食塩製品
(i)溶媒中に溶解した食塩を含む混合物であって、周囲温度条件下で固体である有機物質を更に含む混合物を用意する工程、及び(ii)前記混合物を噴霧し、そして前記溶媒を蒸発して、前記有機物質を取り込んだ食塩の粒子を含んでなる食塩製品を製造する工程を含んでなる食塩製品の製造方法。有機物質は炭水化物(例えば、マルトデキストリンまたはアラビアガム)の様な高分子であってよい。各食塩の微結晶に対して形成された外殻を有する中空粒子を含んでなる新規な食塩製品が開示されている。その製品は食料品の味付けとして有用であり、従来の食塩より少ない量で使用されて同じ風味を与えることができる。パン焼きにおいて、特別な利益が得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食塩(即ち、塩化ナトリウム)に関し、及び、より具体的には、食塩製品の製造方法並びに該方法によって得られる食塩の新しい形体に関する。本発明は更に具体的には、非常に細かな粒子径(例えば、100ミクロン未満)を有し、周囲条件下で貯蔵された場合であっても自由流動性を保持する食塩製品に関する。食塩製品は食品の風味を失うことなく比較的低レベルで使用され得ることから、加工食品(manufactured foodstuffs)、例えば、パン、の味付け(seasoning)に用いるのに特に有用である。本発明の食塩製品の他の用途は医薬品の担体である。
【背景技術】
【0002】
一般に、食塩なしの食料品(food)は風味に欠けることから、塩化ナトリウム(以後、文脈が他を意味しない場合は、単に「食塩」という。)は、食料品の味付け/香り付け(flavouring)として、太古の昔から用いられてきた。大量の食塩が、例えば、予備調製食料品(pre-prepared foods)、例えばパン、調理済み食品(ready meals)、ソース、塩漬け肉、ソーセージ、バーガーおよび粉化製品(crumbed products)等の食料品製造工業によって使用される。食塩は、勿論、家庭料理にも使用され、また香辛料として調製された食料品(prepared food)上にふり掛けられる。
【0003】
しかしながら、近年、食品中の過剰の食塩は健康に逆効果を及ぼし得ること、例えば、卒中の危険因子となる高血圧、が明らかになった。問題を大局的にとらえると、英国政府の数字は一人当たりの平均的食塩摂取量は約6.0〜9.0グラム/日であることを示す。しかしながら、英国政府は最大3グラム/日を推奨している。従って、明らかに、少なくとも予備調製食品の現状の食塩含量のある程度の削減は好ましい目標である。
【0004】
その高い食塩含量から批判の対象になる予備加工食品の1つはパンである。英国では、スーパーマーケット及び他の店で売られているパンは、ほぼ1.8〜2.0重量%の食塩を含んでいる。英国食料基準局は、パン中の食塩含量を1.1%へ削減する目標を持っている。
【0005】
原理的に、食料製品(food product)中の食塩の量を削減する一つの方法は、食塩を摩砕して非常に大きな表面積を与えるようにすることであろう。そのことは、より少量の食塩を用いて同じ“味付けレベル”が達成されることを意味する。しかしながら、食塩は吸湿性であって、細かく摩砕された製品は、高価な又は複雑な貯蔵システムを用いて保護されなければ、速やかに再凝集してしまう。この貯蔵システムは、そうでなければ日用品であるものに、追加的コストを付加するであろう。
【0006】
更なる可能性は、食塩の少なくとも一部を、その代替物で置換することである。食塩の代替物には塩化マグネシウム及び塩化カリウムを含むが、これらは、通常消費者に受け入れられない苦み又は金属味を与える。更に、カリウム及びマグネシウムイオンの使用は神経にも影響して血圧の変化を導き得る。他の代替物は有機分子を含み、例えば、グルタミン酸モノナトリウム(MSG)、ペプチド及び核酸ベースの代替物である。しかしながら、これらは独自の問題を持つ。例えば、MSGと関係がある発ガン性の危険が報告されている。加えて、これらの代替物は最終仕上げ食料製品の食感に影響を及ぼし、アレルギー反応を引き起こす可能性を有し得る。その結果、食塩代替物は一つの“問題”を他の問題と置き換えてしまい、その結果、食料品製造業者部門内及び消費者圧力団体内に抵抗を見るに至った。
【0007】
代替物の使用に不具合があるのみならず、パンの場合に食塩レベルの削減、特に食塩レベルが1%未満に削減される場合に伴う不具合がある。即ち、
1.発酵の制御性喪失
2.パン構造(不規則な孔−固まり構造)の喪失
3.パン高さの減少
4.減少した水含量の結果としての保存期間の減少、である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記不具合を取り除き又は軽減することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様において、
(i)溶媒中に溶解した食塩を含む混合物であって、周囲温度条件下で固体である有機物質を更に含む混合物を用意する工程、及び
(ii)前記混合物を噴霧し、そして前記溶媒を蒸発して、前記有機物質を取り込んだ食塩の粒子を含んでなる食塩製品を製造する工程
を含んでなる食塩製品の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は比較例1の結果を示すSEM像である。
【図2】図2は実施例1の結果を示すSEM像である。
【図3】図3は比較例2の結果を示すSEM像である。
【図4】図4は比較例2の結果を示すSEM像である。
【図5】図5は実施例2によって得られた製品の粒子寸法分布を示す。
【図6】図6は実施例3によって得られた製品の粒子寸法分布を示す。
【図7】図7は実施例4によって得られた製品のSEM像である。
【図8】図8は実施例5によって得られた製品のSEM像である。
【図9】図9は実施例6によって得られた製品のSEM像である。
【図10】図10は実施例19によって得られた製品のSEM像である。
【図11】図11は実施例20によって得られたパンのEDXデータである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によれば、食塩(塩化ナトリウム)の溶媒(最も好ましくは、水)中の溶液を含み及び周囲温度で固体である有機物質を更に含む混合物を噴霧して、溶媒が液滴から蒸発して食塩及び有機物質を含む微粒子を残す条件下に霧状の液滴を生成させることによって、非常に有利な特徴(詳細は下記)を持った食塩の製造が可能であることを見出した。本製品の粒子は100ミクロン未満の粒子径を有し得るが、この非常に小さなサイズに拘わらず、食塩製品は本質的に非吸湿性であって、周囲条件下で(例えば、袋又は他の容器中で)特別の注意なしでも、例えば相対湿度70%、15〜25℃で貯蔵された場合に18月を超える期間、自由流動性を保持して貯蔵することができる自由流動性固体のままであり得ることが見出された。
本発明によって製造された食塩製品の主たる用途は、食料品製造における味付けであり、その目的のために食塩製品が栄養用途にとって受け入れ可能な有機物質を伴って製造される。等重量比で、本発明によって製造された食塩製品は、従来の食塩に比べて塩味を強め、同一風味水準を与えつつ食料品中でのより低い量で用いることができる。非常に驚くべきことには、我々は、本発明によって製造された食塩製品が、従来の食塩よりも非常に低い水準で、従来と同一の味を与えることができ、且つ、パン製造工程には悪影響を与えることなくパン製品の製造に用いられ得ることを見出した
【0012】
本発明の方法で製造された食塩製品は、実質的に全ての(95%より多くの)粒子が100μm未満の寸法を有する。実質的に全ての粒子が2〜100μmの範囲の寸法を有してよい。食塩製品は、粒子の95%以上が50μm未満の寸法を有する様であってよい。
【0013】
本発明の方法に沿って製造された好ましい製品は、粒子中で互いに付着しあっている個々の微結晶を含む構造を有する粒子の実質的な割合を含んでなる。これらの粒子の一貫性を維持しているのは有機物質の存在であると我々は信じる。本発明の方法で製造された製品の特に好ましい製品は、中空であって微結晶の外殻から形成されている実質的な割合の粒子を有している。その様な食塩製品の構造は、我々の知る限り、類がない。適切な倍率(例えば、x5000)で走査電子顕微鏡により観察した場合、本発明に沿った食塩製品の好ましい態様は、総じて回転楕円体(真の幾何学的意味において必ずしも球形ではないが)とみられ、且つ、殻が小さな総じて直方形の塩化ナトリウム微結晶から構成される中空構造を持つ、個々の粒子を有している。
【0014】
上記で要約されたように、本発明に沿った食塩製品は、塩化ナトリウム(好ましくは水溶液)を含み、更に周囲温度条件下で本質的に固体である有機物質を含む混合物より調製される。該物質は15〜35℃、より好ましくは15〜25℃の温度範囲において固体であるべきであるが、これらの範囲外でも固体であってもかまわない。有機物質は好ましくは溶媒に可溶なものである。噴霧される混合物が均一溶液であることが特に好ましい。混合物中のいかなる不溶性物質も定法、例えば、遠心分離、ろ過等によって除かれてよい。
【0015】
食塩製品を製造するためには、混合物は、噴霧された液滴から溶媒を蒸発させて上記の特別な食塩製品を製造するような条件下で噴霧される。高められた温度(例えば、100℃〜210℃)が溶媒の蒸発に用いられる。蒸発は熱空気サイクロン効果を用いて達成される。本発明の好ましい製品を得る目的には、異なる有機物質に対して異なる温度が適切であり得る。特定の温度が、以下のようにマルトデキストリン(195℃)及びアラビアガム(140℃)に対して与えられる。最適値は簡単な実験によって決定し得て、当業者の技量の範囲である。
【0016】
噴霧及び蒸発工程は通常のスプレードライ装置を用いて達成し得る。少量バッチ生産のためには、Buchi ミニスプレードライヤーB-290が適切である。Nairo工業規模乾燥機が商業生産に用いることができる。
【0017】
噴霧される混合物は、好ましくは、溶媒重量基準で5〜35重量%、より好ましくは10〜35%、更に好ましくは25〜35重量%の食塩を含む。それに替えて、又は追加的に、混合物は好ましくは、溶媒重量基準で0.1〜20重量%、より好ましくは、0.3〜7重量%の有機物質を含有する。
【0018】
もし、本発明の食塩製品が食料品の味付け用に調製されるときは、塩化ナトリウムは食品グレードの品質であるべきである。
【0019】
有機物質は、好ましくは高分子物質である。広範なそのような高分子物質が本発明に沿って食塩製品を製造するために用いられ得るが、好ましい高分子物質は少なくとも部分的に、及び理想的には実質的に溶媒に可溶である。それ故、好ましい高分子物質は、本発明での使用にとって好ましい溶媒である水への実質的溶解性を持つ。高分子は、栄養的目的にとって許容可能な高分子であるとの制約はあるが、天然又は合成であってよい。
【0020】
