説明

食品

本発明は、外部と内部からなる食品であって、内部が、ギンバイカを含み、約10質量%から約25質量%の含水量を有するものであり、お口の健康の用途に使用するための食品、および好ましくは動物の口腔内の、タータおよび/または歯垢の低減またはコントロールおよび/または歯垢の細菌含有量の変化による、動物におけるお口の健康の改善または維持にその食品を使用する方法に関する。本発明は、動物における歯肉炎の予防または治療に前記食品を使用する方法も含む。本発明は、動物におけるお口の健康を改善または維持する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部と内部からなる食品であって、内部が、ギンバイカを含み、約10質量%から約25質量%の含水量を有するものであり、お口の健康の用途に使用するための食品、および好ましくは動物の口腔内の、タータ(歯石)および/または歯垢の低減またはコントロールおよび/または歯垢の細菌含有量の変化による、動物におけるお口の健康の改善または維持にその食品を使用する方法に関する。本発明は、動物における歯肉炎の予防または治療に前記食品を使用する方法も含む。本発明は、動物におけるお口の健康を改善または維持する方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
動物におけるお口の健康を維持または改善する必要性は非常に重要である。お口の健康が優れないと、歯周病(歯肉炎)を発症させ、最終的に歯の損失にもつながる。このことは、動物の健康状態に重大な影響をもたらし得る。
【0003】
優れないお口の健康は、数多くの病気と状態により生じうる。犬と猫に最も蔓延している病気の1つは歯周病である。歯周病は、寿命のある段階で全ての犬と猫に影響を与える。歯周病の全ての場合において、原因物質は歯垢である。
【0004】
伴侶動物における歯垢の形成(およびしたがって歯肉炎などの関連状態)を減少させるまたはコントロールするための現行の食餌療法は、通常は、動物が噛んだり食べたりしたときに、歯から歯垢をこすり取るように働く硬いチュウ(chew)またはおやつなどの機械的な手段である。この機械的手段は効き目についてはテキスチャーに依存し、その手段の破損に抵抗するために、したがって、噛んでいる最中の歯のクリーニング時間を増加させるためにも、脆いテキスチャーよりも噛みでのあるものが好ましい。猫は、犬ほどは長期間に亘り噛むことに熱中しない。したがって、様々な動物のための製品は、これらの異なる嗜好を考慮してテキスチャーが異なる。
【0005】
テキスチャーの付いた表面を提供する製品を動物に摂取させずに、歯の表面から歯垢を機械的に除去するために、テキスチャーの付いたおもちゃを用いてもよい。
【0006】
しかしながら、テキスチャーの付いた食品またはおもちゃなどの機械的手段による歯垢の除去は、歯の表面から歯垢をこすり取るためにその機械的手段を噛むのに動物が十分な時間を費やすことに依存する。要求される時間の量は、評価するのも、モニタするのも難しい。その上、口腔内の歯の表面全てのプラーク(歯垢)・コントロールは、機械的研磨のみによって実施するのは難しく、ある歯は他の歯よりも、より効率的にクリーニングされる。
【0007】
歯垢は、歯ブラシによる歯磨きでクリーニングすることによって除去または減少させてもよい。しかしながら、歯ブラシを用いた飼い主による歯磨きの履行は不十分であり、その結果、ごくわずかな犬と猫しか、毎日の歯ブラシによる歯磨きのオーラル・ケアを受けていない。
【0008】
歯垢の除去のための機械的手段に代わる手段として、クロルヘキシジンおよびトリクロサンなどの特定の合成化合物を、歯垢を除去するための抗菌剤として使用することもできる。しかしながら、これらの化合物は、用途の広い抗菌剤であり、よって、定期的に摂取したときに、健康な内臓の微生物叢集団に不均衡が生じてしまうであろう。その上、特定の歯垢細菌は歯周の健康に関連付けられ、用途の広い抗菌剤による治療で、これらの集団が潜在的に殺され、実際に、口腔微生物叢が健康が低下し、お口の健康が損なわれてしまうであろう。
【0009】
歯の表面上の細菌生物膜の蓄積は、十分に対処されていないと、歯肉炎の原因となり得る。歯肉炎は、歯肉線に蓄積する歯垢により生じる歯肉の炎症である。歯肉炎により、歯肉が痛んだり、赤くなったり、出血したりし得る。
【0010】
優れないお口の健康に対するさらに別の有力な原因は歯石(タータとも呼ばれる)である。歯石は、通常は、歯ブラシによる歯磨きによって除去できないので、歯の表面に蓄積し、さらなる歯垢が容易に蓄積し得る表面を提供する。このことは、優れないお口の健康またはお口の健康を劣化させるさらに別の兆候である。
【0011】
ペットの食品または人のオーラル・ケア製品へのトリポリリン酸ナトリウムなどの歯石形成阻害因子の添加は、歯石の蓄積を防ぐのに役立つ。しかしながら、このことは、動物のお口の健康への歯周病の有害な影響に加わる歯垢内の細菌群集組成物に対処していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、機械的手段もしくは合成化学物質または化合物のみに依存せずに、また動物にストレスを与えずに、特に自然な方法によって、動物における歯垢の影響を低減させる必要がある。さらに、動物における歯肉炎の予防および治療が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
それゆえ、本発明は、外部と内部からなる食品であって、内部が、ギンバイカを含み、約10質量%から約25質量%の含水量を有する食品を提供する。
【0014】
ギンバイカ(Myrtle)(Myrtus communis)は、南欧と北アフリカを原産とするフトモモ科(the family Myrtaceae)の顕花植物である。
【0015】
本出願の発明者等は、予期せぬことに、ギンバイカは、動物の歯から歯垢をこすり取るために作られた食品と組み合わせると、動物のお口の健康を改善および/または維持できることを発見した。
【0016】
その食品で、動物の歯垢をコントロールするまたは減少させることによって動物のお口の健康が改善または維持されることが好ましい。これは、歯垢(plaqueおよび/またはdental plaque)により生じる疾患原因要因が動物の口腔内で減少するまたは阻害されることを意味する。
【0017】
歯垢は、好気性細菌と嫌気性細菌からなる混合細菌群集である。歯垢は個体間で様々であろうが、形成プロセスは、(i)一次定着(付着);(ii)二次定着(共凝集);および(iii)熟成(毒性)の3つの主な出来事に分解できる。
【0018】
歯垢の発生は、歯の唾液ペリクルと呼ばれる糖タンパク質とタンパク質の膜により被覆された歯の表面から始まる。先駆細菌種が唾液ペリクル内の分子に付着し、最初に単層を形成し、その後、歯の表面に垂直に細菌の柵(palisades)を形成する。
【0019】
