食物なしでジプラシドンを投与するための方法、剤形、およびキット
【課題】食物なしでジプラシドンを投与するための方法、剤形、およびキットを提供する。
【解決手段】ヒトが絶食状態である場合に、有効量のジプラシドンを用いてヒトにおいてCNS障害を治療するための方法、剤形およびキット。一実施形態では、絶食状態のヒトに前記CNS障害を治療するために有効なジプラシドンの量を含む固体経口剤形を投与することを含み、前記投与後のヒトにおけるジプラシドンの血清濃度対時間曲線下面積(AUC0〜inf)が、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされるジプラシドン血清濃度対時間曲線下平均面積(AUC0〜inf)の70%〜140%である、ヒトにおいてCNS障害を治療する方法。
【解決手段】ヒトが絶食状態である場合に、有効量のジプラシドンを用いてヒトにおいてCNS障害を治療するための方法、剤形およびキット。一実施形態では、絶食状態のヒトに前記CNS障害を治療するために有効なジプラシドンの量を含む固体経口剤形を投与することを含み、前記投与後のヒトにおけるジプラシドンの血清濃度対時間曲線下面積(AUC0〜inf)が、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされるジプラシドン血清濃度対時間曲線下平均面積(AUC0〜inf)の70%〜140%である、ヒトにおいてCNS障害を治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
【背景技術】
【0002】
食物は、多くの経口投与する薬物の吸収に重要な影響を与える(Welling PG、薬物吸収に対する食物の影響(Effects of food on drug absorption)、Annu Rev Nutr.、1996;16:383〜415)。一部の薬物では、食物と共に摂取した場合に吸収が減弱する。他の薬物では、食物は吸収を増強する。薬物吸収の改変は、有効性および毒性に対して重要な意味を持つ。予想外に低い吸収は有効性の低下として現れる場合がある一方で、より高い薬物吸収は有害事象(AE)の発生率の増加をもたらし得る。どちらの結果も、治療の成功および治療へのコンプライアンスに影響を与え得る。
【0003】
ジプラシドン(5−[2−[4−(1,2−ベンズイソチアゾール−3−イル)−1−ピペラジニル]エチル]−6−クロロ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン)は、統合失調症(Harvey PD、Bowie CR、ジプラシドン:有効性、忍容性、および広範な有効性に関する新データ(Ziprasidone:efficacy,tolerability,and emerging data on wide−ranging effectiveness)、Expert Opin Pharmacother.、2005;6(2):337〜346)および双極性障害(Patel NC、Keck PE,Jr、ジプラシドン:双極性障害に罹患している患者における有効性および安全性(Ziprasidone:efficacy and safety in patients with bipolar disorder)、Expert Rev Neurother.、2006;6(8):1129〜1138)の単独療法に用いられている、経口活性のある抗精神病薬である。食物と共に経口投与した後、ピーク血清ジプラシドン濃度は、典型的には投薬の6〜8時間後に生じる。
【0004】
現在、ジプラシドンは米国および多くの他の国において固体経口カプセル剤形で認可されており、GEODON(登録商標)カプセル(米国を含めた一部の国)およびZELDOX(他の国)の名称で販売されている。ジプラシドンの経口懸濁液もGEODON(登録商標)経口懸濁液として認可されており、注射用GEODON(登録商標)として販売されている即時放出注射用形態が急性精神病エピソードの治療に認可されている。これらの製品について米国食品医薬品局によって認可されたラベルには、経口カプセルを食物と共に投与すべきことが記載されている。
【0005】
経口ジプラシドンの吸収は食物の存在によって影響を受ける。健常志願者における試験では、ジプラシドンの生体利用度は、標準の食品医薬品局(FDA)の食事と共に投与した場合に増強されることが示されている(Hamelin BA、Allard S、Laplante L他、新規非定型抗精神病剤ジプラシドンの薬物動態学および薬力学に対する標準食事のタイミングの効果(The effect of timing of a standard meal on the pharmacokinetics and pharacodynamics of the novel atypical antipsychotic agent ziprasidone).Pharmacotherapy、1998;18(1):9〜15)。用量に応じて、食物と共に与えた場合に、ジプラシドンの吸収が約100%増強された(Miceli JJ、Wilner KD、Hansen RA、Johnson AC、Apseloff G、Gerber N、健常男性志願者における、非絶食条件下でのジプラシドンの単一および複数用量の薬物動態学(Single− and multiple−dose pharmacokinetics of ziprasidone under non−fasting conditions in healthy male volunteers)、Br J Clin Pharmacol.、2000;49、補遺1:5S〜13S)。吸収はまた、食物摂取と比較した薬物投与のタイミングにも依存し、食物の直後ではなく2時間後に摂取した場合に、吸収が低下した(Hamelin他、1998、上記)。
【0006】
典型的なFDAの標準の食事は、バターで炒めた卵2個、ベーコン2枚、トースト2枚とバター、4オンス(113.4グラム)のハッシュブラウンポテトおよび8オンス(236.6ミリリットル)の全乳からなる。この食事は、脂肪(食事の総カロリー含量の約50%)およびカロリー(約800〜1000kcal)がどちらも高く(工業用指針:食物効果の生体利用度および摂食性の生物学的同等性の研究(Guidance for Industry:Food−Effect Bioavailability and Fed Bioequivalent Studies)、メリーランド州Rockville:米国保健社会福祉省、食品医薬品局、医薬品評価センター(Center for Drug Evaluation and Research(CDER));2002)、予測される患者群の毎日の食事の現実的な再現というよりは、標準化した研究ツールである。臨床的な実施では、多くの患者は、カロリーまたは脂肪含量が実質的に異なる食事と共にジプラシドンを摂取する場合があり、そのような状況下での薬物吸収が、実験室条件下で得られたことを必ず反映すると仮定することは、誤りである。
【0007】
さらに、ジプラシドンの薬物動態学の以前の実験室での研究は、患者ではなく健常志願者で実施した短期調査であった(Hamelin他、1998、上記;Miceli他、2000、上記)。しばしば、統合失調症に罹患している患者の食事はより乏しく(McCreadie R、Macdonald E、Blacklock C他、スコットランドのニススデールにおける統合失調症患者の食事摂取:症例対照研究(Dietary intake of schizophrenic patients in Nithsdale,Scotland:case−control study)、BMJ、1998;317(7161):784〜785)、必ずしも指示されたとおりに医薬品を摂取せず、薬物投与が施設外の状況で起こる場合は、患者が適切な医薬品曝露を受けていない場合がある可能性が生じる。
【0008】
さらに、最近の市場調査では、医師の約25%が、自分の患者にジプラシドンを食物と共に摂取するように指示していないと報告している。さらに、患者にジプラシドンを食物と共に摂取するように指示している精神科医の50%が、患者に薬物を間食と共に摂取するように告げている。患者間のコンプライアンスも同様に乏しい。患者回答者の約40%が、その1週間のジプラシドン用量の少なくとも半分をカロリー源なしで摂取していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、統合失調症または双極性障害に罹患している患者などのジプラシドンから利点を得る患者に、有効なジプラシドン血漿レベルを提供する方法であって、ジプラシドンを摂食または絶食状態のどちらの患者にも投与し得る方法の必要性が存在する。それ故に、患者は、そのジプラシドン治療が効いていることを確実にするために、十分な量の食物を摂取したか、または食物を摂取したかどうかを心配する必要がなくなる。本発明は、患者が摂取した食物の量に依存しない、ジプラシドン剤形およびジプラシドンを有効に投与する方法を提供することによって、この必要性に取り組んでいる。したがって、本発明により、患者のコンプライアンスが大きく上昇し、患者の生活の質が改善され、その結果、実現されるジプラシドンの有効性がより高くなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、絶食状態のヒトにCNS障害を治療するために有効なジプラシドンの量を含む固体経口剤形を投与することを含み、前記投与後のヒトにおけるジプラシドンの血清濃度対時間曲線下面積(AUC0〜inf)が、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされるジプラシドン血清濃度対時間曲線下平均面積(AUC0〜inf)の70%〜140%である、ヒトにおいて中枢神経系(CNS)障害を治療する方法を提供する。
【0011】
一実施形態では、ジプラシドンの固体経口剤形を投与した後の絶食させたヒトにおけるジプラシドンの血清AUC0〜infは、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされる平均血清AUC0〜infの75%〜130%である。別の実施形態では、ジプラシドンの固体経口剤形を投与した後の絶食させたヒトにおけるジプラシドンの血清AUC0〜infは、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされる平均血清AUC0〜infの80%〜125%である。
【0012】
また、本発明は、ヒトが絶食状態または摂食状態であるかに依存しない、ヒトにおいて中枢神経系(CNS)障害を治療する方法も提供する。したがって、本発明は、絶食状態のヒトに前記CNS障害を治療するために有効なジプラシドンの量を含む固体経口剤形を投与することを含み、前記投与後のヒトにおけるジプラシドンの血清濃度対時間曲線下面積(AUC0〜inf)が、同じ量のジプラシドンを含有する同一の固体経口剤形を、摂食状態のヒトに投与した結果もたらされたであろうジプラシドン血清濃度対時間曲線下面積の70%〜140%である、ヒトにおいてCNS障害を治療する方法を提供する。一実施形態では、絶食させたヒトにおけるジプラシドンのAUC0〜infは、同じ量のジプラシドンを含有する同一の剤形を、摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされるAUC0〜infの75%〜130%である。別の実施形態では、絶食させたヒトにおけるジプラシドンのAUC0〜infは、同じ量のジプラシドンを含有する同一の剤形を、摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされる平均AUC0〜infの80%〜125%である。
【0013】
好ましくは、本発明によって提供される方法は、有効量のジプラシドンを含む固体経口剤形を、絶食状態のヒトに投与することによって、ヒトにおいてCNS障害を治療する方法であり、前記投与後のヒトにおけるジプラシドンの血清AUC0〜infは、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされる平均ジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%、好ましくは75%〜130%、より好ましくは80%〜125%であり、かつ、前記投与後のヒトにおける血清AUC0〜infが、同じ量のジプラシドンを含有する同一の固体経口剤形を、摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされる平均ジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%、好ましくは75%〜130%、より好ましくは80%〜125%でもある。
【0014】
本発明の別の態様では、本発明の方法は、絶食状態で投与した後の最大ジプラシドン血清濃度(Cmax)が、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされる平均最大ジプラシドン血清濃度(Cmax)の約30%以内であることを提供する。
【0015】
本発明の別の態様では、本発明の方法は、絶食状態で投与した後の最大ジプラシドン血清濃度(Cmax)が、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされる平均最大ジプラシドン血清濃度(Cmax)の約140%未満であることを提供する。
【0016】
また、本発明は、絶食状態のヒトに有効量のジプラシドンを含む固体経口剤形を投与することを含み、少なくとも20ng/mlの定常状態最小血液ジプラシドン濃度(Cmin)および330ng/ml未満の定常状態最大血液ジプラシドン濃度(Cmax)を提供する、ヒトにおいてCNS障害を治療する方法も提供する。
【0017】
また、本発明は、上述の方法で有用な有効量のジプラシドンを含む固体経口剤形も提供する。したがって、本発明には、本出願中で前述の方法のうちの任意のものを達成するために有用と記載された剤形の特定のものも含まれ得る。
【0018】
本発明の方法およびキットでは、剤形中のジプラシドンは、好ましくは、溶出速度が改善されたおよび/または溶解度が改善された形態のジプラシドンを含む。したがって、剤形中のジプラシドンの全部または一部分が、好ましくは、ジプラシドンの溶出速度が改善された形態および/またはジプラシドンの溶解度が改善された形態である。このコンテキストでは、「ジプラシドン形態」は「剤形」(「固体経口剤形」など)と明確に異なる。「ジプラシドン形態」とは、固体経口剤形中で使用するジプラシドン成分の状態をいう。例えば特定の「ジプラシドン形態」は、ジプラシドンの特定の塩もしくは水和物、特定の粒子径のジプラシドン、および/または特定の賦形剤と組み合わせたジプラシドンであり得る。「剤形」とは、患者に投与する用量の形状および構成をいう。例えば特定の「剤形」は、錠剤、カプセル、または再構成するための散剤であり得る。剤形により、その中のジプラシドン成分、例えば溶出速度が改善されたまたは溶解度が改善されたジプラシドン、の放出速度を改変することができる。
【0019】
したがって、本発明の方法およびキットでは、有用な固体経口剤形は、持続放出手段、遅延放出手段、即時放出部分、または任意のその組合せを含むことができる。好ましくは、そのような剤形中では、ジプラシドンは、溶解度が改善した形態または溶出速度が改善した形態である。ジプラシドンの溶解度が改善した形態または溶出速度が改善した形態は、例えば、シクロデキストリンと組み合わせたジプラシドン、ジプラシドンナノ粒子、トシル酸ジプラシドン、酒石酸ジプラシドン、またはジプラシドンとポリマーとの固体混合物であってよく、ジプラシドンの少なくとも一部分は半規則である。ジプラシドンのこれらの形態は、本明細書中に記載されている。より好ましくは、そのような固体経口剤形は、持続放出手段または遅延放出手段を含む(これは、これらが即時放出部分も含んでいてもよいことを意味する)。さらに好ましくは、そのような固体経口剤形は、持続放出手段を含む(これは、これらが遅延放出手段および/または即時放出部分を含んでいてもよいことを意味する)。
【0020】
持続放出手段は、例えば、マトリックス錠などにおけるようにマトリックスであることができる。好ましくは、マトリックス物質はHPMCである。
【0021】
したがって、本発明の方法およびキットでは、有用な固体経口剤形は、沈殿阻害剤と組み合わせたジプラシドンを含むことができる。沈殿阻害剤と組み合わせたジプラシドンは、好ましくは、溶解度が改善した形態または溶出速度が改善した形態のジプラシドン、例えばシクロデキストリンと組み合わせたジプラシドン、ジプラシドンナノ粒子、トシル酸ジプラシドン、酒石酸ジプラシドン、またはジプラシドンとポリマーとの固体混合物であり、ジプラシドンの少なくとも一部分は半規則である。
【0022】
本発明の他の態様では、本方法は、ジプラシドンの経口剤形を投与することを含み、剤形中のジプラシドンは2000nmより大きい平均粒子径を有する。本発明の別の態様では、剤形、キットおよび方法は、2000nm未満の平均粒子径を有するジプラシドンを含む。
【0023】
本発明の異なる実施形態では、ジプラシドン固体経口剤形には、即時放出部分、持続放出手段、遅延放出手段、または任意のその組合せが含まれる。
【0024】
また、本発明は、1種または複数のCNS障害を治療するための薬学的キットも提供する。キットは、本明細書中に記載の有効量のジプラシドンを含む固体経口剤形および固体経口剤形の投与を説明する指示、例えば「添付文書」を含む。
【0025】
一実施形態では、本発明は、
a)有効量のジプラシドンおよび薬学的に許容できる担体を含む固体経口剤形と、
b)食物と共に投与することを指定しない、(a)の剤形を経口投与するための指示と
を含み、前記固体経口剤形が、絶食状態のヒトに投与した場合に、そのヒトに、摂食状態のヒトのコホートに、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを投与した結果もたらされる平均ジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%である血清ジプラシドンAUC0〜infをもたらす
キットを提供する。
【0026】
別の実施形態では、本発明は、
a)有効量のジプラシドンおよび薬学的に許容できる担体を含む固体経口剤形と、
b)(a)の剤形を食物と共にまたは食物なしで投与し得ることを指示する、(a)の剤形を経口投与するための指示と
を含み、前記固体経口剤形が、絶食状態のヒトに投与した場合に、そのヒトに、摂食状態のヒトのコホートに、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを投与した結果もたらされる平均ジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%である血清ジプラシドンAUC0〜infをもたらす
キットを提供する。
【0027】
別の実施形態では、本発明は、
a)有効量のジプラシドンおよび薬学的に許容できる担体を含む固体経口剤形と、
b)食物と共に投与することを指定しない、(a)の剤形を経口投与するための指示と
を含み、前記固体経口剤形が、絶食状態のヒトに投与した場合に、そのヒトに、同じ量のジプラシドンを含有する同一のジプラシドン固体経口剤形を、摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされる平均ジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%である血清ジプラシドンAUC0〜infをもたらす
キットを提供する。
【0028】
別の実施形態では、本発明は、
a)有効量のジプラシドンおよび薬学的に許容できる担体を含む固体経口剤形と、
b)(a)の剤形を食物と共にまたは食物なしで投与し得ることを指示する、(a)の剤形を経口投与するための指示と
を含み、前記固体経口剤形が、絶食状態のヒトに投与した場合に、そのヒトに、同じ量のジプラシドンを含有する同一のジプラシドン固体経口剤形を、摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされる平均ジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%である血清ジプラシドンAUC0〜infをもたらす
キットを提供する。
【0029】
本発明のキット中の固体経口剤形は、好ましくは、溶出速度が改善された形態および/または溶解度が改善された形態のジプラシドンを含む。キット中の剤形中のジプラシドンは、沈殿阻害剤と組み合わせてもよい。好ましい実施形態では、本発明のキット中の固体経口剤形は、即時放出部分と組み合わせてもよい、持続放出手段および/または遅延放出手段を含む。別の実施形態では、固体経口剤形は、遅延放出手段および/または即時放出部分と組み合わせてもよい、持続放出手段を含む。
【0030】
また、本発明は、上述のように絶食状態のヒトにおいてCNS障害を治療するための方法、キットおよび固体経口剤形も提供し、ジプラシドン固体経口剤形は、ジプラシドンとポリマーとの固体混合物を含み、そのジプラシドンの少なくとも一部分は半規則状態である。一実施形態では、半規則ジプラシドンを含む固体混合物は、結晶の大きさが約200nm未満であるジプラシドンを含有する。さらに別の実施形態では、半規則ジプラシドンは、結晶の大きさが約20nmから約200nm未満であるジプラシドンを含有する。
【0031】
一実施形態では、半規則状態のジプラシドンを含むジプラシドンとポリマーとの固体混合物は、
a)塩酸ジプラシドン一水和物またはジプラシドン遊離塩基およびHPMCまたはHPMCASなどの濃度増強ポリマーを含む固形非晶質分散体を形成すること、
b)前記固形非晶質分散体中の前記ジプラシドンの移動性を増加させるために、前記分散体を加熱および/または移動性増強剤に曝露することによって前記固形非晶質分散体を処理すること、ならびに
c)前記ジプラシドンの少なくとも20%を半規則状態に変換すること
によって調製される。
【0032】
さらなる実施形態では、固体経口剤形は、国際公開公報WO2004/014342 A1号に記載のように、半規則塩酸ジプラシドンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)を含む固体混合物を含む即時放出錠剤である。別の実施形態では、固体経口剤形は、半規則塩酸ジプラシドンおよびHPMCASを含む固体混合物を含む持続放出錠剤である。一実施形態では、固体経口剤形は、半規則塩酸ジプラシドンおよびポリマー(例えばHPMCAS)を含む固体混合物を含み、好ましくはHPMCをマトリックス物質として含む、持続放出マトリックス錠である。そのような実施形態では、持続放出マトリックス錠は、好ましくは、錠剤を使用する水性環境に導入した後、最初の1/2時間以内にそれ中のジプラシドンの50重量%以下しか放出しない、より好ましくは最初の1時間以内に50重量%以下しか放出しない。別の実施形態では、固体経口剤形は、半規則ジプラシドン遊離塩基およびヒドロキシプロピルメチルセロース(HPMC)を含む固形分散体を含む即時放出錠剤である。さらに別の実施形態では、固体経口剤形は、即時放出部分および持続放出部分を含み、持続放出部分は、半規則塩酸ジプラシドンおよびHPMCASを含む固形分散体を含む。
【0033】
別の実施形態では、固体経口剤形は、半規則塩酸ジプラシドンおよびHPMCASを含む固形分散体を含み、好ましくはHPMCをマトリックス物質として含み、マトリックス錠は、錠剤を使用する水性環境に導入した後、1/2時間以内、好ましくは1時間以内に、錠剤中に最初に存在するジプラシドンの50重量%以下しか放出しない、持続放出マトリックス錠である。
【0034】
さらに別の実施形態では、固体経口剤形は、米国特許第5,134,127号に記載のように、ジプラシドンおよびシクロデキストリンを含む固形分散体を含む即時放出錠剤である。別の実施形態では、固体経口剤形は、米国特許第6,232,304号、第5,874,418号および第5,376,645号に記載のように、ジプラシドンおよびシクロデキストリンを含む固形分散体を含む即時放出錠剤である。さらに別の実施形態では、固体経口剤形は、米国特許第5,134,127号に記載のように、ジプラシドンおよびシクロデキストリンを含む固形分散体を含む持続放出錠剤である。別の実施形態では、固体経口剤形は、米国特許第6,232,304号、第5,874,418号および第5,376,645号に記載のように、ジプラシドンおよびシクロデキストリンを含む固形分散体を含む持続放出錠剤である。一実施形態では、固体経口剤形は、持続放出マトリックス錠である。好ましい実施形態では、マトリックス物質は、HPMCを含む。さらに別の実施形態では、固体経口剤形は、即時放出部分および持続放出部分を含み、持続放出部分は、ジプラシドンおよびシクロデキストリンを含む固形分散体を含む。
【0035】
別の実施形態では、ジプラシドンナノ粒子は、
a)アトリションミルまたは高圧ホモジナイズなどの当分野で周知の技術によってジプラシドンナノ粒子の懸濁液を調製すること、
b)懸濁液を凍結乾燥させるまたは懸濁液を噴霧乾燥させて固形ジプラシドンナノ粒子を形成すること
によって調製される。
【0036】
さらなる実施形態では、固体経口剤形は、ジプラシドンナノ粒子を含み、好ましくはHPMCをマトリックス物質として含み、マトリックス錠は、錠剤を使用する水性環境に導入した後、1/2時間時間以内、好ましくは1時間以内に、錠剤中に最初に存在するジプラシドンの50重量%以下しか放出しない、持続放出マトリックス錠である。別の実施形態では、固体経口剤形は、即時放出部分および持続放出部分を含み、持続放出部分は、ジプラシドンナノ粒子を含む。
【0037】
