説明

食材加工品の製造方法

【課題】複雑で大掛かりな装置を必要とせず、例えばアイスクリームと一緒に冷凍しても凍らない、新しい食感の食材加工品の製造方法を提供する。
【解決手段】分離工程において、果肉2と果汁3が分離される。分離された果肉2と果汁3のうち、果肉2が乾燥工程において乾燥される。そして、次の混合工程において、乾燥工程後の果肉2と分離工程後の果汁3とが混合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブルーベリー等の果実や野菜、穀物などを使用した食材加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常のジャムを作る場合は、果実を容器に入れ火にかけ、砂糖を適量加えるともにペクチン等の添加剤を加え、煮詰めることでゲル状の状態のジャムを作っていた。また、特許文献1に示すように、果肉を固形状のまま含むジャムやフルーツソース等の製造のため、第1段階で材料を加熱した後、容器内を減圧してさらに加熱を行い、第2段階で果肉自体に電流を流す通電加熱を行うことで、果実本来が有する風味や香りを損なうことなく、固形果肉が崩れてしまうおそれも少ない加工法が知られていた。しかし、特許文献1のような方法では、減圧装置や連続通電装置などが必要であり、装置が複雑で大掛かりとなり多大な設備費等がかかり、使い勝手が良いものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−145469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記した事情に鑑み、複雑で大掛かりな装置を必要とせず、例えばアイスクリームと一緒に冷凍しても凍らない、新しい食感の食材加工品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の食材加工品の製造方法は、
果実・野菜又は穀物である原料食材を容器に入れ、糖を加えてその原料食材の肉部から汁を出させる汁抽出工程と、
その汁抽出工程の後、食材肉部と汁とを分離する分離工程と、
分離した食材肉部を乾燥する乾燥工程と、
その乾燥した食材肉部と分離した汁とを混合する混合工程と、
を含むことを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、果実・野菜又は穀物である原料食材を容器にいれ、それら原料食材より糖度の高い糖を加えることで、浸透圧の関係から原料食材の肉部から汁を出させることができる。その後、食材肉部と汁とを分離し、分離した食材肉部を乾燥すると、乾燥により水分率が減少し、弾力のある状態とすることができる。そして、乾燥した食材肉部と分離した汁とを混合すると、食品本来の食感を残した食感の良い食材加工品を製造することができる。また、食材肉部と汁とが混合されると、流動性を備えたものとなり舌触りもよい。また、食材肉部は糖度が上がっており、冷凍しても凍りずらく腐りにくいものとすることができる。
【0007】
また、汁抽出工程において、原料食材を容器に入れ、糖を加えて加熱することにより汁を抽出するようにしてもよい。これによれば、糖を入れて加熱することで、汁を短時間で素早く抽出することが可能となる。
【0008】
また、汁抽出工程において、原料食材を容器に入れ、糖を加えて所定時間保持することにより汁を抽出するようにしてもよい。これによれば、ゆっくり時間をかけて抽出することができるので、原料食材の食材肉部を崩すことなく汁の抽出が可能となり、加熱により肉部がすぐ崩れてしまうような原料食材に特に有効な方法である。
【0009】
また、加熱による汁抽出工程に先立って、原料食材を容器に入れ糖を加えて所定時間保持した後、加熱により汁を抽出するようにしてもよい。これによれば、加熱前に原料材料に糖を加えて所定時間保持するので、食材肉部の糖度を向上させることができる。さらに、加熱することで食材肉部に糖が移動しやすくなり食材肉部の糖度が向上する。このような二段階の抽出工程により、一工程では抽出しずらい原料食材の汁も充分に抽出することが可能となる。
【0010】
また、原料食材は果実である場合には、汁抽出工程において果実を容器に入れ糖を加えて加熱することにより果実の果肉から果汁を抽出し、その果肉がゲル化する前に果肉と果汁を分離するようにしてもよい。これによれば、原料食材が果実である場合には、果実を容器に入れ果実の糖度より高い糖を加え加熱することにより果実の果肉から果汁を抽出することができる。そして、果肉は加熱を続けるとゲル化してしまうのでその前に果肉と果汁を分離することで、果肉の形を崩さず分離することが可能となる。
