説明

食器洗浄機用洗剤

【課題】低温での洗浄においても、良好な洗浄力を発揮できる食器洗浄機用洗剤を提供する。
【解決手段】(A)成分:B型粘度計を用いて60rpm、20℃で測定される37質量%水性液の粘度が900〜1100mPa・sであるアクリル酸/マレイン酸共重合体又はその塩と、(B)成分:B型粘度計を用いて60rpm、20℃で測定される37質量%水性液の粘度が1100mPa・s超1700mPa・s以下であるアクリル酸/マレイン酸共重合体又はその塩とを含有し、(A)成分/(B)成分で表される質量比が1〜6であることよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器洗浄機用洗剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ホテル、レストラン、給食センター等の厨房や、一般家庭において、食器、調理器具、容器等を洗浄する、食器洗浄機が普及している。一般に、食器洗浄機は、専用の洗剤(食器洗浄機用洗剤)を用い、55〜65℃程度の温水で洗浄するものである。食器洗浄機用洗剤には、低泡性と、食器に付着した汚れ、特に茶渋やガラス製食器のくもりを除去する洗浄力とが求められている。
従来、十分な洗浄力と低泡性とを両立させるため、例えば、アクリル酸/マレイン酸共重合体とアミン化合物と特定の分散剤とを含有する自動食器洗い乾燥機用洗浄剤組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。
また、アクリル酸/マレイン酸共重合体とポリカルボン酸系高分子と無機過酸化物と非イオン界面活性剤とを含有する食器洗い機用粒状洗剤組成物が提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−23268号公報
【特許文献2】特開2010−159384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、食器洗浄機は、省エネルギー化が進められ、従来よりも低い温度(50℃以下)の温水で洗浄する「低温洗浄コース」が設定されたものもある。上述した技術では、「低温洗浄コース」での洗浄において、十分な洗浄力を発揮できないという問題があった。加えて、食器洗浄機用洗剤には、さらなる洗浄力の向上が求められている。
そこで、本発明は、低温での洗浄においても、良好な洗浄力を発揮できる食器洗浄機用洗剤を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定のアクリル酸/マレイン酸共重合体を特定比で用いることで、低温でも、茶渋及びくもりを良好に除去できることを見出し、本発明に至った。
【0006】
即ち、本発明の食器洗浄機用洗剤は、(A)成分:B型粘度計を用いて60rpm、20℃で測定される37質量%水性液の粘度が900〜1100mPa・sであるアクリル酸/マレイン酸共重合体又はその塩と、(B)成分:B型粘度計を用いて60rpm、20℃で測定される37質量%水性液の粘度が1100mPa・s超1700mPa・s以下であるアクリル酸/マレイン酸共重合体又はその塩と、を含有し、(A)成分/(B)成分で表される質量比が1〜6であることを特徴とする。
(C)成分:無水ケイ酸と、(D)成分:無水硫酸ナトリウムとを含有し、粉粒状であってもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の食器洗浄機用洗剤によれば、低温での洗浄においても、良好な洗浄力を発揮できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(食器洗浄機用洗剤)
本発明の食器洗浄機用洗剤は、(A)成分:B型粘度計を用いて60rpm、20℃で測定される37質量%水性液の粘度が900〜1100mPa・sであるアクリル酸/マレイン酸共重合体又はその塩と、(B)成分:B型粘度計を用いて60rpm、20℃で測定される37質量%水性液の粘度が1100mPa・s超1700mPa・s以下であるアクリル酸/マレイン酸共重合体又はその塩とを含有するものである。
本発明の食器洗浄機用洗剤の剤形は、(A)成分と(B)成分とを含有すれば、特に限定されず、粉粒状、タブレット状等の固体であってもよく、液体であってもよい。
【0009】