別の実施形態では、固体経口剤形は、半規則ジプラシドンおよびポリマーを含む固形分散体の粒子でコーティングしたビーズを含有するカプセルである。一実施形態では、固形分散体の粒子は、半規則ジプラシドンおよびポリマーを含む固形分散体を粉砕することによって得る。別の実施形態では、固形分散体の粒子は、半規則塩酸ジプラシドンおよびポリマーまたは半規則ジプラシドン遊離塩基とポリマーとの固形分散体から得る。別の実施形態では、ポリマーは、HPMCASまたはHPMCである。別の実施形態では、半規則ジプラシドンとポリマーとの固形分散体の粒子は、腸溶コーティングでコーティングする。
【0038】
別の実施形態では、固体経口剤形は、半規則ジプラシドンおよびポリマーを含む固形分散体の粒子でコーティングしたビーズを含有する錠剤である。錠剤は、薬学的に許容できる賦形剤と半規則ジプラシドンおよびポリマーを含む固形分散体の粒子でコーティングしたビーズとを圧縮することによって調製する。別の実施形態では、固形分散体粒子でコーティングしたビーズは、腸溶コーティングでさらにコーティングする。
【0039】
本発明の別の実施形態では、固体経口剤形、ならびにそれを含む方法およびキットは、トシル酸ジプラシドンまたは酒石酸ジプラシドンを含む。そのような実施形態では、固体経口剤形は、例えば即時放出錠剤であり得る。別の例として、トシル酸ジプラシドンまたは酒石酸ジプラシドンを含む固体経口剤形は、好ましくはHPMCをマトリックス物質として含む、持続放出マトリックス錠であり得る。別の例として、トシル酸ジプラシドンまたは酒石酸ジプラシドンを含む固体経口剤形は、トシル酸ジプラシドンまたは酒石酸ジプラシドンでコーティングしたビーズを含む。酒石酸ジプラシドンまたはトシル酸ジプラシドンでコーティングしたビーズは、腸溶コーティングでさらにコーティングしていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】塩酸ジプラシドンとHPMCASとの固形分散体を含み、ジプラシドンが半規則状態である、3つの異なる持続放出マトリックス錠(実施例20、21および22)の、in vitro溶出試験の結果を示す図である。
【図2】0.05MのNaH2PO4媒体中、2%(w/v)のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を加え、pH7.5に調節し、パドルが75rpmの、実施例23、24および25(ジプラシドンの結晶化した噴霧乾燥した分散体を含有する持続放出マトリックス錠)の、in vitro溶出試験の結果を示す図である。
【図3】ジプラシドンの結晶化した噴霧乾燥した分散体を含有する錠剤である製剤D1(実施例26)の、in vitro溶出試験の結果を示す図である。
【図4】Eudragit(登録商標)腸溶コーティングをほどこした、ジプラシドンの結晶化した噴霧乾燥した分散体でコーティングしたビーズであるB6形(実施例28)の、in vitro溶出試験の結果を示す図である。
【図5】HPMCAS腸溶コーティングをほどこした、ジプラシドンの結晶化した噴霧乾燥した分散体でコーティングしたビーズであるB5形(実施例29)の、in vitro溶出試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
ジプラシドンとは、以下の構造を有する既知の化合物、5−[2−[4−(1,2−ベンズイソチアゾール−3−イル)−1−ピペラジニル]エチル]−6−クロロ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オンである:
【0042】
【化1】
ジプラシドンおよびその合成方法は、どちらもその全体が本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第4,831,031号および第5,312,925号を含めた、数々の特許文献に開示されている。ジプラシドンは、神経遮断剤をして有用性を持ち、したがって、とりわけ抗精神病剤として有用である。ジプラシドンは、典型的には、患者の必要性に応じて、40mgA〜160mgAの1日用量で投与する。「1日用量」とは、患者に1日に投与するジプラシドンのmgAの合計量を意味する。
【0043】
用語「ジプラシドン」には、本明細書中では、本明細書中に別段に指定しない限りは、化合物の任意の薬学的に許容できる形態が含まれると理解されるべきである。「薬学的に許容できる形態」とは、溶媒和物、水和物、同形体、多型体、不正形、中性形、酸付加塩形、およびプロドラッグを含めた、任意の薬学的に許容できる誘導体または変型を意味する。ジプラシドンは、結晶形または非晶形で存在し得る。ジプラシドンの薬学的に許容できる酸付加塩は、慣用の様式で、遊離塩基の溶液または懸濁液を約1化学当量の薬学的に許容できる酸で処理することによって、調製する。慣用の濃度および再結晶化技術を塩の単離に用いる。適切な酸の例は、酢酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、メシル酸、トシル酸、安息香酸、ケイ皮酸、フマル酸、硫酸、リン酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、スルファミン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸、および関連する酸である。ジプラシドンの好ましい形態には、遊離塩基、塩酸ジプラシドン一水和物、メシル酸ジプラシドン三水和物、酒石酸ジプラシドン、およびトシル酸ジプラシドンが含まれる。
【0044】
本発明の「固体経口剤形」とは、薬学的に許容できる固体経口剤形であり、これは、この剤形がヒトに投与するために安全であり、剤形中のすべての賦形剤が薬学的に許容できる、言い換えればヒトの摂取に安全であることを意味する。
【0045】
ヒトまたは他の哺乳動物に関して本明細書中で使用する語句「絶食状態」とは、別段に指定しない限りは、ヒトまたは他の哺乳動物が、ジプラシドン固体経口剤形を摂取する前の少なくとも2時間、およびジプラシドン固体経口剤形を摂取した後の少なくとも2時間、500カロリーまたは500カロリーを超えて摂取していないことを意味する。好ましい「絶食状態」とは、ジプラシドン固体経口剤形を摂取する前の少なくとも2時間、250カロリーまたは250カロリーを超えて摂取しておらず、かつ、ジプラシドン固体経口剤形を摂取した後の少なくとも2時間、250カロリー以上を摂取しないヒトをいう。例えば、例示として、「絶食状態」のヒトは、投薬前の2時間以内に0カロリーを摂取し、投薬後の2時間に100カロリーしか摂取しない場合がある。
【0046】
本明細書中で使用する用語「摂食状態」とは、別段に指定しない限りは、投薬前の2時間および本発明のジプラシドン固体経口剤形の投薬に続く2時間からなる期間内に、少なくとも500カロリーを摂取したヒトまたは他の哺乳動物をいう。別の実施形態では、「摂食状態」とは、前記期間内に少なくとも800カロリーを摂取したヒトまたは他の哺乳動物をいう。別の実施形態では、「摂食状態」とは、前記期間内に少なくとも1000カロリーを摂取したヒトまたは他の哺乳動物をいう。さらに別の実施形態では、「摂食状態」とは、前記期間内に米国食品医薬品局(FDA)の標準の高脂肪朝食(または匹敵する量の脂肪およびカロリーを含有する他の食事)を食べたヒトをいう。典型的なFDAの標準朝食は、バターで炒めた卵2個、ベーコン2枚、トースト2枚とバター、4オンス(113.4グラム)のハッシュブラウンポテトおよび8オンス(236.6ミリリットル)の全乳からなる。この食事は、脂肪(食事の総カロリー含量の約50%)およびカロリー(約800〜1000カロリー)がどちらも高い。
【0047】
絶食させたヒトに任意の特定のジプラシドン経口剤形を投与した後に、絶食させたヒトで得られるジプラシドンのAUC(0〜inf)およびCmaxは、臨床試験においてヒト対象コホートでその剤形を試験する手段によって決定することができる。言い換えれば、任意の特定のジプラシドン剤形を投与することによって個々のヒトにもたらされるジプラシドンAUCおよびCmaxは、その特定の剤形を用いたヒトのコホートの臨床試験を実施したことから得られた平均AUCおよびCmaxによって予測するか、またはそれとして定義することができる。臨床試験は、米国食品医薬品局(米国FDA)によって食物効果の生体利用度および摂食性の生物学的同等性の研究(Food−Effect Bioavailability and Fed Bioequivalent Studies)に関して発行された指針に従って実施することができる。
【0048】
そのような臨床試験では、試験ジプラシドン固体経口剤形を、少なくとも10時間何も食物を食べておらず、剤形を投与した後少なくとも4時間何も食物を食べないヒトのコホートに、投与することができる。比較のために、別のヒトのコホートに、試験剤形と同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセル、または試験ジプラシドン固体経口剤形と同一のジプラシドン剤形を、摂食状態で、例えば米国食品医薬品局(FDA)の標準の高脂肪朝食、またはそれに匹敵する量の脂肪およびカロリーを含有する他の食事を食べ始めた約30分後に(コホートは、朝食または他の食事を開始した約30分以内に、朝食または他の食事を食べ終わる)投与することができる。続いて、コホートを「交代」させ、絶食プロトコルで試験したコホートを摂食プロトコルに従って試験し、摂食プロトコルで試験したコホートを絶食プロトコルに従って試験することができる。それぞれのコホートで摂食または絶食プロトコルを交代させる前に、時折「ウォッシュアウト期間」とも呼ばれる最初の投薬の完了後に少なくとも7日間の期間を経過させることが、推奨される。
【0049】
血清濃度対時間曲線下平均面積(AUC)の計算は薬学分野で周知の手順であり、例えば、Welling、「薬物動態学プロセスおよび数学(Pharmacokinetics Processes and Mathematics)」、ACS Monograph、185(1986)に記載されている。
【0050】
本明細書中で言及する「対照ジプラシドン即時放出経口カプセル」とは、別段に指定しない限りは、Pfizer,Inc.によって市販されている経口投与用のGEODON/ZELDOX(商標)カプセル、またはジプラシドンの固体経口剤形を比較するために有用であり得るその均等物である。GEODON/ZELDOX(商標)市販カプセルは、約40ミクロン未満の体積平均直径(VMD)粒子径を有する結晶塩酸ジプラシドン一水和物を含有する。また、GEODON/ZELDOX(商標)カプセルは、ラクトース、アルファ化デンプン、およびステアリン酸マグネシウムも含有する。そのような種類のカプセルは、例えば、その全体が本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第6,150,366号の表1に記載されている。例えば、米国特許第6,150,366号の表1に記載されている、それに記載されているように約20ミクロンのVMDを有する塩酸ジプラシドン一水和物を含有するカプセルを、本発明の目的のための対照ジプラシドン即時放出経口カプセルとして使用することができる。
【0051】
VMDとは、試料中のすべての粒子(ジプラシドン粒子など)の平均体積の体積を有する球状粒子の直径をいい、その体積は、球状形状であるという仮定に基づいて推定する。粒子径の分布は、当業者に知られているMalvern光散乱によって測定することができる。
【0052】
また、本発明は、上述のように、ヒトが摂食状態の場合に同一のジプラシドン固体経口剤形によってもたらされるジプラシドンAUCの70%〜140%である、ヒトが絶食状態の場合のジプラシドンAUCをもたらす、ジプラシドン固体経口剤形を使用することによる、ヒトにおけるCNS障害の治療にも関する。この観点から、「同一の」ジプラシドン固体経口剤形とは、同一のジプラシドン製剤(例えば同じ塩形態および粒子径であり、存在する場合は同じ量の同じ賦形剤が含まれる)中、および同一の剤形(例えば同じ量の同じ賦形剤が含まれる)中の、同一の量のジプラシドンを含有するジプラシドン固体経口剤形をいう。
【0053】
一般に、本発明の目的ための「ヒト」とは、少なくとも12歳の対象をいう。
【0054】
ヒトの血清中のジプラシドンは、当分野で知られている方法によって検出および測定し得る。例えば、ジプラシドンを、Miceli他、健常志願者における筋肉内ジプラシドンの薬物動態学、安全性、および忍容性(Pharmacokinetics,Safety,and Tolerability of Intramuscular Ziprasidone in Healthy Volunteers)、J Clin Pharmacol、2005;45:620〜630;ならびにJaniszewski 他、固相抽出および細口径の高速液体クロマトグラフィーを用いた、抗精神病剤CP−88,059の高感度アッセイの開発および妥当性確認(Development and Validation of a High−senstivity Assay for an Antipsychotic Agent,CP−88,059,with Solid−phase Extraction and Narrow−bore,High−performance Liquid Chromatography、J Chromatogr.、1995;668:133〜139に記載のように検出および測定し得る。
【0055】
本明細書中で使用する用語「mgA」および「μgA」および「重量%A」とは、それぞれ活性ジプラシドンのミリグラム、マイクログラム、および重量パーセントを意味し、「活性」ジプラシドンとは、412.94g/モルの分子量を有する、塩でない、水和していない遊離塩基の形態のジプラシドンをいう。
【0056】
ジプラシドンの溶出速度が改善された形態および溶解度が改善された形態:
本発明の剤形、方法、およびキット中のジプラシドンは、好ましくは、溶出速度が改善された形態または溶解度が改善された形態のジプラシドンを含む。本発明者らは、使用環境において十分に速い速度、少なくともGEODON/ZELDOX(商標)として知られる対照即時放出経口カプセルにおけるジプラシドンよりも速い速度で溶出する、もしくは、使用環境において十分に高い溶解度、少なくともGEODON/ZELDOX(商標)即時放出カプセルにおけるジプラシドンの溶解度よりも高い溶解度を有する、または両方の、ジプラシドン形態を使用することで、有効な全身ジプラシドン曝露を得るためにジプラシドンを食物と共に、例えば約500カロリー以上と共に摂取する要件が排除されることを見出した。さらに、そのような溶出速度が改善されたまたは溶解度が改善された形態を使用して、本発明で用いる剤形は、食物なしで、例えば約250カロリー以下(例えば0カロリー)と共に摂取してもよく、または食物と共に摂取してもよい。
【0057】
上述のように、GEODON/ZELDOX(商標)即時放出カプセルは、約40ミクロン以下、好ましくは約5ミクロン〜約30ミクロンのVMD粒子サイズを有する結晶塩酸ジプラシドン一水和物を含有する。したがって、ジプラシドンの「溶解度が改善された形態」とは、使用環境における約40ミクロン以下、好ましくは約5ミクロン〜約30ミクロンのVMD粒子径を有する結晶塩酸ジプラシドン一水和物の溶解度よりも高い、使用環境における溶解度を有する、ジプラシドン形態である。ジプラシドンの「溶出速度が改善された形態」とは、使用環境における約40ミクロン以下、好ましくは約5ミクロン〜約30ミクロンのVMD粒子サイズを有する結晶塩酸ジプラシドン一水和物の溶出速度よりも速い速度で、使用環境において溶出する、ジプラシドン形態である。ジプラシドン形態は、溶解度が改善され、かつ溶出速度が改善されていてもよい。
【0058】
好ましくは、ジプラシドン形態は、対照GEODON/ZELDOX(商標)即時放出カプセル中のジプラシドン形態よりも、溶出速度または溶解度が少なくとも約1.25倍高い。対照GEODON/ZELDOX(商標)即時放出カプセル中のジプラシドン形態よりもさらに高い溶出速度または溶解度を有するジプラシドン形態を利用することができる。したがって、ジプラシドン形態は、対照GEODON/ZELDOX(商標)即時放出カプセル中のジプラシドン形態の溶出速度または溶解度の約2倍、3倍、5倍、10倍以上であり得る。
【0059】
ジプラシドンの溶解度が改善した形態には、それだけには限定されないが、特定の塩、非晶形、ナノ結晶形、半規則薬物形態、固形非晶質分散形、吸着薬物形態、シクロデキストリンおよび薬物の形態、ならびに自己乳化形が含まれ得る。
【0060】
溶出速度が改善した形態には、それだけには限定されないが、単独または沈殿阻害剤と組み合わせた上述の溶解度が改善した形態、単独または沈殿阻害剤と組み合わせた粒子径を小さくした結晶形、単独または1種もしくは複数の沈殿阻害剤と一緒にした粒子径を小さくした上述の溶解度が改善した形態が含まれ得る。
【0061】
使用環境は、それだけには限定されないがヒトを含めた哺乳動物の胃腸(GI)管などの、in vitroまたはin vivo使用環境であり得る。in vivo使用環境は水性環境であり、胃腸管内の任意の位置、例えば、胃内または腸管の任意の部分であり得る。in vitro使用環境は、哺乳動物の胃腸管内の位置をモデリングするように設計した環境であり得るため、水性である。本発明のin vitro使用環境として役割を果たすことができる溶出試験媒体の例には、リン酸緩衝溶液(PBS)、絶食させた十二指腸モデル(MFD)溶液、模擬胃および模擬腸管緩衝溶液、ならびに水が含まれる。適切なPBS溶液は、20mMのNa2HPO4、47mMのKH2PO4、87mMのNaCl、および0.2mMのKClを含み、NaOHでpH6.5に調節した水溶液である。適切なMFD溶液は、同じPBS溶液であるが、7.3mMのタウロコール酸ナトリウムおよび1.4mMの1−パルミトイル−2−オレイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンも存在する。適切な模擬胃緩衝溶液は、pH2.0の0.01NのHCl溶液である。適切な模擬腸管緩衝溶液には、(1)50mMのNaH2PO4および2重量%のラウリル硫酸ナトリウム、pH7.5に調節、(2)50mMのNaH2PO4および2重量%のラウリル硫酸ナトリウム、pH6.5に調節、ならびに(3)6mMのNaH2PO4、150mMのNaCl、および2重量%のラウリル硫酸ナトリウム、pH6.5に調節が含まれる。
【0062】
ジプラシドン形態が、本発明の目的のための溶出速度が改善された形態または溶解度が改善された形態であるかどうかを決定するために用いることができるアッセイの例は、以下のようなin vitro溶出試験である:
【0063】
in vitro溶出試験は、ジプラシドンの試験形態を、pH2.0の0.01NのHClの模擬胃緩衝液(GB)からなる溶出試験媒体に加えることによって行い得る。剤形が溶出速度または溶解度の改善度合の評価を妨げないように、提案の溶出速度が改善されたまたは溶解度が改善されたジプラシドン形態を、剤形とは独立させて溶出試験するように注意することが重要である。
【0064】
そのような試験では、2つの評価項目を評価する:1)試験媒体中のジプラシドンの最大溶解薬物濃度(MDC)、および2)in vitro溶出試験における溶出したジプラシドンの濃度対時間曲線下面積。より詳細には、in vitro使用環境では、使用環境への導入後の約0から約270分間の間の任意の90分間にわたり溶出したジプラシドンの濃度を測定する。
【0065】
水溶液中のジプラシドンの増大した溶出速度を評価するためのin vitro試験は、ジプラシドンがすべて溶出した場合、ジプラシドンの理論濃度が、対照ジプラシドン形態によってもたらされる平衡濃度を少なくとも2倍、好ましくは少なくとも10倍で超えるように十分な量の試験ジプラシドン形態を試験媒体にかきまぜながら加えることによって実施することができる。この濃度で試験を行うことにより、ジプラシドンのMDCを決定できることが確証される。
【0066】
その後、溶出速度を確定できるように、試験媒体をサンプリングし、試験媒体中のジプラシドン濃度を時間に対してプロットすることによって、溶出したジプラシドンの濃度を時間の関数として測定する。MDCは、試験の期間にわたって測定された溶出したジプラシドンの最大値であるとする。水性AUCは、組成物を水性使用環境に導入した時間(時間=0)から使用環境に導入した270分間後(時間=270分)の間の任意の90分間にわたる濃度対時間の曲線を積分することによって計算し得る。典型的には、組成物がそのMDCに素早く達する場合(約30分未満)、AUCを計算するために使用する時間間隔は、時間=0から時間=90分間までである。
【0067】
そのような試験中、「溶出した薬物」の濃度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、紫外線(UV)吸収、または当分野で知られている他の標準方法を含めた標準の分析技術を用いて測定すべきである。HPLCなどの溶液技術を使用する場合、誤った決定を与える可能性のある大きな薬物粒子を避けるために、試験溶液を濾過または遠心分離すべきである。「溶出した薬物」とは、典型的には、0.45μmのシリンジフィルターを通る物質、または、遠心分離後に上清中に留まる物質とする。濾過は、Scientific ResourcesからTITAN(登録商標)の商標で販売されている13mm、0.45μmのジフッ化ポリビニリジン製シリンジフィルターを用いて実施することができる。遠心分離は、典型的には、ポリプロピレン製マイクロ遠心管中、13,000Gで60秒間遠心分離することによって実施する。他の類似の濾過または遠心分離方法を用いることができ、有用な結果が得られる。例えば、他の種類の精密濾過を用いることにより、上で指定したフィルターで得られたよりもわずかに高いまたは低い値(±10〜40%)が得られ得るが、それでも、好ましい溶出速度が改善された形態の同定が可能である。UVによって濃度を測定する場合、溶出速度が改善された製剤中の他の賦形剤がジプラシドンのUV吸光度を妨げないことを確実にするために、当業者によって知られているように注意を払うべきである。本発明者らは、in vitro溶出試験媒体において溶出したジプラシドンの濃度を決定するためにUVプローブが有効であることを見出した。
【0068】
試験ジプラシドン形態の溶解度および溶出速度を確定するための溶出試験の具体例は、以下のとおりである:最初に、ジプラシドンがすべて溶出した場合にジプラシドンの濃度が200μgA/mLとなるように、十分な量の試験形態を溶解フラスコに入れる。その後、pH2.0の模擬GB溶液を加え、混合物を100rpmの攪拌速度で攪拌した。試験は37℃で行った。その後、UVプローブを用いて、溶出したジプラシドンの濃度を少なくとも90分間にわたって測定した。(1)対照よりも高いMDC、(2)対照よりも高いAUC90、または(3)(1)および(2)の両方のうち、少なくとも1つを提供した場合に、製剤はジプラシドンの溶解度が改善された形態または溶出速度が改善された形態であるとみなす。上述の対照製剤は、GEODON/ZELDOX(商標)市販カプセルで使用されている結晶ジプラシドンHCl一水和物である。
【0069】
一実施形態では、本発明で用いるジプラシドン形態は、ジプラシドンの塩形態である。一部の低溶解度の薬物を、使用環境において薬物の濃度を薬物の別の塩形態と比較して一時的に改善させる、可溶性の高い塩形態で製剤し得ることが知られている。ジプラシドンのそのような塩形態の例は、トシル酸および酒石酸塩である。これらの塩は、実施例中に例示するように、胃緩衝液媒体中でより高い持続した溶解度を有する。別の実施形態では、ジプラシドン形態は、約10ミクロン未満、好ましくは約5ミクロン未満の体積重量平均粒子径を有するジプラシドンを含む。標準の結晶ジプラシドンHClは、典型的には、ブロックまたは針の晶癖である。そのような結晶の大きさは、一般的に長さが30ミクロンで幅が4ミクロンであるが、広い範囲が観測される。これらの結晶をMalvern Mastersizerによって分析し、湿スラリーとして試験した場合、体積−重量平均直径は約10ミクロンである。ジプラシドンの粒子径を小さくすることによりその溶出速度が改善され、したがって、水性使用環境において、より大きな結晶で達成される濃度と比較して少なくとも一時的に増大した溶出ジプラシドンの濃度が提供される。そのような小さな粒子は、慣用の研磨および粉砕技術によって達成し得る。好ましい一プロセスでは、ジプラシドンをジェット粉砕する。ジェット粉砕したジプラシドンは、約5ミクロン未満、好ましくは約3ミクロン未満の体積重量平均直径を有し得る。
【0070】
別の実施形態では、ジプラシドンはナノ粒子の形態であり得る。用語「ナノ粒子」とは、一般に、有効平均結晶の大きさが約2000nm未満、より好ましくは約1000nm未満である、粒子形態のジプラシドンをいう。別の実施形態では、ジプラシドン粒子は約500nmまたはそれ以下である。より好ましくは、ジプラシドンナノ粒子は約120nm〜約400nmである。さらに別の実施形態では、ジプラシドンナノ粒子は約22nm〜約350nmである。別の実施形態では、ジプラシドンナノ粒子は約250nmまたは約250nm未満である。別の実施形態では、ジプラシドンナノ粒子は約100nmまたは約100nm未満である。ジプラシドンナノ粒子は、1つまたは複数の表面安定化剤を含み得る。ジプラシドンナノ粒子およびその調製方法は、どちらもその全体で本明細書中に参考として組み込まれている国際公開公報WO2006/109183号および国際公開公報WO2006/109177号に記載されている。
【0071】
