説明

食品調理用バスケットおよび対応する調理システム

【課題】食品を調理するのに必要な時間を短縮すると共に、特に、野菜内に存在しているビタミンを保存することを可能にし、かつどのような調理器具内にも簡単に設置される蒸気雰囲気内で食品を調理するためのバスケットを提供する。
【解決手段】蒸気が充満している雰囲気内で食品2を調理するように設計された調理器具用の食品を調理するためのバスケット1であって、蒸気に対して透過性を有している底部6と、底部6と協働して食品を受け入れる入れ物を形成するように底部6から上方に延在している上側環状側壁8とを有しているバスケット1において、バスケット1は底部6から下方に延在している下側環状側壁9をさらに有しており、下側環状側壁9は蒸気を底部6に向かって導くように形作られているバスケット1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、蒸気調理器または圧力調理器によって、蒸気が充満している雰囲気内で食品を調理する一般的な技術分野に関し、さらに詳細には、食品を調理することを目的として、このような器具内の適所に置かれるように設計された食品調理用バスケットに関する。
【0002】
このように、本発明は、蒸気が充満している雰囲気内で食品を調理するように設計された調理器具用の食品を調理するためのバスケットであって、蒸気に対して透過性を有している底部と、前記底部と協働して前記食品を受け入れる入れ物を形成するように前記底部から上方に延在している上側環状側壁と、を有しているバスケットに関する。
【0003】
また、本発明は、第1に、蒸気が充満している雰囲気内で食品を調理するように設計された調理器具と、第2に、蒸気に対して透過性を有している底部および前記底部と協働して前記食品を受け入れる入れ物を形成するように前記底部から上方に延在している上側環状側壁を有している食品調理用バスケットと、を備えている調理システムに関する。
【背景技術】
【0004】
圧力調理器のユーザが調理容器内に含まれている液体内に食品を単に浸す以外のやり方で食品を調理することを可能にするには、食品を含んで容器内に組み込まれるようになっている調理用バスケットを準備すると共に、このバスケットを調理液体から所定高さで支持するために、壁の所定高さにおいて壁内または壁外に調理用バスケット支持手段を設ける必要がある。
【0005】
また、熱効率を最適化させるような方式で、蒸気を圧力調理器の筺体の内側において循環させるのみならず、食品内を通して循環させるには、ある数の貫通孔をバスケットに設けることも必要である。
【0006】
このようなシステムは、よく知られており、一般的には、さまざまな形状および容量の金属バスケットを用いている。バスケット支持手段は、例えば、鋼線から作製された取外し可能な支持体から構成されており、ユーザが蒸気調理を行うことを望むときに、容器の底部上に置かれるようになっている。容器の壁に取り付けられた別部品(リベット)によって形成された支持手段、または容器の壁の局部的な変形によって形成され、このような変形によって、バスケットを容器の底部から所定高さに支持するようになっている支持手段も存在している。
【0007】
現在知られている金属バスケットは、2種類の主要なタイプに分類することが可能である。
【0008】
バスケットの第1のタイプは、「網目構造(net)」バスケットとして構成されているものである。このようなバスケットは、織り合わされているかまたはメッシュ状に編まれている鋼線を用いて得られており、ある大きさの強度をこのバスケットに与える補強構造を備えている。このようなバスケットは、ほぼ満足できるものであるが、それらのメッシュ寸法が大きいことによって、バスケットが食品を保持することが困難であること、およびまさにメッシュ状の網目によって、バスケットを洗浄することが極めて困難であり、特に、食品屑を適切に取り除くことができないこと、に関連する欠点に悩まされている。加えて、このようなバスケットの寿命は、それらのバスケットが比較的壊れやすいので、短いものになっている。
【0009】
周知のバスケットの第2のタイプは、金属バスケットとして構成されているものである。このようなバスケットは、打抜きによって得られており、バスケットの底部かまたは底部および側壁のいずれかに形成された一連の貫通孔を備えている。
【0010】
このようなバスケットは、ほぼ満足できるものであり、容易に洗浄することも可能である。しかし、残念なことであるが、食品との良好な熱交換をもたらすそれらの能力は、極めて変化しやすく、制御するのが困難である。
【0011】
また、バランスの取れた食生活は、ビタミンの主な供給源をなす果実および野菜からビタミン、特に、ビタミンCの習慣的な摂取を必要とすることも知られている。この問題に関して行われた調査によれば、近年、人々の果実および野菜を消費する水準が不十分になってきていることのみならず、この消費が他の消費と比べて相対的に下がっていることが一般的傾向として示唆されていることも、明らかになっている。この消費の低水準および一般的傾向を説明し得る要因のなかで、潜在的消費者にとって、果実および野菜の消費を制限しがちになる食べる上での一連の制約、すなわち、果実および野菜を頻繁に入手する必要性、入手した果実および野菜を洗い、または皮まで剥く必要性、最後に、野菜を調理する必要性が存在していることが指摘されている。ここで、否定的に認識されている調理上の制約は、必要とされる調理時間に関する制約であることを理解されたい。
【0012】
従って、通常の食事条件を改善すること、または少なくともそれらの食事条件が悪くならないようにすることが、一般的に必要である。このような必要性から、食品、特に、野菜を調理するのに必要な時間を短縮させるための解決策が求められている。加えて、ビタミンは、調理条件に対して極めて鋭敏であり、調理中に、その全てまたは一部が壊され、滲出することがあり、または分解されることもあることが知られている。あらゆる種類のビタミンの内、ビタミンCが最も壊れやすく、さらに果実および野菜は、ビタミンCの食事による摂取の約85%をもたらしている。
【0013】
従って、野菜を調理したとき、特に、圧力調理したとき、これらの野菜に含まれているビタミンCの量を維持することが、極めて重要である。
【0014】