固体の食器洗浄機用洗剤の水分含量は、特に限定されないが、8質量%以下であることが好ましい。
【0010】
粉粒状の食器洗浄機用洗剤の嵩密度は、0.3g/cm以上が好ましく、0.5〜1.2g/cmがより好ましく、0.6〜1.1g/cmがより好ましい。
嵩密度は、JIS−K3362により測定される値である。
【0011】
粉粒状の食器洗浄機用洗剤の平均粒子径は、200〜1500μmが好ましく、300〜1200μmがより好ましい。上記下限値未満であると粉塵が発生しやすく、上記上限値超であると水に溶解又は分散しにくくなる。
【0012】
本稿における平均粒子径は、下記測定方法により求められる値である。
平均粒子径は、目開き1680μm、1410μm、1190μm、1000μm、710μm、500μm、350μm、250μm及び149μmの9段の篩と、受け皿とを用いた分級操作により測定できる。分級操作では、受け皿に、目開きの小さな篩から目開きの大きな篩を順に積み重ね、最上部の1680μmの篩の上から100g/回のサンプルを入れ、蓋をしてロータップ型篩い振盪機(株式会社飯田製作所製、タッピング:156回/分、ローリング:290回/分)に取り付け、10分間振動させる。その後、それぞれの篩及び受け皿上に残留したサンプルを篩目ごとに回収して、サンプルの質量を測定する。そして、受け皿と各篩との質量頻度を積算し、積算の質量頻度が50%以上となる最初の篩の目開きを「aμm」とし、aμmよりも一段大きい篩の目開きを「bμm」とする。また、受け皿からaμmの篩までの質量頻度の積算値を「c%」とし、aμmの篩上の質量頻度を「d%」とする。そして、下記(1)式により平均粒子径(50質量%粒径)を求め、これを試料の平均粒子径とする。
【0013】
【数1】

【0014】
粉粒状の食器洗浄機用洗剤は、0.2質量%水溶液のpHが、好ましくは5〜14、より好ましくは7〜11とされる。
なお、食器洗浄機用洗剤のpH(25℃)は、pHメーター(HM−30G、東亜ディーケーケー株式会社製)等により測定される値を示す。
【0015】
液体の食器洗浄機用洗剤の粘度は、200〜5000mPa・sが好ましく、300〜4000mPa・sがより好ましい。上記範囲内であれば、食器洗浄機用洗剤を計量する際の取り扱いが良好である。
なお、液体の食器洗浄機用洗剤の粘度は、B型粘度計(TOKIMEC社製)により測定される値(測定条件:25℃、ロータNo.1〜3、回転数6〜60rpm、2分後の粘度)を示す。
【0016】
液体の食器洗浄機用洗剤のpH(25℃)は、5〜14が好ましく、7〜11がより好ましい。
【0017】
<(A)成分>
(A)成分は、B型粘度計を用いて60rpm、20℃で測定される37質量%(純分)水性液の粘度(以下、37質量%粘度ということがある)が900〜1100mPa・sであるアクリル酸/マレイン酸共重合体又はその塩である。(A)成分は、主に茶渋やガラス製品のくもりの原因となる汚れ成分を洗浄液中に分散させる。なお、本稿において、洗浄液とは、洗浄用の水に食器洗浄機用洗剤を分散したものを意味する。また、水性液とは、溶質が水に溶解した水溶液、分散質が水に分散した水分散液を含む概念である。
【0018】
(A)成分がアクリル酸/マレイン酸共重合体の塩である場合、(A)成分を構成する塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられ、中でも、ナトリウムが好ましい。
(A)成分としては、アクリル酸/マレイン酸共重合体、又はそのナトリウム塩が好ましい。
【0019】
(A)成分の37質量%粘度は、900〜1100mPa・sである。上記範囲内であれば、茶渋やくもりを良好に除去できる。
(A)成分の37質量%粘度は、(A)成分を精製水に溶解又は分散して37質量%水性液とし、この37質量%水性液300cmを500cmビーカーに入れ、20℃恒温槽で2時間保持した後、BM型粘度計(TOKIMEC社製)で測定1分後に読み取られた値である。なお、粘度測定の条件は、20℃、ローターNo.3、60rpmである。
【0020】
(A)成分の重合の形態は、37質量%粘度が900〜1100mPa・sであれば特に限定されず、ブロック重合、ランダム重合又はグラフト重合のいずれであってもよい。
【0021】