本発明で有用なさらに別のジプラシドン形態は、非晶形のジプラシドンである。好ましくは、ジプラシドンの少なくとも大部分が非晶質である。「非晶質」とは、単純に、ジプラシドンが非結晶状態であることを意味する。本明細書中で使用する用語「大部分」とは、剤形中の薬物の少なくとも60重量%が、結晶形ではなく非晶形であることを意味する。好ましくは、ジプラシドンは実質的に非晶質である。本明細書中で使用する「実質的に非晶質」とは、結晶形のジプラシドンの量が約25重量%を超えないことを意味する。より好ましくは、ジプラシドンは「ほぼ完全に非晶質」であり、これは、結晶形のジプラシドンの量が約10重量%を超えないことを意味する。結晶ジプラシドンの量は、粉末X線回折(PXRD)、走査電子顕微鏡(SEM)分析、示差走査熱量(DSC)、または任意の他の標準の定量的測定によって測定し得る。
【0072】
ジプラシドンの非晶形の例には、本明細書中に参考として組み込まれている、同一出願人による米国公開特許出願第2002/0009494A1号に開示されているものなどの、ポリマー中のジプラシドンの固形非晶質分散体が含まれる。別の実施形態では、ジプラシドンは、本明細書中に参考として組み込まれている、同一出願人による米国公開特許出願第2003/0054037A1号に開示されているものなど、非晶形で固形基質上に吸着されていてもよい。さらに別の実施形態では、非晶質ジプラシドンは、本明細書中に参考として組み込まれている、同一出願人による米国特許出願第2003/0104063A1号に開示されているものなど、マトリックス物質を用いて安定化し得る。
【0073】
ジプラシドンを含む固形非晶質分散体では、分子分散体中で用いるポリマーは、任意の薬学的に許容できるポリマーであり得る。用語「ポリマー」は慣用的に用いられ、これは、一緒に結合されてより大きな分子を形成するモノマーからなる化合物を意味する。ポリマーは、一般に、一緒に結合された少なくとも約20個のモノマーからなる。したがって、ポリマーの分子量は、一般に約2000ダルトン以上である。ポリマーは、有害な様式でジプラシドンと化学反応しないという意味で不活性であり、薬学的に許容できるものであるべきである。例示的なポリマーには、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、ポロキサマー(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーとしても知られる)、ポリビニルピロリドン(PVP)、およびその混合物が含まれる。一実施形態では、ポリマーはHPMCASである。分散体中の薬物の少なくとも大部分が非晶質である。好ましくは、分散体中の薬物は「実質的に非晶質」であり、これは、結晶形の薬物の量が約25%を超えないことを意味する。より好ましくは、分散体中の薬物は「ほぼ完全に非晶質」であり、これは、結晶形の薬物の量が約10%を超えないことを意味する。固形非晶質分散体中に存在するポリマーの量に対するジプラシドンの量は、0.01から約4まで(例えば、1重量%の薬物〜80重量%の薬物)、薬物−対−ポリマーの重量比と広く変動し得る。一実施形態では、薬物−対−ポリマーの比は、約0.05(4.8重量%の薬物)より高く、約3(75重量%の薬物)以下である。別の実施形態では、薬物−対−ポリマーの比の範囲は、0.11(10重量%の薬物)〜2(67重量%の薬物)である。別の実施形態では、薬物−対−ポリマーの比の範囲は、0.11(10重量%の薬物)〜1(50重量%の薬物)である。別の実施形態では、薬物−対−ポリマーの比の範囲は、0.15(13重量%の薬物)〜0.7(41重量%の薬物)である。さらに別の実施形態では、薬物−対−ポリマーの比の範囲は、0.15(13重量%の薬物)〜0.6(37.5重量%の薬物)である。
【0074】
非晶質の薬物は、固形非晶質分散体中に純相として、ポリマー全体にわたって均一に分布した薬物の固溶体として、またはこれらの状態もしくはそれらの間の状態の任意の組合せとして存在することができる。一実施形態では、非晶質の薬物の少なくとも一部分およびポリマーが固溶体として存在する。これは、純粋な薬物および純粋なポリマーの中間である固形非晶質分散体の少なくとも1つのガラス転移温度の存在によって示され得る。別の実施形態では、分散体は、非晶質の薬物がポリマーにわたって可能な限り均一に分散されているように、実質的に均一である。本明細書中で使用する「実質的に均一」とは、固形分散体内の比較的純粋な非晶質ドメイン中に存在する薬物の画分が、20%未満の桁で、比較的小さいことを意味する。さらに別の実施形態では、分散体は完全に均一であり、これは、純粋な非晶質ドメイン中の薬物の量が薬物の合計量の10%未満であることを意味する。
【0075】
固形非晶質分散体は、以下のような溶媒に基づいたプロセスによって作製し得る。薬物、ポリマー、および溶媒を含む供給溶液を形成する。その後、溶媒を急速に供給溶液から除去して、薬物およびポリマーの粒子を形成する。溶媒を急速に除去するための適切なプロセスには、噴霧乾燥、噴霧コーティング、および蒸発が含まれる。固形非晶質分散体を形成するための噴霧乾燥プロセスのさらなる詳細は、上記の米国公開特許出願第2002/0009494A1号に開示されている。
【0076】
本発明に有用な別の形態では、ジプラシドンは、本明細書中に参考として組み込まれている国際公開公報WO2004/014342号に開示されているものなどのように、半規則状態である。そのような実施形態では、ジプラシドンはポリマーとの固体混合物中で存在し、ジプラシドンの少なくとも一部分は「半規則」である。「半規則」とは、(1)ジプラシドンがバルク結晶形単独のジプラシドンよりも規則性が低く、かつ(2)ジプラシドンが非晶質の薬物よりも規則性が高いことを意味する。半規則状態は、非常に小さな結晶形(例えば約200nm未満)、結晶中にポリマーを取り込んだ結晶ジプラシドン、多数の結晶欠陥を含有する結晶、またはシート、チューブ、もしくはジプラシドンが規則性を有するが最も低い溶解度のバルク結晶形単独ではない他の構造の形態をとる半結晶構造であり得る。一実施形態では、半規則ジプラシドンは、約500nm未満の結晶を有する。別の実施形態では、半規則ジプラシドンは、約400nm未満の結晶を有する。さらに別の実施形態では、半規則ジプラシドンは、約200nm未満の結晶を有する。さらに別の実施形態では、半規則ジプラシドンは、約20nmから約200nm未満の結晶を有する。半規則のジプラシドンは、バルク結晶ジプラシドン(すなわち、約40μm以下の体積平均直径[VMD]を有する結晶ジプラシドン)および非晶質ジプラシドンのどちらとも明確に異なる物理的特徴を示す。ジプラシドンが半規則であることは、物質が結晶または非晶質であるかを特徴づけるために使用する慣用技術によって実証し得る。一実施形態では、ジプラシドンは、組成物が示す粉末X線回折パターンが、約40μm以下のVDMを有するバルク結晶形のスジプラシドンによって示される相当するピークの少なくとも1.1倍の半値全幅を有する少なくとも1つのピークを有する場合に、半規則である。半値全幅はさらに広くてもよく、また、バルク結晶形単独の薬物の対応する主要ピークの少なくとも1.25倍、2倍または3倍もしくはそれ以上であってもよい。そのような粒子では、ジプラシドンの少なくとも一部分、ポリマーの一部分、または両方は、非結晶状態である。ポリマーは、固形非晶質分散体について上述したポリマーなど、事実上任意のポリマーであることができる。
【0077】
半規則ジプラシドンを含有する組成物を形成する一方法は、前述のように、最初に固形非晶質分散体を形成する方法である。その後、分散体を水などの移動性増強剤に曝露し、その後、熱などを用いて処理して、分散体中の非晶質ジプラシドンの少なくとも一部分を半規則状態に変換する。この様式で作製した場合、半規則ジプラシドン組成物も結晶化した噴霧乾燥した分散体(CSDD)と呼ぶ。一実施形態では、固形非晶質分散体は、Tg/Tが約1.0以下であるような温度Tまで加熱し、Tgは、移動性増強剤の存在下における固形非晶質分散体のガラス転移温度であり、TおよびTgはケルビンで測定する。別の実施形態では、固形非晶質分散体は、水の存在下における固形非晶質分散体のガラス転移より高い温度で、水に曝露する。半規則薬物を作製する方法およびジプラシドンが半規則状態であることを確認する技術(PXRD、分光分析および熱技術が含まれる)の詳細は、上記国際公開公報WO2004/014342号に開示されている。
【0078】
本発明で有用な別のジプラシドン形態は、シクロデキストリンと組み合わせたジプラシドンを含む。ジプラシドンおよびシクロデキストリンは、互いとの様々な組合せであることができる。例えば、ジプラシドンおよびシクロデキストリンは、包接複合体を形成し得る。別の例では、ジプラシドンおよびシクロデキストリンは、互いとの物理的な混合物である。ジプラシドンとシクロデキストリンとの組合せの別の例は、ジプラシドンおよびシクロデキストリンが互いとの分散体、例えば噴霧乾燥分散体(SDD)である場合である。本明細書中で使用する用語「シクロデキストリン」とは、シクロデキストリンのすべての形態および誘導体をいう。シクロデキストリンの具体的な例には、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、およびγ−シクロデキストリンが含まれる。シクロデキストリンの例示的な誘導体には、モノ−またはポリアルキル化β−シクロデキストリン、モノ−またはポリヒドロキシアルキル化β−シクロデキストリン、例えばヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン(ヒドロキシプロピルシクロデキストリン)、モノ、テトラまたはヘプタ置換のβ−シクロデキストリン、およびスルホアルキルエーテルシクロデキストリン(SAE−CD)、例えばスルホブチルエーテルシクロデキストリン(SBECD)が含まれる。
【0079】
ジプラシドンおよびシクロデキストリンの単純な物理的な混合物は、例えば、本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第5,134,127号に記載されている。あるいは、本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第6,046,177号に開示されているように、薬物を、放出速度調節剤およびSAE−CD/薬物の混合物を含む固形核を包囲するフィルムコーティングを用いることによって製剤することができる。あるいは、SAE−CDを含有する製剤は、1つまたは複数のSAE−CD誘導体、任意選択の放出速度調節剤、治療剤(その大部分はSAE−CDと複合体形成していない)、任意選択の核を包囲する放出速度調節コーティングの物理的な混合物を含む核からなり得る。本発明で使用することが企図される他のシクロデキストリン/薬物形態は、すべて本明細書中に参考として組み込まれている、米国特許第6,232,304号、第5,874,418号、および第5,376,645号に見つかる。
【0080】
別の有用なジプラシドン形態は、ジプラシドンおよび可溶化剤の組合せである。可溶化剤の例には、界面活性剤;緩衝液、有機酸(例としてクエン酸およびグルコン酸)などのpH調節剤;グリセリド;部分的グリセリド;グリセリド誘導体;ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンエーテルならびにそのコポリマー;ソルビタンエステル;ポリオキシエチレンソルビタンエステル;アルキルスルホネート;リン脂質;本明細書中に参考として組み込まれている米国公開特許出願2003/0228358A1号に記載の親油性ミクロ相形成物質が含まれる。そのような可溶化剤は当分野で知られており、任意の既知のそのような薬剤が本発明での使用に企図される。
【0081】
本発明の方法、キットおよび剤形中のジプラシドン製剤は、1つまたは複数の沈殿阻害剤を有用に含み得る。したがって、ジプラシドンの溶出速度が改善された形態またはジプラシドンの溶解度が改善された形態を1つまたは複数の沈殿阻害剤と組み合わせることが有用であり得る。「沈殿阻害剤」とは、ジプラシドンを過飽和させた水溶液からジプラシドンが結晶化または沈殿する速度を遅くすることができる、当分野で知られている任意の物質を意味する。本発明の剤形中での使用に適した沈殿阻害剤は、有害な様式でジプラシドンと化学反応しないという意味で負活性であり、薬学的に許容できるものであり、生理的に適切なpH(例えば1〜8)において水溶液中で少なくともある程度の溶解度を有するべきである。沈殿阻害剤は中性またはイオン化可能であることができ、1〜8のpH範囲の少なくとも一部分にわたって少なくとも0.1mg/mLの水溶度を有するべきである。
【0082】
沈殿阻害剤はポリマーまたは非ポリマーであり得る。本発明での使用に適した沈殿阻害ポリマーは、セルロース系または非セルロース系であり得る。ポリマーは、中性(すなわち、水溶液中で実質的にイオン化不可能)であるか、または水溶液中でイオン化可能であり得る。例えば、本発明で用いる沈殿阻害剤は、中性非セルロース系ポリマー、イオン化可能非セルロース系ポリマー、中性セルロース系ポリマー、およびイオン化可能セルロース系ポリマーから選択され得る。これらのうち、イオン化可能ポリマーおよびセルロース系ポリマーが好ましく、イオン化可能セルロース系ポリマーがより好ましい。また、「両親媒性」の性質のポリマーも好ましく、これは、ポリマーが疎水性および親水性部分を有することを意味する。本発明において有用であり得る沈殿阻害剤は当分野で周知であり、例えば、どちらもその全体が参考として本明細書中に組み込まれている、米国公開特許出願第2006/0003011A1号および米国公開特許出願第2007/0190129号に記載されている。
【0083】
生理的に適切なpHで少なくとも部分的にイオン化される例示的なセルロース系ポリマーには、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、セルロースアセテートテレフタレート、およびセルロースアセテートイソフタレートが含まれる。
【0084】
例示的なイオン化不可能セルロース系ポリマーには、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート(HPMCA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースアセテート、およびヒドロキシエチルエチルセルロースが含まれる。
【0085】
例示的な非セルロース系ポリマーには、ヒドロキシル、アルキルアシルオキシ、または環状アミドの置換基を有するビニルポリマーおよびコポリマー;その繰り返し単位の少なくとも一部分が加水分解されていない(酢酸ビニル)形態のポリビニルアルコール;ポリビニルアルコールポリ酢酸ビニルコポリマー;ポリビニルピロリドン;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー(ポロキサマーとしても知られる);ポリエチレンポリビニルアルコールコポリマー;カルボン酸で官能化したビニルポリマー、例えばカルボン酸で官能化したポリメタクリレートおよびカルボン酸で官能化したポリアクリレート、例えばRohm Tech Inc.、マサチューセッツ州Malden製造のEUDRAGITS(登録商標);アミンで官能化したポリアクリレートおよびポリメタクリレート;タンパク質;ならびにカルボン酸で官能化したデンプン、例えばデンプングリコレートが含まれる。
【0086】
好ましい沈殿阻害剤には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、およびその混合物が含まれる。
【0087】
ジプラシドンおよび沈殿阻害剤の組合せは、薬物または薬物混合物を沈殿阻害剤と乾式または湿式混合して組成物を形成する方法などの、当分野で知られている方法によって調製し得る。混合プロセスには、物理的加工ならびに湿式造粒およびコーティングプロセスが含まれる。
【0088】
本発明の組成物を調製するために粉砕も用い得る。粉砕プロセスは、供給物質が不均一な場合は、同時に混合プロセスとしての役割を果たし得る。本発明での使用に適した慣用の混合および粉砕プロセスは、Lachman他、工業製薬の理論および実施(The Theory and Practice of Industrial Pharmacy(第3版、1986)により完全に記載されている。また、組成物の構成成分は、乾式または湿式造粒プロセスによって合わせてもよい。
【0089】
一実施形態では、組合せは、例えば噴霧乾燥プロセスによって沈殿阻害ポリマーでコーティングしたジプラシドン粒子を含む。この粒子は、ジプラシドン結晶、または非晶質の薬物もしくはシクロデキストリン複合体などの何らかの他のジプラシドン形態の粒子のいずれかであり得る。
【0090】
沈殿阻害剤の量は幅広く変動し得る。ジプラシドン対沈殿阻害剤の重量比の範囲は100〜0.01であり得る。沈殿阻害剤がポリマーである場合は、好ましくは、ポリマー対薬物の重量比は、少なくとも0.33(少なくとも25重量%のポリマー)、より好ましくは少なくとも0.66(少なくとも40重量%のポリマー)、さらにより好ましくは少なくとも1(少なくとも50重量%のポリマー)である。
【0091】
固体経口剤形:
本発明の固体経口剤形は、当分野で知られている形態のうちの任意のもの、例えば本発明に従った硬もしくは軟カプセル、サシェ、ロゼンジ、または錠剤であり得る。別の実施形態では、経口投与は、散剤、ビーズ、多粒子、またはサシェなどの顆粒形態であり得る。別の実施形態では、経口剤形は例えばロゼンジなどの舌下である。本発明の固体経口剤形は、持続放出手段、遅延放出手段または遅延崩壊部分を含有し得る。カプセルおよび錠剤の場合は、剤形は、緩衝剤を含むか、または腸溶コーティングを用いて調製してもよい。
【0092】
経口投与する場合のジプラシドンの有効1日量は、一般に、約10mgA〜200mgA/日である。ジプラシドンの総1日量は、当分野の標準技術を有する医師が、当業者に知られている関連要素、例えば、患者の重量またはCNSの患難の重篤度を考慮して、調節することができる。このジプラシドンの総1日量は、単一または分割した用量で与え得る。好ましくは、総1日量は40mgA〜160mgAであり、1日2回の投薬で与える。したがって、本発明の固体経口剤形の単位は、好ましくは、20mgAのジプラシドン〜80mgAのジプラシドンを含有する。好ましくは、本発明の方法による固体経口剤形は、20、40、60または80mgAのジプラシドンを含有する。別の実施形態では、本発明の固体経口剤形は、120mgAまたは160mgAのジプラシドンを含有する。
【0093】
活性成分に加えて、本発明による固体経口剤形は、正確な配合に応じて、崩壊剤、結合剤、香料、緩衝液、希釈剤、着色料、潤滑剤、甘味剤、増粘剤、および流動促進剤などの、様々な1つまたは複数の慣用の賦形剤が任意選択で含まれるように製剤し得る。一部の賦形剤は、例えば結合剤および崩壊剤の両方として、複数の機能を果たすことができる。
【0094】
一般に、界面活性剤、pH調節剤、充填剤、マトリックス物質、錯化剤、可溶化剤、色素、潤滑剤、流動促進剤、香料などの賦形剤は、慣例の目的のために、かつ持続放出剤形の特性に有害な影響を与えない典型的な量で使用し得る。例えば、レミントンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)(第18版、1990)を参照されたい。
【0095】
また、慣用のマトリックス物質、錯化剤、可溶化剤、充填剤、崩壊剤、または結合剤は、剤形の90重量%を構成し得る。
【0096】
充填剤または希釈剤の例には、ラクトース、マンニトール、キシリトール、結晶セルロース、二塩基性リン酸カルシウム(無水および二水和物)ならびにデンプンが含まれる。
【0097】
崩壊剤の例には、グリコール酸ナトリウムデンプン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、およびクロスカルメロースナトリウム、ならびにポリビニルピロリドンの架橋結合形、例えば商品名CROSPOVIDONEの下で販売されているもの(BASF Corporationから入手可能)が含まれる。
【0098】
結合剤の例には、メチルセルロース、結晶セルロース、デンプン、ならびにグアルガムおよびトラガカントなどのガムが含まれる。
【0099】
潤滑剤の例には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸が含まれる。
【0100】
保存料の例には、サルファイト(抗酸化剤)、酪酸化ヒドロキシトルエン、酪酸化ヒドロキシアニソール、塩化ベンザルコニウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコールおよび安息香酸ナトリウムが含まれる。
【0101】
固化防止剤または充填剤の例には、酸化ケイ素およびラクトースが含まれる。
【0102】
当分野で周知のものを含めた他の慣用の賦形剤を本発明の持続放出剤形で用い得る。一般に、色素、潤滑剤、香料などの賦形剤は、慣例の目的のために、かつ組成物の特性に有害な影響を与えない典型的な量で使用し得る。
【0103】
持続放出手段および遅延放出手段
ジプラシドンの溶出速度が改善されたまたは溶解度が改善された形態を含む剤形のCmaxは、摂食状態で投薬した対照の即再発経口カプセルのCmaxよりも高い場合がある。このCmaxを低下させるために、剤形は、ジプラシドンの溶出速度が改善されたまたは溶解度が改善された形態を含む持続放出または遅延放出剤形を、単独で、またはジプラシドンの即時放出部分と組み合わせて使用して、改変することができる。ジプラシドンを含む持続放出製剤は、哺乳動物において、同じジプラシドン用量の経口即時放出剤形と比較して、観測される血清Cmaxの低下をもたらすことができる。より低いCmaxをもたらす本発明の持続放出剤形は、保有する剤形からの薬物放出速度がより遅い。本実施形態では、剤形から放出されるジプラシドンは、好ましくは、溶出速度が改善された形態もしくは溶解度が改善された形態、または両方である。好ましくは、本発明の剤形中の持続放出手段は、持続放出手段を含有する剤形を、900mlを含有する試験媒体(0.05MのNa2HPO4、2%のSDS、pH7.5)に、37Cで、100RPMで攪拌リングを用いて、導入した後、1/2時間以内にそれ中のジプラシドン(持続放出手段内)の50%以下しか放出しない、より好ましくは1時間以内に50%以下しか放出しない。
【0104】
様々な実施形態では、本発明の剤形、方法およびキットは、持続放出手段を含む。そのような構成成分は、固体経口ジプラシドン剤形内に取り込ませる場合は、当業者に知られている任意のものであることができる。例示的な剤形には、侵食性および非侵食性マトリックス持続放出剤形、浸透圧持続放出剤形、多粒子、ならびに腸溶コーティングした核を含む剤形が含まれる。そのような剤形は、例えば、上記の米国公開特許出願第2007/0190129号に記載されている。
【0105】
一実施形態では、剤形は、侵食性または非侵食性ポリマーマトリックス持続放出剤形である。侵食性マトリックスとは、純粋な水に侵食性もしくは膨潤性もしくは可溶性がある、または、侵食もしくは溶解を引き起こすためにポリマーマトリックスを十分にイオン化するために酸もしくは塩基の存在を必要とするという意味で、水侵食性または水膨潤性または水溶性のいずれかである。水性使用環境と接触させた際、侵食性ポリマーマトリックスは水を吸収し、ジプラシドンを捕捉する水膨潤ゲルまたは「マトリックス」を形成する。水膨潤マトリックスは使用環境中で徐々に侵食、膨潤、崩壊、分散または溶解し、したがって、使用環境へのジプラシドンの放出が制御される。そのような剤形の例は当分野で周知である。例えば、レミントン:製薬の科学と実施(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)、第20版、2000を参照されたい。
【0106】
水膨潤マトリックスの主要成分は、水膨潤性、侵食性、または可溶性のポリマーであり、これは一般に、オスモポリマー、ヒドロゲルまたは水膨潤性ポリマーとして記載され得る。そのようなポリマーは、直鎖状、分枝鎖状、または架橋結合したものであり得る。これらは、ホモポリマーまたはコポリマーであり得る。例示的なポリマーには、キチン、キトサン、デキストランおよびプルランなどの天然に存在する多糖類;寒天ガム、アラビアガム、カラヤガム、イナゴマメガム、トラガカントガム、カラゲナン、ガッチガム、グアルガム、キサンタンガムおよびスクレログルカン;デキストリンおよびマルトデキストリンなどのデンプン;ペクチンなどの親水性コロイド;レシチンなどのホスファチド;アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムまたはアルギン酸カルシウム、アルギン酸プロピレングリコールなどのアルギネート;ゼラチン;コラーゲン;ならびにセルロース系が含まれる。「セルロース系」とは、糖の繰り返し単位上のヒドロキシル基の少なくとも一部分を化合物と反応させてエステル結合またはエーテル結合の置換基を形成することによって修飾した、セルロースポリマーを意味する。例えば、セルロース系エチルセルロースでは、糖の繰り返し単位にエーテル結合エチル置換基が付着しており、一方で、セルロース系セルロースアセテートはエステル結合の酢酸置換基を有する。
【0107】
侵食性マトリックス用の好ましいセルロース系のクラスは、エチルセルロース(EC)、メチルエチルセルロース(MEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリテート(HPMCAT)、およびエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)などの水溶性および水侵食性のセルロース系を含む。
【0108】
そのようなセルロース系の特に好ましいクラスは、様々なグレードの低粘度(50,000ダルトン以下の分子量)および高粘度(50,000ダルトンより高い分子量)のHPMCを含む。市販されている低粘度HPMCポリマーには、DowのMETHOCEL(商標)シリーズE3、E5、E15LV、E50LVおよびK100LVが含まれ、一方で、高粘度HPMCポリマーには、E4MCR、E10MCR、K4M、K15MおよびK100Mが含まれる。この群では、METHOCEL(商標)Kシリーズが特に好ましい。他の市販されているHPMCの種類には、信越化学工業のMETOLOSE(商標)90SHシリーズが含まれる。一実施形態では、HPMCは低粘度を有し、これは、水中のHPMCの2%(w/v)溶液の粘度が約120cp未満であることを意味する。好ましいHPMCは、水中のHPMCの2%(w/v)溶液の粘度が80〜120cpの範囲のものである(METHOCEL(商標)K100LVなど)。
