説明

食料製品及び飲料製品の感覚特性及び微生物に対する耐性を改善する為の方法

本発明は、食料製品及び飲料製品、特には保存処理されていない肉製品の、感覚特性及び、種々の種類の微生物に対する、特には食品腐敗バクテリア及び食中毒バクテリアに対する耐性を改善する為の方法に関し、ここで該製品が、アニオンとしてプロピオネートとラクテート、アセテート、及びそれらの組み合わせから選ばれる共アニオンとを有し、且つ、カチオンとしてカリウム及び水素を有する、複数のアルカリ金属塩を含む組成物と接触させられ、ここでラクテート/プロピオネートの重量に基づく比が0〜20であり且つアセテート/プロピオネートの重量に基づく比が0.05〜3.5である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食料製品及び飲料製品の感覚特性及び、種々の種類の微生物及び特に食品腐敗及び食中毒バクテリア、例えばListeria Monocytogenesなど、に対する耐性の両方を改善する為の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、食料及び飼料の保存の改善された方法についてのニーズがなおある;食品腐敗性のバクテリア、カビ、及び酵母の増殖は、毎年、何百万ポンドもの食料を食べられないものとし、そして、その問題は不十分な冷蔵を有する国において特に重大である。非常に多くの入院を結果としてもたらす食物経由の病気(これらのうち多くは致死的である)を毎年引き起こしている食物病原性バクテリアの活性を制御する為の解決法についてのより大きなニーズさえある。細菌性病原体、例えばCampylobacter、Enterobacter、Listeria、Salmonella、Escherichia、Clostridium、及びStaphylococcusの科からのバクテリアなど、は、食物経由の病気の最も一般的な同定された源である。
【0003】
Listeria Monocytogenesは、一般に食料製品の、特には肉製品の製造において特に関心事である。Listeria Monocytogenesは、食物経由病原性バクテリアの最も高い死亡率の一つを有する。それは、環境中に広くみられ、そして、処理プラントへと、生の材料、空気、及び人々によって入りうる。この有機体の他の危険な局面は、Listeria Monocytogenesが、食品安全性についての懸念を提示する多くの他の増殖性バクテリアができるよりも長く、悪い環境条件下で生き抜くことができることである。冷蔵温度で生き抜き及び増殖することができることに加えて、Listeria Monocytogenesは、高い塩濃度(例えば非塩素系ブライン冷却溶液(non-chlorinated brine chiller solution)など)を耐え、そして、長期間の冷凍貯蔵を生き抜く。それは、多くの他の食物経由病原体よりも、ナイトライト及び酸性度に対してより耐性である。また、それは加熱手順、例えば乳を殺菌する為に用いられるものなど、により殺されうるが、多くの他の非胞子形成性食物経由病原体よりも熱に対して耐性である。
【0004】
総合すると、これらのファクターは、例えば該微生物の増殖速度を減少する化合物を該食物へ添加することにより、食料製品中におけるListeria及び他の微生物の増殖を防ぐ為の手段がとられるべきであることを意味する。しかしながら、これらの化合物の添加は、該食料製品の味及び他の感覚特性に悪影響を及ぼすべきでない。肉製品は、味、テクスチャー、色、及び他の感覚特性における変化に特に敏感であると知られている。肉製品はまた、食品腐敗及び/又は食中毒のバクテリアによる汚染に特に敏感である。
【0005】
有機酸及び/又はこの塩、乳酸、酢酸、クエン酸、プロピオン酸、安息香酸、ソルビン酸、アスコルビン酸、及び他のものなど、の混合物は、微生物、例えば食品腐敗バクテリア及び食料病原体など、の活性を制御することにおいて、抗バクテリア剤として用いられることが知られている。通常、それらは、例えば国際公開第03/005963号パンフレット又は米国特許第5217250号明細書において記載されるものなどの、1又はそれより多い他の抗バクテリア剤と一緒に適用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記言及された酸及び/又はそれらの塩の混合物を記載する文献の多くは、食料及び飲料製品の、カビ、酵母、及び/又はバクテリアに対する耐性を改善する為の、そのような混合物の抗バクテリア効果及び、他の抗バクテリア剤との組み合わせにおけるその能力に向けられている。該文献の多くは、そのような混合物の、味、テクスチャー、及び他の感覚特性に対する効果を、これがそのような抗バクテリア的混合物が食料及び飲料製品における適用に適しているかどうかを決定する最も重要な決定的要因又は基準の一つであるにもかかわらず、言及しない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
