説明

食材加熱釜に対する糖度計の取付装置

【課題】食材の糖度計をその加熱釜へ耐熱状態に安定良く取り付ける。
【解決手段】食材加熱釜(5)の底面に切欠き穴(5a)を設け、その切欠き穴と合致連通するインシュレーター受け入れ口筒(52)とその包囲カバー口筒(51)とを、食材加熱釜の底面から外向き一体的に張り出す一方、食材加熱釜での加熱中にある食材(M)の屈折率を検知する糖度計の鏡筒(53)を上記インシュレーター受け入れ口筒へ、その先端面が食材加熱釜の底面と対応合致する位置までの深さか、又は一定量だけ内向きに突出する深さとして差し込むと共に、鏡筒の外周面とインシュレーター受け入れ口筒の内周面との相互間に介挿固定したインシュレーター(72)と、インシュレーター受け入れ口筒の径方向からインシュレーターへねじ込んだ複数のセットボルト(81)を介して、抜け止め状態に固定維持した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食材加熱釜に対する糖度計の取付装置に係り、加熱中にある各種食材の糖度を測定するために使用される。
【背景技術】
【0002】
本発明の出願人は甘味食品を対象とする加熱撹拌装置の運転方法について、先に特許第4194607号を取得しており、その図10、11に説示した糖度計(屈折計)(R)とその食品収容タンク(16)に対する取付装置が、本発明に最も近似する公知技術であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4194607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記公知発明に開示された糖度計(屈折計)(R)の取付装置では、その糖度計(R)における鏡筒(74)の細い先端側が言わば1層の断熱保護筒(71)だけで包囲されているにとどまる。しかも、その鏡筒(74)と断熱保護筒(71)との内外相互間は、シール材(73)の充填された前後両端部を除く全体として、空間のまま放置された状態にある。
【0005】
そのため、食品収容タンク(16)の底面から糖度計(R)の鏡筒(74)へ、加熱が直かに伝導しやすく、蒸気ジャケット(57)からの放熱も同じく糖度計(R)の鏡筒(74)へ伝播しやすく、糖度計内部の検知素子や回路基板などを耐久的な断熱使用状態に確保することができない。
【0006】
又、シール材(73)は耐熱合成樹脂(テフロン(登録商標))から成り、これと糖度計(R)や断熱保護筒(71)との嵌合面に、空気や水分などの封止材が全然介挿セットされていない。そのため、食品収容タンク(16)の内部から食材(M)の水分が容易に漏出する一方、食品収容タンク(16)の内部が真空状態になると、逆に外部から空気の侵入するおそれがある。
【0007】
更に、糖度計(R)の鏡筒(74)を受け持つ断熱保護筒(71)は、撹拌羽根(24)の回転中心を指向した短かい深さの円筒形であり、しかもこのような断熱保護筒(71)に対する糖度計(R)の着脱可能な固定ボルト(72)は、耐熱合成樹脂のシール材(73)を貫通して、糖度計(R)の鏡筒(71)を径方向から押し付けているに過ぎない。
【0008】
そのため、食品収容タンク(16)やその蒸気ジャケット(57)に対する糖度計(R)の取付強度と安定性に劣り、抜けやすいほか、振れ動きやすい問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はこのような諸問題の改良を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では断面ほぼU字形に造形された食材加熱釜の底面又は胴面に切欠き穴を設け、その切欠き穴に合致連通するインシュレーター受け入れ口筒とそのインシュレーター受け入れ口筒の包囲カバー口筒とを、上記食材加熱釜の底面又は胴面から外向き一体的に張り出す一方、
【0010】