この微生物は、弱い引力によって短期間保持され、その間、数多くの特定の付着機構が十分な期間に亘り細胞を表面の近くに保持する。これらの特定の相互作用は、ある場合には、細胞表面から突出する小繊維(fibril)または線毛(fimbriae)と呼ばれる繊細な構造を含み得るレクチン様の静電的相互作用と疎水的相互作用の組合せであろう。この後、細胞外高分子の生成によって、最初の付着が効果的に不可逆にされる。
【0020】
ヒトにおいて、連鎖球菌が、唾液ペリクルに付着する全ての細菌の47〜52%を占める最も一般的な一次定着菌である。
【0021】
この初期段階の最中と後で、様々な細菌による二次定着が行われて、細菌の多様性が大幅に増加する。二次定着の出来事の中で最も重要なことは共凝集プロセスであり、それによって、一次定着菌が今では定着のための基体として働く。
【0022】
共凝集は、「混合細胞凝集体が形成されるような2種類の異なる細菌細胞型上の表面分子間の認識(recognition)」と描写される。共凝集は、「懸濁液中のパートナー細胞の間での付着性」とも描写される。
【0023】
共凝集は、特定の細菌「パートナー」の間で行われる高特異的プロセスである。各菌株は、細胞−細胞認識の独自の組のパートナーおよび機構を有する。いく種類かの他の菌株と共凝集できる菌株の群も存在する。ヒトの研究に基づいて、これらの後の定着菌の優位を占めるそのような微生物の1つは、フゾバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)であり、これは熟成した歯垢において主要な微生物である。
【0024】
共凝集は、ヒトの歯垢形成において重要な役割を果たすことが知られている。犬の口腔細菌の異なる菌株間の共凝集は生体外で決定され、他の動物における歯垢形成および発達においてこの挙動に似た役割を示唆している。
【0025】
歯垢のバイオフィルムの発達中のある時点で、組成物全体の変化速度が遅くなる。このことが起こる時点は現在知られていないが、そのバイオフィルムがこの状態に到達するには数日かかると考えられる。
【0026】
ヒトの歯垢において、グラム陽性球菌および桿菌がグラム陰性糸状微生物および鞭毛微生物により次第に置き換えられながら、一連の細菌種が生じる。この熟成バイオフィルムも、厚さが増加するにつれて、益々嫌気性になる傾向がある。
【0027】
この時点で、そのバイオフィルムは、多数の細菌が生存のためにこのバイオフィルム内で他の細菌に依存している、極相(climax)群集に到達したと言うことができる。この段階中は、歯周病に関連する多くの微生物が存在する。これらの細菌は、プロテアーゼおよびヘモリシンなどの歯周病の原因物質である多数の化合物を生成する。プロテアーゼ、特にトリプシンは、イムノグロブリンを分解し、サイトカインとそのレセプタを不活性化し、宿主組織を分解し、口腔内の出血を促進する能力を含む多数の能力を有することが報告されている。歯垢の細菌は歯垢バイオマスとして知られている。
【0028】
ペプトストレプトコッカス属などの病原菌、並びにポルフィロモナス属、バクテロイデス属およびプレボテラ属などの黒色集落形成(black pigmenting)嫌気性菌が、歯垢内にしばしば存在し、これらの全てが疾患状態に寄与すると考えられる。
【0029】
本発明の食品は、そのようなバイオフィルムの形成を阻害するおよび/またはこのバイオフィルムの有害な活動を阻害し、したがって動物における歯垢およびタータをコントロールするまたは減少させることによって、お口の健康を改善するまたは維持するのに有用である。本発明の食品は、動物における歯肉炎の予防または治療のためにも提供される。
【0030】
バイオフィルム中の病原菌のレベルを減少させることによって、歯垢の健康が改善される。それゆえ、本発明の食品は、好ましくは、動物の口腔内の歯垢の病原菌含有量を減少させることによって、歯垢の細菌含有量を変えるのに有用である。この食品は、歯垢の健康によい細菌も増加させるであろう。本発明の食品は、動物の口腔中に存在する歯垢の健康を改善するのに有用である。
【0031】
本発明の食品は、動物の歯垢中の炎症性プロテアーゼおよび/または黒色集落形成嫌気性菌のレベルを減少させることが好ましい。これらは、歯垢中に見つかる重大な疾患原因物質である。
【0032】
食品が歯垢中の病原菌を阻害するまたは減少させることが最も好ましく、この病原菌がペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus sp.)を含むことが好ましい。
【0033】
本発明の食品は、ヒトを含む任意の動物に適している。しかしながら、好ましい実施の形態において、動物は伴侶動物である。伴侶動物は、ペットとして飼われている任意の動物を意味し、それには、猫、犬、馬、ウサギ、およびテンジクネズミが含まれる。この食品が猫向けまたは犬向けであることが好ましい。
【0034】
ギンバイカ品種が、Myrtus baetica、Myrtus italica、Myrtus romanifolia、Myrtus macrofilia、Myrtus littoralis、Myrtus minimaを含むいくつかの他の名称によっても知られているマータス・コミュニス(Myrtus communis)であることが好ましい。当業者には、Myrtus baetica var. vidalii、Myrtus communis var. christinae、Myrtus communis var. eusebii、Myrtus communis var. gervasii、Myrtus italica var. briquetii、Myrtus italica var. petri-ludovici、Myrtus communis var. acutifolia、Myrtus communis var. angustifolia、Myrtus communis var. baetica、Myrtus communis var. belgica、Myrtus communis var. mucronata、Myrtus communis var. romana、Myrtus major Garsault, Myrtus minor Garsault、Myrtus acuta Mill、Myrtus baetica Mill、Myrtus belgica Mill、Myrtus italica Mill、Myrtus minima Mill、Myrtus littoralis Salisb、Myrtus macrophylla、Myrtus microphylla Myrtus romanifolia、Myrtus communis subsp. Mucronata、Myrtus media、Myrtus romana Hoffmanns、Myrtus angustifolia、Myrtus buxifolia Raf、Myrtus lanceolata Raf.、Myrtus latifolia Raf.、Myrtus oerstedeana、Myrtus sparsifolia、Myrtus veneris Bubani、Myrtus communis va