今、食料製品及び飲料製品、特には肉製品における、プロピオン酸カリウムと、酢酸カリウム、乳酸カリウム、又は後の2つの成分の混合物との特定の組み合わせの、特定の割合での使用が、食料及び飲料製品に、微生物、例えばカビ、酵母、及び、食品腐敗又は食中毒バクテリア、特にはListeria Monocytogenesなど、に対する増大した耐性を備える一方で、同時に、該食料及び飲料製品の味が悪影響を及ぼされず且ついくつかの面において改善されさえすることが発見された。後者の特徴は特に驚くべきことであり、なぜなら当技術分野で、プロピオネート及びカリウムそれだけで食料及び飲料製品の味に悪影響を及ぼすことが知られているからである。
【0008】
従って、本発明は、食料製品及び飲料製品、特には肉製品の感覚特性及び微生物に対する耐性を改善する為の方法に関し、ここで該製品は、アニオンとして、プロピオネートと、ラクテート、アセテート、及びそれらの組み合わせから選ばれる共アニオン(co-anion)とを含有し且つカチオンとしてカリウム及び水素を含有する組成物と接触させられ、ここでラクテート/プロピオネートの重量に基づく比が0〜20の範囲にあり且つアセテート/プロピオネートの重量に基づく比が0.05〜3.5の範囲にある。
【0009】
該組成物は好ましくは、5〜8のpH(水中での10重量%溶液に基づく)を有し、及び、6〜9の直接pHを有する。
【0010】
好ましい実施態様において、該アセテート/プロピオネートの比が、0.05〜2の範囲にあり、さらにより好ましくは0.5〜1.5の範囲にある一方で、0.6〜1.2が最も好ましく、及びラクテート/プロピオネートの比は3〜15の範囲にあり、より好ましくは3〜12である一方で、3.5〜10が最も好ましい。
【発明の効果】
【0011】
プロピオン酸、酢酸及び/又は乳酸のカリウム塩の組み合わせの使用が特に、生肉製品中における食品腐敗バクテリアに対する及び調理された肉製品及び生肉製品におけるListeria Monocytogenesなどの食物病原体に対する高い活性と、得られる肉製品の良い味とを合同させる。本発明に従う方法において用いられるとおりの該カリウム塩の特定の組み合わせが、予測できない満足な味感覚を示す。本発明に従う方法により処理された食料製品及び飲料製品、特には肉製品(魚及び家禽を包含する)が、甘さ、塩辛さ、及び酸味に関する味感覚において、及び、肉製品において、肉の/肉のような味に関して、驚くべき違いを示した。本発明に従う方法により処理された肉製品は、改善された赤色安定性及び水保持能力を示した。より高い水保持能力が、より高いジューシーさ及び柔らかさに関連付けられることができ、そしてそれ故に、味の改善を結果としてもたらしうる。本発明に従う方法において用いられるとおりの該組成物が、種々の食料製品及び飲料製品における取扱い及び適用に非常に適していることがさらに発見された。なぜならより高い濃度が、粘性に関連する問題に陥ることなく用いられることができたからである。該より高い濃度は、減少された輸送コストのゆえに、さらに有利である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一つの実施態様において、該組成物はまた、カチオンとしてナトリウムを含む。この実施態様において、ナトリウム/カリウムの比は、一般に、0.01〜1未満の範囲にあり、より特には0.01〜0.5の範囲、最も好ましくは0.01〜0.3の範囲である。
【0013】
いくつかの食料及び飲料の用途において、あるナトリウムが望ましく、なぜならそれは塩味を与えるからである。ナトリウムを、本発明に従う方法において用いられるとおりの組成物に、該食料及び飲料の用途の味プロファイルのさらなる微調整の為に添加することができるが、ナトリウム/カリウム比は、1より低いままであるべきである。1より高いナトリウム/カリウム比を有する水性溶液は、該溶液中に発生する沈殿による問題を有することが分かった。ナトリウムを本発明に従う方法において用いられるとおりの組成物に添加することにより及び1未満のナトリウム/カリウム比を維持することにより、塩味がなお達成される一方で、上記で言及されたとおりの該カリウム塩の有利な特性を維持する(すなわち、粘性及び沈殿に関連する問題に陥らない)。