天然高分子の例には炭水化物及び蛋白を含む。その様な型の高分子の混合物も使用し得る。もし、高分子が炭水化物の場合は、それは、例えば、マルトデキストリン(例えば、フィルレゾル)、アラビアガム、デンプン(例えば、可溶性のコーンデンプン、ポテトデンプン又は大豆デンプン)、グアーガム、カラギーナン、ヒドロキシプロピルセルロースおよびアガーの1種以上であり得る。もし、マルトデキストリンが使用される場合は、それはデキストロース当量が13.0〜17.0を有するものであってよい。マルトデキストリンが使用されるとき、好ましくは混合物中に溶媒容積基準で0.5重量%で存在する。溶媒の蒸発は(マルトデキストリンが使用されるとき)、好ましくは190℃〜200℃、例えば約195℃で達成される。もしアラビアガムが使用されるとき、それは好ましくは、アカシアガムである。アラビアガムは、好ましくは混合物中に約3重量%の量で存在し、蒸発は好ましくは135〜145℃、例えば、約140℃の温度で達成される。
【0021】
使用し得る天然高分子の更なる例は、バチルスサブチリス(枯草菌)を用いて大豆の発酵によって得られる納豆である。この発酵は大豆表面に“粘着性の生成物”を製造する。大豆は次に当容量の水と混合されて、ホモゲナイズされて、納豆を生成する。
【0022】
使用し得る合成高分子の例はポリエチレングリコールを含むが、食料品への応用には適切ではない。ポリエチレングリコールは、例えば、3,000〜20,000の範囲の分子量を持つ。
【0023】
有機高分子物質(周囲温度で固体である)は、噴霧及びスプレー乾燥に付される混合物を形成するために用いられる好ましい物質であるが、他の有機物質が用いられてよい、例えば、植物又は動物由来脂肪である。
【0024】
食塩製品の製造に用いられる有機物質は製品の特定な性質を与える様に選択される。上記の一つの特性は栄養用途に許容可能な有機物質の選択である。しかしながら、食塩製品に特定の物理的及び/又は化学的性質、例えば、製品の親水性/疎水性、を与える様に物質を選択することも可能である。この様に、例えば、有機物質は、食塩製品の脂溶性特性を与えるための植物脂肪の様な疎水性物質の一種であってよい。その様な脂溶性を与える物質の例は、トレックス(Trex)、カラギーナン及びココナツバターである。それに替えて、有機物質は親水性特性を与えることを意図した物質、例えば、マルトデキストリン、ファイバーゾル及び可溶性デンプンであってよい。更なる可能性は、特定のpH条件下で粒子の分解に抵抗性を付与する高分子の使用である。
【0025】
食塩製品は多様な用途を持ち、その幾つかを以下に詳述する。食塩製品の重要な用途は食料品の味付けである。なぜならば、上記で示したように、食塩製品のより少ない量が、従来の食塩の使用に比して同程度の味付けを得るために使用し得るからである。このことは個人の食塩摂取量のかなりの削減を可能にする。食料品用への使用のために、食塩製品の製造に使用される有機高分子は栄養的使用に許容可能なものであるべきであり、及び、(しかし、必ずではないが)それ自身は、食料製品に何ら重要な風味を付加しないものであってよい(即ち、有機高分子は本質的に“風味−中性”である)。これらの基準に適う有機高分子の例は、アラビアガム(特に、アカシアガム)、マルトデキストリン、グアーガム、カラギーナン、ヒドロキシプロピルセルロース及びアガーアガーである。その様な食塩製品は従来の食塩が採用される全ての用途において、総じて使用され得る。
【0026】
食塩製品は特に(専らではないが)、従来の食塩の代替物としてパンの製造に有用である。食塩製品は、従来の食塩よりも非常に低いレベルで(例えば、70%未満まで)使用されても、要求される味付け度を維持し、並びに、パン製造方法又は最終製品の性質に不利益を与えない。より具体的には、食塩製品は次の如何なる結果をも来さない:
(i)発酵の制御性喪失
(ii)パン構造の喪失(不規則な孔−固まり構造)
(iii)パン高さの減少
(iv)減少した水含量の結果としての保存期間の減少。
【0027】
パン(及び、他のパン製品)は人間の日常的食塩摂取への重要な寄与をしているから、これらの発見は重要な意義を有し、食塩含量を大幅に削減したパンを従来技術で(如何なる変更もなしに)製造することを可能にする。
【0028】
食塩製品は他の加工食料製品の味付けに使用し得る。一つの例は、肉(赤又は白)とそれに由来するソースとを含む料理の製造である。その様な製品に対して、本発明の食塩製品は従来の食塩の50%未満の量まで、食感及び香味を維持しつつ使用できることを見出した。
【0029】
食塩は、ベジタリアン用ソーセージに於いて、香味を損なうことなく、通常水準の25〜50%削減の水準で使用されてきた。食塩は又、食塩水準を70%上限まで削減して、食塩でパンを粉砕した結果としてのパン粉(crumb)に使用されてきた。
【0030】
風味−中性な高分子の使用が多くの食料品応用に適切である一方、高分子が、食塩製品に有益に風味を付与する例がある。この様に、例えば、食塩製品は香味料製品の抽出物で調製され得る。香味料製品は動物又は植物起源であってよく、及び、食塩製品の形成に寄与する有機高分子(例えば、炭水化物、及び/又は蛋白)を含む。この高分子はそれ自体、香味付けとなり得る。それに代えて、香味付け抽出物は、高分子及び食塩製品に取り込まれる(分離した)香味料自体(flavouring per se)を含んでよい。香味料成分の例は、例えば、肉抽出物(例えば、牛肉、豚肉又は羊肉起源の)、魚抽出物、野菜抽出物(例えば、タマネギ、ニンニク)、ハーブ抽出物(例えば、バジル)、同様に、他の香味料抽出物(例えば、チリ唐辛子)である。
【0031】
前の段落で、香味付け抽出物(flavouring extract)が製品を形成する高分子を与える食塩製品へ言及された一方、食塩製品を風味−中性高分子(例えば、アラビアガム)で形成し、少なくとも1つの非高分子香味付け成分を混合物中に取り込み、噴霧及び蒸発に付して、それによって、香味付けされた食塩製品を得るという可能性もある。
【0032】
前二段落で議論された香味付けされた食塩製品は、勿論、より少量の食塩が食料品中に使用されるという利点と共に、食料製品の製造に要求される食塩及び香味料が単一の食塩製品に備わるという利点を有する。
【0033】
香味付けされた食塩製品は、例えば、“スナック食品”(それは調理され、又は未調理であってよい。)の製造に使用され得る。この様に、例えば、チリ唐辛子を取り込んだ食塩製品はポテトベースの食品(例えば、ポテトチップス)の製造に使用されて、香味付けされた製品を与える。しかしながら、その様なスナック食品(例えば、ポテトベースの)は、チリ唐辛子以外の香り付けを持つ食塩製品で製造し得ると云うことが理解し得るであろう。
【0034】
更なる食品適用はドリンク、所謂「エネルギードリンク」製造用の食塩製品の使用である。
【0035】
更なる応用は、工程(ii)において噴霧及び蒸発に付される混合物中に組み込まれる医薬品の送達システムとしてである。食塩製品は口腔投与が意図されてよく、その様な場合には製品の形成に用いられる有機物質はポリ乳酸のような、粒子が2〜4のpHで溶解することを妨げて耐酸性を与える腸溶性高分子、及び、徐放性の尺度を与える糖類(デキストローズ)であってよい。胃を通過して腸への輸送を与える標準的医薬コーティングもまた適用され得る。
【実施例】
【0036】
本発明は以下の非限定的実施例及びその図面を参照することによって説明されるであろう。
【0037】
図1は比較例1の結果を示すSEM像である。
図2は実施例1の結果を示すSEM像である。
図3および4は比較例2の結果を示すSEM像である。
図5は実施例2によって得られた製品の粒子寸法分布を示す。
図6は実施例3によって得られた製品の粒子寸法分布を示す。
図7は実施例4によって得られた製品のSEM像である。
図8は実施例5によって得られた製品のSEM像である。
図9は実施例6によって得られた製品のSEM像である。
図10は実施例19によって得られた製品のSEM像である。
図11は実施例20によって得られたパンのEDXデータである。
【0038】
以下の実施例及び比較例において、使用した食塩はFisher Scientific社のEPグレード(Eur pH)の塩化ナトリウムである。
【0039】
比較例1
食塩を50μmの粒子寸法に磨砕した。磨砕された粒子は周囲条件下で急速に凝集体を形成した。凝集体のSEM像(倍率x30)を図1の左側に示したが、図1はまた、比較の為に、約500μmの寸法を持つ通常の長斜方形結晶を有する非磨砕食塩結晶を含む。
【0040】
実施例1
容器中のイオン交換水100ml中に溶解した15gの食塩の溶液に、アラビアガム(アカシアガム−Fluka社のex)3gを添加した。容器上に蓋を被せ、透明で均一な溶液が形成されるまで内容物を振り混ぜた(代わりに、均一溶液を得るために、Silversonの乳化剤を用いても良い)。
【0041】
次に、溶液をBuchiのミニスプレードライヤー290型機を用いて噴霧乾燥した。ドライヤーの設定パラメーターは以下の通りである:
アスピレーター(%)=100
ポンプ(%)=30
空気流れ(mm)=40
ノズル洗浄=1分間に3回
設定温度=140℃
【0042】
この操作によって溶液の急速な再結晶が起こって製品が得られ、その結晶構造が図2のSEM像に表されている。この図に示されるように、得られた食塩製品は全体的に球状粒子(食塩及びアラビアガムの双方を含んでいる)を包含している。これらの粒子は中空であって、その外殻は、概ね正方形又は長方形の外観をした食塩の個々の微結晶を含有する。
【0043】
重要なことは、実施例1の食塩製品は、周囲条件下で18カ月の期間、凝集体又は塊を形成しなかったことである。食塩製品は非脂溶性であり、及び食料製品の製造における味付けとしての使用に適していた(下記の実施例22も参照のこと)。
【0044】
比較例2
食塩溶液にアラビアガムを添加しない他は、実施例1の操作を繰り返した。
得られた製品のSEM像を図3に示す(倍率x750)。図3から、アラビアガムなしで得られた食塩は、アラビアガムを用いて得られた図2に示した「結晶球」を形成していないことが明確に判る。
比較例1の製品はその製造後1時間未満で、周囲条件下で急速に凝集体及び塊を形成した。凝集した食塩は図4のSEM像(倍率x2000)に示されるが、この図もまた「結晶球」構造の不存在を裏付けている。
【0045】
実施例2
食塩30g及びアラビアガム2%を用いる以外は、実施例1の操作を繰り返した。
製造された製品のMastersizer(レーザー光分散装置)上で得られた粒子寸法分布を図5に示す。全ての粒子が30μm未満の寸法であることが判るであろう。
【0046】
粒子寸法の平均値が6〜7μmと決定された。
以下の追加的データが決定された:
比表面積=1.75m2/g、表面加重平均D[3, 2]3.422μm、体積加重平均D[4,3]5.939μm、
d(0.1)=1.697μm、d(0.5)=4.977μm、d(0.9)=11.673μm:
ここで、
d(0.1)はサンプルの10%未満が存在する粒子寸法、
d(0.5)はサンプルの50%がその粒子寸法より小さく、サンプルの50%がその粒子寸法より大きな粒子寸法、
d(0.9)はサンプルの90%未満が存在する粒子寸法である。
製品は周囲条件下で非凝集性であった。
【0047】
実施例3
実施例2において採用したBuchi スプレー乾燥機と同じパラメーター(T=140℃)でNairoスプレー乾燥機を用いる他は、実施例2を繰り返した。Buchi スプレー乾燥機は実験室規模の装置であるのに対して、この実施例で用いたNairoスプレー乾燥機は工業規模での食塩製品の製造の可能性を実証する目的で用いた。
