説明

食後の血糖値上昇抑制剤

【課題】食後の血糖値上昇抑制剤の提供。
【解決手段】カメリアシネンシス由来のフラボノールアグリコン及びフラボノール配糖体を含有するポリフェノール組成物であって、次の(A)及び(B):(A)高速液体クロマトグラフィーにより測定される、加水分解後の当該ポリフェノール組成物の固形分中のフラボノールアグリコンの総量(B)酒石酸鉄法により測定される、当該ポリフェノール組成物の固形分中のポリフェノールの総量の質量比[(B)/(A)]が0.01〜18である組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食後の血糖値上昇抑制剤、α−アミラーゼ活性阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、摂取カロリーの過多が生活習慣病の原因となっている。特にデンプンを始めとする炭水化物の消化を抑えることは肥満の予防・治療に有効であると考えられ、デンプンの消化酵素であるα−アミラーゼの活性を阻害する物質が近年注目されている。
中央アメリカ原産の潅木であるグァバは、その果実、根及び葉が民間で生薬として糖尿病治療や下痢止めに用いられているが、最近、その葉を水又は親水性溶媒により抽出して得られたエキスに、α−アミラーゼ活性阻害作用があることが見出され、健康飲料(特許文献1)やダイエット飲食品(特許文献2)として使用されている。
【0003】
一方、カテキン類については、コレステロール上昇抑制(特許文献3)、αアミラーゼ活性阻害(特許文献4)、更には蓄積体脂肪の燃焼促進、食事性脂肪の燃焼促進、肝臓β酸化遺伝子の発現促進等(特許文献5)の効果を有することが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭60−36746号公報
【特許文献2】特開平7−59539号公報
【特許文献3】特開昭60−156614号公報
【特許文献4】特開平3−133928号公報
【特許文献5】特開2002−326932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カメリアシネンシス由来のポリフェノール組成物が食後の血糖値上昇抑制作用、α−アミラーゼ活性阻害作用を有するとの報告はない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、カメリアシネンシス由来の抽出物について種々検討したところ、フラボノールアグリコン及びその配糖体の含有比率の高いポリフェノール組成物が存在するとの知見を得た。本発明者らは、更に詳細に検討したところ、このポリフェノール組成物が食後の血糖値上昇抑制作用とともに、α−アミラーゼ活性阻害作用をも有することを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、カメリアシネンシス由来のフラボノールアグリコン及びフラボノール配糖体を含有するポリフェノール組成物であって、次の(A)及び(B):
(A)高速液体クロマトグラフィーにより測定される、加水分解後の当該ポリフェノール組成物の固形分中のフラボノールアグリコンの総量
(B)酒石酸鉄法により測定される、当該ポリフェノール組成物の固形分中のポリフェノールの総量
の質量比[(B)/(A)]が0.01〜18であるポリフェノール組成物を有効成分とする食後の血糖値上昇抑制剤を提供するものである。
【0008】
本発明は、また、カメリアシネンシス由来のフラボノールアグリコン及びフラボノール配糖体を含有するポリフェノール組成物であって、次の(A)及び(B):
(A)高速液体クロマトグラフィーにより測定される、加水分解後の当該ポリフェノール組成物の固形分中のフラボノールアグリコンの総量
(B)酒石酸鉄法により測定される、当該ポリフェノール組成物の固形分中のポリフェノールの総量
の質量比[(B)/(A)]が0.01〜18であるポリフェノール組成物を有効成分とするα−アミラーゼ活性阻害剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、食後の血糖値上昇抑制剤、α−アミラーゼ活性阻害剤が提供される。
本発明の食後の血糖値上昇抑制剤及びα−アミラーゼ活性阻害剤(以下、「本発明の剤」という)は、カメリアシネンシス由来の抽出物から得られる画分を有効成分とするため、長期間に亘って摂取しても安全性が高く、日常的に摂取することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】試験例1における食後の血糖値の推移を示す図である。