r. acuminata、Myrtus communis var. italica (Mill.)、Myrtus communis var. lusitanica、Myrtus borbonis Sennen、Myrtus acutifolia (L.)、Myrtus augustinii、Myrtus baui、Myrtus briquetii、Myrtus christinae、Myrtus communis var. balearica、Myrtus communis var. foucaudii、Myrtus communis var. grandifolia、Myrtus communis var. joussetii、Myrtus communis var. neapolitana、Myrtus eusebii、Myrtus gervasii、Myrtus josephi、Myrtus mirifolia、Myrtus petri-ludovici、Myrtus rodesi、Myrtus theodori、およびMyrtus vidaliiを含むギンバイカのこの種を称するために他の名称が使用されることも理解されよう。
【0035】
本発明の食品の内部(および必要に応じて外部)内に含まれるギンバイカは、植物全体またはその一部であって差し支えない。ギンバイカは、根、皮、茎、葉、樹液、花またはそれらの任意の組合せであってよい。ギンバイカは、乾燥され、粉砕され、挽かれまたは刻まれてもよい。使用すべきギンバイカがギンバイカの葉であることが好ましい。ギンバイカの葉は乾燥粉末の形態にあることが好ましい。
【0036】
それに加えまたは変わりに、ギンバイカの抽出物を使用してもよい。適切な抽出物としては、メタノール抽出物、エタノール抽出物、クロロホルム抽出物または水抽出物が挙げられる。任意の他の適切な抽出物を使用して良いことが当業者には理解されよう。
【0037】
ギンバイカは、食品の0.1質量%〜20質量%、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは3〜10質量%、または1,2,3,4,5,6,7,8,9または10質量%を占めてよい。ギンバイカが食品の約3質量%を占めることが好ましい。ギンバイカが食品の約1.5〜2.0質量%を占めることが最も好ましい。ギンバイカが内部の約3から8%、より好ましくは内部の約4%を占める。
【0038】
食品が、お口の健康の改善または維持に関する唯一の活性成分としてギンバイカを含んでよい。あるいは、食品が、1種類以上のさらに別のお口の健康を改善するまたは維持する成分、もしくは歯垢を減少させるまたはコントロールする成分を含む混ぜ物の一部としてギンバイカを含んでもよい。そのような成分としては、硫酸亜鉛またはトリポリリン酸ナトリウムが挙げられる。追加の天然の活性成分を含んでもよい。
【0039】
本文において以後、食品という用語は、食材、食餌およびサプリメントを含む、口腔、好ましくは動物の歯の表面と接触する全ての組成物を網羅する。これらの形態のいずれも、固体、半固体または液体であってよい。食品は、ペースト、ゲルまたはゲル状組成物を含んでよい。食品が、硬質のテキスチャー付き外部(シェル)および軟質の内部(コア)からなることが好ましく、この内部はペーストまたはゲルの形態にあってよい。この食品は、動物の主食に対するサプリメントであることが好ましい。この内部は、外部と似たテキスチャーと材料のものであってよい。サプリメントは、毎日、すなわち、毎週数回、もしくはそれほど頻繁ではない、例えば、毎週2回、使用してよい。あるいは、サプリメントは、毎週6,5,4,3回または1回、もしくは一日2回、使用してよい。
【0040】
硬質の外部は、食品を食べるために、動物が噛む必要のあるように硬度が十分であることを意味する。その硬度は、歯の表面に存在する任意の歯垢の一部を除去するために、動物が噛んでいる間に歯の表面上で「こすれる」のに十分である。食品を、食べるために連続的に噛まなければならないように、外部は、特定のデンプンの添加によって堅くされてもよい。これにより、噛む作用およびギンバイカへの曝露を長くすることによって、食品の恩恵が増す。
【0041】
歯垢中の疾患原因要因および/またはバイオマスの減少または阻害によって、歯肉炎の予防または治療を含む、お口の健康を改善するまたは維持するために、もしくは動物における歯垢をコントロールするまたは減少させるために、この食品を、十分なレベルのギンバイカを含有しない任意の食材を補うために使用してよい。
【0042】
食品中にギンバイカの濃縮物を、動物の主食または食材に加えて使用してよい。このことは、ある量のサプリメントを動物の食餌に含ませることによって、もしくはある量のサプリメントを動物に与えることによって行ってもよい。
【0043】
ギンバイカまたはギンバイカを含む組成物を、市販のペットフード製品組成物または市販の栄養補給組成物に含ませることが好ましい。このペットフード製品は、ドライ、セミドライ、モイストまたは液体(飲料)製品であってよい。モイスト製品は、缶またはホイル容器で販売され、70から90%の含水率を有する食品を含む。ドライ製品は、同様な組成を有するが、5から15%の含水率を有し、ビスケット状の粗挽き食物として提供される食品を含む。本発明の食品はパッケージで包装されることが好ましい。このようにして、消費者は、そのパッケージから、食品中の成分を確認し、それが意図する動物に適しているかを確認することができる。パッケージは、金属(通常は、缶またはフレキシホイル(flexifoil)の形態で)、プラスチック、紙またはボール紙であってよい。食品中の水分量は、使用できるまたは要求されるパッケージのタイプに影響するであろう。
【0044】
本発明による食品は、1種類以上の成分として、動物がその食餌で消費しうる任意の食品を含む。したがって、本発明は、ヒトまたは他の動物用の基本的な食品、並びにペットフードスナック(例えば、スナックバー、ビスケット、および甘味製品)を網羅する。この食品は調理済み製品でもよい。この食品は、肉または動物由来の材料(牛、鶏、七面鳥、子羊、血漿、髄骨など、またはそれらの2つ以上の組合せ)を含んでもよい。あるいは、この食品は、タンパク質源を提供するために肉を含まなくてもよい(大豆、トウモロコシグルテン、または大豆製品などの肉代替物を含むことが好ましい)。この食品は、大豆タンパク濃縮物、乳タンパク質、グルテンなどの追加のタンパク質源を含んでよい。この食品は、1種類以上の穀物(例えば、小麦、トウモロコシ、米、オート麦、大麦など)などのデンプン源を含んでもよく、あるいは、デンプンを含まなくてもよい。典型的な市販の犬および猫用のドライペットフードは、約30%の粗タンパク質、約10〜20%の脂肪を含み、残りは食物繊維および灰分を含む炭水化物である。典型的なウエット、またはモイスト製品は、(乾燥重量基準で)約40%の脂肪、約50%のタンパク質を含み、残りは繊維および灰分である。本発明の食品は、猫または犬用の食材またはサプリメントとして販売される、ここに記載するような食材に特に適切である。