製造された製品のMastersizer(レーザー光分散装置)上で得られた粒子寸法分布を図6に示す。全ての粒子が100μm未満の寸法であることが判るであろう。
【0048】
平均粒子寸法は11〜12μmと決定された。
以下の追加データが決定された:
非表面積 1.12m2/g、表面加重平均D[3,2] 5.337μm、体積加重平均D[4,3] 13.090μm
d(0.1)3.175μm、d(0.5)10.248μm、d(0.9)=27.161μm、
ここで、
d(0.1)はサンプルの10%未満が存在する粒子寸法、
d(0.5)はサンプルの50%がその粒子寸法より小さく、サンプルの50%がその粒子寸法より大きな粒子寸法、
d(0.9)はサンプルの90%未満が存在する粒子寸法である。
【0049】
実施例4
180mlのポリエチレン容器中の脱イオン水100ml中に、デキストロース当量13.0〜17.0を有するマルトデキストリン(ex Sigma Aldrich)0.5g及び食塩15gを添加した。蓋をして、透明な均一溶液が形成されるまで、内容物を振り混ぜた。次に、溶液をBuchiのミニスプレードライヤー290型機を用いて、設定温度を195℃とする以外は実施例1と同じ設定で噴霧乾燥した。
製品のSEM像(倍率x5000)を図7に示す。粒子が個々の食塩の微結晶から形成された殻を有する中空球を含むことが見られるであろう。
【0050】
実施例5
脱イオン水100ml中の食塩15gの水溶液にデキストロース当量13.0〜17.0を有するマルトデキストリン(ex Sigma Aldrich)0.5gを、混合下に添加した。生成した混合物中に1.5gのアスピリンを添加し、更に、乳化剤Silversonを用いて混合を促進した。
得られた混合物を、次に、Buchiのミニスプレードライヤー290型機を用いて、実施例4と同じパラメーターに設定して噴霧乾燥した。
そのSEM像(倍率x1500)が図8に示されている微粒子状の食塩製品が製造された。製造された粒子は1nm〜100nmの寸法範囲を有しており、粒子は概ね球形及び中空であった。
【0051】
図8に見られるように、「食塩球」は「滑らかな」概観を呈し、球を形成している個々の微結晶が、幾つかを除いては図7に見られるようには視認できないことから、アスピリンが球の外表面上の塗膜として析出したことを実証している。アスピリンの濃度を増加させることによって、「塗膜厚み」を制御することが可能である(データは提示していない)。
【0052】
実施例6
脱イオン水100ml中の食塩15gの水溶液中に実施例4で用いられた型のマルトデキストリン0.5gを添加した。この食塩及びマルトデキストリンの混合物中へ1.5gのニンニク抽出物を添加した。乳化剤Silversonを用いて混合を促進した。得られた溶液を次に、Buchiのミニスプレードライヤー290型機を用いて、実施例4と同じパラメーターに設定して噴霧乾燥した。
得られた製品のSEM像(倍率x9000)を図9に示した。粒子は1nm〜100μm、平均約7μmの範囲の寸法を有していた。図9に示された粒子は、約500μmの結晶寸法を有する食卓塩の通常の長斜方形結晶から、明らかに球形成を助ける平面三角形状へと変化した結晶構造を明確に実証している。図9に示されるように、これらの個々の微結晶の寸法は約1μmx0.5μmである。
【0053】
実施例7
食塩15g、アスピリン1g及び納豆0.15gを180mlのポリエチレン容器中の脱イオン水100ml中へ添加し、15分間、超音波撹拌した。溶液は完全には溶解しなかったので、次に水浴中で37℃に加熱した。
液体をSigma 2-16型機にて6183rpm及び4060gで遠心分離した。次いで、上澄み液をBuchiのミニスプレードライヤーB-290型機を用いて、温度が195℃である点を除けば前記と同じ設定で噴霧乾燥した。微結晶食塩製品を得た。
【0054】
実施例8
食塩15g、カフェイン1g及び納豆1gを180mlのポリエチレン容器中の脱イオン水100ml中へ添加した。蓋をして、内容物を振り混ぜた。溶液をSigma 2-16型機にて1683rpm、4060gで14分間遠心分離した。次いで、上澄み液をBuchiのミニスプレードライヤーB−290型機を用いて、実施例7と同じ設定にて温度195℃で噴霧乾燥した。微結晶食塩製品を得た。
【0055】
脱イオン水100ml中の食塩15gの水溶液へ、20,000の分子量を持つPEGを3g添加した。この中へアスピリン10gを添加した。この溶液をBuchiのミニスプレードライヤーB−290型機を用いて、温度を140℃とする以外は以前と同じ設定で噴霧乾燥し、1μm〜100μmの寸法範囲にあるカプセルを製造した。
【0056】
実施例10
この実施例は、バジルに基づく香り付け添加物の製造を実証する。
バジルの葉を最初に手で砕き、次いで手持ち混合機で混合し、最後に、乳棒とモーターで破砕して、抽出用に準備した。
バジルを96%v/vエタノール10%及び脱イオン水90%で一晩、FT 110高速抽出機で、下記設定にて抽出した:
TP0=1:30
TP1=2:00
サイクル=35
PMax=9
PMin=6
【0057】
バジル抽出物を次ぎに6461gで15分間遠心分離し、次に上澄み液を更に以下のように処理した:
250mlのガラスビーカー中の脱イオン水100mlに、食塩30g及び3000PEGを12g添加した。ビーカーをCorningの攪拌機/熱プレート上に載せ、磁気回転子を入れた。溶液を55℃で透明な無色液体が形成されるまで撹拌した。
180mlのポリエチレン容器にバジル抽出物75mlを添加し、25mlの脱イオン水を添加した。蓋を閉めて、均一溶液が形成されるまで内容物を振り混ぜた。PEG溶液を含むビーカー中へバジル抽出物100mlを添加し、その溶液を均一溶液が形成されるまで撹拌した。この溶液をBuchiのミニスプレードライヤーB−290型機を用いて、温度を140℃とする以外は以前と同じ設定で噴霧乾燥した。
バジル香味料を取り込んだ微粒子状の食塩製品が得られた。
【0058】
実施例11
それぞれ約11.2gの重さを有する2種の固形野菜スープの素、及び15gの食塩を、180mlのポリエチレン容器中の脱イオン水100ml中へ添加した。蓋をして内容物を溶解するまで振り混ぜた。次に、この溶液をBuchiのミニスプレードライヤーB−290型機を用いて、温度を140℃とする以外は以前と同じ設定で噴霧乾燥した。
製品は白色結晶で自由流動性のある食塩で、固形野菜スープの素の高い香味刺激を有していた。
【0059】
実施例12
180mlのポリエチレン容器中の脱イオン水100mlへ、15gの食塩及び0.15gの納豆を添加した。混合物をSilverson乳化剤と共に高剪断力に晒し、続いて、Sigma 2-16型機上、4060gで14分間遠心分離した。得られた上澄み液を次にBuchiのミニスプレードライヤーB−290型機を用いて、温度を195℃とする以外は以前と同じ設定で噴霧乾燥した。
製品は白色結晶で自由流動性のある食塩で、納豆の高い香味刺激を持っていたが、納豆の典型的な臭いは無かった。
【0060】
実施例13
180mlのポリエチレン容器中の脱イオン水100mlへ、15gの食塩及び0.5gのマルトデキストリン(実施例4で使用したものと同じもの)を添加した。蓋をして、透明な無色溶液が形成されるまで内容物を振り混ぜた。8gの天然チョコレート香味料製品No. 013061(Carmi Flavors)を容器に添加し、次いで内容物を透明な均一褐色溶液が形成されるまで振り混ぜた。溶液を次に、BuchiのミニスプレードライヤーB−290型機を用いて、195℃の設定温度とし、他の設定は以前と同じにして、噴霧乾燥した。
得られた製品は1〜100μmの寸法範囲の製品のカプセルを含んでおり、その粉末は自由流動性を有し、黒褐色であった。香味は強いチョコレートの香味であった。
【0061】
実施例14
この実施例は、本発明による食塩製品の水不溶性形体の製造を実証する。
180mlのポリエチレン容器中の脱イオン水100mlへ、15gの食塩、0.1gのホウ酸及び0.5gのマルトデキストリン(実施例4で使用したものと同じもの)を添加した。蓋をして溶解するまで内容物を振り混ぜた。植物性脂肪(Terex)5gを熱プレート上に置いた250mlのガラスビーカー中に添加して、植物性脂肪が溶融するまで加熱した。熱いうちに、植物性脂肪中へエタノール(96%v/v)を10ml添加した。
次に、ポリエチレン容器からの溶液90mlをビーカーに加え、その内容物を次にSilverston L4R型機を用いて速度2で混合した。静かに混合しながら、その溶液をBuchiのミニスプレードライヤーB−290型機を用いて195℃の設定温度で、他の設定は以前と同じにして噴霧乾燥して、軽食用や、加えて、パン製造に適する水不溶性の白色粉末を形成した。
得られた白色粉末は少なくとも18ヶ月間、高い食塩刺激を保ちつつ自由流動性を維持した。
【0062】
実施例15
全体的に新鮮なタマネギをジョッキ型混合機で砕いて抽出用に用意した。次に、そのタマネギをFT 110型高速抽出機を、以下の設定で用いて、10%エタノール(96%v/v)及び90%脱イオン水で抽出した。
TP0=1:30
TP1=2:00
サイクル数=35
PMacx=9
PMin=6
【0063】
30gの食塩及び12gの3000PEGを250mlのガラスビーカー中の脱イオン水100ml中へ添加した。ビーカーをCorning社の攪拌機/熱プレート上に置き、磁気回転子を入れた。
溶液を透明無色の液体が形成されるまでかき混ぜた。次に、タマネギ抽出物100mlを食塩溶液に添加し、その混合物を高剪断力に晒して(Silverson乳化剤)均一溶液を製造した。溶液を140℃の温度でBuchi のミニ噴霧乾燥機 B - 290中で噴霧乾燥した。製品は球の内側にタマネギ抽出物を有するミクロ結晶球を生成した。
【0064】
この処方及び他の処方により、もし食塩がタマネギ抽出物へ添加されたならば、そのときは、香味料を球の外側に有する滑らかな球が製造されると云うことが見出された。
【0065】
実施例16
FT 110型高速抽出機を以下の設定:
TP0=1:30
TP1=2:00
サイクル数=35
PMax=9
PMin=6
で用いて、ウコンを10%エタノール(96v/v%)及び90%脱イオン水の溶液で一晩抽出した。
【0066】
15gのEPグレードNaClを180mlのポリエチレン容器中の100mlの脱イオン水に添加した。蓋をし、透明な無色溶液が得られるまで内容物を振り混ぜた。次に、この溶液の50mlをもう1つの180mlポリエチレン容器に加え、そして50mlのハーブ抽出物を添加した。蓋をして、均一溶液が形成されるまで内容物を振り混ぜた。この溶液を次に、140℃の温度で(他の設定は以前と同じ)、Buchi のミニ噴霧乾燥機B-290型機を用いて噴霧乾燥した。
得られた製品は、ウコン中の有機高分子の助けで形成された白色粉末であった。この粉末への水の添加で鮮やかな黄色溶液が得られ、ウコンが球内に捕捉されたことを示唆する。
【0067】
実施例17
