラムを前記異物と前記被検査物の2クラスに分け、その2つのクラスを正規分布と仮定し、平均誤認識率を最小とするような閾値を計算する過程において、前記閾値の計算過程において、分散計算を近似式で行い、算出された前記閾値を2値化し、前記分割画像のピクセル毎の2値化結果に基づいて前記異物の存在を多数決で判定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
上記構成による本発明の食品用X線異物検査装置によれば、X線透過画像データから分割数の異なる複数の分割画像を生成し、分割画像のブロック毎に閾値を算出し2値化して、分割画像のピクセル毎の2値化結果に基づいて異物の有無を多数決で判定することができる。また検査対象が変化した場合であっても、X線検出部で出力されたX線透過画像データに基づいて閾値を算出しているので、閾値を手動設定あるいは更新する必要がない。検査の初期段階においても異物を誤検出することがない。また検出精度が向上し、樹脂、ガラス等の小片であっても精度良く検出することができる。
また分割画像のピクセル毎の2値化結果に基づいて異物の有無を多数決で判定しているので、異常な異物の候補の絞込みを行い判定の制度が良くなり、誤検出の可能性が低くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の食品用X線異物検査装置およびその方法の詳細な実施形態を以下添付の図面を参照しながら説明する。
図1は実施形態に係る食品用X線異物検査装置の構成概略を示す図である。図2は実施形態に係る食品用X線異物検査装置のブロック図である。図1に示すように食品用X線異物検査装置10は、被検査物12となる食品などの製品の搬送コンベア14上に取り付けている。搬送コンベア14は、所定の搬送速度で被検査物12を後段の後処理工程へと搬送している。
【0018】
食品用X線異物検査装置10は、X線発生部20と、X線検出部(ラインセンサ)30と、画像処理部40と、選別部50と、画像表示部60とを主な構成要件としている。
X線発生部20は、搬送コンベア14の横断方向に沿って設けられた円筒状のX線管を用いている。X線管は陰極から電子ビームを陽極ターゲットに照射させてX線を生成している。X線管のX線は後述するX線検出部30に向けて照射している。
【0019】
X線検出部(ラインセンサ)30は、搬送コンベア14上のX線発生部20と対向する搬送コンベア14の下部に設けている。X線検出部30は、X線発生部と同様に搬送コンベア14の横断方向に沿って設けられている。X線検出部30は、被検査物12を透過したX線の透過量に応じた電気信号を出力している。本実施形態では、X線検出部30としてラインセンサを用いている。
【0020】
X線検出部30で検出したX線透過画像データは電気的に接続された画像処理部40に入力される。
画像処理部40は、CPUやメモリなどで構成されているが、具体的にはデータ記憶手段41と、画像切り出し手段42、フィルタ処理手段43、画像分割手段44と、2値化処理手段45と、判定手段46を主な構成要件としている。
データ記憶手段41は、X線検出部30で検出された各被検査物のX線透過画像データが入力し記憶される。
【0021】
画像切り出し手段42は、被検査物12と判断可能なあらかじめ大まかな閾値を設定してあり、X線透過画像データ全体の中で、その閾値以下の濃度値を持つデータを被検査物12と異物13の画像データとして切り出す。具体的には、図3(1)に示すようにX線透過画像データのうち、被検査物12の画像データ部分を残し、被検査物12以外の空白部分、すなわち背景を切り出している(図3(2))。
【0022】
一般にX線検出部30で検出したX線透過画像データは、ノイズが生じている。そこでフィルタ処理手段43は、発生したノイズを除去するとともに異物13を強調して異物13の有無の判定精度を高めるために、フィルタリング処理を行っている。本実施形態のフィルタリング処理は、具体的にメディアンフィルタ、平滑化フィルタ、Max−Minフィルタによる3種類のフィルタ処理を行っている。まずメディアンフィルタは、ある画素の周辺画素の濃度を順に並べて中央値を画素の濃度として、ノイズの除去を行う。
【0023】
平滑化フィルタは、ある画素の周辺画素の濃度の平均値をその画素の濃度として、ノイズの除去を行う。