【0011】
また、混合工程で混合された食材肉部と汁との混合物、乾燥工程で乾燥された食材肉部、汁抽出工程の後に分離工程で食材肉部と分離された汁の1以上が食材加工品とされるようにしてもよい。これによれば、食材加工品として、食材肉部と汁との混合物、食材肉部、汁の三種の食材加工品が得られる。
【0012】
また、本発明の食材加工品の製造方法は、
果実・野菜又は穀物である原料食材を容器に入れ、糖を加えてその原料食材の肉部から汁を出させる汁抽出工程と、
その汁抽出工程の後、食材肉部と汁とを分離する分離工程と、
分離した食材肉部を乾燥する乾燥工程と、
その乾燥した食材肉部と分離した汁とを混合する混合工程と、
を含み、
さらにその混合された食材肉部と汁に更に糖を加えて加熱又は保持することにより汁を抽出する汁再抽出工程と、
その後、食材肉部と汁を分離する再分離工程と、
分離した食材肉部を乾燥する再乾燥工程と、
乾燥した食材肉部と前記汁を混合する再混合工程とを含み、
それら汁再抽出工程、再分離工程、再乾燥工程及び再混合工程は1回実施又は2回以上繰り返され、これにより食材肉部の糖度を順次高めることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、混合工程後の食材肉部と汁とに更に糖を加えて加熱または保持することで、食材肉部に糖が浸透し、より糖度を高くすることができる。さらに、その後、再分離工程、再乾燥工程、再混合工程を含むので、水分率、軟らかさなどを細かく変更し、食材加工品の糖度を上げることができる。そして、これらの再工程が1回以上繰返されるので、食材加工品の使用状態に合わせ微調整が可能となる。このように、複数回繰返すことで、一度では充分に糖度が上がらないような食材肉部でも徐々に糖度を上げることが可能となる。
【0014】
また、再混合工程で混合された食材肉部と汁との混合物、再乾燥工程で乾燥された食材肉部、汁再抽出工程の後に再分離工程で食材肉部と分離された汁の1以上が食材加工品とされるようにしてもよい。これによれば、食材加工品として、食材肉部と汁との混合物、食材肉部、汁の3種の食材加工品が得られる。
【0015】
また、原料食材が果実の場合、混合後の果肉と果汁との混合物に添加剤を加え、混合物を適度に固めるようにしてもよい。このように、添加剤を加えることで、軟らかくなりすぎた食材加工品を適度に固めることができるので、使用状態に合わせて食材加工品の状態を細かに変更することができる。
【0016】
また、混合工程によって得られた食材加工品(以下、果実加工品ともいう)を使用し、その果実加工品をアイスクリームに混入させて冷凍してもよい。混合工程によって得られる果実加工品は糖度が高くなっており、凍りにくくなっている。よって、アイスクリームに混入させて冷凍しても果実加工品は凍らず、舌触りの良い新しい食感のアイスクリームを製造することができる。
【0017】
また、混合工程によって得られた果実加工品を使用し、その果実加工品をジャムのようにそのまま食品に塗って使用してもよい。混合工程によって得られる果実加工品は流動性を備えており、また、果肉は果肉本来の食感が残っているので、その果実加工品を通常のジャムと同じように使用することができる。そして、その果実加工品は通常のジャムより、果肉の食感が楽しめるものとなる。
【0018】
また、上記のような食材加工品の製造方法によって得られる果肉(食材肉部)と果汁(汁)とを複数の果実(原料食材)において用意し、一つの果肉と果汁との組み合せにおける果汁を、別の果肉と果汁との組み合せにおける果汁と変更し、それら異なった種類の果肉と果汁とを混合してもよい。これによれば、上記に記載した食材加工品の製造方法によって、例えば、ブルーベリーの果肉・果汁とりんごの果肉・果汁とを得て、ブルーベリーの果肉とりんごの果汁を組合せる構成とすることが可能となる。このように様々な組み合せが可能となり、幅広い新たな味を作ることができる。
【0019】
また、上述した食材加工品の製造方法において得られる果肉(食材肉部)を使用し、その果肉をドライフルーツとしてそのまま食してもよい。このように、果肉を乾燥工程で充分に乾燥させておけば、その果肉を直接食べることができる。
【0020】