それぞれ約11.2gの重さを持つ2種類の固形牛スープの素及び食塩15gを、180mlポリエチレン容器中の脱イオン水100ml中へ添加した。蓋をして、内容物を溶解するまで振り混ぜた。溶液を次に、140℃の温度で(他の設定は以前と同じ)、Buchi のミニ噴霧乾燥機B-290を用いて噴霧乾燥した。この結果、高い香味強度を有する滑らかな球が得られた。
【0068】
実施例18
2gのリゾチーム及び30gのNaClを、250mlのガラスビーカー中の脱イオン水200ml中へ添加し、磁気回転子を入れた。ビーカーをCorning社の撹拌熱プレート上に置き、内容部を固体が溶解するまでかき混ぜた。次に、納豆20gを添加し、溶液を30分間かき混ぜた。
溶液を次に、Sigma 2-16型機上で、4060gで14分間遠心分離した。上澄み液を集めた。その溶液を、195℃の設定温度で、他の設定は以前と同じで、Buchiのミニ噴霧乾燥機B-290型機を用いて噴霧乾燥した。
微粒子食塩製品を得た。
別の試験は、製品中に取り込まれたリゾチームがその活性を維持していることを示した。
【0069】
実施例19
15gの食塩及び0.5gのマルトデキストリンを180mlのポリエチレン容器中の脱イオン水100ml中へ添加した。蓋をして、透明無色溶液が得られるまで内容物を振り混ぜた。グラウンドシナモン(グリーンキュジーヌ又は野菜料理)を添加し、蓋を閉めて内容物を振り混ぜた。
シナモンが部分的に溶解して溶液中に分散した。そこで、磁気回転子を加え、内容物をCorning社の熱プレート攪拌機上に置き、溶液を30分間かき混ぜた。次に溶液をSigma 2-16型機上にて、4060gで14分間、遠心分離した。透明な上澄み液を195℃の設定温度で、他の設定は以前と同じで、Buchiのミニ噴霧乾燥機B-290型機を用いて噴霧乾燥した。
【0070】
得られた製品は特徴的香りを持った白色結晶性粉末であった。製品を図10のSEM像に示す。このSEM像で、製品が中空の「食塩球」から成り立っていることが見て取れ、その殻が個々の微結晶から形成されているように見て取れて、シナモンが結晶球内に含まれていることを示唆する。
【0071】
実施例20
この実施例は、上記実施例1によって得られたアラビアガム・食塩製品(「GA食塩」)のパン焼きにおける用途を実証する。
標準操作を用いて、以下の成分から4種のパンを製造した:
【0072】
対照 (1.3% 食塩) GA食塩 (0.5%) GA食塩 (0.3%) GA食塩(1.3%)
小麦粉 380 g 380 g 380 g 380 g
改良剤 40 g 40 g 40 g 40 g
酵母菌 小匙3/4杯 小匙3/4杯 小匙3/4杯 小匙3/4杯
/小匙(tsp)
砂糖/(tsp) 小匙1杯 小匙1杯 小匙1杯 小匙1杯
バター/g 15 g 15 g 15 g 15 g
食塩/g 5.6g 2.1 g 1.26 g 5.6 g
水/ml 270 ml 270 ml 270 ml 270 ml
【0073】
パン焼きの結果、表1に示される多様なパラメーターが決定された。
【0074】
【表1】
【0075】
湿潤度パーセント(パン中の保水性を表す)が4種のパンについて決定され、表2に示す様になった。
【0076】
【表2】
【0077】
これらの結果から、0.3%食塩を使って調製されたパンが、保存期間及び「新鮮さ」の保持にとって重要な製品中の保水を実証した非常に満足できるローフを生み出した。僅か0.3%の食塩を使って非常に満足できるローフが得られたという事実は、満足できるパン製造に要求されると一般的に考えられている通常食塩の比較的高い水準を考慮すると、驚くべきことである。
【0078】
プロセスのよりよい理解を得る試みとして、我々は、特定のイオンの位置を検出できるエネルギー分散型X線回折(EDX)を用いて、焼きたてのパンのより詳細な分析に取り組んだ。
結果を図11に示すが、「点」は個々のイオンを表している。上部の写真(図11(a))はGA食塩で製造されたパンに対して得られた結果を示し、下部の写真(図11(b))は通常食塩で製造されたパンに対して得られた結果を示す。図11(a)及び(b)の写真から、GA食塩はパン全体にわたって遙かにより均一に分配されていることが分かる。このことが低食塩濃度でのより良好な香味インパクトをもたらし、及び、パン焼きに先立ってグルテンが構造を架橋するためにより利用され易くなるようにグルテンの安定化をもたらす、と我々は信じる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、食塩(即ち、塩化ナトリウム)に関し、及び、より具体的には、食塩製品の製造方法並びに該方法によって得られる食塩の新しい形体に関する。本発明は更に具体的には、非常に細かな粒子径(例えば、100ミクロン未満)を有し、周囲条件下で貯蔵された場合であっても自由流動性を保持する食塩製品に関する。食塩製品は食品の風味を失うことなく比較的低レベルで使用され得ることから、加工食品(manufactured foodstuffs)、例えば、パン、の味付け(seasoning)に用いるのに特に有用である。本発明の食塩製品の他の用途は医薬品の担体である。
【背景技術】
【0002】
一般に、食塩なしの食料品(food)は風味に欠けることから、塩化ナトリウム(以後、文脈が他を意味しない場合は、単に「食塩」という。)は、食料品の味付け/香り付け(flavouring)として、太古の昔から用いられてきた。大量の食塩が、例えば、予備調製食料品(pre-prepared foods)、例えばパン、調理済み食品(ready meals)、ソース、塩漬け肉、ソーセージ、バーガーおよび粉化製品(crumbed products)等の食料品製造工業によって使用される。食塩は、勿論、家庭料理にも使用され、また香辛料として調製された食料品(prepared food)上にふり掛けられる。
【0003】
しかしながら、近年、食品中の過剰の食塩は健康に逆効果を及ぼし得ること、例えば、卒中の危険因子となる高血圧、が明らかになった。問題を大局的にとらえると、英国政府の数字は一人当たりの平均的食塩摂取量は約6.0〜9.0グラム/日であることを示す。しかしながら、英国政府は最大3グラム/日を推奨している。従って、明らかに、少なくとも予備調製食品の現状の食塩含量のある程度の削減は好ましい目標である。
【0004】
その高い食塩含量から批判の対象になる予備加工食品の1つはパンである。英国では、スーパーマーケット及び他の店で売られているパンは、ほぼ1.8〜2.0重量%の食塩を含んでいる。英国食料基準局は、パン中の食塩含量を1.1%へ削減する目標を持っている。
【0005】
原理的に、食料製品(food product)中の食塩の量を削減する一つの方法は、食塩を摩砕して非常に大きな表面積を与えるようにすることであろう。そのことは、より少量の食塩を用いて同じ“味付けレベル”が達成されることを意味する。しかしながら、食塩は吸湿性であって、細かく摩砕された製品は、高価な又は複雑な貯蔵システムを用いて保護されなければ、速やかに再凝集してしまう。この貯蔵システムは、そうでなければ日用品であるものに、追加的コストを付加するであろう。
【0006】
更なる可能性は、食塩の少なくとも一部を、その代替物で置換することである。食塩の代替物には塩化マグネシウム及び塩化カリウムを含むが、これらは、通常消費者に受け入れられない苦み又は金属味を与える。更に、カリウム及びマグネシウムイオンの使用は神経にも影響して血圧の変化を導き得る。他の代替物は有機分子を含み、例えば、グルタミン酸モノナトリウム(MSG)、ペプチド及び核酸ベースの代替物である。しかしながら、これらは独自の問題を持つ。例えば、MSGと関係がある発ガン性の危険が報告されている。加えて、これらの代替物は最終仕上げ食料製品の食感に影響を及ぼし、アレルギー反応を引き起こす可能性を有し得る。その結果、食塩代替物は一つの“問題”を他の問題と置き換えてしまい、その結果、食料品製造業者部門内及び消費者圧力団体内に抵抗を見るに至った。
【0007】
代替物の使用に不具合があるのみならず、パンの場合に食塩レベルの削減、特に食塩レベルが1%未満に削減される場合に伴う不具合がある。即ち、
1.発酵の制御性喪失
2.パン構造(不規則な孔−固まり構造)の喪失
3.パン高さの減少
4.減少した水含量の結果としての保存期間の減少、である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記不具合を取り除き又は軽減することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様において、
(i)溶媒中に溶解した食塩を含む混合物であって、周囲温度条件下で固体である有機物質を更に含む混合物を用意する工程、及び
(ii)前記混合物を噴霧し、そして前記溶媒を蒸発して、前記有機物質を取り込んだ食塩の粒子を含んでなる食塩製品を製造する工程
を含んでなる食塩製品の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は比較例1の結果を示すSEM像である。
【図2】図2は実施例1の結果を示すSEM像である。
【図3】図3は比較例2の結果を示すSEM像である。
【図4】図4は比較例2の結果を示すSEM像である。
【図5】図5は実施例2によって得られた製品の粒子寸法分布を示す。
【図6】図6は実施例3によって得られた製品の粒子寸法分布を示す。
【図7】図7は実施例4によって得られた製品のSEM像である。
【図8】図8は実施例5によって得られた製品のSEM像である。
【図9】図9は実施例6によって得られた製品のSEM像である。
【図10】図10は実施例19によって得られた製品のSEM像である。
【図11】図11は実施例20によって得られたパンのEDXデータである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によれば、食塩(塩化ナトリウム)の溶媒(最も好ましくは、水)中の溶液を含み及び周囲温度で固体である有機物質を更に含む混合物を噴霧して、溶媒が液滴から蒸発して食塩及び有機物質を含む微粒子を残す条件下に霧状の液滴を生成させることによって、非常に有利な特徴(詳細は下記)を持った食塩の製造が可能であることを見出した。本製品の粒子は100ミクロン未満の粒子径を有し得るが、この非常に小さなサイズに拘わらず、食塩製品は本質的に非吸湿性であって、周囲条件下で(例えば、袋又は他の容器中で)特別の注意なしでも、例えば相対湿度70%、15〜25℃で貯蔵された場合に18月を超える期間、自由流動性を保持して貯蔵することができる自由流動性固体のままであり得ることが見出された。
本発明によって製造された食塩製品の主たる用途は、食料品製造における味付けであり、その目的のために食塩製品が栄養用途にとって受け入れ可能な有機物質を伴って製造される。等重量比で、本発明によって製造された食塩製品は、従来の食塩に比べて塩味を強め、同一風味水準を与えつつ食料品中でのより低い量で用いることができる。非常に驚くべきことには、我々は、本発明によって製造された食塩製品が、従来の食塩よりも非常に低い水準で、従来と同一の味を与えることができ、且つ、パン製造工程には悪影響を与えることなくパン製品の製造に用いられ得ることを見出した
【0012】