調理されているときに、野菜に含まれているビタミンCを壊れやすいものとする周知の現象のなかで、ビタミンCは、葉酸の形態にあるとき、水に可溶性となり、これによって、調理水によって滲出され易くなることに留意されたい。加えて、ビタミンCは、熱に鋭敏であり、調理中に加えられる時間/温度対に比例して壊されることになる。最後に、ビタミンCは、酸化に鋭敏であり、空気と接触することが多くなると、より多く分解されることになる。従って、野菜を蒸気雰囲気内で、特に、野菜を圧力調理器のような圧力下で調理する器具によって、調理するとき、ビタミンの保存、特に、ビタミンCの保存の一般的な問題が存在することになる。
【0015】
この一般的な問題に対処するために、本出願人は、FR−2832613の番号で公開された仏国特許出願(特許文献1)に記載されている、全面的に穿孔されているバスケットを提案している。このバスケットは、調理時間の短縮およびビタミン保存に関して著しい向上が得られることを可能にしている。その後、このバスケット自体が、その底部の貫通孔の殆どを省略し、具体的には、前記底部を実質的に連続体とし、前記底部の狭い周辺帯域およびバスケットの側壁のみに貫通孔を残すことによって、改良されている。この改良されたバスケットは、調理時間の短縮およびビタミンの保存に関して著しい結果を得ることを可能にするものである。
【0016】
しかし、バスケットは、調理時間のさらなる短縮およびビタミン保存のさらなる改良を得ることを目的として、さらに最適化される可能性がある。
【0017】
さらに、この先行技術によるバスケットを、食品が圧力調理器の容器内にある液体に浸されることを阻止することを目的として、容器の底部から所定高さに支持するには、容器の壁に局部的な変形箇所を形成することが必要である。このような局部的な変形箇所を形成するのは、極めて簡単であるが、これらの変形箇所の形成は、追加的な工業的制約をもたらすと共に、容器の一般的な外観に悪影響を及ぼすことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2832613号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従って、本発明の目的は、種々の前述の欠点を改善することにあり、食品を調理するのに必要な時間を短縮すると共に、食品、特に、野菜内に存在しているビタミンを保存することを可能にし、かつどのような調理器具内にも極めて簡単に設置されるようになっている、蒸気雰囲気内で食品を調理するための新規のバスケットを提供することにある。
【0020】
本発明の他の目的は、特に簡単でかつ安価な構造を有する新規の食品調理用バスケットを提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的は、蒸気の流れが食品内を通ることを容易にし、かつ温度をより迅速に上昇させることを可能にする新規の食品調理用バスケットを提供することにある。
【0022】
本発明の他の目的は、調理容器の内側における蒸気の循環を最適化することを可能にする新規の食品調理用バスケットを提供することにある。
【0023】
本発明の他の目的は、調理に必要なエネルギー量を減少させることを可能にする新規の食品調理用バスケットを提供することにある。
【0024】
本発明の他の目的は、特に頑丈でかつ製造が容易であると共に、洗浄が容易である新規の食品調理用バスケットを提供することにある。
【0025】
本発明の他の目的は、食品を調理するのに必要な時間を短縮すると共に、食品内に存在しているビタミンを保存することを可能にする新規の調理システムを提供することにある。
【0026】
本発明の他の目的は、特に簡単でかつ安価な設計の新規の調理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の目的は、蒸気が充満している雰囲気内で食品を調理するように設計された調理器具用の食品を調理するためのバスケットであって、蒸気に対して透過性を有している底部と、前記底部と協働して前記食品を受け入れる入れ物を形成するように前記底部から上方に延在している上側環状側壁と、を有しているバスケットにおいて、前記バスケットは、前記底部から下方に延在している下側環状側壁をさらに有しており、前記下側環状側壁は、蒸気を前記底部に向かって導くように形作られており、これによって、このように導かれた蒸気は、前記底部内を少なくとも局部的に通過することになることを特徴とするバスケットによって、達成されることになる。
【0028】
また、本発明の目的は、第1に、蒸気が充満している雰囲気内で食品を調理するように設計された調理器具と、第2に、蒸気に対して透過性を有している底部および前記底部と協働して前記食品を受け入れる入れ物を形成するように前記底部から上方に延在している上側環状側壁を有している食品調理用バスケットと、を備えている調理システムであって、前記バスケットは、前記底部から下方に延在している下側環状側壁をさらに有しており、前記下側環状側壁は、蒸気を前記底部に向かって導くように形作られており、これによって、このように導かれた蒸気は、前記底部内を少なくとも局部的に通過することになることを特徴とする調理システムによって、達成されることになる。
【0029】
他の目的および利点は、以下の説明を読み、添付の図面を検討することによって、さらに詳細に明らかにされるだろう。なお、これらの図面は、非制限的な実例として示されているものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の調理バスケットの第1の変形実施形態の斜視図である。
【図2】図1の例におけるバスケットが内側に設置されている圧力調理器を備えている本発明の調理システムの略断面図である。
【図3】特に、本発明のバスケット内および先行技術によるバスケット内に置かれたインゲン豆の積重ねの芯における温度が時間の経過に伴っていかに変化するかを示すグラフである。
【図4】本発明のバスケット内および先行技術によるバスケット内に置かれたブロコリーの積重ねの芯における温度が時間の経過に伴っていかに変化するかを示す、図3のグラフに相当するグラフである。
【図5】本発明の調理バスケットの第2の実施形態の斜視図である。
【図6】本発明の調理バスケットの第3の実施形態の略断面図である。