また、上述した食材加工品の製造方法において得られる果汁(汁)を使用し、その果汁をフールーツシロップとして食品にかけて使用してもよい。このように果汁をそのまま使用することもでき、様々な食品にかけて食べることができるので、幅広い使い道が拡がる。
【0021】
また、混合工程や再混合工程後の混合物を再び乾燥して、その食材果肉を食してもよい。これによれば、混合することで、食材加工品に糖がより浸透し、糖度の高い食材加工品とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る食材加工品の製造方法を示す概念図。
【図2】図1のフローチャート。
【図3】別実施例における食材加工品の製造方法を示す概念図。
【図4】図3のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る食材加工品の製造方法を示す概念図である。図1(a)に示すように、最初に容器10に対し果実(原料食材)1を投入する。果実1の種類としては、特に限定されず、ブルーベリー、りんご、なし、いちじく、杏、ゆず、かき、ぶどう、いちご等が使用でき、りんごスライス、なしスライスなど、種や皮を取ってスライス状にした形態のものを使用しても構わない(食感を良くするために皮を一部残す等の加工を施してもよい。)。また、トマト、かぼちゃ、人参、しょうが等の野菜を使用したり、豆等の穀物を原料食材1として使用してもよい。
【0024】
そして、図1(b)のように果実(原料食材)1に対し糖4を加える。加える糖4の種類としては、砂糖(ショ糖)、果糖、グラニュー糖などを使用することができる。次に、図1(c)のように糖4を加えた状態で、果肉(食材肉部)2から果汁(汁)3を出させるために所定時間保持する。なお、果実1から果汁3が出た(果肉2から果汁3が出た)状態の物を(図1(d)参照)を果肉(食材肉部)2としている。この工程を保持工程とすると、保持工程のための時間は、例えば、ブルーベリーを対象の果実1とした場合に、12時間から24時間ほど置いておくとよい。このように、時間をかけて保持することで果実1と糖4とを馴染ませることができる。この保持時間は果実1の種類によって、また、どのくらいの甘さにしたいかなどによって異なってくる。また、保持工程で保持する際の温度は原料食材1によって変更するとよい。
【0025】
保持工程について具体的に述べると、果実1の持つ糖度に比べ、回りに配置された糖4の糖度の方が高いので、浸透圧の関係から果実1の細胞膜を通して外部の糖4が内部の果肉2に浸透し、果肉2から果汁3が外へ出る現象が発生する。これは、内部と外部との糖度を同じにしようとする浸透圧の現象から起こるもので、保持工程で時間をかけることで、内部と外部の糖度が同じ値に近づいていく。このように、図1(d)の保持工程により、果肉2の果汁3が外へ抽出される。
【0026】
次に、図1(e)に示すように保持工程後の果肉2と果汁3とを加熱装置11により加熱する。このような加熱工程により果肉2を軟らかくするとともに果肉2から果汁3を再度抽出することができる。熱を加えることによって、果肉2から果汁3が出るようになる。これは、周りの果汁3の方が糖度が高くなり、果肉2に糖が浸透していくためである。また、糖4を果汁3に溶かすことができる。
【0027】
このような保持工程、加熱工程は果実(原料食材)1の果肉(食材肉部)2から果汁(汁)3を出させる抽出工程として機能している。ここでは、保持工程後に加熱工程を行っているが、保持工程を設けず、果実1を容器10に入れ、糖4を加えた状態ですぐに加熱するようにしてもよい。保持工程を設けないことで製造時間を短縮することができる。
【0028】
また、加熱工程を設けず保持工程のみで果汁3を抽出することも可能である。加熱すると果肉(食材肉部)2がくずれてしまうような原料食材1の場合は、加熱工程が無い方が良い場合もある。
【0029】
なお、保持工程と加熱工程とを行う場合には、芽胞を作る細菌である有芽胞菌の滅菌処理の効果もある。保持工程で所定時間おくと有芽胞菌の胞子が開き、その状態で加熱工程が行われるので、有芽胞菌を滅菌することが可能となる。こうすることで、腐敗しにくくなり賞味期限を延ばすことができる。
【0030】