(A)成分の重量平均分子量は、特に限定されず、例えば、30000〜60000程度とされる。なお、重量平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)−示差屈折率検出装置(RI)システムにより測定でき、溶離液:0.1M NaNO、流速:1cm/min、試料:0.02〜1質量%(溶媒;0.1M NaNO)、注入量:20mmの操作条件において、重量平均分子量を標準ポリアクリル酸ナトリウム(分子量:4100、16000、130000、シグマ−アルドリッチ社製)を標準物質とし、ポリアクリル酸ナトリウム換算の数値として算出した値を意味する。重量平均分子量の測定には、例えば、送液ポンプ:Shodex DS−4(昭和電工株式会社製)、デガッサー:ERC3115(ERC社製)、カラム:Shodex SB−806MHQ(昭和電工株式会社製)、示差屈折率検出器:Shodex RI−71(昭和電工株式会社製)等を用いることができる。
【0022】
(A)成分としては、アクアリックTL−400(商品名、日本触媒株式会社製)や、ソカランCP7(商品名、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられ、いずれも好適に使用できる。
【0023】
食器洗浄機用洗剤中の(A)成分の含有量は、剤形等を勘案して決定できる。(A)成分は、例えば、洗浄液中に好ましくは0.006質量%以上、より好ましくは0.012〜20質量%、さらに好ましくは0.012〜5質量%となるように、食器洗浄機用洗剤に配合される。上記下限値以上であれば、被洗浄物への洗浄効果がより向上し、上記上限値以下であれば洗浄液の粘度を適度なものとし、食器洗浄機の運転に好適である。
【0024】
<(B)成分>
(B)成分は、37質量%粘度が1100mPa・s超1700mPa・s以下であるアクリル酸/マレイン酸共重合体又はその塩である。(B)成分は、主に、(A)成分によって洗浄液中に分散された茶渋やガラス製品のくもりの原因となる汚れ成分を洗浄液中に保持し、汚れが被洗浄物に再付着するのを防止する。
【0025】
(B)成分がアクリル酸/マレイン酸共重合体の塩である場合、(B)成分を構成する塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられ、中でも、ナトリウムが好ましい。
(B)成分としては、アクリル酸/マレイン酸共重合体、又はそのナトリウム塩が好ましい。
【0026】
(B)成分の37質量%粘度は、1100mPa・s超1700mPa・s以下であり、1150〜1700mPa・sが好ましい。上記範囲内であれば、茶渋やくもりが被洗浄物に再付着するのを良好に防止できる。(B)成分の37質量%粘度は、(A)成分の37質量%粘度と同様に測定できる。
【0027】
(B)成分の重合の形態は、37質量%粘度が1100mPa・s超1700mPa・s以下であれば特に限定されず、ブロック重合、ランダム重合又はグラフト重合のいずれであってもよい。
【0028】
(B)成分の重量平均分子量は、特に限定されず、例えば、60000超100000以下程度とされる。
【0029】
(B)成分としては、アキュゾール497N(商品名、ダウ・ケミカル社製)や、ソカランCP5(商品名、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられ、いずれも好適に使用できる。
【0030】
食器洗浄機用洗剤中の(B)成分の含有量は、剤形等を勘案して決定できる。(B)成分は、例えば、洗浄液中に好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.002〜20質量%、さらに好ましくは0.002〜3質量%となるように、食器洗浄機用洗剤に配合される。上記下限値以上であれば、汚れの再付着防止効果がより向上し、上記上限値以下であれば洗浄液の粘度を適度なものとし、食器洗浄機の運転に好適である。
【0031】
(A)成分/(B)成分で表される質量比(以下、A/B比ということがある)は、1〜6であり、1.5〜4が好ましい。上記範囲内であれば、被洗浄物の茶渋又はくもりを良好に除去できる。
【0032】
食器洗浄機用洗剤中の(A)成分と(B)成分との合計量は、剤形等を勘案して決定でき、例えば、粉粒状の食器洗浄機用洗剤の場合、1〜30質量%が好ましく、5〜25質量%がより好ましい。上記下限値未満では、一度の洗浄に多量の食器洗浄機用洗剤が必要となり、利便性が低下するおそれがある。上記上限値超では、流動性が低下したり、ケーキングが生じやすくなる。