【0045】
本文において、「飼い」犬および「飼い」猫という用語は、犬および猫、特に、フェリス・ドメスティクス(Felis domesticus)およびカニス・ドメスティクス(Canis domesticus)を意味する。
【0046】
食品は、主食の食材に加えて動物が食べてもよい、チュウまたはおやつの形態にあることが好ましい。ギンバイカは、食品上のコーティングとして、または食品内に取り込んで提供してもよい。ギンバイカは内部すなわちコア内に存在する。ギンバイカは、外部の組成物中で外部内に存在しても、またはコーティングとして施してもよい。
【0047】
内部、すなわちコアは、約10%から約25%の含水率を有する組成物である。含水率が10質量%、12質量%、15質量%、20質量%、22質量%または25質量%であってよい。水分活性は、好ましくは0.8未満、より好ましくは0.7未満、最も好ましくは0.6未満である。全体としての食品の含水率は10%から約25%であることが好ましい。内部と外部の両方が10%から15%の含水率を有することがより好ましく、約13%から14%が最も好ましい。
【0048】
内部はゲルまたはペーストもしくはゲル状マトリクスの形態にあってよい。ゲルは、ゼリー状テクスチャーを有する半固体材料を生成するような様式で、媒質(水などの)中に分散されたゲル化材料(高分子または微粒子材料などの)からなるマトリクスを意味する。ゲル状は、ゲルの外観および/またはテキスチャーを有するが、ゲルよりも含水率が低いことを意味する。ゲル状物質は、透明、ほとんど不透明、または不透明であってよい。
【0049】
あるいは、内部は、外部と同様に、気泡デンプン系材料であってよい。そのような内部は、堅い(すなわち、脆くも、容易に噛み切られたりもしない)が、製造中の空気混入により導入された気泡とデンプンの存在により、圧縮性である。そのような食品において、内部は、外部とテキスチャーが実質的に同じであるが、異なる組成を有する。その組成は、ギンバイカおよび/またはタンパク質および旨味剤(palatant)などの他の成分の含有量が異なるであろう。
【0050】
内部は、天然着色料および/または食品に使用するための当業者に公知の着色料により着色されていてよい。
【0051】
内部はペーストの形態にあってよい。ペーストは、外部内で位置を維持するが、軟質であり、食べたときに動物の歯を被覆する(少なくとも一時的に)ことが好ましい粘性組成物を意味する。ペーストは、例えば、練り歯磨き粉と同程度の粘稠度のものであってよい。
【0052】
好ましい実施の形態において、食品は骨に似ており、ここで、外部は1種類以上のデンプン、旨味剤、香味料および水を含み、内部は1種類以上のデンプン、旨味剤、ギンバイカおよび水を含む。適切なデンプンとしては、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンまたは他の穀物デンプンが挙げられる。旨味剤および香味料としては、牛のレバー粉、鶏のスモーク風味、魚の風味または脂肪などの肉の風味が挙げられる。外部は、必要に応じて、1種類以上の安定剤または保存料を含んでよく、また必要に応じて、ギンバイカを含んでもよい。外部は管の形態にある。その食品の断面はほぼ三角形であることが好ましい。その三角形の側面は、湾曲、凹形、または凸形であってよい。その三角形は非対称であってよい。
【0053】
当業者には、その管に任意の断面形状を使用して良いことが理解されよう。歯の表面から歯垢を機械的に除去できる縁を提供するために、三角形または菱形などの尖った角(90°未満の内角を有する)を有する形状であることが好ましい。その形状は、食品、特に外部に強度を与えるように選択されてもよい。これにより、食品を砕くために、長期の噛みつくまたは噛む作用を必要とする食品が得られる。このことは、研磨作用とギンバイカを含む活性成分への曝露の両方が増すことを意味する。
【0054】
食品の縁は、穏やかな研磨により歯垢の除去を改善するために、食品の長さ(すなわち、縦軸)の周りでねじられていてよい。
【0055】
管の端部は、内部が見えないようにシールされていてもよい。あるいは、その端部は開いていて、内部が露出されていてもよい。各個別の食品は、意図する動物に応じて、サイズが様々であってよい。例えば、小さな犬または猫には、大きな犬が必要とするよりも小さい食品しか必要ないであろう。食品は、40gから200gまで様々であってよく、食品が約60g、約100gまたは約160gであることが好ましい。食品の長さが約100mmから約200mmであることが好ましい。食品は、長さが約100から200mm、121から140mmまたは141から160mmであることが好ましく、約110mm、約130mmまたは約150mmが最も好ましい。その断面の直径が30mmから50mmであることが好ましくは、約35mm、約40mmまたは約45mmが最も好ましい。
【0056】
縦軸に沿ったねじれは100から150°であってよい。このねじれにより、形状が噛みつきにくく、よく噛まなければならないので、動物が食品を食べるのが確実に遅くなる。これにより、食品の機械的作用が歯の表面に作用する時間が増加し、歯、唾液および歯肉のギンバイカおよび任意の他の活性成分への曝露も増加する。
【0057】
内部が完成した食品の約10%から75%を占めてよい。ギンバイカが完成した食品の1%から10%を占めてよい。内部が、タンパク質含有量の少ないデンプンマトリクスであることが好ましい。内部が堅く、砕くのが難しく、したがって、長く噛む必要があることが好ましい。しかしながら、内部が、圧縮性でもあり、動物の顎によって圧力が加えられたときに、「たわむ」ことも好ましい。
【0058】
代わりの好ましい実施の形態において、外部は管構造であり、90°未満の内角を有する尖った角を有する星形などの形造られた断面によりそのテキスチャー付き外面がなされることが好ましい。星形は、3,4,5,6,7,8,9または10の先端を有していてよい。これらの角は、歯垢を機械的に除去するために歯間の空間により到達し易く、ギンバイカおよび他の活性成分が動物の口のこれらの区域における歯の表面により接触し易い。外部の縁(星形断面の先端から生じる)は、食べられたときに歯の表面での研磨を増加させるように、各の外面の縦軸の周りでねじれていてよい。この実施の形態におけるねじれは70から100°であることが好ましい。外部は、上述したように、デンプン、旨味剤、香味料および水を含んでいてよい。それに加え、外部は、麻などの構造物のための植物繊維を含んでもよい。この好ましい実施の形態の内部は、ギンバイカ、加工デンプンおよびフルクトースおよび/またはグルコース・シロップを含む。保存料および安定剤も含まれてもよい。この好ましい実施の形態の内部がタンパク質を含有しないことが好ましい。
