説明

食器用及び/又は食品用洗浄剤

【課題】安全性が高く、油性汚れの洗浄力、更には農薬の洗浄力に優れる上、泡立ちが少なく、すすぎ性が良く、洗浄水量が削減できる食器用及び/又は食品用洗浄剤を提供すること。
【解決手段】ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとHLB8以下の親油性多価アルコールモノ脂肪酸エステルとの配合比率が質量比で8/2から4/6の領域にある食器用及び/又は食品用洗浄剤、及びポリオキシエチレンソルビタントリステアリン酸エステルと多価アルコールと短鎖脂肪酸エステルとの食器用及び/又は食品用洗浄剤、さらにはこれらの食器用及び/又は食品用洗浄剤にプロピレングリコール短鎖脂肪酸エステルを配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
主たる界面活性剤が食品添加物から構成される新規な組成の安全性に優れ、洗浄性に優れた食器用及び/又は食品用洗浄剤に関する。詳しくは、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルと食品添加物の多価アルコールモノ脂肪酸エステルとからなる新規な組成の食器用及び/又は食品用洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食品添加物として認められている界面活性剤としてはプロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセライド、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステルなどがある。また、本年4月ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが食品添加物として認可されている。
【0003】
このような食品添加物として認可されている界面活性剤を洗浄剤として使用するには、水に溶解して、表面張力低下能、乳化性能、分散性能などを有している必要がある。ポリグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステルは水溶性で、洗浄剤として使用されている。しかし、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどは水溶性で無いために、主たる洗浄剤としては使用されていない。プロピレングリコールモノ脂肪酸エステルはカプリン酸エステルでも水溶性とならないため、洗浄目的には使用されてはいない。
【0004】
このような技術課題を解決する組成物として、ポリグリセリン脂肪酸エステルと次亜塩素酸ソーダ、オゾンなどを併用して優れた殺菌洗浄効果を示すことが開示されている(特許文献1)。またカプリン酸モノグリセライドと蔗糖脂肪酸モノエステルとの配合物を主たる食品洗浄剤とすることが開示されている(特許文献2)。
【0005】
最近認可されたポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、他工業では安全性の高い、乳化、可溶化、洗浄剤などとして広く使用されており、食器、食品洗浄剤としては、モノグリセリド多価カルボン酸エステル及び加水分解酵素と併用の洗浄剤組成物(特許文献3)、リオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はショ糖脂肪酸エステルとを含有する食器、食品等に好適な洗浄剤組成物(特許文献4)などが提案されているが、いずれもその効果は必ずしも十分ではない。
【特許文献1】特開2000−109887号公報
【特許文献2】特開平10−102098号公報
【特許文献3】特開平10−102098号公報
【特許文献4】特開2004−099773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
安全性が高く、食品添加物として認可されており、他市場でも遜色の無い洗浄力を有する洗浄剤が市場では求められている。詳しくは次のような洗浄剤が望まれている。本発明は上記事情に鑑みなされたもので、これらを解決できる安全性及び洗浄力に優れた食器用及び/又は食品用洗浄剤を提供することを目的とする。
(1)液状で使用しやすく、容易に水に溶解する。
(2)すすぎ性が良く、洗浄水量が削減できる。
(3)油性汚れの洗浄力に優れる。
(4)低濃度でも洗浄力に優れている。
(5)農薬の洗浄力に優れている。
(6)抗菌剤の抗菌効果を落とさない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
鋭意研究した結果、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステルとHLB8以下の親油性多価アルコールモノ脂肪酸エステルのある組み合わせ領域で顕著に洗浄力が増強することを見出した。また、ポリオキシエチレンソルビタントリステアリン酸エステルと、炭素数8から10の脂肪酸と多価アルコールとのエステルを組み合わせて、洗浄力が著しく増強することを見出した。更には、これら配合洗浄剤にプロピレングリコールモノカプリン酸エステルを併用することにより更なる洗浄力の増強を見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、安全性に優れ、洗浄力に優れた食品添加物で構成される食品用及び/又は食器用洗浄剤を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
各種ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステルの洗浄力を検討したところ、単独では洗浄力が弱く、ある種のソルビタンモノ脂肪酸エステルとの組み合わせで優れた洗浄力を発揮する領域が有ることを見出した。
【0010】
本発明で用いる(A)ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステルは、特に限定されるものではないが、食品添加物で許可されているポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステルが挙げられる。ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステルの好ましいアルキル鎖としては、液状もしくは短鎖のアルキル鎖で柔らかい吸着膜を形成するポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステルである。
【0011】
本発明で用いる(B)HLB8以下の親油性多価アルコールモノ脂肪酸エステルも特に限定されるものではないが、同様に、好ましくはソルビタンモノオレイン酸エステル、ソルビタンモノミリスチン酸エステル、ソルビタンモノラウリン酸エステル、ソルビタンモノカプリン酸エステルが挙げられる。
