食塩組成物およびその製造方法
【課題】 ビタミンとミネラルとをバランス良く摂取可能な食塩組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の食塩組成物は、減塩ベースに、エネルギー代謝、ナトリウムポンプ、カルシウムポンプに必要なビタミンとミネラルとを含有する食品代替物である。すなわち、本発明の食塩組成物は、食塩にビタミンを融合させた他に類を見ない基礎調味料である。本発明の食塩組成物を食塩代替物として調理に使用すれば、塩分と共にエネルギー代謝、ナトリウムポンプ、カルシウムポンプに必要なビタミンとミネラルとをバランス良く摂取することができる。
【解決手段】 本発明の食塩組成物は、減塩ベースに、エネルギー代謝、ナトリウムポンプ、カルシウムポンプに必要なビタミンとミネラルとを含有する食品代替物である。すなわち、本発明の食塩組成物は、食塩にビタミンを融合させた他に類を見ない基礎調味料である。本発明の食塩組成物を食塩代替物として調理に使用すれば、塩分と共にエネルギー代謝、ナトリウムポンプ、カルシウムポンプに必要なビタミンとミネラルとをバランス良く摂取することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食塩組成物およびその製造方法に関し、特に、ビタミンとミネラルとをバランス良く含む食塩組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
疲れはさまざまな原因によって発生するものであるが、病気以外の原因としては、「乳酸の蓄積」、「エネルギー代謝の乱れ」、「ストレスの蓄積」が疲れの原因になることが知られている。
【0003】
「乳酸の蓄積」が疲れの原因となる理由は、以下のように考えられている。例えば、激しい運動をすると、体内に摂取された栄養素からエネルギーを生産する際に、酸素を必要とする好気性分解だけではエネルギー生産が間に合わなくなる。そのため酸素を必要としない嫌気性分解によりエネルギー生産が行われて最終生成物として乳酸が発生し、血液中に乳酸濃度が増加して血液のpH値は酸性となる。その結果、酸性となった血液中では種々の酵素の働きが鈍るため体調が崩れて、疲れを感じるようになる。また、乳酸が筋肉に蓄積されると筋肉疲労を起こして疲れを感じるようになる。
【0004】
一方、「エネルギー代謝の乱れ」が疲れの原因となる理由は、次のように考えられている。「エネルギー代謝の乱れ」とは、体内に摂取された糖、タンパク質を効率よくエネルギーとして利用できないときに生じるものであり、この乱れは、エネルギー代謝を行うクエン酸回路が十分に回らなくなる(十分に機能しなくなる)ときに生じるものである。この乱れにより、中間物質であるピルビン酸が体内に蓄積され、蓄積されたピルビン酸が無酸素状態で分解されて乳酸が生成し、生成した乳酸が体内に蓄積する。その結果、上記説明した乳酸の蓄積による疲れを感じるようになる。
【0005】
また、「ストレスの蓄積」が疲れの原因となる理由は、次のように考えられている。ストレスが体内に蓄積されると、エネルギー代謝を効率よく行うために、あるいは、蓄積された乳酸の処理を行うために必要なビタミンやミネラルがストレスを除去するために消費されてしまう。その結果、エネルギー代謝や乳酸の処理に必要なビタミンやミネラルが不足するため「エネルギー代謝の乱れ」や「乳酸の蓄積」が生じて疲れを感じるようになる。
【0006】
従って、疲れを感じにくくするためには、ビタミンやミネラルの不足による「エネルギー代謝の乱れ」を起こさないようにすること、ストレスを上手に管理してストレスが体内に蓄積しないようにすること、激しい運動の後には十分な休養と栄養補給により体内に蓄積された乳酸を分解したり排出すること、が重要である。
【0007】
ここで、「エネルギー代謝」を効率よく行うためのビタミンやミネラルについて詳しく説明する。食物を摂取すると、体内に摂取された食物は分解されて生体の活動を維持するために必要なエネルギーが生成される。このとき、食物に含まれる糖、脂肪またはタンパク質は、まず、図1Aに示す代謝反応において、酵素、補酵素の働きでアセチルCoAに代謝される。次に、生成したアセチルCoAは、続いて図1Bの(a)に示すクエン酸回路において、酵素、補酵素の働きでアセチル基が酸化されて二酸化炭素やGTP(ATP(アデノシン3リン酸))を生成する。続いて、ATPは、図1Bの(b)に示す反応(電子伝達)でADP(アデノシン2リン酸)に変換され、発生するエネルギーが生体の活動を維持するために使用される。このときエネルギーとともに活性酸素も発生するが、活性酸素は酵素(活性酸素除去酵素)により無害化される。
【0008】
図1Aおよび図1Bに示すようにクエン酸回路とその前段および後段に位置する反応では、ビタミンやミネラルが反応を円滑に機能するための補酵素として関与する。このため、上記反応に必要なビタミンやミネラルが不足すると「エネルギー代謝の乱れ」が生じ、体内に摂取された脂肪、タンパク質、糖からエネルギーが効率よく取りだすことができくなる。
【0009】
しかしながら、ビタミンとミネラルは体内で生成することができない。そのためこれらのビタミンとミネラルは、全て食事を通して食品から摂取しなければならない。そこで、「エネルギー代謝の乱れ」を起こすことなくエネルギー代謝を円滑に機能させるために必要なビタミンやミネラルの量について調べてみる。
【0010】
図1Cは、厚生労働省の策定した2005年度版の食事摂取基準(非特許文献1)に基づいて作成した、エネルギー代謝などに関与するビタミンやミネラルの量の一例である。すなわち、図1Cは、日本人の成人男子30〜49歳が1日の食事から摂取しなければならないエネルギー代謝などに関与するビタミンやミネラルの推定平均必要量(または目安量、目標量)および上限値を示したものである。なお、図1Cには示さなかったが、図1Cの成人男子に対応する同年層の成人女子の推定平均必要量等は成人男子の量に比べて若干低い値である。図1Cより、成人男子30〜49歳のビタミンやミネラルの1日の食事摂取基準における推定平均必要量は、ビタミンB1=1.2mg、ビタミンB2=1.3mg、ナイアシン=13mg、ビタミンB6=1.1mg、葉酸=200μg、ビタミンB12=2.0μg、パントテン酸=6.0mg(目安量)、ビタミンC=85mgである。また、ミネラルは、ナトリウム=600mg、カリウム=2000mg(目安量)、マグネシウム=310mg、カルシウム=600mg(目標量)、鉄=6.5mgである。
【0011】
従って、日本人は「エネルギー代謝の乱れ」による疲れを無くしてエネルギー代謝を円滑に機能させるためには、図1Cに示すようなミネラルとビタミンとを必要量(または、目安量、目標量)を毎日の食事を通して食品から摂取しなければならない。
【0012】
ここで、エネルギー代謝などを円滑に機能させるために必要となるビタミンを多く含む食品の一例を以下に示す。ビタミンB1は、落花生(0.85mg/100g)、豚バラ肉(0.62mg/100g)、枝豆(0.32mg/100g)、鮭(0.22mg/100g)に多く含まれる。ビタミンB2は、豚レバー(0.36mg/100g)、納豆(0.56mg/100g)、鯖(0.54mg/100g)、鶏卵(0.48mg/100g)に多く含まれる。ナイアシン(ニコチン酸)は、牛レバー(20mg/100g)、鰹(18mg/100g)、豚肉(11mg/100g)に多く含まれる。ビタミンB6は、牛レバー(0.89mg/100g)、鯖(0.57mg/100g)、大豆(0.53mg/100g)、バナナ(0.38mg/100g)に多く含まれる。葉酸は、牛レバー(275μg/100g)、ほうれん草(100μg/100g)、鮪(35μg/100g)に多く含まれる。ビタミンB12は、アサリ(59.6μg/100g)、牛レバー(52.8μg/100g)、サンマ(10.6μg/100g)に多く含まれる。パントテン酸は、納豆(3.3mg/100g)、アボガド(3.0mg/100g)、ヨーグルト(1.0mg/100g)に多く含まれる。ビタミンCは、ブロッコリー(160mg/100g)、ほうれん草(65mg/100g)、キャベツ(44mg/100g)に多く含まれる。
【0013】
上記に示したように、動物性食品、植物性食品などの食品には、エネルギー代謝を円滑に機能するために必要なビタミンやミネラルを多く含んでいるが、その種類と量はまちまちである。また、エネルギー代謝に必要なビタミンとミネラルを1日の食事摂取基準の必要量だけ全て含む食品はない。
【0014】
従って、ビタミンとミネラルの不足による「エネルギー代謝の乱れ」を防ぐためには、毎日摂取する食品の組み合わせを工夫して、エネルギー代謝に必要なビタミンとミネラルとが1日の食事摂取基準の必要量だけ毎日摂取できるようにする必要がある。
【非特許文献1】日本人の食事摂取基準(2005年版)、第1出版株式会社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、厚生労働省がまとめた平成15年の国民健康・栄養調査報告によれば、日本人が食事から摂取しなければならないビタミンやミネラルについて、多くの人が推定平均必要量まで摂取していないことがわかった。図1D、図1Eに上記報告からビタミンおよびミネラルの推定平均必要量に達しないものの比率(対象年齢:30〜49歳)を整理した結果の一例を示す。
【0016】
図1Dより、推定平均必要量に達しない不足しているビタミンとしては、脂溶性のビタミンA、水溶性のビタミンに属するビタミンB群(ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、葉酸)やビタミンCが挙げられる。また、図1Eより、推定平均必要量に達しない不足しているミネラルとしては、カルシウム、マグネシウム、カリウム、鉄が挙げられる。従って、これらのビタミンやミネラルが一日の食事からかならず必要量だけ摂取されて不足しないようにする工夫が必要である。
【0017】
一方、ナトリウムは、上記説明したビタミンやミネラルのうちで、日本人が推定平均必要量より多く摂取している唯一のミネラルである。すなわち、図1Cよりナトリウムの一日の推定平均必要量は600mg/日(塩化ナトリウム換算で1.5g/日)であるが、日本人の一日の実際の食塩(塩化ナトリウム)摂取量は、図1Fに示すように、平成5年で12.8/日(全体平均)、平成15年で11.2g/日(全体平均)と推定平均必要量に比べてかなり多く摂取しており、推定平均必要量に達しないものはいない。また、日本人の一日の実際の食塩摂取量は、この10年間でやや減少しているものの、図1Fから推定すると、日本人の食塩摂取量は11.2g/日(全体平均)あるいは若干低下する程度で今後の推移するものと思われる。また、平成15年における30〜49歳の食塩摂取量(平均)は全体平均とほぼ同じ量の11.3g/日である。
【0018】
この食塩は、砂糖とともに無くてはならない基本的な調味料である。そのため、食塩は、毎日の調理に必ず使用され、食塩で調理された食品を摂取することにより、食塩は体内に摂取される。また、食塩は、味噌、醤油などの他の調味料を製造するときに原料として使用されるものであるため、味噌、醤油などの他の調味料で調理された食品を摂取することによってもまた食塩は体内に摂取される。
【0019】
ところで、日本人の食塩の摂取量を低減する試みとして、食塩(塩化ナトリウム)の一部を塩化カリウムと塩化マグネシウムで置き換えたもの(減塩)が利用されている。ただし、カリウムとマグネシウムはナトリウムに比べて特有の苦みがあるため、塩化ナトリウムの一部を単純に塩化カリウムと塩化マグネシウムで置き換えたものを減塩としてを食塩の代替物として摂取すると不快な後味が残る。
【0020】
上記説明したように、日本人の中には1日に食事から摂取しなければならないビタミンやミネラルの摂取量が推定平均必要量に達しない人が多くいる。このような人の中には、ビタミンやミネラルの不足に起因する「エネルギー代謝の乱れ」を起こして疲れを生じたり、この疲れが蓄積して慢性疲労に陥っている人も多くいると思われる。
【0021】
この疲れや慢性疲労を解決するためには、「エネルギー代謝」に必要なビタミンやミネラルを適量摂取できるように毎日の食生活を改善すればよい。
【0022】
しかし、上記説明したように、食品に含まれるビタミンやミネラルの種類や量はかなり異なっている。また、毎日の食生活において、摂取する食品の種類は種々変化している。そのため、「エネルギー代謝」を効率的に行うために必要なビタミンやミネラルを毎日適量摂取するためには、穀物、肉類、魚介類、卵類中に含まれるビタミンやミネラルの種類と含有量を調べて必要量のビタミンやミネラルが1日の食事を通して摂取できるような食品の組み合わせを考えなければならない。
【0023】
しかしながら、毎日変化する食生活において、必要なビタミンやミネラルを毎日適量摂取するための食品の組み合わせを考えることは到底不可能であると思われる。そのため、必要なビタミンやミネラルが必要量がバランス良く摂取できないことに起因する「エネルギー代謝の乱れ」による疲れを防止することは、きわめて困難なことと思われる。
【0024】
本発明は、上記説明した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、食生活において食塩代替物として使用され、エネルギー代謝に関与するビタミンやミネラルをバランス良くかつ安定して含むことができる食塩組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記目的を達成するための本発明の食塩組成物は、以下の構成を有する。すなわち、食塩の代替物として使用される食塩組成物であって、食塩の機能を果たすための食塩ベースと、エネルギー代謝の反応を促進する水溶性ビタミンと、前記エネルギー代謝の反応を促進するミネラルと、前記食塩ベースと前記水溶性ビタミンと前記ミネラルとを混合して得られる混合物の苦味を低減して弱酸性にする成分と、を含むことを特徴とする。
【0026】
ここで例えば、前記水溶性ビタミンは、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ナイアシンおよびビタミンCの群の中から選ばれた1種または2種以上のビタミンであることが好ましい。
【0027】
ここで例えば、前記ミネラルは、マグネシウム、または、マグネシウムおよび鉄であることが好ましい。
【0028】
ここで例えば、更に、ミネラルとして、ナトリウムポンプを機能させるためのカリウム、およびまたは、カルシウムポンプを機能させるためのカルシウムとマグネシウム、を含むことが好ましい。
【0029】
ここで例えば、前記成分は、L−リジン塩酸塩とクエン酸とを含むことが好ましい。
【0030】
ここで例えば、前記水溶性ビタミンと前記ミネラルは、前記食塩組成物が着色しない範囲の濃度で含まれていることが好ましい。
【0031】
ここで例えば、前記食塩ベースは、ナトリウムを主成分とする普通塩ベース、または、ナトリウムとカリウムとマグネシウムとを主成分とする減塩ベースであることが好ましい。
【0032】
ここで例えば、前記水溶性ビタミンおよび前記ミネラルは、体内に摂取された糖、脂肪またはタンパク質からアセチルCoAを生成する代謝反応を促進するビタミンおよびミネラルと、前記アセチルCoAを酸化してATP(アデノシン3リン酸)を生成するクエン酸回路を促進するビタミンと、前記アセチルCoAの酸化に用いられる酸素を運搬するヘモグロビンの生成に必要な鉄と、前記ヘモグロビンを運搬する赤血球の生成反応を促進する葉酸と、前記ATPがADPに変換されてエネルギーが取り出されるときに発生する活性酸素を還元する反応を促進するビタミンと、を含むことが好ましい。
【0033】
ここで例えば、前記糖、脂肪またはタンパク質からアセチルCoAを生成する代謝反応を促進するビタミンおよびミネラルは、マグネシウム、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、パントテン酸、およびナイアシンであり、前記クエン酸回路を促進するビタミンは、ビタミンB1、ビタミンB12であり、前記活性酸素を還元する反応を促進するビタミンはビタミンCであることが好ましい。
【0034】
ここで例えば、日本人の一日の食塩摂取量と同量の前記食塩組成物中に含まれる前記水溶性ビタミンと前記ミネラルは、その一部が一日の食事摂取基準の量以下の量で含まれており、前記その一部以外が前記一日の食事摂取基準の量を超える量で含まれていることが好ましい。
【0035】
ここで例えば、前記日本人の一日の食塩摂取量は11.3g/日以下であり、前記一日の食事摂取基準の量は、ビタミンB1が1.2mg、ビタミンB2が1.3mg、ビタミンB6が1.1mg、葉酸が200μg、パントテン酸が6.0mg、ビタミンB12が2.0μg、ビタミンCが85mg、マグネシウが310mg、鉄が6.5mgであることが好ましい。
【0036】
また、本発明の食塩組成物の製造方法は、食塩の代替物として使用される食塩組成物の製造方法であって、エネルギー代謝の反応を促進する水溶性ビタミン成分を計量したのち混合して第1混合物とする工程と、前記エネルギー代謝の反応を促進するミネラル成分を計量したのち混合して第2混合物とする工程と、食塩の機能を果たすための食塩ベース成分と、前記食塩組成物の苦味を低減して弱酸性にする成分とを計量したのち混合して第3混合物とする工程と、前記第1混合物と前記第2混合物と前記第3混合物とを混合して前記食塩組成物とする工程と、前記食塩組成物を計量して紫外線が透過しないように包装する工程と、を有することを特徴とする。
【0037】
ここで例えば、前記水溶性ビタミンは、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ナイアシンおよびビタミンCの群の中から選ばれた1種または2種以上のビタミンであることが好ましい。
【0038】
ここで例えば、前記ミネラルは、マグネシウム、または、マグネシウムおよび鉄であることが好ましい。
【0039】
ここで例えば、更に、ミネラルとして、ナトリウムポンプを機能させるためのカリウム、およびまたは、カルシウムポンプを機能させるためのカルシウムとマグネシウム、を含むことが好ましい。
【0040】
ここで例えば、前記成分は、L−リジン塩酸塩とクエン酸とを含むことが好ましい。
【0041】
ここで例えば、前記水溶性ビタミンと前記ミネラルは、前記食塩組成物が着色しない範囲の濃度で含まれていることが好ましい。
【0042】
ここで例えば、前記食塩ベースは、ナトリウムを主成分とする普通塩ベース、または、ナトリウムとカリウムとマグネシウムを主成分とする減塩ベースであることが好ましい。
【0043】
ここで例えば、前記水溶性ビタミンおよび前記ミネラルは、体内に摂取された糖、脂肪またはタンパク質からアセチルCoAを生成する代謝反応を促進するビタミンおよびミネラルと、前記アセチルCoAを酸化してATP(アデノシン3リン酸)を生成するクエン酸回路を促進するビタミンと、前記アセチルCoAの酸化に用いられる酸素を運搬するヘモグロビンの生成に必要な鉄と、前記ヘモグロビンを運搬する赤血球の生成反応を促進する葉酸と、前記ATPがADPに変換されてエネルギーが取り出されるときに発生する活性酸素を還元する反応を促進するビタミンと、を含むことが好ましい。
【0044】
ここで例えば、前記糖、脂肪またはタンパク質からアセチルCoAを生成する代謝反応を促進するビタミンおよびミネラルは、マグネシウム、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、パントテン酸、およびナイアシンであり、前記クエン酸回路を促進するビタミンは、ビタミンB1、ビタミンB12であり、前記活性酸素を還元する反応を促進するビタミンはビタミンCであることが好ましい。