【0109】
侵食性マトリックス物質として有用な他の物質には、それだけには限定されないが、プルラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、グリセロール脂肪酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、エタクリル酸またはメタクリル酸のコポリマー(EUDRAGIT(登録商標)、Rohm America,Inc.、ニュージャージー州Piscataway)ならびにブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、(2−ジメチルアミノエチル)メタクリレート、および(トリメチルアミノエチル)メタクリレートクロライドのホモポリマーおよびコポリマーなどの他のアクリル酸誘導体が含まれる。
【0110】
また、侵食性マトリックスポリマーは、オスモポリマー、オスマゲン(osmagen)、溶解度増強剤または遅延剤および剤形の安定性または加工性を促進する賦形剤を含めた、薬学分野で知られている添加剤および賦形剤も含有し得る。
【0111】
あるいは、持続放出部分は、非侵食性マトリックスを含み得る。そのような剤形では、ジプラシドンを不活性マトリックス中に分布させる。薬物は、拡散によって不活性マトリックスを介して放出される。不活性マトリックスに適した物質の例には、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー、メチルアクリレート−メチルメタクリレートコポリマー、ポリ塩化ビニル、およびポリエチレンなどの不溶性プラスチック;エチルセルロース、セルロースアセテート、および架橋結合したポリビニルピロリドン(crospovidoneとしても知られる)などの親水性ポリマー;ならびにカルナウバロウ、ミクロクリスタリンワックス、およびトリグリセリドなどの脂肪化合物が含まれる。そのような剤形は、レミントン:製薬の科学および実施(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)、第20版(2000)にさらに記載されている。
【0112】
したがって、一実施形態では、持続放出剤形は、10重量%〜80重量%の溶出速度が改善されたまたは溶解度が改善された形態のジプラシドン、5重量%〜50重量%のマトリックスポリマー、および10重量%〜85重量%の希釈剤を含む。一実施形態では、ジプラシドンは半規則ジプラシドンとポリマーとの固形分散体の形態である。別の実施形態では、ジプラシドンは半規則塩酸ジプラシドンとHPMCASとの固形分散体の形態である。別の実施形態では、ジプラシドンは半規則ジプラシドン遊離塩基とHPMCとの固形分散体の形態である。別の実施形態では、ジプラシドンはメシル酸ジプラシドンとSBECDとの固形分散体の形態である。一実施形態では、マトリックスポリマーはHPMCである。別の実施形態では、希釈剤はラクトース一水和物である。
【0113】
別の実施形態では、剤形は浸透圧剤形である。浸透圧送達装置では、浸透物質(水膨潤性親水性ポリマーまたはオスモゲン(osmogen)もしくはオスマゲント(osmagent))が装置の核内に含まれ、核は半透膜でコーティングされている。膜には、膜の形成中、コーティングプロセス後、またはin situで形成された1つまたは複数の送達口が含まれていても含まれていなくてもよい。送達口は、単一の口から、コーティング中の細孔から構成され得る多数の小さな送達口の範囲であり得る。核内部の浸透物質は、半透性コーティングを通して水を引き出す。水膨潤性親水性ポリマーを含有する核では、核はコーティングを通して水を吸収し、水膨潤性組成物を膨張させて核内の圧力を上昇させ、薬物含有組成物を流動化させる。コーティングは無傷に保たれるため、薬物含有組成物は、1つもしくは複数の送達口またはコーティング中の細孔を通って、使用環境内に押し出される。オスモゲンを含有する核では、水が浸透圧によって装置内に引き出されて薬剤を溶解し、薬剤の溶液が形成される。水の吸収によって引き起こされる体積の増加は、核内の静水圧をわずかに上昇させる。この圧力は、膜孔または送達口を通って装置から出る飽和薬剤溶液または懸濁液の流れによって解放される。したがって、水膨潤性ポリマーまたはオスモゲンを含有する装置からの体積−流速は、膜を通る核への水の流入速度および押し出された流体中の薬物濃度の結果に依存する。多孔性、非対称、対称、または転相膜を使用して水の流入速度を制御、ひいては、浸透圧徐放性装置の薬物放出の速度を制御し得る。
【0114】
また、持続放出構成成分を有する本発明による剤形は、ジプラシドンを含む即時放出部分も有していてもよい。「即時放出部分」とは、広く、持続放出構成成分とは別のジプラシドンの一部分が、胃の使用環境に投与した後、最初の2時間以内に放出されることを意味する。薬物の即時放出は、即時放出コーティング、即時放出層、および即時放出多粒子または顆粒を含めた、薬学分野で知られている任意の手段によって達成し得る。即時放出部分を含む持続放出剤形は当分野で、例えば上記の米国公開特許出願第2007/0190129号に記載されている。
【0115】
また、本発明で有用な剤形は、遅延放出手段も、単独で、または持続放出手段および/もしくは即時放出部分と組み合わせて含み得る。本発明の方法およびキットの持続放出ジプラシドン剤形で使用し得る遅延放出手段の例には、それだけには限定されないが、そのジプラシドンの放出を遅延させる、腸溶コーティングした部分を含む剤形が含まれる。
【0116】
即時放出、持続放出および/または遅延放出構成成分の様々な組合せを含む剤形のいくつかの一般例は、以下のとおりである(これらの説明は、本発明での使用が企図される剤形の範囲を限定することを意図しない):
【0117】
遅延放出コーティングを用いた即時放出核
原理上は、本発明は、ジプラシドンおよび薬学的に許容できる担体を含む即時放出核をとり、所望の遅延放出特徴を提供する(好ましくは全体を覆う)コーティングで、空間的または時間的機構のどちらかによってコーティングすることによって、実施することができる。したがって、任意の即時放出ジプラシドン剤形を核として使用することができ、その後、これを所望の遅延放出コーティングでコーティングし、そのような剤形が本発明の範囲の好ましい実施形態を構成する。
【0118】
剤形は、小腸内に移行した後までジプラシドンの放出が遅延されるようにその使用環境に対して感受性を有することによって、作動することができる。この種類の遅延放出剤形は、胃腸(GI)管に沿った位置に依存した様式で放出し、時間に非依存性であり、本明細書中で「空間的な」剤形、または「空間的遅延放出」を示すという。剤形が小腸内に入った後、これはその残りのジプラシドンを即時様式で放出し、「即時放出」とは、遅延期間が終わった後に意図的に放出を遅らせるまたは減速させる構成成分または手段が剤形中に実装されていないことを意味する。一般に、剤形は、小腸内に移行した後、その中に残ったジプラシドンの少なくとも70%を、1.5時間以内、好ましくは1時間以内に放出するべきである。空間的遅延剤形の例は、pH5.5より高い小腸の環境に入るまでジプラシドンの放出を遅延させる、pH始動剤形である。本発明の空間的遅延剤形は、一般に、胃から出て小腸内に移行した後、約30分以内、好ましくは15分以内にジプラシドンの即時放出を開始する。
【0119】
空間的遅延pH始動コーティングを用いた即時放出
本発明による第1の空間的遅延放出の実施形態は、胃のpHではジプラシドンまで実質的に透過できないが、小腸のpHではジプラシドンまで透過できるようになるポリマーを含む物質でコーティングした即時放出錠剤または錠剤核を含む、「pH依存性コーティングした錠剤」である。空間的遅延剤形に関する「実質的に透過できない」とは、剤形中に含有されるジプラシドンの10%以下しか胃内で放出されない限り、非常に少量のジプラシドンがコーティングを通って放出されることを可能にする。そのようなポリマーは、ジプラシドンが自由に通過できるように、溶解もしくは崩壊または他の様式で破壊されることによって、透過できるようになる。錠剤または錠剤核は、崩壊剤、潤滑剤、充填剤、および/または他の慣用の配合成分などのさらなる賦形剤を含むことができる。そのような成分および/または賦形剤はすべて、具体的な剤形にかかわらず、本明細書中で薬学的に許容できる「担体」と総称する。核は、胃のpHでは実質的に不溶性かつ透過できないが、小腸のpHではより透過性のある物質、好ましくはポリマーでコーティングする。好ましくは、コーティングポリマーは、pH<5.0で実質的に不溶性かつ透過できず、pH>5.0で水溶性または水崩壊性である。pH感受性ポリマーと水不溶性ポリマーとの混合物も使用し得る。錠剤は、ジプラシドン含有錠剤核の重量の3%〜70%を構成する量のポリマーでコーティングする。好ましい錠剤は、ジプラシドン含有錠剤核の重量の5%〜50%を構成する量のポリマーでコーティングする。
【0120】
胃のpHでは比較的不溶性かつ透過できないが、小腸および結腸のpHではより可溶性または崩壊性または透過性のあるpH感受性ポリマーには、ポリアクリルアミド、フタレート誘導体、例えば炭水化物の酸フタレート、アミロースアセテートフタレート、セルロースアセテートフタレート、他のセルロースエステルフタレート、セルロースエーテルフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルエチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルアセテートハイドロジェンフタレート、ナトリウムセルロースアセテートフタレート、デンプン酸フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートトリメリテート、スチレン−マレイン酸ジブチルフタレートコポリマー、スチレン−マレイン酸ポリビニルアセテートフタレートコポリマー、スチレンとマレイン酸とのコポリマー、アクリル酸とアクリルエステルとのコポリマーなどのポリアクリル付加物誘導体、ポリメタクリル酸およびそのエステル、ポリアクリルメタクリル付加物コポリマー、シェラック、および酢酸ビニルとクロトン付加物とのコポリマーが含まれる。
【0121】
好ましいpH感受性ポリマーには、シェラック、フタレート誘導体、特にセルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート;ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート;セルロースアセテートトリメリテート;ポリアクリル酸誘導体、特にアクリル酸と少なくとも1つのアクリル酸エステルとを含むコポリマー、アクリル付加物およびアクリルエステルコポリマーと混合したポリメチルメタクリレート;ならびに酢酸ビニルとクロトン付加物とのコポリマーが含まれる。
【0122】
pH感受性ポリマーの特に好ましい群には、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メタクリル酸とメチルメタクリレートとの陰イオン性アクリルコポリマー、およびアクリル酸と少なくとも1つのアクリル付加物エステルとを含むコポリマーが含まれる。
【0123】
ジプラシドン含有錠剤が胃を出るまではジプラシドンの遅延放出をもたらすために、セルロースアセテートフタレート(CAP)をジプラシドン剤形に施用し得る。CAPコーティング溶液は、ジエチルフタレート、ポリエチレングリコール−400、トリアセチン、クエン酸トリアセチン、プロピレングリコール、および当分野で知られている他のものなどの、1つまたは複数の可塑化剤も含有し得る。好ましい可塑化剤はジエチルフタレートおよびトリアセチンである。CAPコーティング製剤は、ポリソルベート−80などの1つまたは複数の乳化剤も含有し得る。
【0124】
メタクリル酸とメチルメタクリレートとの陰イオン性アクリルコポリマーも、錠剤が胃から遠位の胃腸管内の位置に移動するまではジプラシドン含有錠剤からのジプラシドンの放出を遅延させる、特に有用なコーティング物質である。この種類のコポリマーは、RoehmPharma Corpから商標Eudragit(登録商標)−LおよびEudragit(登録商標)−Sの下で入手可能である。Eudragit(登録商標)−LおよびEudragit(登録商標)−Sは、メタクリル酸とメチルメタクリレートとの陰イオン性コポリマーである。遊離カルボキシル基対エステルの比は、Eudragit(登録商標)−Lでは約1:1であり、Eudragit(登録商標)−Sでは約1:2である。Eudragit(登録商標)−LおよびEudragit(登録商標)−Sの混合物も使用し得る。ジプラシドン含有錠剤をコーティングするためには、これらのアクリルコーティングポリマーを、有機溶媒もしくは有機溶媒の混合物に溶解させるか、または水性媒体に懸濁させることができる。この目的のために有用な溶媒は、アセトン、イソプロピルアルコール、および塩化メチレンである。一般に、アクリルコポリマーのコーティング製剤中に5〜20%の可塑化剤を含めることが賢明である。有用な可塑化剤には、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ヒマシ油、クエン酸トリエチル、およびトリアセチンが含まれる。Eudragit(登録商標)−Lは、腸管のpHで比較的素早く溶解するので好ましい。
【0125】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートのコーティングも、剤形が胃を出るまではジプラシドンの遅延放出をもたらすために、剤形に塗布し得る。
【0126】
上述のように、コーティングは、コーティングしていない錠剤核の重量の3%〜70%を構成し得る。好ましくは、コーティングは、錠剤核の重量の5%〜50%、より好ましくは5%〜40%を構成する。
【0127】
空間的遅延ジプラシドン剤形のさらなる実施形態、すなわち「pH依存性コーティングしたビーズ」では、ジプラシドンおよび担体を含む直径0.4〜2.0mmのビーズを、前述のpH感受性ポリマーの1種または複数でコーティングする。コーティングしたビーズは、カプセル内に入れるか、または、錠剤の圧縮中に個々のビーズ上のポリマーコーティングを破損すること避けるように注意しながら錠剤へと圧縮し得る。好ましいコーティングしたビーズは、前述のように、ビーズが胃を出るまでは剤形からのジプラシドンの放出を本質的に示さず(すなわち10%未満)、したがって、最小限のジプラシドンしか胃内で放出されないことを保証するものである。コーティングは、コーティングしていないビーズ核の重量の5%〜200%を構成し得る。好ましくは、コーティングは、ビーズ核の重量の10%〜100%を構成する。
【0128】
多粒子空間的遅延ジプラシドン剤形のさらなる実施形態、すなわち「pH依存性コーティングした粒子」では、剤形は、小さなジプラシドンおよび直径0.1〜0.4mmの担体粒子を含む。粒子を、前述のpH感受性ポリマーの1種または複数でコーティングする。コーティングした粒子を用いて、単位用量のパックを作製するか、またはカプセル内に入れるか、または、錠剤の圧縮中に個々の粒子上のポリマーコーティングを破損することを避けるように注意しながら錠剤へと圧縮し得る。
【0129】
さらに別の実施形態では、多粒子空間的遅延ジプラシドン剤形は、ジプラシドン、造粒賦形剤、および腸溶ポリマーを含む腸溶コーティングした顆粒を含む。これらの顆粒の直径は0.1〜1mmであり、当分野で知られている技術を用いて作製することができる。一実施形態では、溶出速度が改善されたまたは溶解度が改善された形態のジプラシドンを結合剤および腸溶ポリマーと混合し、慣用の造粒機器を用いて顆粒化する。
【0130】
好ましいコーティングした粒子は、粒子が胃を出るまでは剤形からのジプラシドンの放出を本質的に示さず(すなわち10%未満)、したがって、最小限のジプラシドンしか胃内で放出されないことを保証するものである。pH感受性ポリマーと水不溶性ポリマーとの混合物も含まれる。好ましいジプラシドン含有粒子は、コーティングしていないジプラシドン含有粒子核の重量の15%〜200%を構成する量のポリマーでコーティングする。
【0131】
pH感受性ポリマーと水不溶性ポリマーとの混合物も含まれる。ジプラシドン含有錠剤および粒子およびビーズを、様々なpHで溶解度が異なるポリマーの混合物でコーティングし得る。例えば、好ましいコーティングは、Eudragit(登録商標)−L、または9:1〜1:4のEudragit(登録商標)−L/Eudragit(登録商標)−Sを含む。
【0132】
空間的遅延ジプラシドン剤形のさらなる実施形態は、pH依存性コーティングした錠剤、pH依存性コーティングしたビーズ、およびpH依存性コーティングした粒子の実施形態の変更を構成する。ジプラシドン含有核の錠剤、ビーズ、または粒子を最初にバリアーコーティングでコーティングし、その後、pH依存性コーティングでコーティングする。バリアーコーティングの機能は、ジプラシドンをpH依存性コーティングから分離することである。ジプラシドンは塩基であるため、核内でのジプラシドンの水和はpH依存性コーティングの微小環境内でpHを上昇させる役割を果たすことができ、したがってpH依存性コーティングの透過処理または溶解を時期尚早に開始させ、その結果、ジプラシドン用量の一部または全体が胃内で時期尚早に放出される。バリアーコーティングは、そのような時期尚早な放出を防止する。適切なバリアーコーティングは、スクロースなどの糖、またはヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性ポリマー等の水溶性物質からなる。ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンが好ましい。バリアーコーティングは、コーティングしていないジプラシドン含有の錠剤、ビーズまたは粒子の核の重量の1%〜20%、好ましくは2%〜15%を構成し得る。
【0133】
即時放出コーティングを用いた遅延放出の即時放出核
本発明で使用するジプラシドン剤形に有用であることが企図される別の組合せの例は、ジプラシドンの即時放出をもたらす核を含む固体経口剤形であり、その核は、上に説明したように、核の内容物の放出を遅延させる物質でコーティングされている(「遅延放出コーティング」)。その後、ジプラシドンの即時放出のためのこの遅延放出核を、ジプラシドンの即時放出をもたらすジプラシドンを含む層でコーティングする。
【0134】
キット:
本発明はまた、有効量のジプラシドンを含む本明細書中に記載の固体経口剤形を含む、ヒトにおいてCNS障害を治療するためのキットも提供し、固体経口剤形は、ヒトが絶食状態の場合でも、CNS障害の治療に有効な血清ジプラシドン濃度レベルをもたらす。したがって、キットには、食物と共に投与することを指定しない投与の指示も含まれる。
【0135】
一実施形態では、本発明は、
a)有効量のジプラシドンおよび薬学的に許容できる担体を含む固体経口剤形と、
b)食物と共に投与することを指定しない、(a)の剤形を経口投与するための指示と
を含み、前記固体経口剤形が、絶食状態のヒトに投与した場合に、そのヒトに、摂食状態のヒトに同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを投与した結果もたらされるジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%、好ましくは75%〜130%、より好ましくは80%〜125%である血清ジプラシドンAUC0〜infをもたらす
キットを提供する。
【0136】
別の実施形態では、本発明は、
a)有効量のジプラシドンおよび薬学的に許容できる担体を含む固体経口剤形と、
b)(a)の剤形を食物と共にまたは食物なしで投与し得ることを指示する、(a)の剤形を経口投与するための指示と
を含み、前記固体経口剤形が、絶食状態のヒトに投与した場合に、そのヒトに、摂食状態のヒトに同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを投与した結果もたらされるジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%、好ましくは75%〜130%、より好ましくは80%〜125%である血清ジプラシドンAUC0〜infをもたらす
キットを提供する。
【0137】
別の実施形態では、本発明は、
a)有効量のジプラシドンおよび薬学的に許容できる担体を含む固体経口剤形と、
b)食物と共に投与することを指定しない、(a)の剤形を経口投与するための指示と
を含み、前記固体経口剤形が、絶食状態のヒトに投与した場合に、そのヒトに、同一のジプラシドン固体経口剤形を摂食状態のヒトに投与した結果もたらされるジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%、好ましくは75%〜130%、より好ましくは80%〜125%である血清ジプラシドンAUC0〜infをもたらす
キットを提供する。
【0138】
別の実施形態では、本発明は、
a)有効量のジプラシドンおよび薬学的に許容できる担体を含む固体経口剤形と、
b)(a)の剤形を食物と共にまたは食物なしで投与し得ることを指示する、(a)の剤形を経口投与するための指示と
を含み、前記固体経口剤形が、絶食状態のヒトに投与した場合に、そのヒトに、同一のジプラシドン固体経口剤形を摂食状態のヒトに投与した結果もたらされるジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%、好ましくは75%〜130%、より好ましくは80%〜125%である血清ジプラシドンAUC0〜infをもたらす
キットを提供する。
【0139】
好ましくは、本発明のキット中の固体経口剤形中のジプラシドンは、上述のように、ジプラシドンの溶出速度が改善された形態および/またはジプラシドンの溶解度が改善された形態である。
【0140】
本明細書中で用語「キット」とは、固体経口剤形および指示の任意の組合せをいう。指示は記録された形態であり得る。記録は、例えば、手書き、印刷、ビデオ録画、または音声録音であり得る。指示は、消費者への薬物の販売に伴う政府規制機関によって認可されたラベル、添付文書、または他の記録された情報の一部であり得る。組合せは、固体経口剤形および例えば印刷または書面の形態の指示が、薬局によって医師、健康管理機関または患者に提供される同じパッケージの一部となるようなものであり得る。
【0141】
したがって、キットは市販に適することができ、容器、本明細書中に記載のジプラシドンの固体経口剤形、および剤形を食物と共にまたは食物なしで摂取することができるかどうかに関して非限定的である付随する書面(例えば印刷)文書を含むことができる。書面文書は、医師、薬剤師または患者への情報および/または指示を含有する種類のものである。書面文書は、剤形を食物と共にまたは食物なしで摂取することができるかどうかに関する記載が含まれない、すなわち、記載は食物の効果に関して触れないことによって、「剤形を食物と共にまたは食物なしで摂取することができるかどうかに関して非限定的である」ことができる。あるいは、書面文書は、使用者(例えば、患者、薬剤師、または医師)に、前記経口剤形は、患者が摂食または他の方法で食物を吸収したかどうかにかかわらず患者に摂取させるまたは投与することができることを積極的に通知する、1つまたは複数の記載を含有することによって、非限定的であることができる(例えば、「食物の種類または量にかかわらず」等と記載していてもよい)。書面文書は、本発明のジプラシドン剤形を、摂食状態の対象に投与するまたは少なくとも250カロリーもしくはそれより多くを用いて投与することを要するという言葉を含有することができない。言い換えれば、指示、例えば書面文書は、「本ジプラシドン剤形は食物と共に摂取しなければならない」または「本ジプラシドン剤形は患者が食事または間食を摂取した後にのみ与え得る」などと記載することができない。
【0142】
容器は、薬学的に許容できる物質、例えば、紙もしくは段ボールの箱、ガラスもしくはプラスチックのボトルもしくはジャー、再封可能なバッグ(例えば、異なる容器に入れるための錠剤の「詰め替え」を入れるためのもの)、または個々の用量を治療スケジュールに従ってパックから押し出すブリスターパックからなる、当分野で知られている任意の慣用の形状または形態であることができる。複数の容器を単一のパッケージで一緒に用いて、単一の剤形を販売できることも可能である。例えば、錠剤は、箱内に含有されるボトル内に含有され得る。
【0143】
指示、例えば印刷または他の書面文書の指示は、ジプラシドン剤形を販売するパッケージに付随する。用語「付随する」には、指示が医薬品に付随することができるすべての様式が含まれることを意図する。例えば、書面文書は、ラベル上に書く(例えば、処方箋ラベルまたは別のラベル)、ジプラシドン剤形を含有するボトルに貼付する;単位用量パケットを含有する箱の中などに書面の添付文書として容器内に含める;箱の横に印刷するなど容器に直接適用する;または縛るまたはテープで接着するなどによって、例えば、糸、コードまたは他の紐、ラニヤードもしくはロープの装置を介してボトルの首に添付した指示カードとして付着させることによって、容器に付随させることができる。書面文書は、単位用量のパックまたはブリスターパックまたはブリスターカード上に直接印刷し得る。
【0144】
指示をジプラシドン固体経口剤形に「付随」させ得る別の例は、電子的によるものである。指示は、例えば、製造者によって、ジプラシドン固体経口剤形に関連して製造者が消費者に提供するウェブサイト上で提供し得る。