【図2】試験例2におけるα−アミラーゼ活性阻害作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
先ず、本明細書で使用する用語について説明する。
本明細書において「ポリフェノール」とは、酒石酸鉄法により測定されるものをいい、具体的には、カメリアシネンシスに含まれるカテキン単量体、該カテキン単量体の重合体、フラボノールアグリコン及びフラボノール配糖体等を含有する。ポリフェノールとして、具体的には、フラボノール類、フラバン−3−オール類、プロアントシアニジン類及びそれらの重合体が例示される。また、フラボノール類には、ケルセチン、ミリセチン、ケンフェロール等が包含され、更にフラバン−3−オール類の重合体にはテアフラビン類、ウーロンホモビスフラバン類等が包含される。
「カメリアシネンシス(Camellia sinensis)」とは、ツバキ科ツバキ属のチャノキのことであるが、加工方法により、不発酵茶、半発酵茶、発酵茶に大別することができる。中でも、不発酵茶が好ましい。不発酵茶としては、Camellia属、例えば、C.var.sinensis(やぶきた種を含む)、C.var.assamica及びそれらの雑種から選択される茶から製茶された、茎茶、棒茶、芽茶、番茶、碾茶、釜入り茶等の緑茶が例示される。半発酵茶としては、総称して烏龍茶と呼ばれる鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶等が例示される。発酵茶としては、紅茶と呼ばれるダージリン、ウバ、キーマン等が例示される。ここで、本明細書において「不発酵茶、半発酵茶、発酵茶、緑茶、烏龍茶、紅茶」とは、飲用に供される茶抽出物ではなく、該茶抽出物を得るための茶原料をいう。
本明細書において「フラボノールアグリコン」とは、ミリセチン、ケルセチン及びケンフェロールからなる混合物の総称であり、「フラボノールアグリコンの総量」は上記3種の合計量に基づいて定義される。
本明細書において「フラボノール配糖体」とは、ミリセチン、ケルセチン又はケンフェロールをアグリコン骨格として有する配糖体をいい、これら配糖体に更に糖が結合したものも包含される。
【0012】
次に、本発明の剤について説明する。
本発明の剤は、カメリアシネンシス由来のフラボノールアグリコン及びその配糖体を含有するポリフェノール組成物を有効成分として含有するが、このポリフェノール組成物は、次の(A)及び(B)を特定の比率で含有することを特徴とするものである。
ここで、(A)は、高速液体クロマトグラフィーにより測定される、加水分解後の当該ポリフェノール組成物の固形分中のフラボノールアグリコンの総量(以下、「(A)フラボノールアグリコンの総量」という)である。(A)フラボノールアグリコンの総量は0.7〜50質量%であることが好ましく、風味や水への溶解性の観点から、1.5〜45質量%、更に5〜40質量%、更に7〜35質量%、特に7〜25質量%であることが好ましい。
また、(B)は、酒石酸鉄法により測定される、当該ポリフェノール組成物の固形分中のポリフェノールの総量(以下、「(B)ポリフェノールの総量」という)である。(B)ポリフェノールの総量は5〜95質量%であることが好ましく、風味や水への溶解性の観点から、10〜90質量%、更に15〜80質量%、特に20〜70質量%であることが好ましい。ここで、「固形分」とは、ポリフェノール組成物を105℃の電気恒温乾燥機で3時間乾燥して水などの揮発物質を除いた残分をいう。
そして、上記(A)及び(B)の質量比[(B)/(A)]は0.01〜18であるが、エグ味低減の観点から、0.01〜16、更に0.1〜11、更に0.5〜7、特に1〜5であることが好ましい。
なお、「(A)フラボノールアグリコンの総量」及び「(B)ポリフェノールの総量」は、後掲の実施例に記載の方法により定量されたものである。
【0013】
また、本発明に係るポリフェノール組成物はルチンを含有することができるが、薬理効果の観点から、緑茶抽出物、紅茶抽出物及び烏龍茶抽出物等の従来のカメリアシネンシス由来の抽出物(以下、「カメリアシネンシス抽出物」という)に比べてルチン含有量が高いことが好ましい。具体的には、(C)当該ポリフェノール組成物の固形分中のルチンの含有量は0.4〜30質量%であることが好ましく、より一層の薬理効果向上の観点から、0.8〜25質量%、更に2〜20質量%、特に4〜15質量%であることが好ましい。ここで、「ルチン」とは、フラボノール配糖体の一種であり、ケルセチンの3位の酸素原子にβ−ルチノース(6−O−α−L−ラムノシル−D−β−グルコース)が結合したものである。