【0033】
また、液体の食器洗浄機用洗剤中の(A)成分と(B)成分との合計量は、1〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。上記下限値未満では、一度の洗浄に多量の食器洗浄機用洗剤が必要となり、利便性が低下するおそれがある。上記上限値超では、食器洗浄機用洗剤の粘度が高くなり過ぎて、使用性が低下するおそれがある。
【0034】
<(C)成分:無水ケイ酸>
粉粒状の食器洗浄機用洗剤は、(C)成分:無水ケイ酸を含有することが好ましい。粉粒状の食器洗浄機用洗剤は(C)成分を含有することで、保管中の固化が抑制される。加えて、任意成分として後述する非イオン性界面活性剤等の液体成分を用いる場合、該液体成分を吸着・保持し、固化や染み出しを抑制できる。
【0035】
(C)成分は、JIS K5101試験方法で表される吸油量が、好ましくは100cm/100g以上、より好ましくは200〜300cm/100gのものである。吸油量が上記下限値以上であれば、粉粒状の食器洗浄機用洗剤の固化をより良好に防止できる。
【0036】
(C)成分の粒子径は、特に限定されず、例えば、平均粒子径0.01〜0.05μmが好ましい。上記下限値以上であれば製造時に粉塵が生じにくく、上記上限値以下であれば粉粒状の食器洗浄機用洗剤を固化しにくくできる。
【0037】
このような(C)成分としては、例えば、トクシールU(商品名、吸油量:180cm/100g、株式会社トクヤマ製)、トクシールNP(商品名、吸油量:260cm/100g、株式会社トクヤマ製)等が挙げられる。
【0038】
粉粒状の食器洗浄機用洗剤中の(C)成分の含有量は、特に限定されないが、0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。上記下限値未満では、粉粒状の食器洗浄機用洗剤の流動性が著しく低下したり、高温高湿下の保管でケーキングを起こすおそれがある。上記上限値超では、粉粒状の食器洗浄機用洗剤中の微粉が増加し、粉立ちが生じるおそれがある。
【0039】
<(D)成分:無水硫酸ナトリウム>
粉粒状の食器洗浄機用洗剤は、(D)成分:無水硫酸ナトリウムを含有することが好ましい。粉粒状の食器洗浄機用洗剤は(D)成分を含有することで、流動性、貯蔵安定性の向上が図れる。
【0040】
(D)成分の粒子径は、特に限定されないが、(D)成分における粒子径149μm超500μm以下の粒子の割合(特定粒子割合)が、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、100質量%であってもよい。(D)成分中、粒子径149μm超500μm以下の粒子が上記下限値以上であれば、流動性、貯蔵安定性をより高められる。
(D)成分は、任意の粒子径分布の(D)成分を篩分けし、粒子径149μm超500μm以下の粒子が70質量%以上となるように調整されたものでもよい。
(D)成分の特定粒子割合は、目開き500μm、149μmの2段の篩と受け皿を用いた分級操作により測定できる。分級操作は、受け皿に目開きの小さな篩から目開きの大きな篩の順に積み重ね、最上部の500μmの篩の上から100gのベースサンプルを入れる。篩に蓋をし、ロータップ型ふるい振盪機(株式会社飯田製作所製、タッピング:156回/分、ローリング:290回/分)に篩を取り付け、10分間振動させた後、目開き149μmの篩に残留した(D)成分を回収する。
この分級操作で得られた、粒子径149μm超(149μmオン)かつ500μm以下(500μmパス)の(D)成分の質量を測定し、ベースサンプル(100g)に対する質量%を算出し、特定粒子割合とする。
【0041】
このような(D)成分としては、無水芒硝K(2)(商品名、特定粒子割合が90質量%、日本化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0042】
粉粒状の食器洗浄機用洗剤中の(D)成分の含有量は、特に限定されないが、例えば、70〜90質量%が好ましく、75〜85質量%がより好ましい。上記下限値未満では高温高湿下でケーキングを生じるおそれがあり、上記上限値超では相対的に他の成分との配合バランスをとりにくく、洗浄効果、ケーキング防止、固化抑制効果が得られにくいおそれがある。