【図7】本発明の調理バスケットの第4の実施形態の略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、蒸気が充満している雰囲気、すなわち、「蒸気雰囲気」内で食品2を調理するように設計された調理器具3に用いられることを目的とする、食品2を調理するためのバスケット1に関している。
【0032】
本発明のバスケット1は、蒸気雰囲気内で食品を調理するどのような種類の器具、例えば、実質的に大気圧で作動する蒸気調理器、好ましくは、圧力調理器のような圧力下で食品を調理する器具に用いられるように、かつ該器具内に配置されるように、設計されている。従って、本発明は、第1に、蒸気が充満している雰囲気内で食品2を調理するように設計された調理器具3と、第2に、食品2を調理するための本発明のバスケット1と、を備えている調理システム自体にも関連している。
【0033】
好ましくは、食品調理用バスケット1は、圧力調理器に用いられようにかつ該圧力調理器内に配置されるように、特に設計されており、この場合、バスケット1は、圧力調理器用バスケット1を構成することになる。従って、この好ましい場合、本発明の調理システムは、第1に(調理器具3をなす)圧力調理器と、第2に食品2を調理するための本発明のバスケット1と、を備えおり、前記バスケットは、有利には、圧力調理器の容器5から別個に独立しており、好ましくは容器5の底部上に直接的に直立するように、前記容器5内に挿入されるように設計されている。圧力調理器のような圧力下で食品を調理する器具と共に用いられるとき、前記圧力調理器の種類(クランプバー式、顎式、バヨネット式、またはマンホール式、なお、この種類に関する一覧は、網羅的なものではない)とは無関係に、バスケット1によって、調理の速度およびビタミンの保存に関して特に顕著な結果が得られることになる。本発明のバスケット1は、大気圧よりも著しく大きい調理圧力、例えば、大気圧を少なくとも20キロパスカル(kPa)、好ましくは、少なくとも40kPa超える調理圧力で作動する圧力調理器に用いられると、特に有利である。このような圧力調理器は、通常、その蓋4をその容器5に係止する係止手段4Aを備えている。この手段は、例えば、図2に示されているような顎機構から構成されており、このような圧力調理器は、好ましくは、例えば、調整弁(図示せず)から構成された圧力調整システムを備えている。
【0034】
本発明では、バスケット1は、底部6を有している。底部6は、有利には、剛性材料のシートから構成されており、例えば、実質的に円板状に形作られている。有利には、底部6は、蒸気雰囲気内で調理する器具内、特に、圧力調理器内において食品と接触する必要のある使用に耐久的かつ連続的に耐えることができ、継続的に繰り返される洗浄作業に耐えることができ、および圧力調理器が昇温されている段階および昇圧されている段階に耐えることができる剛性材料から作製されている。好ましくは、底部6は、ステンレス鋼から作製されている。しかし、本発明の一般的な範囲を逸脱することなく、他の材料、特に、プラスチック材料が用いられてもよいことを理解されたい。底部6は、実質的に平坦な全体的形状を有することができる。すなわち、底部6は、有利には、平面内において延在している。しかし、底部6は、湾曲形状、凸状形状または凹状形状、または底部6の使用の観点から適切と見なされるどのような他の形状を有していてもよい。
【0035】
本発明では、底部6は、蒸気に対して透過性を有している。換言すれば、底部6は、蒸気がその厚みを通過するように、特に設計されている。これは、底部6が蒸気に対して不透過性のバリアを構成することなく、むしろ、蒸気が底部を通過することを可能にしていることを意味している。蒸気に対するこのような透過性を有している底部6は、当業者に知られているどのような手段によって、例えば、十分に多孔性の材料を用いて底部6を形成することによって達成されてもよいし、または、好ましくは、前記底部を形成する材料を穿孔することによって達成されてもよい。穿孔は、好ましい解決策である。何故なら、穿孔によって、底部6を通る蒸気の可能な限り高い流量を得ることができるからである。従って、図に示されている好ましい実施形態では、底部6は、前記底部6の領域の全体にわたって、好ましくは、実質的に均一に分配された貫通孔7を備えている。すなわち、貫通孔7は、前記底部6の全面積にわたって、均一にかつバランスを保って分配されていることになる。
【0036】
しかし、例えば、図7に示されているように、貫通孔7を底部6において局存化させて、例えば、周辺帯域に沿ってのみ分配させ、底部の中心部を連続体として実質的に蒸気に対して不透過性にすることも十分に可能である。従って、本発明では、蒸気に対して透過性を有している底部6の特性は、前記底部6の全体的な特性であることが意図されている。すなわち、前述したように、底部6のいくつかの部分を蒸気に対して完全に不透過性とすることも十分に可能であり、本質的な必要条件は、蒸気が前記底部6の下面6Aから上面6Bに向かって前記底部6を少なくとも部分的に通過できることである。
【0037】
図に示されている好ましい実施形態では、底部6は、その全厚みを貫通している複数の貫通孔7を備えている円板状の剛性材料シートから構成されている。しかし、底部6を柔軟なものとすることも十分に可能である。例えば、底部6を金属材料またはプラスチック材料から作製されたワイヤまたは撚り線を用いて形成された網目構造から構成することも十分に可能である。いずれの場合も、貫通孔6は、当該網目構造を構成しているワイヤまたは撚り線間に残っている空所(または網目の空隙)に対応している。他の種々の変形実施形態では、底部6は、篩、格子、またはグリッドから構成されていてもよく、本質的な必要条件は、底部6が開口を備えていることであり、またはいずれにしても、底部6が、蒸気をその下面6Aからその上面6Bに向かってその厚みを通過させるのに十分な透過性を有していることである。
【0038】
有利には、底部6を貫通して設けられている貫通孔7は、前記底部6の全面積の少なくとも30%、好ましくは、少なくとも40%を占めている。調理速度およびビタミン保存に関する本発明のバスケット1の性能は、底部6の透過性の程度が大きくなるほど、従って、底部6における貫通孔7の割合が大きくなるほど、向上することになる。
【0039】