【0045】
ここで例えば、日本人の一日の食塩摂取量と同量の前記食塩組成物中に含まれる前記水溶性ビタミンと前記ミネラルは、その一部が一日の食事摂取基準の量以下の量で含まれており、前記その一部以外が前記一日の食事摂取基準の量を超える量で含まれていることが好ましい。
【0046】
ここで例えば、前記日本人の一日の食塩摂取量は11.3g/日以下であり、前記一日の食事摂取基準の量は、ビタミンB1が1.2mg、ビタミンB2が1.3mg、ビタミンB6が1.1mg、葉酸が200μg、パントテン酸が6.0mg、ビタミンB12が2.0μg、ビタミンCが85mg、マグネシウが310mg、鉄が6.5mgであることが好ましい。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、食生活において食塩代替物として使用され、エネルギー代謝に関与するビタミンやミネラルをバランス良くかつ安定して含むことができる食塩組成物及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下に図面を参照して、本発明の食塩組成物およびその製造方法について詳しく説明する。ただし、本実施形態に記載されている構成要素、数値などは、特に特定的な記載がない限りは、本発明をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0049】
[用語の定義]
本実施形態の食塩組成物は、食塩の機能を果たすためのベース塩中にビタミンとミネラルとを添加したものである。本明細書では、ベース塩として、主成分である塩化ナトリウム(食塩)に若干の固化防止成分を添加したものを普通塩ベースと称し、主成分として塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウムを含み、若干の固化防止成分と苦味低減成分を添加したものを減塩ベースと称す。また、本明細書では、普通塩ベースにビタミンとミネラルとを添加した本実施形態の食塩組成物を普通塩タイプの食塩組成物と称し、減塩ベースにビタミンとミネラルとを添加した本実施形態の食塩組成物を減塩タイプの食塩組成物と称す。また、普通塩タイプの食塩組成物と減塩タイプの食塩組成物を総称する場合は、単に本実施形態の食塩組成物と称する。
【0050】
<第1の実施形態>
[特徴]
食塩は、日本人の食生活に無くてはならない調味料である。本実施形態の食塩組成物は、食塩の代替物として食塩と同様に毎日の食生活で使用される調味料であり、食塩の機能を果たすためのベース塩中に「エネルギー代謝」を効率的に行うために必要なビタミンやミネラルをバランス良く適量添加したものである。また、本実施形態の食塩組成物は、ビタミンを長期間安定に保持するように弱酸性に維持されている。さらに、本実施形態の食塩組成物は食塩の代替物として使用されるために食塩と同程度の色と塩味を有する。「エネルギー代謝」とは、脂肪、蛋白質、糖を代謝してエネルギーを効率よくを取り出すためのクエン酸回路と、クエン酸回路の前段に位置する代謝反応および後段に位置する反応(ATPからエネルギーを生成し活性酸素が発生する反応)の総称である。そのため、本実施形態の食塩組成物が食塩の代わりに調味料として使用された食品を摂取することにより、本来の食品中に含まれるビタミンやミネラルの量をいちいち計算することなく、1日の食事から摂取しなければならない「エネルギー代謝」を効率的に行うために必要なビタミンやミネラルをバランス良く必要量摂取することができる。
【0051】
以下、本実施形態の食塩組成物に含まれるベース塩、ビタミンおよびミネラルの種類および含有量について説明する。
【0052】
[ベース塩]
本実施形態の食塩組成物は、食塩の機能を果たすためのベース塩中にビタミンとミネラルとを添加したものであり、ベース塩として、普通塩ベースを用いる。普通塩ベースは、主成分である塩化ナトリウム(食塩)に若干の固化防止成分を添加したものであり、従来から食塩として使用されている塩である。普通塩ベースの食塩組成物を普通塩タイプの食塩組成物と称する。
【0053】
[ビタミンとミネラルの種類]
次に、本実施形態の食塩組成物に含まれるビタミンとミネラルの種類について説明する。本実施形態の食塩組成物は、通常の食塩の代替物として食塩と同様に使用される調味料であり、普通塩ベースに「エネルギー代謝」を効率的に行うために必要なビタミンとミネラルをそれぞれ適量ずつ添加したものである。
【0054】
[クエン酸回路の前段に位置する代謝反応:図1A]
まず、「エネルギー代謝」の最初の反応であるクエン酸回路の前段に位置する代謝反応に必要なビタミン・ミネラルについて説明する。クエン酸回路の前段に位置する反応とは、図1Aに示すようにクエン酸回路にアセチルCoAを供給する脂肪、蛋白質、糖の代謝反応のことである。
【0055】
これらの反応では、以下に示すビタミンとミネラルが補酵素として関与する。すなわち、糖の代謝反応では、ピルビン酸を生成するときにビタミンB12が関与し、ピルビン酸からアセチルCoAを生成するときにビタミンB1、パントテン酸、ナイアシン、マグネシウムが関与する。また、脂肪の代謝反応では、アセチルCoAを生成するときにビタミンB12、パントテン酸、ナイアシンが関与する。さらに、蛋白質の代謝反応では、ピルビン酸を生成するときにビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシンが関与し、ピルビン酸からアセチルCoAを生成するときにビタミンB2が関与する。また、α−ケトグルタミン酸を生成するときにビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシンが関与し、コハク酸を生成するときにビタミンB1、パントテン酸が関与する。従って、上記代謝反応で必要なビタミンとミネラルは、ビタミンB1、B2、B6,B12、パントテン酸、ナイアシン、マグネシウムである。
【0056】
[クエン酸回路:図1B]
次に、クエン酸回路に必要なビタミンとミネラルについて説明する。クエン酸回路とは、脂肪、蛋白質、糖の代謝反応で生成したアセチルCoAを図1Bの(a)に示すように(1)〜(9)の連続する反応によって最終的にアセチル基を酸化して二酸化酸素とGTP(ATP)を生成する反応である。このとき、(6)のスクシニルCoAなどからコハク酸やGTP(ATP)などが生成する反応では、補酵素としてビタミンB1が関与し、(7)のコハク酸などからフマル酸が生成する反応では補酵素としてビタミンB12が関与し、(9)の1−リンゴ酸からオキサロ酢酸を生成する反応では補酵素としてビタミンB12が関与する。
【0057】
また、図には記載されていないが、クエン酸回路ではアセチルCoAを酸化するために十分な酸素を供給する必要がある。この酸素は、ヘモグロビンと結合し、ヘモグロビンを運搬する赤血球によって細胞内に供給される。そのため、十分な酸素を供給するためには体内に十分な量のヘモグロビンと赤血球が必要である。このヘモグロビンの生成には鉄とビタミンB6が関与する再合成蛋白質が必要であり、また、正常な形状の赤血球を生成するためには補酵素として葉酸とビタミン12が関与する。従って、クエン酸回路で必要なビタミンとミネラルは、ビタミンB6、B12、葉酸、鉄である。
【0058】
[クエン酸回路の後段に位置する反応:図1B]
クエン酸回路の後段に位置する反応とは、図1Bの(b)に示すようにクエン酸回路で生成したATPをアデノシン2リン酸に変えてエネルギーを取り出すときに発生する活性酸素を酵素で還元して除去する反応である。この活性酸素の還元除去で必要なビタミンは、活性酸素除去酵素であるビタミンCである。
【0059】
以上説明したように、「エネルギー代謝」で必要なビタミンとミネラルとは、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、パントテン酸、ナイアシン、葉酸、ビタミンC、マグネシウム、鉄である。またこれらのビタミンは、水溶性ビタミンと呼ばれる群に属するものである。水溶性ビタミンは、水に溶けやすいビタミンである。そのため、水溶性ビタミンを普通塩ベースに混合して製造される普通塩タイプの食塩組成物を食塩と同様に調理料として使用すると、食塩組成物中に含まれるビタミンは水に溶けて水溶液中に分散することができる。そのため、水溶性ビタミンを含む本実施形態の食塩組成物は、水を含む食品あるいは水を用いて調理された食品中では水に溶けて食品中に分散しやすくなり食品の一部に偏析することもない。このため、水溶性ビタミンを含む本実施形態の食塩組成物を用いて調理された食品を摂取すると、適量の水溶性ビタミンを摂取しやすくなる。
【0060】
[ビタミン・ミネラルの基本配合の考え方]
次に、本実施形態の食塩組成物に含まれる「エネルギー代謝」に必要なビタミンとミネラルの基本配合の考え方について説明する。
【0061】
日本人が一日に摂取する食塩摂取量は、平成15年の全体平均では11.2g/日、30〜49歳の平均では11.3g/日である。また、図1Fの傾向から、今後の日本人が一日に摂取する食塩摂取量は、11.3g/日程度か若干低い値で推移するものと思われる。そこで、本実施形態の普通塩タイプの食塩組成物に含まれるビタミンとミネラルの基本配合量として、普通塩タイプの食塩組成物11.3gに対して「エネルギー代謝」に必要なビタミンとミネラル(ナトリウムを除く)とが食事摂取基準の推定平均必要量(または目安量、目標量)含まれるように設定する。この結果、本実施形態の普通塩タイプの食塩組成物を11.3g/日ずつ毎日摂取した場合に、「エネルギー代謝」に必要なビタミンとミネラルを、食事摂取基準の推定平均必要量(または目安量、目標量)摂取することができる。
【0062】
なお、本実施形態の普通塩タイプの食塩組成物は調味料として各種食品に添加して使用する場合には、食品自体にもビタミンとミネラルが含まれているためこの食品を摂取すると、食事摂取基準の推定平均必要量(または目安量、目標量)以上のビタミンとミネラルが摂取されることも考えられる。しかし、図1Cに示すように、「エネルギー代謝」に必要なビタミンとミネラルについては、摂取量の上限値が決められていないものが多く、決められていてもその上限値は推定平均必要量(または目安量、目標量)に比べてかなり大きい値を示している。上限値が設定されていないのは、推定平均必要量(または目安量、目標量)より多く体内に摂取されてもそれほど多くない場合には体外に排出されるため害にならないからである。そのため、本実施形態の普通塩タイプの食塩組成物を11.3g/日ずつ毎日、各種食品とともに摂取した場合には、「エネルギー代謝」に必要なビタミンとミネラルの推定平均必要量(または目安量、目標量)を確実に摂取できる。また、多少の取りすぎがあったとしてもそれによる弊害は生じにくいと考えられる。
【0063】
[食塩組成物(11.3g)中のミネラル、ビタミンの基本配合量:図2A]
次に、上記設定された普通塩タイプの食塩組成物の基本配合量について具体的に説明する。図2Aは、普通塩タイプの食塩組成物11.3g中に含まれる各ミネラル、ビタミン成分の基本配合量を示す図である。図には、参考として各ミネラル、ビタミン成分の1日の食事摂取基準量を示す。
【0064】
図2Aに示すように、普通塩タイプの食塩組成物11.3g中には、「エネルギー代謝」で必要となるビタミンとミネラルが1日の食事摂取基準の推定平均必要量(または目安量)含まれている。すなわち、ビタミンとして、ビタミンB1(チアミン)1.2mg、ビタミンB2(リボフラビン)1.3mg、ナイアシン13mg、ビタミンB6(ピリドキシン)1.1mg、葉酸200μg、ビタミンB12(シアノコバラミン)2.0μg、パントテン酸6.0mg(目安量)、ビタミンC(L−アスコルビン酸)85mgが含まれている。また、ミネラルとして、マグネシウム310mg、鉄6.5mgが含まれている。なお、図には参考としてナトリウムの配合量も記載したが、その配合量が1日の食事摂取基準量を超えているのは、本食塩組成物は従来の食塩と同様に11.3g/日摂取されることを前提としたためである。
【0065】
[食塩組成物(100g)中の基本配合量(使用物質換算):図2B]
次に、上記設定された基本配合量含む普通塩タイプの食塩組成物の各成分の使用物質を決定した。使用物質は普通塩ベースと混合して使用されるため着色していないもの、安定性がよいものなどの基準により選択された。図2Bに決定された各成分の使用物質と、使用物質に換算された基本配合量を示す。
【0066】
以下、選択された各成分の使用物質の色、性質、普通塩タイプの食塩組成物100g中の含有量を説明する。
【0067】
マグネシウム成分
硫酸マグネシウムと炭酸マグネシウムの2種類が選択された。硫酸マグネシウムは着色しておらず、塩化カリウムの強酸味の緩和のために選択され、食塩組成物に19.0g添加された。但し、硫酸マグネシウムは苦味があった。炭酸マグネシウムは、着色しておらず、苦味が無く、塩化ナトリウムの固化防止作用を有するために選択され、食塩組成物に0.4g添加された。
【0068】
鉄成分
ピロリン酸第2鉄が選択され、食塩組成物に0.192g添加された。ピロリン酸第2鉄は安定性が高く、苦味が無いが、薄い黄橙色を示すものであった。
【0069】
ビタミンB1
チアミン硝酸塩が選択され、食塩組成物に0.0132g添加された。チアミン硝酸塩は、着色していないが、苦味があり、アルカリ性に弱く、加熱調理すると損失しやすいものであった。
【0070】
ビタミンB2
リボフラビンが選択され、食塩組成物に0.0116g添加された。ただし、リボフラビンは、濃い黄橙色であり、苦味があり、アルカリ性に弱いものであった。
【0071】
ナイアシン
ニコチン酸アミドが選択され、食塩組成物に0.116g添加された。ニコチン酸アミドは着色しておらず、僅かに苦味があり、アルカリ性に弱いものであった。
【0072】
ビタミンB6
ピリドキシン塩酸塩を選択し、食塩組成物に0.0120g添加された。ピリドキシン塩酸塩は着色しておらず、苦味もない。
【0073】
葉酸
葉酸が選択され、食塩組成物に0.0018g添加された。葉酸は苦味はないが、濃い黄橙色を示した。
【0074】
ビタミンB12
シアノコバラミン0.1%混合物が選択され、食塩組成物に0.0180g添加された。シアノコバラミンは薄い赤紫の色で、苦味がないものであった。また、シアノコバラミンは植物性食品には含まれないため、植物性食品中心に食事をする人は摂取しにくいビタミンである。
【0075】
パントテン酸
パントテン酸カルシウムが選択され、食塩組成物に0.0580g添加された。パントテン酸カルシウムは着色しておらず苦味もなかった。
【0076】
ビタミンC
L−アスコルビン酸が選択され、食塩組成物に0.753g添加された。L−アスコルビン酸は着色しておらず苦味もなかった。
【0077】
[普通塩タイプの食塩組成物の最終配合:図2C、図2D]
次に、図2Bに示す使用物質と基本配合量を有する普通塩タイプの食塩組成物を調製した。そして、得られた食塩組成物の色と味(塩味)とを食塩の色と味(塩味)と比較して、普通塩タイプの食塩組成物の性能について検討した。その結果、調製した食塩組成物の色は、食塩の白色に比べて黄橙色に着色しており、調製した食塩組成物の味(塩味)は食塩に比べて苦味があることがわかった。そこで、食塩組成物の着色および苦味の原因を検討し、次に、検討結果に基づいて、食塩組成物が着色せず、かつ食塩に近い味(塩味)となる配合量として、図2Cと図2Dに示す食塩組成物の最終配合量を見出した。図2Cは、食塩組成物11.3g中に含まれるミネラル、ビタミンの最終配合量であり、図2Dはに使用物質に換算された食塩組成物100g中のミネラル、ビタミンの最終配合量である。
【0078】
以下、食塩組成物の着色および苦味の原因分析の検討結果について説明し、次に、食塩組成物の最終配合量について説明する。
【0079】
[色]
食塩組成物の着色の原因は、使用物質として、鉄分に薄い黄橙色のピロリン酸第2鉄を、ビタミンB2として濃い黄橙色のリボフラビンを、葉酸に濃い黄橙色の葉酸を使用したためである。このため得られる食塩組成物は灰色に着色した。着色は、食塩組成物の薬効に変化を与えないが、白色の食塩組成物を希望するユーザに対しては好ましくないと判断される場合も考えられる。そこで、各成分の含有量を食塩組成物が着色しない程度まで低減することとした。その一例を図2Cに示し、以下具体的に説明する。
【0080】
すなわち、鉄は、食塩組成物を白色に維持するため基本配合量6.5mgを最終配合量として4.2mgに低減した。その結果、図2Cに示すように最終配合量中に含まれる鉄分は食事摂取基準量の65%となった。
【0081】
同様に、ビタミンB2(リボフラビン)は、食塩組成物を白色に維持するため基本配合量1.3mgを最終配合量として0.57mgに低減した。その結果、最終配合量中に含まれるビタミンB2(リボフラビン)は図2Cに示すように食事摂取基準量の44%となった。
【0082】
また、葉酸は、食塩組成物を白色に維持するため基本配合量0.2mgを最終配合量として0.11mgに低減した。その結果、最終配合量中に含まれる葉酸は図2Cに示すように食事摂取基準量の57%となった。
【0083】
[塩味]
食塩組成物の苦味の原因は、使用物質として、マグネシウム成分に硫酸マグネシウムを、ビタミンB1として、チアミン硝酸塩を、ビタミンB2としてリボフラビンを使用したためである。このため得られる食塩組成物は苦味を生じた。苦味は、食塩組成物に含まれるビタミンやミネラルの薬効に変化を与えないが、苦味はユーザに不快感な味覚を与えるので好ましくない。そこで、苦味を示す硫酸マグネシウムおよびビタミンB2(リボフラビン)を低減した。但し、ビタミンB1(チアミン硝酸塩)は、摂取量が少ない、熱損失量が大きいため増加させた。そして、食塩組成物の苦味を低減成分としてL−リジン塩酸塩とクエン酸を添加することにより食塩組成物が苦味を感じないようにした。以下、具体的に説明する。
【0084】
すなわち、硫酸マグネシウムは、基本配合量19mgを最終配合量として9mgに低減した。その結果、図2Cに示すように最終配合量中に含まれるマグネシウム分は食事摂取基準量の50%となった。
【0085】
また、ビタミンB2(リボフラビン)は、着色防止のために基本配合量1.3mgを最終配合量として0.57mgに低減しているので、苦味も低減されている。最終配合量中に含まれるビタミンB2(リボフラビン)は食事摂取基準量の44%である。
【0086】
一方、ビタミンB1(チアミン硝酸塩)は、最終配合量11mgを基本配合量1.2mgより増加させた(約9.2倍)。この理由は、ビタミンB1の摂取量が推定平均必要量に達しない者の比率が高い(図1D参照)、ビタミンB1は他のビタミンに比べて加熱調理中に損失する割合が極めて高い、ビタミンB1は過剰に摂取されても排出されるので悪影響を及ぼさない(図1C参照、上限値設定無し)、マグネシウムに比べて食塩組成物中の配合量がかなり低い等の理由によりものである。
【0087】
なお、味には影響しないが、ビタミンB12(シアノコバラミン0.1%混合物)は、最終配合量0.023mgを基本配合量0.002mgより増加させた(約11.3倍)。この理由は、ビタミンB12は植物性食品に含まれていないため植物性食品中心に食事をする人は摂取しにくい、ビタミンB12は過剰に摂取されても排出されるので悪影響を及ぼさない(図1C参照、上限値設定無し)、食塩組成物中の配合量が他の成分に比べてかなり低い等の理由によるものである。
【0088】
[苦味低減成分]