【0014】
上記質量比[(B)/(A)]及び(C)ルチン含有量が上記範囲内にあるポリフェノール組成物は、例えば、下記の工程(1)〜(3)によりカメリアシネンシス抽出物を分画して得ることができる。
(1)カメリアシネンシス抽出物を合成吸着剤に吸着させる工程、
(2)上記合成吸着剤に第1の有機溶媒水溶液を接触させて、第1の画分を溶出させる工程、
(3)上記第1の画分を溶出した後の合成吸着剤に、上記第1の有機溶媒水溶液よりも疎水性の高い第2の有機溶媒水溶液を接触させて、ポリフェノール組成物を含む第2の画分を溶出させる工程。
【0015】
上記工程(1)及び(2)においては、例えば、特開2006−160656号公報、特開2008−079609号公報等に記載の方法を採用することができる。
工程(3)に使用する第2の有機溶媒水溶液としては、第1の有機溶媒水溶液と同様にエタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類等の有機溶媒の水溶液が例示される。第2の有機溶媒水溶液としては、第1の有機溶媒水溶液よりも疎水性の高いものであれば特に限定されるものではなく、例えば、第1の有機溶媒水溶液よりも有機溶媒濃度の高い水溶液を使用するか、あるいは第1の有機溶媒よりも炭素数の多い有機溶媒を含む水溶液を使用することができる。
また、有機溶媒水溶液の通液条件は適宜設定することが可能であり、第2の有機溶媒水溶液の通液条件は第1の有機溶媒水溶液と同一でも異なっていてもよい。第1及び第2の有機溶媒水溶液の通液条件は、例えば、通液速度(SV)が0.5〜10[h-1]であり、かつ通液倍数(BV)が合成吸着剤の容量に対して0.5〜10[v/v]である。
工程(3)後においては、第2の画分を濃縮することでポリフェノール組成物を得ることができるが、濃縮は蒸留、減圧蒸留、精留、薄膜蒸留、膜濃縮等により行うことが可能である。また、濃縮前又は濃縮後において、必要によりろ過及び/又は遠心分離処理により夾雑物を分離してもよい。ポリフェノール組成物の形態としては、固体、半固体、液体、スラリー等の種々のものが例示される。
【0016】
また、本発明においては、上記ポリフェノール画分に、カメリアシネンシス抽出物、その濃縮物及びそれらの精製物、並びに他のポリフェノール組成物から選ばれる少なくとも1種を配合して所望の質量比[(B)/(A)]及び(C)ルチン含有量に調整してもよい。「他のポリフェノール組成物」としては、例えば、上記ポリフェノール画分とは異なる分画条件で得られたポリフェノール画分や、上記ポリフェノール画分とは異種のカメリアシネンシス抽出物から得られたポリフェノール画分が例示される。また、「カメリアシネンシス抽出物、その濃縮物及びそれらの精製物」は、上記ポリフェノール画分と同種及び異種の何れのカメリアシネンシスから得られたものであってもよい。
【0017】
カメリアシネンシス抽出物としては、例えば、カメリアシネンシスから熱水又は水溶性有機溶媒により抽出した抽出物が例示される。抽出方法としては、攪拌抽出、カラム抽出、ドリップ抽出等の公知の方法を採用することができる。上記濃縮物とは、カメリアシネンシス抽出物から溶媒を一部除去したものであり、例えば、特開昭59−219384号公報、特開平4−20589号公報、特開平5−260907号公報、特開平5−306279号公報等に記載の方法により調製することができる。カメリアシネンシス抽出物としては、緑茶抽出物が好適に用いられる。緑茶抽出物の濃縮物として、三井農林(株)の「ポリフェノン」、伊藤園(株)の「テアフラン」、太陽化学(株)の「サンフェノン」等の緑茶抽出物の濃縮物の市販品を使用してもよい。また、上記精製物とは、溶剤やカラムを用いてカメリアシネンシス抽出物又はその濃縮物から沈殿物等を除去したものをいい、必要によりタンナーゼ処理しても(例えば、特開2004−321105号公報)、当該タンナーゼ処理後に更に活性炭、酸性白土及び活性白土から選ばれる少なくとも1種で処理してもよい(例えば、特公開2007−282568号公報)。
カメリアシネンシス抽出物、その濃縮物及びそれらの精製物の形態としては、固体、水溶液、スラリー状等の種々のものが例示される。
【0018】
本発明の剤の剤型は特に限定されず、経口投与用の剤型の中から治療や予防の目的に最も適したものを適宜選択することができる。経口投与に適した剤型としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、シロップ剤、溶液剤、乳剤、懸濁剤、チュアブル剤等が挙げられる。