底部6が有孔金属シートから構成されている場合、略30%〜40%の範囲内にある貫通孔の割合が、理想的であり、40%の値にした場合、特にすぐれた結果を得ることができる。底部6が、グリッドから構成されている場合、または、例えば、金属ワイヤから形成された網目構造から構成されている場合、貫通孔は、底部6の全面積の40%よりも著しく大きい割合にしてもよく、これによって、調理時間の短縮およびビタミン保存に関するすぐれた結果を得ることができる。しかし、柔軟な網目構造を用いると、特に、バスケットが大量の食品を保持しているとき、バスケット1の洗浄の容易さおよび調理プロセス中のバスケット1の機械的な安定性に関する多くの欠点が生じることになる。この観点から、図に示されているように、底部6が剛性であると共に平坦になっていると、特に有利である。
【0040】
本発明では、食品2を調理するバスケット1は、特に図2および図7に示されているように、底部6と協働して前記食品2を受け入れる入れ物を形成するように底部6から上方に延在している上側環状側壁8も有している。有利には、図に示されているように、上側環状側壁8は、底部6に接続された底縁8Aと自由上縁8Bとの間において、底部6の周囲から上方に延在している。
【0041】
図に示されている例では、底部6は、実質的に円形状を有しており、その結果、上側環状側壁8は、底部6の中心を通る軸X−X’を中心とする円対称の形状を有している。軸X−Xは、バスケット1がその使用位置にあるときには、実質的に垂直方向に相当することになる。
【0042】
従って、上側環状側壁8の自由上縁8Bは、第1に底部6、さらに正確には、前記底部6の上面6Bと第2に上側環状側壁8とによって画定された入れ物内において、バスケット1内に食品を挿入することを可能にする開口が形成されている。その結果、食品は、前記食品が「ばらばら(loose)」の形態(ポテト、エンドウ豆、インゲン豆、など)にあっても、前記食品の支持面を形成するように設計された底部6上に置かれることになる。
【0043】
本発明では、バスケット1は、底部6から下方に、すなわち、上側環状側壁8が底部6から延在している方向と逆の方向に延在している下側環状側壁9も有している。換言すると、上側環状側壁8は、底部6の上面6Bと同じ側において延在しており、下側環状側壁9は、前記底部6の下面6Aと同じ側において底部6から下方に延在している。有利には、図に示されているように、下側環状側壁9は、底部6に接続された上縁9Aと自由底縁9Bとの間において、底部6の周囲から延在している。好ましくは、下側環状側壁9は、上側環状側壁8から続いている。例えば、図1,2に示されている実施形態では、下側環状側壁9の上縁9Aおよび上側環状側壁8の下端8Aは、実質的に一致し、またはいずれにしても、互いにごく隣接している。有利には、上側環状側壁8と同じように、下側環状側壁9は、軸X−X’を中心として円対称である。従って、図に示されている種々の変形例では、垂直軸X−X’に沿って、バスケット1は、下側環状側壁9の高さhおよび上側環状側壁8の高さhの合計に対応する高さHを有している。
【0044】
この場合、底部6は、バスケット1の両最先端から遠く離れて配置されており、これらの最先端は、それぞれ、上側環状壁8の自由上縁8Bおよび下側環状壁9の自由底縁9Bから構成されていることになる。
【0045】
本発明によれば、下側環状側壁9は、蒸気を底部6に向かって導くように形作られている。換言すると、下側環状側壁9は、蒸気を底部6に向かって、さらに正確には、前記底部6の下面6Aに向かって導くように設計されており、これによって、調理サイクル中、蒸気は、前記底部6を通過し、前記底部6上に配置された食品2の個々の間に伝搬し、場合によっては、食品2を通って伝搬することになる。従って、下側環状側壁9は、蒸気を食品2の積重ねの芯に集結させ、これによって、食品の個々の間に存在している空気を流し出すことができる漏斗として、機能することになる。食品の積重ね内に必然的に捕捉された空気のこのような除去によって、調理を加速することができると共に、ビタミンが酸化するのを防ぐことができる。換言すると、下側環状側壁9は、蒸気を底部6内および底部6によって支持された食品2の積重ね内を強制的に通過させるように、蒸気を底部6に向かって案内するようになっており、これによって、食品2の積重ね内に存在している空気を流し出すことができる。従って、下側環状側壁9は、蒸気を底部6に向かって底部6の全高さhの実質的に全体にわたって案内すると共に、その高さhの経路の全体にわたって蒸気の著しい横方向の損失が生じるのを避けるように、設計されている。その結果、下側環状側壁9は、蒸気に対して透過性を有する(例えば、穿孔されているまたは多孔性の)底部の区域に向かって、蒸気を導き、このように導かれた蒸気は、前記底部6内を少なくとも局部的に通過することになる。従って、下側環状側壁9は、調理中に生じた蒸気を受け取ってその蒸気を導く内部容積を画定している。好ましくは、高さhは、下側環状側壁9によって得られる蒸気導通効果を最適化させるために、高さhの少なくとも10%である。加えて、任意選択的に補足すると、高さhは、1cm以上、好ましくは、2cmよりも大きいかまたは等しくなっており、これによって、バスケットの内容物(調理される食品)は、調理液体に対して十分に引き上げられることになる。従って、この場合、下側側壁9は、圧力調理器の容器内に含まれている調理水と少なくとも部分的に実質的に接触させずに、食品を維持することを可能にする高さ引上げ具(height booster)としても機能することになる。この場合、高さhは、有利には、自由底縁9Bの直径Dの少なくとも4%、さらに好ましくは、前記直径Dの少なくとも8%である。
【0046】
蒸気を導くために、下側環状側壁9は、有利には、蒸気に対して実質的に不透過性になっている。例えば、下側環状側壁9は、有利には、実質的に連続体である。すなわち、下側環状側壁9は、下側環状側壁9を通る蒸気の著しい横方向の損失を生じさせるどのような多孔または貫通孔も有していない。
【0047】
例えば、底部環状側壁9は、ステンレス鋼系の金属材料のような剛性材料から作製されている。しかし、どのような他の材料、例えば、プラスチック材料を用いることも十分に可能であることを理解されたい。
【0048】
有利には、上側環状壁8は、下側環状側壁9の自由底縁9Bを母線とする円筒容積C内にある(図6参照)。換言すれば、図に示されている実施形態では、自由底縁9Bにおける下側環状側壁9の直径D1は、上側環状側壁8の最大直径D2よりも大きくなっており、これによって、前記上側環状側壁は、好ましくは、その全体が円筒容積C内に実質的に収まっていることになる。