Max−Minフィルタは、ある画素の周辺画素の濃度値の最大値と最小値を取り出し、その差をある画素の濃度値と足し合わせて濃度値として、異物13を強調している(図3(3))。
【0024】
画像分割手段44は、フィルタ処理手段によるフィルタ処理後のX線透過画像データを、分割数の異なる複数の分割画像を生成する。分割数は、一例として3×3分割〜9×9分割の7パターンを設定することができる。また分割数は被検査物の画像データに応じてn×n分割、n×m分割など、任意に設定変更可能であり、少なくとも3以上の奇数回に設定している。この奇数回の設定は後述する判定手段46による判定を容易にするためである。
【0025】
2値化処理手段45は、濃淡画像から2値化画像を取得する2値化処理を行っている。具体的に2値化処理手段45は、画像分割手段44により生成した複数の分割数で分割した分割画像のブロック毎に濃度ヒストグラムを作成する。図4は2値化処理における画像データの説明図である。図4(1)に示す濃度ヒストグラムは、横軸に濃度値(明暗)を、縦軸に画素数(頻度)をそれぞれ表示している。図示のように5×5分割の分割画像は、25個のブロックが生成する。そして各ブロックにそれぞれ濃度ヒストグラムを作成する。濃度ヒストグラムは図示のように被検査物の画像に基づいて通常2つの山が生成する。この2つの山の間に生じる谷部分の位置を閾値とし、異物側(濃度の暗い)をクラス1、製品(被検査物)側(濃度の明るい)をクラス2とする。最適な閾値は、数式2に示す評価関数J(k)が最小となる閾値kを求めることで選定される。
【数2】

【0026】
ここで数式2中の閾値をkとしたときのクラス1の分散をσ1(k)、クラス2の分散をσ2(k)、クラス1の生起確率をω1(k)、クラス2の生起確率ω2(k)とし、一般に数式2中のクラス1、2の分散σ1(k)、σ2(k)は数式3に示す式を用いて算出する。
【数3】

【0027】
ここで数式3の閾値をkとしたときの分散をσ2k、各濃度レベルをi、閾値をkとしたときの平均をμk、濃度レベルが現れる確率をpiとしている。
数式3を用いる方法によれば、各kについて計算を行う必要があり、最大の濃度レベルをLとしたとき、全体としてLステップの計算が必要となり、全体の計算オーダーがLの二乗に比例することとなる。このことから、算出までに時間がかかり異物検出の処理時間が長時間化してしまうという問題があった。そこで本実施形態では数式4に示すように分散式(数式3)を近似化(数式1)している。
理論的には、
【数4】

となり、数式3から数式1が導かれる。しかし、計算の際に数値を有限桁でしか扱えないコンピュータ上で数式1を計算すると数式3に比べ誤差が大きく生じる。通常数式1の計算方法は用いられない。通常は用いられない計算法ではあるが、本実施形態において分散は、最終的な計算対象である閾値の計算過程において利用するのみであり、最終的な結果に対する計算誤差の影響は少なくなる。数式1を用いることで、全体としての計算オーダーはLに比例することとなり、処理時間が短縮される。
【0028】
また今回の例においては、各ピクセルの濃度データを12Bitで表現するため最大の濃度レベルLは、4095である。分散の算出時間は理論上最大で1/4095に算出時間が短縮できることとなり、分散を含めた総計算時間の実測値は数式3を用いる方法で約20秒、数式1を用いることで約0.2秒となり約1/100短縮されている。
【0029】
上記数式1によりブロック毎の閾値を選定し、ブロックの画像データを2値化する。上記数式1による閾値設定は、ブロック毎に必ず設定している。したがって、ブロック中に製品(被検査物)または背景のいずれか一方のみの画像が表示されている場合には、濃度ヒストグラムに山が1つ生じる。本実施形態ではこのような場合であっても閾値を設定することになる。そうすると、異物がない場合であっても、異物があると誤判定することがある。したがってこの誤判定を回避するため以下に示す後処理を行っている。後処理は次の2つの工程からなる。
【0030】
まずブロックの長方形の周が一定以上残るか否かを判断する。具体的には、図4(2)に示すように異物13があると判断されたブロックに対し、ブロックに囲まれた異物13の外周(破線)をAとし、ブロックの外周長さBとする。そしてA/Bの値P1(0<P1<1)が設定パラメータPa以上の場合にはその部分に異物13はなく、背景であると判断する。