【0012】
これら2種の界面活性剤の組み合わせ領域については、(B)HLB8以下の親油性多価アルコールモノ脂肪酸エステルに対する(A)ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステルの比率が質量比で8/2より多くなるとと効果は無く、4/6より少なくなると水溶性を失い洗浄力も喪失した。優れた洗浄力の得られる領域は(A)ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステルと(B)HLB8以下の親油性多価アルコールモノ脂肪酸エステルの比率が8/2から4/6であり、好ましくは6/4から4/6である。
【0013】
更には、ポリオキシエチレンソルビタントリステリン酸エステルと炭素数8から10の脂肪酸と多価アルコールとのモノエステルとの併用で洗浄効果の増強が認められた。
【0014】
本発明で用いる炭素数8から10の脂肪酸と多価アルコールとのモノエステルの構成成分である、多価アルコールはプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトールとのエステルであり、短鎖の脂肪酸とは炭素数が8から10の範囲にある天然由来の脂肪酸が好ましい。特に好ましい炭素数8から10の脂肪酸と多価アルコールとのモノエステルとしては、プロピレングリコールモノカプリル酸エステル、プロピレングリコールモノカプリン酸エステル、グリセリンモノカプリル酸エステル、グリセリンモノカプリン酸エステル、ソルビタンモノカプリル酸エステル、ソルビタンモノカプリン酸エステル等が挙げられる。好ましい炭素数8から10の脂肪酸と多価アルコールとのモノエステルの配合比率は、ポリオキシエチレンソルビタントリステアリン酸エステルに対して5%から60%である。
【0015】
本発明では、前述ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステルとHLB8以下の親油性多価アルコールモノ脂肪酸エステルの配合洗浄剤、及びポリオキシエチレンソルビタントリステアレートと炭素数8から10の脂肪酸と多価アルコールとのモノエステルとの配合洗浄剤にプロピレングリコールモノカプリン酸エステルを併用することにより、更なる洗浄力の向上を認めた。配合洗浄剤に対するプロピレングリコールモノカプリン酸エステルの配合比率は、好ましくは配合洗浄剤に対して5%から50%である。
【0016】
本洗浄剤の特性は油性の洗浄力に優れているのは勿論次のような特性を有している。
(1)農薬の洗浄力に優れる。
(2)除菌能に優れ、洗浄面には菌の増殖がなされない。また抗菌剤水溶液に添加して除菌効果を増強する。
(3)泡立ちが少なく、泡切れが良く洗浄水量を大きく減少する。
【0017】
本洗浄剤では請求項に示した成分に制限されるものではなく、一般的な洗浄剤に使用されるアルカリ類、酸類、キレート剤、アルコール類、水溶性高分子、保存剤を使用できる。
【0018】
アルカリ類とは苛性ソーダ、化成カリ、アルギニンなどの塩基性アミノ酸類、酸類とは塩酸、酢酸、乳酸、グルタミン酸などである。キレート剤としてはクエン酸、グルコン酸なメチルセルロース、澱粉など、アルコール類とはエタノール、ペンタエリスリトール、マルチロール、トレハロースなどである。
【0019】
また本洗浄剤の用途は食品の洗浄、食器の洗浄は勿論であるが、幼児用の玩具、哺乳瓶などの用具の洗浄にも使用できる。
【実施例1】
【0020】
ガラスプレートに一定量のマヨネーズを付け、これを洗浄用試料として、各種洗浄剤の洗浄試験を行った結果は次のようであった。
【0021】
(1)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル単独での洗浄力は良くなく、ポリオキシエチレンソルビタントリステアリン酸エステルにのみ洗浄力を認めた。また蔗糖モノラウリン酸エステル、ポリグリセリンモノラウリン酸エステルのいずれも洗浄力は良くなかった。
(2)ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステルに20%の各種ソルビタンモノ脂肪酸エステルの配合効果を比較すると、ソルビタンモノラウリン酸エステル、ソルビタンモノオレイン酸エステルに優れた洗浄増強効果を認めた。蔗糖モノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステルとソルビタンモノ脂肪酸エステルの併用試験では何れも洗浄力増強効果が認められなかった。
(3)ポリオキシエチレンソルビタントリステアレートに対して20%の各種多価アルコール脂肪酸エステルを配合して洗浄力を比較すると多価アルコールカプリン酸エステルに優れた洗浄力増強作用を認めた。
【0022】
(試験法)
ガラスプレートに一定量のマヨネーズを着け、これを洗浄用試料とした。これを100mLの洗浄液を入れた300mLビーカーに静かに漬け、洗浄液上部を50rpmの速度で10分間攪拌した。
下記界面活性剤の0.2%精製水溶液を洗浄剤として用いた。洗浄度合いの評価は肉眼で行い下記のようにランク分けした。
【0023】
(界面活性剤)
TL−10:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート
TO−10:ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル
TS−10:ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル
TS−30:ポリオキシエチレンソルビタントリステアリン酸エステル
PMK:プロピレングリコールモノカプリン酸エステル
MGK:グリセリンモノカプリン酸エステル
SK:ソルビタンモノカプリン酸エステル
SL:ソルビタンモノラウリン酸エステル
SS:ソルビタンモノステアリン酸エステル
SO:ソルビタンモノオレイン酸エステル
SL−10:蔗糖モノラウリン酸エステル
GL−10:デカグリセリンモノラウリン酸エステル
配合品A(発明品):ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル/ソルビタンモノラウリン酸エステル(8/2)
配合品B(比較品):蔗糖モノラウリン酸エステル、もしくはデカグリセリンモノラウリン酸エステル/ソルビタンモノラウリン酸エステル(8/2)
【0024】
(洗浄度合いの評価)
◎:マヨネーズの残存が認められず、水の弾きも無い
○:マヨネーズの残存は認められないが、ガラス面が水を弾く
△:マヨネーズの残存が僅か認められる
×:マヨネーズの残存が多く認められる
【0025】
(結果)
得られた結果を下表に纏めた。
【表1】

