説明

食品組成物

【課題】 天然由来の成分を用い、副作用が極めて少なく、生体にとって安全性が高く、血圧上昇抑制効果が一層改善されているとともに、大腸癌発生抑制効果も奏することのできる、食品組成物を提供すること。
【解決手段】 リンゴ幼果を破砕、圧搾し清澄果汁を得、精製操作を行ってリンゴ由来のポリフェノールを得る。リンゴ由来ポリフェノールには、カテキンの重合体であるプロアントシアニジン類、フェノールカルボン酸類、カルコン配糖体類、フラボノール配糖体類、フラバノール類などが含まれる。これとビール酵母とを混合し、本発明の食品組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧上昇抑制効果、大腸癌発生抑制効果等に優れる食品組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、日本人の食生活の変化に伴い、成人病が増加し、中でも高血圧症や大腸癌の発生は増加の一途を辿っている。
現在、降圧剤や血圧上昇抑制剤は、種々の医薬品が使用されているが、天然由来の成分を主体とする有効な血圧上昇抑制剤、大腸癌発生抑制剤は知られていない。
特許文献1(特開2005−179373号公報)には、リンゴ果実由来であって、実質的に単純ポリフェノール を含ない、高分子ポリフェノール 化合物としてのカテキン類の重合体である縮合型タンニン類の一種であるプロシアニジン類を有効成分とする血圧降下剤が提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載の血圧降下剤は、いまだその血圧上昇抑制効果に改善の余地がある。また、特許文献1には、大腸癌発生抑制効果について開示も示唆もない。
【特許文献1】特開2005−179373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、血圧上昇抑制効果が一層改善されているとともに、大腸癌発生抑制効果も奏することのできる、食品組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、リンゴ由来ポリフェノールとビール酵母とを含有する食品組成物を提供するものであり、これにより上記課題を解決することができた。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、血圧上昇抑制効果が一層改善されているとともに、大腸癌発生抑制効果も奏することのできる、食品組成物を提供することができる。また、リンゴ由来ポリフェノールとビール酵母は、天然由来の成分であるので、副作用が極めて少なく、生体にとって安全性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、リンゴ由来ポリフェノールとビール酵母との組み合わせが、血圧上昇抑制効果および大腸癌発生抑制効果に相乗的に機能することを見い出した。
【0007】
本発明におけるリンゴ由来ポリフェノールは、バラ科リンゴ属植物の果実、例えば、フジ、陸奥、津軽、スターキング・デリシャス等の栽培品種及び原種リンゴ等より公知抽出手段により抽出して得られるものである。
【0008】
果実としては成熟果実、幼果ともに用いることができるが、より多くのポリフェノール化合物を含有すること、及び広範な生理作用を有する各種活性成分を多量に含むことから、幼果が特に好ましい。
【0009】
本発明におけるリンゴ由来ポリフェノールは、リンゴ抽出物中にポリフェノールを有効成分として含まれているものである。リンゴ由来ポリフェノールとしては、カテキンの重合体であるプロアントシアニジン類(プロシアニジンB1、プロシアニジンB2、プロシアニジンC1等オリゴマーおよびポリマー)が挙げられる。また、リンゴ抽出物中には、フェノールカルボン酸類(クロロゲン酸、カフェ酸、p−クマル酸とそのエステル体等)、カルコン配糖体類(フロリジン、フロレチンキシログルコシド等)、フラボノール配糖体類(ルチン、ケルセチン配糖体等)、フラバノール類(カテキン、エピカテキン等)なども含まれる。
【0010】
本発明のリンゴ抽出物中に含有されるリンゴ由来ポリフェノールは、リンゴ果実、若しくは幼果実の搾汁果汁から得られる清澄果汁または、抽出液より精製されたポリフェノール画分からなるものであるが、当該ポリフェノール画分の精製は、搾汁果汁、抽出液を吸着剤で処理することにより行なわれ、吸着剤に吸着する画分(以下、吸着画分という)にポリフェノールは含有されている。吸着剤としては、ポリフェノールを吸着するものであれば特に限定されないが、例えば親水性ビニルポリマー樹脂(東ソー社製「トヨパールHW40」)、スチレン−ジビニルベンゼン樹脂(三菱化学社製「セパビーズSP−850」)、ゲル型合成樹脂(三菱化学社製「ダイヤイオンHP−20」)を挙げることができる。
【0011】
前記吸着剤に吸着した吸着画分を、例えば含水エタノール等のアルコール溶媒で溶出させることにより、ポリフェノール画分が精製される。当該ポリフェノール画分は、次いで濃縮処理することによりリンゴ抽出物として液体製剤を得ることができ、さらに、当該液体製剤を噴霧乾燥もしくは凍結乾燥処理することにより粉末製剤を得ることもできる。
【0012】