設定パラメータPaは、あらかじめ良品の被検査物12のX線透過画像データに基づいて、異物13が検出されない値をパラメータとして設定する。
【0031】
次に一定の閾値以上になるか否かを判断する。すなわち良品画像に対して閾値設定を行った場合、ノイズなどにより、濃度ヒストグラムの濃度値が高い部分に閾値が設定され、良品であるにもかかわらず、長方形領域のほとんどの部分が異物13として判定される場合があり、これを避けるためである。具体的には図4(2)に示すように異物13があると判断されたブロックに対し、異物部分の濃度値Cが設定パラメータPb以上の場合にはその部分に異物13はなく、背景であると判断する。設定パラメータPbの設定は、前述の長方形の周の長さと同様にあらかじめ良品の被検査物12のX線透過画像データに基づいて、異物13が検出されない値をパラメータとして設定する。
【0032】
判定手段46は、2値化処理手段45による2値化結果から被検査物12中の異物13の有無を判定する。判定手段46は、奇数枚の分割画像の各座標データ(ピクセル)をすべてチェックし、異物有りと判定された複数の分割画像データの多数決により過半数以上あるとした場合に異物有りと判定する。
【0033】
選別部50は、前記画像処理部40と電気的に接続している。搬送部50は画像処理部40の被検査物中に含まれる異物の検出信号に基づいて、搬送コンベア14上の移動する該等被検査物を搬送コンベア14上から除去する。実施形態の選別部50は、一例として搬送コンベア14上面に選別アーム52を配置している。選別アーム52は、一端を駆動手段に回動可能に取り付けている。この構成により、搬送アーム52は一端を支点に搬送コンベア14上を揺動し、他端で搬送コンベア14上の被検査物を搬送路外へ押し出している。
【0034】
画像表示部60は、画像処理部40と電気的に接続しており、画像処理部40で処理された画像データを表示する。画像表示部60は具体的には、異物の有無を示す被検査物12全体の画像データを表示している。
【0035】
次に、上記構成による食品用X線異物検査装置の検査方法について以下説明する。図5は食品用X線異物検査の異物検査処理手順を示すフローチャートである。
搬送コンベア14上を搬送する被検査物12にX線発生部20からX線を照射する。被検査物12を透過したX線は、X線発生部20と対向するX線検出部30で検出される。X線検出部30は、透過したX線の透過量に応じた電気信号を画像処理部40のデータ記憶手段41に出力する。データ記憶手段41では、前記電気信号をX線透過画像データとして記憶される。
【0036】
図5に示すようにまず記憶領域から演算用メモリにX線透過画像データを転送し(S100)、後段の画像切り出し手段42に入力する。
次に閾値による製品画像の切り出しを行う(S110)。図3(1)に示すようなX線透過画像データのうち、被検査物12の画像データ部分を残し、被検査物12以外の空白部分、すなわち背景を切り出している(図3(2)に示す)。
【0037】
そして切り出したX線透過画像データのフィルタ処理(SUB1)を行う(S120)。図6はフィルタ処理を示すフローチャートである。図示のようにフィルタ処理(SUB1)は、まずメディアンフィルタにより2回のフィルタ処理を行うことにより(S200,210)、異常値(周辺の値に比べて飛び抜けた濃度値)を除去している。
【0038】
次にこれだけでは濃度値の急な変化を除去できないため、平滑化フィルタをかけて平滑化し取り除く(S220)。
そしてMax−Minフィルタをかけて異物13を強調する(S230)。さらに最後にメディアンフィルタにより2回のフィルタ処理を行い強調されたノイズを除去している(S240,250)。なお実施形態に係るフィルタ処理は、一例であり、画像データに応じてフィルタ処理の回数、組み合わせ、順番等は任意に設定変更することができる。
【0039】
次に2値化・判定処理を行う(S130)。図7は2値化・判定処理を示すフローチャートである。
図7に示すようにまず投票する数に応じた演算用メモリを確保する(S300)。次に分割数に応じた動的閾値設定(SUB3)を行う。図8は2値化処理を示すフローチャートである。
【0040】