【0145】
以下の実施例は本発明を例示する。これらの実施例中に提示する情報を、単独で、または当分野で一般に知られている技術を組み合わせて使用して、本発明のさらなる実施形態を調製し得る。これらの実施例は本発明を例示するために提供し、したがって、本出願の明細書全体および特許請求の範囲に完全に記載した、本発明の意図する範囲を限定するものと解釈されるべきでない。
【実施例】
【0146】
臨床試験に関する以下の実施例では、それぞれの研究は、摂食条件下でのGEODON/ZELDOX(商標)市販カプセルならびに摂食条件下および絶食条件下での試験ジプラシドン剤形の生体利用度を、いずれも40mgの単回投与後に試験するための、無作為化、非盲検、3期間、6シーケンス、クロスオーバー試験であった。
【0147】
すべての対象は健康で18歳以上であり、体重指数(BMI)は約18〜30kg/m2であり、全体重は>50kg(110lb)であった。
【0148】
第1期間の1日目に、対象を6つの処置シーケンスのうちの1つに無作為化した。投与した3つの処置は、試験ジプラシドン剤形(絶食)、試験ジプラシドン剤形(摂食)および市販カプセル(摂食)であった。それぞれの処置期間は、最低3日間のウォッシュアウト間隔によって隔てた。
【0149】
試験製剤(絶食)処置では、少なくとも10時間の終夜の絶食後に、対象に薬物を240mL(8液量オンス)の水と共に投与した。試験製剤(摂食)および市販カプセル(摂食)処置では、少なくとも10時間の終夜の絶食後に、対象に朝食を提供した。朝食を20分間にわたって摂取させ、食事完了後5分以内に薬物を240mL(8液量オンス)の水と共に投与した。
【0150】
薬物動態学評価:ジプラシドンの薬物動態学(PK)分析のために最低2mLの血清を提供するために十分な血液試料(5mL)を、適切に標識したレッドトップチューブ(任意の血清セパレーターまたは他の添加剤を何も含有しない)に、以下の時間、すなわち、時間0(1日目の朝の投薬前)、ならびに薬物投薬の1、2、4、6、8、10、12、16、24および36時間後に採取した。
【0151】
妥当性確認した液体クロマトグラフィー/二重質量分析(LC/MS/MS)アッセイを用いて、血清試料をジプラシドンについてアッセイした。WinNonlin、バージョン3.2を用いて、濃度−時間データの標準の非区画分析によって、PKパラメータをそれぞれの対象について計算した。観測最大血清濃度(Cmax)およびTmax(Cmaxが最初に発生した時間)を、実験データ(血清濃度対時間)から直接観測した。時間0から外挿したinfの時間までの血清濃度−時間プロフィールの下の面積(AUCinf)および時間0から最終の定量可能な濃度の時間までの血清濃度−時間プロフィールの下の面積(AUClast)を、線形台形近似によって推定した。
【0152】
以下のPKパラメータを製剤および摂食状態によって要約した。AUCinfおよびCmaxについては、個々の対象パラメータも製剤および摂食状態によってプロットした。
パラメータ 要約の統計
AUCinf、AUClast、Cmax N、相加平均、中央値、変動係数(CV%)、標準偏差(SD)、最小、最大、相乗平均
Tmax N、中央値、最小、最大
t1/2 N、相加平均、中央値、CV%、標準偏差(SD)、最小、最大
【0153】
(実施例1)
SBECDで可溶化したジプラシドン
ジプラシドン試験製剤の調製:ジプラシドン試験製剤は、メシル酸ジプラシドン−SBECD凍結乾燥粉末を、HPMCASと合わせて、約1:6:2の質量比で含有していた。この製剤は、以下に概要を示した手順に基づいて調製した。SBECDを、注射用水(WFI)を含有するフラスコに入れ、溶液が得られるまで加熱した。その後、メシル酸ジプラシドンをフラスコに入れ、溶液が得られるまで加熱した。溶液を冷却し、35〜40Cに保った後、0.45ミクロンのKleenpak Ultipro N66フィルターを通して保持容器内に濾過した。その後、溶液をトレイに移した。溶液を少なくとも−40℃まで冷却した後、凍結乾燥サイクルを開始した。数週間の期間にわたって温度を上昇させた。最終乾燥サイクルにより水分含量を2%未満まで減らした。その後、凍結乾燥粉末を粉砕した。176.2mgの粉砕した凍結乾燥粉末(これは20mgのジプラシドンに相当する)を50mgのHPMCAS(MFグレード)と混合し、ゼラチンカプセルに充填した。
【0154】
2個のジプラシドンカプセル(試験製剤)を投薬して(2×20mg)、40mg用量のジプラシドンを得た。
【0155】
ジプラシドン試験製剤の情報を表1に示す。
【0156】
【表1】
【0157】
結果:合計16人の対象を処置に割り当て、12人が試験を完了した。4人の対象が、参加に気が進まないとの理由により試験を中止した。試験を中止する前、これらの対象のうち3人が試験製剤(摂食)を受け、1人が市販カプセル(摂食)を受けた。
【0158】
摂食および絶食状態下の実施例1の試験製剤ならびに摂食状態下の市販カプセルの単回投与後の要約を、表2に要約する。これらのデータは、試験製剤の絶食のAUCinfは試験製剤の摂食のAUCinfの92%であり、試験製剤の絶食のAUCinfは接触の市販カプセルの105%であったことを示している。
【0159】
【表2】
【0160】
(実施例2)
ジプラシドンナノ粒子
候補製剤の調製:本明細書中で製剤Bと呼ぶこの試験製剤は、ナノ粒子の形態のジプラシドン遊離塩基を含有していた。製剤は以下に概要を示した手順に基づいて調製した。8.85gmのジプラシドン遊離塩基を100mlの粉砕チャンバ内に48.89gmの粉砕媒体(500ミクロンのポリスチレンビーズ)と共に入れることによって、粗い懸濁液を調製した。これに、それぞれ4.2mlのPluronic(登録商標)F108、Tween(登録商標)80の10%溶液および5%のレシチン溶液を加えた。さらに、23.8mlの注射用水を粉砕チャンバに加えた。均一な懸濁液が得られるまで上記混合物を攪拌した。その後、この懸濁液を30分間、2100RPMで、Nanomill−1(製造者Elan Drug Delivery,Inc.)内で粉砕し、粉砕中の温度を4Cに維持した。生じた懸濁液を真空下で濾過して粉砕媒体を除去した。適切な体積の懸濁液(ジプラシドンの40mg用量に対応)を60mlの水で希釈し、懸濁液として投薬した。
【0161】
試験薬の情報を表3に示す。
【0162】
【表3】
【0163】
結果:合計14人の対象を処置に割り当て、12人が試験を完了した。2人の対象(製剤B(絶食)群で1人、市販カプセル(摂食)群で1人)が第1期間の投薬後に試験を中止した。1人の対象は胃腸炎により中止し、もう1人はスポンサーによって中止させられた。
【0164】
摂食および絶食状態下の製剤Bならびに摂食状態下の市販カプセルの単回投与後のPKパラメータの要約を、表4に要約する。これらのデータは、試験製剤の絶食のAUCinfは試験製剤の摂食のAUCinfの78%であり、試験製剤の絶食のAUCinfは接触の市販カプセルの89%であったことを示している。
【0165】
【表4】
【0166】
(比較実施例3)
ジプラシドンHCl
沈殿阻害ポリマーHPMCASでコーティングした35%の活性塩酸ジプラシドン一水和物を含む、ジプラシドンでコーティングした結晶を、上記の米国公開特許出願第2007/0190129号に記載のように調製した。
【0167】
実施例3のこの試験ジプラシドン製剤(「製剤C」と呼ぶ)は、カプセル中の散剤として投薬した(1×40mg)。試験薬物の情報を表5に示す。
【0168】
【表5】
【0169】
結果:摂食および絶食状態下の試験製剤ならびに摂食状態下の市販カプセルの単回投与後のPKパラメータの要約を、表6に要約する。これらのデータは、試験製剤の絶食のAUCinfは試験製剤の摂食のAUCinfの57%であり、試験製剤の絶食のAUCinfは接触の市販カプセルの62%であったことを示している。
【0170】
【表6】
【0171】
(比較実施例4)
沈殿阻害剤(HPMCAS)を用いたメシル酸ジプラシドン
本明細書中で製剤A2と呼ぶ本製剤は、沈殿阻害剤、具体的にはHPMCASとの単純な物理的な混合物中でメシル酸ジプラシドンを含有するヒプロメロースを含むマトリックス錠であった。製剤A2の錠剤の組成は以下のとおりであった:
【0172】
【表7】
【0173】
USP−2によって試験した場合;900ml(0.05MのNa2HPO4、2%のSDS、pH7.5)、37C、100RPMで攪拌した)、製剤A2の溶出プロフィールは以下のとおりであった。
【0174】
【表8】
【0175】
合計18人の対象を、製剤A2を用いた処置に割り当て、17人の対象を、対照GEODON/ZELDOX(商標)市販カプセル(摂食)に割り当てた。18人が製剤A2(絶食)の試験を完了し、17人の対象がそれぞれ製剤A2(摂食)およびGEODON/ZELDOX(商標)市販カプセル(摂食)を完了した。
【0176】
結果:40mgの単回投与後の、絶食条件下または摂食条件下での製剤A2および摂食条件下でのGEODON/ZELDOX(商標)市販カプセル後の平均血清PKパラメータを、表7に要約する。これらのデータは、試験製剤の絶食のAUCinfは試験製剤の摂食のAUCinfの56%であり、試験製剤の絶食のAUCinfは接触の市販カプセルの37%であったことを示している。
【0177】
【表9】
【0178】
(実施例5)
シクロデキストリンとの噴霧乾燥分散体中のメシル酸ジプラシドン
以下のように、シクロデキストリンスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン(SBECD)との噴霧乾燥分散体中のメシル酸ジプラシドンを含有する、2つの製剤を調製した。最初に、7.8重量%のメシル酸ジプラシドン三水和物、30.9重量%のSBECDからなり、すべて水に75℃で溶解した噴霧溶液を調製した。供給溶液を、圧力ノズル(Schlick1.0圧力ノズル)を備えた、噴霧乾燥機(液体供給プロセス容器を備えたNiro型XP携帯用噴霧乾燥機)(「PSD−1」)にポンピングした。PSD−1は、9インチ(22.7cm)チャンバの拡張を備えていた。噴霧乾燥機は、乾燥用ガスを噴霧乾燥チャンバ内に導入するためのDPHガス分散器も備えていた。噴霧溶液は、約54g/分、約1000psigの圧力で噴霧乾燥機にポンピングした。乾燥用ガス(例えば窒素)は、DPHの蓋を通して、約2000g/分の流速、約145℃の導入口温度で噴霧乾燥機内に導入した。蒸発した水および乾燥用ガスは、約75℃の温度で噴霧乾燥機から出た。15%Aのジプラシドンを含有する生じた分散体をサイクロンで回収した。
【0179】
第2の製剤は、以下の例外を用いて上述のように調製した。噴霧溶液は、すべて水に75℃で溶解した6.1重量%のメシル酸ジプラシドン三水和物、31.8重量%のSBECDからなっていた。噴霧溶液は、約47g/分、約800psigの圧力で噴霧乾燥機にポンピングした。乾燥用ガス(例えば窒素)は、DPHの蓋を通して、約2000g/分の流速、約140℃の導入口温度で噴霧乾燥機内に導入した。蒸発した水および乾燥用ガスは、約70℃の温度で噴霧乾燥機から出た。12%Aのジプラシドンを含有する生じた分散体をサイクロンで回収した。
【0180】
製剤A3、製剤A4、および製剤A5と呼ぶ3つの固体経口剤形を試験した。製剤のうちの1つには、沈殿阻害剤HPMCASも含めた。製剤を表8に示す。
【0181】
【表10】
【0182】
製剤A3、A4、およびA5の溶出プロフィールを以下に示す。
【0183】
【表11】
【0184】
【表12】
【0185】
【表13】
【0186】
(in vitro実施例)
以下の試験を用いて様々なジプラシドン製剤を評価した。最初に、固形製剤(例えば、散剤、ビーズ)では、別段に指定しない限り、すべてのジプラシドンが溶解した場合はジプラシドンの濃度が200μgA/mLとなるような量の製剤をガラス製溶解フラスコ内に正確に秤量した。その後、製剤を含有するフラスコを37℃の水浴内に入れ、50mLの0.01NのHCl模擬胃緩衝液、pH2.0をフラスコに加えた。フラスコは攪拌パドルを備え、100rpmで攪拌した。フラスコは、既知の濃度のジプラシドン標準物質で較正したUVプローブも備えていた。模擬胃緩衝溶液をフラスコに加えた際にタイマーを0に設定した。その後、UVプローブを用いて320nmでのUV吸光度を経時的に測定した。これらのデータから、溶解したジプラシドンの濃度を計算した。その後、標準技術を用いて、MDCおよびAUC90をこれらのデータから決定した。
【0187】
対照1
対照として、GEODON/ZELDOX(商標)市販カプセル(すなわち、約5ミクロン〜約30ミクロンの体積平均直径(VMD)粒子径を有する結晶塩酸ジプラシドン一水和物)の形態の塩酸ジプラシドン一水和物の溶解性能を、上記試験手順を用いて決定した。MDCおよびAUC90を表9に記載する。
【0188】
【表14】
【0189】
ジプラシドンの様々な高エネルギー塩形態を、当分野で周知の標準の分析技術を用いて調製し、上述のin vitro溶出試験で評価した。実施例6はメシル酸ジプラシドンからなり、実施例7はジプラシドン遊離塩基からなり、実施例8はトシル酸ジプラシドンからなり、実施例9は酒石酸ジプラシドンからなり、実施例10はアスパラギン酸ジプラシドンからなり、実施例11はクエン酸ジプラシドンからなり、実施例12はコハク酸ジプラシドンからなっていた。
【0190】
これらの試験の結果を表9に表す。これらのデータから、ジプラシドンの高エネルギー塩形態により、対照1の1.3〜5.5倍のMDC値、および対照1の1.5〜5.5倍のAUC90値がもたらされることが示され、これらの塩形態が、ジプラシドンの溶出速度が改善されたまたは溶解度が改善された形態であることが示された。
【0191】
(実施例13)
実施例1に記載のジプラシドン形態(ジプラシドン−SBECDの凍結乾燥複合体)を、上述の溶出試験で試験した。表9に要約したこの試験の結果から、凍結乾燥粉末により対照1の7.8倍のMDC、対照1の9.5倍のAUC90値がもたらされることが示された。したがって、凍結乾燥粉末は、ジプラシドンの溶出速度が改善されたおよび/または溶解度が改善された形態である。
【0192】
(実施例14)
実施例2に記載のジプラシドン形態(ジプラシドンナノ粒子)を、上述のin vitro溶出試験で評価した。表9に要約したこの試験の結果から、ジプラシドンナノ粒子により対照1の6.5倍のMDC、対照1の6.8倍のAUC90値がもたらされることが示された。したがって、ジプラシドンナノ粒子は、ジプラシドンの溶出速度および/または溶解度が改善された改善された形態である。
【0193】
(実施例15)
結晶化した噴霧乾燥した分散体(CSDD)としても知られるHPMCAS−Hマトリックス中の半規則塩酸ジプラシドンからなるジプラシドン形態を、以下の手順に従って調製した。最初に、以下の手順を用いて、メタノール中の0.2重量%の塩酸ジプラシドン一水和物および1重量%のHPMCAS−HGからなる噴霧溶液を調製した。メタノールを、上部搭載のミキサーを備えたステンレス鋼タンクに加えた。次に、ジプラシドンをタンクに動揺しながら加えた。タンクのヘッドスペースに窒素をパージして、ジプラシドンの酸化分解を防止するために酸素を除去した。その後、タンクを50℃まで加熱してジプラシドンを溶解した。その後、HPMCASをタンクに加え、1時間混合して噴霧溶液を形成し、これを室温まで冷却した。
【0194】
噴霧溶液を、250μmのフィルターを通して濾過し、その後、高圧ポンプを用いて、圧力ノズル(SK79−16 Pencil Point圧力ノズル)を備えた噴霧乾燥機(液体供給プロセス容器を備えたNiro型XP携帯用噴霧乾燥機)(「PSD−1」)にポンピングした。PSD−1は、9インチ(22.7cm)チャンバの拡張を備えていた。噴霧乾燥機は、乾燥用ガスを噴霧乾燥チャンバ内に導入するためのDPHガス分散器も備えていた。噴霧溶液は、約120g/分、約200psigの圧力で噴霧乾燥機にポンピングした。乾燥用ガス(例えば窒素)は、DPHの蓋を通して、約1925g/分の流速、約150℃の導入口温度で噴霧乾燥機内に導入した。蒸発した溶媒および湿った乾燥用ガスは、約53℃の温度で噴霧乾燥機を出た。
【0195】
生じた噴霧乾燥分散体(SDD)をサイクロンで回収し、その後、約1cm以下の粉末の深さで、40℃および15%の相対湿度(RH)で少なくとも4時間稼働させた対流トレイ乾燥機内で乾燥させた。その後、SDDを50℃および90%の相対湿度に24時間曝露することによって、CSDDをトレイ乾燥機内で形成した。PXRD、DSC、およびTEMによるCSDDの分析により、CSDD中のジプラシドンが半規則であり、結晶ドメインの大きさが50nm〜200nmの桁であることが示された。
【0196】
生じたCSDDを、上述のin vitro溶出試験で評価した。表9に要約したこの試験の結果から、15%AのCSDDにより対照1の1.5倍のMDC、対照1の1.4倍のAUC90値がもたらされることが示された。したがって、15%AのCSDD製剤は、ジプラシドンの溶出速度が改善されたおよび/または溶解度が改善された形態である。
【0197】
(実施例16)
25%Aの塩酸ジプラシドン:HPMCAS−H CSDDからなるジプラシドン形態は、以下の例外を用いて、実施例15に概要を示した手順を用いて形成した。噴霧溶液は、メタノール中の0.2重量%の塩酸ジプラシドン一水和物および0.5重量%のHPMCAS−Hからなっていた。生じたCSDDを、上述のin vitro溶出試験で評価した。表9に要約したこの試験の結果から、25%AのCSDDにより対照1の2.1倍のMDC、対照1の2.1倍のAUC90値がもたらされることが示された。したがって、25%AのCSDD製剤は、ジプラシドンの溶出速度が改善されたおよび/または溶解度が改善された形態である。
【0198】
(実施例17)
25%Aのジプラシドン遊離塩基:HPMC CSDDからなるジプラシドン形態は、以下の手順を用いて形成した。最初に、以下のように、95/5(w/w)のテトラヒドロフラン(THF)/水溶媒中の0.85重量%のジプラシドン遊離塩基、2.55重量%のHPMC(E3 Premium LV)、および0.02重量%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)からなる噴霧溶液を形成した。最初に、BHTを、上部搭載のミキサーを備えたステンレス鋼容器に加えた。その後、THFおよび水を加えてBHTを溶解した。その後、ジプラシドンをこの混合物に加え、ヘッドスペースに窒素をパージして酸素を除去した。その後、混合物を少なくとも2時間混合してジプラシドンを溶解した。その後、HPMCを混合物に加え、少なくとも2時間混合して噴霧溶液を形成した。
【0199】
噴霧溶液を、250μmのフィルターを通して濾過し、その後、高圧ポンプを用いて、圧力ノズル(SK78−16 Pencil Point圧力ノズル)を備えた噴霧乾燥機(液体供給プロセス容器を備えたNiro型XP携帯用噴霧乾燥機)(「PSD−1」)にポンピングした。PSD−1は、9インチ(22.7cm)および6フィート(1.83m)のチャンバの拡張を備えていた。噴霧乾燥機は、乾燥用ガスを噴霧乾燥チャンバ内に導入するためのDPHガス分散器も備えていた。噴霧溶液は、約131g/分、約150psigの圧力で噴霧乾燥機にポンピングした。乾燥用ガス(例えば窒素)は、DPHの蓋を通して、約1600g/分の流速、約106℃の導入口温度で噴霧乾燥機内に導入した。蒸発した溶媒および湿った乾燥用ガスは、約42℃の温度で噴霧乾燥機を出た。
【0200】
生じた噴霧乾燥分散体(SDD)をサイクロンで回収し、その後、約1cm以下の粉末の深さで、40℃および50%の相対湿度で少なくとも6時間稼働させた対流トレイ乾燥機内で乾燥させた。その後、SDDを40℃および90%の相対湿度に16〜24時間曝露することによって、CSDDをトレイ乾燥機内で形成した。PXRD、DSC、およびTEMによるCSDDの分析により、CSDD中のジプラシドンが半規則であり、結晶ドメインの大きさが50nm〜200nmの桁であることが示された。
【0201】
生じたCSDDを、上述のin vitro溶出試験で評価した。表9に要約したこの試験の結果から、25%AのCSDDにより対照1の4.8倍のMDC、対照1の6.3倍のAUC90値がもたらされることが示された。したがって、25%AのCSDD製剤は、ジプラシドンの溶出速度が改善されたおよび/または溶解度が改善された形態である。
【0202】
(実施例18〜19)
塩酸ジプラシドン一水和物CSDD錠剤(B1およびB2)
40mgAのジプラシドンを含有する即時放出錠剤を、実施例15および16に記載の塩酸ジプラシドン:HPMCAS−H CSDDを用いて調製した。実施例18の錠剤の組成は以下のとおりであった:
【0203】
【表15】
【0204】
実施例19の錠剤の組成は以下のとおりであった:
【0205】
【表16】
【0206】
(実施例20〜22)
塩酸ジプラシドン一水和物CSDDマトリックス錠−短時間(B3)、中等時間(B4)、長時間
それぞれ40mgAのジプラシドンを含有する持続放出マトリックス錠を、実施例16に記載の25%Aの塩酸ジプラシドン:HPMCAS−H CSDDを用いて調製した。実施例20(B3)の錠剤の組成は以下のとおりであった:
【0207】
【表17】
【0208】
実施例21(B4)の錠剤の組成は以下のとおりであった:
【0209】
【表18】
【0210】
実施例22(長時間錠剤)の錠剤の組成は以下のとおりであった:
【0211】
【表19】
【0212】
実施例20、21および22のin vitro溶出試験の結果を図1に示す。
【0213】
(実施例23〜25)
15%Aの塩酸ジプラシドン一水和物CSDDマトリックス錠−短時間、中等時間、長時間
それぞれ40mgAのジプラシドンを含有する持続放出マトリックス錠を、実施例15に記載の15%Aの塩酸ジプラシドン:HPMCAS−H CSDDを用いて調製した。実施例23(短時間錠剤)の錠剤の組成は以下のとおりであった:
【0214】
【表20】
【0215】
実施例24(中等時間錠剤)の錠剤の組成は以下のとおりであった:
【0216】
【表21】
【0217】
実施例25(長時間錠剤)の錠剤の組成は以下のとおりであった:
【0218】
【表22】
【0219】
2%(w/v)のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を加えた0.05MのNaH2PO4媒体中、pH7.5に調節した、パドルが75rpmの、実施例23、24および25のin vitro溶出試験の結果を、図2に示す。
【0220】
(実施例26)
ジプラシドン遊離塩基CSDD錠剤(D1)
実施例17に記載の25%Aのジプラシドン遊離塩基HPMC CSDD製剤を用いて、40mgAのジプラシドンを含有する即時放出剤形を調製した。錠剤の配合は以下のとおりであった:
【0221】
【表23】
【0222】
製剤D1のin vitro溶出試験の結果を図3に示す。
【0223】
(実施例27)
コーティングしたビーズ
ジプラシドンでコーティングしたビーズは、以下の手順を用いて調製した。最初に、水中の26.67重量%の実施例16に記載の25%Aの塩酸ジプラシドン:HPMCAS−H CSDDおよび3.33重量%のHPMC E3 Premiumからなる溶液を形成して、CSDD粒子の懸濁液を形成した。その後、この溶液を、Willy A Bachofen(WAB)DynoMillモデルKDL動揺機−ビーズ粉砕機を用いて、ワンパス立体配置で湿式粉砕した。粉砕チャンバの体積は0.3Lであり、0.15mmのガス分離器を備えていた。研磨用ビーズは0.7〜1.0mmの鉛を含まないガラスであり、バルク体積が250mLであった。粉砕プロセス中、懸濁液を5℃まで冷却した。粉砕速度は4200rpmであり、粉砕時間は懸濁液1kgあたり29分であった。生じた粉砕した懸濁液を、溶解したHPMCを含有する水で希釈して、12重量%のCSDD、3重量%のHPMC、および水からなる噴霧懸濁液を形成した。
【0224】
その後、還元ボウル(reduced−bowl)(例えばMP−1)Precision Coater挿入を備えたNiro MP−2流動床を用いて、噴霧懸濁液を20/25のメッシュ糖球上に55重量%のコーティング重量レベルまでコーティングした。コーティング条件は以下のとおりであった。流動床は、高さ250mm、30mmの旋回挿入、および20mmの仕切り高さギャップの80mmのカラムを備えていた。噴霧ノズルは、1.2mmの挿入および3.0mmのスペーサーを有するSchlick970であった。流体化空気は、65℃の導入口温度、11℃の露点温度、および90m3/時の流速に設定した。床の温度は32℃に保った。噴霧懸濁液の供給速度は16g/分であり、微粒化圧力は1.5bargであった。
【0225】
生じたジプラシドンでコーティングしたビーズは、44重量%のCSDD、11重量%のHPMC、および45重量%の糖球からなり、約11重量%Aのジプラシドンを含有していた。
【0226】
(実施例28)
Eudragit(登録商標)腸溶コーティングしたビーズ(B6形)
実施例27のジプラシドンでコーティングしたビーズを、流動床プロセスにおいて腸溶ポリマーでコーティングした。腸溶コーティング溶液は、15.84重量%のEudragit(登録商標)−L30D−55、1.76重量%のクエン酸トリエチル、および82.40重量%の水からなっていた。この腸溶コーティング溶液を、ジプラシドンでコーティングしたビーズ上に噴霧して、CSDDをビーズ上に噴霧コーティングするために実施例24で用いた条件と同じ条件を使用して10.1重量%のコーティング重量を達成した。生じた腸溶コーティングしたビーズは、約9.89重量%Aのジプラシドンからなっていた。
【0227】
製剤B6のin vitro溶出試験の結果を図4に示す。pH6.0は菱形で表し、pH7.5は丸で表す。
【0228】
(実施例29)
HPMCAS−H腸溶コーティングしたビーズ(B5形)