上記食材加熱釜での加熱中にある食材の屈折率を検知する糖度計の鏡筒を上記インシュレーター受け入れ口筒へ、その先端面が食材加熱釜の底面又は胴面と対応合致する位置までの深さか、又は一定量だけ内向きに突出する深さとして抜き差し自在に差し込むと共に、
【0011】
その鏡筒の外周面とインシュレーター受け入れ口筒の内周面との相互間に介挿固定したインシュレーターと、上記インシュレーター受け入れ口筒の径方向からインシュレーターへねじ込んだ複数のセットボルトを介して、抜け止め状態に固定維持したことを特徴とする。
【0012】
又、請求項2では糖度計を形作る鏡筒の中途部から、径大な接合フランジを一体的に張り出す一方、
【0013】
その鏡筒の接合フランジよりも先端側へ耐熱合成樹脂製のインシュレーターを差し込み套嵌させると共に、
【0014】
そのインシュレーターの基端部へ套嵌状態に固定一体化したサニタリーヘルールから張り出す径大な接合フランジと、上記鏡筒の径大な接合フランジとを締結クランプによって締め付けたことを特徴とする。
【0015】
請求項3では糖度計を形作る鏡筒の径大な接合フランジと、サニタリーヘルールの径大な接合フランジとの相互間へ、密封用Oリングやその他のシール材を介挿セットしたことを特徴とする。
【0016】
請求項4では耐熱合成樹脂製インシュレーターの内周面と外周面に、糖度計の鏡筒やインシュレーター受け入れ口筒との密封用Oリングやその他のシール材を各々嵌め付けセットしたことを特徴とする。
【0017】
更に、請求項5では食材加熱釜の少なくとも底面を蒸気ジャケットによって包囲し、その底面の切欠き穴と合致連通するステンレス鋼製インシュレーター受け入れ口筒の筒芯線を、上記食材加熱釜の底面と約40度だけ交叉する関係の方向性として、その底面へ溶接する一方、
【0018】
上記インシュレーター受け入れ口筒を包囲するステンレス鋼製包囲カバー口筒の筒芯線を、同じく食材加熱釜の底面と約95度だけ交叉する関係状態として、その底面へやはり溶接したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の構成によれば、糖度計の鏡筒がインシュレーターでの套嵌状態にあって、しかもインシュレーター受け入れ口筒とその包囲カバー口筒との二重断熱状態に保たれており、食材加熱釜からの伝熱やその蒸気ジャケットからの放熱を受け難いため、糖度計内部の検知素子や回路基板などの耐用性が昂まり、食材の糖度(ブリックス値)を正確に測定検知できる効果がある。
【0020】
特に、食材を回転撹拌羽根により混練するような場合は、糖度計における鏡筒の先端面を食材加熱釜の底面又は胴面と対応合致する(面一状態になる)位置まで差し込み使用することにより、食材の撹拌作用に支障を与えることなく、そのムラのない糖度を高精度に測定することができる。
【0021】
他方、食材を回転撹拌羽根により混練せず、糖蜜に漬け込むような場合は、その糖度計における鏡筒の先端面を食材加熱釜の底面又は胴面から内向きに一定量だけ突出させることにより、その食材の糖度をやはり高精度に測定することができ、延いては加熱力の適確な調整制御に役立つ。
【0022】
又、請求項2の構成を採用するならば、糖度計の鏡筒が食材加熱釜のインシュレーター受け入れ口筒から抜け出すおそれや、その抜け出さないまでも振れ動くおそれを確実に予防することができ、取付状態の安定性と耐久強度がますます向上する。
【0023】
その場合、請求項3の構成を採用するならば、糖度計自身の接合フランジとサニタリーヘルールの接合フランジとの相互間から、空気や水などが侵入するおそれを予防することができる。
【0024】
請求項4の構成を採用するならば、糖度計自身の鏡筒とインシュレーターとの嵌合面や、同じくインシュレーターとインシュレーター受け入れ口筒との嵌合面に各々介在するOリングやその他のシール材によって、食材加熱釜の底面から食材の水分が漏出したり、逆に外部から食材加熱釜の内部へ空気が侵入したりするおそれを予防できることになる。
【0025】