【0014】
本発明はさらに、以下の好ましいカリウム及びナトリウム含有組成物に関する。第一の好ましい組成物は、ラクテート及びプロピオネートを約5〜10のラクテート/プロピオネートの重量に基づく比で含み、アセテート及びプロピオネートを約0.6〜1.2のアセテート/プロピオネートの比で含み、且つナトリウム及びカリウムを約0.1〜0.25のナトリウム/カリウムの比で含む。第二の好ましい組成物は、ラクテート及びプロピオネートを約3〜9のラクテート/プロピオネートの重量に基づく比で、アセテート及びプロピオネートを約0.8〜1のアセテート/プロピオネートの比で、且つ、ナトリウム及びカリウムを約0.1〜0.35のナトリウム/カリウムの比で含む。
【0015】
本発明において用いられるときにこれらの溶液は、食料及び飲料製品、及び特には肉製品に、好ましい味プロファイルを備える。
【0016】
本発明に従う方法において用いられるとおりの組成物は、塩又は酸の形にある別個の成分を、任意的に塩基、例えば水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムなど、と一緒にブレンドし又は混合することにより作られてよい。該ブレンドは、例えば、水、乳酸カリウム、プロピオン酸、酢酸、及び任意的に水酸化カリウムをブレンドすることにより、又は、乳酸カリウム、水、プロピオン酸ナトリウム、二酢酸ナトリウム、及び水酸化カリウムをブレンドすることにより、作られてよい(そして、これらの限定されない)。さらなる選択肢は、乳酸、水酸化カリウム、及び水酸化ナトリウムを、プロピオン酸ナトリウムと一緒にブレンドすることである。
【0017】
本発明の好ましい実施態様において、プロピオン酸及び酢酸のカリウム塩及び/又はナトリウム塩が、発酵プロセスにより得られる。乳酸又はラクテート(カリウム及び/又はナトリウムの形にある)が、該発酵産物へ、後の段階で、本発明に従う方法において用いられるとおりの、プロピオネート、アセテート、及びラクテートを含む組成物を得る為に、添加されうる。同様に、追加の量の酢酸が、該発酵産物へ、後の段階において、酢酸、ビネガー、又は中和されたビネガー、アセテート(ナトリウム/カリウム)又は二酢酸ナトリウムの形で、添加されうる。
【0018】
この実施態様において、プロピオネート、アセテート及びラクテートの組成物は、以下の特定の製造方法であって、
・プロピオネート及びアセテートを含む発酵産物を用意する工程、及び
・乳酸を該発酵産物に添加して、2.5〜8未満の範囲のpHを有する酸性化発酵産物を得る工程(本明細書以下において酸性化工程とも呼ばれる)
を含む前記方法により調製されうる。
【0019】
本発明に従う方法において出発物質として用いられる該発酵産物中のプロピオネートの量は、一般に、0.5〜10重量%(重量に基づく百分率)の範囲、より特には1〜5重量%の範囲にある。該発酵産物中のアセテートの量は、一般に、0.1〜5重量%の範囲、より特には0.5〜2重量%の範囲にある。出発物質として用いられる該発酵産物の直接的pH(該発酵産物の例えば10重量%溶液への希釈なく直接に測定された)は、一般に、6〜9の範囲、より特には6.5〜8.5の範囲にある。該発酵産物は、任意的に、該発酵産物からのバイオマスの部分的又は完全な除去により精製されうる。該発酵産物はさらに、任意的に、最大で30重量%のプロピオネート濃度を有する発酵産物へと濃厚化されうる。
【0020】
該酸性化工程において、乳酸が、該発酵産物へ添加されて、2.5〜8未満の範囲のpHを得る。特に、該pHは、3〜7の範囲にあり、より特には3〜約6.6又は6.8の範囲にある。乳酸の終濃度は、一般に、該発酵産物の0.1〜60重量%の範囲にあり、より特には10〜50重量%の範囲、最も好ましくは25〜50重量%の範囲にある。該酸性化工程は任意的に、上記で記載された濃厚化工程と同時に実施されてもよい。さらに、加熱工程が、該乳酸の添加の前又は間に、該発酵産物の温度を上げる為に、導入されてもよい。この実施態様に従う方法の次の工程は、少なくとも5の直接pHを有する産物を得る為に、プロピオネート及びアセテートを含む該得られた酸性化発酵産物(濃厚化された又はされていない)への塩基の添加を含みうる(本明細書以下において、塩基添加工程又は中和工程とも呼ばれる)。より特には、該塩基の添加後のpHは、少なくとも6であり、好ましくはすくなくとも6.5でありうる。該pHについての上限は重要でないが、pHは一般に、最大で8、より特には最大で7.5でありうる。該塩基の添加後に得られた組成物は、任意的に濃厚化されうる。
