説明

食材の滅菌処理方法

【課題】野菜又は果実等の食材を、人体に有害な物質を一切使用せずに短時間処理するだけで、食材の細菌数を極端に低減又は滅菌する。
【解決手段】野菜又は果実等の食材を、酸化カルシウム又は水酸化カルシウムの水溶液中に浸漬し、かつ同水溶液中に平均粒径が20〜60μmの微細気泡を供給し、食材に前記飽和水溶液と前記微細気泡を5〜20分間接触せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜、果物、穀類、魚介類等の食材の滅菌処理方法に係り、特に酸化カルシウム又は水酸化カルシウムの水溶液を処理液として使用する食材の滅菌処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、穀類及び豆類、野菜、魚介類等の食品素材に付着する微生物を、次亜塩素酸水溶液を使用して、殺菌又は低減する方法や、オゾンガスを使用する方法その他種々の方法が提案されていた。
例えば、pH12.0以上の焼成カルシウム水溶液に、オゾンガス又は酸素ガスを混入して、殺菌効果を有するOHラジカルを積極的に増加させた水を製造し、この水溶液にて、穀類及び豆類、野菜、魚介類等の食品素材を流水処理することで、これらに付着する微生物を、食味および風味を損なわずに低減させる方法(特許文献1参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−99653公報
【0004】
しかしながら、前記従来技術では、滅菌処理に長時間を要したり、人体に有害物質な用られたりする問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は従来技術の問題点を解決するものであり、人体に有害物質を用いることなく、短時間で食材に付着している細菌類を低減又は滅菌する処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は、上記のような課題に鑑みて種々研究を重ねた結果、下記の方法により食材の細菌の低減又は滅菌する処理方法を開発した。
(1)食材を酸化カルシウム又は水酸化カルシウム等のカルシウム水溶液中に浸漬し、かつ同水溶液中に微細気泡を供給し、食材に前記水溶液と微細気泡を接触せしめることを特徴とする食材の滅菌処理方法。
(2)食材が、野菜、果物、穀類、魚介類、食肉から選ばれるいずれか1種であることを特徴とする前記(1)項記載の食材の滅菌処理方法。
(3)カルシウム水溶液が、酸化カルシウム又は水酸化カルシウムの飽和水溶液であることを特徴とする前記(1)項又は(2)項に記載の食材の滅菌処理方法。
(4)微細気泡が、平均粒径が20〜60μmであることを特徴とする前記(1)項〜(3)項のいずれか1項に記載の食材の滅菌処理方法。
(5)カルシウム水溶液が、貝殻、珊瑚、真珠層、卵殻又は獣、魚もしくは鳥の骨を焼成して得られた天然の酸化カルシウムの水溶液であることを特徴とする前記(1)項〜(4)項のいずれか1項に記載の食材の滅菌処理方法。
(6)カルシウム水溶液が、酸化カルシウム又は水酸化カルシウムの微細固形物を含む水性懸濁液であることを特徴とする前記(1)項〜(5)項のいずれか1項に記載の食材の滅菌処理方法。
(7)前記(1)項〜(6)項のいずれか1項に記載の方法において、水溶液表面に浮上してくる浮遊物を上部で排出して除去することを特徴とする食材の滅菌処理方法。
(8)野菜又は果実を、酸化カルシウム又は水酸化カルシウムの飽和水溶液中に浸漬し、かつ同水溶液中に平均粒径が20〜60μmの微細気泡を供給し、野菜又は果実に前記飽和水溶液と前記微細気泡を5〜20分間接触せしめることを特徴とする野菜又は果実の滅菌処理方法。
(9)カルシウム水溶液を貯留するためのタンク(1)と、同タンクにカルシウム水溶液を導入するための導入管(2)と前記水溶液中に配設された微細気泡放出具(3)と、前記水溶液の上層部に埋設けられた多孔板(4)とタンク上端部に設けられたオーバーフロー部(5)とを備えてなることを特徴とする食材の滅菌処理装置。
(10)カルシウム水溶液を貯留するためのタンク(1)内に、攪拌手段(6)が配設されてなることを特徴とする前記(9)に記載の食材の滅菌処理装置。
(11)多孔板(4)が、食材が通過せず、かつ微細気泡が容易に通過する直径の多数の孔を有するものであることを特徴とする前記(9)又は(10)に記載の食材の滅菌処理装置。