更に、請求項5の構成を採用するならば、食材加熱釜における底面中央部の付近からインシュレーター受け入れ口筒を比較的長く張り出して、その内部へ糖度計を極力深く受け入れた安定な嵌合状態に保つことができ、それにも拘らず糖度計を重畳的に断熱するインシュレーター受け入れ口筒用の包囲カバー口筒は、これを食材加熱釜から短かく張り出すことができ、その加熱釜から斜め下方へいたづらに大きく張り出すことの予防に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を適用した食材加熱撹拌装置の全体概略正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図1の4−4線断面図である。
【図5】図4から抽出して糖度計の取付状態を示す拡大断面図である。
【図6】糖度計を抽出して示す正面図である。
【図7】図6の平面図である。
【図8】図7の8−8線断面図である。
【図9】本発明の別な実施形態を示す断面図である。
【図10】図9から抽出して糖度計の取付状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基いて本発明の実施形態を詳述すると、図1〜5は和菓子の餡やカスタードクリーム、ジャムなどの食材(M)にふさわしい加熱撹拌装置を示しており、(F)は作業床への据付フレームであって、左右一対の軸受スタンド(1)(2)とその下部同士を連結する水平盤(3)とから枠組み一体化されている。(4)はその据付高さと水平度を調整できる複数のネジ脚である。
【0028】
その場合、据付フレーム(F)における左右何れか一方(図例では正面から見て右側)の軸受スタンド(2)は、他方(同じく左側)の軸受スタンド(1)よりも背高く大きなボックス型をなし、その内部へ後述の加熱釜転倒機構や撹拌羽根起し上げ退避機構を格納できるようになっている。
【0029】
(5)はステンレス鋼から断面U字形に造形された食材加熱釜であって、例えば約90リットルの容量を有し、その円弧底面が蒸気ジャケット(6)によって包囲されている。(7)(8)は食材加熱釜(5)の胴面に付属一体化された左右一対の軸受座であり、ここには各々フランジ継手(9)(10)を介して、一対の水平な加熱釜転倒支点軸(11)(12)が相反する横方向への張り出し状態に取り付け固定されている。そして、その左右一対の釜転倒支点軸(11)(12)は上記据付フレーム(F)の軸受スタンド(1)(2)へ、各々ピローブロック(13)(14)を介して回動自在に枢支されている。
【0030】
上記釜転倒支点軸(11)(12)は各々張り出し先端部から穿孔された中空形態として、その何れか一方の基端部から導出された分岐管(15)と、上記蒸気ジャケット(6)の底面中央部に開口する蒸気導入口(16)とが、フレキシブルホース(17)などを介して連通接続されている。(18)はドレン口筒、(19)はその開閉用ボールバルブ、(20)は他方の釜転倒支点軸(11)から導出された分岐管(21)と、ドレン口筒(18)とを連通接続するフレキシブルホースである。
【0031】
又、同じく釜転倒支点軸(11)(12)の張り出し先端部には各々スイベルジョイント(旋回継手)(22)(23)とニップル(24)(25)とが連通配管されており、図外のボイラーから上記食材加熱釜(5)の蒸気ジャケット(6)へ、図3の矢印で示すように蒸気が供給され、これによって食材(M)を加熱できるようになっている。(26)は蒸気供給バルブ、(27)は圧力計、(28)はスチームトラップである。但し、蒸気に代る又は加わるガスや電気を加熱源とする食材加熱釜(5)についても、本発明を適用実施することができる。
【0032】
上記ボックス型軸受スタンド(2)の内部へ比較的長く張り出す釜転倒支点軸(12)の途上には、ウォームホイール(29)が嵌め付け一体化されている。(30)はそのウォームホイール(29)と噛合するウォームであって、上記釜転倒支点軸(12)と直交して前後方向へ延在するハンドル軸(31)上に嵌め付け一体化されており、そのハンドル軸(31)をボックス型軸受スタンド(2)の前方から回動操作ハンドル(32)によって回動させれば、上記食材加熱釜(5)が両釜転倒支点軸(11)(12)の水平軸線廻りに一定角度(α)だけ転倒することとなる。その結果、加熱し終えた食材(M)を前下方へ便利良く取り出すことができる。