【0021】
上記実施態様において記載されたとおりの発酵プロセスを介して作られたプロピオネート及びアセテート並びに任意的にラクテートを含む本発明に従う組成物が用いられる場合に、別個に調製されたプロピオネート及びアセテート並びに任意的にラクテート成分のブレンドを含む組成物と比較したときに、さらにより満足いく感覚特性、例えば味など、を有する食品製品が得られることが分かった。発酵方法で作られた組成物は明白に、該食料製品の味及び他の感覚特性に対して積極的な貢献を有する他の成分又は不純物を含む。特に満足いく結果が、該発酵方法で作られた組成物による本発明に従う方法が肉製品(魚及び家禽を包含する)に適用されたときに得られた。
【0022】
該発酵産物に添加される乳酸又はラクテートは、当技術分野の当業者に知られている慣用の製造方法を用いた発酵により得られてもよい。本発明の好ましい実施態様において、乳酸又はラクテートは、以下の工程を含む別々の発酵プロセスを介して得られる:糖に基づく基質を発酵してラクテート含有発酵産物を形成すること、部分的又は完全なバイオマス除去工程、乳酸を形成する為の酸性化工程、所望の乳酸のナトリウム塩又はカリウム塩を形成するための任意的なアルカリ化工程(中和工程とも呼ばれる)、及び任意的な濃厚化工程(これは、該酸性化の前又は後に及び/又は該アルカリ化工程の前又は後に行われうる)。
【0023】
さらに可能な選択肢は、プロピオネート及びアセテートを含む該発酵産物を生成する同じ発酵プロセスを介して又は当該プロセスにおいてラクテートを得ることである。ここに、該発酵反応培地は、プロピオネート/アセテート生成性微生物及びラクテート生成性微生物を含む。プロピオネート生成性微生物の例は、Propionibacteriaceae属のファミリーからのバクテリア(例えばPropionibacterium acidipropionici、Propionibacterium freudenreichii、Propionibacterium thoeni及び/又はPropionibacterium jensenii)又はSelemonas属からのバクテリアである。Propionibacterium freudenreichii subsp. shermaniiの使用が好ましい。乳酸生成性微生物の例は、菌類、酵母、及びより好ましくは、lactobacilli、例えばLactobacillus delbrueckii、Lactobacillus acidophilus又はLactobacillus paracaseiなど、又は中等度好熱性バチルス、例えばBacillus coagulans、Bacillus thermoamylovorans、Geobacillus stearothermophylus及びBacillus smithiiなど、である。
【0024】
他の可能性は、ラクテートを発酵の為の基質として用いること及びラクテートをプロピオネートへ転化することができる発酵においてプロピオネート生産性微生物を用いること、例えば米国特許第4814273号明細書において又は国際公開第85/04901号パンフレット及び米国特許第4794080号明細書において言及されるもの(これらの内容は本明細書において組み込まれる)など、である。
【0025】
ラクテート成分が発酵を介して作られるこれら上記記載の実施態様は、プロピオネート、アセテート及びラクテートを含み且つ他の未知の成分及び不純物に富む組成物を結果し、当該未知の成分及び不純物が、本発明の方法に従い該豊富な組成物により処理された食料製品及び特に肉製品の感覚特性においてさらに予期されない変化を引き起こす。
【0026】
本発明は、食料製品及び飲料製品の感覚特性及びバクテリアに対する耐性を改善するのに適している。本発明は、肉(魚及び家禽を包含する)製品における適用に及び特には保存処理されていない肉製品における適用に特に適していることが発見された。当業者が非常によく知るとおり、肉製品は、例えば変色(discoloration)、臭いの変化及び「噛む及び味の感覚」における変化(これらは特性、例えばテクスチャー、ジューシーさ、柔らかさ、水保持特性、及び味など、に一般に関連付けられ、及び、肉製品中に存在する多くの成分の敏感さ及びそれらの相互作用(例えば種々の脂質、タンパク質、塩、ホスフェート、および、当技術分野の当業者に周知の他の成分など)に起因して引き起こされうる)に非常に敏感である。
【0027】