【0043】
<炭酸塩及び過炭酸化合物>
従来の食器洗浄機用洗剤には、洗浄力又は漂白力の向上を目的とし、ビルダー成分である炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩や、漂白成分である過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム等の過炭酸化合物が配合されている。
しかしながら、本発明の食器洗浄機用洗剤は、炭酸塩及び過炭酸化合物を実質的に含有しないことが好ましい。炭酸塩又は過炭酸化合物は、洗浄液中のカルシウムと反応して炭酸カルシウムを形成し、この炭酸カルシウムが被洗浄物に付着して、くもりとなるためである。加えて、本発明の食器洗浄機用洗剤は、(A)成分と(B)成分とにより、茶渋及びくもりを良好に除去できるため、炭酸塩や過炭酸化合物を含有する必要がないためである。
【0044】
(その他の任意成分)
本発明の食器洗浄機用洗剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)〜(D)成分に加え、界面活性剤、pH調整剤、ハイドロトープ剤、酵素、香料、色素等の任意成分を含有してもよい。
【0045】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、低泡性の界面活性剤が好適に用いられる。低泡性であれば食器洗浄機のポンプに過度の負担をかけず、被洗浄物を洗浄できる。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエーテルポリオール等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。非イオン性界面活性剤を含有することで、被洗浄物に付着した油汚れ等を良好に除去できる。また、非イオン性界面活性剤は、粉粒状の食器洗浄機用洗剤において、バインダーとして機能する。
【0046】
粉粒状の食器洗浄機用洗剤中の界面活性剤の含有量は、例えば、0.5〜5質量%とされる。上記下限値以上であれば洗浄力の向上が図れ、上記上限値以下であれば他の成分との配合バランスをとりやすい。
【0047】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、従来公知の成分を用いることができ、例えば、塩酸、硫酸等の無機酸、クエン酸、シュウ酸等の有機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基、エタノールアミン等の有機塩基等が挙げられる。
【0048】
<ハイドロトロープ剤>
ハイドロトロープ剤としては、従来公知の成分を用いることができる。ハイドロトロープ剤を含有することで、液体の食器洗浄機用洗剤の貯蔵安定性の向上が図れる。
ハイドロトロープ剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等、炭素数1〜6の低級アルコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のグリコール類、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のポリグリコール、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0049】
<酵素>
酵素としては、従来公知のものが用いられ、例えば、プロテアーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、ラッカーゼ等が挙げられる。
【0050】
(製造方法)
食器洗浄機用洗剤は、従来公知の方法により製造できる。
粉粒状の食器洗浄機用洗剤の製造方法としては、例えば、各原料を粉体混合するドライブレンド法、粉体原料を流動させながら造粒する乾式造粒法、粉体原料を流動させながら液体バインダーを噴霧して造粒する攪拌造粒法、原料を捏和しこれを押出機で押し出す押出造粒法、原料を捏和しこれを粉砕する粉砕造粒法、原料を含有するスラリーを噴霧乾燥する噴霧乾燥法等が挙げられる。
【0051】
(使用方法)