【0049】
好ましくは、図に示されているように、下側環状側壁9の自由底縁9Bの外周は、前記下側環状側壁9の上縁9Aの外周よりも実質的に大きいかまたは等しくなっている。換言すると、下側側壁9は、底部6から下方に拡がる輪郭を有している。
【0050】
有利には、図1、図2および図5〜図7に示されているように、下側環状側壁9は、その上縁9Aからその自由底縁9Bに向かって下方に、好ましくは徐々に、拡がっている。この場合、下側環状側壁9は、ラッパ状に形作られている。例えば、下側環状側壁は、図1および図5に示されているように、実質的に切頭円錐形状を有している。この切頭円錐形状は、任意選択的に、図1に示されているように、その自由端9Bにおいて、直線状の円筒リムとして延在している。しかし、下側環状側壁9が、本発明の範囲から逸脱することなく、図6および図7に示されているように、湾曲した輪郭を有することも十分に可能である。
【0051】
有利には、上側環状側壁8は、図1、図2および図5に示されているように、実質的に円筒状であり、または、図6および図7に示されているように、その自由上縁8Bの直径が下側環状側壁9の自由底縁9Bの直径を超えることなく、底部6から上方に向かってわずかに拡がっている。このような幾何学的形状によって、蒸気を強制的に底部6を通過させると共に、調理されている食品内に捕捉された空気を流し出すように、前記蒸気を底部6に向かって導き、かつ集結させることが可能になる。このように食品から流し出された空気は、図2において点線で示されている側環状区域10内に集結することになる。空気の断熱性の観点から重要である食品からの前記空気の離脱を維持するために、上側環状側壁8は、気体に対して実質的に不透過性である。すなわち、上側環状側壁8は、好ましくは、非多孔性であり、バスケットの内側とその外側との間を上側環状側壁8の厚みを通して連通することを可能にするどのような貫通孔も備えていない。当然ながら、絶対的かつ完全な不透過性は、必ずしも、上側環状側壁8にとって必要ではなく、本質的な必要条件は、前記上側環状側壁が、図2に示されているように、上側環状側壁8および下側環状側壁9と整合してバスケットの外側に配置された側環状区域10内に蓄えられた空気に対するバリアとして十分に機能することである。これは、当然ながら、下側環状側壁9にも当てはまることである。すなわち、下側環状側壁9の蒸気に対する透過性の程度は、蒸気の著しい横方向損失を阻止するのに十分低くなっていればよく、これによって、蒸気の流れが底部6に向かって、かつ底部6を通って集結されることが阻止されることになる。さらに、上側環状側壁8および/または下側環状側壁9の不透過性によって、バスケットの内側に存在している蒸気が側環状区域10内に含まれている空気をそこから押し出し、調理プロセスを不利に阻害するのを防ぐことが可能になる
【0052】
有利には、バスケット1は、支持体上に直立するように設計されている。この支持体は、好ましくは、調理器具3の底壁3Aから構成されている。この目的のために、下側環状側壁9は、バスケット1用のスタンドまたは基部として機能するように形作られている。
【0053】
従って、下側環状側壁9がこのように形作られていることによって、バスケット1は、実質的に平坦な支持体、特に、図2に示されているように、調理器具3の底壁3A上に安定して直立することが可能になる。このように、下側環状側壁9は、有利には、2つの機能、すなわち、第1に蒸気を底部6に向かって導く機能、第2にバスケット1が支持体表面上に安定して直立することを可能にする機能を果たすことになる。従って、本発明のバスケット1によれば、バスケット1を適所に保持する目的で、調理器具3の内側または外側にどのような特別の機構を設けることも、もはや必要ではない。また、下側環状側壁9は、底部6を調理器具の底壁3Aからいくらかの距離を隔てて保持することができ、これによって、調理液体11の高さが下側環状側壁9の高さhを超えていないことをユーザが確認している限り、食品2が調理器具3内に存在しているどのような調理液体11に浸漬することも阻止することができる。有利には、下側環状側壁9の自由底縁9Bは、環状の支持面をバスケット1に与えるために、実質的に、かつ好ましくは、平面内にあるとよい。この環状の支持面によって、バスケット1が安定して直立することが可能になるのみならず、調理器具3の底壁3A、下側環状側壁9、および底部6によって画定された閉鎖区域を作り出すことができる。この閉鎖空間内において生じた蒸気は、蒸気に対して透過性を有している底部6を介してのみ流出することができる。
【0054】
図2に示されている特に有利な一変形例では、食品調理用バスケット1は、底壁3Aを有する調理器具3用のバスケットであり、このバスケット1は、底壁3Aに支えられるように設計されている。下側環状側壁9の自由底縁9Bの形状および外周は、図2に示されているように、器具3の前記底壁3Aの周囲の形状および外周と実質的に一致している。
【0055】
調理器具3と共に用いられるように設計されたバスケット1が調理器具3に適合するように形作られていることによって、バスケット1が調理器具3の内側において自動芯出し調整することが可能になるのみならず、とりわけ、底壁3Aを覆っている調理液体11によって生じる蒸気の実質的に全てを収集することも可能になる。その結果、当該蒸気は、底部6を通過するように、かつ食品2の個々間に捕捉された空気を排出させるように、底部6に向かって集結されることになる。
【0056】
図1、図2および図5に示されている種々の変形例では、バスケット1は、一体ユニットを構成している。すなわち、上側環状側壁8、底部6、および下側環状側壁9は、例えば、溶接によって、または他の機械的な組立方法によって、互いに永久的に固定されている。この目的のために、例えば、上側環状側壁8および底部6を一体に形成し、下側環状側壁9を別体とし、任意選択的に蒸気気密ガスケットを介在させて、力を加えることによって、図6に示されているように、下側環状側壁9を上側環状側壁8および底部6によって形成された部分組立品に係合させることができる。このような組立は、バスケットを購入した時点で、エンドユーザによって行われることも十分に可能である。また、2つの一体部分によるこの構造は、貯蔵および輸送に関して有利である。もし、図6に示されているように、上側環状側壁8が上方に著しく拡がっている場合、上側環状側壁8および底部6からそれぞれ構成されている複数の一体部分組立品を安定して、かつコンパクトに積み重ねることができる。同様に、下側環状側壁9をなすそれぞれの一体部品の場合も、それらの拡がっている特性によって、互いに積み重ねることができる。