リンゴ由来ポリフェノールの原料となるリンゴ抽出物の抽出方法としては、例えば洗浄した原料をpH3.2〜4.6、好ましくはpH3.5〜4.3で破砕し、得られた果汁にペクチナーゼを5〜75℃、好ましくは30〜60℃で10〜100ppm、さらに好ましくは20〜30ppm添加して清澄化を行い、遠心分離後、5〜75℃、好ましくは15〜25℃で珪藻土(商品名「シリカ300S」、中央シリカ社製)濾過によりさらに清澄化を行い、清澄果汁を得る。或いはヘキサン、クロロホルム等の有機溶媒による分配及び濾過を行い、清澄抽出液としてリンゴ果汁が得られる。
【0013】
リンゴ果汁よりリンゴ由来ポリフェノールを得るには、次いで清澄抽出液を0〜40℃、好ましくは15〜25℃、pH1.5〜4.2、好ましくはpH3.0〜4.0で前記吸着剤を充填した吸着カラム(商品名「ダイヤイオンHP−20」、三菱化学社製)に通液し、ポリフェノール類を吸着させる。続いて純水を通液し、カラム中の非吸着物質(糖類、有機酸類等)を除去した後、10〜90%、好ましくは30〜80%のエタノールで吸着画分を溶出する。得られた吸着画分からエタノールを25〜100℃、好ましくは35〜90℃で減圧留去濃縮し、濃縮液をそのままで液体のリンゴ由来ポリフェノールとしてもよい。或いはデキストリン等の粉末助剤を添加し、噴霧乾燥又は凍結乾燥を行い、リンゴ由来ポリフェノールの抽出粉末品としてもよい。
【0014】
本発明で使用されるビール酵母は、一般的にビールを主発酵させる際に加え、回収された生酵母を篩過、脱苦味洗浄、遠心分離、水洗、ドラム乾燥、粉砕、篩過して得られ、多数市販されており、本発明では制限なく使用することができる。
【0015】
本発明の食品組成物は、血圧上昇抑制効果および大腸癌発生抑制効果を発揮させるために、通常、成人1日あたりリンゴ由来ポリフェノールとして、20〜20000mgの範囲で投与されるのが好ましい。ビール酵母は、上記と同様の目的のために、成人1日あたり2〜10gの範囲で投与されるのが好ましい。
【0016】
投与の形態としては、とくに制限されないが、保管性、流通性等を考慮すると、顆粒または錠剤の形態が好ましい。造粒方法は常法に従えばよく、例えばリンゴ由来ポリフェノール粉末およびビール酵母粉末からなる混合物に、結合液として水やエタノール水溶液を添加し、湿式造粒法、具体的には流動層造粒法、攪拌造粒法、押し出し造粒法、破砕造粒法、転動造粒法等を採用して造粒することができる。得られた顆粒物は、必要に応じて打錠して錠剤とされる。なお、造粒時、可溶性食物繊維を結合剤の一種として使用すれば、造粒がスムーズに行われ好ましい。可溶性食物繊維としては、アップルペクチンが好ましい。アップルペクチンは、リンゴに含まれる水溶性植物繊維であり、分子量が約15万〜30万程度のコロイド性の多糖である。アップルペクチンは、化学的には、D-ガラクツロン酸などの直鎖重合体からなり、そのカルボキシル基が部分的にメチルエステルとなっている。また、カルボキシル基が金属イオンと塩を形成しているものもある。アップルペクチンを使用することにより、大腸癌発生抑制効果がさらに高まる。可溶性食物繊維の使用割合は、リンゴ由来ポリフェノール粉末およびビール酵母粉末の合計量に対し、例えば0.01〜50.00質量%、好ましくは10〜30質量%である。
【0017】
本発明の食品組成物は、上記のような錠剤のほかにも、食品添加物として添加して用いることができ、例えばスープ類、飲料(ジュース、ミネラルウォーター、コーヒー、茶、ノンアルコールビール等)、菓子類(ガム、キャンディー、チョコレート、スナック、ゼリー等)、麺類(そば、うどん、ラーメン等)、アルコール飲料(ビール、発泡酒、カクテル、チューハイ、焼酎、日本酒、ウィスキー、ブランデー、ワイン等)に好適に用いられる。
【実施例】
【0018】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されない。
【0019】
実施例1
青森県産リンゴ幼果300kgを破砕、圧搾し果汁210kgを得た。得られた果汁にペクチナーゼ30ppmで清澄化を行い、遠心分離後、珪藻土(シリカ300S、中央シリカ社製)濾過により清澄化を行い清澄果汁を得た。清澄果汁を吸着カラム(ダイヤイオンHP−20、三菱化学社製)に通液し、ポリフェノール類を吸着させた。続いて純水を通液し、カラム中の非吸着物質(糖類、有機酸類など)を除去したのち、80%アルコールで溶出した。得られた画分からアルコールを減圧留去し、抽出粉末品約2kgを調製した。抽出粉末品を逆相系高速液体クロマトグラフィーで測定したところ、プロアントシアニジン類(約55%)、フェノールカルボン酸類(約15%)、フロレチン配糖体類(約10%)、フラボノール配糖体類(約10%)、フラバノール類(約5%)及びその他成分(約5%)からなることが確認できた。
ビール酵母粉末10質量部および上記抽出粉末品1質量部を混合し、得られた混合物の粉末を一般市販飼料(船橋農場製、船橋SP)に10重量%添加し、脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHR−SP)を用いて最高血圧値、体重の変化を比較した。対照区は、上記混合物を添加しない一般試料を用いた。A区を対照区、B区を本発明区とし、それぞれの飼料で5週齢の雄性SHR−SPを各区6匹ずつ7週間飼育し、12週齢に達した時の血圧値と体重の変化について調べた。表1に示すように体重の変化に有意差は見られなかったが、血圧の変化においては、本発明区に有意な血圧上昇の抑制が認められた。
【0020】
【表1】