食器洗浄機用洗剤の使用方法は、例えば、食器洗浄機用洗剤6gを水に溶解した3kgの洗浄液(希釈倍率500倍)として用いられる。
【0052】
上述の通り、本発明の食器洗浄機用洗剤は(A)成分及び(B)成分を特定の比率で含有するため、低温で洗浄しても、被洗浄物に付着した茶渋、くもりを良好に除去できる。本発明の食器洗浄機用洗剤が、低温の洗浄処理で、茶渋やくもりの除去に優れる理由は明らかではないが、以下のように推測できる。
洗浄時において、まず、相対的に粘度の低い(相対的に分子量が小さい)(A)成分が、被洗浄物から茶渋やくもり等の汚れ成分を剥離し、洗浄液中に分散させる。次いで、相対的に粘度が大きい(相対的に分子量が大きい)(B)成分が、洗浄液中の汚れ成分と会合し、洗浄液中で安定な会合体を形成する。この結果、(B)成分と汚れ成分との会合体は、洗浄液中に分散した状態を維持し、被洗浄物に再付着しにくくなる。
加えて、(A)成分及び(B)成分は、比較的低温でも水に良好に分散し、かつ上記の機能を発揮できるため、いわゆる「低温洗浄コース」のような条件でも、茶渋、くもりを良好に除去できる。
さらに、A/B比を1〜6とすることで、(A)成分が被洗浄物から汚れ成分を剥離する作用と、(B)成分が洗浄液中に汚れ成分を保持する作用とを相乗的に高めている。
そして、洗浄後の被洗浄物は、茶渋やくもり汚れが除去されたものになると考えられる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0054】
(使用原料)
<(A)成分>
A−1:ソカランCP7(商品名、アクリル酸/マレイン酸共重合体、純分;92質量%、37質量%粘度;1000mPa・s、BASFジャパン株式会社製、ロット;75950147G0)
A−2:ソカランCP7(商品名、アクリル酸/マレイン酸共重合体、純分;92質量%、37質量%粘度;950mPa・s、BASFジャパン株式会社製、ロット;24811975L0)
<(B)成分>
B−1:ソカランCP5(商品名、アクリル酸/マレイン酸共重合体、純分;92質量%、37質量%粘度;1380mPa・s、BASFジャパン株式会社製、ロット;35671747G0)
B−2:ソカランCP5(商品名、アクリル酸/マレイン酸共重合体、純分;92質量%、37質量%粘度;1666mPa・s、BASFジャパン株式会社製、ロット;25157288Q0)
【0055】
<(H)成分:(A)、(B)成分の比較品>
H−1:ソカランCP12S(商品名、アクリル酸/マレイン酸共重合体、純分;50質量%、37質量%粘度;30mPa・s、BASFジャパン株式会社製)
H−2:クエン酸ナトリウム2水和物(扶桑化学工業株式会社製)
H−3:トリロンA92R(商品名、ニトリロ三酢酸3ナトリウム塩、BASFジャパン株式会社製)
H−4:アクアリックGL246(商品名、アクリル酸−2ヒドロキシ−3−アリロキシプロパンスルホン酸ナトリウム、株式会社日本触媒製)
H−5:ソカランPA30CL(商品名、ポリアクリル酸ナトリウム塩、BASFジャパン株式会社製)
【0056】
<(C)成分>
C−1:トクシールNP(商品名、無水ケイ酸、吸油量;260cm/100g、株式会社トクヤマ製)
【0057】
<(D)成分>
D−1:無水芒硝K(2)(商品名、無水芒硝、粒子径149μm超500μm以下が90質量%、日本化学工業株式会社製)
【0058】
<共通成分>
非イオン性界面活性剤:NNAEP−3030(商品名、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ライオン株式会社製)
アミラーゼ:デュラミル120T(商品名、ノボザイムズ社製)
プロテアーゼ:エバラーゼ8.0T(商品名、ノボザイムズ社製)
シリコーン消泡剤:シリコーンコンパウンド2−4248S(消泡剤、東レ・ダウコーニング株式会社製)
香料:特開2002−146399号公報の表11〜18に記載の香料組成物A
【0059】
(評価方法)
<くもり汚れ除去の評価>
ガラスコップ(上径63mm、下径53mm、高さ100mm)を自動食器洗い乾燥機(パナソニック株式会社製、機種NP−TS1)に収納した。炭酸ナトリウム1.2gを機内に入れ、洗浄〜すすぎの全行程を30度硬水で行い、ガラスコップにくもり汚れを付着させた。次いで、各例の食器洗浄機用洗剤が表中の希釈倍率となるように調製された洗浄液3dmを自動食器洗い乾燥機に投入し、自動食器洗い乾燥機を低温洗浄コース(43〜48℃)で運転した。洗浄・乾燥後のガラスコップの外観を下記の評価基準に基づいて官能評価した。くもり汚れ除去の評価として「○」以上を合格とした。