【0059】
この実施の形態において、食品は、質量が15gから45gであってよい。前述したように、食品は、給餌される動物に応じて、異なるサイズのものであってよい。したがって、食品は約18g、約30gまたは約42gであってよい。この食品は、長さが75mmと175mmの間であってよい。この食品は、長さが85mmから95mm、125から135mmまたは145から155mmであり、長さが約90mm、約130mmまたは約150mmが最も好ましい。この食品の断面は10mm×12mmから20mm×25mmであってよい。この食品の断面が約12.5mm×15.5mm、14mm×18.5mmまたは16mm×20.5mmであることが好ましい。
【0060】
本発明の食品は共押出しにより製造されてもよく、ここで、外部と内部は一緒に押し出され、外部は、内部がそこから押し出される内側ノズルを取り囲む環状ノズルから押し出される。あるいは、外部が空の管として押し出され、次いで、内部が別に充填されてもよい。この場合、内部はミキサ内で調製され、次いで、押出機に送り込まれる。
【0061】
本発明の食品には、動物の歯の表面に対する食品の機械的(穏やかな研磨)作用により歯垢を除去することによって、並びに内部に(および必要に応じて外部に)含まれるギンバイカの作用によって、動物のお口の健康を改善するまたは維持する恩恵がある。
【0062】
細菌を形成するある歯垢バイオフィルムがギンバイカにより阻害されると、歯垢の細菌含有量が減少することによって動物の歯垢がコントロールされるかまたは減少する。
【0063】
本発明の食品は、動物のお口の健康を改善するまたは維持するために、お口の健康がどのようなのレベルにある動物に使用してもよい。
【0064】
この食品は、お口の健康を維持するために、お口の健康が良好なまたは許容される動物に使用してもよい。この場合の組成は、歯垢の形成をコントロールし、動物の歯周の健康への特定の歯垢の細菌の有害な影響を最小にするであろう。
【0065】
中程度からひどい歯周病の場合には、その動物には、お口の健康の利点を達成し、将来の獣医および/または歯科医の介在する頻度を減少させるために、この食品を使用する前に、獣医および/または歯科医の世話が必要であろう。
【0066】
この食品が食べられ、使用されている最中に、動物の口腔が食品のギンバイカに曝露される。この組成物が動物の歯の表面と直接接触することが好ましい。歯の表面が食品の内部のギンバイカと直接接触し、またある割合の歯垢を物理的に除去するために外部と接触することがより好ましい。
【0067】
本発明の第2の態様は、動物のお口の健康を改善するまたは維持するために第1の態様の食品を使用する方法を提供する。お口の健康は、疾患原因要因、バイオマスまたは病原菌の減少および/または阻害を含む、動物のタータおよび歯垢のコントロールまたは減少によって改善または維持される。歯肉炎の予防または治療に使用するための食品も提供される。
【0068】
本発明は、第3の態様として、動物に第1の態様の食品を与える工程を含む、動物のお口の健康を改善するまたは維持する方法も提供する。この方法が、先に定義したように、動物のタータおよび歯垢のコントロールまたは減少によって、動物のお口の健康を改善するまたは維持することが好ましい。
【0069】
第3の方法において、動物の口腔が、動物の主食に対するサプリメントとしての食品が食べられることによって、その組成物に曝露される。この方法は、毎日、毎週または毎月行ってもよい。この方法を、毎週2,3,4,5,6または7回行うことが好ましい。
【0070】
この方法は、お口の健康または歯垢が優れない、歯肉炎または歯周病を発症し易い動物に使用することが好ましい。
【0071】
この食品を、歯垢またはその中に含まれる要因の量を減少させるためにお口の健康が優れない動物に与え、次いで、さらにタータまたは歯垢まはたその中に含まれる任意の1種類以上の要因の形成をコントロールする、減少させるまたは阻害するために、継続的な給餌を行ってもよい。その動物には、食品の有益な効果を見るために、歯石堆積物(タータ)を除去するために食品を使用する前または最中に、獣医および/または歯科医の治療が必要であろう。
【0072】
お口の健康が優れないとは、当業者には理解されるように、歯石および歯垢の蓄積、歯肉炎、お口の悪臭、歯肉退縮および/または歯周ポケットを含むこの状態を示す多数の指標の存在を意味する。
【0073】
本発明の各態様の全ての特徴は、当業者には理解されるように、必要な変更を加えて、全ての他の態様に関する。
【0074】
ここで、以下の非限定的実施例および図面を参照して、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は、未処理の対照のパーセントとして表される処理済みバイオフィルムから培養した通性嫌気性菌へのギンバイカの影響を示す。未処理のCFU(100%)=4.05×107/ml
【図2】図2は、未処理の対照のパーセントとして表される処理済みバイオフィルムから培養した選好性嫌気性菌へのギンバイカの影響を示す。未処理のCFU(100%)=2.96×107
【図3】図3は、未処理の対照のパーセントとして表される処理済みバイオフィルムから培養したPeptostreptococcus stomatisへのギンバイカの影響を示す。未処理のCFU(100%)=1.34×107
【図4】図4は、外部(1)が断面で大雑把な星形であり、内部(2)が略楕円形を形成している、本発明の食品のある実施の形態を示している。断面の先端(3)が、食品の周りにその長手方向に沿ってねじれている隆起部(6)を形成している。この食品の端部(7)は開いている。
【図5】図5は、外部(1’)が断面で大雑把な三角形であり、内部(2’)が似た形状の本発明の代わりの実施の形態を示している。三角形の角(3’)は、この食品の縦軸に沿ってねじれている。この食品の端部(4’)は封止されておらず、内部が見えることを意味する。
【実施例】
【0076】
以下の生体外実験によって、動物の歯垢をコントロールするまたは減少させる能力について、ギンバイカを試験した。歯肉縁上歯垢を犬から得て、ギンバイカが動物のお口の健康を改善するまたは維持する能力を有するか否かを判定するために、以下に記載するように、様々なアッセイを行った。
【0077】
実施例1
ギンバイカが、お口の健康を改善するまたは維持するために動物に使用するのに適しているか否かを判定するために、最初のアッセイを構成した。
【0078】
これらのアッセイは、細菌を形成する歯垢の付着を阻害し、口腔細菌の増殖を阻害し、口腔細菌におけるプロテアーゼの産生を阻害し、口腔細菌の菌株により生じる溶血を阻害する能力を含む。
【0079】
ギンバイカは、付着を100%まで、増殖を93%まで、プロテアーゼの産生を57%まで阻害し、試験した8種類の口腔細菌の菌株の内の5種類において溶血を阻害する能力を示した。