上記のように、マグネシウム成分、ビタミンB2(リボフラビン)を低減しビタミンB1(チアミン硝酸塩)を増加した結果、得られた食塩組成物の味は食塩に比べて苦味があったので、苦味を低減し食塩と同程度の塩味とするために、苦味低減成分としてL−リジン塩酸塩とクエン酸を添加した。図2Dに示すように食塩組成物の最終配合量中には、苦味低減成分として食塩組成物100gに対してL−リジン塩酸塩を1.5gとクエン酸を2.0g含んでいる。L−リジン塩酸塩は甘みを有する成分であり、クエン酸は、硫酸マグネシウム、ビタミンB1(チアミン硝酸塩)、ビタミンB2(リボフラビン)の苦味を低減する成分である。そのため、最終配合量の食塩組成物を食塩とほぼ同等の味とすることができた。なお、クエン酸は後述するpH調整にも寄与する成分である。
【0089】
[pH調整]
基本配合量の食塩組成物はpHが8.0でアルカリ性であり、この食塩組成物に含まれるビタミンB群は分解されやすく長期安定性に欠けることがわかった。そこで、最終配合量の食塩組成物では、食塩と同程度の色と塩味とした後、食塩組成物のpHが6.8の弱酸性となるように調整した。この調整はクエン酸とビタミンCを用いて行った。食塩組成物を弱酸性(例えば、pH6.8)にするとビタミンB群は長期間保存しても分解されないため食塩組成物の長期安定性が増加した。この調整は、クエン酸およびビタミンCを用いて調整した。図2Dの最終配合量の食塩組成物におけるクエン酸2.0gのうち、1gはpH調整用のクエン酸の量であり、残りの1gは苦味低減用のクエン酸の量である。またビタミンCは図2Cに示すように基本配合量85mgに対して最終配合量90mgとpH調整用に5mg(6%)ほどビタミンCを増加した。
【0090】
以上説明したように、図2Cに示す最終配合量を有する普通塩タイプの食塩組成物、または図2Dに示す使用物質に換算された最終配合量を有する食塩組成物は、食塩と同程度の色および味を有するものである。
【0091】
[普通塩タイプの食塩組成物の上限、下限:図2E]
上記説明したように、図2C、図2Dに示す最終配合量を有する普通塩タイプの食塩組成物は、食塩と同程度の色および塩味を有し、長期安定性が良いものである。しかしながら、本実施形態の普通塩タイプの食塩組成物は、最終配合量以外の配合値に各成分の割合を多少変化させても食塩と同程度の色と塩味、あるいは、食塩と同程度の塩味を示すことがわかった。
【0092】
そこで、普通塩タイプの食塩組成物中の各成分の上限値と下限値について検討した結果を図2Eに示す。図2Eの(a)は、食塩組成物に含まれるビタミンとミネラルの下限値、最適値、上限値を示し、図2Eの(b)は、食塩組成物に含まれるビタミンとミネラルの下限値、最適値、上限値を使用物質に換算して示したものである。
【0093】
なお、ビタミンB1と葉酸、鉄成分を食塩組成物中に上限値まで入れた場合、食塩組成物の味は食塩と同程度の塩味が得られるが、食塩組成物が灰色に着色する。着色は、食塩組成物の薬効に変化を与えないが、白色の食塩組成物を希望する場合には、上限値まで入れず着色しない範囲(最適配合値以下)に抑えればよい。
【0094】
以上説明したように、本実施形態の食塩組成物は食塩の機能を果たすためのベース塩中に「エネルギー代謝」を効率的に行うために必要なビタミンやミネラルをバランス良く適量添加したものである。また、本実施形態の食塩組成物は、ビタミンを長期間安定に保持するように弱酸性に維持されている。さらに、本実施形態の食塩組成物は食塩の代替物として使用されるために食塩と同程度の色と塩味を有する。そのため、本実施形態の食塩組成物が食塩の代わりに調味料として使用された食品を摂取することにより、本来の食品中に含まれるビタミンやミネラルの量をいちいち計算することなく、1日の食事から摂取しなければならない「エネルギー代謝」を効率的に行うために必要なビタミンやミネラルをバランス良く必要量摂取することができる。
【0095】
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態の食塩組成物について説明する。なお、以下の説明では、第1の実施形態の食塩組成物と共通する部分の説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0096】
[特徴]
本実施形態の食塩組成物は、食塩の代替物として食塩と同様に毎日の食生活で使用される調味料である。本実施形態の食塩組成物が第1の実施形態の食塩組成物と異なる点は、食塩の機能を果たすためのベース塩としてナトリウムの一部をカリウム、マグネシウムで置き換えた減塩ベースを用いる点とミネラルとしてカルシウムを含む点である。そのため、本実施形態の食塩組成物は、第1の実施形態の食塩組成物と同様に「エネルギー代謝」を効率的に行うことができるばかりでなく、「ナトリウムポンプ」と「カルシウムポンプ」を円滑に機能させることができる。また、本実施形態の食塩組成物は、ビタミンを長期間安定に保持するように弱酸性に維持されている。さらに、本実施形態の食塩組成物は食塩の代替物として使用されるために食塩と同程度の色と塩味を有する。「エネルギー代謝」とは、脂肪、蛋白質、糖を代謝してエネルギーを効率よくを取り出すためのクエン酸回路と、クエン酸回路の前段に位置する代謝反応および後段に位置する反応(ATPからエネルギーを生成し活性酸素が発生する反応)の総称である。「ナトリウムポンプ」とはカリウムの働きで細胞内に含まれる余分なナトリウムを細胞外に排出して濃度を一定に保つ働きのことであり、「カルシウムポンプ」とは、筋肉の働きを円滑に行う働きのことであり、カルシウムが筋肉を収縮し、収縮した筋肉内のカルシウムをマグネシウムが関与して生成されるエネルギーを用いて吸い出して筋肉を弛緩させる。そのため、本実施形態の食塩組成物を調味料として使用した食品を摂取することにより、本来の食品中に含まれるビタミンやミネラルの量をいちいち計算することなく、1日の食事から摂取しなければならない「エネルギー代謝」、「ナトリウムポンプ」「カルシウムポンプ」を円滑に行うビタミンやミネラルをバランス良く必要量摂取することができる。
【0097】
以下、本実施形態の食塩組成物に含まれるベース塩、ビタミンおよびミネラルの種類および含有量について説明する。
【0098】
[ベース塩]
本実施形態の食塩組成物は、食塩の機能を果たすためのベース塩である減塩中にビタミンとミネラルとを添加したものであり、ベース塩として、減塩ベースを用いる。減塩ベースは、主成分として塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウムを含み、若干の固化防止成分と苦味低減成分を添加したものである。減塩ベースは、日本人の塩化ナトリウムの取りすぎを防ぐために塩化ナトリウムの一部を塩化カリウム、硫酸マグネシウムで置き換えたものである。但し、塩化カリウム、硫酸マグネシウムは苦味があるので、その苦みを抑えて塩化ナトリウム(食塩)とほぼ同じ塩味となるように塩化カリウム、硫酸マグネシウムの量が調整され、苦味低減成分としてL−リジンとクエン酸を含むものである。減塩ベースの食塩組成物を減塩タイプの食塩組成物と称する。
【0099】
[ビタミンとミネラルの種類]
本実施形態の食塩組成物には、「エネルギー代謝」、「ナトリウムポンプ」、「カルシウムポンプ」を円滑に機能させるために必要なビタミンとミネラルが適量ずつ含まれている。ここで、「エネルギー代謝」に必要なビタミンとミネラルは、第1の実施形態で説明した内容と同じであるので、ここでの説明は重複するので省略し、「ナトリウムポンプ」、「カルシウムポンプ」についてのみ説明す。
する。
【0100】
[ナトリウムポンプ]
ナトリウムポンプとは、細胞内にナトリウムが多く入ってくると、細胞外からカリウムを取り込むと同時に余分なナトリウムを細胞外に排出してナトリウムを一定の濃度に保つ働きをいう。ナトリウムポンプの役目をするのはカリウムであり、ナトリウムポンプにより、細胞内のナトリウのバランスが保たれ、血圧の上昇が抑えられる。また、カリウムはくみ出したナトリウムを体外に排出する役目もする。
【0101】
[カルシウムポンプ]
筋肉が収縮するときには、カルシウムが中心的な役割を果たす。次に収縮した筋肉を弛緩させるために筋肉小胞体がカルシウムポンプという機構を働かせて、筋肉細胞内のカルシウムを吸い出し、それにより筋肉の収縮がとかれ筋肉が弛緩する。この機構は「エネルギー代謝」で生成するATPから取り出したエネルギーを用いて行う。このATPを効率的に生成するためには「エネルギー代謝」の補酵素としてマグネシウムが必要である。したがって、筋肉の収縮と弛緩を円滑に行うためには、カルシウムとマグネシウムが必要である。
【0102】
[ビタミン・ミネラルの基本配合の考え方]
次に、本実施形態の食塩組成物に含まれる「エネルギー代謝」、[ナトリウムポンプ]、[カルシウムポンプ]に必要なビタミンとミネラルの基本配合の考え方について説明する。
【0103】
本実施形態の減塩タイプの食塩組成物に含まれるビタミンとミネラルの基本配合量として、減塩タイプの食塩組成物11.3gに対して「エネルギー代謝」[ナトリウムポンプ]、[カルシウムポンプ]に必要なビタミンとミネラル(ナトリウムを除く)とが食事摂取基準の推定平均必要量(または目安量、目標量)含まれるように設定する。ただし、減塩ベースは、減塩の味(塩味)が食塩と同程度の塩味となるよう調整されたものであるので、カリウム、マグネシウムの量は食事摂取基準の推定平均必要量以下であっても変更しない。この結果、本実施形態の減塩タイプの食塩組成物を11.3g/日ずつ毎日摂取した場合に、「エネルギー代謝」に必要なビタミンとミネラルを、食事摂取基準の推定平均必要量(または目安量、目標量)摂取することができる。また、[ナトリウムポンプ]、[カルシウムポンプ]に必要なミネラルであるカリウム、マグネシウム、カルシウムも合わせて摂取することができる。
【0104】
なお、本実施形態の減塩タイプの食塩組成物は調味料として各種食品に添加して使用する場合には、食品自体にもビタミンとミネラルが含まれているためこの食品を摂取すると、食事摂取基準の推定平均必要量(または目安量、目標量)以上のビタミンとミネラルが摂取されることも考えられる。しかし、図1Cに示すように、「エネルギー代謝」に必要なビタミンとミネラルについては、摂取量の上限値が決められていないものが多く、決められていてもその上限値は推定平均必要量(または目安量、目標量)に比べてかなり大きい値を示している。上限値が設定されていないのは、推定平均必要量(または目安量、目標量)より多く体内に摂取されてもそれほど多くない場合には体外に排出されるため害にならないからである。そのため、本実施形態の減塩タイプの食塩組成物を11.3g/日ずつ毎日、各種食品とともに摂取した場合には、「エネルギー代謝」に必要なビタミンとミネラルの推定平均必要量(または目安量、目標量)を確実に摂取できる。また、多少の取りすぎがあったとしてもそれによる弊害は生じにくいと考えられる。
【0105】
[食塩組成物(11.3g)中のミネラル、ビタミンの基本配合量:図3A]
次に、上記設定された減塩タイプの食塩組成物の基本配合量について具体的に説明する。図3Aは、減塩タイプの食塩組成物11.3g中に含まれる各ミネラル、ビタミン成分の基本配合量を示す図である。図には、参考として各ミネラル、ビタミン成分の1日の食事摂取基準量を示す。
【0106】
図3Aに示すように、減塩タイプの食塩組成物11.3g中には、「エネルギー代謝」で必要となるビタミンとミネラルが1日の食事摂取基準の推定平均必要量(または目安量)含まれている。また、[ナトリウムポンプ]、[カルシウムポンプ]で必要となるミネラルも含まれている。すなわち、ビタミンとして、ビタミンB1(チアミン)1.2mg、ビタミンB2(リボフラビン)1.3mg、ナイアシン13mg、ビタミンB6(ピリドキシン)1.1mg、葉酸200μg、ビタミンB12(シアノコバラミン)2.0μg、パントテン酸6.0mg(目安量)、ビタミンC(L−アスコルビン酸)85mgが含まれている。また、ミネラルとして、カリウム1245mg、マグネシウム154.7mg、カルシウム600mg、鉄6.5mgが含まれている。さらに、苦味低減成分としてL−リジン塩酸塩が113mg、クエン酸113mgが含まれている。なお、図には参考としてナトリウムの配合量も記載したが、その配合量が1日の食事摂取基準量を超えているのは、本食塩組成物は従来の食塩と同様に11.3g/日摂取されることを前提としたためである。
【0107】
[食塩組成物(100g)中の基本配合量(使用物質換算):図3B]
次に、上記設定された基本配合量含む減塩タイプの食塩組成物の各成分の使用物質を決定した。使用物質は減塩ベースと混合して使用されるため着色していないもの、安定性がよいものなどの基準により選択された。図3Bに決定された各成分の使用物質と、使用物質に換算された基本配合量を示す。
【0108】
以下、選択された各成分の使用物質の色、性質、減塩タイプの食塩組成物100g中の含有量を説明する。
【0109】
カリウム成分
塩化カリウムが選択され、食塩組成物に21.0g添加された。塩化カリウムは着色しておらず、安定性が高く、塩化ナトリウムに近い味を示すため選択された。
【0110】
マグネシウム成分
硫酸マグネシウムと炭酸マグネシウムの2種類が選択された。硫酸マグネシウムは着色しておらず、塩化カリウムの強酸味の緩和のために選択され、食塩組成物に9.0g添加された。但し、硫酸マグネシウムは苦味があった。炭酸マグネシウムは、着色しておらず、苦味が無く、塩化ナトリウムの固化防止作用を有するために選択され、食塩組成物に0.4g添加された。
【0111】
カルシウム成分
炭酸カルシウムが選択され、食塩組成物に13.26g添加された。炭酸カルシウムは着色しておらず、安定性が高く、苦味は無かった。
【0112】
鉄成分
ピロリン酸第2鉄が選択され、食塩組成物に0.192g添加された。ピロリン酸第2鉄は安定性が高く、苦味が無いが、薄い黄橙色を示すものであった。
【0113】
苦味低減成分
L−リジン塩酸塩とクエン酸が選択され、食塩組成物にそれぞれ1gずつ添加された。
【0114】
ビタミンB1
チアミン硝酸塩が選択され、食塩組成物に0.0132g添加された。チアミン硝酸塩は、着色していないが、苦味があり、アルカリ性に弱く、加熱調理すると損失しやすいものであった。
【0115】
ビタミンB2
リボフラビンが選択され、食塩組成物に0.0116g添加された。ただし、リボフラビンは、濃い黄橙色であり、苦味があり、アルカリ性に弱いものであった。
【0116】
ナイアシン
ニコチン酸アミドが選択され、食塩組成物に0.116g添加された。ニコチン酸アミドは着色しておらず、僅かな苦味があり、アルカリ性に弱いものであった。
【0117】
ビタミンB6
ピリドキシン塩酸塩を選択し、食塩組成物に0.0120g添加された。ピリドキシン塩酸塩は着色しておらず、苦味もないものであった。
【0118】
葉酸
葉酸が選択され、食塩組成物に0.0018g添加された。葉酸は苦味はないが、濃い黄橙色を示するものであった。
【0119】
ビタミンB12
シアノコバラミン0.1%混合物が選択され、食塩組成物に0.0180g添加された。シアノコバラミンは薄い赤紫の色で、苦味がないものであった。また、シアノコバラミンは植物性食品には含まれないため、植物性食品中心に食事をする人は摂取しにくいビタミンである。
【0120】
パントテン酸
パントテン酸カルシウムが選択され、食塩組成物に0.0580g添加された。パントテン酸カルシウムは着色しておらず苦味もないものであった。
【0121】
ビタミンC
L−アスコルビン酸が選択され、食塩組成物に0.753g添加された。L−アスコルビン酸は着色しておらず苦味もなかった。
【0122】
[減塩タイプの食塩組成物の最終配合:図3C、図3D]
次に、図3Bに示す使用物質と基本配合量を有する普通塩タイプの食塩組成物を調製した。そして、得られた食塩組成物の色と味とを食塩の色と味と比較して、普通塩タイプの食塩組成物の性能について検討した。その結果、調製した食塩組成物の色は、食塩の白色に比べて黄橙色に着色しており、調製した食塩組成物の味は食塩に比べてやや苦味があることがわかった。また、食品衛生法では、食品中に含まれるカルシウム量を1%未満としなければならないことがわかった。そこで、カルシウム量を1%未満とした食塩組成物の着色および苦味の原因を検討し、次に、検討結果に基づいて、食塩組成物が着色せず、かつ食塩に近い味となる配合量として、図3Cと図3Dに示す食塩組成物の最終配合量を見出した。図3Cは、食塩組成物11.3g中に含まれるミネラル、ビタミンの最終配合量であり、図3Dはに使用物質に換算された食塩組成物100g中のミネラル、ビタミンの最終配合量である。
【0123】
以下、食塩組成物の着色および苦味の原因分析の検討結果について説明し、次に、食塩組成物の最終配合量について説明する。
【0124】
[色]
食塩組成物の着色の原因は、使用物質として、鉄分に薄い黄橙色のピロリン酸第2鉄を、ビタミンB2として濃い黄橙色のリボフラビンを、葉酸に濃い黄橙色の葉酸を使用したことである。このため得られる食塩組成物は白色でなく灰色に着色した。着色は、食塩組成物の薬効に変化を与えないが、白色の食塩組成物を希望するユーザに対しては好ましくないと判断される場合も考えられる。そこで、各成分の含有量が着色しない程度まで低減することとした。その一例を図3Cに示す。
【0125】
すなわち、鉄は、食塩組成物を白色に維持するため基本配合量6.5mgを最終配合量として4.2mgに低減した。その結果、図3Cに示すように最終配合量中に含まれる鉄分は食事摂取基準量の65%となった。
【0126】
同様に、ビタミンB2(リボフラビン)は、食塩組成物を白色に維持するため基本配合量1.3mgを最終配合量として0.57mgに低減した。その結果、最終配合量中に含まれるビタミンB2(リボフラビン)は図3Cに示すように食事摂取基準量の44%となった。
【0127】
また、葉酸は、食塩組成物を白色に維持するため基本配合量0.2mgを最終配合量として0.11mgに低減した。その結果、最終配合量中に含まれる葉酸は図3Cに示すように食事摂取基準量の57%となった。
【0128】
[塩味]
食塩組成物の苦味の原因は、減塩ベースの配合が適切でなく減塩ベース単独でもやや苦味を生じたことと、苦味を示すチアミン硝酸塩(ビタミンB1)とリボフラビン(ビタミンB2)を使用したことである。苦味は、食塩組成物に含まれるビタミンやミネラルの薬効に変化を与えないが、苦味はユーザに不快感な味覚を与えるので好ましくない。そこで、減塩ベースの配合を変更するとともに苦味低減成分であるL−リジン塩酸塩とクエン酸の添加量を増加して食塩組成物が苦味を感じないようにした。また合わせて、食塩組成物中のカルシウム含有量を1%に低減した。以下、具体的に説明する。
【0129】
すなわち、硫酸マグネシウムは、基本配合量9mgを最終配合量として9.268mgにした。その結果、図3Cに示すように最終配合量中に含まれるマグネシウム分は食事摂取基準量の50%となった。
【0130】
また、ビタミンB2(リボフラビン)は、着色防止のために基本配合量1.3mgを最終配合量として0.57mgに低減しているので、苦味も低減されている。そのため苦味に対して、更なる低減は行わなかった。最終配合量中に含まれるビタミンB2(リボフラビン)は食事摂取基準量の44%である。
【0131】
一方、ビタミンB1(チアミン硝酸塩)は、最終配合量11mgを基本配合量1.2mgより逆に増加させた(約9.2倍)。この理由は、ビタミンB1の摂取量が推定平均必要量に達しない者の比率が高い(図1D参照)、ビタミンB1は他のビタミンに比べて加熱調理中に損失する割合が極めて高い、ビタミンB1は過剰に摂取されても排出されるので悪影響を及ぼさない(図1C参照、上限値設定無し)、マグネシウムに比べて食塩組成物中の配合量がかなり低い等の理由によりものである。