本発明の方法で製造された食塩製品は、実質的に全ての(95%より多くの)粒子が100μm未満の寸法を有する。実質的に全ての粒子が2〜100μmの範囲の寸法を有してよい。食塩製品は、粒子の95%以上が50μm未満の寸法を有する様であってよい。
【0013】
本発明の方法に沿って製造された好ましい製品は、粒子中で互いに付着しあっている個々の微結晶を含む構造を有する粒子の実質的な割合を含んでなる。これらの粒子の一貫性を維持しているのは有機物質の存在であると我々は信じる。本発明の方法で製造された製品の特に好ましい製品は、中空であって微結晶の外殻から形成されている実質的な割合の粒子を有している。その様な食塩製品の構造は、我々の知る限り、類がない。適切な倍率(例えば、x5000)で走査電子顕微鏡により観察した場合、本発明に沿った食塩製品の好ましい態様は、総じて回転楕円体(真の幾何学的意味において必ずしも球形ではないが)とみられ、且つ、殻が小さな総じて直方形の塩化ナトリウム微結晶から構成される中空構造を持つ、個々の粒子を有している。
【0014】
上記で要約されたように、本発明に沿った食塩製品は、塩化ナトリウム(好ましくは水溶液)を含み、更に周囲温度条件下で本質的に固体である有機物質を含む混合物より調製される。該物質は15〜35℃、より好ましくは15〜25℃の温度範囲において固体であるべきであるが、これらの範囲外でも固体であってもかまわない。有機物質は好ましくは溶媒に可溶なものである。噴霧される混合物が均一溶液であることが特に好ましい。混合物中のいかなる不溶性物質も定法、例えば、遠心分離、ろ過等によって除かれてよい。
【0015】
食塩製品を製造するためには、混合物は、噴霧された液滴から溶媒を蒸発させて上記の特別な食塩製品を製造するような条件下で噴霧される。高められた温度(例えば、100℃〜210℃)が溶媒の蒸発に用いられる。蒸発は熱空気サイクロン効果を用いて達成される。本発明の好ましい製品を得る目的には、異なる有機物質に対して異なる温度が適切であり得る。特定の温度が、以下のようにマルトデキストリン(195℃)及びアラビアガム(140℃)に対して与えられる。最適値は簡単な実験によって決定し得て、当業者の技量の範囲である。
【0016】
噴霧及び蒸発工程は通常のスプレードライ装置を用いて達成し得る。少量バッチ生産のためには、Buchi ミニスプレードライヤーB-290が適切である。Nairo工業規模乾燥機が商業生産に用いることができる。
【0017】
噴霧される混合物は、好ましくは、溶媒重量基準で5〜35重量%、より好ましくは10〜35%、更に好ましくは25〜35重量%の食塩を含む。それに替えて、又は追加的に、混合物は好ましくは、溶媒重量基準で0.1〜20重量%、より好ましくは、0.3〜7重量%の有機物質を含有する。
【0018】
もし、本発明の食塩製品が食料品の味付け用に調製されるときは、塩化ナトリウムは食品グレードの品質であるべきである。
【0019】
有機物質は、好ましくは高分子物質である。広範なそのような高分子物質が本発明に沿って食塩製品を製造するために用いられ得るが、好ましい高分子物質は少なくとも部分的に、及び理想的には実質的に溶媒に可溶である。それ故、好ましい高分子物質は、本発明での使用にとって好ましい溶媒である水への実質的溶解性を持つ。高分子は、栄養的目的にとって許容可能な高分子であるとの制約はあるが、天然又は合成であってよい。
【0020】
天然高分子の例には炭水化物及び蛋白を含む。その様な型の高分子の混合物も使用し得る。もし、高分子が炭水化物の場合は、それは、例えば、マルトデキストリン(例えば、フィルレゾル)、アラビアガム、デンプン(例えば、可溶性のコーンデンプン、ポテトデンプン又は大豆デンプン)、グアーガム、カラギーナン、ヒドロキシプロピルセルロースおよびアガーの1種以上であり得る。もし、マルトデキストリンが使用される場合は、それはデキストロース当量が13.0〜17.0を有するものであってよい。マルトデキストリンが使用されるとき、好ましくは混合物中に溶媒容積基準で0.5重量%で存在する。溶媒の蒸発は(マルトデキストリンが使用されるとき)、好ましくは190℃〜200℃、例えば約195℃で達成される。もしアラビアガムが使用されるとき、それは好ましくは、アカシアガムである。アラビアガムは、好ましくは混合物中に約3重量%の量で存在し、蒸発は好ましくは135〜145℃、例えば、約140℃の温度で達成される。
【0021】
使用し得る天然高分子の更なる例は、バチルスサブチリス(枯草菌)を用いて大豆の発酵によって得られる納豆である。この発酵は大豆表面に“粘着性の生成物”を製造する。大豆は次に当容量の水と混合されて、ホモゲナイズされて、納豆を生成する。
【0022】
使用し得る合成高分子の例はポリエチレングリコールを含むが、食料品への応用には適切ではない。ポリエチレングリコールは、例えば、3,000〜20,000の範囲の分子量を持つ。
【0023】
有機高分子物質(周囲温度で固体である)は、噴霧及びスプレー乾燥に付される混合物を形成するために用いられる好ましい物質であるが、他の有機物質が用いられてよい、例えば、植物又は動物由来脂肪である。
【0024】
食塩製品の製造に用いられる有機物質は製品の特定な性質を与える様に選択される。上記の一つの特性は栄養用途に許容可能な有機物質の選択である。しかしながら、食塩製品に特定の物理的及び/又は化学的性質、例えば、製品の親水性/疎水性、を与える様に物質を選択することも可能である。この様に、例えば、有機物質は、食塩製品の脂溶性特性を与えるための植物脂肪の様な疎水性物質の一種であってよい。その様な脂溶性を与える物質の例は、トレックス(Trex)、カラギーナン及びココナツバターである。それに替えて、有機物質は親水性特性を与えることを意図した物質、例えば、マルトデキストリン、ファイバーゾル及び可溶性デンプンであってよい。更なる可能性は、特定のpH条件下で粒子の分解に抵抗性を付与する高分子の使用である。
【0025】
食塩製品は多様な用途を持ち、その幾つかを以下に詳述する。食塩製品の重要な用途は食料品の味付けである。なぜならば、上記で示したように、食塩製品のより少ない量が、従来の食塩の使用に比して同程度の味付けを得るために使用し得るからである。このことは個人の食塩摂取量のかなりの削減を可能にする。食料品用への使用のために、食塩製品の製造に使用される有機高分子は栄養的使用に許容可能なものであるべきであり、及び、(しかし、必ずではないが)それ自身は、食料製品に何ら重要な風味を付加しないものであってよい(即ち、有機高分子は本質的に“風味−中性”である)。これらの基準に適う有機高分子の例は、アラビアガム(特に、アカシアガム)、マルトデキストリン、グアーガム、カラギーナン、ヒドロキシプロピルセルロース及びアガーアガーである。その様な食塩製品は従来の食塩が採用される全ての用途において、総じて使用され得る。
【0026】
食塩製品は特に(専らではないが)、従来の食塩の代替物としてパンの製造に有用である。食塩製品は、従来の食塩よりも非常に低いレベルで(例えば、70%未満まで)使用されても、要求される味付け度を維持し、並びに、パン製造方法又は最終製品の性質に不利益を与えない。より具体的には、食塩製品は次の如何なる結果をも来さない:
(i)発酵の制御性喪失
(ii)パン構造の喪失(不規則な孔−固まり構造)
(iii)パン高さの減少
(iv)減少した水含量の結果としての保存期間の減少。
【0027】
パン(及び、他のパン製品)は人間の日常的食塩摂取への重要な寄与をしているから、これらの発見は重要な意義を有し、食塩含量を大幅に削減したパンを従来技術で(如何なる変更もなしに)製造することを可能にする。
【0028】
食塩製品は他の加工食料製品の味付けに使用し得る。一つの例は、肉(赤又は白)とそれに由来するソースとを含む料理の製造である。その様な製品に対して、本発明の食塩製品は従来の食塩の50%未満の量まで、食感及び香味を維持しつつ使用できることを見出した。
【0029】
食塩は、ベジタリアン用ソーセージに於いて、香味を損なうことなく、通常水準の25〜50%削減の水準で使用されてきた。食塩は又、食塩水準を70%上限まで削減して、食塩でパンを粉砕した結果としてのパン粉(crumb)に使用されてきた。
【0030】
風味−中性な高分子の使用が多くの食料品応用に適切である一方、高分子が、食塩製品に有益に風味を付与する例がある。この様に、例えば、食塩製品は香味料製品の抽出物で調製され得る。香味料製品は動物又は植物起源であってよく、及び、食塩製品の形成に寄与する有機高分子(例えば、炭水化物、及び/又は蛋白)を含む。この高分子はそれ自体、香味付けとなり得る。それに代えて、香味付け抽出物は、高分子及び食塩製品に取り込まれる(分離した)香味料自体(flavouring per se)を含んでよい。香味料成分の例は、例えば、肉抽出物(例えば、牛肉、豚肉又は羊肉起源の)、魚抽出物、野菜抽出物(例えば、タマネギ、ニンニク)、ハーブ抽出物(例えば、バジル)、同様に、他の香味料抽出物(例えば、チリ唐辛子)である。
【0031】
前の段落で、香味付け抽出物(flavouring extract)が製品を形成する高分子を与える食塩製品へ言及された一方、食塩製品を風味−中性高分子(例えば、アラビアガム)で形成し、少なくとも1つの非高分子香味付け成分を混合物中に取り込み、噴霧及び蒸発に付して、それによって、香味付けされた食塩製品を得るという可能性もある。
【0032】
前二段落で議論された香味付けされた食塩製品は、勿論、より少量の食塩が食料品中に使用されるという利点と共に、食料製品の製造に要求される食塩及び香味料が単一の食塩製品に備わるという利点を有する。
【0033】
香味付けされた食塩製品は、例えば、“スナック食品”(それは調理され、又は未調理であってよい。)の製造に使用され得る。この様に、例えば、チリ唐辛子を取り込んだ食塩製品はポテトベースの食品(例えば、ポテトチップス)の製造に使用されて、香味付けされた製品を与える。しかしながら、その様なスナック食品(例えば、ポテトベースの)は、チリ唐辛子以外の香り付けを持つ食塩製品で製造し得ると云うことが理解し得るであろう。
【0034】
更なる食品適用はドリンク、所謂「エネルギードリンク」製造用の食塩製品の使用である。
【0035】
更なる応用は、工程(ii)において噴霧及び蒸発に付される混合物中に組み込まれる医薬品の送達システムとしてである。食塩製品は口腔投与が意図されてよく、その様な場合には製品の形成に用いられる有機物質はポリ乳酸のような、粒子が2〜4のpHで溶解することを妨げて耐酸性を与える腸溶性高分子、及び、徐放性の尺度を与える糖類(デキストローズ)であってよい。胃を通過して腸への輸送を与える標準的医薬コーティングもまた適用され得る。
【実施例】
【0036】
本発明は以下の非限定的実施例及びその図面を参照することによって説明されるであろう。
【0037】
図1は比較例1の結果を示すSEM像である。
図2は実施例1の結果を示すSEM像である。
図3および4は比較例2の結果を示すSEM像である。
図5は実施例2によって得られた製品の粒子寸法分布を示す。
図6は実施例3によって得られた製品の粒子寸法分布を示す。
図7は実施例4によって得られた製品のSEM像である。
図8は実施例5によって得られた製品のSEM像である。
図9は実施例6によって得られた製品のSEM像である。
図10は実施例19によって得られた製品のSEM像である。