図8に示すように、フィルタ処理されたX線透過画像データに対し、分割数の異なる複数の分割画像を生成する(S400)。分割数は、一例として3×3分割〜9×9分割の7パターンを設定することができる。
【0041】
次に分割した分割数のことなる分割画像のそれぞれのブロックに対して閾値を設定する(S410)。画像分割手段44により生成した複数の分割数で分割した分割画像のブロック毎に濃度ヒストグラムを作成する。そして前記数式1を計算過程に利用し、統計的に閾値設定を行う。
【0042】
前記閾値設定において、異物がないにも係わらず異物があると誤判定したブロックに対して誤判定を回避するための後処理を行う。
まずブロックの長方形の周が一定以上残るか否かを判断する(S420)。図4(2)に示すように異物があると判断されたブロックに対し、ブロックに囲まれた異物の外周(破線)をAとし、ブロックの外周長さBとする。そしてA/Bの値P1(0<P1<1)が設定パラメータPa以上の場合にはその部分に異物はなく、背景であると判断する(S440)。
【0043】
一方P1が設定パラメータPaよりも小さい値の場合には、次の工程、すなわち一定の閾値以上になるか否かを判断する(S430)。図4(2)に示すように異物があると判断されたブロックに対し、異物部分の濃度値Cが設定パラメータPb以上の場合にはその部分に異物はなく、背景であると判断する(S440)。
【0044】
S420で濃度値Cが設定パラメータPbよりも低い値であり、かつ、S430においても設定パラメータよりも低い値の場合には異物があると判断される(S450)。
【0045】
次に2値化処理手段45による2値化結果から被検査物12中の異物の有無を判定する。異物の候補が一定以上であるか否かの判定を行う(S320)。奇数枚の分割画像の各座標データ(ピクセル)をすべてチェックし、異物有りと判定された複数の分割画像データの多数決により過半数以上あるとした場合に異物有りと判定する(S340)。図9は分割画像データの説明図である。一例として図示のように3×3分割、4×4分割、5×5分割の分割画像データの場合、4×4分割画像には異物13なしと判定されている。しかし3×3分割および5×5分割画像では、異物13有りと判定されているため、多数決により結果的に異物13有りと判定する。一方、多数決により異物13なしの分割画像が多い場合には結果的に異物なしと判定される(S330)。
【0046】
画像処理手段40と電気的に接続する画像表示部60で得られた異物があると判定された画像データを表示する(S350)。また異物有りと判定された被検査物の検出信号が選別部50に送られ、選別アーム52により該当する被検査物12を搬送コンベア14上から除去している。
【0047】
このようなX線異物検査装置によれば、閾値設定時間を大幅に短縮することができ、高い精度で被検査物中の異物を検出することができる。また検査対象が変化した場合であっても、X線検出部で出力されたX線透過画像データに基づいて閾値を設定しているので、閾値を手動設定あるいは更新する必要がない。検査の初期段階においても異物を誤検出することがない。また検出精度が向上し、樹脂、ガラス等の小片であっても精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施形態に係る食品用X線異物検査装置の構成概略を示す図である。
【図2】実施形態に係る食品用X線異物検査装置のブロック図である。
【図3】画像データ切り出しおよびフィルタ処理の説明図である。
【図4】2値化処理における画像データの説明図である。
【図5】食品用X線異物検査の異物検査処理手順を示すフローチャートである。
【図6】フィルタ処理を示すフローチャートである。
【図7】2値化・判定処理を示すフローチャートである。
【図8】2値化処理を示すフローチャートである。
【図9】分割画像データの説明図である。