【0021】
実施例2
実施例1で得られたビール酵母粉末および抽出粉末品の混合物の大腸癌発生抑制効果を調べるために、下記により動物実験を行った。
〔動物実験〕
4週令のフィッシャー344系雄ラット(日本クレア(株))を標準飼料で6日間予備飼育した後、1群25匹ずつ2群に分け、表2に示したごとくの実験飼料を給与して6カ月間飼育した。なお、飼料は自由に摂取させた。発癌物質(1,2−ジメチルヒドラジン)は試験開始後1週目より20週目まで計20回、20mg/kg体重となるようにラットの腹腔内に投与した。大腸癌の有無は、ラットを解剖して大腸を摘出して数を調べた。動物実験に用いた飼料の成分組成を表2に、大腸癌の発生頻度ならびに数を表3にそれぞれ示す。
【0022】
【表2】

【0023】
【表3】

【0024】
表3に示す通り、本発明の食品組成物を摂取することにより、腫瘍の発生頻度ならびに腫瘍の数が減少し、従って、大腸癌の発生が顕著に抑制されることが期待される。
【0025】
実施例3
ビール酵母粉末4.5kgおよび実施例1の抽出粉末品0.45kgを流動層造粒機(パウレック社製)に投入し、流動させながら水2.00kgを噴霧した後、乾燥減量が5%以下になるように80℃にて20〜30分間の乾燥を行った。乾燥後、結晶セルロース0.25kgを混合し、篩(16メッシュ)で整粒した後、打錠を行い、錠剤を得た。
【0026】
実施例4
ビール酵母粉末4.5kg、実施例1の抽出粉末品0.45kgおよびリンゴペクチン0.25kgを流動層造粒機(パウレック社製)に投入し、以降は実施例3と同様にして錠剤を得た。なお、ビール酵母粉末、実施例1の抽出粉末品およびリンゴペクチンからなる食品組成物は、実施例2を超えた大腸癌の発生抑制効果が見出された。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、血圧上昇抑制効果が一層改善されているとともに、大腸癌発生抑制効果も奏することのできる、食品組成物が提供され、該組成物は、天然由来の成分を主体としているので、副作用が極めて少なく、生体にとって安全性が高く、食品自体、食品添加物として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンゴ由来ポリフェノールとビール酵母とを含有する食品組成物。

【公開番号】特開2009−50196(P2009−50196A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219331(P2007−219331)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(707000691)辻堂化学株式会社 (104)
【Fターム(参考)】