図11は実施例20によって得られたパンのEDXデータである。
【0038】
以下の実施例及び比較例において、使用した食塩はFisher Scientific社のEPグレード(Eur pH)の塩化ナトリウムである。
【0039】
比較例1
食塩を50μmの粒子寸法に磨砕した。磨砕された粒子は周囲条件下で急速に凝集体を形成した。凝集体のSEM像(倍率x30)を図1の左側に示したが、図1はまた、比較の為に、約500μmの寸法を持つ通常の長斜方形結晶を有する非磨砕食塩結晶を含む。
【0040】
実施例1
容器中のイオン交換水100ml中に溶解した15gの食塩の溶液に、アラビアガム(アカシアガム−Fluka社のex)3gを添加した。容器上に蓋を被せ、透明で均一な溶液が形成されるまで内容物を振り混ぜた(代わりに、均一溶液を得るために、Silversonの乳化剤を用いても良い)。
【0041】
次に、溶液をBuchiのミニスプレードライヤー290型機を用いて噴霧乾燥した。ドライヤーの設定パラメーターは以下の通りである:
アスピレーター(%)=100
ポンプ(%)=30
空気流れ(mm)=40
ノズル洗浄=1分間に3回
設定温度=140℃
【0042】
この操作によって溶液の急速な再結晶が起こって製品が得られ、その結晶構造が図2のSEM像に表されている。この図に示されるように、得られた食塩製品は全体的に球状粒子(食塩及びアラビアガムの双方を含んでいる)を包含している。これらの粒子は中空であって、その外殻は、概ね正方形又は長方形の外観をした食塩の個々の微結晶を含有する。
【0043】
重要なことは、実施例1の食塩製品は、周囲条件下で18カ月の期間、凝集体又は塊を形成しなかったことである。食塩製品は非脂溶性であり、及び食料製品の製造における味付けとしての使用に適していた(下記の実施例22も参照のこと)。
【0044】
比較例2
食塩溶液にアラビアガムを添加しない他は、実施例1の操作を繰り返した。
得られた製品のSEM像を図3に示す(倍率x750)。図3から、アラビアガムなしで得られた食塩は、アラビアガムを用いて得られた図2に示した「結晶球」を形成していないことが明確に判る。
比較例1の製品はその製造後1時間未満で、周囲条件下で急速に凝集体及び塊を形成した。凝集した食塩は図4のSEM像(倍率x2000)に示されるが、この図もまた「結晶球」構造の不存在を裏付けている。
【0045】
実施例2
食塩30g及びアラビアガム2%を用いる以外は、実施例1の操作を繰り返した。
製造された製品のMastersizer(レーザー光分散装置)上で得られた粒子寸法分布を図5に示す。全ての粒子が30μm未満の寸法であることが判るであろう。
【0046】
粒子寸法の平均値が6〜7μmと決定された。
以下の追加的データが決定された:
比表面積=1.75m2/g、表面加重平均D[3, 2]3.422μm、体積加重平均D[4,3]5.939μm、
d(0.1)=1.697μm、d(0.5)=4.977μm、d(0.9)=11.673μm:
ここで、
d(0.1)はサンプルの10%未満が存在する粒子寸法、
d(0.5)はサンプルの50%がその粒子寸法より小さく、サンプルの50%がその粒子寸法より大きな粒子寸法、
d(0.9)はサンプルの90%未満が存在する粒子寸法である。
製品は周囲条件下で非凝集性であった。
【0047】
実施例3
実施例2において採用したBuchi スプレー乾燥機と同じパラメーター(T=140℃)でNairoスプレー乾燥機を用いる他は、実施例2を繰り返した。Buchi スプレー乾燥機は実験室規模の装置であるのに対して、この実施例で用いたNairoスプレー乾燥機は工業規模での食塩製品の製造の可能性を実証する目的で用いた。
製造された製品のMastersizer(レーザー光分散装置)上で得られた粒子寸法分布を図6に示す。全ての粒子が100μm未満の寸法であることが判るであろう。
【0048】
平均粒子寸法は11〜12μmと決定された。
以下の追加データが決定された:
非表面積 1.12m2/g、表面加重平均D[3,2] 5.337μm、体積加重平均D[4,3] 13.090μm
d(0.1)3.175μm、d(0.5)10.248μm、d(0.9)=27.161μm、
ここで、
d(0.1)はサンプルの10%未満が存在する粒子寸法、
d(0.5)はサンプルの50%がその粒子寸法より小さく、サンプルの50%がその粒子寸法より大きな粒子寸法、
d(0.9)はサンプルの90%未満が存在する粒子寸法である。
【0049】
実施例4
180mlのポリエチレン容器中の脱イオン水100ml中に、デキストロース当量13.0〜17.0を有するマルトデキストリン(ex Sigma Aldrich)0.5g及び食塩15gを添加した。蓋をして、透明な均一溶液が形成されるまで、内容物を振り混ぜた。次に、溶液をBuchiのミニスプレードライヤー290型機を用いて、設定温度を195℃とする以外は実施例1と同じ設定で噴霧乾燥した。
製品のSEM像(倍率x5000)を図7に示す。粒子が個々の食塩の微結晶から形成された殻を有する中空球を含むことが見られるであろう。
【0050】
実施例5
脱イオン水100ml中の食塩15gの水溶液にデキストロース当量13.0〜17.0を有するマルトデキストリン(ex Sigma Aldrich)0.5gを、混合下に添加した。生成した混合物中に1.5gのアスピリンを添加し、更に、乳化剤Silversonを用いて混合を促進した。
得られた混合物を、次に、Buchiのミニスプレードライヤー290型機を用いて、実施例4と同じパラメーターに設定して噴霧乾燥した。
そのSEM像(倍率x1500)が図8に示されている微粒子状の食塩製品が製造された。製造された粒子は1nm〜100nmの寸法範囲を有しており、粒子は概ね球形及び中空であった。
【0051】
図8に見られるように、「食塩球」は「滑らかな」概観を呈し、球を形成している個々の微結晶が、幾つかを除いては図7に見られるようには視認できないことから、アスピリンが球の外表面上の塗膜として析出したことを実証している。アスピリンの濃度を増加させることによって、「塗膜厚み」を制御することが可能である(データは提示していない)。
【0052】
実施例6
脱イオン水100ml中の食塩15gの水溶液中に実施例4で用いられた型のマルトデキストリン0.5gを添加した。この食塩及びマルトデキストリンの混合物中へ1.5gのニンニク抽出物を添加した。乳化剤Silversonを用いて混合を促進した。得られた溶液を次に、Buchiのミニスプレードライヤー290型機を用いて、実施例4と同じパラメーターに設定して噴霧乾燥した。
得られた製品のSEM像(倍率x9000)を図9に示した。粒子は1nm〜100μm、平均約7μmの範囲の寸法を有していた。図9に示された粒子は、約500μmの結晶寸法を有する食卓塩の通常の長斜方形結晶から、明らかに球形成を助ける平面三角形状へと変化した結晶構造を明確に実証している。図9に示されるように、これらの個々の微結晶の寸法は約1μmx0.5μmである。
【0053】
実施例7
食塩15g、アスピリン1g及び納豆0.15gを180mlのポリエチレン容器中の脱イオン水100ml中へ添加し、15分間、超音波撹拌した。溶液は完全には溶解しなかったので、次に水浴中で37℃に加熱した。
液体をSigma 2-16型機にて6183rpm及び4060gで遠心分離した。次いで、上澄み液をBuchiのミニスプレードライヤーB-290型機を用いて、温度が195℃である点を除けば前記と同じ設定で噴霧乾燥した。微結晶食塩製品を得た。
【0054】
実施例8
食塩15g、カフェイン1g及び納豆1gを180mlのポリエチレン容器中の脱イオン水100ml中へ添加した。蓋をして、内容物を振り混ぜた。溶液をSigma 2-16型機にて1683rpm、4060gで14分間遠心分離した。次いで、上澄み液をBuchiのミニスプレードライヤーB−290型機を用いて、実施例7と同じ設定にて温度195℃で噴霧乾燥した。微結晶食塩製品を得た。
【0055】
脱イオン水100ml中の食塩15gの水溶液へ、20,000の分子量を持つPEGを3g添加した。この中へアスピリン10gを添加した。この溶液をBuchiのミニスプレードライヤーB−290型機を用いて、温度を140℃とする以外は以前と同じ設定で噴霧乾燥し、1μm〜100μmの寸法範囲にあるカプセルを製造した。
【0056】
実施例10
この実施例は、バジルに基づく香り付け添加物の製造を実証する。
バジルの葉を最初に手で砕き、次いで手持ち混合機で混合し、最後に、乳棒とモーターで破砕して、抽出用に準備した。
バジルを96%v/vエタノール10%及び脱イオン水90%で一晩、FT 110高速抽出機で、下記設定にて抽出した:
TP0=1:30
TP1=2:00
サイクル=35
PMax=9
PMin=6
【0057】
バジル抽出物を次ぎに6461gで15分間遠心分離し、次に上澄み液を更に以下のように処理した:
250mlのガラスビーカー中の脱イオン水100mlに、食塩30g及び3000PEGを12g添加した。ビーカーをCorningの攪拌機/熱プレート上に載せ、磁気回転子を入れた。溶液を55℃で透明な無色液体が形成されるまで撹拌した。
180mlのポリエチレン容器にバジル抽出物75mlを添加し、25mlの脱イオン水を添加した。蓋を閉めて、均一溶液が形成されるまで内容物を振り混ぜた。PEG溶液を含むビーカー中へバジル抽出物100mlを添加し、その溶液を均一溶液が形成されるまで撹拌した。この溶液をBuchiのミニスプレードライヤーB−290型機を用いて、温度を140℃とする以外は以前と同じ設定で噴霧乾燥した。
バジル香味料を取り込んだ微粒子状の食塩製品が得られた。
【0058】
実施例11
それぞれ約11.2gの重さを有する2種の固形野菜スープの素、及び15gの食塩を、180mlのポリエチレン容器中の脱イオン水100ml中へ添加した。蓋をして内容物を溶解するまで振り混ぜた。次に、この溶液をBuchiのミニスプレードライヤーB−290型機を用いて、温度を140℃とする以外は以前と同じ設定で噴霧乾燥した。
製品は白色結晶で自由流動性のある食塩で、固形野菜スープの素の高い香味刺激を有していた。
【0059】
実施例12
180mlのポリエチレン容器中の脱イオン水100mlへ、15gの食塩及び0.15gの納豆を添加した。混合物をSilverson乳化剤と共に高剪断力に晒し、続いて、Sigma 2-16型機上、4060gで14分間遠心分離した。得られた上澄み液を次にBuchiのミニスプレードライヤーB−290型機を用いて、温度を195℃とする以外は以前と同じ設定で噴霧乾燥した。
製品は白色結晶で自由流動性のある食塩で、納豆の高い香味刺激を持っていたが、納豆の典型的な臭いは無かった。
【0060】
実施例13
180mlのポリエチレン容器中の脱イオン水100mlへ、15gの食塩及び0.5gのマルトデキストリン(実施例4で使用したものと同じもの)を添加した。蓋をして、透明な無色溶液が形成されるまで内容物を振り混ぜた。8gの天然チョコレート香味料製品No. 013061(Carmi Flavors)を容器に添加し、次いで内容物を透明な均一褐色溶液が形成されるまで振り混ぜた。溶液を次に、BuchiのミニスプレードライヤーB−290型機を用いて、195℃の設定温度とし、他の設定は以前と同じにして、噴霧乾燥した。