(12)多孔板(4)が、網板であることを特徴とする前記(9)〜(11)のいずれか1項に記載の食材の滅菌処理装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、野菜又は果実等の食材を、酸化カルシウム又は水酸化カドミウム等のカルシウム水溶液中で微細気泡を供給しながら短時間処理するだけで、食材の細菌数を極端に低減することができる。
しかも、次亜塩素酸等の人体に有害な物質を一切使用しなく、処理された食材も長期間腐敗することがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本願発明の滅菌処理装置の説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願発明の実施においては、食材を酸化カルシウム又は水酸化カルシウム等のカルシウム水溶液中に浸漬し、かつ同水溶液中に微細気泡を供給し、食材に前記水溶液と微細気泡を接触せしめればよい。
食材としては、例えば野菜、果物、穀類、魚介類、食肉から選ばれるいずれか1種を挙げることができる。
本願発明における食材の細菌数の低減あるいは滅菌は、食材の表面に付着している細菌や汚れを低減あるいは滅菌又は除去することができる。
カルシウム水溶液は、酸化カルシウム又は水酸化カルシウム等のpH値が12前後の水溶液が好ましいものである。
カルシウム水溶液中に供給される微細気泡は、いわゆるマイクロバブルが好ましく、平均粒径が5〜100μm、特に20〜60μmのものが特に好ましい。
酸化カルシウムは、貝殻、珊瑚、真珠層、卵殻又は獣、魚もしくは鳥の骨を高温(900〜1000℃)で焼成して得られた天然の酸化カルシウムを主材とする焼成カルシウムが、処理対象物が食材であることから好ましく、その酸化カルシウム又はその水酸化物の水溶液(カルシウム水溶液)、特にpH値の高い飽和溶液を使用することが好ましい。
また、同水溶液が、酸化カルシウム又は水酸化カルシウムの微細固形物を含む水性懸濁液であてもよい。
そして、上記の処理を行っていると、水溶液表面に浮遊物が上層に浮上してくるが、これには汚染懸濁物及びそれに付着した細菌類が混在しているため、その浮遊物は排出して除去することが好ましい。
具体的処理の一例は、野菜又は果実を、酸化カルシウム又は水酸化カルシウムの飽和水溶液中に浸漬し、かつ同水溶液中に平均粒径が好ましくは20〜60μmの微細気泡を少し攪拌しなら、例えば対流を与えながら供給し、野菜又は果実に前記飽和水溶液と前記微細気泡を5〜20分間接触せしめる。同時に、上層の浮遊物は除去しながら、処理済みの野菜又は果実を分取する。
【0010】
実験の結果、上記処理済みの野菜又は果実の菌数を測定したところ、細菌数が1/10以下に減少し、かつ長期間滅菌状態が持続していた。
【実施例】
【0011】
図1に示す滅菌処理装置を用いて、カット野菜の滅菌処理をした。
図中、CLはカルシウム水溶液(焼成カルシウム(CaO)の0.15%水溶液・pH12.5)、1はタンク、2はカルシウム水溶液の導入管、3は微細気泡放出具、4は多孔板(網板)、5はタンク上端部に設けられたオーバーフロー部である。また、6は攪拌手段である。
まず、多数の長さ2〜5cmのカット野菜(V)をタンク(1)内に貯留されたカルシウム水溶液CLに投入し、次いで上方から多孔板4を落とし入れ、その周縁部を突起部11で支持する。
次いで、機外に設けられた微細気泡発生器7で製造された微細気泡含有カルシウム水溶液を導管3aを経由して微細気泡放出具(3)から放出する。
すると、微細気泡MBがカット野菜V表面に接触して、カット野菜V表面の汚れや細菌類を付着してできた微細気泡と汚れ等で形成された浮遊物Fが上昇し、多孔板(網板)を通過して、カルシウム水溶液CL表面に浮遊する。
すなわち、微細気泡MBがカット野菜V表面の汚れや殺菌類を付着・連行して上面に浮遊する。
【0012】
また、カルシウム水溶液貯蔵タンクCLTからその導管3aを経由して、常時タンク1内にカルシウム水溶液CLを補給すると、タンク1上端部のオーバーフロー部5から前記浮遊物Fが機外へ越流して除去される。
以上のようにして、タンク1内のカット野菜Vはカルシウム水溶液CLによる除菌と微細気泡MBによる汚れ等の連行によって、滅菌される。
なお、吸引管3bからタンク1内のカルシウム水溶液CLの一部を吸引して微細気泡発生器Gへ送給し、タンク1内のカルシウム水溶液CLを循環使用することが好ましい。
【0013】
上記装置を用いて、各種野菜を滅菌処理した結果を表1〜表3に示す。
【0014】
【表1】