経口投与剤は、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、アルコール類、水、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料等を添加して製造することが可能である。
【0019】
本発明の剤の投与量及び投与回数は、疾患の種類や重篤度、投与形態、患者の年齢や体重等の条件、合併症の有無等の種々の要因により適宜設定することができるが、一般的には、本発明の剤の有効成分(固形分)の投与量として一日当り1mg/kg体重以上、更に3mg/kg体重以上、特に5mg/kg体重以上が好ましい。そして、このような投与量を、一日1回又は数回程度に分けて投与することができる。なお、本発明の剤は、カメリアシネンシス由来の抽出物を原料とするため安全性が高く、実質的な投与量の上限はないが、35mg/kg体重、特に30mg/kg体重とすることが好ましい。
本発明の剤は、ヒトを含む任意の哺乳動物に投与することができるが、好ましくはヒトに投与される。
【0020】
また、本発明においては、上記カメリアシネンシス由来のポリフェノール組成物を有効成分(固形分)とする、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品又は栄養補助食品として提供することができる。これにより、実質的に副作用のない安全な食品として日常的に摂取することが可能になり、食事からの多糖の摂取に伴う血糖値上昇の抑制や上昇した血糖値を低減させ、また食欲を適度に満足させつつ肥満を抑制することも可能である。なお、当該食品中の有効成分の含有量(固形分)は適宜選択することが可能であるが、一般的には0.1〜20質量%、特に0.1〜10質量%が好ましい。
【実施例】
【0021】
1.非重合体カテキン類及びカフェインの測定
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP、島津製作所製)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム(L−カラムTM ODS、4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラディエント法により分析した。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有する蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有するアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。なお、グラディエントの条件は、以下のとおりである。
【0022】
時間(分) A液濃度(体積%) B液濃度(体積%)
0.0 97 3
5.0 97 3
37.0 80 20
43.0 80 20
43.5 0 100
48.5 0 100
49.0 97 3
60.0 97 3
【0023】
2.ルチンの測定
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフ(型式Waters2695、WATERS製)を用い、カラム(Shimpach VP ODS、150×4.6mmI.D.)を装着し、カラム温度40℃でグラディエント法により行った。移動相A液はリン酸を0.05質量%含有する蒸留水溶液、B液はメタノール溶液とし、流速は1mL/分、試料注入量は10μL、UV検出器波長は368nmの条件で行った。なお、グラディエントの条件は、以下のとおりである。
【0024】
時間(分) A液濃度(体積%) B液濃度(体積%)
0.0 95 5
20.0 80 20
40.0 30 70
41.0 0 100
46.0 0 100
47.0 95 5
60.0 95 5
【0025】
3.フラボノールアグリコン(ミリセチン、ケルセチン及びケンフェロール)の測定
(1)試料の加水分解
試料溶液5mLにメルカプトエタノール200μL、2N塩酸500μLを添加した。その後、ドライブロックバス(アズワン株式会社製)にて120℃で40分間加熱し、冷却した。
【0026】
(2)分析
加水分解後の試料溶液中に存在しているミリセチン、ケルセチン及びケンフェロールを、高速液体クロマトグラフィーにより定量した。なお、定量はグラディエント法により行ったが、その条件は上記「ルチンの測定」と同じである。
【0027】
(3)フラボノールアグリコンの総量