【0033】
又、(33)は上記ボックス型軸受スタンド(2)の上部へ架台(34)を介して据付け固定された直交軸型の減速機であり、その横向き(右向き)のギヤ軸(35)上には径大な従動スプロケット(36)が、同じく前後方向へ延在する撹拌羽根起し上げ支点軸(37)上には駆動ボックス用支持ステー(38)が各々嵌め付け一体化されている。
【0034】
(39)は上記減速機(33)のギヤ軸(35)と平行なハンドル軸であって、ボックス型軸受スタンド(2)の中段位置に軸受けされており、これがその軸受スタンド(2)から横向き(右向き)に張り出す先端部には、回動操作ハンドル(40)が嵌め付けられている。そのハンドル軸(39)の途上には径小な原動スプロケット(41)も嵌め付け一体化されており、更にその原動スプロケット(41)と上記従動スプロケット(36)との上下相互間には無端な伝動チエン(42)が巻き掛けられてもいる。
【0035】
そのため、そのハンドル軸(39)をボックス型軸受スタンド(2)の横方向(右方向)から回動操作ハンドル(40)によって回動させれば、上記駆動ボックス用支持ステー(38)が減速機(33)に貫通する撹拌羽根起し上げ支点軸(37)の水平軸線廻りに左右方向へ一定角度(β)だけ傾斜することとなる。その結果、後述の食材用回転撹拌羽根を食材加熱釜(5)から上方へ抜き出し退避させることができ、その後食材加熱釜(5)を前下向きに転倒させることができる。
【0036】
(43)はこのような駆動ボックス用支持ステー(38)上へ片持ち固定状態に搭載された駆動ボックスであって、上記食材加熱釜(5)の真上位置まで水平に張り出し延長されており、その張り出し先端部に撹拌羽根回転用の駆動モーター(44)が内蔵設置されている。(45)は上記駆動ボックス(43)の基端部に設置された操作盤(コントローラー)、(46)はその操作盤(45)の表面に取り付けられた表示パネルである。
【0037】
(47)は同じく駆動ボックス(43)の張り出し先端部へ食材加熱釜(5)の中心を指向する垂下状態に軸受けされた撹拌用センター軸であり、上記駆動モーター(44)によって回転される。(48)はそのセンター軸(47)と遊星ギヤ機構(図示省略)を介して伝動連結された撹拌用偏心軸であり、上記センター軸(47)の周囲を公転運動すると同時に、自転運動も行なうようになっている。
【0038】
(A)はこのような偏心軸(48)へ下方から抜き差し自在に差し込み使用される食材用回転撹拌羽根であって、伸縮可能なハンガー支柱(49)とその下端部に枢着された羽根板片(スクレーパー)(50)とから、正面視の全体的な錨形を呈しており、その羽根板片(50)が上記食材加熱釜(5)の内底面へ弾圧され乍ら、食材(M)の混練作用と掻き取り作用を行ない、焦げ付きを防ぐ。
【0039】
更に、上記食材加熱釜(5)における底面中央部の近辺には図5のようなステンレス鋼の包囲カバー口筒(51)が、蒸気ジャケット(6)を斜め下方から貫通する仕切り状態に溶接されている。しかも、その包囲カバー口筒(51)の内部に介在する同じステンレス鋼のインシュレーター受け入れ口筒(52)が、やはり食材加熱釜(5)の底面に溶接されている。(5a)はその食材加熱釜(5)の底面に設けられた切欠き穴であり、インシュレーター受け入れ口筒(52)と合致連通する。
【0040】
その場合、インシュレーター受け入れ口筒(52)を包囲する包囲カバー口筒(51)の筒芯線が、食材加熱釜(5)の底面と約95度(γ)だけ交叉(ほぼ直交)する関係状態にあるに比して、インシュレーター受け入れ口筒(52)の筒芯線は食材加熱釜(5)の底面と約40度(θ)だけ交叉する関係の方向性にあり、蒸気に直接晒されてはいない。
【0041】