次の工程は、果肉2と果汁3とを分離する分離工程である(図1(f)参照)。果肉2と果汁3とは、ザルや網、ガーゼ等を使用し、分離するようにすればよい。なお、分離するのは、加熱工程で、果肉2から果汁3が出てゲル化する前である。ゲル化する前に分離することで、果肉2の食感を残すことができる(例えば、ツブツブした食感を残すことができる。)。ゲル化する前に取り出すので、果肉2の表層についても残しておくことが可能である。なお、ゲル化は原料食材1がブルーベリーなどの果実の場合に起こる現象であり、野菜や穀物などでは起こらない場合もある。果実以外の場合には煮崩れしない程度で分離するのがよい。
【0031】
そして、分離した果肉2を乾燥装置12により乾燥させる(図1(g)参照)。乾燥には、果肉2の水分率をある程度残しつつ、果肉2に負担をかけないように冷風乾燥が好まれる。しかし、温風等により乾燥させることも可能である。ここで、乾燥によって、果肉2の水分率を減少させ(例えば70%未満)、果肉2の状態を変化させる。
【0032】
上記したような工程によると、果実1に糖4を加えて所定時間保持する保持工程があるので、果実1に糖4が浸透し、代わりに果肉2から果汁3を出させることができるので、果肉2内部の糖度を上昇させることができる。そして、その果肉2と果汁3とを加熱することで、さらに多くの果汁3を抽出することが可能となる。さらに、ゲル化する前に果肉2と果汁3とを分離するので、果肉2は崩れていない状態で取り出すことができる。また、分離した果肉2は乾燥させて水分率を減少させるので、弾力のある状態とすることができる。
【0033】
最後に、分離工程後の分離された果汁3を状態(A)、乾燥工程後の乾燥した果肉2を状態(B)とすると、それらを混合(つまり、乾燥した果肉2と分離した果汁3とを混合。)して、状態(A)+(B)とする。この混合工程により、乾燥した果肉2が果汁3をある程度を吸って、果肉2内に果汁3が包含されるようになる。
【0034】
このようにすれば、糖度の高い乾燥した果肉2を途中の工程で得られた果汁3と再び混合するので、果肉2が果汁3を吸い、果汁3を包含した食材加工品を製造することができる。このようにしてできた食材加工品は、果肉2がゲル化していないので、果肉2本来の食感を残しており、食感が良い。また、果汁3と混合されているので、流動性を備えたものとなる。
【0035】
なお、混合工程による食材加工品の製造方法において得られた食材加工品(果実加工品ともいう)を使用し、その果実加工品をアイスクリームに混入させて冷凍してもよい。混合工程によって得られる果実加工品は糖度が高くなっており、凍りにくくなっている。よって、アイスクリームに混入させて冷凍しても果実加工品は凍らず、舌触りの良い新しい食感のアイスクリームを製造することができる。
【0036】
また、混合工程によって得られた果実加工品を使用し、その果実加工品をジャムのようにそのまま食品に塗って使用してもよい。混合工程によって得られる果実加工品は流動性を備えており、また、果肉2は果肉2本来の食感が残っているので、その果実加工品を通常のジャムと同じように使用することができる。そして、その果実加工品は通常のジャムより、果肉2の食感が楽しめるものとなる。
【0037】
ここで、果肉2と果汁3とを別体として使用することも可能である。例えば、乾燥工程後の果肉2を使用し、果肉2をドライフルーツ(セミドライでもよい)としてそのまま食してもよい。このように、果肉2を乾燥工程で充分に乾燥させておけば、その果肉2を直接食べることができる。さらに、混合工程で混合された果肉2と果汁3との混合物を乾燥して、食してもよい。乾燥後の果肉2は混合後に果汁3を吸うので糖度がより上昇することになり、より糖度の高いものとすることができるので、一度目の乾燥とはまた違った味が楽しめる。
【0038】
また、分離工程後の果汁3を使用し、果汁3をフールーツシロップとして食品にかけて使用してもよい。このように果汁3をそのまま使用することもでき、様々な食品にかけて食べることができるので、幅広い使い道が拡がる。また、この果汁3に糖を加えるなどして、糖度を高めた状態で使用することも可能である。さらに、ブランディーや酢、他のフルーツ果汁など異なる原料を加えることも可能であり使用用途は幅広い。
【0039】
なお、果肉2から果汁3を出すために加える糖4の糖度は、果肉2の糖度より高い糖度の糖を入れることで浸透圧の関係から果汁3を絞り出せることができる。そして、糖4の量はカロリーを気にする場合に押さえるなど調整することができる。このように、果肉2の糖度より高い糖度の範囲内で調整することで、果実加工品の甘さを変更することが可能となる。
【0040】
