説明

食材の滅菌方法

【課題】 穀類、野菜又は果実等の食材を、人体に有害な物質を使用せずに短時間処理するだけで、食材の細菌数を極端に低減又は滅菌し、長期保存を可能とする。
【解決手段】
穀類、野菜又は果実等の食材を、酸化カルシウム含有粉末に例えば混合して接触させる。
酸化カルシウム含有粉末は、平均粒径が20〜400μmのものが好ましく、貝殻、珊瑚、真珠層、卵殻又は獣、魚もしくは鳥の骨を焼成して得られた天然の酸化カルシウム粉末であることが好ましい。
好ましくは、食材100重量部に酸化カルシウム含有粉末0.01〜10重量部を添加混合することによって実施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜、果物、穀類、魚介類等の食材の滅菌方法に係り、特に酸化カルシウム含有粉末を使用する食材の滅菌方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、穀類及び豆類、野菜、魚介類等の食品素材に付着する微生物を、次亜塩素酸水溶液を使用して、殺菌又は低減する方法や、オゾンガスを使用する方法その他種々の方法が提案されていた。
例えば、pH12.0以上の焼成カルシウム水溶液に、オゾンガス又は酸素ガスを混入して、殺菌効果を有するOHラジカルを積極的に増加させた水を製造し、この水溶液にて、穀類及び豆類、野菜、魚介類等の食品素材を流水処理することで、これらに付着する微生物を、食味及び風味を損なわずに低減させる方法(特許文献1参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−99653公報
【0004】
しかしながら、前記従来技術では、滅菌に長時間を要したり、人体に有害な物質な用られたりする問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は従来技術の問題点を解決するものであり、人体に有害な物質を用いることなく、短時間で食材に付着している細菌類を低減又は滅菌し、かつ食材の長期保存性を確保する処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は、上記のような課題に鑑みて種々研究を重ねた結果、下記の方法により食材の細菌の低減又は滅菌する処理方法を開発した。
(1) 食材表面に酸化カルシウムを含有する酸化カルシウム含有粉末を接触させることを特徴とする食材の滅菌方法。
(2) 食材が、野菜、果物、穀類、魚介類、食肉から選ばれるいずれか1種であることを特徴とする前記(1)記載の食材の滅菌方法。
(3) 酸化カルシウム含有粉末が、平均粒径が20〜400μmのものであることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の食材の滅菌方法。
(4) 酸化カルシウム含有粉末が、抗菌剤、殺菌剤又は消臭剤を含むものであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の食材の滅菌方法。
(5) 酸化カルシウム含有粉末が、貝殻、珊瑚、真珠層、卵殻又は獣、魚もしくは鳥の骨を焼成して得られた天然の酸化カルシウム粉末であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の食材の滅菌方法。
(6) 食材と酸化カルシウム含有粉末の接触が、食材100重量部に酸化カルシウム含有粉末0.01〜10重量部を添加混合することによって実施されることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の食材の滅菌方法。
(7) 食材としての穀類100重量部に平均粒径が20〜200μmの酸化カルシウム含有粉末0.01〜10重量部を添加混合することを特徴とする食材の滅菌方法。
(8) 前記(1)〜(7)のいずれか1項の方法によって処理された食材。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、穀類、野菜又は果実等の食材を、酸化カルシウム含有粉末に接触させるだけで、食材の細菌数を極端に低減することができる。
さらに、本願発明で処理された食材は長期間腐敗することがなく、かつ乾燥状態が保持される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本願発明の実施においては、基本的に食材を酸化カルシウム含有粉末に接触せしめればよい。
食材としては、例えば野菜、果物、穀類、魚介類、食肉から選ばれるいずれか1種を挙げることができる。さらには、食材は腐食防止や防黴が望まれる菓子類、水産加工食品、ハム・ソーセージ等の食肉系の加工食品であってもよい。
本願発明の処理対象物は食材であることから、酸化カルシウム含有粉末は、貝殻、珊瑚、真珠層、卵殻又は獣、魚もしくは鳥の骨を焼成して得られた天然の酸化カルシウムであることが好ましく、その酸化カルシウムは活性のものがが好ましい。
実験の結果、本願発明にしたがって酸化カルシウム含有粉末に接触処理された食材は、1日経過後及び7日経過後において、菌数の増加は認められなかったのに対して、無処理の食材は、菌数は幾何級数的に増加した。
また、本願発明により処理された食材は長期間新鮮度が保持され、味覚の変化も生じなかった。
食材と酸化カルシウム含有粉末との接触は、例えばスクリューコンベアによる混合方式や流動床方式等によって行うことができる。
前記の接触処理を終えた後の、食材と酸化カルシウム含有粉末との分離は、例えば篩い分けや唐箕等の風選機を使用する風選(風力による精選)によって行うことができる。
【0009】
また、酸化カルシウム含有粉末には、抗菌剤、殺菌剤又は消臭剤を含ませたものを用いてもよい。
抗菌剤としては、例えば銀、銅、亜鉛化合物など、金属イオンの静菌作用を利用した無機系抗菌剤が、またフィトンチッド、ヒノキチオールなど天然植物系抗菌剤などが挙げられる。
殺菌剤としては、亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム(CH3Na26)などが挙げられる。
そして消臭剤としては、竹炭、活性炭、ゼオライトなどが挙げられる。
【実施例】
【0010】
温度38℃、湿度90%の室内に24時間放置した大豆2kgを、1kgずつ二分してA試料とB試料に分けた。なお、各試料中の細菌数検査をしたところ、大腸菌数及び一般細菌は10〜10個/gオーダーであった。
次いで、A試料1kgに平均粒径30μmの酸化カルシウム粉末(ホタテ貝を1200℃で焼成して得られたもの)10gを添加混合し5分間均一に混合した。
そして、前記混合物を50メッシュの篩にかけて篩い分けた。
篩い分けされた大豆を、1日経過後及び7日経過後に細菌数検査をしたところ、
大腸菌数は検出されず、一般細菌も殆ど検出されなかった。
【0011】
他方、前記B試料1kgを1日経過後に細菌数検査をしたところ、大腸菌数及び一般細菌は10〜10個/gオーダーであったが、7日経過後では10個/gオーダー以上に増大していた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材表面に酸化カルシウムを含有する酸化カルシウム含有粉末を接触させることを特徴とする食材の滅菌方法。
【請求項2】
食材が、野菜、果物、穀類、魚介類、食肉から選ばれるいずれか1種であることを特徴とする請求項1記載の食材の滅菌方法。
【請求項3】
酸化カルシウム含有粉末が、平均粒径が20〜400μmのものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の食材の滅菌方法。
【請求項4】
酸化カルシウム含有粉末が、抗菌剤、殺菌剤又は消臭剤を含むものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の食材の滅菌方法。
【請求項5】
酸化カルシウム含有粉末が、貝殻、珊瑚、真珠層、卵殻又は獣、魚もしくは鳥の骨を焼成して得られた天然の酸化カルシウム粉末であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の食材の滅菌方法。
【請求項6】
食材と酸化カルシウム含有粉末の接触が、食材100重量部に酸化カルシウム含有粉末0.01〜10重量部を添加混合することによって実施されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の食材の滅菌方法。
【請求項7】
食材としての穀類100重量部に平均粒径が20〜200μmの酸化カルシウム含有粉末0.01〜10重量部を添加混合することを特徴とする食材の滅菌方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項の方法によって処理された食材。


【公開番号】特開2012−217366(P2012−217366A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84736(P2011−84736)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(505197300)
【出願人】(502286432)
【出願人】(303055383)
【Fターム(参考)】