実施例27のジプラシドンでコーティングしたビーズを、流動床プロセスにおいて腸溶ポリマーでコーティングした。腸溶コーティング溶液は、8重量%のHPMCAS−Hおよび92重量%のアセトンからなっていた。この腸溶コーティング溶液を、ジプラシドンでコーティングしたビーズ上に噴霧して、CSDDをビーズ上に噴霧コーティングするために実施例24で用いた条件と同じ条件を使用して20重量%のコーティング重量を達成した。生じた腸溶コーティングしたビーズは、約8.8重量%Aのジプラシドンからなっていた。
【0229】
製剤B5のin vitro溶出試験の結果を図5に示す。pH6.0は菱形で表し、pH7.5は丸で表す。
【技術分野】
【0001】
【背景技術】
【0002】
食物は、多くの経口投与する薬物の吸収に重要な影響を与える(Welling PG、薬物吸収に対する食物の影響(Effects of food on drug absorption)、Annu Rev Nutr.、1996;16:383〜415)。一部の薬物では、食物と共に摂取した場合に吸収が減弱する。他の薬物では、食物は吸収を増強する。薬物吸収の改変は、有効性および毒性に対して重要な意味を持つ。予想外に低い吸収は有効性の低下として現れる場合がある一方で、より高い薬物吸収は有害事象(AE)の発生率の増加をもたらし得る。どちらの結果も、治療の成功および治療へのコンプライアンスに影響を与え得る。
【0003】
ジプラシドン(5−[2−[4−(1,2−ベンズイソチアゾール−3−イル)−1−ピペラジニル]エチル]−6−クロロ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン)は、統合失調症(Harvey PD、Bowie CR、ジプラシドン:有効性、忍容性、および広範な有効性に関する新データ(Ziprasidone:efficacy,tolerability,and emerging data on wide−ranging effectiveness)、Expert Opin Pharmacother.、2005;6(2):337〜346)および双極性障害(Patel NC、Keck PE,Jr、ジプラシドン:双極性障害に罹患している患者における有効性および安全性(Ziprasidone:efficacy and safety in patients with bipolar disorder)、Expert Rev Neurother.、2006;6(8):1129〜1138)の単独療法に用いられている、経口活性のある抗精神病薬である。食物と共に経口投与した後、ピーク血清ジプラシドン濃度は、典型的には投薬の6〜8時間後に生じる。
【0004】
現在、ジプラシドンは米国および多くの他の国において固体経口カプセル剤形で認可されており、GEODON(登録商標)カプセル(米国を含めた一部の国)およびZELDOX(他の国)の名称で販売されている。ジプラシドンの経口懸濁液もGEODON(登録商標)経口懸濁液として認可されており、注射用GEODON(登録商標)として販売されている即時放出注射用形態が急性精神病エピソードの治療に認可されている。これらの製品について米国食品医薬品局によって認可されたラベルには、経口カプセルを食物と共に投与すべきことが記載されている。
【0005】
経口ジプラシドンの吸収は食物の存在によって影響を受ける。健常志願者における試験では、ジプラシドンの生体利用度は、標準の食品医薬品局(FDA)の食事と共に投与した場合に増強されることが示されている(Hamelin BA、Allard S、Laplante L他、新規非定型抗精神病剤ジプラシドンの薬物動態学および薬力学に対する標準食事のタイミングの効果(The effect of timing of a standard meal on the pharmacokinetics and pharacodynamics of the novel atypical antipsychotic agent ziprasidone).Pharmacotherapy、1998;18(1):9〜15)。用量に応じて、食物と共に与えた場合に、ジプラシドンの吸収が約100%増強された(Miceli JJ、Wilner KD、Hansen RA、Johnson AC、Apseloff G、Gerber N、健常男性志願者における、非絶食条件下でのジプラシドンの単一および複数用量の薬物動態学(Single− and multiple−dose pharmacokinetics of ziprasidone under non−fasting conditions in healthy male volunteers)、Br J Clin Pharmacol.、2000;49、補遺1:5S〜13S)。吸収はまた、食物摂取と比較した薬物投与のタイミングにも依存し、食物の直後ではなく2時間後に摂取した場合に、吸収が低下した(Hamelin他、1998、上記)。
【0006】
典型的なFDAの標準の食事は、バターで炒めた卵2個、ベーコン2枚、トースト2枚とバター、4オンス(113.4グラム)のハッシュブラウンポテトおよび8オンス(236.6ミリリットル)の全乳からなる。この食事は、脂肪(食事の総カロリー含量の約50%)およびカロリー(約800〜1000kcal)がどちらも高く(工業用指針:食物効果の生体利用度および摂食性の生物学的同等性の研究(Guidance for Industry:Food−Effect Bioavailability and Fed Bioequivalent Studies)、メリーランド州Rockville:米国保健社会福祉省、食品医薬品局、医薬品評価センター(Center for Drug Evaluation and Research(CDER));2002)、予測される患者群の毎日の食事の現実的な再現というよりは、標準化した研究ツールである。臨床的な実施では、多くの患者は、カロリーまたは脂肪含量が実質的に異なる食事と共にジプラシドンを摂取する場合があり、そのような状況下での薬物吸収が、実験室条件下で得られたことを必ず反映すると仮定することは、誤りである。
【0007】
さらに、ジプラシドンの薬物動態学の以前の実験室での研究は、患者ではなく健常志願者で実施した短期調査であった(Hamelin他、1998、上記;Miceli他、2000、上記)。しばしば、統合失調症に罹患している患者の食事はより乏しく(McCreadie R、Macdonald E、Blacklock C他、スコットランドのニススデールにおける統合失調症患者の食事摂取:症例対照研究(Dietary intake of schizophrenic patients in Nithsdale,Scotland:case−control study)、BMJ、1998;317(7161):784〜785)、必ずしも指示されたとおりに医薬品を摂取せず、薬物投与が施設外の状況で起こる場合は、患者が適切な医薬品曝露を受けていない場合がある可能性が生じる。
【0008】
さらに、最近の市場調査では、医師の約25%が、自分の患者にジプラシドンを食物と共に摂取するように指示していないと報告している。さらに、患者にジプラシドンを食物と共に摂取するように指示している精神科医の50%が、患者に薬物を間食と共に摂取するように告げている。患者間のコンプライアンスも同様に乏しい。患者回答者の約40%が、その1週間のジプラシドン用量の少なくとも半分をカロリー源なしで摂取していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、統合失調症または双極性障害に罹患している患者などのジプラシドンから利点を得る患者に、有効なジプラシドン血漿レベルを提供する方法であって、ジプラシドンを摂食または絶食状態のどちらの患者にも投与し得る方法の必要性が存在する。それ故に、患者は、そのジプラシドン治療が効いていることを確実にするために、十分な量の食物を摂取したか、または食物を摂取したかどうかを心配する必要がなくなる。本発明は、患者が摂取した食物の量に依存しない、ジプラシドン剤形およびジプラシドンを有効に投与する方法を提供することによって、この必要性に取り組んでいる。したがって、本発明により、患者のコンプライアンスが大きく上昇し、患者の生活の質が改善され、その結果、実現されるジプラシドンの有効性がより高くなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、絶食状態のヒトにCNS障害を治療するために有効なジプラシドンの量を含む固体経口剤形を投与することを含み、前記投与後のヒトにおけるジプラシドンの血清濃度対時間曲線下面積(AUC0〜inf)が、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされるジプラシドン血清濃度対時間曲線下平均面積(AUC0〜inf)の70%〜140%である、ヒトにおいて中枢神経系(CNS)障害を治療する方法を提供する。
【0011】
一実施形態では、ジプラシドンの固体経口剤形を投与した後の絶食させたヒトにおけるジプラシドンの血清AUC0〜infは、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされる平均血清AUC0〜infの75%〜130%である。別の実施形態では、ジプラシドンの固体経口剤形を投与した後の絶食させたヒトにおけるジプラシドンの血清AUC0〜infは、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされる平均血清AUC0〜infの80%〜125%である。
【0012】
また、本発明は、ヒトが絶食状態または摂食状態であるかに依存しない、ヒトにおいて中枢神経系(CNS)障害を治療する方法も提供する。したがって、本発明は、絶食状態のヒトに前記CNS障害を治療するために有効なジプラシドンの量を含む固体経口剤形を投与することを含み、前記投与後のヒトにおけるジプラシドンの血清濃度対時間曲線下面積(AUC0〜inf)が、同じ量のジプラシドンを含有する同一の固体経口剤形を、摂食状態のヒトに投与した結果もたらされたであろうジプラシドン血清濃度対時間曲線下面積の70%〜140%である、ヒトにおいてCNS障害を治療する方法を提供する。一実施形態では、絶食させたヒトにおけるジプラシドンのAUC0〜infは、同じ量のジプラシドンを含有する同一の剤形を、摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされるAUC0〜infの75%〜130%である。別の実施形態では、絶食させたヒトにおけるジプラシドンのAUC0〜infは、同じ量のジプラシドンを含有する同一の剤形を、摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされる平均AUC0〜infの80%〜125%である。
【0013】
好ましくは、本発明によって提供される方法は、有効量のジプラシドンを含む固体経口剤形を、絶食状態のヒトに投与することによって、ヒトにおいてCNS障害を治療する方法であり、前記投与後のヒトにおけるジプラシドンの血清AUC0〜infは、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされる平均ジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%、好ましくは75%〜130%、より好ましくは80%〜125%であり、かつ、前記投与後のヒトにおける血清AUC0〜infが、同じ量のジプラシドンを含有する同一の固体経口剤形を、摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされる平均ジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%、好ましくは75%〜130%、より好ましくは80%〜125%でもある。
【0014】
本発明の別の態様では、本発明の方法は、絶食状態で投与した後の最大ジプラシドン血清濃度(Cmax)が、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされる平均最大ジプラシドン血清濃度(Cmax)の約30%以内であることを提供する。
【0015】
本発明の別の態様では、本発明の方法は、絶食状態で投与した後の最大ジプラシドン血清濃度(Cmax)が、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされる平均最大ジプラシドン血清濃度(Cmax)の約140%未満であることを提供する。
【0016】
また、本発明は、絶食状態のヒトに有効量のジプラシドンを含む固体経口剤形を投与することを含み、少なくとも20ng/mlの定常状態最小血液ジプラシドン濃度(Cmin)および330ng/ml未満の定常状態最大血液ジプラシドン濃度(Cmax)を提供する、ヒトにおいてCNS障害を治療する方法も提供する。
【0017】
また、本発明は、上述の方法で有用な有効量のジプラシドンを含む固体経口剤形も提供する。したがって、本発明には、本出願中で前述の方法のうちの任意のものを達成するために有用と記載された剤形の特定のものも含まれ得る。
【0018】
本発明の方法およびキットでは、剤形中のジプラシドンは、好ましくは、溶出速度が改善されたおよび/または溶解度が改善された形態のジプラシドンを含む。したがって、剤形中のジプラシドンの全部または一部分が、好ましくは、ジプラシドンの溶出速度が改善された形態および/またはジプラシドンの溶解度が改善された形態である。このコンテキストでは、「ジプラシドン形態」は「剤形」(「固体経口剤形」など)と明確に異なる。「ジプラシドン形態」とは、固体経口剤形中で使用するジプラシドン成分の状態をいう。例えば特定の「ジプラシドン形態」は、ジプラシドンの特定の塩もしくは水和物、特定の粒子径のジプラシドン、および/または特定の賦形剤と組み合わせたジプラシドンであり得る。「剤形」とは、患者に投与する用量の形状および構成をいう。例えば特定の「剤形」は、錠剤、カプセル、または再構成するための散剤であり得る。剤形により、その中のジプラシドン成分、例えば溶出速度が改善されたまたは溶解度が改善されたジプラシドン、の放出速度を改変することができる。
【0019】
したがって、本発明の方法およびキットでは、有用な固体経口剤形は、持続放出手段、遅延放出手段、即時放出部分、または任意のその組合せを含むことができる。好ましくは、そのような剤形中では、ジプラシドンは、溶解度が改善した形態または溶出速度が改善した形態である。ジプラシドンの溶解度が改善した形態または溶出速度が改善した形態は、例えば、シクロデキストリンと組み合わせたジプラシドン、ジプラシドンナノ粒子、トシル酸ジプラシドン、酒石酸ジプラシドン、またはジプラシドンとポリマーとの固体混合物であってよく、ジプラシドンの少なくとも一部分は半規則である。ジプラシドンのこれらの形態は、本明細書中に記載されている。より好ましくは、そのような固体経口剤形は、持続放出手段または遅延放出手段を含む(これは、これらが即時放出部分も含んでいてもよいことを意味する)。さらに好ましくは、そのような固体経口剤形は、持続放出手段を含む(これは、これらが遅延放出手段および/または即時放出部分を含んでいてもよいことを意味する)。
【0020】
持続放出手段は、例えば、マトリックス錠などにおけるようにマトリックスであることができる。好ましくは、マトリックス物質はHPMCである。
【0021】
したがって、本発明の方法およびキットでは、有用な固体経口剤形は、沈殿阻害剤と組み合わせたジプラシドンを含むことができる。沈殿阻害剤と組み合わせたジプラシドンは、好ましくは、溶解度が改善した形態または溶出速度が改善した形態のジプラシドン、例えばシクロデキストリンと組み合わせたジプラシドン、ジプラシドンナノ粒子、トシル酸ジプラシドン、酒石酸ジプラシドン、またはジプラシドンとポリマーとの固体混合物であり、ジプラシドンの少なくとも一部分は半規則である。
【0022】
本発明の他の態様では、本方法は、ジプラシドンの経口剤形を投与することを含み、剤形中のジプラシドンは2000nmより大きい平均粒子径を有する。本発明の別の態様では、剤形、キットおよび方法は、2000nm未満の平均粒子径を有するジプラシドンを含む。
【0023】
本発明の異なる実施形態では、ジプラシドン固体経口剤形には、即時放出部分、持続放出手段、遅延放出手段、または任意のその組合せが含まれる。
【0024】
また、本発明は、1種または複数のCNS障害を治療するための薬学的キットも提供する。キットは、本明細書中に記載の有効量のジプラシドンを含む固体経口剤形および固体経口剤形の投与を説明する指示、例えば「添付文書」を含む。
【0025】
一実施形態では、本発明は、
a)有効量のジプラシドンおよび薬学的に許容できる担体を含む固体経口剤形と、
b)食物と共に投与することを指定しない、(a)の剤形を経口投与するための指示と
を含み、前記固体経口剤形が、絶食状態のヒトに投与した場合に、そのヒトに、摂食状態のヒトのコホートに、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを投与した結果もたらされる平均ジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%である血清ジプラシドンAUC0〜infをもたらす
キットを提供する。
【0026】
別の実施形態では、本発明は、
a)有効量のジプラシドンおよび薬学的に許容できる担体を含む固体経口剤形と、
b)(a)の剤形を食物と共にまたは食物なしで投与し得ることを指示する、(a)の剤形を経口投与するための指示と
を含み、前記固体経口剤形が、絶食状態のヒトに投与した場合に、そのヒトに、摂食状態のヒトのコホートに、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを投与した結果もたらされる平均ジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%である血清ジプラシドンAUC0〜infをもたらす
キットを提供する。
【0027】
別の実施形態では、本発明は、
a)有効量のジプラシドンおよび薬学的に許容できる担体を含む固体経口剤形と、
b)食物と共に投与することを指定しない、(a)の剤形を経口投与するための指示と
を含み、前記固体経口剤形が、絶食状態のヒトに投与した場合に、そのヒトに、同じ量のジプラシドンを含有する同一のジプラシドン固体経口剤形を、摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされる平均ジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%である血清ジプラシドンAUC0〜infをもたらす
キットを提供する。
【0028】
別の実施形態では、本発明は、
a)有効量のジプラシドンおよび薬学的に許容できる担体を含む固体経口剤形と、
b)(a)の剤形を食物と共にまたは食物なしで投与し得ることを指示する、(a)の剤形を経口投与するための指示と
を含み、前記固体経口剤形が、絶食状態のヒトに投与した場合に、そのヒトに、同じ量のジプラシドンを含有する同一のジプラシドン固体経口剤形を、摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされる平均ジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%である血清ジプラシドンAUC0〜infをもたらす
キットを提供する。
【0029】
本発明のキット中の固体経口剤形は、好ましくは、溶出速度が改善された形態および/または溶解度が改善された形態のジプラシドンを含む。キット中の剤形中のジプラシドンは、沈殿阻害剤と組み合わせてもよい。好ましい実施形態では、本発明のキット中の固体経口剤形は、即時放出部分と組み合わせてもよい、持続放出手段および/または遅延放出手段を含む。別の実施形態では、固体経口剤形は、遅延放出手段および/または即時放出部分と組み合わせてもよい、持続放出手段を含む。
【0030】
また、本発明は、上述のように絶食状態のヒトにおいてCNS障害を治療するための方法、キットおよび固体経口剤形も提供し、ジプラシドン固体経口剤形は、ジプラシドンとポリマーとの固体混合物を含み、そのジプラシドンの少なくとも一部分は半規則状態である。一実施形態では、半規則ジプラシドンを含む固体混合物は、結晶の大きさが約200nm未満であるジプラシドンを含有する。さらに別の実施形態では、半規則ジプラシドンは、結晶の大きさが約20nmから約200nm未満であるジプラシドンを含有する。
【0031】
一実施形態では、半規則状態のジプラシドンを含むジプラシドンとポリマーとの固体混合物は、
a)塩酸ジプラシドン一水和物またはジプラシドン遊離塩基およびHPMCまたはHPMCASなどの濃度増強ポリマーを含む固形非晶質分散体を形成すること、
b)前記固形非晶質分散体中の前記ジプラシドンの移動性を増加させるために、前記分散体を加熱および/または移動性増強剤に曝露することによって前記固形非晶質分散体を処理すること、ならびに
c)前記ジプラシドンの少なくとも20%を半規則状態に変換すること
によって調製される。
【0032】
さらなる実施形態では、固体経口剤形は、国際公開公報WO2004/014342 A1号に記載のように、半規則塩酸ジプラシドンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)を含む固体混合物を含む即時放出錠剤である。別の実施形態では、固体経口剤形は、半規則塩酸ジプラシドンおよびHPMCASを含む固体混合物を含む持続放出錠剤である。一実施形態では、固体経口剤形は、半規則塩酸ジプラシドンおよびポリマー(例えばHPMCAS)を含む固体混合物を含み、好ましくはHPMCをマトリックス物質として含む、持続放出マトリックス錠である。そのような実施形態では、持続放出マトリックス錠は、好ましくは、錠剤を使用する水性環境に導入した後、最初の1/2時間以内にそれ中のジプラシドンの50重量%以下しか放出しない、より好ましくは最初の1時間以内に50重量%以下しか放出しない。別の実施形態では、固体経口剤形は、半規則ジプラシドン遊離塩基およびヒドロキシプロピルメチルセロース(HPMC)を含む固形分散体を含む即時放出錠剤である。さらに別の実施形態では、固体経口剤形は、即時放出部分および持続放出部分を含み、持続放出部分は、半規則塩酸ジプラシドンおよびHPMCASを含む固形分散体を含む。
【0033】
別の実施形態では、固体経口剤形は、半規則塩酸ジプラシドンおよびHPMCASを含む固形分散体を含み、好ましくはHPMCをマトリックス物質として含み、マトリックス錠は、錠剤を使用する水性環境に導入した後、1/2時間以内、好ましくは1時間以内に、錠剤中に最初に存在するジプラシドンの50重量%以下しか放出しない、持続放出マトリックス錠である。
【0034】
さらに別の実施形態では、固体経口剤形は、米国特許第5,134,127号に記載のように、ジプラシドンおよびシクロデキストリンを含む固形分散体を含む即時放出錠剤である。別の実施形態では、固体経口剤形は、米国特許第6,232,304号、第5,874,418号および第5,376,645号に記載のように、ジプラシドンおよびシクロデキストリンを含む固形分散体を含む即時放出錠剤である。さらに別の実施形態では、固体経口剤形は、米国特許第5,134,127号に記載のように、ジプラシドンおよびシクロデキストリンを含む固形分散体を含む持続放出錠剤である。別の実施形態では、固体経口剤形は、米国特許第6,232,304号、第5,874,418号および第5,376,645号に記載のように、ジプラシドンおよびシクロデキストリンを含む固形分散体を含む持続放出錠剤である。一実施形態では、固体経口剤形は、持続放出マトリックス錠である。好ましい実施形態では、マトリックス物質は、HPMCを含む。さらに別の実施形態では、固体経口剤形は、即時放出部分および持続放出部分を含み、持続放出部分は、ジプラシドンおよびシクロデキストリンを含む固形分散体を含む。
【0035】
別の実施形態では、ジプラシドンナノ粒子は、
a)アトリションミルまたは高圧ホモジナイズなどの当分野で周知の技術によってジプラシドンナノ粒子の懸濁液を調製すること、
b)懸濁液を凍結乾燥させるまたは懸濁液を噴霧乾燥させて固形ジプラシドンナノ粒子を形成すること
によって調製される。
【0036】
さらなる実施形態では、固体経口剤形は、ジプラシドンナノ粒子を含み、好ましくはHPMCをマトリックス物質として含み、マトリックス錠は、錠剤を使用する水性環境に導入した後、1/2時間時間以内、好ましくは1時間以内に、錠剤中に最初に存在するジプラシドンの50重量%以下しか放出しない、持続放出マトリックス錠である。別の実施形態では、固体経口剤形は、即時放出部分および持続放出部分を含み、持続放出部分は、ジプラシドンナノ粒子を含む。
【0037】
別の実施形態では、固体経口剤形は、半規則ジプラシドンおよびポリマーを含む固形分散体の粒子でコーティングしたビーズを含有するカプセルである。一実施形態では、固形分散体の粒子は、半規則ジプラシドンおよびポリマーを含む固形分散体を粉砕することによって得る。別の実施形態では、固形分散体の粒子は、半規則塩酸ジプラシドンおよびポリマーまたは半規則ジプラシドン遊離塩基とポリマーとの固形分散体から得る。別の実施形態では、ポリマーは、HPMCASまたはHPMCである。別の実施形態では、半規則ジプラシドンとポリマーとの固形分散体の粒子は、腸溶コーティングでコーティングする。
【0038】
別の実施形態では、固体経口剤形は、半規則ジプラシドンおよびポリマーを含む固形分散体の粒子でコーティングしたビーズを含有する錠剤である。錠剤は、薬学的に許容できる賦形剤と半規則ジプラシドンおよびポリマーを含む固形分散体の粒子でコーティングしたビーズとを圧縮することによって調製する。別の実施形態では、固形分散体粒子でコーティングしたビーズは、腸溶コーティングでさらにコーティングする。