図2に上記工程をまとめたフローチャートを示す。S1において果実1の殺菌・洗浄等が行われる。S2において前加工として、種や皮を除く必要がある果実1であればそのような処理を行い、容器の中に果実1を入れる(図1(a)参照)。なお、前加工として、果実1を乾燥させるようにしてもよい。前加工で乾燥させることで、水分率をある程度減少させることができ、糖度を予め高くすることができる。その後S3の保持工程において、果実1に糖4が投入され、その状態で保持されることで果肉2から果汁3が出る(図1(b)、(c)、(d)参照)。このような予備乾燥を行っていると、果肉2に糖3が浸透しやすくなる。そして、次のS4の加熱工程で果肉2と果汁3が加熱される。ここで、さらに果肉2から果汁3が出て果汁3が抽出できるとともに、果肉2が軟らかくなる(図1(e)参照)。
【0041】
この保持工程・加熱工程はそれぞれ汁抽出工程として機能し、これら両方を含めて汁抽出工程ということもできる。なお、加熱工程後には、S5に示す冷却工程((e)〜(f)の間)を設けることが可能である。加熱後に冷却することで、果肉2に糖4がよく浸透する。なお、冷却工程とはしているが、常温で保持するようにしてもよい。いずれにしても一定時間置くことで果肉2と糖4が馴染み、果肉2に効果的に糖4が浸透し果汁3が充分に抽出できる。
【0042】
S6の分離工程において、果肉2と果汁3が分離される(図1(f)参照)。分離された果肉2と果汁3のうち、果肉2がS7の乾燥工程において乾燥される(図1(g)参照)。果肉2が崩れない内に分離し、乾燥することで、果肉2は形状を保ったまま、次のS8の混合工程に移ることができる。混合工程において、S7で得られる果肉2とS5で得られる果汁3とが混合される(図1(g)参照)。果肉2は乾燥工程で乾燥されているので、果汁3を吸い易く、果肉2内の糖度をより上げることができる。
【実施例2】
【0043】
図3に、別実施例の食材加工品の製造方法を示す概念図を示す。なお、実施例1と共通する機能を有する部分にはそれぞれ同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
図3(a)〜(g)は図1の工程と同じである。図3(g)の乾燥工程後、図3(h)に示すように、乾燥した果肉2と果汁3aの一部との混合物に対し再び糖4を加える。果汁3aは一部としているが、果汁3aは全く無くてもよく、全て使用してもよい。つまり、果肉2の糖度に対し、加える物体の糖度が高ければよい。なお、果汁3aを一部使用することで、糖4が果汁3aに溶けやすくなる。そして、図3(i)に示すように糖4を加えたまま所定時間置く再保持工程を行う(ここでは、糖4と果汁3aが交じり合っている)。例えば果実1にブルーベリーを使用する場合に1回目の保持時間は12時間から24時間であったが、2回目の保持時間は6時間から12時間というように、保持時間を少なくすることができる。これは、果肉2に糖4が馴染み易くなっているためである。そして、所定時間保持することで、果肉2の果汁3bが外へ抽出される。
【0045】
そして、図3(k)に示すように再保持工程後の果肉2と果汁3bとを加熱装置11により加熱する。このような再加熱工程により果肉2を軟らかくするとともに果肉2から果汁3bを再度抽出することができる。熱を加えることによって、果肉2から果汁3bが出るようになる。また、糖4を満遍なく溶かすこともできる。なお、再保持工程・再加熱工程で果汁3bを抽出する汁再抽出工程を行っているが、この2回目の汁再抽出工程での果汁3bは、一回目の汁抽出工程での果汁3aの糖度より高くなっている。
【0046】
また、ここでは再加熱工程を行っているが、果肉2が加熱により形が崩れ易いものである場合は、加熱を行わないようにしてもよい。また、再保持工程をなくし、再加熱工程だけにする場合も考えられる。このように、食材加工品をどのような状態にしたいかで加工方法を変更することが可能である。いずれにしても、形を崩さず、糖度の高い果肉2が得られればよい。
【0047】
次の工程は、果肉2と果汁3bとを分離する再分離工程である(図3(l)参照)。この場合も最初の分離と同様、分離するのは、再加熱工程で、果肉2から果汁3bが出てゲル化する前である。ゲル化する前に分離することで、果肉2の食感を残すことができる(例えば、ツブツブした食感を残すことができる。)。そして、分離した果肉2を乾燥装置12により乾燥させる(図3(m)参照)。