【0060】
≪評価基準≫
◎:くもりが全く認められず、全体的に透明感がある。
○:くもりがほとんど認められず、透明感がある。
△:くもりがわずかに認められ、全体的に透明でない。
×:くもりが落ちていない。
【0061】
<くもり汚れ防止の評価>
ガラスコップ(上径63mm、下径53mm、高さ100mm)を自動食器洗い乾燥機(パナソニック株式会社製、機種NP−TS1)に収納した。各例の食器洗浄機用洗剤が表中の希釈倍率となるように調製された洗浄液3dmと、炭酸ナトリウム1.2gとを自動食器洗い乾燥機に投入し、自動食器洗い乾燥機を低温洗浄コース(43〜48℃)で運転した。洗浄・乾燥後のガラスコップの外観を下記の評価基準に基づいて官能評価した。くもり汚れ防止の評価として「○」以上を合格とした。
【0062】
≪評価基準≫
◎:くもりが全く認められず、全体的に透明感がある。
○:くもりがほとんど認められず、透明感がある。
△:くもりがわずかに認められ、全体的に透明感が失われている。
×:くもりが認められる。
【0063】
<茶渋洗浄力の評価>
紅茶を飲み干してから、コーヒーカップを25℃、50%RH条件化で1ヶ月放置し、モデル汚垢として紅茶汚垢が付着したコーヒーカップ(内径70mm、高さ70mm)を用意した。このモデル汚垢が付着したコーヒーカップ3個を自動食器洗い乾燥機(パナソニック株式会社製、機種NP−TS1)に収納した。各例の食器洗浄機用洗剤が表中の希釈倍率となるように調製された洗浄液3dmを自動食器洗い乾燥機に投入し、自動食器洗い乾燥機を低温洗浄コース(43〜48℃)で運転した。洗浄・乾燥後のコーヒーカップの外観を下記評価基準に基づいて官能評価した。茶渋洗浄力の評価として「○」以上を合格とした。
【0064】
≪評価基準≫
◎:汚れは全く認められない。
○:汚れはほとんど認められず、問題ないレベル。
△:汚れがわずかに認められた。
×:汚れが落ちていなかった。
【0065】
<流動性>
角度の目盛りが記入され、横蓋付のアクリル製測定器(高さ10cm×奥行10cm×幅3cm)を平らな場所に置き、該測定器の横蓋(10cm×3cm側の一側面)を閉じた状態で、該測定器の上面の1〜2cm上方から各例の粉粒状の食器洗浄機用洗剤を該測定器内へ流し入れた。
各例の粉粒状の食器洗浄機用洗剤が、該測定器の上面から0〜1cm程度超えて山盛り状態になった時点で横蓋を静かに開け、該粉粒状の食器洗浄機用洗剤を重力により自然に排出させた。排出終了後、該測定器内に残った粉粒状の食器洗浄機用洗剤の表面(傾斜面)と、水平面とのなす角度(傾斜角)を前記目盛りから読み取った。この操作を3回行い、その平均値を下記評価基準に分類して、流動性を評価した。流動性の評価として「○」以上を合格とした。
なお、前記アクリル製測定器は、横蓋が高さと幅のなす側面の一方に設けられ、角度の目盛りが高さと奥行きのなす側面に記入されているものを使用した。
【0066】
≪評価基準≫
◎:40°未満。
○:40°以上50°未満。
△:50°以上55°未満。
×:55°以上。
【0067】
<耐ケーキング性>
各例の粉粒状の食器洗浄機用洗剤700gをチャーミークリスタパウダー(ライオン株式会社製)の本体容器(L×W×D=170mm×105mm×90mm)に充填して、容器入り洗剤とした。この容器入り洗剤を45℃、85%RHで1ヶ月間保存した後、全量を40×28cm、深さ4.5cm、目開き4.8mmの篩の上にゆっくり開け、篩上の残渣の質量を計量した。得られた残渣の質量を下記(2)式に当てはめ、ケーキング割合を求めた。求めたケーキング割合を下記評価基準に分類し、耐ケーキング性を評価した。耐ケーキング性の評価として「○」以上を合格とした。
【0068】
ケーキング割合(質量%)=[篩上の残渣の質量]÷700g×100 ・・・(2)
【0069】
≪評価基準≫
◎:ケーキング割合が20質量%未満。
○:ケーキング割合が20質量%以上40質量%未満。
△:ケーキング割合が40質量%以上60質量%未満。
×:ケーキング割合が60質量%以上。
【0070】
(実施例1〜21、比較例1〜7)