【0132】
また。合わせて、炭酸カルシウムは、基本配合量13,26mgを最終配合量として2.25mgに低減した。その結果、図3Cに示すように最終配合量中に含まれるカルシウム分は食事摂取基準量の17%である。
【0133】
なお、味には影響しないが、ビタミンB12(シアノコバラミン0.1%混合物)は、最終配合量0.023mgを基本配合量0.002mgより逆に増加させた(約11.3倍)。この理由は、ビタミンB12は植物性食品に含まれていないため植物性食品中心に食事をする人は摂取しにくい、ビタミンB12は過剰に摂取されても排出されるので悪影響を及ぼさない(図1C参照、上限値設定無し)、食塩組成物中の配合量が他の成分に比べてかなり低い等の理由によりものである。
【0134】
[苦味低減]
上記のように、ビタミンB2(リボフラビン)を低減しビタミンB1(チアミン硝酸塩)を増加した結果、得られた食塩組成物の味は食塩に比べて苦味があったので、食塩と同程度の塩味とするために、苦味低減成分であるL−リジン塩酸塩とクエン酸の量を増加した。すなわち、図3Dに示すように食塩組成物の最終配合では、L−リジン塩酸塩の添加量を1gから1.5gに増加し、クエン酸の添加量を1gから2gに増加した。その結果、図3Dに示す最終配合量の食塩組成物は、食塩と同程度の塩味とすることができた。なお、クエン酸は後述するpH調整にも寄与する成分である。
【0135】
[pH調整]
基本配合量の食塩組成物はpHが8.0でアルカリ性であり、この食塩組成物に含まれるビタミンB群は分解されやすく長期安定性に欠けることがわかった。そこで、最終配合量の食塩組成物では、食塩と同程度の色と塩味とした後、食塩組成物のpHが6.8の弱酸性となるように調整した。この調整はクエン酸とビタミンCを用いて行った。食塩組成物を弱酸性(例えば、pH6.8)にするとビタミンB群は長期間保存しても分解されないため食塩組成物の長期安定性が増加した。この調整は、クエン酸およびビタミンCを用いて調整した。図3Dの最終配合量の食塩組成物におけるクエン酸2.0gのうち、1gはpH調整用のクエン酸の量であり、残りの1gは苦味低減用のクエン酸の量である。またビタミンCは図3Cに示すように基本配合量85mgに対して最終配合量90mgとpH調整用に5mg(6%)ほどビタミンCを増加した。
【0136】
以上説明したように、図3Cに示す最終配合量を有する普通塩タイプの食塩組成物、または図3Dに示す使用物質に換算された最終配合量を有する食塩組成物は、食塩と同程度の色および味を有するものである。
【0137】
[減塩タイプの食塩組成物の上限、下限:図3E]
上記説明したように、図3C、図3Dに示す最終配合量を有する減塩タイプの食塩組成物は、食塩と同程度の色および味を有し、長期安定性が良いものである。しかしながら、本実施形態の減塩タイプの食塩組成物は、最終配合量以外の配合値に各成分の割合を多少変化させても食塩と同程度の色と塩味、あるいは、食塩と同程度の塩味を示すことがわかった。
【0138】
そこで、減塩タイプの食塩組成物の各成分の上限値と下限値について検討した結果を図3Eに示す。図3Eの(a)は、食塩組成物に含まれるビタミンとミネラルの下限値、最適値、上限値を示し、図3Eの(b)は、食塩組成物に含まれるビタミンとミネラルの下限値、最適値、上限値を使用物質に換算して示したものである。
【0139】
なお、ビタミンB2と葉酸、鉄成分は上限値まで入れた場合、食塩組成物の味は食塩と同程度の近い味が得られるが、食塩組成物が灰色に着色する。着色は、食塩組成物の薬効に変化を与えないが、白色の食塩組成物を希望する場合には、上限値を用いずに最適配合値を用いればよい。
【0140】
[他の実施形態]
上記説明した食塩組成物の使用物質は一例であり、必要に応じて他の使用物質に変更することができる。利用できる他の使用物質の一例を図4に示す。
【実施例】
【0141】
以下、実施例を用いて上記説明した本実施形態の食塩組成物の長期安定性、塩味の官能試験、製造方法、使用方法の一例について具体的に説明する。
【0142】
[長期安定性]
まず、食塩組成物の安定性について説明する。図5は、減塩タイプの食塩組成物を用いて、食塩組成物に含まれる各成分の長期安定性を調べた結果の一例であり、減塩タイプの食塩組成物に含まれる各成分の割合を長期安定性試験前後で比較したものである。
【0143】
使用した減塩タイプの食塩組成物は、図3Cに示す最終配合を有するものであり、pHは6.8であった。食塩組成物の長期安定性は、作製した食塩組成物を空気および紫外線を通さない袋に入れて1ヶ月間、室温の室内に放置した後、各成分の残存量を分析し、設計値と比較することによって求めた。なお、各成分の分析は、日本食品分析センターで実施した。図5の中央列は、最終配合の設計値であり、左列は1ヶ月間放置後の実測値であり、右列は実測値/設計値である。図5の実測値と設計値の比較結果より、食塩組成物中に含まれる各成分(ビタミン、ミネラル)は、1ヶ月間、室温で放置しても90%程度保持されていることがわかった。このことから、減塩タイプの食塩組成物は、pHを6.8の弱酸性に保持することにより、その中に含まれる各成分(ビタミン、ミネラル)の濃度を設計値の値に維持できること、すなわち、減塩タイプの食塩組成物に長期安定性を付与できることが示された。なお、図には示さなかったが、普通塩タイプの食塩組成物でも上記説明した減塩タイプの食塩組成物と同様の結果が得られた。このことから、普通塩タイプの食塩組成物でも長期安定性が示された。
【0144】
[官能試験]
次に、食塩組成物の塩味に対する官能試験結果について説明する。図6は、減塩タイプの食塩組成物を用いて、食塩組成物の塩味に対する官能試験を行った結果の一例であり、減塩ベースの食塩組成物の塩味に対する官能試験結果を食塩の塩味に対する官能試験結果と比較したものである。
【0145】
官能試験結果は、食品調理学の官能検査方法の1つである五味識別試験を用いて行った。試験を行うパネラーは各14名であり、0.25%に希釈した食塩および減塩ベースの食塩組成物に対する塩味の正解数で判断した。図6に示すように、食塩に対する塩味の正解数は13人で正解率は93%であり、減塩ベースの食塩組成物に対する塩味の正解数は12人で正解率は86%であった。この結果から、減塩ベースの食塩組成物は食塩とほぼ同程度の塩味を有することが分かった。なお、図には示さなかったが、普通塩タイプの食塩組成物でも上記説明した減塩タイプの食塩組成物と同様の結果が得られた。このことから、普通塩タイプの食塩組成物も減塩ベースの食塩組成物と同様の塩味を有することが分かった。
【0146】
[製造方法]
次に、食塩組成物の製造方法について説明する。図7は、減塩タイプの食塩組成物の製造方法の一例である。減塩タイプの食塩組成物を製造する際には、まず、原料の計量工程において、食塩組成物の各成分の原料(図7参照)の計量を行う。例えば、最終配合量の食塩組成物となるように各成分を計量する。続いて、第1混合工程において、計量したビタミン成分(ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸カルシウム、ビタミンC、ナイアシン)を混合して第1混合物を作製する。食塩組成物中の配合量が最も少ないビタミン類を均一に混合して偏析をなくすためである。続いて、第2混合工程において、計量したミネラル成分(ピロリン酸第2鉄、炭酸カルシウム)を混合して第2混合物を作製する。食塩組成物中の配合量が次に少ないビタミン類を均一に混合して偏析をなくすためである。続いて、第3混合工程において計量した食塩組成物の苦味を低減し弱酸性にする成分(クエン酸、L−リジン塩酸塩)と食塩ベース成分(塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム)を混合して第3混合物を作製し、次に、作製した第3混合物中に第1混合物と第2混合物と添加して均一に混合して食塩組成物を作製する。次に、計量包装工程において、食塩組成物を計量して袋詰めにしさらに箱詰めにする。袋詰め用の袋としては、紫外線及び空気を通さない材料が良く、例えば、紫外線を通さないように加工されたポリエチレンなどの材料を用いる。あるいは、ポリエチレンの袋を紫外線を通さない段ボールに詰めて保存しても良い。
なお、図には示さなかったが、普通塩タイプの食塩組成物でも上記説明した減塩タイプの食塩組成物と同様の製造方法で製造することができる。
【0147】
[使用方法]
次に、本食塩組成物(普通塩、減塩タイプ)の使用方法について説明する。本食塩組成物は、家庭においてあるいは食品工場において、食塩の代替物として各種調理の味付用として利用することができる。また、本食塩組成物は、そのまま食塩の代替物として使用するばかりでなく、他の調味料の味つけに使用することができる。例えば、ドレッシング、味噌、醤油、マヨネーズなどに塩味を付けるために使用することができる。そのため、本食塩組成物をそのまま、あるいは本食塩組成物によって味付けされた調味料を用いて調理された食品を摂取することにより「エネルギー代謝」などに必要なビタミンとミネラルをバランス良く摂取することができる。
【0148】
本食塩組成物を利用した食品としては、めん類(即席めん、乾めん、生めん)のスープ、スパゲッティソース、菓子類(油菓子、焼菓子、米菓)、ふりかけ、お茶漬けの素、水産加工製品、ソーセージ、ハム、ハンバーグ、ミートボールなどの畜肉加工品、漬物、佃煮、珍味類、さらにギョーザ、シューマイ、肉まんの具、フライ用バッター、てんぷらの衣などのそう菜類などが挙げられる。また、外食産業、テイクアウト惣菜などの料理分野の調味素材としてのニーズもあげられる。
【0149】
以上説明したように、本食塩組成物はベース塩中に「エネルギー代謝」を効率的に行うことができるばかりでなく、必要に応じて「ナトリウムポンプ」と「カルシウムポンプ」を円滑に機能させるために必要なビタミンやミネラルをバランス良く適量添加したものである。また、本食塩組成物は、ビタミンを長期間安定に保持するように弱酸性に維持されている。さらに、本食塩組成物は食塩の代替物として使用されるために食塩と同程度の色と塩味を有する。そのため、本食塩組成物が食塩の代わりに調味料として使用された食品を摂取することにより、本来の食品中に含まれるビタミンやミネラルの量をいちいち計算することなく、1日の食事から摂取しなければならない上記ビタミンやミネラルをバランス良く必要量摂取することができる。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1A】糖、脂肪、蛋白質の代謝反応に関与するビタミン、ミネラルを示す図である。
【図1B】クエン酸回路に関与するビタミンおよびATPからエネルギーを取りだすときに関与するビタミンを示す図である。
【図1C】ビタミンおよびミネラルの1日の食事摂取基準を示す図である。
【図1D】ビタミンの推定平均必要量に達しないものの比率を示す図である。
【図1E】ミネラルの推定平均必要量に達しないものの比率を示す図である。
【図1F】食塩摂取量の年次推移を示す図である。
【図2A】普通塩タイプの食塩組成物(11.3g)中の各成分の基本配合量を示す図である。
【図2B】普通塩タイプの食塩組成物(100g)中の各成分の基本配合量を使用物質で示した図である。
【図2C】普通塩タイプの食塩組成物(11.3g)中の基本配合量と最終配合量との関係を示す図である。
【図2D】普通塩タイプの食塩組成物(100g)中の各成分の最終配合量を使用物質で示した図である。
【図2E】普通塩タイプの食塩組成物(11.3g)中の各成分の上限値・下限値を示す図である。
【図3A】減塩タイプの食塩組成物(11.3g)中の各成分の基本配合量を示す図である。
【図3B】減塩タイプの食塩組成物(100g)中の各成分の基本配合量を使用物質で示した図である。
【図3C】減塩タイプの食塩組成物(11.3g)中の基本配合量と最終配合量との関係を示す図である。
【図3D】減塩タイプの食塩組成物(100g)中の各成分の最終配合量を使用物質で示した図である。
【図3E】減塩タイプの食塩組成物(11.3g)中の各成分の上限値・下限値を示す図である。
【図4】使用物質の他の例を示す図である。
【図5】食塩組成物(減塩タイプ)の長期安定性試験結果の一例を示す図である。
【図6】食塩組成物(減塩タイプ)の官能試験結果の一例を示す図である。
【図7】食塩組成物(減塩タイプ)の製造工程の一例を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、食塩組成物およびその製造方法に関し、特に、ビタミンとミネラルとをバランス良く含む食塩組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
疲れはさまざまな原因によって発生するものであるが、病気以外の原因としては、「乳酸の蓄積」、「エネルギー代謝の乱れ」、「ストレスの蓄積」が疲れの原因になることが知られている。
【0003】
「乳酸の蓄積」が疲れの原因となる理由は、以下のように考えられている。例えば、激しい運動をすると、体内に摂取された栄養素からエネルギーを生産する際に、酸素を必要とする好気性分解だけではエネルギー生産が間に合わなくなる。そのため酸素を必要としない嫌気性分解によりエネルギー生産が行われて最終生成物として乳酸が発生し、血液中に乳酸濃度が増加して血液のpH値は酸性となる。その結果、酸性となった血液中では種々の酵素の働きが鈍るため体調が崩れて、疲れを感じるようになる。また、乳酸が筋肉に蓄積されると筋肉疲労を起こして疲れを感じるようになる。
【0004】
一方、「エネルギー代謝の乱れ」が疲れの原因となる理由は、次のように考えられている。「エネルギー代謝の乱れ」とは、体内に摂取された糖、タンパク質を効率よくエネルギーとして利用できないときに生じるものであり、この乱れは、エネルギー代謝を行うクエン酸回路が十分に回らなくなる(十分に機能しなくなる)ときに生じるものである。この乱れにより、中間物質であるピルビン酸が体内に蓄積され、蓄積されたピルビン酸が無酸素状態で分解されて乳酸が生成し、生成した乳酸が体内に蓄積する。その結果、上記説明した乳酸の蓄積による疲れを感じるようになる。
【0005】
また、「ストレスの蓄積」が疲れの原因となる理由は、次のように考えられている。ストレスが体内に蓄積されると、エネルギー代謝を効率よく行うために、あるいは、蓄積された乳酸の処理を行うために必要なビタミンやミネラルがストレスを除去するために消費されてしまう。その結果、エネルギー代謝や乳酸の処理に必要なビタミンやミネラルが不足するため「エネルギー代謝の乱れ」や「乳酸の蓄積」が生じて疲れを感じるようになる。
【0006】
従って、疲れを感じにくくするためには、ビタミンやミネラルの不足による「エネルギー代謝の乱れ」を起こさないようにすること、ストレスを上手に管理してストレスが体内に蓄積しないようにすること、激しい運動の後には十分な休養と栄養補給により体内に蓄積された乳酸を分解したり排出すること、が重要である。
【0007】
ここで、「エネルギー代謝」を効率よく行うためのビタミンやミネラルについて詳しく説明する。食物を摂取すると、体内に摂取された食物は分解されて生体の活動を維持するために必要なエネルギーが生成される。このとき、食物に含まれる糖、脂肪またはタンパク質は、まず、図1Aに示す代謝反応において、酵素、補酵素の働きでアセチルCoAに代謝される。次に、生成したアセチルCoAは、続いて図1Bの(a)に示すクエン酸回路において、酵素、補酵素の働きでアセチル基が酸化されて二酸化炭素やGTP(ATP(アデノシン3リン酸))を生成する。続いて、ATPは、図1Bの(b)に示す反応(電子伝達)でADP(アデノシン2リン酸)に変換され、発生するエネルギーが生体の活動を維持するために使用される。このときエネルギーとともに活性酸素も発生するが、活性酸素は酵素(活性酸素除去酵素)により無害化される。
【0008】
図1Aおよび図1Bに示すようにクエン酸回路とその前段および後段に位置する反応では、ビタミンやミネラルが反応を円滑に機能するための補酵素として関与する。このため、上記反応に必要なビタミンやミネラルが不足すると「エネルギー代謝の乱れ」が生じ、体内に摂取された脂肪、タンパク質、糖からエネルギーが効率よく取りだすことができくなる。
【0009】
しかしながら、ビタミンとミネラルは体内で生成することができない。そのためこれらのビタミンとミネラルは、全て食事を通して食品から摂取しなければならない。そこで、「エネルギー代謝の乱れ」を起こすことなくエネルギー代謝を円滑に機能させるために必要なビタミンやミネラルの量について調べてみる。
【0010】
図1Cは、厚生労働省の策定した2005年度版の食事摂取基準(非特許文献1)に基づいて作成した、エネルギー代謝などに関与するビタミンやミネラルの量の一例である。すなわち、図1Cは、日本人の成人男子30〜49歳が1日の食事から摂取しなければならないエネルギー代謝などに関与するビタミンやミネラルの推定平均必要量(または目安量、目標量)および上限値を示したものである。なお、図1Cには示さなかったが、図1Cの成人男子に対応する同年層の成人女子の推定平均必要量等は成人男子の量に比べて若干低い値である。図1Cより、成人男子30〜49歳のビタミンやミネラルの1日の食事摂取基準における推定平均必要量は、ビタミンB1=1.2mg、ビタミンB2=1.3mg、ナイアシン=13mg、ビタミンB6=1.1mg、葉酸=200μg、ビタミンB12=2.0μg、パントテン酸=6.0mg(目安量)、ビタミンC=85mgである。また、ミネラルは、ナトリウム=600mg、カリウム=2000mg(目安量)、マグネシウム=310mg、カルシウム=600mg(目標量)、鉄=6.5mgである。
【0011】
従って、日本人は「エネルギー代謝の乱れ」による疲れを無くしてエネルギー代謝を円滑に機能させるためには、図1Cに示すようなミネラルとビタミンとを必要量(または、目安量、目標量)を毎日の食事を通して食品から摂取しなければならない。
【0012】
ここで、エネルギー代謝などを円滑に機能させるために必要となるビタミンを多く含む食品の一例を以下に示す。ビタミンB1は、落花生(0.85mg/100g)、豚バラ肉(0.62mg/100g)、枝豆(0.32mg/100g)、鮭(0.22mg/100g)に多く含まれる。ビタミンB2は、豚レバー(0.36mg/100g)、納豆(0.56mg/100g)、鯖(0.54mg/100g)、鶏卵(0.48mg/100g)に多く含まれる。ナイアシン(ニコチン酸)は、牛レバー(20mg/100g)、鰹(18mg/100g)、豚肉(11mg/100g)に多く含まれる。ビタミンB6は、牛レバー(0.89mg/100g)、鯖(0.57mg/100g)、大豆(0.53mg/100g)、バナナ(0.38mg/100g)に多く含まれる。葉酸は、牛レバー(275μg/100g)、ほうれん草(100μg/100g)、鮪(35μg/100g)に多く含まれる。ビタミンB12は、アサリ(59.6μg/100g)、牛レバー(52.8μg/100g)、サンマ(10.6μg/100g)に多く含まれる。パントテン酸は、納豆(3.3mg/100g)、アボガド(3.0mg/100g)、ヨーグルト(1.0mg/100g)に多く含まれる。ビタミンCは、ブロッコリー(160mg/100g)、ほうれん草(65mg/100g)、キャベツ(44mg/100g)に多く含まれる。
【0013】
上記に示したように、動物性食品、植物性食品などの食品には、エネルギー代謝を円滑に機能するために必要なビタミンやミネラルを多く含んでいるが、その種類と量はまちまちである。また、エネルギー代謝に必要なビタミンとミネラルを1日の食事摂取基準の必要量だけ全て含む食品はない。
【0014】