【0057】
これによって、前述したように、消費者によって行われる最終組立までの貯蔵用空間および輸送用空間を節約することが可能となる。
【0058】
図7に示されている他の実施形態では、上側環状側壁8および下側環状側壁9は、一体部品を形成している。この部品は、例えば、一枚シートの円対称双曲面と大して違っていない形状を有する両側フレア管(double-flared tube)の形態にある。次いで、底部6を形成する独立したグリッドが、任意選択的にエンドユーザによって、上側環状側壁8および下側環状側壁9を形成している両側フレア管の内側に取り付けられることになる。底部6は、図7に示されているように、係止溝によって、または前述の管の内側の面に配置された任意の他の手段(例えば、柔軟なガスケット)によって、上側環状側壁8と下側環状側壁9との間の界面の適所に保持されることになる。この実施形態では、底部6を取外し可能とすることも十分に可能である。すなわち、例えば、貫通孔7の分配および/または寸法に関して、または底部6が湾曲しているかどうかに関して、互いに異なっている複数の別個の底部6の組12を任意選択的に有しているユーザによって、随意に、底部6を適所に配置し、底部6を取り外すことが可能である。また、この特定の設計によって、底部6を製造する作業をバスケット1を構成する他の要素を製造する作業から切り離すこともできる。従って、このような別々の製造によって、底部6の形状および材料の選択に関して著しい自由度が得られることになる。例えば、底部6は、異なる種類の食品をそれらを混在させることなく受け入れるように区画化されてもよいし、または、例えば、調理する間だけ底部6に一時的に取り付けられるように設計された取外し可能な入れ物(例えば、ラメキン(ramekin)など)と協働するように設計された支持体を備えることも可能である。このような分離式の底部設計は、ここに述べる他の本発明の態様とは無関係に、それ自体で発明を構成するものである。
【0059】
すべての場合に、例えば、上側環状側壁8の自由上縁8Bの近傍に固定された折畳み式保持ハンドル(図示せず)を有しているバスケット1を提供すると、有利である。
【0060】
また、本発明は、第1に蒸気が充満している雰囲気内で食品を調理するように設計された調理器具3、好ましくは、圧力調理器と、第2に本発明の食品調理用バスケット1と、を備えている、図2に示されている調理システムに独立して関連している。
【0061】
従って、前記システムのバスケット1は、前述した通りのものである。
【0062】
好ましくは、調理器具3は、蓋4によって閉鎖されるように設計された容器5を備えている。前記容器5は、好ましくは円板状に形作られた底壁3Aを備えており、この底壁3Aの周囲から、側壁3Bが延在している。側壁3Bは、容器5の内側へのアクセスを可能にする開口を画定している自由端を備えている。容器5は、好ましくは、バスケット1が使用位置にあるときは軸X−X’と一致する軸を有する円対称の形状を有している。バスケット1は、好ましくは、図2に示されているように、容器5の内側を通って底壁3A上に直立することを目的として、当該開口を介して、前記容器5内に挿入されるように設計されている。有利には、すでに述べたように、下側環状側壁9の自由底縁9Bの形状および外周は、前記底壁3Aの周囲の形状および外周と実質的に一致している(図2参照)。これは、下側環状側壁9と容器の側壁3Bとの間に存在する隙間Jが、有利には、下側環状側壁9の自由端9Bの断面と実質的に相補的な断面を有する容器5の内側において、バスケット1が自動的に芯出しするように摺動することを可能にする値まで、最小化されていることを意味している。また、下側側壁9が拡がっている特性によって、容器5の側壁3Bとバスケット1の上側環状側壁8および下側環状側壁9のそれぞれの外面との間に、流し出された空気を蓄える区域10を画定することが可能である。従って、食品2の積重ね内に捕捉された空気は、中立区域10内、すなわち、主調理区域の外側に位置している区域内に流し出され、これによって、調理に対するどのような阻害も防ぐことができる。
【0063】
以下、本発明の調理システムの操作の例について説明する。まず、ユーザは、調理器具3、この例では、圧力調理器から構成されている調理器具3の容器5内にある量の水11を入れる。前記水の量は、底壁3Aからの水の高さhがバスケット1の下側環状側壁9の高さhを超えないように、選択されることになる。次いで、ユーザは、食品2をバスケット1内に入れ、底部6の上面6B上に置く。このように食品2によって満たされたバスケット1は、下側環状側壁9の自由底縁9Bが容器5の底壁3Aに当接するまで、容器5内に投入されることになる。自由端9Bの形状が底壁3Aの形状に適合しているので、下側環状側壁9は、前記底壁3A、従って、前記底壁3A上の水11を実質的に全体的に覆うことになる。次いで、蓋4が、容器5上に置かれ、例えば、顎4Aの機構によって係止されることになる。この後、食品2を含むバスケット1を収容している(ガスケット4Bが蓋4と容器5との間に配置された)漏れのない調理筺体は、熱源(例えば、ホットプレート)上に置かれることになる。加熱によって、水11の温度が上昇し、前記水は、沸騰し、これによって、蒸気を生じることになる。自由底縁9Bの直径D1が底壁3Aの直径よりもごくわずかしか小さくなっていない限り、隙間Jは、無視することができ、沸騰している水11によって生じた蒸気の殆どは、下側環状側壁9、底壁3A、および底部6との間に集められることになる。従って、このように生じた蒸気の殆どまたは実質的に全てが、下側環状側壁9によって、底部6に向かって導かれ、前記底部7に設けられたオリフィス7を介して、前記底部6を通過することになる。下側環状側壁9の導通効果によって得られるこの大量の蒸気流れによって、食品2の積重ねの内側の食品2の個々間に通常捕捉されている空気は、蒸気によって上方に流し出され、上側環状側壁8によって導かれることになる。
【0064】