得られた製品は1〜100μmの寸法範囲の製品のカプセルを含んでおり、その粉末は自由流動性を有し、黒褐色であった。香味は強いチョコレートの香味であった。
【0061】
実施例14
この実施例は、本発明による食塩製品の水不溶性形体の製造を実証する。
180mlのポリエチレン容器中の脱イオン水100mlへ、15gの食塩、0.1gのホウ酸及び0.5gのマルトデキストリン(実施例4で使用したものと同じもの)を添加した。蓋をして溶解するまで内容物を振り混ぜた。植物性脂肪(Terex)5gを熱プレート上に置いた250mlのガラスビーカー中に添加して、植物性脂肪が溶融するまで加熱した。熱いうちに、植物性脂肪中へエタノール(96%v/v)を10ml添加した。
次に、ポリエチレン容器からの溶液90mlをビーカーに加え、その内容物を次にSilverston L4R型機を用いて速度2で混合した。静かに混合しながら、その溶液をBuchiのミニスプレードライヤーB−290型機を用いて195℃の設定温度で、他の設定は以前と同じにして噴霧乾燥して、軽食用や、加えて、パン製造に適する水不溶性の白色粉末を形成した。
得られた白色粉末は少なくとも18ヶ月間、高い食塩刺激を保ちつつ自由流動性を維持した。
【0062】
実施例15
全体的に新鮮なタマネギをジョッキ型混合機で砕いて抽出用に用意した。次に、そのタマネギをFT 110型高速抽出機を、以下の設定で用いて、10%エタノール(96%v/v)及び90%脱イオン水で抽出した。
TP0=1:30
TP1=2:00
サイクル数=35
PMacx=9
PMin=6
【0063】
30gの食塩及び12gの3000PEGを250mlのガラスビーカー中の脱イオン水100ml中へ添加した。ビーカーをCorning社の攪拌機/熱プレート上に置き、磁気回転子を入れた。
溶液を透明無色の液体が形成されるまでかき混ぜた。次に、タマネギ抽出物100mlを食塩溶液に添加し、その混合物を高剪断力に晒して(Silverson乳化剤)均一溶液を製造した。溶液を140℃の温度でBuchi のミニ噴霧乾燥機 B - 290中で噴霧乾燥した。製品は球の内側にタマネギ抽出物を有するミクロ結晶球を生成した。
【0064】
この処方及び他の処方により、もし食塩がタマネギ抽出物へ添加されたならば、そのときは、香味料を球の外側に有する滑らかな球が製造されると云うことが見出された。
【0065】
実施例16
FT 110型高速抽出機を以下の設定:
TP0=1:30
TP1=2:00
サイクル数=35
PMax=9
PMin=6
で用いて、ウコンを10%エタノール(96v/v%)及び90%脱イオン水の溶液で一晩抽出した。
【0066】
15gのEPグレードNaClを180mlのポリエチレン容器中の100mlの脱イオン水に添加した。蓋をし、透明な無色溶液が得られるまで内容物を振り混ぜた。次に、この溶液の50mlをもう1つの180mlポリエチレン容器に加え、そして50mlのハーブ抽出物を添加した。蓋をして、均一溶液が形成されるまで内容物を振り混ぜた。この溶液を次に、140℃の温度で(他の設定は以前と同じ)、Buchi のミニ噴霧乾燥機B-290型機を用いて噴霧乾燥した。
得られた製品は、ウコン中の有機高分子の助けで形成された白色粉末であった。この粉末への水の添加で鮮やかな黄色溶液が得られ、ウコンが球内に捕捉されたことを示唆する。
【0067】
実施例17
それぞれ約11.2gの重さを持つ2種類の固形牛スープの素及び食塩15gを、180mlポリエチレン容器中の脱イオン水100ml中へ添加した。蓋をして、内容物を溶解するまで振り混ぜた。溶液を次に、140℃の温度で(他の設定は以前と同じ)、Buchi のミニ噴霧乾燥機B-290を用いて噴霧乾燥した。この結果、高い香味強度を有する滑らかな球が得られた。
【0068】
実施例18
2gのリゾチーム及び30gのNaClを、250mlのガラスビーカー中の脱イオン水200ml中へ添加し、磁気回転子を入れた。ビーカーをCorning社の撹拌熱プレート上に置き、内容部を固体が溶解するまでかき混ぜた。次に、納豆20gを添加し、溶液を30分間かき混ぜた。
溶液を次に、Sigma 2-16型機上で、4060gで14分間遠心分離した。上澄み液を集めた。その溶液を、195℃の設定温度で、他の設定は以前と同じで、Buchiのミニ噴霧乾燥機B-290型機を用いて噴霧乾燥した。
微粒子食塩製品を得た。
別の試験は、製品中に取り込まれたリゾチームがその活性を維持していることを示した。
【0069】
実施例19
15gの食塩及び0.5gのマルトデキストリンを180mlのポリエチレン容器中の脱イオン水100ml中へ添加した。蓋をして、透明無色溶液が得られるまで内容物を振り混ぜた。グラウンドシナモン(グリーンキュジーヌ又は野菜料理)を添加し、蓋を閉めて内容物を振り混ぜた。
シナモンが部分的に溶解して溶液中に分散した。そこで、磁気回転子を加え、内容物をCorning社の熱プレート攪拌機上に置き、溶液を30分間かき混ぜた。次に溶液をSigma 2-16型機上にて、4060gで14分間、遠心分離した。透明な上澄み液を195℃の設定温度で、他の設定は以前と同じで、Buchiのミニ噴霧乾燥機B-290型機を用いて噴霧乾燥した。
【0070】
得られた製品は特徴的香りを持った白色結晶性粉末であった。製品を図10のSEM像に示す。このSEM像で、製品が中空の「食塩球」から成り立っていることが見て取れ、その殻が個々の微結晶から形成されているように見て取れて、シナモンが結晶球内に含まれていることを示唆する。
【0071】
実施例20
この実施例は、上記実施例1によって得られたアラビアガム・食塩製品(「GA食塩」)のパン焼きにおける用途を実証する。
標準操作を用いて、以下の成分から4種のパンを製造した:
【0072】
対照 (1.3% 食塩) GA食塩 (0.5%) GA食塩 (0.3%) GA食塩(1.3%)
小麦粉 380 g 380 g 380 g 380 g
改良剤 40 g 40 g 40 g 40 g
酵母菌 小匙3/4杯 小匙3/4杯 小匙3/4杯 小匙3/4杯
/小匙(tsp)
砂糖/(tsp) 小匙1杯 小匙1杯 小匙1杯 小匙1杯
バター/g 15 g 15 g 15 g 15 g
食塩/g 5.6g 2.1 g 1.26 g 5.6 g
水/ml 270 ml 270 ml 270 ml 270 ml
【0073】
パン焼きの結果、表1に示される多様なパラメーターが決定された。
【0074】
【表1】
【0075】
湿潤度パーセント(パン中の保水性を表す)が4種のパンについて決定され、表2に示す様になった。
【0076】
【表2】
【0077】
これらの結果から、0.3%食塩を使って調製されたパンが、保存期間及び「新鮮さ」の保持にとって重要な製品中の保水を実証した非常に満足できるローフを生み出した。僅か0.3%の食塩を使って非常に満足できるローフが得られたという事実は、満足できるパン製造に要求されると一般的に考えられている通常食塩の比較的高い水準を考慮すると、驚くべきことである。
【0078】
プロセスのよりよい理解を得る試みとして、我々は、特定のイオンの位置を検出できるエネルギー分散型X線回折(EDX)を用いて、焼きたてのパンのより詳細な分析に取り組んだ。
結果を図11に示すが、「点」は個々のイオンを表している。上部の写真(図11(a))はGA食塩で製造されたパンに対して得られた結果を示し、下部の写真(図11(b))は通常食塩で製造されたパンに対して得られた結果を示す。図11(a)及び(b)の写真から、GA食塩はパン全体にわたって遙かにより均一に分配されていることが分かる。このことが低食塩濃度でのより良好な香味インパクトをもたらし、及び、パン焼きに先立ってグルテンが構造を架橋するためにより利用され易くなるようにグルテンの安定化をもたらす、と我々は信じる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)溶媒中に溶解した食塩を含む混合物であって、周囲温度条件下で固体である有機物質を更に含む混合物を用意する工程、及び
(ii)前記混合物を噴霧し、前記溶媒を蒸発して、前記有機物質を取り込んだ食塩の粒子を含んでなる食塩製品を製造する工程
を含んでなる食塩製品の製造方法。
【請求項2】
有機物質が溶媒中に溶解される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(ii)で噴霧される混合物が均一溶液である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(ii)の前記蒸発が高められた温度で達成される請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記高められた温度が100℃〜210℃の範囲である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(ii)がスプレードライによって達成される請求項1〜5のいずれか1つに記載された方法
【請求項7】
前記溶媒が水である請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
混合物が溶媒重量に基づき5〜35重量%の食塩を含んでなる請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
混合物が溶媒重量に基づき10〜35重量%の食塩を含んでなる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
混合物が溶媒重量に基づき25〜35重量%の食塩を含んでなる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
混合物が溶媒重量に基づき0.1〜20重量%の有機物質を含んでなる請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
混合物が溶媒重量に基づき0.3〜7重量%の有機物質を含んでなる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
有機物質が少なくとも1つの高分子物質を含んでなる請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
高分子物質が少なくとも1つの炭水化物、タンパク質または有機高分子を含んでなる請求項13に記載の方法。
【請求項15】
高分子物質がマルトデキストリン、アラビアガム、デンプン(例えば、コーンデンプン、ポテトデンプンまたは大豆デンプン)、グアーガム、カラギーナン、ヒドロキシプロピルセルロースおよびアガーアガーから選ばれた少なくとも1つの炭水化物を含んでなる請求項14に記載の方法。
【請求項16】
炭水化物がアラビアガムである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記蒸発が約140℃で達成される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記混合物が溶媒重量に基づき約3重量%のアラビアガムを含む請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