従って、ビタミンとミネラルの不足による「エネルギー代謝の乱れ」を防ぐためには、毎日摂取する食品の組み合わせを工夫して、エネルギー代謝に必要なビタミンとミネラルとが1日の食事摂取基準の必要量だけ毎日摂取できるようにする必要がある。
【非特許文献1】日本人の食事摂取基準(2005年版)、第1出版株式会社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、厚生労働省がまとめた平成15年の国民健康・栄養調査報告によれば、日本人が食事から摂取しなければならないビタミンやミネラルについて、多くの人が推定平均必要量まで摂取していないことがわかった。図1D、図1Eに上記報告からビタミンおよびミネラルの推定平均必要量に達しないものの比率(対象年齢:30〜49歳)を整理した結果の一例を示す。
【0016】
図1Dより、推定平均必要量に達しない不足しているビタミンとしては、脂溶性のビタミンA、水溶性のビタミンに属するビタミンB群(ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、葉酸)やビタミンCが挙げられる。また、図1Eより、推定平均必要量に達しない不足しているミネラルとしては、カルシウム、マグネシウム、カリウム、鉄が挙げられる。従って、これらのビタミンやミネラルが一日の食事からかならず必要量だけ摂取されて不足しないようにする工夫が必要である。
【0017】
一方、ナトリウムは、上記説明したビタミンやミネラルのうちで、日本人が推定平均必要量より多く摂取している唯一のミネラルである。すなわち、図1Cよりナトリウムの一日の推定平均必要量は600mg/日(塩化ナトリウム換算で1.5g/日)であるが、日本人の一日の実際の食塩(塩化ナトリウム)摂取量は、図1Fに示すように、平成5年で12.8/日(全体平均)、平成15年で11.2g/日(全体平均)と推定平均必要量に比べてかなり多く摂取しており、推定平均必要量に達しないものはいない。また、日本人の一日の実際の食塩摂取量は、この10年間でやや減少しているものの、図1Fから推定すると、日本人の食塩摂取量は11.2g/日(全体平均)あるいは若干低下する程度で今後の推移するものと思われる。また、平成15年における30〜49歳の食塩摂取量(平均)は全体平均とほぼ同じ量の11.3g/日である。
【0018】
この食塩は、砂糖とともに無くてはならない基本的な調味料である。そのため、食塩は、毎日の調理に必ず使用され、食塩で調理された食品を摂取することにより、食塩は体内に摂取される。また、食塩は、味噌、醤油などの他の調味料を製造するときに原料として使用されるものであるため、味噌、醤油などの他の調味料で調理された食品を摂取することによってもまた食塩は体内に摂取される。
【0019】
ところで、日本人の食塩の摂取量を低減する試みとして、食塩(塩化ナトリウム)の一部を塩化カリウムと塩化マグネシウムで置き換えたもの(減塩)が利用されている。ただし、カリウムとマグネシウムはナトリウムに比べて特有の苦みがあるため、塩化ナトリウムの一部を単純に塩化カリウムと塩化マグネシウムで置き換えたものを減塩としてを食塩の代替物として摂取すると不快な後味が残る。
【0020】
上記説明したように、日本人の中には1日に食事から摂取しなければならないビタミンやミネラルの摂取量が推定平均必要量に達しない人が多くいる。このような人の中には、ビタミンやミネラルの不足に起因する「エネルギー代謝の乱れ」を起こして疲れを生じたり、この疲れが蓄積して慢性疲労に陥っている人も多くいると思われる。
【0021】
この疲れや慢性疲労を解決するためには、「エネルギー代謝」に必要なビタミンやミネラルを適量摂取できるように毎日の食生活を改善すればよい。
【0022】
しかし、上記説明したように、食品に含まれるビタミンやミネラルの種類や量はかなり異なっている。また、毎日の食生活において、摂取する食品の種類は種々変化している。そのため、「エネルギー代謝」を効率的に行うために必要なビタミンやミネラルを毎日適量摂取するためには、穀物、肉類、魚介類、卵類中に含まれるビタミンやミネラルの種類と含有量を調べて必要量のビタミンやミネラルが1日の食事を通して摂取できるような食品の組み合わせを考えなければならない。
【0023】
しかしながら、毎日変化する食生活において、必要なビタミンやミネラルを毎日適量摂取するための食品の組み合わせを考えることは到底不可能であると思われる。そのため、必要なビタミンやミネラルが必要量がバランス良く摂取できないことに起因する「エネルギー代謝の乱れ」による疲れを防止することは、きわめて困難なことと思われる。
【0024】
本発明は、上記説明した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、食生活において食塩代替物として使用され、エネルギー代謝に関与するビタミンやミネラルをバランス良くかつ安定して含むことができる食塩組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記目的を達成するための本発明の食塩組成物は、以下の構成を有する。すなわち、食塩の代替物として使用される食塩組成物であって、食塩の機能を果たすための食塩ベースと、エネルギー代謝の反応を促進する水溶性ビタミンと、前記エネルギー代謝の反応を促進するミネラルと、前記食塩ベースと前記水溶性ビタミンと前記ミネラルとを混合して得られる混合物の苦味を低減して弱酸性にする成分と、を含むことを特徴とする。
【0026】
ここで例えば、前記水溶性ビタミンは、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ナイアシンおよびビタミンCの群の中から選ばれた1種または2種以上のビタミンであることが好ましい。
【0027】
ここで例えば、前記ミネラルは、マグネシウム、または、マグネシウムおよび鉄であることが好ましい。
【0028】
ここで例えば、更に、ミネラルとして、ナトリウムポンプを機能させるためのカリウム、およびまたは、カルシウムポンプを機能させるためのカルシウムとマグネシウム、を含むことが好ましい。
【0029】
ここで例えば、前記成分は、L−リジン塩酸塩とクエン酸とを含むことが好ましい。
【0030】
ここで例えば、前記水溶性ビタミンと前記ミネラルは、前記食塩組成物が着色しない範囲の濃度で含まれていることが好ましい。
【0031】
ここで例えば、前記食塩ベースは、ナトリウムを主成分とする普通塩ベース、または、ナトリウムとカリウムとマグネシウムとを主成分とする減塩ベースであることが好ましい。
【0032】
ここで例えば、前記水溶性ビタミンおよび前記ミネラルは、体内に摂取された糖、脂肪またはタンパク質からアセチルCoAを生成する代謝反応を促進するビタミンおよびミネラルと、前記アセチルCoAを酸化してATP(アデノシン3リン酸)を生成するクエン酸回路を促進するビタミンと、前記アセチルCoAの酸化に用いられる酸素を運搬するヘモグロビンの生成に必要な鉄と、前記ヘモグロビンを運搬する赤血球の生成反応を促進する葉酸と、前記ATPがADPに変換されてエネルギーが取り出されるときに発生する活性酸素を還元する反応を促進するビタミンと、を含むことが好ましい。
【0033】
ここで例えば、前記糖、脂肪またはタンパク質からアセチルCoAを生成する代謝反応を促進するビタミンおよびミネラルは、マグネシウム、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、パントテン酸、およびナイアシンであり、前記クエン酸回路を促進するビタミンは、ビタミンB1、ビタミンB12であり、前記活性酸素を還元する反応を促進するビタミンはビタミンCであることが好ましい。
【0034】
ここで例えば、日本人の一日の食塩摂取量と同量の前記食塩組成物中に含まれる前記水溶性ビタミンと前記ミネラルは、その一部が一日の食事摂取基準の量以下の量で含まれており、前記その一部以外が前記一日の食事摂取基準の量を超える量で含まれていることが好ましい。
【0035】
ここで例えば、前記日本人の一日の食塩摂取量は11.3g/日以下であり、前記一日の食事摂取基準の量は、ビタミンB1が1.2mg、ビタミンB2が1.3mg、ビタミンB6が1.1mg、葉酸が200μg、パントテン酸が6.0mg、ビタミンB12が2.0μg、ビタミンCが85mg、マグネシウが310mg、鉄が6.5mgであることが好ましい。
【0036】
また、本発明の食塩組成物の製造方法は、食塩の代替物として使用される食塩組成物の製造方法であって、エネルギー代謝の反応を促進する水溶性ビタミン成分を計量したのち混合して第1混合物とする工程と、前記エネルギー代謝の反応を促進するミネラル成分を計量したのち混合して第2混合物とする工程と、食塩の機能を果たすための食塩ベース成分と、前記食塩組成物の苦味を低減して弱酸性にする成分とを計量したのち混合して第3混合物とする工程と、前記第1混合物と前記第2混合物と前記第3混合物とを混合して前記食塩組成物とする工程と、前記食塩組成物を計量して紫外線が透過しないように包装する工程と、を有することを特徴とする。
【0037】
ここで例えば、前記水溶性ビタミンは、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ナイアシンおよびビタミンCの群の中から選ばれた1種または2種以上のビタミンであることが好ましい。
【0038】
ここで例えば、前記ミネラルは、マグネシウム、または、マグネシウムおよび鉄であることが好ましい。
【0039】
ここで例えば、更に、ミネラルとして、ナトリウムポンプを機能させるためのカリウム、およびまたは、カルシウムポンプを機能させるためのカルシウムとマグネシウム、を含むことが好ましい。
【0040】
ここで例えば、前記成分は、L−リジン塩酸塩とクエン酸とを含むことが好ましい。
【0041】
ここで例えば、前記水溶性ビタミンと前記ミネラルは、前記食塩組成物が着色しない範囲の濃度で含まれていることが好ましい。
【0042】
ここで例えば、前記食塩ベースは、ナトリウムを主成分とする普通塩ベース、または、ナトリウムとカリウムとマグネシウムを主成分とする減塩ベースであることが好ましい。
【0043】
ここで例えば、前記水溶性ビタミンおよび前記ミネラルは、体内に摂取された糖、脂肪またはタンパク質からアセチルCoAを生成する代謝反応を促進するビタミンおよびミネラルと、前記アセチルCoAを酸化してATP(アデノシン3リン酸)を生成するクエン酸回路を促進するビタミンと、前記アセチルCoAの酸化に用いられる酸素を運搬するヘモグロビンの生成に必要な鉄と、前記ヘモグロビンを運搬する赤血球の生成反応を促進する葉酸と、前記ATPがADPに変換されてエネルギーが取り出されるときに発生する活性酸素を還元する反応を促進するビタミンと、を含むことが好ましい。
【0044】
ここで例えば、前記糖、脂肪またはタンパク質からアセチルCoAを生成する代謝反応を促進するビタミンおよびミネラルは、マグネシウム、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、パントテン酸、およびナイアシンであり、前記クエン酸回路を促進するビタミンは、ビタミンB1、ビタミンB12であり、前記活性酸素を還元する反応を促進するビタミンはビタミンCであることが好ましい。
【0045】
ここで例えば、日本人の一日の食塩摂取量と同量の前記食塩組成物中に含まれる前記水溶性ビタミンと前記ミネラルは、その一部が一日の食事摂取基準の量以下の量で含まれており、前記その一部以外が前記一日の食事摂取基準の量を超える量で含まれていることが好ましい。
【0046】
ここで例えば、前記日本人の一日の食塩摂取量は11.3g/日以下であり、前記一日の食事摂取基準の量は、ビタミンB1が1.2mg、ビタミンB2が1.3mg、ビタミンB6が1.1mg、葉酸が200μg、パントテン酸が6.0mg、ビタミンB12が2.0μg、ビタミンCが85mg、マグネシウが310mg、鉄が6.5mgであることが好ましい。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、食生活において食塩代替物として使用され、エネルギー代謝に関与するビタミンやミネラルをバランス良くかつ安定して含むことができる食塩組成物及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下に図面を参照して、本発明の食塩組成物およびその製造方法について詳しく説明する。ただし、本実施形態に記載されている構成要素、数値などは、特に特定的な記載がない限りは、本発明をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0049】
[用語の定義]
本実施形態の食塩組成物は、食塩の機能を果たすためのベース塩中にビタミンとミネラルとを添加したものである。本明細書では、ベース塩として、主成分である塩化ナトリウム(食塩)に若干の固化防止成分を添加したものを普通塩ベースと称し、主成分として塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウムを含み、若干の固化防止成分と苦味低減成分を添加したものを減塩ベースと称す。また、本明細書では、普通塩ベースにビタミンとミネラルとを添加した本実施形態の食塩組成物を普通塩タイプの食塩組成物と称し、減塩ベースにビタミンとミネラルとを添加した本実施形態の食塩組成物を減塩タイプの食塩組成物と称す。また、普通塩タイプの食塩組成物と減塩タイプの食塩組成物を総称する場合は、単に本実施形態の食塩組成物と称する。
【0050】
<第1の実施形態>
[特徴]
食塩は、日本人の食生活に無くてはならない調味料である。本実施形態の食塩組成物は、食塩の代替物として食塩と同様に毎日の食生活で使用される調味料であり、食塩の機能を果たすためのベース塩中に「エネルギー代謝」を効率的に行うために必要なビタミンやミネラルをバランス良く適量添加したものである。また、本実施形態の食塩組成物は、ビタミンを長期間安定に保持するように弱酸性に維持されている。さらに、本実施形態の食塩組成物は食塩の代替物として使用されるために食塩と同程度の色と塩味を有する。「エネルギー代謝」とは、脂肪、蛋白質、糖を代謝してエネルギーを効率よくを取り出すためのクエン酸回路と、クエン酸回路の前段に位置する代謝反応および後段に位置する反応(ATPからエネルギーを生成し活性酸素が発生する反応)の総称である。そのため、本実施形態の食塩組成物が食塩の代わりに調味料として使用された食品を摂取することにより、本来の食品中に含まれるビタミンやミネラルの量をいちいち計算することなく、1日の食事から摂取しなければならない「エネルギー代謝」を効率的に行うために必要なビタミンやミネラルをバランス良く必要量摂取することができる。
【0051】
以下、本実施形態の食塩組成物に含まれるベース塩、ビタミンおよびミネラルの種類および含有量について説明する。
【0052】
[ベース塩]
本実施形態の食塩組成物は、食塩の機能を果たすためのベース塩中にビタミンとミネラルとを添加したものであり、ベース塩として、普通塩ベースを用いる。普通塩ベースは、主成分である塩化ナトリウム(食塩)に若干の固化防止成分を添加したものであり、従来から食塩として使用されている塩である。普通塩ベースの食塩組成物を普通塩タイプの食塩組成物と称する。
【0053】
[ビタミンとミネラルの種類]
次に、本実施形態の食塩組成物に含まれるビタミンとミネラルの種類について説明する。本実施形態の食塩組成物は、通常の食塩の代替物として食塩と同様に使用される調味料であり、普通塩ベースに「エネルギー代謝」を効率的に行うために必要なビタミンとミネラルをそれぞれ適量ずつ添加したものである。
【0054】
[クエン酸回路の前段に位置する代謝反応:図1A]
まず、「エネルギー代謝」の最初の反応であるクエン酸回路の前段に位置する代謝反応に必要なビタミン・ミネラルについて説明する。クエン酸回路の前段に位置する反応とは、図1Aに示すようにクエン酸回路にアセチルCoAを供給する脂肪、蛋白質、糖の代謝反応のことである。
【0055】
これらの反応では、以下に示すビタミンとミネラルが補酵素として関与する。すなわち、糖の代謝反応では、ピルビン酸を生成するときにビタミンB12が関与し、ピルビン酸からアセチルCoAを生成するときにビタミンB1、パントテン酸、ナイアシン、マグネシウムが関与する。また、脂肪の代謝反応では、アセチルCoAを生成するときにビタミンB12、パントテン酸、ナイアシンが関与する。さらに、蛋白質の代謝反応では、ピルビン酸を生成するときにビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシンが関与し、ピルビン酸からアセチルCoAを生成するときにビタミンB2が関与する。また、α−ケトグルタミン酸を生成するときにビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシンが関与し、コハク酸を生成するときにビタミンB1、パントテン酸が関与する。従って、上記代謝反応で必要なビタミンとミネラルは、ビタミンB1、B2、B6,B12、パントテン酸、ナイアシン、マグネシウムである。
【0056】
[クエン酸回路:図1B]
次に、クエン酸回路に必要なビタミンとミネラルについて説明する。クエン酸回路とは、脂肪、蛋白質、糖の代謝反応で生成したアセチルCoAを図1Bの(a)に示すように(1)〜(9)の連続する反応によって最終的にアセチル基を酸化して二酸化酸素とGTP(ATP)を生成する反応である。このとき、(6)のスクシニルCoAなどからコハク酸やGTP(ATP)などが生成する反応では、補酵素としてビタミンB1が関与し、(7)のコハク酸などからフマル酸が生成する反応では補酵素としてビタミンB12が関与し、(9)の1−リンゴ酸からオキサロ酢酸を生成する反応では補酵素としてビタミンB12が関与する。
【0057】
また、図には記載されていないが、クエン酸回路ではアセチルCoAを酸化するために十分な酸素を供給する必要がある。この酸素は、ヘモグロビンと結合し、ヘモグロビンを運搬する赤血球によって細胞内に供給される。そのため、十分な酸素を供給するためには体内に十分な量のヘモグロビンと赤血球が必要である。このヘモグロビンの生成には鉄とビタミンB6が関与する再合成蛋白質が必要であり、また、正常な形状の赤血球を生成するためには補酵素として葉酸とビタミン12が関与する。従って、クエン酸回路で必要なビタミンとミネラルは、ビタミンB6、B12、葉酸、鉄である。
【0058】
[クエン酸回路の後段に位置する反応:図1B]
クエン酸回路の後段に位置する反応とは、図1Bの(b)に示すようにクエン酸回路で生成したATPをアデノシン2リン酸に変えてエネルギーを取り出すときに発生する活性酸素を酵素で還元して除去する反応である。この活性酸素の還元除去で必要なビタミンは、活性酸素除去酵素であるビタミンCである。
【0059】
以上説明したように、「エネルギー代謝」で必要なビタミンとミネラルとは、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、パントテン酸、ナイアシン、葉酸、ビタミンC、マグネシウム、鉄である。またこれらのビタミンは、水溶性ビタミンと呼ばれる群に属するものである。水溶性ビタミンは、水に溶けやすいビタミンである。そのため、水溶性ビタミンを普通塩ベースに混合して製造される普通塩タイプの食塩組成物を食塩と同様に調理料として使用すると、食塩組成物中に含まれるビタミンは水に溶けて水溶液中に分散することができる。そのため、水溶性ビタミンを含む本実施形態の食塩組成物は、水を含む食品あるいは水を用いて調理された食品中では水に溶けて食品中に分散しやすくなり食品の一部に偏析することもない。このため、水溶性ビタミンを含む本実施形態の食塩組成物を用いて調理された食品を摂取すると、適量の水溶性ビタミンを摂取しやすくなる。