【0080】
これらの結果は、ギンバイカが望ましくない口腔細菌を阻害する能力を有することを示し、したがって、動物のお口の健康を改善するまたは維持する能力について、ギンバイカをさらに別のアッセイにおいて試験した。
【0081】
実施例2
アッセイ接種材料:犬からサンプリングした歯垢および唾液
このアッセイには、接種のために新たな犬の歯肉縁上歯垢と唾液が必要である。その接種材料は、年齢、血統およびお口の健康状態が様々である、14匹の犬の群からサンプリングした、プールされた歯垢と未濾過の唾液からなる。
【0082】
これらの歯垢と唾液を人工唾液中に再懸濁させて、約15%の歯垢および約30%の唾液の接種材料を形成した。
【0083】
アッセイの構成
プレート・バイオフィルム・アッセイ(PBA)では24ウェルプレートのフォーマットを使用し、ここで、犬の歯垢を表すバイオフィルムをヒドロキシアパタイト(HA)ディスク上で増殖させる。24ウェルのアッセイプレートに導入する前に、各HAディスクを、犬の人工唾液中の濾過滅菌した50%の犬の唾液の溶液中で2時間に亘り試験準備する。この試験準備工程により、HAディスクの表面上の唾液ペリクルの形成が促進される。この試験準備後、各HAディスクを24ウェルプレート上の各ウェル内に個別に配置する。接種材料を2つの等しいアリコートに分割し、一方のアリコートに活性成分を適切な濃度で加える。他方のアリコートは対照(活性成分なし)を表す。1mlの接種材料を各ウェルに加え、アッセイプレートを、48時間に亘り38℃で振とうしながら、好気的に培養する。24時間後と30時間後に、ディスクを、既に述べたように、活性成分を適切な濃度で含有する新鮮な人工唾液中に移す。48時間後に、バイオフィルム被覆HAディスクを分析のためにアッセイから取り出す。バイオマス定量化のために使用されるものを除いて、各HAディスクを500μlのPBS中に入れ、30秒間に亘り渦流混合して、そのディスクからの増殖したバイオフィルムを溶液中に取り除く。次いで、バイオフィルム懸濁液を分析に使用する。バイオマス定量化に使用されているバイオフィルム被覆HAディスクを24ウェルアッセイプレートから取り出し、クリスタルバイオレット・アッセイに直接使用する。
【0084】
実施例3
PBA中でテストしたギンバイカ抽出物
ギンバイカのメタノール抽出物を犬PBAにおける試験に使用した。抽出物は先に記載したように行った。
【0085】
ギンバイカの葉の生の植物性薬品を、犬PBAにおいてチョウジ(乾燥花芽)、パセリ(葉)およびユーカリ(葉)に対して500μg/mlおよび5000μg/mlで試験した。ギンバイカは、500μg/mlおよび5000μg/mlの両方で、プロテアーゼおよびバイオマスの阻害において、パセリおよびユーカリよりも改善された性能を示す。ギンバイカは、5000μg/mlで黒色集落形成コロニーおよびプロテアーゼの阻害において、チョウジと同様に働く。
【0086】
その上、クロルヘキシジン(ロイズ・ファーマシー(Lloyds Pharmacy)社)を最も基準になる参照または正の対照として含ませた。しかしながら、クロルヘキシジンは、合成化学物質であり、最も純粋な形態で使用される化学物質であるときに潜在的な毒性効果を有するかもしれないので、動物向け組成物に使用するには望ましくない。
【0087】
実施例4
バイオフィルム測定
以下の分析を使用して、犬PBAにおいて産生されたバイオフィルムおよびバイオフィルムの発達へのギンバイカおよび非植物化合物の影響を評価した:
バイオマス定量化(クリスタルバイオレット・アッセイ)
プロテアーゼ活性
細菌生存数
各アッセイの簡単な説明を以下に示す。
【0088】
バイオマス
HAディスク上で増殖したバイオフィルムの総量をクリスタルバイオレット染色法を使用して定量した。バイオマスは、対照と比較したサンプルの595nmでのOD読取り値(OD595)に正比例しているものと表された。結果は、非活性対照と比較した活性処理サンプル中に見られたOD595の減少として表され、ディスク上で増殖したバイオフィルムの量への活性処理の影響を反映している。
【0089】
ギンバイカはバイオマスを59.5%減少させた。
【0090】
プロテアーゼ活性
トリプシン様プロテアーゼ活性を液体BAPNAアッセイを使用して測定した。これは、サンプル中に存在するトリプシンの量が、発色した色の彩度に正比例している比色法である。サンプルをトリプシン標準曲線に対して定量化し、結果は、対照と比較した活性処理サンプル中のプロテアーゼ活性の阻害パーセントとして表される。
【0091】
ギンバイカはプロテアーゼ産生を74.34%減少させた。
【0092】
細菌数
細菌の生存数を、ヘミンおよびメナジオンを添加したコロンビア血液寒天培地を使用して定量した。好気性菌を2日間の培養後に計数し、黒色集落形成コロニー(BPC)を含む嫌気性菌を9日間の適切な条件下での培養後に計数した。プレート計数は、ml当たりのコロニー形成単位(cfu)として表され、対照と活性培地との間の差は対数で表される。
【0093】
ギンバイカは、対照と比較して、黒色集落形成細菌コロニーのプレート計数を対数で3.75減少させた。この特定の細菌群は、歯周病において重要であると考えられる。
【0094】
実施例5
データの統計的分析
各サンプルをアッセイ内で5回繰り返した。別記しない限り、全ての抽出物はアッセイにおいて5000μg/mlの濃度で試験した。各サンプルについて、得られた値の全てを記録し、その記録値から平均を計算した。
【0095】
次いで、不等分散の両側t検定を行った。個々の分析は関係ないので、すなわち、測定値は互いに比較できないので、不等分散分析を選択した。各データセットについて、p値を得、これらがデータの再現性の指標を与えた。
【0096】
結果
試験においてギンバイカがどのように機能するかを要約した表が以下に示されている:
【表1】

【0097】
Myrtus communisは、黒色集落形成コロニー数を著しく減少させ、プロテアーゼおよびバイオマスに著しい阻害効果を備えていたのが分かる。
【0098】
実施例6
原料の試験
ギンバイカの植物原料、並びに上述した抽出物もプレート・バイオフィルム・アッセイにおいて試験した。この植物原料は、250μmの孔径の篩に通して調製し、アッセイにおいて5000μg/mlで試験した。この原料は、バイオフィルム形成を阻害するのに、先に試験した抽出物と同じくらい効果的であった。
【0099】
実施例7
ヒトの歯垢の阻害
ギンバイカの葉の粉末を、プレート・バイオフィルム・アッセイのヒトの形態におけるバイオフィルム形成の阻害について試験した。各試験試薬の最終濃度は250μg/mlであった。試験は、別々のアッセイにおいて5回繰り返した。
【0100】