【0039】
本発明の別の実施形態では、固体経口剤形、ならびにそれを含む方法およびキットは、トシル酸ジプラシドンまたは酒石酸ジプラシドンを含む。そのような実施形態では、固体経口剤形は、例えば即時放出錠剤であり得る。別の例として、トシル酸ジプラシドンまたは酒石酸ジプラシドンを含む固体経口剤形は、好ましくはHPMCをマトリックス物質として含む、持続放出マトリックス錠であり得る。別の例として、トシル酸ジプラシドンまたは酒石酸ジプラシドンを含む固体経口剤形は、トシル酸ジプラシドンまたは酒石酸ジプラシドンでコーティングしたビーズを含む。酒石酸ジプラシドンまたはトシル酸ジプラシドンでコーティングしたビーズは、腸溶コーティングでさらにコーティングしていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】塩酸ジプラシドンとHPMCASとの固形分散体を含み、ジプラシドンが半規則状態である、3つの異なる持続放出マトリックス錠(実施例20、21および22)の、in vitro溶出試験の結果を示す図である。
【図2】0.05MのNaH2PO4媒体中、2%(w/v)のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を加え、pH7.5に調節し、パドルが75rpmの、実施例23、24および25(ジプラシドンの結晶化した噴霧乾燥した分散体を含有する持続放出マトリックス錠)の、in vitro溶出試験の結果を示す図である。
【図3】ジプラシドンの結晶化した噴霧乾燥した分散体を含有する錠剤である製剤D1(実施例26)の、in vitro溶出試験の結果を示す図である。
【図4】Eudragit(登録商標)腸溶コーティングをほどこした、ジプラシドンの結晶化した噴霧乾燥した分散体でコーティングしたビーズであるB6形(実施例28)の、in vitro溶出試験の結果を示す図である。
【図5】HPMCAS腸溶コーティングをほどこした、ジプラシドンの結晶化した噴霧乾燥した分散体でコーティングしたビーズであるB5形(実施例29)の、in vitro溶出試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
ジプラシドンとは、以下の構造を有する既知の化合物、5−[2−[4−(1,2−ベンズイソチアゾール−3−イル)−1−ピペラジニル]エチル]−6−クロロ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オンである:
【0042】
【化1】
ジプラシドンおよびその合成方法は、どちらもその全体が本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第4,831,031号および第5,312,925号を含めた、数々の特許文献に開示されている。ジプラシドンは、神経遮断剤をして有用性を持ち、したがって、とりわけ抗精神病剤として有用である。ジプラシドンは、典型的には、患者の必要性に応じて、40mgA〜160mgAの1日用量で投与する。「1日用量」とは、患者に1日に投与するジプラシドンのmgAの合計量を意味する。
【0043】
用語「ジプラシドン」には、本明細書中では、本明細書中に別段に指定しない限りは、化合物の任意の薬学的に許容できる形態が含まれると理解されるべきである。「薬学的に許容できる形態」とは、溶媒和物、水和物、同形体、多型体、不正形、中性形、酸付加塩形、およびプロドラッグを含めた、任意の薬学的に許容できる誘導体または変型を意味する。ジプラシドンは、結晶形または非晶形で存在し得る。ジプラシドンの薬学的に許容できる酸付加塩は、慣用の様式で、遊離塩基の溶液または懸濁液を約1化学当量の薬学的に許容できる酸で処理することによって、調製する。慣用の濃度および再結晶化技術を塩の単離に用いる。適切な酸の例は、酢酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、メシル酸、トシル酸、安息香酸、ケイ皮酸、フマル酸、硫酸、リン酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、スルファミン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸、および関連する酸である。ジプラシドンの好ましい形態には、遊離塩基、塩酸ジプラシドン一水和物、メシル酸ジプラシドン三水和物、酒石酸ジプラシドン、およびトシル酸ジプラシドンが含まれる。
【0044】
本発明の「固体経口剤形」とは、薬学的に許容できる固体経口剤形であり、これは、この剤形がヒトに投与するために安全であり、剤形中のすべての賦形剤が薬学的に許容できる、言い換えればヒトの摂取に安全であることを意味する。
【0045】
ヒトまたは他の哺乳動物に関して本明細書中で使用する語句「絶食状態」とは、別段に指定しない限りは、ヒトまたは他の哺乳動物が、ジプラシドン固体経口剤形を摂取する前の少なくとも2時間、およびジプラシドン固体経口剤形を摂取した後の少なくとも2時間、500カロリーまたは500カロリーを超えて摂取していないことを意味する。好ましい「絶食状態」とは、ジプラシドン固体経口剤形を摂取する前の少なくとも2時間、250カロリーまたは250カロリーを超えて摂取しておらず、かつ、ジプラシドン固体経口剤形を摂取した後の少なくとも2時間、250カロリー以上を摂取しないヒトをいう。例えば、例示として、「絶食状態」のヒトは、投薬前の2時間以内に0カロリーを摂取し、投薬後の2時間に100カロリーしか摂取しない場合がある。
【0046】
本明細書中で使用する用語「摂食状態」とは、別段に指定しない限りは、投薬前の2時間および本発明のジプラシドン固体経口剤形の投薬に続く2時間からなる期間内に、少なくとも500カロリーを摂取したヒトまたは他の哺乳動物をいう。別の実施形態では、「摂食状態」とは、前記期間内に少なくとも800カロリーを摂取したヒトまたは他の哺乳動物をいう。別の実施形態では、「摂食状態」とは、前記期間内に少なくとも1000カロリーを摂取したヒトまたは他の哺乳動物をいう。さらに別の実施形態では、「摂食状態」とは、前記期間内に米国食品医薬品局(FDA)の標準の高脂肪朝食(または匹敵する量の脂肪およびカロリーを含有する他の食事)を食べたヒトをいう。典型的なFDAの標準朝食は、バターで炒めた卵2個、ベーコン2枚、トースト2枚とバター、4オンス(113.4グラム)のハッシュブラウンポテトおよび8オンス(236.6ミリリットル)の全乳からなる。この食事は、脂肪(食事の総カロリー含量の約50%)およびカロリー(約800〜1000カロリー)がどちらも高い。
【0047】
絶食させたヒトに任意の特定のジプラシドン経口剤形を投与した後に、絶食させたヒトで得られるジプラシドンのAUC(0〜inf)およびCmaxは、臨床試験においてヒト対象コホートでその剤形を試験する手段によって決定することができる。言い換えれば、任意の特定のジプラシドン剤形を投与することによって個々のヒトにもたらされるジプラシドンAUCおよびCmaxは、その特定の剤形を用いたヒトのコホートの臨床試験を実施したことから得られた平均AUCおよびCmaxによって予測するか、またはそれとして定義することができる。臨床試験は、米国食品医薬品局(米国FDA)によって食物効果の生体利用度および摂食性の生物学的同等性の研究(Food−Effect Bioavailability and Fed Bioequivalent Studies)に関して発行された指針に従って実施することができる。
【0048】
そのような臨床試験では、試験ジプラシドン固体経口剤形を、少なくとも10時間何も食物を食べておらず、剤形を投与した後少なくとも4時間何も食物を食べないヒトのコホートに、投与することができる。比較のために、別のヒトのコホートに、試験剤形と同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセル、または試験ジプラシドン固体経口剤形と同一のジプラシドン剤形を、摂食状態で、例えば米国食品医薬品局(FDA)の標準の高脂肪朝食、またはそれに匹敵する量の脂肪およびカロリーを含有する他の食事を食べ始めた約30分後に(コホートは、朝食または他の食事を開始した約30分以内に、朝食または他の食事を食べ終わる)投与することができる。続いて、コホートを「交代」させ、絶食プロトコルで試験したコホートを摂食プロトコルに従って試験し、摂食プロトコルで試験したコホートを絶食プロトコルに従って試験することができる。それぞれのコホートで摂食または絶食プロトコルを交代させる前に、時折「ウォッシュアウト期間」とも呼ばれる最初の投薬の完了後に少なくとも7日間の期間を経過させることが、推奨される。
【0049】
血清濃度対時間曲線下平均面積(AUC)の計算は薬学分野で周知の手順であり、例えば、Welling、「薬物動態学プロセスおよび数学(Pharmacokinetics Processes and Mathematics)」、ACS Monograph、185(1986)に記載されている。
【0050】
本明細書中で言及する「対照ジプラシドン即時放出経口カプセル」とは、別段に指定しない限りは、Pfizer,Inc.によって市販されている経口投与用のGEODON/ZELDOX(商標)カプセル、またはジプラシドンの固体経口剤形を比較するために有用であり得るその均等物である。GEODON/ZELDOX(商標)市販カプセルは、約40ミクロン未満の体積平均直径(VMD)粒子径を有する結晶塩酸ジプラシドン一水和物を含有する。また、GEODON/ZELDOX(商標)カプセルは、ラクトース、アルファ化デンプン、およびステアリン酸マグネシウムも含有する。そのような種類のカプセルは、例えば、その全体が本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第6,150,366号の表1に記載されている。例えば、米国特許第6,150,366号の表1に記載されている、それに記載されているように約20ミクロンのVMDを有する塩酸ジプラシドン一水和物を含有するカプセルを、本発明の目的のための対照ジプラシドン即時放出経口カプセルとして使用することができる。
【0051】
VMDとは、試料中のすべての粒子(ジプラシドン粒子など)の平均体積の体積を有する球状粒子の直径をいい、その体積は、球状形状であるという仮定に基づいて推定する。粒子径の分布は、当業者に知られているMalvern光散乱によって測定することができる。
【0052】
また、本発明は、上述のように、ヒトが摂食状態の場合に同一のジプラシドン固体経口剤形によってもたらされるジプラシドンAUCの70%〜140%である、ヒトが絶食状態の場合のジプラシドンAUCをもたらす、ジプラシドン固体経口剤形を使用することによる、ヒトにおけるCNS障害の治療にも関する。この観点から、「同一の」ジプラシドン固体経口剤形とは、同一のジプラシドン製剤(例えば同じ塩形態および粒子径であり、存在する場合は同じ量の同じ賦形剤が含まれる)中、および同一の剤形(例えば同じ量の同じ賦形剤が含まれる)中の、同一の量のジプラシドンを含有するジプラシドン固体経口剤形をいう。
【0053】
一般に、本発明の目的ための「ヒト」とは、少なくとも12歳の対象をいう。
【0054】
ヒトの血清中のジプラシドンは、当分野で知られている方法によって検出および測定し得る。例えば、ジプラシドンを、Miceli他、健常志願者における筋肉内ジプラシドンの薬物動態学、安全性、および忍容性(Pharmacokinetics,Safety,and Tolerability of Intramuscular Ziprasidone in Healthy Volunteers)、J Clin Pharmacol、2005;45:620〜630;ならびにJaniszewski 他、固相抽出および細口径の高速液体クロマトグラフィーを用いた、抗精神病剤CP−88,059の高感度アッセイの開発および妥当性確認(Development and Validation of a High−senstivity Assay for an Antipsychotic Agent,CP−88,059,with Solid−phase Extraction and Narrow−bore,High−performance Liquid Chromatography、J Chromatogr.、1995;668:133〜139に記載のように検出および測定し得る。
【0055】
本明細書中で使用する用語「mgA」および「μgA」および「重量%A」とは、それぞれ活性ジプラシドンのミリグラム、マイクログラム、および重量パーセントを意味し、「活性」ジプラシドンとは、412.94g/モルの分子量を有する、塩でない、水和していない遊離塩基の形態のジプラシドンをいう。
【0056】
ジプラシドンの溶出速度が改善された形態および溶解度が改善された形態:
本発明の剤形、方法、およびキット中のジプラシドンは、好ましくは、溶出速度が改善された形態または溶解度が改善された形態のジプラシドンを含む。本発明者らは、使用環境において十分に速い速度、少なくともGEODON/ZELDOX(商標)として知られる対照即時放出経口カプセルにおけるジプラシドンよりも速い速度で溶出する、もしくは、使用環境において十分に高い溶解度、少なくともGEODON/ZELDOX(商標)即時放出カプセルにおけるジプラシドンの溶解度よりも高い溶解度を有する、または両方の、ジプラシドン形態を使用することで、有効な全身ジプラシドン曝露を得るためにジプラシドンを食物と共に、例えば約500カロリー以上と共に摂取する要件が排除されることを見出した。さらに、そのような溶出速度が改善されたまたは溶解度が改善された形態を使用して、本発明で用いる剤形は、食物なしで、例えば約250カロリー以下(例えば0カロリー)と共に摂取してもよく、または食物と共に摂取してもよい。
【0057】
上述のように、GEODON/ZELDOX(商標)即時放出カプセルは、約40ミクロン以下、好ましくは約5ミクロン〜約30ミクロンのVMD粒子サイズを有する結晶塩酸ジプラシドン一水和物を含有する。したがって、ジプラシドンの「溶解度が改善された形態」とは、使用環境における約40ミクロン以下、好ましくは約5ミクロン〜約30ミクロンのVMD粒子径を有する結晶塩酸ジプラシドン一水和物の溶解度よりも高い、使用環境における溶解度を有する、ジプラシドン形態である。ジプラシドンの「溶出速度が改善された形態」とは、使用環境における約40ミクロン以下、好ましくは約5ミクロン〜約30ミクロンのVMD粒子サイズを有する結晶塩酸ジプラシドン一水和物の溶出速度よりも速い速度で、使用環境において溶出する、ジプラシドン形態である。ジプラシドン形態は、溶解度が改善され、かつ溶出速度が改善されていてもよい。
【0058】
好ましくは、ジプラシドン形態は、対照GEODON/ZELDOX(商標)即時放出カプセル中のジプラシドン形態よりも、溶出速度または溶解度が少なくとも約1.25倍高い。対照GEODON/ZELDOX(商標)即時放出カプセル中のジプラシドン形態よりもさらに高い溶出速度または溶解度を有するジプラシドン形態を利用することができる。したがって、ジプラシドン形態は、対照GEODON/ZELDOX(商標)即時放出カプセル中のジプラシドン形態の溶出速度または溶解度の約2倍、3倍、5倍、10倍以上であり得る。
【0059】
ジプラシドンの溶解度が改善した形態には、それだけには限定されないが、特定の塩、非晶形、ナノ結晶形、半規則薬物形態、固形非晶質分散形、吸着薬物形態、シクロデキストリンおよび薬物の形態、ならびに自己乳化形が含まれ得る。
【0060】
溶出速度が改善した形態には、それだけには限定されないが、単独または沈殿阻害剤と組み合わせた上述の溶解度が改善した形態、単独または沈殿阻害剤と組み合わせた粒子径を小さくした結晶形、単独または1種もしくは複数の沈殿阻害剤と一緒にした粒子径を小さくした上述の溶解度が改善した形態が含まれ得る。
【0061】
使用環境は、それだけには限定されないがヒトを含めた哺乳動物の胃腸(GI)管などの、in vitroまたはin vivo使用環境であり得る。in vivo使用環境は水性環境であり、胃腸管内の任意の位置、例えば、胃内または腸管の任意の部分であり得る。in vitro使用環境は、哺乳動物の胃腸管内の位置をモデリングするように設計した環境であり得るため、水性である。本発明のin vitro使用環境として役割を果たすことができる溶出試験媒体の例には、リン酸緩衝溶液(PBS)、絶食させた十二指腸モデル(MFD)溶液、模擬胃および模擬腸管緩衝溶液、ならびに水が含まれる。適切なPBS溶液は、20mMのNa2HPO4、47mMのKH2PO4、87mMのNaCl、および0.2mMのKClを含み、NaOHでpH6.5に調節した水溶液である。適切なMFD溶液は、同じPBS溶液であるが、7.3mMのタウロコール酸ナトリウムおよび1.4mMの1−パルミトイル−2−オレイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンも存在する。適切な模擬胃緩衝溶液は、pH2.0の0.01NのHCl溶液である。適切な模擬腸管緩衝溶液には、(1)50mMのNaH2PO4および2重量%のラウリル硫酸ナトリウム、pH7.5に調節、(2)50mMのNaH2PO4および2重量%のラウリル硫酸ナトリウム、pH6.5に調節、ならびに(3)6mMのNaH2PO4、150mMのNaCl、および2重量%のラウリル硫酸ナトリウム、pH6.5に調節が含まれる。
【0062】
ジプラシドン形態が、本発明の目的のための溶出速度が改善された形態または溶解度が改善された形態であるかどうかを決定するために用いることができるアッセイの例は、以下のようなin vitro溶出試験である:
【0063】
in vitro溶出試験は、ジプラシドンの試験形態を、pH2.0の0.01NのHClの模擬胃緩衝液(GB)からなる溶出試験媒体に加えることによって行い得る。剤形が溶出速度または溶解度の改善度合の評価を妨げないように、提案の溶出速度が改善されたまたは溶解度が改善されたジプラシドン形態を、剤形とは独立させて溶出試験するように注意することが重要である。
【0064】
そのような試験では、2つの評価項目を評価する:1)試験媒体中のジプラシドンの最大溶解薬物濃度(MDC)、および2)in vitro溶出試験における溶出したジプラシドンの濃度対時間曲線下面積。より詳細には、in vitro使用環境では、使用環境への導入後の約0から約270分間の間の任意の90分間にわたり溶出したジプラシドンの濃度を測定する。
【0065】
水溶液中のジプラシドンの増大した溶出速度を評価するためのin vitro試験は、ジプラシドンがすべて溶出した場合、ジプラシドンの理論濃度が、対照ジプラシドン形態によってもたらされる平衡濃度を少なくとも2倍、好ましくは少なくとも10倍で超えるように十分な量の試験ジプラシドン形態を試験媒体にかきまぜながら加えることによって実施することができる。この濃度で試験を行うことにより、ジプラシドンのMDCを決定できることが確証される。
【0066】
その後、溶出速度を確定できるように、試験媒体をサンプリングし、試験媒体中のジプラシドン濃度を時間に対してプロットすることによって、溶出したジプラシドンの濃度を時間の関数として測定する。MDCは、試験の期間にわたって測定された溶出したジプラシドンの最大値であるとする。水性AUCは、組成物を水性使用環境に導入した時間(時間=0)から使用環境に導入した270分間後(時間=270分)の間の任意の90分間にわたる濃度対時間の曲線を積分することによって計算し得る。典型的には、組成物がそのMDCに素早く達する場合(約30分未満)、AUCを計算するために使用する時間間隔は、時間=0から時間=90分間までである。
【0067】
そのような試験中、「溶出した薬物」の濃度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、紫外線(UV)吸収、または当分野で知られている他の標準方法を含めた標準の分析技術を用いて測定すべきである。HPLCなどの溶液技術を使用する場合、誤った決定を与える可能性のある大きな薬物粒子を避けるために、試験溶液を濾過または遠心分離すべきである。「溶出した薬物」とは、典型的には、0.45μmのシリンジフィルターを通る物質、または、遠心分離後に上清中に留まる物質とする。濾過は、Scientific ResourcesからTITAN(登録商標)の商標で販売されている13mm、0.45μmのジフッ化ポリビニリジン製シリンジフィルターを用いて実施することができる。遠心分離は、典型的には、ポリプロピレン製マイクロ遠心管中、13,000Gで60秒間遠心分離することによって実施する。他の類似の濾過または遠心分離方法を用いることができ、有用な結果が得られる。例えば、他の種類の精密濾過を用いることにより、上で指定したフィルターで得られたよりもわずかに高いまたは低い値(±10〜40%)が得られ得るが、それでも、好ましい溶出速度が改善された形態の同定が可能である。UVによって濃度を測定する場合、溶出速度が改善された製剤中の他の賦形剤がジプラシドンのUV吸光度を妨げないことを確実にするために、当業者によって知られているように注意を払うべきである。本発明者らは、in vitro溶出試験媒体において溶出したジプラシドンの濃度を決定するためにUVプローブが有効であることを見出した。
【0068】
試験ジプラシドン形態の溶解度および溶出速度を確定するための溶出試験の具体例は、以下のとおりである:最初に、ジプラシドンがすべて溶出した場合にジプラシドンの濃度が200μgA/mLとなるように、十分な量の試験形態を溶解フラスコに入れる。その後、pH2.0の模擬GB溶液を加え、混合物を100rpmの攪拌速度で攪拌した。試験は37℃で行った。その後、UVプローブを用いて、溶出したジプラシドンの濃度を少なくとも90分間にわたって測定した。(1)対照よりも高いMDC、(2)対照よりも高いAUC90、または(3)(1)および(2)の両方のうち、少なくとも1つを提供した場合に、製剤はジプラシドンの溶解度が改善された形態または溶出速度が改善された形態であるとみなす。上述の対照製剤は、GEODON/ZELDOX(商標)市販カプセルで使用されている結晶ジプラシドンHCl一水和物である。
【0069】
一実施形態では、本発明で用いるジプラシドン形態は、ジプラシドンの塩形態である。一部の低溶解度の薬物を、使用環境において薬物の濃度を薬物の別の塩形態と比較して一時的に改善させる、可溶性の高い塩形態で製剤し得ることが知られている。ジプラシドンのそのような塩形態の例は、トシル酸および酒石酸塩である。これらの塩は、実施例中に例示するように、胃緩衝液媒体中でより高い持続した溶解度を有する。別の実施形態では、ジプラシドン形態は、約10ミクロン未満、好ましくは約5ミクロン未満の体積重量平均粒子径を有するジプラシドンを含む。標準の結晶ジプラシドンHClは、典型的には、ブロックまたは針の晶癖である。そのような結晶の大きさは、一般的に長さが30ミクロンで幅が4ミクロンであるが、広い範囲が観測される。これらの結晶をMalvern Mastersizerによって分析し、湿スラリーとして試験した場合、体積−重量平均直径は約10ミクロンである。ジプラシドンの粒子径を小さくすることによりその溶出速度が改善され、したがって、水性使用環境において、より大きな結晶で達成される濃度と比較して少なくとも一時的に増大した溶出ジプラシドンの濃度が提供される。そのような小さな粒子は、慣用の研磨および粉砕技術によって達成し得る。好ましい一プロセスでは、ジプラシドンをジェット粉砕する。ジェット粉砕したジプラシドンは、約5ミクロン未満、好ましくは約3ミクロン未満の体積重量平均直径を有し得る。
【0070】
別の実施形態では、ジプラシドンはナノ粒子の形態であり得る。用語「ナノ粒子」とは、一般に、有効平均結晶の大きさが約2000nm未満、より好ましくは約1000nm未満である、粒子形態のジプラシドンをいう。別の実施形態では、ジプラシドン粒子は約500nmまたはそれ以下である。より好ましくは、ジプラシドンナノ粒子は約120nm〜約400nmである。さらに別の実施形態では、ジプラシドンナノ粒子は約22nm〜約350nmである。別の実施形態では、ジプラシドンナノ粒子は約250nmまたは約250nm未満である。別の実施形態では、ジプラシドンナノ粒子は約100nmまたは約100nm未満である。ジプラシドンナノ粒子は、1つまたは複数の表面安定化剤を含み得る。ジプラシドンナノ粒子およびその調製方法は、どちらもその全体で本明細書中に参考として組み込まれている国際公開公報WO2006/109183号および国際公開公報WO2006/109177号に記載されている。
【0071】
本発明で有用なさらに別のジプラシドン形態は、非晶形のジプラシドンである。好ましくは、ジプラシドンの少なくとも大部分が非晶質である。「非晶質」とは、単純に、ジプラシドンが非結晶状態であることを意味する。本明細書中で使用する用語「大部分」とは、剤形中の薬物の少なくとも60重量%が、結晶形ではなく非晶形であることを意味する。好ましくは、ジプラシドンは実質的に非晶質である。本明細書中で使用する「実質的に非晶質」とは、結晶形のジプラシドンの量が約25重量%を超えないことを意味する。より好ましくは、ジプラシドンは「ほぼ完全に非晶質」であり、これは、結晶形のジプラシドンの量が約10重量%を超えないことを意味する。結晶ジプラシドンの量は、粉末X線回折(PXRD)、走査電子顕微鏡(SEM)分析、示差走査熱量(DSC)、または任意の他の標準の定量的測定によって測定し得る。
【0072】
ジプラシドンの非晶形の例には、本明細書中に参考として組み込まれている、同一出願人による米国公開特許出願第2002/0009494A1号に開示されているものなどの、ポリマー中のジプラシドンの固形非晶質分散体が含まれる。別の実施形態では、ジプラシドンは、本明細書中に参考として組み込まれている、同一出願人による米国公開特許出願第2003/0054037A1号に開示されているものなど、非晶形で固形基質上に吸着されていてもよい。さらに別の実施形態では、非晶質ジプラシドンは、本明細書中に参考として組み込まれている、同一出願人による米国特許出願第2003/0104063A1号に開示されているものなど、マトリックス物質を用いて安定化し得る。