【0048】
このように、再乾燥工程後に再び糖4を加え、再保持工程、再加熱工程、再分離工程、再乾燥工程、再混合工程が再度繰り返されることとなる。よって、果肉2の糖度や水分率、軟らかさなどを最終の使用状態に合わせ変更することが可能となる。また、これらの再工程作業は、複数回繰返すことも可能であり、細かな設定が可能な食材加工品の製造方法を得ることができる。このような構成とすることで、カロリーを低く押さえたり、食感を様々に変えた食材加工品(果実加工品)を製造することができるので、消費者は自分の好みに合った果実加工品を選ぶことができる。
【0049】
そして、最初の分離工程後の分離された果汁3aを状態(A)、2回目の再分離工程後の分離された果汁3bを状態(B)、2回目の再乾燥工程後の乾燥した果肉2を状態(C)とすると、それらを混合(つまり、乾燥した果肉2と複数回分離させた果汁3とを混合。)して、状態(A)+(B)+(C)とする。この再混合工程により、乾燥した果肉2が果汁3a、3bを吸って、果肉2内に果汁3a、3bが包含されるようになる。なお、ここでは、果汁3a、3bについて状態(A)、状態(B)の両方を使用しているが、どちらか一方のみを使用することも可能である。また、他の原料食材1の加工によって得られた果汁や、酒類など他の風味付けの材料を混ぜることも可能である。
【0050】
また、原料食材(果実)1により、工程を適宜変更することが可能である。つまり、原料食材1によっては、加熱工程を行わず、保持工程のみで汁3を抽出したり、1回目は加熱工程を行い、2回目は形が崩れそうなものの場合は加熱工程を行わわないようにしてもよい。さらに、再工程を複数回繰返すことで、果肉2の糖度を徐々に高めることができる。このように果肉(食材肉部)2の糖度を浸透圧の関係で高めていくことを所謂糖絞りと言い、この糖絞りと乾燥を複数回繰返すことで、果肉2の形が崩れないにもかかわらず、糖度の高い果肉2としていくことが可能となる。なお、複数回に分けて糖絞りを繰返すのは、一度では十分に糖が浸透しない場合があるからである。
【0051】
図4に図3の工程をまとめたフローチャートを示す。S1〜S7は、実施例1と同様の工程であり説明を省略する。S7の乾燥工程後、S8の混合工程において一回目で得られた果汁3aの一部に糖4が加えられ、果肉2と糖4及び果汁3aが混合される。果汁3aの一部としたのは、後の工程で果汁3aを使用する場合もあるからであり、全部を使用してもよく、S8の混合工程では、糖4だけを入れ、果汁3aがない状態で汁を抽出することも可能である。果汁3aがない場合はS8の混合工程を省略することができる。
【0052】
S9の再保持工程において、果肉2と果汁3aの中に糖4が加えられ、その状態で所定時間保持される(図3(h)、(i)、(j)参照)。すると、果肉2から果汁3bが抽出されるので、その状態でS10において再度加熱する(図3(k)参照)。再加熱工程後にS11のような加熱後に一定時間冷ます冷却工程を行うことで、果肉2に糖4が十分に浸透し、果肉2の糖度が向上する((k)〜(l)の間)。さらに、S12の再分離工程により果肉2と果汁3bとが分離される(図3(l)参照)。その後、S13の再乾燥工程において果肉2が再度乾燥される(図3(m)参照)。そして、S14において、乾燥工程で得られた果肉2と途中の段階の分離工程で得られた果汁3a及び果汁3bとが混合される(図3(n)参照)。なお、S9〜S14までの再工程は複数回繰返すことが可能である。
【0053】
このように、複数回繰返すことで果肉(食材肉部)2の糖度が徐々に高まっていく。例えば、原料食材1の糖度が10%であり、加える糖4の糖度が40%であった場合、一度目の汁抽出工程で果肉2の糖度が20%に上がる。さらに2回目に糖度40%の糖4を加えると果肉2の糖度が30%とになるというように徐々に糖度が上がる。このように繰返す場合、乾燥工程が無ければ加熱のたびに果肉2の形状が崩れていってしまうが、乾燥工程が毎回あり、崩れない状態で加熱を止めるので、糖4を吸収し易く、型崩れしない果肉2とすることができる。
【0054】
上記した実施例では、1つの果実だけを使用した場合を考えたが、複数の果実を使用することも可能である。つまり、上記のような方法によって得られる果肉と果汁とを複数の果実において用意し、一つの果肉と果汁との組み合せにおける果汁を、別の果肉と果汁との組み合せにおける果汁と変更し、それら異なった種類の果肉と果汁とを混合する構成としてもよい。例えば、ブルーベリーの果肉・果汁とりんごの果肉・果汁とを得て、ブルーベリーの果肉とりんごの果汁を組合せる構成とすることが可能となる。このように様々な組み合せの果実加工品の製造が可能となり、幅広い新たな味を作ることができる。