該肉製品は、調理されていてよく又は調理されていなくてもよく(「生の」とも称される)、及び、該調理された肉製品は、保存処理されていてよく又は保存処理されていなくてもよい。本明細書において、語「肉」は、家禽製品及び魚製品も包含することが注目される。生肉は、肉が処理されているという意味で、処理されていない肉及び処理されている肉を含んでよく及び従って添加物を含みうる。
【0028】
適した調理されていない/生の本物の肉製品の例は、牛肉、ひき肉にした牛肉、ビーフステーキ、ビーフオックステール、ネックボーン、ショートリブ、ビーフロースト、シチュー肉、ビーフブリスケット、豚肉、ポークチョップ、ポークステーキ、カツレツ、ポークロースト、ラム、子牛肉、狩猟ヤギ、フィレアメリケーヌ、タルタルステーキ、パティ又はカルパッチョである。生の家禽の例は、チキン、ターキー、ダック、及び他の家禽、例えばコーニッシュヘン(cornish hen)、ハト、ウズラ、及びキジなど、を包含する。生魚の例は、フィンフィッシュ(finfish)(フィレ、アンチョビ、バラクーダ、コイ、ナマズ、タラ、クローカー、ウナギ、フラウンダー(flounder)、ハドック、ニシン、サバ、ボラ、メヌケ、カワカマス、ポンパノ(pompano)、ポーギ(porgy)、エイ、サーモン、イワシ、スズキ、サメ、キュウリウオ、チョウザメ、メカジキ、マス、マグロ、ホワイティング(whiting))、シェルフィッシュ(shellfish)(アワビ、二枚貝、クロンチ(cronch)、カニ、ザリガニ、ロブスター、イガイ、カキ、ホタテ、エビ及びカタツムリ)、及び他の海産食品、例えばクラゲ、タコ、魚卵、イカ、カメ、カエル足など、を包含する。
【0029】
適当な調理された肉製品の例は、ローストビーフ、ローストラム、ローストポーク、ハム、サラミ、フランクフルト及び他のソーセージである。適当な保存処理された肉製品の例は、保存処理されたポークハム、フランクフルト、及び他の保存処理されたソーセージである。適当な保存処理されていない肉製品の例は、調理されたチキン、ターキー肉、及びローストビーフ又はラムである。
【0030】
保存処理されていない肉製品は保存処理された肉製品よりも微生物の増殖に対してより感受性であるので、本発明は、保存処理されていない肉製品及び家禽製品における適用にとって特に魅力的である。
【0031】
本発明は、種々の微生物、例えば酵母、カビ、及びバクテリアなど、に対して用いられてよい。好ましくは、本発明は、食品腐敗バクテリア及び食中毒バクテリア、例えばListeria (特にはListeria Monocytogenes spp)、Escherichia coli(特にEscherichia coli O157:H7 spp)、Salmonella(特にはSalmonella typhimurium spp、Salmonella enteriditis spp)、Pseudomonas spp、Enterobacter(特にはEnterobacter Sakazaki spp)、Clostridium(特にはClostridium botulinum及びClostridium perfringens)及びCampylobacter(特にはCampylobacter jejuni spp)など、に対する、食料製品及び飲料製品及び特には肉製品の耐性を改善する為に用いられる。
【0032】
本発明に従う方法が、生肉製品において食品腐敗バクテリアに対して、及び、(調理された及び調理されていない/生の)肉製品においてListeria Monocytogenesに対して、適用された場合に、特に良い結果が見られた。
【0033】
前に言及された食料製品及び飲料製品において、特には肉製品において、本発明に従う方法において用いられるとおりの組成物は、最終的な食品製品、飲料製品又は肉製品中に、成分として存在する。該抗微生物組成物の成分は、該製品の表面に又は該製品の内側に存在しうる。本発明に従う方法は、該食料製品又は肉製品の製造、取扱い、貯蔵及び/又は調製の段階を包含する、食品処理プロセスにおける種々の段階の1又はそれより多くの間に適用されうる。それは、最終製品段階においてだけでなく、洗浄工程の間又は洗浄工程においても適用されてよく、例えば果物及び野菜の処理において適用されうる。本発明の方法において用いられるとおりの該組成物は、種々の手段により、例えばスプレー、リンス、又は洗浄溶液などとして、又は種々の食料製品が浸される溶液として、適用され又は導入されてよい。該組成物の成分は、食料製品及び肉製品へと注入により導入されてもよい。さらに、本発明の方法及び組成物は、該食料製品及び肉製品をパッケージングする前に、当該パッケージングと同時に又は当該パッケージングの後に、容器を処理する為に用いられてよい。