次いで、前記空気は、第1に容器5の側壁3B、第2にバスケット1の下側環状側壁9および上側環状側壁8のそれぞれの外面によって画定された周辺環状区域10内に溜められることになる。従って、調理される食品2が位置している区域は、空気によるどのような断熱効果にも影響されることがなく、これによって、最大調理温度が極めて迅速に食品2の積重ねの芯に達することが可能になる。調理プロセスの開始時に特に効果的かつ迅速に空気を流し出すことによって得られるこの迅速な調理によって、大量のビタミンが保存され、かつ熱源を先行技術による調理器よりも早く切ることができる。当然ながら、食品2の積重ねから流れ出した空気は、排気システム(排出弁)を介して、または圧力調理器の調整弁を介して、調理の開始時に除去することができる。いずれにしても、もし蒸気によって食品2から流れ出した空気の全てが排気弁または調整弁を介して除去されていなかった場合、前記空気は、前述したように、区域10に溜められることになる。
【0065】
本発明のバスケット1および本発明の対応する調理システムの利点は、以下の2つの互いに関連する態様から、定量的に確認することができる。
【0066】
・最大調理温度が、前述の理由から、食品2の積重ねの芯に迅速に達することによる、調理時間の節約。
【0067】
・壊れやすいビタミン(例えば、ビタミンC)が(前述したように、空気が流し出されるので)酸化現象に影響され難く、かつ(最大調理温度が食品2の積重ねの芯により迅速に達することによって、調理時間が短くなるので)調理温度の破壊効果に影響され難いことによる、ビタミン保存の利得。
【0068】
本出願人は、ブロッコリーおよびインゲン豆に対して調理試験を行った。これらは、積み重ねて調理される食品であり、従って、調理中に空気を捕捉しがちな食品である。行った試験は、第1に、図1に対応する変形例における本発明のバスケット1を用いて、第2に、先行技術による参考バスケットを用いて、操作圧力が54kPaに設定された同一の圧力調理器によって調理サイクルを実施したものである。試験に用いた圧力調理器は、圧力が加えられている間に、圧力調理器の筺体からの蒸気の除去を容易にする排気システムも備えているものとした。参考バスケットをなす先行技術によるバスケットは、(その底部の貫通孔の殆どが省略され、具体的には、前記底部が実質的に連続体とされ、前記底部の狭い周辺帯域のみがバスケットの側壁と同じように穿孔されていることを除けば)、仏国特許出願公開第2832613号明細書に記載されているバスケットの設計と同一の設計を有するものである。第1の一連の試験では、操作圧力が54kPaに設定された同一の圧力調理器内の本発明のバスケット1および前述の参考バスケットによって、400gのインゲン豆を調理した。参考バスケットによる調理時間は、約6分30秒であったが、本発明のバスケット1による調理時間は、5分15秒に短縮された。すなわち、約20%の節約が得られたことになる。同様の試験を400gのブロコリーに対して行ったが、この場合、調理時間に関して約17%の節約を見出すことができた。具体的には、参考バスケットの場合、ブロッコリーの調理に3分掛かかったが、本発明のバスケット1の場合、2分30秒でブロッコリーを調理することができた。加えて、参考バスケットによって調理されたインゲン豆には55%のビタミンが保存されたのに対して、本発明のバスケット1によって調理されたインゲン豆に保存されたビタミンの割合は、62%であった。すなわち、6%を超える利点が得られたことになる。
【0069】
本発明の新規のバスケット1において、調理温度がより迅速に達することを確認するために、試験中、図3および図4のグラフに示されているような圧力測定値および温度測定値も記録した。すなわち、図3および図4のグラフは、それぞれ、操作圧力が54kPaに設定された圧力調理器によって400gのインゲン豆を調理するための以下のデータ、および該圧力調理器によって400gのブロッコリーを調理するための以下のデータを含んでいる。
【0070】
・食品が参考バスケット内に置かれているときの時間の関数としての調理筺体内の温度の変動(この芯温度は、食品(インゲン豆またはブロッコリーの該当している方)の積重ねの種々の点において測定されたものであり、芯温度の変動は、この例では、ハッチングされた区域によって示されている)。
【0071】
・食品が本発明のバスケット1に配置されているときの時間の関数としての調理筺体内の温度の変動(この芯温度は、食品(インゲン豆またはブロッコリーの該当している方)の積重ねの種々の点において測定されたものであり、芯温度の変動は、この例では、参考バスケットの対応する区域よりもさらに濃くハッチングされた区域によって示されている)。
【0072】
・(点線で示されている)ズーナー温度(Zeuner temperature)の変動、すなわち、空気が存在していない場合の圧力の関数としての水11の理想的な沸騰温度の変動。
【0073】
・本発明のバスケット1および参考バスケットにおける調理の終了点(この調理の終了点は、通常の柔軟性試験(tenderness test)によって決定されている)。
【0074】
・(実線で示されている)時間の関数としての調理筺体に拡がる圧力の変動。
【0075】
従って、図3および図4のグラフは、インゲン豆またはブロッコリーの積重ねの芯における温度測定値の全てからなる塗りつぶし区域が、参考バスケットによって得られた温度からなるハッチング区域よりも先に現れていること、また本発明のバスケット1によって得られた温度からなるこの塗りつぶし区域は、ゾーナー温度曲線に近いことを示している。本発明のバスケット1によって得られるこのより早い温度上昇によって、より迅速に調理の終了に達し、ビタミンを保存することができる。従って、これらの結果は、調理時間の短縮およびビタミン保存に関する本発明の調理用バスケット1の有効性を立証していることになる。当然ながら、定量的な結果は、当該食品に依存している。ビタミンが特に露出している食品の場合、さらに一層顕著な結果が観察されることになるだろう。
【0076】
最後に、本出願人は、中立区域10の容積を増加させることによって、本発明のバスケット1の有効性をさらに増強することができることを見出している。しかし、これによって、バスケットの容量が減少することになる。にもかかわらず、食品の量が少ない場合には、図5の一変形例におけるようなバスケット1、すなわち、下側環状側壁9の自由底縁9Bによって画定される断面積よりも著しく小さい断面積を有する上側環状側壁8を有するバスケット1によって、調理の速度およびビタミンの保存に関して、すぐれた結果を得ることができる。