炭水化物がマルトデキストリンである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記蒸発が約195℃で達成される請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記混合物が溶媒重量基準で約0.5重量%のマルトデキストリンを含んでなる請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
高分子がポリ(エチレングリコール)である有機合成高分子を含んでなる請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記混合物が少なくとも1つの添加物を食塩製品中の内包物として取り込む請求項1〜22のいずれか1つに記載の方法。
【請求項24】
添加物が香味料、医薬または脂肪である請求項15に記載の方法。
【請求項25】
食塩製品の実質的に全ての粒子が150μm未満、好ましくは100μm未満である請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項26】
製造される粒子の実質的な割合が中空であり、粒子中で個々の微結晶が互いに付着し合っている請求項1〜25のいずれか1つに記載の方法。
【請求項27】
該方法で製造される粒子の実質的割合が中空であり、前記微結晶の外殻から形成される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
請求項1〜27のいずれか1つに記載の方法によって得られる食塩製品。
【請求項29】
食塩および周囲温度において固体の有機物質を含む粒子を含んでなる食塩製品であって、前記製品の粒径が実質的に150μm未満(好ましくは100μm未満)の寸法であり、粒子中で互いに付着し合っている個々の食塩の微結晶を含んでなる構造を有する食塩製品。
【請求項30】
粒子が中空であり、および前記微結晶の外殻で形成されている請求項29に記載の食塩製品。
【請求項31】
前記中空粒子がほぼ球形である請求項30に記載の方法。
【請求項32】
栄養用途に適した請求項28〜31のいずれか1つに記載の食塩製品。
【請求項33】
請求項32に記載の食塩製品で味付けされた食品。
【請求項34】
パン、肉製品、魚製品またはソースである請求項33に記載の食品。
【請求項35】
スナック食品である請求項33に記載の食品。
【請求項36】
飲料である請求項33に記載の食品。
【請求項37】
味付けが請求項32に記載の食塩製品で達成されることを特徴とする食品の味付け方法。
【請求項38】
食品の前駆体を製造すること、該前駆体が請求項32に記載の食塩製品を取り込むこと、およびその前駆体を料理して食品を製造することを含んでなる食品の製造方法。
【請求項39】
(a)請求項32に記載の食塩製品を取り込んだパン生地を製造する工程、および、
(b)パン生地を調理してパン製品を製造する工程、
を含んでなるパン製品を製造する方法。
【請求項40】
医薬用途に適した請求項28〜32のいずれか1つに記載の食塩製品。
【請求項41】
医薬を取り込んだ請求項40に記載の食塩製品。
【請求項1】
(i)溶媒中に溶解した食塩を含む混合物であって、周囲温度条件下で固体である有機物質を更に含む混合物を用意する工程、及び
(ii)前記混合物を噴霧し、前記溶媒を蒸発して、前記有機物質を取り込んだ食塩の粒子を含んでなる食塩製品を製造する工程
を含んでなる食塩製品の製造方法。
【請求項2】
有機物質が溶媒中に溶解される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(ii)で噴霧される混合物が均一溶液である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(ii)の前記蒸発が高められた温度で達成される請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記高められた温度が100℃〜210℃の範囲である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(ii)がスプレードライによって達成される請求項1〜5のいずれか1つに記載された方法
【請求項7】
前記溶媒が水である請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
混合物が溶媒重量に基づき5〜35重量%の食塩を含んでなる請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
混合物が溶媒重量に基づき10〜35重量%の食塩を含んでなる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
混合物が溶媒重量に基づき25〜35重量%の食塩を含んでなる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
混合物が溶媒重量に基づき0.1〜20重量%の有機物質を含んでなる請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
混合物が溶媒重量に基づき0.3〜7重量%の有機物質を含んでなる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
有機物質が少なくとも1つの高分子物質を含んでなる請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
高分子物質が少なくとも1つの炭水化物、タンパク質または有機高分子を含んでなる請求項13に記載の方法。
【請求項15】
高分子物質がマルトデキストリン、アラビアガム、デンプン(例えば、コーンデンプン、ポテトデンプンまたは大豆デンプン)、グアーガム、カラギーナン、ヒドロキシプロピルセルロースおよびアガーアガーから選ばれた少なくとも1つの炭水化物を含んでなる請求項14に記載の方法。
【請求項16】
炭水化物がアラビアガムである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記蒸発が約140℃で達成される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記混合物が溶媒重量に基づき約3重量%のアラビアガムを含む請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
炭水化物がマルトデキストリンである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記蒸発が約195℃で達成される請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記混合物が溶媒重量基準で約0.5重量%のマルトデキストリンを含んでなる請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
高分子がポリ(エチレングリコール)である有機合成高分子を含んでなる請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記混合物が少なくとも1つの添加物を食塩製品中の内包物として取り込む請求項1〜22のいずれか1つに記載の方法。
【請求項24】
添加物が香味料、医薬または脂肪である請求項15に記載の方法。
【請求項25】
食塩製品の実質的に全ての粒子が150μm未満、好ましくは100μm未満である請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項26】
製造される粒子の実質的な割合が中空であり、粒子中で個々の微結晶が互いに付着し合っている請求項1〜25のいずれか1つに記載の方法。
【請求項27】
該方法で製造される粒子の実質的割合が中空であり、前記微結晶の外殻から形成される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
請求項1〜27のいずれか1つに記載の方法によって得られる食塩製品。
【請求項29】
食塩および周囲温度において固体の有機物質を含む粒子を含んでなる食塩製品であって、前記製品の粒径が実質的に150μm未満(好ましくは100μm未満)の寸法であり、粒子中で互いに付着し合っている個々の食塩の微結晶を含んでなる構造を有する食塩製品。
【請求項30】
粒子が中空であり、および前記微結晶の外殻で形成されている請求項29に記載の食塩製品。
【請求項31】
前記中空粒子がほぼ球形である請求項30に記載の方法。
【請求項32】
栄養用途に適した請求項28〜31のいずれか1つに記載の食塩製品。
【請求項33】
請求項32に記載の食塩製品で味付けされた食品。
【請求項34】
パン、肉製品、魚製品またはソースである請求項33に記載の食品。
【請求項35】
スナック食品である請求項33に記載の食品。
【請求項36】
飲料である請求項33に記載の食品。
【請求項37】
味付けが請求項32に記載の食塩製品で達成されることを特徴とする食品の味付け方法。
【請求項38】
食品の前駆体を製造すること、該前駆体が請求項32に記載の食塩製品を取り込むこと、およびその前駆体を料理して食品を製造することを含んでなる食品の製造方法。
【請求項39】
(a)請求項32に記載の食塩製品を取り込んだパン生地を製造する工程、および、
(b)パン生地を調理してパン製品を製造する工程、
を含んでなるパン製品を製造する方法。
【請求項40】
医薬用途に適した請求項28〜32のいずれか1つに記載の食塩製品。
【請求項41】
医薬を取り込んだ請求項40に記載の食塩製品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2011−518573(P2011−518573A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506783(P2011−506783)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050458
【国際公開番号】WO2009/133409
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(510290083)エミネイト・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Eminate Limited
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050458
【国際公開番号】WO2009/133409
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(510290083)エミネイト・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Eminate Limited
【Fターム(参考)】
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