【0034】
適用の種類によって及び本発明に従う方法において用いられる組成物が最終製品において活性成分として用いられるか又は例えば洗浄溶液又はスプレー溶液の成分として用いられるかによって、該組成物の成分は、当技術分野の当業者に自明であるであろうとおりに、濃度及び内部比において変わるであろう。
【0035】
該プロピオネート、アセテート及び/又はラクテートの塩は、別々に又は一緒に添加されうる。それらは、固形の、粒状の形で添加されてよく、又は、水性溶液中に溶解されうる。水性溶液中の添加が好ましく、なぜなら該酸が該肉製品を通じて均一に分布することをより容易にするからである。
【0036】
該塩が水性溶液の形で添加されるならば、3〜10重量%のプロピオネート、2〜8重量%のアセテート、及び15〜60重量%のラクテートを含み、且つ、0〜0.4、より好ましくは0.05〜0.2重量%のナトリウム/カリウム比を有し、それにより該カリウム濃度が10〜20重量%のオーダーにある水性溶液の使用が、種々の食料製品及び飲料製品における適用にとって最も適している。多くの肉製品及び適用にとって、上記言及された溶液は、好ましくは、6〜9%の直接pH(すなわち、さらなる希釈無しで該溶液において直接に測定される)、又は、10重量%の溶液に希釈されたときに、5〜8のpHを有する。
【0037】
本発明は、さらに、本発明に従う方法であって、カリウム及びナトリウムを含む非常に濃厚な溶液を使用する上記方法に関する。プロピオネート、アセテート、及び任意的にラクテートを含む、カリウム及びナトリウムに基づく溶液を組み合わせることにより、該溶液がプロピオネート、アセテート及び任意的にラクテートのナトリウムに基づく塩を含むだけの場合よりも、非常に好ましい粘度を有するはるかにより高度に濃厚にされた溶液が得られることが分かった。該高濃度及び非常に好ましい粘度は、輸送において(例えばより低いコスト)及び食料製品及び飲料製品における該溶液の取扱い及び適用において、有利である。高度に濃厚化された組成物は、約1〜最大で35重量%、より好ましくは1〜27重量%のカリウムの濃度、約1〜最大で65重量%のプロピオネートの濃度、約1〜最大で44重量%のアセテート濃度、及び、約0〜最大で62重量%のラクテート濃度を有する。ラクテート/プロピオネート、アセテート/プロピオネート、及び任意的にナトリウム/カリウムについてのそれぞれの重量に基づく比について本願において種々の実施態様において記載されたとおりの基準セットをさらに満たす、上記で言及された濃度範囲を有する組成物が、本発明に従う方法において用いられたときに最適であり及び好ましい結果を与える。
【0038】
以下の非限定的な実施例が本発明をさらに説明する。
【0039】
実施例
【実施例1】
【0040】
アセテート、プロピオネート、及びラクテート(約4重量%のプロピオネートと15重量%カリウム、ラクテート/プロピオネート比は約9である、アセテート/プロピオネート比は約0.7である、2重量%ナトリウム)のカリウムブレンド(「カリウムブレンド」)に基づく組成物が、アセテート、プロピオネート及びラクテート(約15重量%のナトリウムを有し且つカリウム無しであること以外は上記と同じブレンド)のナトリウムブレンド(「ナトリウムブレンド」)に基づく組成物に対して、用いられるところの本発明に従う方法を用いた調理されたターキーロールを用いて味比較試験が行われた。該味試験のために、種々のロールの調理されたターキーの800gが調製された。該ターキー肉は、塩化ナトリウム、三リン酸ナトリウム、マルトデキストリン、カラギーナン、コーンスターチ、水及び、カリウムに基づく組成物又はナトリウムに基づく組成物を含む塩水(brine)により塩を与えられた。該塩水注入レベルは25%である。他の保存料は用いられなかった。表1に肉組成が、バッチの百分率において与えられる。
【0041】
【表1】

【0042】
以下のプロセスが、該調理されたターキーロールを調製する為に用いられた:
・13mmにひかれたターキー肉が、1日間0℃で貯蔵された。
・表1の成分が、該肉と混ぜ合わされた。
・該ターキー肉がバッグ中にパックされ(バキューム無し)、そして、2回、間に30分の休みを有する2時間、タンブル(tumble)された。
・該肉ペーストが14時間0℃で、バッグ中に貯蔵された。
・5〜5.5cmの平均直径を有するターキーロールが調製され、そして、約1.75時間、水浴中で80℃で調理された。
・該調理された保存処理されていないターキーブレストロールが、冷水中で冷却され、そして、少なくとも7日間、0℃で貯蔵された。