【0015】
【表2】

【0016】
【表3】

【0017】
表1は試料がサラダミックスであり、表2は試料がイチゴであり、表3は試料がレタスである。
試料を各種液(a通常の水、bカルシウム水溶液、c次亜塩素酸水溶液、及びd(カルシウム水溶液+微細気泡)液)中に浸積して10分間の処理を施した後、液中から取り出して24時間後に菌数を測定(No1)したもの、7日後に測定(No2)したもの、2週後に測定(No3)したもの、について、各表に記載した。
表の記載から見て、本願発明による(カルシウム水溶液+微細気泡)液で処理したものは、次亜塩素酸水溶液で処理したものと比べて、24時間後及び7日後における菌数は、あまり差違がないけれども、2週間後においては極端な差違が認められ、すなわち次亜塩素酸水溶液で処理したものは細菌数が測定不能な膨大数に増加してしまったが、本願発明の処理したものは少ない菌数を維持していた。なお、微細気泡を加えないカルシウム水溶液で処理をしたものは、菌数が10倍以上存在することが解った。
また、大腸菌についても測定したが、本願発明の処理によれば、いずれも陰性であった。
本願発明によれば、短時間の処理により、次亜塩素酸水溶液による処理と同等の滅菌効果が得られ、かつ例えば2週間の長期間を経ても滅菌効果が持続される。
そして、カルシウム水溶液は人体にとって無害又はカルシウム分としての有用な成分となる。
さらに、試料を、単なるカルシウム水溶液でなく、同水溶液に微細気泡を付与して滅菌処理した場合は、10分間程度の短時間で格段に優れた滅菌効果が得られることが解った。
【符号の説明】
【0018】
1:タンク
2:カルシウム水溶液の導入管
3:微細気泡放出具
3a:微細気泡含有カルシウム水溶液の導管
3b:吸引管
4:多孔板(網板)
5:タンク上端部に設けられたオーバーフロー部
6:攪拌手段
11:突起部
F:浮遊物
G:微細気泡発生器
CL:カルシウム水溶液
MB:微細気泡
V:カット野菜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を酸化カルシウム又は水酸化カルシウム等のカルシウム水溶液中に浸漬し、かつ同水溶液中に微細気泡を供給し、食材に前記水溶液と微細気泡を接触せしめることを特徴とする食材の滅菌処理方法。
【請求項2】
食材が、野菜、果物、穀類、魚介類、食肉から選ばれるいずれか1種であることを特徴とする請求項1記載の食材の滅菌処理方法。
【請求項3】
カルシウム水溶液が、酸化カルシウム又は水酸化カルシウムの飽和水溶液であることを特徴とする請求項1又は2に記載の食材の滅菌処理方法。
【請求項4】
微細気泡が、平均粒径が20〜60μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の食材の滅菌処理方法。
【請求項5】
カルシウム水溶液が、貝殻、珊瑚、真珠層、卵殻又は獣、魚もしくは鳥の骨を焼成して得られた天然の酸化カルシウムの水溶液であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の食材の滅菌処理方法。
【請求項6】
カルシウム水溶液が、酸化カルシウム又は水酸化カルシウムの微細固形物を含む水性懸濁液であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の食材の滅菌処理方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法において、水溶液表面に浮上してくる浮遊物を上部で排出して除去することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の食材の滅菌処理方法。
【請求項8】
野菜又は果実を、酸化カルシウム又は水酸化カルシウムの飽和水溶液中に浸漬し、かつ同水溶液中に平均粒径が20〜60μmの微細気泡を供給し、野菜又は果実に前記飽和水溶液と前記微細気泡を5〜20分間接触せしめることを特徴とする野菜又は果実の滅菌処理方法。
【請求項9】
カルシウム水溶液を貯留するためのタンク(1)と、同タンクにカルシウム水溶液を導入するための導入管(2)と前記水溶液中に配設された微細気泡放出具(3)と、前記水溶液の上層部に埋設けられた多孔板(4)とタンク上端部に設けられたオーバーフロー部(5)とを備えてなることを特徴とする食材の滅菌処理装置。
【請求項10】
カルシウム水溶液を貯留するためのタンク(1)内に、攪拌手段(6)が配設されてなることを特徴とする請求項9に記載の食材の滅菌処理装置。
【請求項11】
多孔板(4)が、食材が通過せず、かつ微細気泡が容易に通過する直径の多数の孔を有するものであることを特徴とする請求項9又は10に記載の食材の滅菌処理装置。
【請求項12】
多孔板(4)が、網板であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の食材の滅菌処理装置。


【図1】
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【公開番号】特開2012−191931(P2012−191931A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−42089(P2012−42089)
【出願日】平成24年2月28日(2012.2.28)
【出願人】(505197300)
【出願人】(502286432)
【出願人】(303055383)
【Fターム(参考)】