【0055】
また、上記実施例において、混合後の果肉と果汁との混合物にペクチンやデンプン等の添加剤を加え、混合物を適度に固めるようにしてもよい。添加剤を加えることで、軟らかくなりすぎた果実加工品を適度に固めることができるので、使用状態に合わせて果実加工品の状態を細かに変更することができる。また、固めるときに必要であればレモン果汁などの酸性のものを加えてもよい。
【0056】
また、上記実施例で示した糖は粒状態のものをしめしたが、ガムシロップのような液糖を使用することも可能である。液糖である場合は、食材肉部への浸透がしやすくなり、短時間で食材肉部の糖度を上昇させることができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 果実(原料食材)
2 果肉(食材肉部)
3 果汁(汁)
4 糖

【特許請求の範囲】
【請求項1】
果実・野菜又は穀物である原料食材を容器に入れ、糖を加えてその原料食材の肉部から汁を出させる汁抽出工程と、
その汁抽出工程の後、食材肉部と汁とを分離する分離工程と、
分離した食材肉部を乾燥する乾燥工程と、
その乾燥した食材肉部と分離した汁とを混合する混合工程と、
を含むことを特徴とする食材加工品の製造方法。
【請求項2】
前記汁抽出工程において、前記原料食材を容器に入れ、糖を加えて加熱することにより前記汁を抽出する請求項1に記載の食材加工品の製造方法。
【請求項3】
前記汁抽出工程において、前記原料食材を容器に入れ、糖を加えて所定時間保持することにより前記汁を抽出する請求項1に記載の食材加工品の製造方法。
【請求項4】
前記加熱による汁抽出工程に先立って、原料食材を容器に入れ糖を加えて所定時間保持した後、前記加熱により前記汁を抽出する請求項2に記載の食材加工品の製造方法。
【請求項5】
前記原料食材は果実であり、前記汁抽出工程において果実を容器に入れ糖を加えて加熱することにより果実の果肉から果汁を抽出し、その果肉がゲル化する前に果肉と果汁を分離する分離工程を含む請求項1に記載の食材加工品の製造方法。
【請求項6】
前記混合工程で混合された食材肉部と汁との混合物、前記乾燥工程で乾燥された食材肉部、前記汁抽出工程の後に分離工程で食材肉部と分離された汁の1以上が前記食材加工品とされる請求項1ないし5のいずれか1項に記載の食材加工品の製造方法。
【請求項7】
果実・野菜又は穀物である原料食材を容器に入れ、糖を加えてその原料食材の肉部から汁を出させる汁抽出工程と、
その汁抽出工程の後、食材肉部と汁とを分離する分離工程と、
分離した食材肉部を乾燥する乾燥工程と、
その乾燥した食材肉部と分離した汁とを混合する混合工程と、
を含み、
さらにその混合された食材肉部と汁に更に糖を加えて加熱又は保持することにより汁を抽出する汁再抽出工程と、
その後、食材肉部と汁を分離する再分離工程と、
分離した食材肉部を乾燥する再乾燥工程と、
乾燥した食材肉部と前記汁を混合する再混合工程とを含み、
それら汁再抽出工程、再分離工程、再乾燥工程及び再混合工程は1回実施又は2回以上繰り返され、これにより食材肉部の糖度を順次高めることを特徴とする食材加工品の製造方法。
【請求項8】
前記再混合工程で混合された食材肉部と汁との混合物、前記再乾燥工程で乾燥された食材肉部、前記汁再抽出工程の後に再分離工程で食材肉部と分離された汁の1以上が前記食材加工品とされる請求項7に記載の食材加工品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−42704(P2013−42704A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182758(P2011−182758)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【特許番号】特許第4898972号(P4898972)
【特許公報発行日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【出願人】(511206630)有限会社ほし (1)
【出願人】(511206641)
【Fターム(参考)】