【0043】
感覚試験
6人の味パネリストが、試料の塩辛さ、酸っぱさ、甘さ、及びターキー味を評価した。0.2cmのスライスが、該パネリストに室温で与えられた。彼らが、0(知覚されない)〜5(強い)の特性をランク付けした。
【0044】
【表2】

【0045】
表2の結果は、該ナトリウムに基づくブレンドとの比較において用いられた該カリウムに基づくブレンドに起因する、味感覚における及び、特には、望ましくない甘さにおける、はっきり区別できる違いを示す。
【実施例2】
【0046】
表3において記載されたとおりの以下の組成を有する、本発明に従う方法において用いられるとおりの溶液が、作られた。
【0047】
【表3】

【0048】
これらの溶液の粘度が、6及び26℃で測定された。結果が表4に提示される。番号6の組成を有する溶液が、大きな結晶の形の沈殿を示し、ナトリウム/プロピオネート比が1より低くあるべきであることを実証する。
【0049】
【表4】

【0050】
組成物2、4及び8が示すとおり、より多くのナトリウムが存在するにつれて、粘度が予想外に迅速に増加する。すなわち、ナトリウム含有量を最小化すること及び好ましくはナトリウムが全く存在しないことが有利である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食料製品及び飲料製品の感覚特性及び微生物に対する耐性を改善する為の方法であって、アニオンとしてプロピオネート並びに、ラクテート、アセテート、及びそれらの組み合わせから選ばれる共アニオンを含有し且つカチオンとしてカリウム及び水素を含有する、アルカリ金属塩を有する組成物に該製品が接触させられ、ここでラクテート/プロピオネートの重量に基づく比が0〜20であり且つアセテート/プロピオネートの重量に基づく比が0.05〜3.5である、前記方法。
【請求項2】
該アセテート/プロピオネートの重量に基づく比が0.5〜2であり、且つ、ラクテート/プロピオネートの重量に基づく比が3〜15である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該組成物がさらなるカチオンとしてナトリウムを有し、且つ、ナトリウム/カリウムの重量に基づく比が0〜1未満である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
該食料製品が保存処理されていない肉製品である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
該微生物が、食品腐敗バクテリア又は食品病原体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
該組成物が、3〜10重量%のプロピオネート、2〜8重量%のアセテート、及び15〜60重量%のラクテートを含有し、且つ、0〜0.4、より好ましくは0.05〜0.2重量%のナトリウム/カリウム比を有し、それによりカリウム濃度が10〜20重量%のオーダーである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
3〜10重量%のプロピオネート、2〜8重量%のアセテート、及び15〜60重量%のラクテートを含み、且つ、0〜0.4、より好ましくは0.05〜0.2重量%のナトリウム/カリウム比を有し、それによりカリウム濃度が10〜20重量%のオーダーである水性溶液。
【請求項8】
該組成物が、以下の
a.プロピオネート及びアセテートを含む発酵産物を用意する工程、
b.乳酸含有組成物を該発酵産物に添加して、2.5〜8の直接pHを有する酸性化発酵産物を得る工程、
c.工程bにおけるpHが5より低い場合に、塩基を、プロピオネート及びアセテートを含む該得られた酸性化発酵産物に添加して、少なくとも5の直接pHを有する産物を得る工程
を含むプロセスにより作られるものである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−518397(P2012−518397A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550588(P2011−550588)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052200
【国際公開番号】WO2010/097364
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(306003419)ピュラック バイオケム ビー.ブイ. (40)