(R)は加熱中にある食材(M)の糖度を測定するインライン型の屈折計(糖度計)であって、図6〜8に抽出して示す如く、ステンレス鋼から段付き円筒状に造形された鏡筒(53)を備え、その鏡筒(53)の中途部から張り出す径大な接合フランジ(54)よりも先端側が検知部(センサー)として、ここにはプリズム(55)や光源(LED)(56)、反射ミラー(57)のほか、対物レンズ(58)とリレーレンズ(59)並びに円筒状の遮光シャーシ(60)から成る光学組立体も内蔵設置されており、光源(56)から食材(M)とプリズム(55)との境界面へ光を入射し、そのプリズム(55)から光を出射させるようになっている。上記鏡筒(53)の先端面は食材加熱釜(5)の円弧底面と対応合致し得る傾斜勾配面(53a)として造形されている。
【0042】
(61)は食材(M)の加熱温度センサーであって、サーミスターや白金測温抵抗体などから成り、上記プリズム(55)と食材(M)との境界面付近に位置する関係状態として、やはり鏡筒(53)の検知部に内蔵設置されている。
【0043】
他方、同じく鏡筒(53)の接合フランジ(54)よりも基端側は徐々に径大な円錐形の口金(62)として、その外周面からはケース受け止めフランジ(63)が張り出されているほか、雄ネジ(64)が刻成されてもいる。(65)は耐熱合成樹脂製の基板収納ケースであって、上記鏡筒(53)の口金(62)へ基端方向から差し込まれた上、雄ネジ(64)との締結ナット(66)により固定されている。(67)はその基板収納ケース(65)の開閉蓋であり、これも耐熱合成樹脂から成る。
【0044】
そして、このような基板収納ケース(65)の内部には上記プリズム(55)から出射した光を検知するイメージセンサー(CCDやCMOS)(68)のほか、その検知出力信号から測定された屈折率を糖度(ブリックス値)に変換する電子回路や、上記加熱温度センサー(61)により検知された食材(M)の温度に応じた温度補正係数を算出する電子回路、そのブリックス値と温度補正係数との両信号を比較演算して、最終の正確な糖度(ブリックス値)を算出する電子回路を備えたセンサー基板(CPU)(69)も設置されている。(70)は防水性の配線コネクターであり、上記加熱撹拌装置側の操作盤(45)や表示パネル(46)に接続使用される。(71)は基板収納ケース(65)に対するセンサー基板(69)の取付ビスである。
【0045】
図5は上記食材加熱釜(5)の底面に対する糖度計(屈折計)(R)の取付状態を示す拡大図であるが、その取り付けに当っては上記鏡筒(53)の接合フランジ(54)よりも先端側へ、予じめ耐熱性合成樹脂(テフロン(登録商標))のインシュレーター(72)を抜き差し自在に差し込み套嵌しておく。
【0046】
(73)(74)はそのインシュレーター(72)における先端側の内周面と外周面へ、各々嵌め付けセットされた密封用Oリングやその他のシール材であり、水や空気の流通を封止する。(75)は同じくインシュレーター(72)における基端側の外周面に切り欠かれた凹段面であり、ここへ差し込み套嵌したサニタリーヘルール(76)を、複数のノックピン(77)によってインシュレーター(72)へ固定一体化しておく。
【0047】
そして、そのヘルール(76)の基端部から張り出す径大な接合フランジ(78)と、上記鏡筒(53)の径大な接合フランジ(54)とを締結クランプ(79)の締め付けによって固定一体化する。(80)はその接合フランジ(54)(78)同士の相互間に介挿セットされた密封用Oリングやその他のシール材であり、やはり水や空気の侵入を防ぐ。
【0048】
尚、上記締結クランプ(79)を緩めれば、糖度計(屈折計)(R)の鏡筒(53)からインシュレーター(72)を引き抜くことができ、そのインシュレーター(72)の交換や糖度計(屈折計)(R)自身の保守点検、清掃などを行なえる。
【0049】