上記分析により定量されたミリセチン量、ケルセチン量及びケンフェロール量の総和として求めた。
【0028】
4.ポリフェノールの測定
(1)試薬の調製
1)酒石酸鉄試薬の調製
500mLメスフラスコに硫酸第一鉄七水塩0.50gと(+)酒石酸ナトリウム・カリウム四水和物2.50gを採取し、イオン交換水でメスアップした。
【0029】
2)リン酸バッファーの調製
2000mLメスフラスコにリン酸水素二ナトリウム・二水和物20.00gとリン酸二水素カリウム2.90gを採取し、イオン交換水でメスアップした。この溶液のpHが7.5〜7.6になるように調整した。pH7.6を超える場合、リン酸二水素カリウム・二水和物0.9g/100mL水溶液を添加し、pH7.5未満の場合、リン酸二水素カリウム1.2g/100mL水溶液を添加し調整した。
【0030】
(2)装置及び器具
1)分光光度計(U−2010;日立製作所製)
2)石英製セル(10mm×10mm)
3)25mL、100mL、200mL、500mL、2000mLのメスフラスコ
4)1mL、5mL、10mL、20mL、30mLのホールピペット
5)1mL、3mL、5mLのマイクロピペット
【0031】
(3)分析条件
1)測定波長:540nm
2)温度 :20℃±2℃
【0032】
(4)操作:
1)検量線作成
i)没食子酸エチル約0.5gを使用前に2〜3時間乾燥させた。
ii)200mLメスフラスコに乾燥した没食子酸エチル0.2gを採取し、イオン交換水でメスアップした(100mg/100mL標準液)。
iii)100mLメスフラスコに、ii)の標準液を用い、5mg/100mL、10mg/100mL、20mg/100mL、30mg/100mLの標準液を作製した。
iv)25mLメスフラスコに、iii)の標準液をそれぞれ5mL採取し、酒石酸鉄試薬5mLを加えリン酸バッファーでメスアップした。また、ブランクとして標準液を加えないものを調製した。
v)分光光度計にて吸光度を測定し検量線を作成した。
なお、検量線については下記を目安にし、逸脱した時は再調整した。
R2 :0.9995〜1.0000
検量線傾き:34.5±0.4
切片 :0.3以下
【0033】
2)試料測定
i)イオン交換水にて分光光度計をゼロ補正した。
ii)25mLメスフラスコに試料を所定量採取し、酒石酸鉄試薬5mLを加えリン酸バッファーでメスアップした後、吸光度を測定した。なお、吸光度の測定は、発色後40分以内とした。
【0034】
実施例1
ポリフェノール組成物A
緑茶葉(大葉種)を熱水で抽出した後、噴霧乾燥により緑茶抽出物Aを得た。『緑茶抽出物A』は、非重合体カテキン類濃度30.8質量%、非重合体カテキン類中のガレート率36.0質量%、カフェイン濃度5.5質量%であった。
次いで、『緑茶抽出物A』の非重合体カテキン類濃度が1質量%になるようにイオン交換水で希釈した。次いで、『緑茶抽出物A』の希釈液800gをカラム(内径50mm×高さ180mm、容積353.3mL)に充填した合成吸着剤(SP−70、三菱化学(株)製)200mLに吸着させた。次いで、イオン交換水300mL、30質量%エタノール水溶液400mLを順次合成吸着剤に通液して非重合体カテキン類を溶出させた。次いで、合成吸着剤に50質量%エタノール水溶液を400mL通液してポリフェノール組成物を溶出させた。なお、本分画操作はすべて、通液速度SV=0.8〜1.2[h-1]になるように流量調整して行った。次いで、得られた溶出液を減圧濃縮によりエタノールを留去した後、凍結乾燥により水分を除去して『ポリフェノール組成物A』を得た。得られた『ポリフェノール組成物A』の組成を表1に示す。
【0035】
比較例1
緑茶抽出物の濃縮物(ポリフェノンHG、三井農林(株)製)100gを、25℃、250rpm攪拌条件下の95質量%エタノール水溶液490.9g中に懸濁させ、活性炭(クラレコールGLC、クラレケミカル社製)20gと酸性白土(ミズカエース#600、水澤化学社製)100gを投入後、約10分間攪拌を続けた。そして40質量%エタノール水溶液409.1gを10分間かけて滴下したのち、室温のまま約30分間の攪拌処理を続けた。その後、2号濾紙で活性炭及び沈殿物を濾過したのち、0.2μmメンブランフィルターによって再濾過を行った。そして、イオン交換水200gを濾過液に添加し、40℃、3333Pa(25Torr)でエタノールを留去し、その後凍結乾燥により茶抽出物の乾燥物を有効成分とする製剤を得た。得られた製剤の組成を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
