説明

食品

【課題】パイナップル果実の味と香りなどの風味を残し、口中で速やかに崩壊する独特の食感を呈する食品を提供する。
【解決手段】果皮を含むパイナップル果実、又はパイナップル果実の搾り粕を原料とし、この原料を摩細し、この摩細物を加熱し加水分解したものを凍結乾燥することによって得た、嵩比重0. 1g/cm 〜0. 4g/cmの多孔性の食品とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイナップルを原料とした新規な食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パイナップル果実は、生食に供するほか、缶詰、ドライフルーツ(シロップ漬け)や、ワイン原料などに使われている。
【0003】
しかし、パイナップル果実は、缶詰、ドライフルーツ等の加工工程で、果実重量の約半分が廃棄物となる。この廃棄物は、家畜の餌として利用されており、近年はこの廃棄物の利用方法として、果皮の搾什液から健康酢の製造がおこなわれている。そして、この果皮の絞り粕も、家畜餌として利用されるか、廃棄物として処理されている。
【0004】
パイナップルには、ブロメラインの他にも生理活性物質が含まれており、医薬品、飲食品、化粧品および農業用薬品等に利用することができるとされている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−244399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記パイナップルの廃棄物は、絞り粕となれば粗い繊維の塊となっているが、一部果肉が残っている。そのため、人が食する食品として利用する余地は残っていると考えられるが、このような食品としての利用は現在、顧みられていない。
【0007】
そこで、本発明者は、パイナップルの廃棄物である繊維質を人が食することのできる様態に加工できれば、パイナップル果実はもはや廃棄すべき部位の無い完結型の食品とすることができると考え、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
先ず、本発明では、パイナップル果実の絞り粕の主体である粗繊維を人が食することができる形態とするために、粗繊維を摩細することを検討した。その結果、ミートチョッパーあるいは植繊機(竹などの繊維を粉末化できるもの)を用いることで、パイナップル粗繊維を摩細したのち、粗繊維を加水分解することにより微細な繊維とすることができた。また、パイナップル果実の絞り粕は多量の糖類を含むため、通常の乾燥ではべたべたした飴状となり食用には適さないことから、凍結乾燥を行った。
【0009】
すなわち、本発明は、果皮を含むパイナップル果実、又はパイナップル果実の搾り粕を原料とし、この原料を摩細し、この摩細物を加熱し加水分解したものを凍結乾燥することによって得た、嵩比重0. 1g/cm 〜0. 4g/cm の多孔性の食品とした。
【0010】
さらに、本発明は、果皮を含むパイナップル果実、又はパイナップル果実の搾り粕を原料とし、この原料を摩細し、この摩細物を加熱し加水分解したものにデキストランを加え、凍結乾燥することによって得た、嵩比重0. 1g/cm 〜0. 4g/cm の多孔性の食品とした。
【0011】
そして、本発明の食品は、成形品又は粉状品とし、密閉包装したものとした。
【0012】
また、本発明の食品は、成形品又は粉状品とし、表面にコーティングを施したものとした。
【発明の効果】
【0013】
本発明の食品は、パイナップル果実の味と香りなどの風味を残し、且つその多孔性の性状のためにサクサクとした食感であり、口中でも速やかに崩壊する独特の食感を呈するこれまでにない食品となった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1で得た食品の顕微鏡写真である。
【図2】パイナップル果実の組織細胞の顕微鏡写真である。
【図3】パイナップル果皮の組織細胞の顕微鏡写真である。
【図4】本発明の実施例2で得た食品の顕微鏡写真である。
【図5】本発明の実施例3で得た食品の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の食品を実施するための形態について、詳細に説明する。
【0016】
本発明の食品は、果皮を含むパイナップル果実を原料とする。パイナップル果実は、生食用の他、缶詰や砂糖漬けなどが流通しているが、一方、ジュースやワイン、酢などの原料としても利用されている。これらの製造時には、通常、使用した果実重量の実に半分の重量の廃棄物が排出されるが、本発明では廃棄物が発生しない。
【0017】
さらに、本発明の食品は、前記ジュースやワイン、酢などの製造時に発生する搾り粕を利用してもよく、資源の有効活用をすることができる。
【0018】
次に、本発明の食品は、前記果皮を含むパイナップル果実、又はパイナップル果実の搾り粕を繊維摩細機により摩細したものとする。この繊維摩細機としては、ミートチョッパーあるいは植繊機(竹などの繊維を粉末化できるもの)を用いることができる。
【0019】
さらに、本発明では、前記原料を繊維摩細機により摩細した物を加熱し、加水分解したものとする。加熱するには、前記摩細物に水を加えて撹拌し、塩酸を加えて強酸性に調製し、沸騰させてから数十分間、加熱を続け、加水分解する。加水分解後、元の水量になるまで水を補給し、クエン酸を加えて弱酸性の懸濁液を得る。なお、本発明では、この懸濁液にデキストランを加えることにより、結合性を高めたものとすることができる。
【0020】
そして、本発明では、前記懸濁液を適当な容器に分注し、冷凍庫内に入れて凍結乾燥し、嵩比重0. 1g/cm 〜0. 4g/cm の多孔性の食品を得た。本発明の食品は、凍結乾燥したことにより、変敗や変質が極めて緩慢であり、密封包装したり、食品表面にコーティングを施すなどして、吸湿さえ防げば、製造後5年を経過してもほとんど風味、性状の変化は見られず、保存性に優れたものとなった。
【0021】
このようにして得た本発明の食品の食感は、これまでのパイナップル食品のいずれとも異なり、乾燥した多孔質の性状となっているため、口中でサクサクとした食感と早い口溶けが特徴の独特の食感をもつ食品となった。
【0022】
以下、本発明の食品をパイナップルジュースの搾り粕を用いて製造した実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0023】
〔実施例1〕
パイナップルジュース搾り粕(果皮部分も含む)約1kgをミートチョッパー(プレート孔径3.2mm)を用いて摩細した。摩細物をステンレス製容器に移し、上水300mLを加えて攪拌し、さらに塩酸を加えてpHを約1.5に調整した。この容器を加熱し、沸騰してから約30分間加熱を続けた。
【0024】
冷却後、全体の嵩が元の嵩になるまで上水を補給し、pHが約4. 5となるようにクエン酸を加えた。
【0025】
この懸濁液を厚さが1cm〜2cmとなるように適当なプラスティックトレーに小分け分注し、直ちに−20℃の冷凍庫内へ保存した。
【0026】
トレー内の懸濁物が十分に凍結した後、凍結乾燥機内へ移し一夜凍結乾燥を行い、凍結乾燥終了後は、乾燥物の入ったトレーごと速やかにアルミ製の袋へ入れヒートシール包装を行った。
【0027】
でき上がった食品は乳白色〜淡黄色の多孔質であり、その嵩比重は平均0. 25g/cm 、標準偏差0. 028g/cm であった(表1参照)。また、この食品は、図1に示した顕微鏡写真(倍率:200倍)に観るように、不規則な細孔が多数観察され、多孔質の物性であることが確認された。
【0028】
【表1】