ヒドロキシアパタイトディスクを室温で2時間に亘り20%のプールされたヒトの唾液中で培養した。10mlの量のプールされたヒトの唾液を収集し、ヒトのボランティアの歯の表面からこすり取った歯垢接種材料と組み合わせた。接種材料は、1:3(v/v)の比率で20%のプールされた唾液に加えられ、得られた懸濁液1.33mlを2.0mlの人工唾液(Pratten等、1998)および滅菌水または水(各試験試薬が比較される負の対照として)中5mg/mlの濃度での0.175mlの適切な試験試薬(Myrtus communis、Uncaria tormentosa、Orthosiphon spicatus、パセリまたはユーカリ)と組み合わせた。パセリおよびユーカリは、各々がお口の健康へのプラスの効果のためにお口の健康に良い製品におけるよく知られた天然成分であるので、正の対照として用いた。
【0101】
各溶液の三重のアリコート(1ml)を、1つの唾液で被覆されたヒドロキシアパタイトディスクと共に滅菌済み24ウェルプレートの個々のウェル内に配置した。これらのディスクを嫌気性条件(10%のH2、10%のCO2、80%のN2)下において37℃で1時間に亘り培養し、歯周炎に関連する歯肉縁下凹部内に見られる偏性嫌気性菌を増殖させた。この後、好気性条件下において37℃で24時間の培養を行った。
【0102】
バイオフィルムを分散させ、連続的に希釈し、次いで、CBA(+ヘミン、メナジオン)上に被覆し、嫌気的に培養したか、またはBHY上に被覆し、好気的に培養した。24〜48時間後にコロニーを計数した。その結果が図1に示されており、ギンバイカ(Myrtus communis)が、未処理(水)の対照と比較して、生体外のヒトの歯垢バイオフィルム中の通性嫌気性菌の数を阻害したのが分かる。意外なことに、ギンバイカは、公知のお口の健康の促進因子であるパセリおよびユーカリよりも、これのら微生物のレベルを減少させるのにより効果的であった。
【0103】
選好性嫌気性菌の数も計数し、図2に示されるように、未処理の対照と比較して、減少したのが分かる。これも予期せぬことに、ギンバイカは、選好性嫌気性菌の阻害においてもパセリおよびユーカリよりもより機能したことが分かった。
【0104】
ギンバイカの葉の粉末も、上述した歯垢バイオフィルムアッセイ条件下で人工唾液中でのPeptostreptococcus stomatisの増殖の阻害について試験した(この試薬の最終濃度は0.25mg/mlであった)。嫌気性キャビネット内での24時間の増殖後にコロニーを計数した。
【0105】
ギンバイカの葉の処理により、未処理の対照およびユーカリの葉の粉末により処理したものの両方と比較して、Peptostreptococcusバイオフィルム中の細菌数が著しく減少した。Peptostreptococcusは、歯肉炎、歯周病およびお口の健康問題に関連することが知られている、病原菌である。
【0106】
実施例8
様々な食品の用途には、120℃までの温度への曝露後に原料活性が残存する必要がある。これを試験するために、生のギンバイカの葉を10分間に亘り120℃に加熱し、プレート・バイオフィルム・アッセイにおいて試験した活性を、非加熱処理対照と比較した。
【0107】
上述したようなMyrtus communisの熱処理は性能に影響しない。熱処理されたMyrtus communisは、非加熱対照における97.7%のの減少と比較して、バイオマスを94.4%減少させる。プロテアーゼは、加熱処理されたものと非加熱対照の両方において、完全に(100%)阻害された。
【0108】
実施例9
製品の受けを評価するために、ギンバイカの葉を3%のレベルで25gのチュウの形態に含ませ、3種類の他のチュウタイプとのクロスオーバー研究において、ミニチュア・シュナウツァー、コッカースパニエルおよびラブラドールに与えた。チュウを4日間に亘り毎日1回与え、次の給餌段階を開始する前に、3日間の中断期間を設けた。ギンバイカを含有しない標準のチュウと比較すると、ギンバイカのチュウの受けは、全ての犬において同程度であった。
【0109】
実施例10
伴侶動物におけるお口の健康の維持および改善に関するギンバイカの効き目を評価するために、ギンバイカの葉を2.65%のレベルでチュウ形態に含ませ、ミニチュア・シュナウツァー(17gのチュウ)、コッカースパニエル(25gのチュウ)およびラブラドール(40gのチュウ)に与えた。第2のデンタル・チュウである標準的なチュウから得られたものと、ドライ粗挽きタイプの規定食と比較した、ギンバイカ組成物のお口の健康への効果を評価した。32匹の健康な成犬を4群の1つに割り当てた。これらは、合計で、12匹のラブラドール・レトリーバー、12匹のコッカースパニエルおよび8匹のミニチュア・シュナウツァーであった。これらの動物を、血統、性別および適切な年齢の照合を確実にするように、加重団体(weighted blocks)内の群に無作為に割り当てた。
【0110】
動物は、環境が豊かな二室の家でペアで暮らし、24時間に亘り外に出られ、日中はパドックで自由に運動できた。十分な動物の福祉が考慮され実施された。この研究は、英国内務省動物(科学的手法)法1986にしたがって、ペット栄養倫理調査委員会に関するウォルサムセンター(WALTHAM Center)により承認された。犬は、毎日、グループ活動させられ、歩かされ、いつでも新鮮な水が得られた。動物は、体重を維持するために、所要のエネルギーレベル(カロリー値)で毎日一度給餌された。
【0111】
この研究では、繰り返しの測定に4段階のラテン方格デザインを利用した。このクリーンな歯のモデルにおいて、犬は、1日目に歯科のスケーリングとポリッシングが行われ、標準的な市販のドライ粗挽きタイプの規定食が与えられ、歯肉炎をベースラインレベルまで減少させるために2週間に亘り毎日歯磨きされた(ベースライン段階)。次いで、第2の歯科のスケーリングとポリッシングにより、歯肉炎のスコアを取り、蓄積したどのような歯の堆積物も除去し、その後、動物は、繰り返しの歯肉炎の採点並びに歯垢と歯石の堆積物の測定の前に、5週間に亘り同じ市販のドライ粗挽きタイプの規定食とテスト製品が与えられた。1群(対照動物)は、基本規定食のみに維持され、2群は基本規定食に加えて、毎日標準的なデンタル・チュウが与えられ、3群には、2.65%のギンバイカの葉を含む同じデンタル・チュウが毎日与えられ、4群は、活性成分を含有しない代わりのチュウ形態が与えられた(代わりのチュウ形態についてのデータは示されていない)。
【0112】
上述した段階1の終わりに引き続き、各群を次の規定食計画に移し、全ての犬が全ての規定食を食べるまで、各次の段階において繰り返しの測定を行った。5週間の試験期間の初めと終わりに、改良型Logan & Boyce技法(Hennet等、2006)を使用した、歯肉炎、歯垢および歯石のスコアを評価した。
【0113】
お口の健康の評価には、以下の歯を使用した。
上顎: I3 (103,203), C (104,204), P2 (106,206), P3 (107,207), P4 (108,208), および M1 (109,209).