【図10】従来の食品用X線異物検査装置の構成概略を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1………食品用X線異物検査装置、2………搬送コンベア、3………X線発生部、4………X線検出部、5………データ処理部、6………被検査物、10………食品用X線異物検査装置、12………被検査物、13………異物、14………搬送コンベア、20………X線発生部、30………X線検出部(ラインセンサ)、40………画像処理部、41………データ記憶手段、42………画像切り出し手段、43………フィルタ処理手段、44………画像分割手段、45………2値化処理手段、46………判定手段、50………選別部、52………選別アーム、60………画像表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物にX線を照射するX線発生部と、前記被検査物を透過した前記X線を検出するX線検出部とを備えた食品用X線異物検査装置において、
前記X線検出部が出力したX線透過画像データから分割数の異なる複数の分割画像を生成し、前記分割画像のブロック毎に閾値を算出し2値化して、前記分割画像のピクセル毎の2値化結果に基づいて異物の有無を多数決で判定する画像処理部を備えたことを特徴とする食品用X線異物検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の食品用X線異物検査装置において、
前記画像処理部は、
前記X線検出部から出力された前記X線透過画像データを記憶する記憶手段と、
前記X線透過画像データの画像領域を分割数の異なる複数の分割画像に分割する分割手段と、
得られた前記分割画像のピクセル毎の2値化結果に基づいて多数決で異物の判定を行う判定手段と、
を備えたことを特徴とする食品用X線異物検査装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の食品用X線異物検査装置において、
前記画像処理部は、
前記分割画像のブロック毎に濃度ヒストグラムを作成し、前記濃度ヒストグラムに基づいて閾値を算出し2値化する2値化処理手段を備えたことを特徴とする食品用X線異物検査装置。
【請求項4】
搬送ライン上の被検査物にX線を照射して、前記被検査物のX線透過画像データを収集して、前記被検査物の異物を検査する食品用X線異物検査方法において、
前記X線透過画像データを分割数の異なる複数の分割画像に分割し、
前記分割画像のブロック毎に閾値を算出し2値化し、
前記分割画像のピクセル毎の2値化結果に基づいて異物の存在を多数決で判定することを特徴とする食品用X線異物検査方法。
【請求項5】
搬送ライン上の被検査物にX線を照射して、前記被検査物のX線透過画像データを収集して、検査対象内の異物を統計量に基づいた閾値選定を用いて判定する食品用X線異物検査方法において、
前記閾値選定は、X線透過量の濃度ヒストグラムを前記異物と前記被検査物の2クラスに分け、その2つのクラスを正規分布と仮定し、平均誤認識率を最小とするような閾値を計算する過程において、前記閾値をkとしたときの分散をσ2k、各濃度レベルをi、前記閾値をkとしたときの平均をμk、濃度レベルが現れる確率をpiとしたときに
【数1】

を利用することにより求めることを特徴とする食品用X線異物検査方法。
【請求項6】
搬送ライン上の被検査物にX線を照射して、前記被検査物のX線透過画像データを収集して、前記被検査物の異物を検査する食品用X線異物検査方法において、
前記X線透過画像データを分割数の異なる複数の分割画像に分割し、
前記分割画像のブロック毎に、X線透過量の濃度ヒストグラムを前記異物と前記被検査物の2クラスに分け、その2つのクラスを正規分布と仮定し、平均誤認識率を最小とするような閾値を計算する過程において、前記閾値の計算過程において、分散計算を近似式で行い、算出された前記閾値を2値化し、前記分割画像のピクセル毎の2値化結果に基づいて前記異物の存在を多数決で判定することを特徴とする食品用X線異物検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−229100(P2009−229100A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71504(P2008−71504)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(506209422)地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター (134)
【出願人】(000110952)ニッカ電測株式会社 (12)
【Fターム(参考)】