試験例1 食後の血糖値上昇抑制効果
雄性マウスC57BL/6J(7週齢)を6日間予備飼育し、試験開始前に16時間絶食させてから3群(実施例1群、比較例1群、対照群(水)、各群n=5)に分け、血液を採取した。そして、実施例1群には実施例1で得られた製剤を20質量%エタノール水溶液に溶解し、これを570mg/Kg体重として経口投与した。また、比較例1群には比較例1で得られた製剤を20質量%エタノール水溶液に溶解し、これを0.39mg/g体重として経口投与した。更に、対照群には水のみを経口投与した。そして、各試料を投与直後のマウスに、表2に示す組成の脂肪乳剤を40mg/g体重となるように経口投与した。
【0038】
【表2】

【0039】
乳剤投与から10分、30分、60分、120分経過ごとに各マウスから血液を採取し、グルコースCII‐テストワコー(和光純薬社製)により血糖値を分析した。食後の血糖値の推移を図1に示す

【0040】
図1から、次のことが確認された。すなわち、対照群は脂肪乳剤の投与により食後の血糖値が上昇するのに対し、実施例1群及び比較例1群はともに食後の血糖値上昇が抑制されるが、実施例1群の方が比較例1群よりも食後の血糖値上昇が極めて抑制されることが確認された。
【0041】
試験例2 α−アミラーゼ活性阻害効果
α−アミラーゼ活性の測定は、下記の方法により行った。
酵素 :50U/mL ブタ膵臓由来リパーゼ(Sigma type II dissolved in buffer)
基質 :20mg Starch Azure(in 80 μL buffer)
緩衝液:40mMリン酸緩衝液(20mMNaClを含む)(pH7.0)
阻害剤:実施例1で得た製剤(被験試料)又は比較例1で得た製剤(対照試料)
(dissolved in 20%EtOH)
手順:
(1)基質20mg/80μLと阻害剤10μLを等量混和し、37℃5分間プレインキュベート
(2)酵素溶液10μLを加え、37℃15分間反応
(3)100 mM リン酸緩衝液(pH4.3)900μLを添加
(4)反応液を遠心分離し、上清を波長595 nmで測定
【0042】
測定結果を図2に示したが、図2から、実施例1群は比較例1群に比較してα−アミラーゼ活性を強く阻害することが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメリアシネンシス由来のフラボノールアグリコン及びフラボノール配糖体を含有するポリフェノール組成物であって、次の(A)及び(B):
(A)高速液体クロマトグラフィーにより測定される、加水分解後の当該ポリフェノール組成物の固形分中のフラボノールアグリコンの総量
(B)酒石酸鉄法により測定される、当該ポリフェノール組成物の固形分中のポリフェノールの総量
の質量比[(B)/(A)]が0.01〜18であるポリフェノール組成物を有効成分とする食後の血糖値上昇抑制剤。
【請求項2】
カメリアシネンシス由来のフラボノールアグリコン及びフラボノール配糖体を含有するポリフェノール組成物であって、次の(A)及び(B):
(A)高速液体クロマトグラフィーにより測定される、加水分解後の当該ポリフェノール組成物の固形分中のフラボノールアグリコンの総量
(B)酒石酸鉄法により測定される、当該ポリフェノール組成物の固形分中のポリフェノールの総量
の質量比[(B)/(A)]が0.01〜18であるポリフェノール組成物を有効成分とするα−アミラーゼ活性阻害剤。
【請求項3】
前記(A)フラボノールアグリコンの総量が0.7〜50質量%である、請求項1又は2記載の剤。
【請求項4】
前記(B)ポリフェノールの総量が5〜95質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤。
【請求項5】
前記ポリフェノール組成物がルチンを含有し、(C)当該ポリフェノール組成物の固形分中のルチンの含有量が0.4〜30質量%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の剤。
【請求項6】
前記カメリアシネンシスが緑茶である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−222277(P2010−222277A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69693(P2009−69693)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】