下顎: C (304,404), P2 (306,406), P3 (307,407), P4 (308,408), and M1 (309, 409)。
【0114】
歯肉炎は、歯肉溝の口内表面に沿って測定した。歯肉を3つに分割し(近心、口内および遠心)、各三分の一にスコアを与えた。歯のスコアは、3つの部分の平均スコアとして計算し、歯の全ての平均として全体のスコアを評価した。
【0115】
基準
0 − 厳密な調査の際に炎症も出血もない、歯肉炎のない、ピンク色(または色素性)の健康な歯肉;
1 − 非常に軽い歯肉炎(厳密な調査の際に赤く、腫れているが、出血なし);
2 − 軽い歯肉炎(厳密な調査の際に赤く、腫れており、遅れて出血した);
3 − 中程度の歯肉炎(厳密な調査の際に赤く、腫れており、直ちに出血した);
4 − ひどい歯肉炎(厳密な調査の際に潰瘍形成、自発出血、おびただしい出血)
【0116】
未希釈の歯垢検出溶液(エリトロシン)を塗布し、直ちに水ですすぐことによって、歯の口内表面に歯垢を検出した。スコアされる歯の各々を、Hennet等(2006)にしたがって、歯冠(coronal)と歯肉の歯垢レベルについて評価した。歯冠(tooth crown)の2つの半分(歯冠と歯肉)を歯垢の被覆率について連続的に評価し、厚さ評価のために染料参照溶液色パレットを使用して、被覆されていない部分で厚さを評価した。検出表面の色調に最も近い色調を厚さスコアと指定した。歯冠部分と歯肉部分両方のスコアを合計して、合計の歯のスコアを得た。全ての歯のスコアの平均が、全ての口スコアを与えた。
【0117】
歯石を空気乾燥し、デンタル・プローブを使用して、被覆率と厚さの外観を静かに確認した。被覆率と厚さのスコアは歯肉について与えられ、歯の歯肉区域と歯冠区域の被覆率と厚さのスコアを掛け合わせて、全歯スコアを与え、歯垢被覆率について口スコアを計算した。
【0118】
臨床のお口の健康の評価に加え、歯肉縁上歯垢サンプルを、試験段階の2週目に各犬の歯からこすり取った。この後、各犬を十分に歯磨きして、残りの歯の堆積物を確実に除去した。
【0119】
治療、段階および結果の効果を試験するために一般線形モデル(GLM)を使用して、応答変数の歯垢、歯肉炎および歯石に分析を開始した。治療効果の評価と共に有意レベルを報告した。データは、Excelのワークブック内でコード化し、専有総計ソフトウェアルーチン(Minitab Version 14)を使用して分析した。
【0120】
結果
ギンバイカの葉の粉末を含有するデンタル・チュウは、基本の規定食と比較して、平均歯肉炎レベルを著しく(P≦0.05)減少させ、一方で、標準的なチュウは、基本の規定食と比較して著しい減少は示さなかった。ギンバイカを含有するデンタル・チュウが給餌された犬は、2週間の歯磨き後に、ベースラインで観察されたものより低い平均歯肉炎レベルをもたらした。
【0121】
平均歯垢(P≦0.1)および歯石(P≦0.05)のスコアは、標準的な規定食と比較して減少したが、標準的なデンタル・チュウを食べた犬について観察されたスコアよりもわずかに高かった。
【表2】

【0122】
実施例11
本発明の食品の実施の形態は共押出により調製できる。その食品は犬向けに適している。外部と内部は、以下に詳しく説明するようなものである。
【0123】
そのような食品は、堅いシェルの形態にある外部において、概算量で、約70%のデンプン、約4%の旨味剤、約5%の水を含み、残りは安定剤、結合剤および保存料であってよい。内部は、約65%のデンプン、約5%の旨味剤、約6%の水、約4%のギンバイカを含み、残りは安定剤、結合剤および保存料であってよい。
【0124】
この食品は、非対称の三角形断面を有する。この非対称三角形の角により形成された縁は、その食品の長手方向に沿って約120°までひねれている。これにより、犬がその食品を噛むのがより難しくなる。このことは、この食品がより多くの歯と接触することを意味する。
【0125】
内部は、タンパク質の含有量が非常に少ない、空気を含んだ圧縮性のデンプンマトリクスの形態にある。これにより、内部にあるギンバイカの機能性が確実に高くなる。外部はギンバイカを全く含まない。ギンバイカのお口の手入れの利益を向上させるために、他の活性成分が含まれている。
【0126】
実施例12
本発明の食品の代わりの実施の形態を犬向けに調製した。
【0127】
内部と外部の組成は、以下に詳しく説明するようなものである。
【0128】
そのような食品は、外部として、概算量で、約80%のデンプン、約4%の旨味剤、約1%のギンバイカおよび約1.5%の麻を含み、残りは、10%までの量で、安定剤、結合剤および保存料、並びに必要に応じての着色料(例えば、マリーゴールドミール)であってよい。そのような食品の内部は、概算量で、約75%のフルクトース/グルコースシロップ、約18%のデンプンおよび約8%のギンバイカを含んでよい。そのような内部はゲル状のテキスチャーを有する。
【0129】
この食品は図4のような形状をしている。この食品はほぼ星形の断面を有する。星の部分により形成された縁は、その食品の長手方向に沿って90°までひねれており、その結果、食品を噛む/噛みつく時間が長くなる。内部は、約60%の全ギンバイカを含有し、ギンバイカの機能性を増加させるために、タンパク質を含有していない。内部はゲルの形態にある。有効性を増加させるために、外部にさらに別の活性成分が含まれている。
【0130】
文献
Hennet P, Servet E, Salesse H, Soulard Y: Evaluation of the Logan and Boyce Plaque Index for the Study of Dental Plaque Accumulation in Dogs. Res Vet Sci, 80, 175-180, 2006.
Pratten, J., Smith, A.W. and Wilson, M. (1998) Response of single species biofilms and microcosm dental plaques to pulsing with chlorhexidine. J Antimicrob Chem 42, 453-459
【符号の説明】
【0131】
1、1’ 外部
2、2’ 内部
7、4’ 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部と外部からなる食品であって、該内部が、ギンバイカを含み、約10%から約25%の含水率を有することを特徴とする食品。
【請求項2】
前記外部が前記内部よりも硬いことを特徴とする請求項1記載の食品。
【請求項3】
充填された管の形態にあることを特徴とする請求項1または2記載の食品。
【請求項4】
前記内部がペーストまたはゲルの形態にあることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の食品。
【請求項5】
前記内部がデンプンマトリクスであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の食品。
【請求項6】
前記外部がギンバイカを含むことを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の食品。
【請求項7】
前記ギンバイカが前記食品全体の1質量%から10質量%の量で前記内部に含まれることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の食品。
【請求項8】
前記ギンバイカが前記内部の約4質量%の量で該内部に含まれることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の食品。
【請求項9】
ペットフード製品であることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の食品。
【請求項10】
ドッグフード製品であることを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載の食品。
【請求項11】
動物のお口の健康の維持または改善に使用するための請求項1から10いずれか1項記載の食品。
【請求項12】
動物における歯肉炎の予防または治療に使用するための請求項1から10いずれか1項記載の食品。
【請求項13】
動物におけるタータおよび/または歯垢を減少させるのに使用するための請求項1から10いずれか1項記載の食品。
【請求項14】
前記ギンバイカがMyrtus communisであることを特徴とする請求項1から13いずれか1項記載の食品。
【請求項15】
前記動物が猫、犬またはヒトであることを特徴とする請求項1から14いずれか1項記載の食品。
【請求項16】
動物のお口の健康を維持または改善する方法であって、該動物に請求項1から10いずれか1項記載の食品を効果的な量で与える工程を有してなる方法。
【請求項17】
請求項1から9いずれか1項記載の食品を製造する方法であって、前記外部を形成する成分を混合し、前記内部を形成する成分を混合し、該外部と該内部を共押出しして請求項1から10いずれか1項記載の食品を形成する各工程を有してなる方法。
【請求項18】
実質的に図面に示された食品。
【請求項19】
実施例に記載されたように使用するための食品。
【請求項20】
実質的に実施例に記載された、動物のお口の健康を維持または改善する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−523850(P2011−523850A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511085(P2011−511085)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001330
【国際公開番号】WO2009/144458
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(390037914)マース インコーポレーテッド (80)
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
【Fターム(参考)】