【0077】
当然ながら、図に示されている例に対応する特定の形状は、唯一の考えられる形状ではなく、準拠されるべき唯一の本質的な必要条件は、蒸気の殆ど、好ましくは、蒸気の殆ど全てが食品内に案内されること、および残留空気が調理される食品と接触することなく集められる区域10が、有利に残されていることである。
【0078】
また、図示されていない一変形例では、バスケット1は、下側環状側壁9の自由底縁9Bに固定されるように設計された皿に関連付けられたテーブル付属品を形成することもできる。前記皿は、バスケット1に含まれている食品から流れ出した汁を受け取るように設計されている。ここで、バスケット1は、テーブルを濡らすどのような危険も冒すことなく、前記テーブルに載置されるようになっている。
【0079】
本発明のバスケット1は、圧力調理器内またはいくつかの他の蒸気調理器具内において一般的に蒸気によって調理される殆どの食品をより迅速に調理することを可能にするものである。このバスケット1は、同等の調理水準において、どのような他の周知のバスケットを用いるよりもビタミンを酸化され難くし、これによって、大量のビタミンを食品内に残存させることができる。従って、熱源をより速く切ることができ、これによって、調理を行うために消費されるエネルギーを少なくすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気が充満している雰囲気内で食品(2)を調理するように設計された調理器具(3)用の食品(2)を調理するためのバスケット(1)であって、蒸気に対して透過性を有している底部(6)と、前記底部(6)と協働して前記食品(2)を受け入れる入れ物を形成するように前記底部(6)から上方に延在している上側環状側壁(8)と、を有しているバスケット(1)において、前記バスケットは、前記底部(6)から下方に延在している下側環状側壁(9)をさらに有しており、前記下側環状側壁(9)は、蒸気を前記底部(6)に向かって導くように形作られており、これによって、このように導かれた前記蒸気は、前記底部(6)を少なくとも局部的に通過するようになっていることを特徴とするバスケット。
【請求項2】
前記下側環状側壁(9)は、前記底部(6)に接続された上縁(9A)と自由底縁(9B)との間に延在していることを特徴とする、請求項1に記載のバスケット。
【請求項3】
前記上側環状壁(8)は、前記下側環状側壁(9)の前記自由底縁(9B)を母線とする円筒容積(C)内にあることを特徴とする、請求項2に記載のバスケット。
【請求項4】
前記自由底縁(9B)の外周は、前記上縁(9A)の外周よりも実質的に大きいかまたは等しくなっていることを特徴とする、請求項2または3に記載のバスケット。
【請求項5】
前記下側環状側壁(9)は、その上縁(9A)からその自由底縁(9B)に向かって下方に拡がっていることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項に記載のバスケット。
【請求項6】
前記自由底縁(9B)は、実質的に平面内にあることを特徴とする、請求項2〜5のいずれか一項に記載のバスケット。
【請求項7】
前記調理器具(3)は、底壁を有しており、前記バスケット(1)は、前記底壁に支えられるように設計されており、前記自由底縁(9B)の形状および外周は、前記底壁の周囲の形状および外周と実質的に一致していることを特徴とする、請求項2〜5のいずれか一項に記載のバスケット。
【請求項8】
前記下側環状側壁(9)は、実質的に連続しているものになっていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のバスケット。
【請求項9】
前記上側環状側壁(8)は、実質的に連続しているものになっていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のバスケット。
【請求項10】
前記底部(6)は、貫通孔(7)を備えていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のバスケット。
【請求項11】
前記バスケット(1)は、圧力調理器用バスケット(1)を構成していることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のバスケット。
【請求項12】
第1に、蒸気が充満している雰囲気内で食品(2)を調理するように設計された調理器具(3)と、第2に、蒸気に対して透過性を有している底部(6)および前記底部(6)と協働して前記食品(2)を受け入れる入れ物を形成するように前記底部(6)から上方に延在している上側環状側壁(8)を有している食品調理用バスケット(1)と、を備えている調理システムにおいて、前記バスケット(1)は、前記底部(6)から下方に延在している下側環状側壁(9)をさらに有しており、前記下側環状側壁(9)は、蒸気を前記底部(6)の方に導くように形作られており、これによって、このように導かれた前記蒸気は、前記底部(6)を少なくとも局部的に通過するようになっていることを特徴とする調理システム。
【請求項13】
前記下側環状側壁(9)は、前記底部(6)に接続された上縁(9A)と自由底縁(9B)との間に延在しており、前記調理器具(3)は、底壁(3A)を有しており、前記バスケット(1)は、前記底壁(3A)に支えられるように設計されており、前記自由底縁(9B)の形状および外周は、前記底壁(3A)の周囲の形状および外周と実質的に一致していることを特徴とする、請求項12に記載の調理システム。
【請求項14】
前記調理器具(3)は、前記バスケット(1)を収容するように形成された調理筺体を形成するように設計されていることを特徴とする、請求項12あるいは13に記載のシステム。
【請求項15】
前記調理器具(3)は、圧力調理器であることを特徴とする、請求項12〜14のいずれか一項に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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