表1〜3の組成に従い、総量が200gとなるように各例の食器洗浄機用洗剤を調製した。まず、ビーカーに精製水に入れ、これに(A)成分、(B)成分、(H)成分を徐々に加え、スリーワンモーター(製品名:TYPE;HEIDON BL1200、羽;プロペラR(直径5cm)、新東科学株式会社製)で20分間攪拌して各例の液体の食器洗浄機用洗剤(pH7.3)を得た。pH調整には、水酸化ナトリウム又は硫酸を用いた。得られた液体の食器洗浄機用洗剤について、くもり汚れ除去、くもり汚れ防止及び茶渋洗浄力を評価し、その結果を表中に示す。なお、表中の組成は、純分換算の値である。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
表1〜3に示すように、本発明を適用した実施例1〜21は、いずれもくもり汚れ除去、くもり汚れ防止、茶渋洗浄力が「◎」又は「○」であった。
これに対し、(A)成分を含有しない比較例1は、くもり汚れ除去及びくもり汚れ防
止が「△」であり、茶渋洗浄力が「○」であった。(B)成分を含有しない比較例2は、くもり汚れ除去及びくもり汚れ防止が「△」であり、茶渋洗浄力が「◎」であった。
A/B比1未満の比較例4、A/B比6超の比較例3は、いずれもくもり汚れ除去及びくもり汚れ防止が「△」であり、茶渋洗浄力が「◎」であった。
(A)成分に換えて、37質量%粘度が30mPa・sのH−1を用いた比較例5は、くもり汚れ除去が「×」、くもり汚れ防止が「△」、茶渋洗浄力が「△」であった。
(A)成分に換えて、2クエン酸ナトリウム2水和物を用いた比較例6は、くもり汚れ除去が「×」、くもり汚れ防止が「×」、茶渋洗浄力が「△」であった。
(A)成分及び(B)成分に換えて、H−3、H−4、H−5を用いた比較例7は、くもり汚れ除去、くもり汚れ防止及び茶渋洗浄力が「△」であった。
これらの結果から、(A)成分と(B)成分とを特定の比率で含有することで、くもり汚れ除去、くもり汚れ防止及び茶渋洗浄力を相乗的に向上できることが判った。
【0075】
(実施例22〜32)
表4の組成に従い、粉粒状の食器洗浄機用洗剤6Kgを調製した。
まず、粉体成分である、シリコーン消泡剤及び(D)成分をリボンミキサー(株式会社吉田製作所製、リボンミキサー1102−1500型(巾900mm×長さ1800mm×深さ1100mm)に入れ25rpmで攪拌した。次に、撹拌しながら液体成分である、非イオン性界面活性剤、香料をノズルJPX020(株式会社いけうち製)で噴霧(0.4MPa)して液体−粉体混合物を調製した。液体成分の噴霧終了後、該液体−粉体混合物に、粉体である(C)成分を添加して25rpm、10分間混合した。さらにアミラーゼ、プロテアーゼ、(A)成分及び(B)成分を添加して25rpm、5分間混合して粉粒状の食器洗浄機用洗剤を得た。
得られた粉粒状の食器洗浄機用洗剤について、流動性、耐ケーキング性、くもり汚れ除去、くもり汚れ防止及び茶渋洗浄力を評価し、その結果を表中に示す。
【0076】
【表4】

【0077】
表4に示すように、本発明を適用した実施例22〜32は、いずれもくもり汚れ除去、くもり汚れ防止及び茶渋洗浄直が「◎」又は「○」であった。加えて、実施例22〜32は、いずれも流動性及び耐ケーキング性が「◎」又は「○」であった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:B型粘度計を用いて60rpm、20℃で測定される37質量%水性液の粘度が900〜1100mPa・sであるアクリル酸/マレイン酸共重合体又はその塩と、(B)成分:B型粘度計を用いて60rpm、20℃で測定される37質量%水性液の粘度が1100mPa・s超1700mPa・s以下であるアクリル酸/マレイン酸共重合体又はその塩とを含有し、(A)成分/(B)成分で表される質量比が1〜6であることを特徴とする食器洗浄機用洗剤。
【請求項2】
(C)成分:無水ケイ酸と、(D)成分:無水硫酸ナトリウムとを含有し、粉粒状であることを特徴とする請求項1に記載の食器洗浄機用洗剤。

【公開番号】特開2012−214655(P2012−214655A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81802(P2011−81802)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】