そこで、このように準備した糖度計(屈折計)(R)の先端部を、食材加熱釜(5)の底面から外向き一体的に張り出したインシュレーター受け入れ口筒(52)へ、その傾斜勾配面(53a)が図5のように食材加熱釜(5)の底面と対応合致する(面一状態になる)位置までの深さとして差し込んだ上、インシュレーター受け入れ口筒(52)の径方向からインシュレーター(72)へ、複数のセットボルト(81)をねじ込むことにより抜け止め状態に固定維持する。(82)はそのセットボルト(81)のロックナットである。その差し込み時に、上記インシュレーター(72)の外周面又はインシュレーター受け入れ口筒(52)の内周面へシリコーンオイルを塗布することが望ましい。
【0050】
上記糖度計(屈折計)(R)を図5のように取り付け使用すれば、回転撹拌羽根(A)の自転運動と公転運動に支障を与えるおそれがなく、その撹拌羽根(A)によって加熱中の食材(M)を隅々まで洩れなく混練することができる。
【0051】
しかも、糖度計(屈折計)(R)の鏡筒(53)に耐熱合成樹脂のインシュレーター(72)が差し込み套嵌されている一方、これを受け入れる食材加熱釜(5)側のインシュレーター受け入れ口筒(52)は、蒸気ジャケット(6)を仕切る包囲カバー口筒(51)によって包囲されているため、上記糖度計(屈折計)(R)は食材加熱釜(5)の底面から伝わる熱や蒸気ジャケット(6)から発散する熱に対して、重畳的な断熱使用状態に保護されることとなる。
【0052】
又、上記糖度計(屈折計)(R)を形作る鏡筒(53)の先端面とプリズム(55)は、食材加熱釜(5)の切欠き穴(5a)を通じて加熱中にある高温の食材(M)と接触しているが、センサー基板(69)を内蔵した基板収納ケース(65)は、上記食材加熱釜(5)や蒸気ジャケット(6)から遠く離隔しており、そのケース内部温度の上昇によって、上記センサー基板(69)やこれに装備された電子回路が悪影響を受けることもない。
【0053】
その結果、加熱中に変化する食材(M)の糖度(ブリックス値)を上記糖度計(屈折計)(R)により、常時一定の取付位置においてリアルタイムでの自動的に、しかも正確に安定良く測定検知することができ、これを上記基板収納ケース(65)に内蔵されているセンサー基板(69)からの出力電気信号として、加熱撹拌装置側の操作盤(コントローラー)(45)やその表示パネル(46)へ伝送し、その出力電気信号に基いて操作盤(45)が食材加熱釜(5)の蒸気ジャケット(6)に対する供給蒸気量(加熱力)と撹拌羽根(A)の回転速度を自動的に調整制御し得るのである。
【0054】
図5の取付状態から明白なように、上記インシュレーター受け入れ口筒(52)は食材加熱釜(5)の底面と約40度(θ)だけ交叉する方角関係として、その食材加熱釜(5)から長く張り出す円筒形をなし、その内部へ糖度計(屈折計)(R)のインシュレーター(72)を深く受け入れた嵌合状態にあるため、そのインシュレーター(72)が使用中に膨張してインシュレーター受け入れ口筒(52)と密着することや、その両者が複数のセットボルト(81)によって固定維持されていること、更には糖度計(屈折計)(R)自身の接合フランジ(54)とサニタリーヘルール(76)の接合フランジ(78)とが締結クランプ(79)により締め付けられていることとも相俟って、糖度計(屈折計)(R)が振れ動いたり、まして抜け出したりするおそれはなく、その取付強度と安定性に著しく優れる。
【0055】
更に、糖度計(屈折計)(R)自身の鏡筒(53)とインシュレーター(72)との嵌合面や、同じくインシュレーター(72)とインシュレーター受け入れ口筒(52)との嵌合面並びに上記接合フランジ(54)(78)同士の接合面には、空気や水の密封用Oリングやその他のシール材(73)(74)(80)が各々介挿セットされているため、食材加熱釜(5)の底面から各種食材(M)の水分が漏出したり、逆に外部から食材加熱釜(5)の内部へ空気が侵入したりするおそれもない。
【0056】
尚、食材(M)の加熱温度センサー(61)を上記糖度計(屈折計)(R)自身の検知部へ内蔵設置した図示の実施形態によれば、食材(M)の温度に応じた温度補正係数を算出して、その糖度(ブリックス値)の一層高精度な測定結果を得られる利点がある。