【0060】
[ビタミン・ミネラルの基本配合の考え方]
次に、本実施形態の食塩組成物に含まれる「エネルギー代謝」に必要なビタミンとミネラルの基本配合の考え方について説明する。
【0061】
日本人が一日に摂取する食塩摂取量は、平成15年の全体平均では11.2g/日、30〜49歳の平均では11.3g/日である。また、図1Fの傾向から、今後の日本人が一日に摂取する食塩摂取量は、11.3g/日程度か若干低い値で推移するものと思われる。そこで、本実施形態の普通塩タイプの食塩組成物に含まれるビタミンとミネラルの基本配合量として、普通塩タイプの食塩組成物11.3gに対して「エネルギー代謝」に必要なビタミンとミネラル(ナトリウムを除く)とが食事摂取基準の推定平均必要量(または目安量、目標量)含まれるように設定する。この結果、本実施形態の普通塩タイプの食塩組成物を11.3g/日ずつ毎日摂取した場合に、「エネルギー代謝」に必要なビタミンとミネラルを、食事摂取基準の推定平均必要量(または目安量、目標量)摂取することができる。
【0062】
なお、本実施形態の普通塩タイプの食塩組成物は調味料として各種食品に添加して使用する場合には、食品自体にもビタミンとミネラルが含まれているためこの食品を摂取すると、食事摂取基準の推定平均必要量(または目安量、目標量)以上のビタミンとミネラルが摂取されることも考えられる。しかし、図1Cに示すように、「エネルギー代謝」に必要なビタミンとミネラルについては、摂取量の上限値が決められていないものが多く、決められていてもその上限値は推定平均必要量(または目安量、目標量)に比べてかなり大きい値を示している。上限値が設定されていないのは、推定平均必要量(または目安量、目標量)より多く体内に摂取されてもそれほど多くない場合には体外に排出されるため害にならないからである。そのため、本実施形態の普通塩タイプの食塩組成物を11.3g/日ずつ毎日、各種食品とともに摂取した場合には、「エネルギー代謝」に必要なビタミンとミネラルの推定平均必要量(または目安量、目標量)を確実に摂取できる。また、多少の取りすぎがあったとしてもそれによる弊害は生じにくいと考えられる。
【0063】
[食塩組成物(11.3g)中のミネラル、ビタミンの基本配合量:図2A]
次に、上記設定された普通塩タイプの食塩組成物の基本配合量について具体的に説明する。図2Aは、普通塩タイプの食塩組成物11.3g中に含まれる各ミネラル、ビタミン成分の基本配合量を示す図である。図には、参考として各ミネラル、ビタミン成分の1日の食事摂取基準量を示す。
【0064】
図2Aに示すように、普通塩タイプの食塩組成物11.3g中には、「エネルギー代謝」で必要となるビタミンとミネラルが1日の食事摂取基準の推定平均必要量(または目安量)含まれている。すなわち、ビタミンとして、ビタミンB1(チアミン)1.2mg、ビタミンB2(リボフラビン)1.3mg、ナイアシン13mg、ビタミンB6(ピリドキシン)1.1mg、葉酸200μg、ビタミンB12(シアノコバラミン)2.0μg、パントテン酸6.0mg(目安量)、ビタミンC(L−アスコルビン酸)85mgが含まれている。また、ミネラルとして、マグネシウム310mg、鉄6.5mgが含まれている。なお、図には参考としてナトリウムの配合量も記載したが、その配合量が1日の食事摂取基準量を超えているのは、本食塩組成物は従来の食塩と同様に11.3g/日摂取されることを前提としたためである。
【0065】
[食塩組成物(100g)中の基本配合量(使用物質換算):図2B]
次に、上記設定された基本配合量含む普通塩タイプの食塩組成物の各成分の使用物質を決定した。使用物質は普通塩ベースと混合して使用されるため着色していないもの、安定性がよいものなどの基準により選択された。図2Bに決定された各成分の使用物質と、使用物質に換算された基本配合量を示す。
【0066】
以下、選択された各成分の使用物質の色、性質、普通塩タイプの食塩組成物100g中の含有量を説明する。
【0067】
マグネシウム成分
硫酸マグネシウムと炭酸マグネシウムの2種類が選択された。硫酸マグネシウムは着色しておらず、塩化カリウムの強酸味の緩和のために選択され、食塩組成物に19.0g添加された。但し、硫酸マグネシウムは苦味があった。炭酸マグネシウムは、着色しておらず、苦味が無く、塩化ナトリウムの固化防止作用を有するために選択され、食塩組成物に0.4g添加された。
【0068】
鉄成分
ピロリン酸第2鉄が選択され、食塩組成物に0.192g添加された。ピロリン酸第2鉄は安定性が高く、苦味が無いが、薄い黄橙色を示すものであった。
【0069】
ビタミンB1
チアミン硝酸塩が選択され、食塩組成物に0.0132g添加された。チアミン硝酸塩は、着色していないが、苦味があり、アルカリ性に弱く、加熱調理すると損失しやすいものであった。
【0070】
ビタミンB2
リボフラビンが選択され、食塩組成物に0.0116g添加された。ただし、リボフラビンは、濃い黄橙色であり、苦味があり、アルカリ性に弱いものであった。
【0071】
ナイアシン
ニコチン酸アミドが選択され、食塩組成物に0.116g添加された。ニコチン酸アミドは着色しておらず、僅かに苦味があり、アルカリ性に弱いものであった。
【0072】
ビタミンB6
ピリドキシン塩酸塩を選択し、食塩組成物に0.0120g添加された。ピリドキシン塩酸塩は着色しておらず、苦味もない。
【0073】
葉酸
葉酸が選択され、食塩組成物に0.0018g添加された。葉酸は苦味はないが、濃い黄橙色を示した。
【0074】
ビタミンB12
シアノコバラミン0.1%混合物が選択され、食塩組成物に0.0180g添加された。シアノコバラミンは薄い赤紫の色で、苦味がないものであった。また、シアノコバラミンは植物性食品には含まれないため、植物性食品中心に食事をする人は摂取しにくいビタミンである。
【0075】
パントテン酸
パントテン酸カルシウムが選択され、食塩組成物に0.0580g添加された。パントテン酸カルシウムは着色しておらず苦味もなかった。
【0076】
ビタミンC
L−アスコルビン酸が選択され、食塩組成物に0.753g添加された。L−アスコルビン酸は着色しておらず苦味もなかった。
【0077】
[普通塩タイプの食塩組成物の最終配合:図2C、図2D]
次に、図2Bに示す使用物質と基本配合量を有する普通塩タイプの食塩組成物を調製した。そして、得られた食塩組成物の色と味(塩味)とを食塩の色と味(塩味)と比較して、普通塩タイプの食塩組成物の性能について検討した。その結果、調製した食塩組成物の色は、食塩の白色に比べて黄橙色に着色しており、調製した食塩組成物の味(塩味)は食塩に比べて苦味があることがわかった。そこで、食塩組成物の着色および苦味の原因を検討し、次に、検討結果に基づいて、食塩組成物が着色せず、かつ食塩に近い味(塩味)となる配合量として、図2Cと図2Dに示す食塩組成物の最終配合量を見出した。図2Cは、食塩組成物11.3g中に含まれるミネラル、ビタミンの最終配合量であり、図2Dはに使用物質に換算された食塩組成物100g中のミネラル、ビタミンの最終配合量である。
【0078】
以下、食塩組成物の着色および苦味の原因分析の検討結果について説明し、次に、食塩組成物の最終配合量について説明する。
【0079】
[色]
食塩組成物の着色の原因は、使用物質として、鉄分に薄い黄橙色のピロリン酸第2鉄を、ビタミンB2として濃い黄橙色のリボフラビンを、葉酸に濃い黄橙色の葉酸を使用したためである。このため得られる食塩組成物は灰色に着色した。着色は、食塩組成物の薬効に変化を与えないが、白色の食塩組成物を希望するユーザに対しては好ましくないと判断される場合も考えられる。そこで、各成分の含有量を食塩組成物が着色しない程度まで低減することとした。その一例を図2Cに示し、以下具体的に説明する。
【0080】
すなわち、鉄は、食塩組成物を白色に維持するため基本配合量6.5mgを最終配合量として4.2mgに低減した。その結果、図2Cに示すように最終配合量中に含まれる鉄分は食事摂取基準量の65%となった。
【0081】
同様に、ビタミンB2(リボフラビン)は、食塩組成物を白色に維持するため基本配合量1.3mgを最終配合量として0.57mgに低減した。その結果、最終配合量中に含まれるビタミンB2(リボフラビン)は図2Cに示すように食事摂取基準量の44%となった。
【0082】
また、葉酸は、食塩組成物を白色に維持するため基本配合量0.2mgを最終配合量として0.11mgに低減した。その結果、最終配合量中に含まれる葉酸は図2Cに示すように食事摂取基準量の57%となった。
【0083】
[塩味]
食塩組成物の苦味の原因は、使用物質として、マグネシウム成分に硫酸マグネシウムを、ビタミンB1として、チアミン硝酸塩を、ビタミンB2としてリボフラビンを使用したためである。このため得られる食塩組成物は苦味を生じた。苦味は、食塩組成物に含まれるビタミンやミネラルの薬効に変化を与えないが、苦味はユーザに不快感な味覚を与えるので好ましくない。そこで、苦味を示す硫酸マグネシウムおよびビタミンB2(リボフラビン)を低減した。但し、ビタミンB1(チアミン硝酸塩)は、摂取量が少ない、熱損失量が大きいため増加させた。そして、食塩組成物の苦味を低減成分としてL−リジン塩酸塩とクエン酸を添加することにより食塩組成物が苦味を感じないようにした。以下、具体的に説明する。
【0084】
すなわち、硫酸マグネシウムは、基本配合量19mgを最終配合量として9mgに低減した。その結果、図2Cに示すように最終配合量中に含まれるマグネシウム分は食事摂取基準量の50%となった。
【0085】
また、ビタミンB2(リボフラビン)は、着色防止のために基本配合量1.3mgを最終配合量として0.57mgに低減しているので、苦味も低減されている。最終配合量中に含まれるビタミンB2(リボフラビン)は食事摂取基準量の44%である。
【0086】
一方、ビタミンB1(チアミン硝酸塩)は、最終配合量11mgを基本配合量1.2mgより増加させた(約9.2倍)。この理由は、ビタミンB1の摂取量が推定平均必要量に達しない者の比率が高い(図1D参照)、ビタミンB1は他のビタミンに比べて加熱調理中に損失する割合が極めて高い、ビタミンB1は過剰に摂取されても排出されるので悪影響を及ぼさない(図1C参照、上限値設定無し)、マグネシウムに比べて食塩組成物中の配合量がかなり低い等の理由によりものである。
【0087】
なお、味には影響しないが、ビタミンB12(シアノコバラミン0.1%混合物)は、最終配合量0.023mgを基本配合量0.002mgより増加させた(約11.3倍)。この理由は、ビタミンB12は植物性食品に含まれていないため植物性食品中心に食事をする人は摂取しにくい、ビタミンB12は過剰に摂取されても排出されるので悪影響を及ぼさない(図1C参照、上限値設定無し)、食塩組成物中の配合量が他の成分に比べてかなり低い等の理由によるものである。
【0088】
[苦味低減成分]
上記のように、マグネシウム成分、ビタミンB2(リボフラビン)を低減しビタミンB1(チアミン硝酸塩)を増加した結果、得られた食塩組成物の味は食塩に比べて苦味があったので、苦味を低減し食塩と同程度の塩味とするために、苦味低減成分としてL−リジン塩酸塩とクエン酸を添加した。図2Dに示すように食塩組成物の最終配合量中には、苦味低減成分として食塩組成物100gに対してL−リジン塩酸塩を1.5gとクエン酸を2.0g含んでいる。L−リジン塩酸塩は甘みを有する成分であり、クエン酸は、硫酸マグネシウム、ビタミンB1(チアミン硝酸塩)、ビタミンB2(リボフラビン)の苦味を低減する成分である。そのため、最終配合量の食塩組成物を食塩とほぼ同等の味とすることができた。なお、クエン酸は後述するpH調整にも寄与する成分である。
【0089】
[pH調整]
基本配合量の食塩組成物はpHが8.0でアルカリ性であり、この食塩組成物に含まれるビタミンB群は分解されやすく長期安定性に欠けることがわかった。そこで、最終配合量の食塩組成物では、食塩と同程度の色と塩味とした後、食塩組成物のpHが6.8の弱酸性となるように調整した。この調整はクエン酸とビタミンCを用いて行った。食塩組成物を弱酸性(例えば、pH6.8)にするとビタミンB群は長期間保存しても分解されないため食塩組成物の長期安定性が増加した。この調整は、クエン酸およびビタミンCを用いて調整した。図2Dの最終配合量の食塩組成物におけるクエン酸2.0gのうち、1gはpH調整用のクエン酸の量であり、残りの1gは苦味低減用のクエン酸の量である。またビタミンCは図2Cに示すように基本配合量85mgに対して最終配合量90mgとpH調整用に5mg(6%)ほどビタミンCを増加した。
【0090】
以上説明したように、図2Cに示す最終配合量を有する普通塩タイプの食塩組成物、または図2Dに示す使用物質に換算された最終配合量を有する食塩組成物は、食塩と同程度の色および味を有するものである。
【0091】
[普通塩タイプの食塩組成物の上限、下限:図2E]
上記説明したように、図2C、図2Dに示す最終配合量を有する普通塩タイプの食塩組成物は、食塩と同程度の色および塩味を有し、長期安定性が良いものである。しかしながら、本実施形態の普通塩タイプの食塩組成物は、最終配合量以外の配合値に各成分の割合を多少変化させても食塩と同程度の色と塩味、あるいは、食塩と同程度の塩味を示すことがわかった。
【0092】
そこで、普通塩タイプの食塩組成物中の各成分の上限値と下限値について検討した結果を図2Eに示す。図2Eの(a)は、食塩組成物に含まれるビタミンとミネラルの下限値、最適値、上限値を示し、図2Eの(b)は、食塩組成物に含まれるビタミンとミネラルの下限値、最適値、上限値を使用物質に換算して示したものである。
【0093】
なお、ビタミンB1と葉酸、鉄成分を食塩組成物中に上限値まで入れた場合、食塩組成物の味は食塩と同程度の塩味が得られるが、食塩組成物が灰色に着色する。着色は、食塩組成物の薬効に変化を与えないが、白色の食塩組成物を希望する場合には、上限値まで入れず着色しない範囲(最適配合値以下)に抑えればよい。
【0094】
以上説明したように、本実施形態の食塩組成物は食塩の機能を果たすためのベース塩中に「エネルギー代謝」を効率的に行うために必要なビタミンやミネラルをバランス良く適量添加したものである。また、本実施形態の食塩組成物は、ビタミンを長期間安定に保持するように弱酸性に維持されている。さらに、本実施形態の食塩組成物は食塩の代替物として使用されるために食塩と同程度の色と塩味を有する。そのため、本実施形態の食塩組成物が食塩の代わりに調味料として使用された食品を摂取することにより、本来の食品中に含まれるビタミンやミネラルの量をいちいち計算することなく、1日の食事から摂取しなければならない「エネルギー代謝」を効率的に行うために必要なビタミンやミネラルをバランス良く必要量摂取することができる。
【0095】
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態の食塩組成物について説明する。なお、以下の説明では、第1の実施形態の食塩組成物と共通する部分の説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0096】
[特徴]
本実施形態の食塩組成物は、食塩の代替物として食塩と同様に毎日の食生活で使用される調味料である。本実施形態の食塩組成物が第1の実施形態の食塩組成物と異なる点は、食塩の機能を果たすためのベース塩としてナトリウムの一部をカリウム、マグネシウムで置き換えた減塩ベースを用いる点とミネラルとしてカルシウムを含む点である。そのため、本実施形態の食塩組成物は、第1の実施形態の食塩組成物と同様に「エネルギー代謝」を効率的に行うことができるばかりでなく、「ナトリウムポンプ」と「カルシウムポンプ」を円滑に機能させることができる。また、本実施形態の食塩組成物は、ビタミンを長期間安定に保持するように弱酸性に維持されている。さらに、本実施形態の食塩組成物は食塩の代替物として使用されるために食塩と同程度の色と塩味を有する。「エネルギー代謝」とは、脂肪、蛋白質、糖を代謝してエネルギーを効率よくを取り出すためのクエン酸回路と、クエン酸回路の前段に位置する代謝反応および後段に位置する反応(ATPからエネルギーを生成し活性酸素が発生する反応)の総称である。「ナトリウムポンプ」とはカリウムの働きで細胞内に含まれる余分なナトリウムを細胞外に排出して濃度を一定に保つ働きのことであり、「カルシウムポンプ」とは、筋肉の働きを円滑に行う働きのことであり、カルシウムが筋肉を収縮し、収縮した筋肉内のカルシウムをマグネシウムが関与して生成されるエネルギーを用いて吸い出して筋肉を弛緩させる。そのため、本実施形態の食塩組成物を調味料として使用した食品を摂取することにより、本来の食品中に含まれるビタミンやミネラルの量をいちいち計算することなく、1日の食事から摂取しなければならない「エネルギー代謝」、「ナトリウムポンプ」「カルシウムポンプ」を円滑に行うビタミンやミネラルをバランス良く必要量摂取することができる。
【0097】
以下、本実施形態の食塩組成物に含まれるベース塩、ビタミンおよびミネラルの種類および含有量について説明する。
【0098】
[ベース塩]
本実施形態の食塩組成物は、食塩の機能を果たすためのベース塩である減塩中にビタミンとミネラルとを添加したものであり、ベース塩として、減塩ベースを用いる。減塩ベースは、主成分として塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウムを含み、若干の固化防止成分と苦味低減成分を添加したものである。減塩ベースは、日本人の塩化ナトリウムの取りすぎを防ぐために塩化ナトリウムの一部を塩化カリウム、硫酸マグネシウムで置き換えたものである。但し、塩化カリウム、硫酸マグネシウムは苦味があるので、その苦みを抑えて塩化ナトリウム(食塩)とほぼ同じ塩味となるように塩化カリウム、硫酸マグネシウムの量が調整され、苦味低減成分としてL−リジンとクエン酸を含むものである。減塩ベースの食塩組成物を減塩タイプの食塩組成物と称する。
【0099】
[ビタミンとミネラルの種類]
本実施形態の食塩組成物には、「エネルギー代謝」、「ナトリウムポンプ」、「カルシウムポンプ」を円滑に機能させるために必要なビタミンとミネラルが適量ずつ含まれている。ここで、「エネルギー代謝」に必要なビタミンとミネラルは、第1の実施形態で説明した内容と同じであるので、ここでの説明は重複するので省略し、「ナトリウムポンプ」、「カルシウムポンプ」についてのみ説明す。
する。
【0100】
[ナトリウムポンプ]
ナトリウムポンプとは、細胞内にナトリウムが多く入ってくると、細胞外からカリウムを取り込むと同時に余分なナトリウムを細胞外に排出してナトリウムを一定の濃度に保つ働きをいう。ナトリウムポンプの役目をするのはカリウムであり、ナトリウムポンプにより、細胞内のナトリウのバランスが保たれ、血圧の上昇が抑えられる。また、カリウムはくみ出したナトリウムを体外に排出する役目もする。
【0101】
[カルシウムポンプ]
筋肉が収縮するときには、カルシウムが中心的な役割を果たす。次に収縮した筋肉を弛緩させるために筋肉小胞体がカルシウムポンプという機構を働かせて、筋肉細胞内のカルシウムを吸い出し、それにより筋肉の収縮がとかれ筋肉が弛緩する。この機構は「エネルギー代謝」で生成するATPから取り出したエネルギーを用いて行う。このATPを効率的に生成するためには「エネルギー代謝」の補酵素としてマグネシウムが必要である。したがって、筋肉の収縮と弛緩を円滑に行うためには、カルシウムとマグネシウムが必要である。
【0102】
[ビタミン・ミネラルの基本配合の考え方]