【実施例2】
【0026】
実施例1と同様な方法にて、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル(TL−10)とソルビタンモノラウリン酸エステル(SL)の最適な配合比率を検討した。
【0027】
(結果)
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステルとソルビタンモノラウリン酸エステルの組み合わせ比率を変えて試験したところ、8/2から4/6の領域で優れた洗浄力が得られた。
【表2】

【実施例3】
【0028】
実施例1と同様な方法にて、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル(TL−10)とソルビタンモノラウリン酸エステル(SL)が7/3の割合の配合品とプロピレングリコールモノカプリン酸エステル(PMK)の最適配合量を検討した。
【表3】

【実施例4】
【0029】
下記のような洗浄剤を試作して、これを使用して農薬の洗浄試験を行った。この洗浄剤はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルと比較して、優れた農薬の洗浄力を示した。
【0030】
(処方)
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル 30.0%
ソルビタンモノラウリン酸エステル 30.0
プロピレングリコールモノカプリン酸エステル 6.0
エタノール 20.0
精製水 14.0
【0031】
(試験法)
市販の園芸用農薬を用法通りに1000倍の水道水に希釈し、この水溶液に桜の葉を短時間漬け、これを乾燥して試料とした。
100mLの0.2%洗浄液を300mLビーカーに静かに漬けて、試料を静かに入れ、洗浄液上部を50rpmの速度で10分間攪拌した。洗浄した試料に残存する農薬を抽出し、これをHPLCで分析して農薬除去率を算出した。
【0032】
(農薬除去率)
精製水 50%
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル 70%
本洗浄剤 95%
【実施例5】
【0033】
実施例4と同様な方法で洗浄した試料の除菌率、菌の増殖率を調べた。洗浄剤の0.2%水道水溶液で洗うと次亜塩素酸水道水溶液で洗う除菌率と変わらない除菌力を示した。洗浄による除菌率は、洗浄前菌数と洗浄直後の菌数との比率から算出した。
【0034】
(除菌率)
水道水による除菌率=1/10
次亜塩素酸200ppm水道水溶液による除菌率=1/100
0.2%洗浄剤、次亜塩素酸200ppm水道水溶液による除菌率=1/100
0.2%洗浄剤水道水溶液の除菌率=1/100
水道水による洗浄では洗浄後冷蔵庫放置して、10倍以上の菌の増殖が認められたのに比べ、洗浄剤により洗浄した試料では菌の増殖が認められなかった。
【実施例6】
【0035】
本発明の洗浄剤である下記の処方の食器用、食品用洗浄剤を試作して、泡立ち、泡消えを測定した。泡は立ち難く、泡は短時間で消えることが解った。
【0036】
(処方)
ポリオキシエチレンソルビタントリステアリン酸エステル 40%
ソルビタンモノカプリン酸エステル 10
プロピレングリコールモノカプリン酸エステル 10
エタノール 20
精製水 20
【0037】
(試験法)
50mLの試験管に0.2%洗浄剤水溶液を10mL秤取り、これを手振り試験を行い、泡の高さ、消えるまでの時間を測定した。
【0038】
(結果)
泡の高さ:1cm
消えるまでの時間:1分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステルと、(B)HLB8以下の親油性多価アルコールモノ脂肪酸エステルとを含有してなり、かつ(A)と(B)の配合比率が質量比で8/2から4/6の範囲にあることを特徴とする食器用及び/又は食品用洗浄剤。
【請求項2】
ポリオキシエチレンソルビタントリステアリン酸エステルと、炭素数8から10の脂肪酸と多価アルコールとのモノエステルを含有することを特徴とする食器用及び/又は食品用洗浄剤。
【請求項3】
更に、プロピレングリコールモノカプリン酸エステルを含有する請求項1項又は2項記載の食器用及び/又は食品用洗浄剤。(ただし、前記HLB8以下の親油性多価アルコールモノ脂肪酸エステル及び/又は炭素数8から10の脂肪酸と多価アルコールとのモノエステルがプロピレングリコールモノカプリン酸エステルの場合は除く。)

【公開番号】特開2010−37512(P2010−37512A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205278(P2008−205278)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000226437)日光ケミカルズ株式会社 (60)
【出願人】(000228729)日本サーファクタント工業株式会社 (44)
【出願人】(301068114)株式会社コスモステクニカルセンター (57)
【Fターム(参考)】