【0057】
次に、図9、10は本発明の別な実施形態として、豆類や芋類、栗、果実などの固形食材(M)を糖蜜(S)に漬け込む装置を示しており、これでは煮篭(83)へ収容した状態の食材(M)を、その食材加熱釜(5)内の糖蜜(S)へ漬け込み、蒸気ジャケット(6)へ供給する蒸気により加熱し、水分を蒸発させて、食材(M)の糖度(ブリックス値)を徐々に高めてゆく。(84)は蒸気ジャケット(6)への蒸気供給路であり、その開閉用電磁弁(85)を有している。
【0058】
(86)は糖蜜(S)の強制循環ポンプであって、好ましくは可変容量型のトコイドポンプから成り、上記食材加熱釜(5)内での食材蜜漬け中にある糖蜜(S)を、その加熱釜(5)の外部から図9の矢印で示す循環方向へ強制的に撹拌・対流させて、食材(M)や糖蜜(S)の加熱ムラをなくすと共に、糖蜜(S)からの水分蒸発作用を促進し得るようになっている。
【0059】
つまり、図9、10のような固形食材(M)の蜜漬け装置では、その食材加熱釜(5)の内部へ差し込み使用される食材(M)の回転撹拌羽根(A)がないため、上記糖度計(屈折計)(R)を図10に抽出して示す如く、その鏡筒(53)の先端面が食材加熱釜(5)の胴面や底面から一定量(L)だけ内向きに突出する状態として、図1〜8の上記実施形態と同じ方法により取り付け固定することができる。茲に、一定量(L)としては糖度計(屈折計)(R)自身に内蔵されているイメージセンサー(68)の最大定格温度や夏場の使用、その他の使用環境を考慮して、約50mm以下に設定することが望ましい。糖度計(屈折計)(R)は図示のような食材加熱釜(5)の胴面に取り付けることも可能である。
【0060】
そして、蜜漬け中にある食材(M)の糖度(ブリックス値)を、上記糖度計(屈折計)(R)により測定検知し、その糖度が目標の数値に到達したならば、その検知出力信号に基いて、図外のコントローラーが上記蒸気供給路(84)の電磁弁(85)を閉鎖させ、蒸気の供給を止めるのである。図9、10の糖度計(屈折計)(R)とその食材加熱釜(5)への取付方法は、図1〜8に示した上記実施形態と実質的に同一であるため、その図9、10に図1〜8との対応符号を記入するにとどめて、その詳細な説明を省略する。
【0061】
尚、図1〜10に示した何れの実施形態でも、上記インシュレーター(72)を糖度計(屈折計)(R)における鏡筒(53)の外周面へ予じめ差し込み状態に取り付けているが、これを予じめ食材加熱釜(5)から張り出すインシュレーター受け入れ口筒(52)の内周面へ差し込み状態に取り付けておき、そのインシュレーター(72)へその後糖度計(屈折計)(R)の鏡筒(53)を差し込み締結してもさしつかえない。
【符号の説明】
【0062】
(1)(2)・軸受スタンド
(3)・水平盤
(4)・ネジ脚
(5)・食材加熱釜
(5a)・切欠き穴
(6)・蒸気ジャケット
(7)(8)・軸受座
(9)(10)・フランジ継手
(11)(12)・釜転倒支点軸
(13)(14)・ピローブロック
(15)(21)・分岐管
(16)・蒸気導入口
(17)(20)・フレキシブルホース
(18)・ドレン口筒
(19)・ボールバルブ
(22)(23)・スイベルジョイント
(24)(25)・ニップル
(26)・蒸気供給バルブ
(27)・圧力計
(28)・スチームトラップ
(29)・ウォームホイール
(30)・ウォーム
(31)(39)・ハンドル軸
(32)(40)・回動操作ハンドル
(33)・減速機
(34)・架台
(35)・ギヤ軸
(36)・従動スプロケット
(37)・撹拌羽根起し上げ支点軸
(38)・支持ステー
(41)・原動スプロケット
(42)・伝動チエン
(43)・駆動ボックス
(44)・駆動モーター
(45)・操作盤
(46)・表示パネル
(47)・センター軸
(48)・偏心軸
(49)・ハンガー支柱
(50)・羽根板片
(51)・包囲カバー口筒
(52)・インシュレーター受け入れ口筒
(53)・鏡筒
(54)・接合フランジ