次に、本実施形態の食塩組成物に含まれる「エネルギー代謝」、[ナトリウムポンプ]、[カルシウムポンプ]に必要なビタミンとミネラルの基本配合の考え方について説明する。
【0103】
本実施形態の減塩タイプの食塩組成物に含まれるビタミンとミネラルの基本配合量として、減塩タイプの食塩組成物11.3gに対して「エネルギー代謝」[ナトリウムポンプ]、[カルシウムポンプ]に必要なビタミンとミネラル(ナトリウムを除く)とが食事摂取基準の推定平均必要量(または目安量、目標量)含まれるように設定する。ただし、減塩ベースは、減塩の味(塩味)が食塩と同程度の塩味となるよう調整されたものであるので、カリウム、マグネシウムの量は食事摂取基準の推定平均必要量以下であっても変更しない。この結果、本実施形態の減塩タイプの食塩組成物を11.3g/日ずつ毎日摂取した場合に、「エネルギー代謝」に必要なビタミンとミネラルを、食事摂取基準の推定平均必要量(または目安量、目標量)摂取することができる。また、[ナトリウムポンプ]、[カルシウムポンプ]に必要なミネラルであるカリウム、マグネシウム、カルシウムも合わせて摂取することができる。
【0104】
なお、本実施形態の減塩タイプの食塩組成物は調味料として各種食品に添加して使用する場合には、食品自体にもビタミンとミネラルが含まれているためこの食品を摂取すると、食事摂取基準の推定平均必要量(または目安量、目標量)以上のビタミンとミネラルが摂取されることも考えられる。しかし、図1Cに示すように、「エネルギー代謝」に必要なビタミンとミネラルについては、摂取量の上限値が決められていないものが多く、決められていてもその上限値は推定平均必要量(または目安量、目標量)に比べてかなり大きい値を示している。上限値が設定されていないのは、推定平均必要量(または目安量、目標量)より多く体内に摂取されてもそれほど多くない場合には体外に排出されるため害にならないからである。そのため、本実施形態の減塩タイプの食塩組成物を11.3g/日ずつ毎日、各種食品とともに摂取した場合には、「エネルギー代謝」に必要なビタミンとミネラルの推定平均必要量(または目安量、目標量)を確実に摂取できる。また、多少の取りすぎがあったとしてもそれによる弊害は生じにくいと考えられる。
【0105】
[食塩組成物(11.3g)中のミネラル、ビタミンの基本配合量:図3A]
次に、上記設定された減塩タイプの食塩組成物の基本配合量について具体的に説明する。図3Aは、減塩タイプの食塩組成物11.3g中に含まれる各ミネラル、ビタミン成分の基本配合量を示す図である。図には、参考として各ミネラル、ビタミン成分の1日の食事摂取基準量を示す。
【0106】
図3Aに示すように、減塩タイプの食塩組成物11.3g中には、「エネルギー代謝」で必要となるビタミンとミネラルが1日の食事摂取基準の推定平均必要量(または目安量)含まれている。また、[ナトリウムポンプ]、[カルシウムポンプ]で必要となるミネラルも含まれている。すなわち、ビタミンとして、ビタミンB1(チアミン)1.2mg、ビタミンB2(リボフラビン)1.3mg、ナイアシン13mg、ビタミンB6(ピリドキシン)1.1mg、葉酸200μg、ビタミンB12(シアノコバラミン)2.0μg、パントテン酸6.0mg(目安量)、ビタミンC(L−アスコルビン酸)85mgが含まれている。また、ミネラルとして、カリウム1245mg、マグネシウム154.7mg、カルシウム600mg、鉄6.5mgが含まれている。さらに、苦味低減成分としてL−リジン塩酸塩が113mg、クエン酸113mgが含まれている。なお、図には参考としてナトリウムの配合量も記載したが、その配合量が1日の食事摂取基準量を超えているのは、本食塩組成物は従来の食塩と同様に11.3g/日摂取されることを前提としたためである。
【0107】
[食塩組成物(100g)中の基本配合量(使用物質換算):図3B]
次に、上記設定された基本配合量含む減塩タイプの食塩組成物の各成分の使用物質を決定した。使用物質は減塩ベースと混合して使用されるため着色していないもの、安定性がよいものなどの基準により選択された。図3Bに決定された各成分の使用物質と、使用物質に換算された基本配合量を示す。
【0108】
以下、選択された各成分の使用物質の色、性質、減塩タイプの食塩組成物100g中の含有量を説明する。
【0109】
カリウム成分
塩化カリウムが選択され、食塩組成物に21.0g添加された。塩化カリウムは着色しておらず、安定性が高く、塩化ナトリウムに近い味を示すため選択された。
【0110】
マグネシウム成分
硫酸マグネシウムと炭酸マグネシウムの2種類が選択された。硫酸マグネシウムは着色しておらず、塩化カリウムの強酸味の緩和のために選択され、食塩組成物に9.0g添加された。但し、硫酸マグネシウムは苦味があった。炭酸マグネシウムは、着色しておらず、苦味が無く、塩化ナトリウムの固化防止作用を有するために選択され、食塩組成物に0.4g添加された。
【0111】
カルシウム成分
炭酸カルシウムが選択され、食塩組成物に13.26g添加された。炭酸カルシウムは着色しておらず、安定性が高く、苦味は無かった。
【0112】
鉄成分
ピロリン酸第2鉄が選択され、食塩組成物に0.192g添加された。ピロリン酸第2鉄は安定性が高く、苦味が無いが、薄い黄橙色を示すものであった。
【0113】
苦味低減成分
L−リジン塩酸塩とクエン酸が選択され、食塩組成物にそれぞれ1gずつ添加された。
【0114】
ビタミンB1
チアミン硝酸塩が選択され、食塩組成物に0.0132g添加された。チアミン硝酸塩は、着色していないが、苦味があり、アルカリ性に弱く、加熱調理すると損失しやすいものであった。
【0115】
ビタミンB2
リボフラビンが選択され、食塩組成物に0.0116g添加された。ただし、リボフラビンは、濃い黄橙色であり、苦味があり、アルカリ性に弱いものであった。
【0116】
ナイアシン
ニコチン酸アミドが選択され、食塩組成物に0.116g添加された。ニコチン酸アミドは着色しておらず、僅かな苦味があり、アルカリ性に弱いものであった。
【0117】
ビタミンB6
ピリドキシン塩酸塩を選択し、食塩組成物に0.0120g添加された。ピリドキシン塩酸塩は着色しておらず、苦味もないものであった。
【0118】
葉酸
葉酸が選択され、食塩組成物に0.0018g添加された。葉酸は苦味はないが、濃い黄橙色を示するものであった。
【0119】
ビタミンB12
シアノコバラミン0.1%混合物が選択され、食塩組成物に0.0180g添加された。シアノコバラミンは薄い赤紫の色で、苦味がないものであった。また、シアノコバラミンは植物性食品には含まれないため、植物性食品中心に食事をする人は摂取しにくいビタミンである。
【0120】
パントテン酸
パントテン酸カルシウムが選択され、食塩組成物に0.0580g添加された。パントテン酸カルシウムは着色しておらず苦味もないものであった。
【0121】
ビタミンC
L−アスコルビン酸が選択され、食塩組成物に0.753g添加された。L−アスコルビン酸は着色しておらず苦味もなかった。
【0122】
[減塩タイプの食塩組成物の最終配合:図3C、図3D]
次に、図3Bに示す使用物質と基本配合量を有する普通塩タイプの食塩組成物を調製した。そして、得られた食塩組成物の色と味とを食塩の色と味と比較して、普通塩タイプの食塩組成物の性能について検討した。その結果、調製した食塩組成物の色は、食塩の白色に比べて黄橙色に着色しており、調製した食塩組成物の味は食塩に比べてやや苦味があることがわかった。また、食品衛生法では、食品中に含まれるカルシウム量を1%未満としなければならないことがわかった。そこで、カルシウム量を1%未満とした食塩組成物の着色および苦味の原因を検討し、次に、検討結果に基づいて、食塩組成物が着色せず、かつ食塩に近い味となる配合量として、図3Cと図3Dに示す食塩組成物の最終配合量を見出した。図3Cは、食塩組成物11.3g中に含まれるミネラル、ビタミンの最終配合量であり、図3Dはに使用物質に換算された食塩組成物100g中のミネラル、ビタミンの最終配合量である。
【0123】
以下、食塩組成物の着色および苦味の原因分析の検討結果について説明し、次に、食塩組成物の最終配合量について説明する。
【0124】
[色]
食塩組成物の着色の原因は、使用物質として、鉄分に薄い黄橙色のピロリン酸第2鉄を、ビタミンB2として濃い黄橙色のリボフラビンを、葉酸に濃い黄橙色の葉酸を使用したことである。このため得られる食塩組成物は白色でなく灰色に着色した。着色は、食塩組成物の薬効に変化を与えないが、白色の食塩組成物を希望するユーザに対しては好ましくないと判断される場合も考えられる。そこで、各成分の含有量が着色しない程度まで低減することとした。その一例を図3Cに示す。
【0125】
すなわち、鉄は、食塩組成物を白色に維持するため基本配合量6.5mgを最終配合量として4.2mgに低減した。その結果、図3Cに示すように最終配合量中に含まれる鉄分は食事摂取基準量の65%となった。
【0126】
同様に、ビタミンB2(リボフラビン)は、食塩組成物を白色に維持するため基本配合量1.3mgを最終配合量として0.57mgに低減した。その結果、最終配合量中に含まれるビタミンB2(リボフラビン)は図3Cに示すように食事摂取基準量の44%となった。
【0127】
また、葉酸は、食塩組成物を白色に維持するため基本配合量0.2mgを最終配合量として0.11mgに低減した。その結果、最終配合量中に含まれる葉酸は図3Cに示すように食事摂取基準量の57%となった。
【0128】
[塩味]
食塩組成物の苦味の原因は、減塩ベースの配合が適切でなく減塩ベース単独でもやや苦味を生じたことと、苦味を示すチアミン硝酸塩(ビタミンB1)とリボフラビン(ビタミンB2)を使用したことである。苦味は、食塩組成物に含まれるビタミンやミネラルの薬効に変化を与えないが、苦味はユーザに不快感な味覚を与えるので好ましくない。そこで、減塩ベースの配合を変更するとともに苦味低減成分であるL−リジン塩酸塩とクエン酸の添加量を増加して食塩組成物が苦味を感じないようにした。また合わせて、食塩組成物中のカルシウム含有量を1%に低減した。以下、具体的に説明する。
【0129】
すなわち、硫酸マグネシウムは、基本配合量9mgを最終配合量として9.268mgにした。その結果、図3Cに示すように最終配合量中に含まれるマグネシウム分は食事摂取基準量の50%となった。
【0130】
また、ビタミンB2(リボフラビン)は、着色防止のために基本配合量1.3mgを最終配合量として0.57mgに低減しているので、苦味も低減されている。そのため苦味に対して、更なる低減は行わなかった。最終配合量中に含まれるビタミンB2(リボフラビン)は食事摂取基準量の44%である。
【0131】
一方、ビタミンB1(チアミン硝酸塩)は、最終配合量11mgを基本配合量1.2mgより逆に増加させた(約9.2倍)。この理由は、ビタミンB1の摂取量が推定平均必要量に達しない者の比率が高い(図1D参照)、ビタミンB1は他のビタミンに比べて加熱調理中に損失する割合が極めて高い、ビタミンB1は過剰に摂取されても排出されるので悪影響を及ぼさない(図1C参照、上限値設定無し)、マグネシウムに比べて食塩組成物中の配合量がかなり低い等の理由によりものである。
【0132】
また。合わせて、炭酸カルシウムは、基本配合量13,26mgを最終配合量として2.25mgに低減した。その結果、図3Cに示すように最終配合量中に含まれるカルシウム分は食事摂取基準量の17%である。
【0133】
なお、味には影響しないが、ビタミンB12(シアノコバラミン0.1%混合物)は、最終配合量0.023mgを基本配合量0.002mgより逆に増加させた(約11.3倍)。この理由は、ビタミンB12は植物性食品に含まれていないため植物性食品中心に食事をする人は摂取しにくい、ビタミンB12は過剰に摂取されても排出されるので悪影響を及ぼさない(図1C参照、上限値設定無し)、食塩組成物中の配合量が他の成分に比べてかなり低い等の理由によりものである。
【0134】
[苦味低減]
上記のように、ビタミンB2(リボフラビン)を低減しビタミンB1(チアミン硝酸塩)を増加した結果、得られた食塩組成物の味は食塩に比べて苦味があったので、食塩と同程度の塩味とするために、苦味低減成分であるL−リジン塩酸塩とクエン酸の量を増加した。すなわち、図3Dに示すように食塩組成物の最終配合では、L−リジン塩酸塩の添加量を1gから1.5gに増加し、クエン酸の添加量を1gから2gに増加した。その結果、図3Dに示す最終配合量の食塩組成物は、食塩と同程度の塩味とすることができた。なお、クエン酸は後述するpH調整にも寄与する成分である。
【0135】
[pH調整]
基本配合量の食塩組成物はpHが8.0でアルカリ性であり、この食塩組成物に含まれるビタミンB群は分解されやすく長期安定性に欠けることがわかった。そこで、最終配合量の食塩組成物では、食塩と同程度の色と塩味とした後、食塩組成物のpHが6.8の弱酸性となるように調整した。この調整はクエン酸とビタミンCを用いて行った。食塩組成物を弱酸性(例えば、pH6.8)にするとビタミンB群は長期間保存しても分解されないため食塩組成物の長期安定性が増加した。この調整は、クエン酸およびビタミンCを用いて調整した。図3Dの最終配合量の食塩組成物におけるクエン酸2.0gのうち、1gはpH調整用のクエン酸の量であり、残りの1gは苦味低減用のクエン酸の量である。またビタミンCは図3Cに示すように基本配合量85mgに対して最終配合量90mgとpH調整用に5mg(6%)ほどビタミンCを増加した。
【0136】
以上説明したように、図3Cに示す最終配合量を有する普通塩タイプの食塩組成物、または図3Dに示す使用物質に換算された最終配合量を有する食塩組成物は、食塩と同程度の色および味を有するものである。
【0137】
[減塩タイプの食塩組成物の上限、下限:図3E]
上記説明したように、図3C、図3Dに示す最終配合量を有する減塩タイプの食塩組成物は、食塩と同程度の色および味を有し、長期安定性が良いものである。しかしながら、本実施形態の減塩タイプの食塩組成物は、最終配合量以外の配合値に各成分の割合を多少変化させても食塩と同程度の色と塩味、あるいは、食塩と同程度の塩味を示すことがわかった。
【0138】
そこで、減塩タイプの食塩組成物の各成分の上限値と下限値について検討した結果を図3Eに示す。図3Eの(a)は、食塩組成物に含まれるビタミンとミネラルの下限値、最適値、上限値を示し、図3Eの(b)は、食塩組成物に含まれるビタミンとミネラルの下限値、最適値、上限値を使用物質に換算して示したものである。
【0139】
なお、ビタミンB2と葉酸、鉄成分は上限値まで入れた場合、食塩組成物の味は食塩と同程度の近い味が得られるが、食塩組成物が灰色に着色する。着色は、食塩組成物の薬効に変化を与えないが、白色の食塩組成物を希望する場合には、上限値を用いずに最適配合値を用いればよい。
【0140】
[他の実施形態]
上記説明した食塩組成物の使用物質は一例であり、必要に応じて他の使用物質に変更することができる。利用できる他の使用物質の一例を図4に示す。
【実施例】
【0141】
以下、実施例を用いて上記説明した本実施形態の食塩組成物の長期安定性、塩味の官能試験、製造方法、使用方法の一例について具体的に説明する。
【0142】
[長期安定性]
まず、食塩組成物の安定性について説明する。図5は、減塩タイプの食塩組成物を用いて、食塩組成物に含まれる各成分の長期安定性を調べた結果の一例であり、減塩タイプの食塩組成物に含まれる各成分の割合を長期安定性試験前後で比較したものである。
【0143】
使用した減塩タイプの食塩組成物は、図3Cに示す最終配合を有するものであり、pHは6.8であった。食塩組成物の長期安定性は、作製した食塩組成物を空気および紫外線を通さない袋に入れて1ヶ月間、室温の室内に放置した後、各成分の残存量を分析し、設計値と比較することによって求めた。なお、各成分の分析は、日本食品分析センターで実施した。図5の中央列は、最終配合の設計値であり、左列は1ヶ月間放置後の実測値であり、右列は実測値/設計値である。図5の実測値と設計値の比較結果より、食塩組成物中に含まれる各成分(ビタミン、ミネラル)は、1ヶ月間、室温で放置しても90%程度保持されていることがわかった。このことから、減塩タイプの食塩組成物は、pHを6.8の弱酸性に保持することにより、その中に含まれる各成分(ビタミン、ミネラル)の濃度を設計値の値に維持できること、すなわち、減塩タイプの食塩組成物に長期安定性を付与できることが示された。なお、図には示さなかったが、普通塩タイプの食塩組成物でも上記説明した減塩タイプの食塩組成物と同様の結果が得られた。このことから、普通塩タイプの食塩組成物でも長期安定性が示された。
【0144】
[官能試験]
次に、食塩組成物の塩味に対する官能試験結果について説明する。図6は、減塩タイプの食塩組成物を用いて、食塩組成物の塩味に対する官能試験を行った結果の一例であり、減塩ベースの食塩組成物の塩味に対する官能試験結果を食塩の塩味に対する官能試験結果と比較したものである。
【0145】
官能試験結果は、食品調理学の官能検査方法の1つである五味識別試験を用いて行った。試験を行うパネラーは各14名であり、0.25%に希釈した食塩および減塩ベースの食塩組成物に対する塩味の正解数で判断した。図6に示すように、食塩に対する塩味の正解数は13人で正解率は93%であり、減塩ベースの食塩組成物に対する塩味の正解数は12人で正解率は86%であった。この結果から、減塩ベースの食塩組成物は食塩とほぼ同程度の塩味を有することが分かった。なお、図には示さなかったが、普通塩タイプの食塩組成物でも上記説明した減塩タイプの食塩組成物と同様の結果が得られた。このことから、普通塩タイプの食塩組成物も減塩ベースの食塩組成物と同様の塩味を有することが分かった。
【0146】
[製造方法]
次に、食塩組成物の製造方法について説明する。図7は、減塩タイプの食塩組成物の製造方法の一例である。減塩タイプの食塩組成物を製造する際には、まず、原料の計量工程において、食塩組成物の各成分の原料(図7参照)の計量を行う。例えば、最終配合量の食塩組成物となるように各成分を計量する。続いて、第1混合工程において、計量したビタミン成分(ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸カルシウム、ビタミンC、ナイアシン)を混合して第1混合物を作製する。食塩組成物中の配合量が最も少ないビタミン類を均一に混合して偏析をなくすためである。続いて、第2混合工程において、計量したミネラル成分(ピロリン酸第2鉄、炭酸カルシウム)を混合して第2混合物を作製する。食塩組成物中の配合量が次に少ないビタミン類を均一に混合して偏析をなくすためである。続いて、第3混合工程において計量した食塩組成物の苦味を低減し弱酸性にする成分(クエン酸、L−リジン塩酸塩)と食塩ベース成分(塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム)を混合して第3混合物を作製し、次に、作製した第3混合物中に第1混合物と第2混合物と添加して均一に混合して食塩組成物を作製する。次に、計量包装工程において、食塩組成物を計量して袋詰めにしさらに箱詰めにする。袋詰め用の袋としては、紫外線及び空気を通さない材料が良く、例えば、紫外線を通さないように加工されたポリエチレンなどの材料を用いる。あるいは、ポリエチレンの袋を紫外線を通さない段ボールに詰めて保存しても良い。
なお、図には示さなかったが、普通塩タイプの食塩組成物でも上記説明した減塩タイプの食塩組成物と同様の製造方法で製造することができる。
【0147】
[使用方法]