【0029】
また、前記細孔の周囲は、図2、図3に示した顕微鏡写真(倍率:200倍)に観るように、パイナップル果実の組織細胞や果皮の組織細胞で構成されており、元の長大な剛性の繊維は観察されなかった。
【0030】
〔実施例2〕
実施例1における製造工程中で上水を使用する代わりに3倍に希釈したパイナップル果実の搾り汁を用いた。この場合、でき上がった食品の物性は、図4に示した顕微鏡写真(倍率:200倍)に観るように、全く変化がなかったが、パイナップルの香りは強くなった。
【0031】
〔実施例3〕
パイナップルジュース搾り粕(果皮部分も含む)約1kgを植繊機(神鋼造機株式会社製)を用いて摩細した。摩細物をステンレス製容器に移し、上水300mLを加えて攪拌し、さらに塩酸を加えてpHを約2に調整した。この容器を加熱し、沸騰してから約30分間加熱を続けた。
【0032】
冷却後、全体の嵩が元の嵩になるまで上水を補給し、pHが約5となるようにクエン酸を加え、さらに結合性を高めるためにデキストラン100gを加えた。
【0033】
この懸濁液を厚さが1cm〜2cmとなるように適当なプラスティックトレーに小分け分注し、直ちに−20℃の冷凍庫内へ保存した。
【0034】
トレー内の懸濁物が十分に凍結した後、凍結乾燥機内へ移し一夜凍結乾燥を行い、凍結乾燥終了後は乾燥物の入ったトレーごと速やかにアルミ製の袋へ入れヒートシール包装を行った。
【0035】
でき上がった食品は乳白色〜淡黄色の多孔質であり、その嵩比重は平均0. 25g/cm 、標準偏差0. 017g/cm であった(表2参照)。また、この食品は、図5に示した顕微鏡写真(倍率:200倍)に観るように、不規則な細孔が多数観察され、多孔質の物性であることが確認された。
【0036】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
果皮を含むパイナップル果実、又はパイナップル果実の搾り粕を原料とし、この原料を摩細し、この摩細物を加熱し加水分解したものを凍結乾燥することによって得た、嵩比重0. 1g/cm 〜0. 4g/cm の多孔性としたことを特徴とする食品。
【請求項2】
果皮を含むパイナップル果実、又はパイナップル果実の搾り粕を原料とし、この原料を摩細し、この摩細物を加熱し加水分解したものにデキストランを加え、凍結乾燥することによって得た、嵩比重0. 1g/cm 〜0. 4g/cm としたことを特徴とする食品。
【請求項3】
請求項1又は2記載の食品を成形品又は粉状品とし、密閉包装したものとしたことを特徴とする食品。
【請求項4】
請求項1又は2記載の食品を成形品又は粉状品とし、表面にコーティングを施したものとしたことを特徴とする食品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−106541(P2013−106541A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252426(P2011−252426)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(511281110)
【Fターム(参考)】