(55)・プリズム
(56)・光源
(57)・反射ミラー
(58)・対物レンズ
(59)・リレーレンズ
(60)・遮光シャーシ
(61)・加熱温度センサー
(62)・口金
(63)・ケース受け止めフランジ
(64)・雄ネジ
(65)・基板収納ケース
(66)・ナット
(67)・開閉蓋
(68)・イメージセンサー
(69)・センサー基板
(70)・配線コネクター
(71)・取付ビス
(72)・インシュレーター
(73)(74)(80)・Oリング
(75)・凹段面
(76)・ヘルール
(77)・ノックピン
(78)・接合フランジ
(79)・締結クランプ
(81)・セットボルト
(82)・ロックナット
(83)・煮篭
(84)・蒸気供給路
(85)・開閉電磁弁
(86)・強制循環ポンプ
(A)・回転撹拌羽根
(F)・据付フレーム
(M)・食材
(R)・糖度計(屈折計)
(S)・糖蜜
(L)・突出量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面ほぼU字形に造形された食材加熱釜の底面又は胴面に切欠き穴を設け、その切欠き穴に合致連通するインシュレーター受け入れ口筒とそのインシュレーター受け入れ口筒の包囲カバー口筒とを、上記食材加熱釜の底面又は胴面から外向き一体的に張り出す一方、
上記食材加熱釜での加熱中にある食材の屈折率を検知する糖度計の鏡筒を上記インシュレーター受け入れ口筒へ、その先端面が食材加熱釜の底面又は胴面と対応合致する位置までの深さか、又は一定量だけ内向きに突出する深さとして抜き差し自在に差し込むと共に、
その鏡筒の外周面とインシュレーター受け入れ口筒の内周面との相互間に介挿固定したインシュレーターと、上記インシュレーター受け入れ口筒の径方向からインシュレーターへねじ込んだ複数のセットボルトを介して、抜け止め状態に固定維持したことを特徴とする食材加熱釜に対する糖度計の取付装置。
【請求項2】
糖度計を形作る鏡筒の中途部から、径大な接合フランジを一体的に張り出す一方、
その鏡筒の接合フランジよりも先端側へ耐熱合成樹脂製のインシュレーターを差し込み套嵌させると共に、
そのインシュレーターの基端部へ套嵌状態に固定一体化したサニタリーヘルールから張り出す径大な接合フランジと、上記鏡筒の径大な接合フランジとを締結クランプによって締め付けたことを特徴とする請求項1記載の食材加熱釜に対する糖度計の取付装置。
【請求項3】
糖度計を形作る鏡筒の径大な接合フランジと、サニタリーヘルールの径大な接合フランジとの相互間へ、密封用Oリングやその他のシール材を介挿セットしたことを特徴とする請求項2記載の食材加熱釜に対する糖度計の取付装置。
【請求項4】
耐熱合成樹脂製インシュレーターの内周面と外周面に、糖度計の鏡筒やインシュレーター受け入れ口筒との密封用Oリングやその他のシール材を各々嵌め付けセットしたことを特徴とする請求項1又は2記載の食材加熱釜に対する糖度計の取付装置。
【請求項5】
食材加熱釜の少なくとも底面を蒸気ジャケットによって包囲し、その底面の切欠き穴と合致連通するステンレス鋼製インシュレーター受け入れ口筒の筒芯線を、上記食材加熱釜の底面と約40度だけ交叉する関係の方向性として、その底面へ溶接する一方、
上記インシュレーター受け入れ口筒を包囲するステンレス鋼製包囲カバー口筒の筒芯線を、同じく食材加熱釜の底面と約95度だけ交叉する関係状態として、その底面へやはり溶接したことを特徴とする請求項1又は2記載の食材加熱釜に対する糖度計の取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−125603(P2011−125603A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289006(P2009−289006)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000247247)有限会社ナカイ (22)
【Fターム(参考)】