次に、本食塩組成物(普通塩、減塩タイプ)の使用方法について説明する。本食塩組成物は、家庭においてあるいは食品工場において、食塩の代替物として各種調理の味付用として利用することができる。また、本食塩組成物は、そのまま食塩の代替物として使用するばかりでなく、他の調味料の味つけに使用することができる。例えば、ドレッシング、味噌、醤油、マヨネーズなどに塩味を付けるために使用することができる。そのため、本食塩組成物をそのまま、あるいは本食塩組成物によって味付けされた調味料を用いて調理された食品を摂取することにより「エネルギー代謝」などに必要なビタミンとミネラルをバランス良く摂取することができる。
【0148】
本食塩組成物を利用した食品としては、めん類(即席めん、乾めん、生めん)のスープ、スパゲッティソース、菓子類(油菓子、焼菓子、米菓)、ふりかけ、お茶漬けの素、水産加工製品、ソーセージ、ハム、ハンバーグ、ミートボールなどの畜肉加工品、漬物、佃煮、珍味類、さらにギョーザ、シューマイ、肉まんの具、フライ用バッター、てんぷらの衣などのそう菜類などが挙げられる。また、外食産業、テイクアウト惣菜などの料理分野の調味素材としてのニーズもあげられる。
【0149】
以上説明したように、本食塩組成物はベース塩中に「エネルギー代謝」を効率的に行うことができるばかりでなく、必要に応じて「ナトリウムポンプ」と「カルシウムポンプ」を円滑に機能させるために必要なビタミンやミネラルをバランス良く適量添加したものである。また、本食塩組成物は、ビタミンを長期間安定に保持するように弱酸性に維持されている。さらに、本食塩組成物は食塩の代替物として使用されるために食塩と同程度の色と塩味を有する。そのため、本食塩組成物が食塩の代わりに調味料として使用された食品を摂取することにより、本来の食品中に含まれるビタミンやミネラルの量をいちいち計算することなく、1日の食事から摂取しなければならない上記ビタミンやミネラルをバランス良く必要量摂取することができる。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1A】糖、脂肪、蛋白質の代謝反応に関与するビタミン、ミネラルを示す図である。
【図1B】クエン酸回路に関与するビタミンおよびATPからエネルギーを取りだすときに関与するビタミンを示す図である。
【図1C】ビタミンおよびミネラルの1日の食事摂取基準を示す図である。
【図1D】ビタミンの推定平均必要量に達しないものの比率を示す図である。
【図1E】ミネラルの推定平均必要量に達しないものの比率を示す図である。
【図1F】食塩摂取量の年次推移を示す図である。
【図2A】普通塩タイプの食塩組成物(11.3g)中の各成分の基本配合量を示す図である。
【図2B】普通塩タイプの食塩組成物(100g)中の各成分の基本配合量を使用物質で示した図である。
【図2C】普通塩タイプの食塩組成物(11.3g)中の基本配合量と最終配合量との関係を示す図である。
【図2D】普通塩タイプの食塩組成物(100g)中の各成分の最終配合量を使用物質で示した図である。
【図2E】普通塩タイプの食塩組成物(11.3g)中の各成分の上限値・下限値を示す図である。
【図3A】減塩タイプの食塩組成物(11.3g)中の各成分の基本配合量を示す図である。
【図3B】減塩タイプの食塩組成物(100g)中の各成分の基本配合量を使用物質で示した図である。
【図3C】減塩タイプの食塩組成物(11.3g)中の基本配合量と最終配合量との関係を示す図である。
【図3D】減塩タイプの食塩組成物(100g)中の各成分の最終配合量を使用物質で示した図である。
【図3E】減塩タイプの食塩組成物(11.3g)中の各成分の上限値・下限値を示す図である。
【図4】使用物質の他の例を示す図である。
【図5】食塩組成物(減塩タイプ)の長期安定性試験結果の一例を示す図である。
【図6】食塩組成物(減塩タイプ)の官能試験結果の一例を示す図である。
【図7】食塩組成物(減塩タイプ)の製造工程の一例を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食塩の代替物として使用される食塩組成物であって、
食塩の機能を果たすための食塩ベースと、
エネルギー代謝の反応を促進する水溶性ビタミンと、
前記エネルギー代謝の反応を促進するミネラルと、
前記食塩ベースと前記水溶性ビタミンと前記ミネラルとを混合して得られる混合物の苦味を低減して弱酸性にする成分と、
を含むことを特徴とする食塩組成物。
【請求項2】
前記水溶性ビタミンは、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ナイアシンおよびビタミンCの群の中から選ばれた1種または2種以上のビタミンであることを特徴とする請求項1に記載の食塩組成物。
【請求項3】
前記ミネラルは、マグネシウム、または、マグネシウムおよび鉄であることを特徴とする請求項1に記載の食塩組成物。
【請求項4】
更に、ミネラルとして、ナトリウムポンプを機能させるためのカリウム、およびまたは、カルシウムポンプを機能させるためのカルシウムとマグネシウム、を含むことを特徴とする請求項3に記載の食塩組成物。
【請求項5】
前記成分は、L−リジン塩酸塩とクエン酸とを含むことを特徴とする請求項1に記載の食塩組成物。
【請求項6】
前記水溶性ビタミンと前記ミネラルは、前記食塩組成物が着色しない範囲の濃度で含まれていることを特徴とする請求項1に記載の食塩組成物。
【請求項7】
前記食塩ベースは、ナトリウムを主成分とする普通塩ベース、または、ナトリウムとカリウムとマグネシウムとを主成分とする減塩ベースであることを特徴とする請求項1に記載の食塩組成物。
【請求項8】
前記水溶性ビタミンおよび前記ミネラルは、
体内に摂取された糖、脂肪またはタンパク質からアセチルCoAを生成する代謝反応を促進するビタミンおよびミネラルと、
前記アセチルCoAを酸化してATP(アデノシン3リン酸)を生成するクエン酸回路を促進するビタミンと、
前記アセチルCoAの酸化に用いられる酸素を運搬するヘモグロビンの生成に必要な鉄と、前記ヘモグロビンを運搬する赤血球の生成反応を促進する葉酸と、
前記ATPがADPに変換されてエネルギーが取り出されるときに発生する活性酸素を還元する反応を促進するビタミンと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の食塩組成物。
【請求項9】
前記糖、脂肪またはタンパク質からアセチルCoAを生成する代謝反応を促進するビタミンおよびミネラルは、マグネシウム、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、パントテン酸、およびナイアシンであり、
前記クエン酸回路を促進するビタミンは、ビタミンB1、ビタミンB12であり、
前記活性酸素を還元する反応を促進するビタミンはビタミンCであることを特徴とする請求項8に記載の食塩組成物。
【請求項10】
日本人の一日の食塩摂取量と同量の前記食塩組成物中に含まれる前記水溶性ビタミンと前記ミネラルは、その一部が一日の食事摂取基準の量以下の量で含まれており、前記その一部以外が前記一日の食事摂取基準の量を超える量で含まれていることを特徴とする請求項1に記載の食塩組成物。
【請求項11】
前記日本人の一日の食塩摂取量は11.3g/日以下であり、
前記一日の食事摂取基準の量は、ビタミンB1が1.2mg、ビタミンB2が1.3mg、ビタミンB6が1.1mg、葉酸が200μg、パントテン酸が6.0mg、ビタミンB12が2.0μg、ビタミンCが85mg、マグネシウが310mg、鉄が6.5mgであることを特徴とする請求項10に記載の食塩組成物。
【請求項12】
食塩の代替物として使用される食塩組成物の製造方法であって、
エネルギー代謝の反応を促進する水溶性ビタミン成分を計量したのち混合して第1混合物とする工程と、
前記エネルギー代謝の反応を促進するミネラル成分を計量したのち混合して第2混合物とする工程と、
食塩の機能を果たすための食塩ベース成分と、前記食塩組成物の苦味を低減して弱酸性にする成分とを計量したのち混合して第3混合物とする工程と、
前記第1混合物と前記第2混合物と前記第3混合物とを混合して前記食塩組成物とする工程と、
前記食塩組成物を計量して紫外線が透過しないように包装する工程と、
を有することを特徴とする食塩組成物の製造方法。
【請求項13】
前記水溶性ビタミンは、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ナイアシンおよびビタミンCの群の中から選ばれた1種または2種以上のビタミンであることを特徴とする請求項12に記載の食塩組成物の製造方法。
【請求項14】
前記ミネラルは、マグネシウム、または、マグネシウムおよび鉄であることを特徴とする請求項12に記載の食塩組成物の製造方法。
【請求項15】
更に、ミネラルとして、ナトリウムポンプを機能させるためのカリウム、およびまたは、カルシウムポンプを機能させるためのカルシウムとマグネシウム、を含むことを特徴とする請求項14に記載の食塩組成物の製造方法。
【請求項16】
前記成分は、L−リジン塩酸塩とクエン酸とを含むことを特徴とする請求項12に記載の食塩組成物の製造方法。
【請求項17】
前記水溶性ビタミンと前記ミネラルは、前記食塩組成物が着色しない範囲の濃度で含まれていることを特徴とする請求項12に記載の食塩組成物の製造方法。
【請求項18】
前記食塩ベースは、ナトリウムを主成分とする普通塩ベース、または、ナトリウムとカリウムとマグネシウムを主成分とする減塩ベースであることを特徴とする請求項12に記載の食塩組成物の製造方法。
【請求項19】
前記水溶性ビタミンおよび前記ミネラルは、
体内に摂取された糖、脂肪またはタンパク質からアセチルCoAを生成する代謝反応を促進するビタミンおよびミネラルと、
前記アセチルCoAを酸化してATP(アデノシン3リン酸)を生成するクエン酸回路を促進するビタミンと、
前記アセチルCoAの酸化に用いられる酸素を運搬するヘモグロビンの生成に必要な鉄と、前記ヘモグロビンを運搬する赤血球の生成反応を促進する葉酸と、
前記ATPがADPに変換されてエネルギーが取り出されるときに発生する活性酸素を還元する反応を促進するビタミンと、
を含むことを特徴とする請求項12に記載の食塩組成物の製造方法。
【請求項20】
前記糖、脂肪またはタンパク質からアセチルCoAを生成する代謝反応を促進するビタミンおよびミネラルは、マグネシウム、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、パントテン酸、およびナイアシンであり、
前記クエン酸回路を促進するビタミンは、ビタミンB1、ビタミンB12であり、
前記活性酸素を還元する反応を促進するビタミンはビタミンCであることを特徴とする請求項19に記載の食塩組成物の製造方法。
【請求項21】
日本人の一日の食塩摂取量と同量の前記食塩組成物中に含まれる前記水溶性ビタミンと前記ミネラルは、その一部が一日の食事摂取基準の量以下の量で含まれており、前記その一部以外が前記一日の食事摂取基準の量を超える量で含まれていることを特徴とする請求項12に記載の食塩組成物の製造方法。
【請求項22】
前記日本人の一日の食塩摂取量は11.3g/日以下であり、
前記一日の食事摂取基準の量は、ビタミンB1が1.2mg、ビタミンB2が1.3mg、ビタミンB6が1.1mg、葉酸が200μg、パントテン酸が6.0mg、ビタミンB12が2.0μg、ビタミンCが85mg、マグネシウが310mg、鉄が6.5mgであることを特徴とする請求項21に記載の食塩組成物の製造方法。
【請求項1】
食塩の代替物として使用される食塩組成物であって、
食塩の機能を果たすための食塩ベースと、
エネルギー代謝の反応を促進する水溶性ビタミンと、
前記エネルギー代謝の反応を促進するミネラルと、
前記食塩ベースと前記水溶性ビタミンと前記ミネラルとを混合して得られる混合物の苦味を低減して弱酸性にする成分と、
を含むことを特徴とする食塩組成物。
【請求項2】
前記水溶性ビタミンは、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ナイアシンおよびビタミンCの群の中から選ばれた1種または2種以上のビタミンであることを特徴とする請求項1に記載の食塩組成物。
【請求項3】
前記ミネラルは、マグネシウム、または、マグネシウムおよび鉄であることを特徴とする請求項1に記載の食塩組成物。
【請求項4】
更に、ミネラルとして、ナトリウムポンプを機能させるためのカリウム、およびまたは、カルシウムポンプを機能させるためのカルシウムとマグネシウム、を含むことを特徴とする請求項3に記載の食塩組成物。
【請求項5】
前記成分は、L−リジン塩酸塩とクエン酸とを含むことを特徴とする請求項1に記載の食塩組成物。
【請求項6】
前記水溶性ビタミンと前記ミネラルは、前記食塩組成物が着色しない範囲の濃度で含まれていることを特徴とする請求項1に記載の食塩組成物。
【請求項7】
前記食塩ベースは、ナトリウムを主成分とする普通塩ベース、または、ナトリウムとカリウムとマグネシウムとを主成分とする減塩ベースであることを特徴とする請求項1に記載の食塩組成物。
【請求項8】
前記水溶性ビタミンおよび前記ミネラルは、
体内に摂取された糖、脂肪またはタンパク質からアセチルCoAを生成する代謝反応を促進するビタミンおよびミネラルと、
前記アセチルCoAを酸化してATP(アデノシン3リン酸)を生成するクエン酸回路を促進するビタミンと、
前記アセチルCoAの酸化に用いられる酸素を運搬するヘモグロビンの生成に必要な鉄と、前記ヘモグロビンを運搬する赤血球の生成反応を促進する葉酸と、
前記ATPがADPに変換されてエネルギーが取り出されるときに発生する活性酸素を還元する反応を促進するビタミンと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の食塩組成物。
【請求項9】
前記糖、脂肪またはタンパク質からアセチルCoAを生成する代謝反応を促進するビタミンおよびミネラルは、マグネシウム、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、パントテン酸、およびナイアシンであり、
前記クエン酸回路を促進するビタミンは、ビタミンB1、ビタミンB12であり、
前記活性酸素を還元する反応を促進するビタミンはビタミンCであることを特徴とする請求項8に記載の食塩組成物。
【請求項10】
日本人の一日の食塩摂取量と同量の前記食塩組成物中に含まれる前記水溶性ビタミンと前記ミネラルは、その一部が一日の食事摂取基準の量以下の量で含まれており、前記その一部以外が前記一日の食事摂取基準の量を超える量で含まれていることを特徴とする請求項1に記載の食塩組成物。
【請求項11】
前記日本人の一日の食塩摂取量は11.3g/日以下であり、
前記一日の食事摂取基準の量は、ビタミンB1が1.2mg、ビタミンB2が1.3mg、ビタミンB6が1.1mg、葉酸が200μg、パントテン酸が6.0mg、ビタミンB12が2.0μg、ビタミンCが85mg、マグネシウが310mg、鉄が6.5mgであることを特徴とする請求項10に記載の食塩組成物。
【請求項12】
食塩の代替物として使用される食塩組成物の製造方法であって、
エネルギー代謝の反応を促進する水溶性ビタミン成分を計量したのち混合して第1混合物とする工程と、
前記エネルギー代謝の反応を促進するミネラル成分を計量したのち混合して第2混合物とする工程と、
食塩の機能を果たすための食塩ベース成分と、前記食塩組成物の苦味を低減して弱酸性にする成分とを計量したのち混合して第3混合物とする工程と、
前記第1混合物と前記第2混合物と前記第3混合物とを混合して前記食塩組成物とする工程と、
前記食塩組成物を計量して紫外線が透過しないように包装する工程と、
を有することを特徴とする食塩組成物の製造方法。
【請求項13】
前記水溶性ビタミンは、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ナイアシンおよびビタミンCの群の中から選ばれた1種または2種以上のビタミンであることを特徴とする請求項12に記載の食塩組成物の製造方法。
【請求項14】
前記ミネラルは、マグネシウム、または、マグネシウムおよび鉄であることを特徴とする請求項12に記載の食塩組成物の製造方法。
【請求項15】
更に、ミネラルとして、ナトリウムポンプを機能させるためのカリウム、およびまたは、カルシウムポンプを機能させるためのカルシウムとマグネシウム、を含むことを特徴とする請求項14に記載の食塩組成物の製造方法。
【請求項16】
前記成分は、L−リジン塩酸塩とクエン酸とを含むことを特徴とする請求項12に記載の食塩組成物の製造方法。
【請求項17】
前記水溶性ビタミンと前記ミネラルは、前記食塩組成物が着色しない範囲の濃度で含まれていることを特徴とする請求項12に記載の食塩組成物の製造方法。
【請求項18】
前記食塩ベースは、ナトリウムを主成分とする普通塩ベース、または、ナトリウムとカリウムとマグネシウムを主成分とする減塩ベースであることを特徴とする請求項12に記載の食塩組成物の製造方法。
【請求項19】
前記水溶性ビタミンおよび前記ミネラルは、
体内に摂取された糖、脂肪またはタンパク質からアセチルCoAを生成する代謝反応を促進するビタミンおよびミネラルと、
前記アセチルCoAを酸化してATP(アデノシン3リン酸)を生成するクエン酸回路を促進するビタミンと、
前記アセチルCoAの酸化に用いられる酸素を運搬するヘモグロビンの生成に必要な鉄と、前記ヘモグロビンを運搬する赤血球の生成反応を促進する葉酸と、
前記ATPがADPに変換されてエネルギーが取り出されるときに発生する活性酸素を還元する反応を促進するビタミンと、
を含むことを特徴とする請求項12に記載の食塩組成物の製造方法。
【請求項20】
前記糖、脂肪またはタンパク質からアセチルCoAを生成する代謝反応を促進するビタミンおよびミネラルは、マグネシウム、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、パントテン酸、およびナイアシンであり、
前記クエン酸回路を促進するビタミンは、ビタミンB1、ビタミンB12であり、
前記活性酸素を還元する反応を促進するビタミンはビタミンCであることを特徴とする請求項19に記載の食塩組成物の製造方法。
【請求項21】
日本人の一日の食塩摂取量と同量の前記食塩組成物中に含まれる前記水溶性ビタミンと前記ミネラルは、その一部が一日の食事摂取基準の量以下の量で含まれており、前記その一部以外が前記一日の食事摂取基準の量を超える量で含まれていることを特徴とする請求項12に記載の食塩組成物の製造方法。
【請求項22】
前記日本人の一日の食塩摂取量は11.3g/日以下であり、
前記一日の食事摂取基準の量は、ビタミンB1が1.2mg、ビタミンB2が1.3mg、ビタミンB6が1.1mg、葉酸が200μg、パントテン酸が6.0mg、ビタミンB12が2.0μg、ビタミンCが85mg、マグネシウが310mg、鉄が6.5mgであることを特徴とする請求項21に記載の食塩組成物の製造方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2007−306851(P2007−306851A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−139368(P2006−139368)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(506168358)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(506168358)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]