【0073】
ジプラシドンを含む固形非晶質分散体では、分子分散体中で用いるポリマーは、任意の薬学的に許容できるポリマーであり得る。用語「ポリマー」は慣用的に用いられ、これは、一緒に結合されてより大きな分子を形成するモノマーからなる化合物を意味する。ポリマーは、一般に、一緒に結合された少なくとも約20個のモノマーからなる。したがって、ポリマーの分子量は、一般に約2000ダルトン以上である。ポリマーは、有害な様式でジプラシドンと化学反応しないという意味で不活性であり、薬学的に許容できるものであるべきである。例示的なポリマーには、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、ポロキサマー(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーとしても知られる)、ポリビニルピロリドン(PVP)、およびその混合物が含まれる。一実施形態では、ポリマーはHPMCASである。分散体中の薬物の少なくとも大部分が非晶質である。好ましくは、分散体中の薬物は「実質的に非晶質」であり、これは、結晶形の薬物の量が約25%を超えないことを意味する。より好ましくは、分散体中の薬物は「ほぼ完全に非晶質」であり、これは、結晶形の薬物の量が約10%を超えないことを意味する。固形非晶質分散体中に存在するポリマーの量に対するジプラシドンの量は、0.01から約4まで(例えば、1重量%の薬物〜80重量%の薬物)、薬物−対−ポリマーの重量比と広く変動し得る。一実施形態では、薬物−対−ポリマーの比は、約0.05(4.8重量%の薬物)より高く、約3(75重量%の薬物)以下である。別の実施形態では、薬物−対−ポリマーの比の範囲は、0.11(10重量%の薬物)〜2(67重量%の薬物)である。別の実施形態では、薬物−対−ポリマーの比の範囲は、0.11(10重量%の薬物)〜1(50重量%の薬物)である。別の実施形態では、薬物−対−ポリマーの比の範囲は、0.15(13重量%の薬物)〜0.7(41重量%の薬物)である。さらに別の実施形態では、薬物−対−ポリマーの比の範囲は、0.15(13重量%の薬物)〜0.6(37.5重量%の薬物)である。
【0074】
非晶質の薬物は、固形非晶質分散体中に純相として、ポリマー全体にわたって均一に分布した薬物の固溶体として、またはこれらの状態もしくはそれらの間の状態の任意の組合せとして存在することができる。一実施形態では、非晶質の薬物の少なくとも一部分およびポリマーが固溶体として存在する。これは、純粋な薬物および純粋なポリマーの中間である固形非晶質分散体の少なくとも1つのガラス転移温度の存在によって示され得る。別の実施形態では、分散体は、非晶質の薬物がポリマーにわたって可能な限り均一に分散されているように、実質的に均一である。本明細書中で使用する「実質的に均一」とは、固形分散体内の比較的純粋な非晶質ドメイン中に存在する薬物の画分が、20%未満の桁で、比較的小さいことを意味する。さらに別の実施形態では、分散体は完全に均一であり、これは、純粋な非晶質ドメイン中の薬物の量が薬物の合計量の10%未満であることを意味する。
【0075】
固形非晶質分散体は、以下のような溶媒に基づいたプロセスによって作製し得る。薬物、ポリマー、および溶媒を含む供給溶液を形成する。その後、溶媒を急速に供給溶液から除去して、薬物およびポリマーの粒子を形成する。溶媒を急速に除去するための適切なプロセスには、噴霧乾燥、噴霧コーティング、および蒸発が含まれる。固形非晶質分散体を形成するための噴霧乾燥プロセスのさらなる詳細は、上記の米国公開特許出願第2002/0009494A1号に開示されている。
【0076】
本発明に有用な別の形態では、ジプラシドンは、本明細書中に参考として組み込まれている国際公開公報WO2004/014342号に開示されているものなどのように、半規則状態である。そのような実施形態では、ジプラシドンはポリマーとの固体混合物中で存在し、ジプラシドンの少なくとも一部分は「半規則」である。「半規則」とは、(1)ジプラシドンがバルク結晶形単独のジプラシドンよりも規則性が低く、かつ(2)ジプラシドンが非晶質の薬物よりも規則性が高いことを意味する。半規則状態は、非常に小さな結晶形(例えば約200nm未満)、結晶中にポリマーを取り込んだ結晶ジプラシドン、多数の結晶欠陥を含有する結晶、またはシート、チューブ、もしくはジプラシドンが規則性を有するが最も低い溶解度のバルク結晶形単独ではない他の構造の形態をとる半結晶構造であり得る。一実施形態では、半規則ジプラシドンは、約500nm未満の結晶を有する。別の実施形態では、半規則ジプラシドンは、約400nm未満の結晶を有する。さらに別の実施形態では、半規則ジプラシドンは、約200nm未満の結晶を有する。さらに別の実施形態では、半規則ジプラシドンは、約20nmから約200nm未満の結晶を有する。半規則のジプラシドンは、バルク結晶ジプラシドン(すなわち、約40μm以下の体積平均直径[VMD]を有する結晶ジプラシドン)および非晶質ジプラシドンのどちらとも明確に異なる物理的特徴を示す。ジプラシドンが半規則であることは、物質が結晶または非晶質であるかを特徴づけるために使用する慣用技術によって実証し得る。一実施形態では、ジプラシドンは、組成物が示す粉末X線回折パターンが、約40μm以下のVDMを有するバルク結晶形のスジプラシドンによって示される相当するピークの少なくとも1.1倍の半値全幅を有する少なくとも1つのピークを有する場合に、半規則である。半値全幅はさらに広くてもよく、また、バルク結晶形単独の薬物の対応する主要ピークの少なくとも1.25倍、2倍または3倍もしくはそれ以上であってもよい。そのような粒子では、ジプラシドンの少なくとも一部分、ポリマーの一部分、または両方は、非結晶状態である。ポリマーは、固形非晶質分散体について上述したポリマーなど、事実上任意のポリマーであることができる。
【0077】
半規則ジプラシドンを含有する組成物を形成する一方法は、前述のように、最初に固形非晶質分散体を形成する方法である。その後、分散体を水などの移動性増強剤に曝露し、その後、熱などを用いて処理して、分散体中の非晶質ジプラシドンの少なくとも一部分を半規則状態に変換する。この様式で作製した場合、半規則ジプラシドン組成物も結晶化した噴霧乾燥した分散体(CSDD)と呼ぶ。一実施形態では、固形非晶質分散体は、Tg/Tが約1.0以下であるような温度Tまで加熱し、Tgは、移動性増強剤の存在下における固形非晶質分散体のガラス転移温度であり、TおよびTgはケルビンで測定する。別の実施形態では、固形非晶質分散体は、水の存在下における固形非晶質分散体のガラス転移より高い温度で、水に曝露する。半規則薬物を作製する方法およびジプラシドンが半規則状態であることを確認する技術(PXRD、分光分析および熱技術が含まれる)の詳細は、上記国際公開公報WO2004/014342号に開示されている。
【0078】
本発明で有用な別のジプラシドン形態は、シクロデキストリンと組み合わせたジプラシドンを含む。ジプラシドンおよびシクロデキストリンは、互いとの様々な組合せであることができる。例えば、ジプラシドンおよびシクロデキストリンは、包接複合体を形成し得る。別の例では、ジプラシドンおよびシクロデキストリンは、互いとの物理的な混合物である。ジプラシドンとシクロデキストリンとの組合せの別の例は、ジプラシドンおよびシクロデキストリンが互いとの分散体、例えば噴霧乾燥分散体(SDD)である場合である。本明細書中で使用する用語「シクロデキストリン」とは、シクロデキストリンのすべての形態および誘導体をいう。シクロデキストリンの具体的な例には、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、およびγ−シクロデキストリンが含まれる。シクロデキストリンの例示的な誘導体には、モノ−またはポリアルキル化β−シクロデキストリン、モノ−またはポリヒドロキシアルキル化β−シクロデキストリン、例えばヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン(ヒドロキシプロピルシクロデキストリン)、モノ、テトラまたはヘプタ置換のβ−シクロデキストリン、およびスルホアルキルエーテルシクロデキストリン(SAE−CD)、例えばスルホブチルエーテルシクロデキストリン(SBECD)が含まれる。
【0079】
ジプラシドンおよびシクロデキストリンの単純な物理的な混合物は、例えば、本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第5,134,127号に記載されている。あるいは、本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第6,046,177号に開示されているように、薬物を、放出速度調節剤およびSAE−CD/薬物の混合物を含む固形核を包囲するフィルムコーティングを用いることによって製剤することができる。あるいは、SAE−CDを含有する製剤は、1つまたは複数のSAE−CD誘導体、任意選択の放出速度調節剤、治療剤(その大部分はSAE−CDと複合体形成していない)、任意選択の核を包囲する放出速度調節コーティングの物理的な混合物を含む核からなり得る。本発明で使用することが企図される他のシクロデキストリン/薬物形態は、すべて本明細書中に参考として組み込まれている、米国特許第6,232,304号、第5,874,418号、および第5,376,645号に見つかる。
【0080】
別の有用なジプラシドン形態は、ジプラシドンおよび可溶化剤の組合せである。可溶化剤の例には、界面活性剤;緩衝液、有機酸(例としてクエン酸およびグルコン酸)などのpH調節剤;グリセリド;部分的グリセリド;グリセリド誘導体;ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンエーテルならびにそのコポリマー;ソルビタンエステル;ポリオキシエチレンソルビタンエステル;アルキルスルホネート;リン脂質;本明細書中に参考として組み込まれている米国公開特許出願2003/0228358A1号に記載の親油性ミクロ相形成物質が含まれる。そのような可溶化剤は当分野で知られており、任意の既知のそのような薬剤が本発明での使用に企図される。
【0081】
本発明の方法、キットおよび剤形中のジプラシドン製剤は、1つまたは複数の沈殿阻害剤を有用に含み得る。したがって、ジプラシドンの溶出速度が改善された形態またはジプラシドンの溶解度が改善された形態を1つまたは複数の沈殿阻害剤と組み合わせることが有用であり得る。「沈殿阻害剤」とは、ジプラシドンを過飽和させた水溶液からジプラシドンが結晶化または沈殿する速度を遅くすることができる、当分野で知られている任意の物質を意味する。本発明の剤形中での使用に適した沈殿阻害剤は、有害な様式でジプラシドンと化学反応しないという意味で負活性であり、薬学的に許容できるものであり、生理的に適切なpH(例えば1〜8)において水溶液中で少なくともある程度の溶解度を有するべきである。沈殿阻害剤は中性またはイオン化可能であることができ、1〜8のpH範囲の少なくとも一部分にわたって少なくとも0.1mg/mLの水溶度を有するべきである。
【0082】
沈殿阻害剤はポリマーまたは非ポリマーであり得る。本発明での使用に適した沈殿阻害ポリマーは、セルロース系または非セルロース系であり得る。ポリマーは、中性(すなわち、水溶液中で実質的にイオン化不可能)であるか、または水溶液中でイオン化可能であり得る。例えば、本発明で用いる沈殿阻害剤は、中性非セルロース系ポリマー、イオン化可能非セルロース系ポリマー、中性セルロース系ポリマー、およびイオン化可能セルロース系ポリマーから選択され得る。これらのうち、イオン化可能ポリマーおよびセルロース系ポリマーが好ましく、イオン化可能セルロース系ポリマーがより好ましい。また、「両親媒性」の性質のポリマーも好ましく、これは、ポリマーが疎水性および親水性部分を有することを意味する。本発明において有用であり得る沈殿阻害剤は当分野で周知であり、例えば、どちらもその全体が参考として本明細書中に組み込まれている、米国公開特許出願第2006/0003011A1号および米国公開特許出願第2007/0190129号に記載されている。
【0083】
生理的に適切なpHで少なくとも部分的にイオン化される例示的なセルロース系ポリマーには、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、セルロースアセテートテレフタレート、およびセルロースアセテートイソフタレートが含まれる。
【0084】
例示的なイオン化不可能セルロース系ポリマーには、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート(HPMCA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースアセテート、およびヒドロキシエチルエチルセルロースが含まれる。
【0085】
例示的な非セルロース系ポリマーには、ヒドロキシル、アルキルアシルオキシ、または環状アミドの置換基を有するビニルポリマーおよびコポリマー;その繰り返し単位の少なくとも一部分が加水分解されていない(酢酸ビニル)形態のポリビニルアルコール;ポリビニルアルコールポリ酢酸ビニルコポリマー;ポリビニルピロリドン;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー(ポロキサマーとしても知られる);ポリエチレンポリビニルアルコールコポリマー;カルボン酸で官能化したビニルポリマー、例えばカルボン酸で官能化したポリメタクリレートおよびカルボン酸で官能化したポリアクリレート、例えばRohm Tech Inc.、マサチューセッツ州Malden製造のEUDRAGITS(登録商標);アミンで官能化したポリアクリレートおよびポリメタクリレート;タンパク質;ならびにカルボン酸で官能化したデンプン、例えばデンプングリコレートが含まれる。
【0086】
好ましい沈殿阻害剤には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、およびその混合物が含まれる。
【0087】
ジプラシドンおよび沈殿阻害剤の組合せは、薬物または薬物混合物を沈殿阻害剤と乾式または湿式混合して組成物を形成する方法などの、当分野で知られている方法によって調製し得る。混合プロセスには、物理的加工ならびに湿式造粒およびコーティングプロセスが含まれる。
【0088】
本発明の組成物を調製するために粉砕も用い得る。粉砕プロセスは、供給物質が不均一な場合は、同時に混合プロセスとしての役割を果たし得る。本発明での使用に適した慣用の混合および粉砕プロセスは、Lachman他、工業製薬の理論および実施(The Theory and Practice of Industrial Pharmacy(第3版、1986)により完全に記載されている。また、組成物の構成成分は、乾式または湿式造粒プロセスによって合わせてもよい。
【0089】
一実施形態では、組合せは、例えば噴霧乾燥プロセスによって沈殿阻害ポリマーでコーティングしたジプラシドン粒子を含む。この粒子は、ジプラシドン結晶、または非晶質の薬物もしくはシクロデキストリン複合体などの何らかの他のジプラシドン形態の粒子のいずれかであり得る。
【0090】
沈殿阻害剤の量は幅広く変動し得る。ジプラシドン対沈殿阻害剤の重量比の範囲は100〜0.01であり得る。沈殿阻害剤がポリマーである場合は、好ましくは、ポリマー対薬物の重量比は、少なくとも0.33(少なくとも25重量%のポリマー)、より好ましくは少なくとも0.66(少なくとも40重量%のポリマー)、さらにより好ましくは少なくとも1(少なくとも50重量%のポリマー)である。
【0091】
固体経口剤形:
本発明の固体経口剤形は、当分野で知られている形態のうちの任意のもの、例えば本発明に従った硬もしくは軟カプセル、サシェ、ロゼンジ、または錠剤であり得る。別の実施形態では、経口投与は、散剤、ビーズ、多粒子、またはサシェなどの顆粒形態であり得る。別の実施形態では、経口剤形は例えばロゼンジなどの舌下である。本発明の固体経口剤形は、持続放出手段、遅延放出手段または遅延崩壊部分を含有し得る。カプセルおよび錠剤の場合は、剤形は、緩衝剤を含むか、または腸溶コーティングを用いて調製してもよい。
【0092】
経口投与する場合のジプラシドンの有効1日量は、一般に、約10mgA〜200mgA/日である。ジプラシドンの総1日量は、当分野の標準技術を有する医師が、当業者に知られている関連要素、例えば、患者の重量またはCNSの患難の重篤度を考慮して、調節することができる。このジプラシドンの総1日量は、単一または分割した用量で与え得る。好ましくは、総1日量は40mgA〜160mgAであり、1日2回の投薬で与える。したがって、本発明の固体経口剤形の単位は、好ましくは、20mgAのジプラシドン〜80mgAのジプラシドンを含有する。好ましくは、本発明の方法による固体経口剤形は、20、40、60または80mgAのジプラシドンを含有する。別の実施形態では、本発明の固体経口剤形は、120mgAまたは160mgAのジプラシドンを含有する。
【0093】
活性成分に加えて、本発明による固体経口剤形は、正確な配合に応じて、崩壊剤、結合剤、香料、緩衝液、希釈剤、着色料、潤滑剤、甘味剤、増粘剤、および流動促進剤などの、様々な1つまたは複数の慣用の賦形剤が任意選択で含まれるように製剤し得る。一部の賦形剤は、例えば結合剤および崩壊剤の両方として、複数の機能を果たすことができる。
【0094】
一般に、界面活性剤、pH調節剤、充填剤、マトリックス物質、錯化剤、可溶化剤、色素、潤滑剤、流動促進剤、香料などの賦形剤は、慣例の目的のために、かつ持続放出剤形の特性に有害な影響を与えない典型的な量で使用し得る。例えば、レミントンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)(第18版、1990)を参照されたい。
【0095】
また、慣用のマトリックス物質、錯化剤、可溶化剤、充填剤、崩壊剤、または結合剤は、剤形の90重量%を構成し得る。
【0096】
充填剤または希釈剤の例には、ラクトース、マンニトール、キシリトール、結晶セルロース、二塩基性リン酸カルシウム(無水および二水和物)ならびにデンプンが含まれる。
【0097】
崩壊剤の例には、グリコール酸ナトリウムデンプン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、およびクロスカルメロースナトリウム、ならびにポリビニルピロリドンの架橋結合形、例えば商品名CROSPOVIDONEの下で販売されているもの(BASF Corporationから入手可能)が含まれる。
【0098】
結合剤の例には、メチルセルロース、結晶セルロース、デンプン、ならびにグアルガムおよびトラガカントなどのガムが含まれる。
【0099】
潤滑剤の例には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸が含まれる。
【0100】
保存料の例には、サルファイト(抗酸化剤)、酪酸化ヒドロキシトルエン、酪酸化ヒドロキシアニソール、塩化ベンザルコニウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコールおよび安息香酸ナトリウムが含まれる。
【0101】
固化防止剤または充填剤の例には、酸化ケイ素およびラクトースが含まれる。
【0102】
当分野で周知のものを含めた他の慣用の賦形剤を本発明の持続放出剤形で用い得る。一般に、色素、潤滑剤、香料などの賦形剤は、慣例の目的のために、かつ組成物の特性に有害な影響を与えない典型的な量で使用し得る。
【0103】
持続放出手段および遅延放出手段
ジプラシドンの溶出速度が改善されたまたは溶解度が改善された形態を含む剤形のCmaxは、摂食状態で投薬した対照の即再発経口カプセルのCmaxよりも高い場合がある。このCmaxを低下させるために、剤形は、ジプラシドンの溶出速度が改善されたまたは溶解度が改善された形態を含む持続放出または遅延放出剤形を、単独で、またはジプラシドンの即時放出部分と組み合わせて使用して、改変することができる。ジプラシドンを含む持続放出製剤は、哺乳動物において、同じジプラシドン用量の経口即時放出剤形と比較して、観測される血清Cmaxの低下をもたらすことができる。より低いCmaxをもたらす本発明の持続放出剤形は、保有する剤形からの薬物放出速度がより遅い。本実施形態では、剤形から放出されるジプラシドンは、好ましくは、溶出速度が改善された形態もしくは溶解度が改善された形態、または両方である。好ましくは、本発明の剤形中の持続放出手段は、持続放出手段を含有する剤形を、900mlを含有する試験媒体(0.05MのNa2HPO4、2%のSDS、pH7.5)に、37Cで、100RPMで攪拌リングを用いて、導入した後、1/2時間以内にそれ中のジプラシドン(持続放出手段内)の50%以下しか放出しない、より好ましくは1時間以内に50%以下しか放出しない。
【0104】
様々な実施形態では、本発明の剤形、方法およびキットは、持続放出手段を含む。そのような構成成分は、固体経口ジプラシドン剤形内に取り込ませる場合は、当業者に知られている任意のものであることができる。例示的な剤形には、侵食性および非侵食性マトリックス持続放出剤形、浸透圧持続放出剤形、多粒子、ならびに腸溶コーティングした核を含む剤形が含まれる。そのような剤形は、例えば、上記の米国公開特許出願第2007/0190129号に記載されている。
【0105】
一実施形態では、剤形は、侵食性または非侵食性ポリマーマトリックス持続放出剤形である。侵食性マトリックスとは、純粋な水に侵食性もしくは膨潤性もしくは可溶性がある、または、侵食もしくは溶解を引き起こすためにポリマーマトリックスを十分にイオン化するために酸もしくは塩基の存在を必要とするという意味で、水侵食性または水膨潤性または水溶性のいずれかである。水性使用環境と接触させた際、侵食性ポリマーマトリックスは水を吸収し、ジプラシドンを捕捉する水膨潤ゲルまたは「マトリックス」を形成する。水膨潤マトリックスは使用環境中で徐々に侵食、膨潤、崩壊、分散または溶解し、したがって、使用環境へのジプラシドンの放出が制御される。そのような剤形の例は当分野で周知である。例えば、レミントン:製薬の科学と実施(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)、第20版、2000を参照されたい。
【0106】
水膨潤マトリックスの主要成分は、水膨潤性、侵食性、または可溶性のポリマーであり、これは一般に、オスモポリマー、ヒドロゲルまたは水膨潤性ポリマーとして記載され得る。そのようなポリマーは、直鎖状、分枝鎖状、または架橋結合したものであり得る。これらは、ホモポリマーまたはコポリマーであり得る。例示的なポリマーには、キチン、キトサン、デキストランおよびプルランなどの天然に存在する多糖類;寒天ガム、アラビアガム、カラヤガム、イナゴマメガム、トラガカントガム、カラゲナン、ガッチガム、グアルガム、キサンタンガムおよびスクレログルカン;デキストリンおよびマルトデキストリンなどのデンプン;ペクチンなどの親水性コロイド;レシチンなどのホスファチド;アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムまたはアルギン酸カルシウム、アルギン酸プロピレングリコールなどのアルギネート;ゼラチン;コラーゲン;ならびにセルロース系が含まれる。「セルロース系」とは、糖の繰り返し単位上のヒドロキシル基の少なくとも一部分を化合物と反応させてエステル結合またはエーテル結合の置換基を形成することによって修飾した、セルロースポリマーを意味する。例えば、セルロース系エチルセルロースでは、糖の繰り返し単位にエーテル結合エチル置換基が付着しており、一方で、セルロース系セルロースアセテートはエステル結合の酢酸置換基を有する。
【0107】
侵食性マトリックス用の好ましいセルロース系のクラスは、エチルセルロース(EC)、メチルエチルセルロース(MEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリテート(HPMCAT)、およびエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)などの水溶性および水侵食性のセルロース系を含む。
【0108】
そのようなセルロース系の特に好ましいクラスは、様々なグレードの低粘度(50,000ダルトン以下の分子量)および高粘度(50,000ダルトンより高い分子量)のHPMCを含む。市販されている低粘度HPMCポリマーには、DowのMETHOCEL(商標)シリーズE3、E5、E15LV、E50LVおよびK100LVが含まれ、一方で、高粘度HPMCポリマーには、E4MCR、E10MCR、K4M、K15MおよびK100Mが含まれる。この群では、METHOCEL(商標)Kシリーズが特に好ましい。他の市販されているHPMCの種類には、信越化学工業のMETOLOSE(商標)90SHシリーズが含まれる。一実施形態では、HPMCは低粘度を有し、これは、水中のHPMCの2%(w/v)溶液の粘度が約120cp未満であることを意味する。好ましいHPMCは、水中のHPMCの2%(w/v)溶液の粘度が80〜120cpの範囲のものである(METHOCEL(商標)K100LVなど)。
【0109】
侵食性マトリックス物質として有用な他の物質には、それだけには限定されないが、プルラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、グリセロール脂肪酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、エタクリル酸またはメタクリル酸のコポリマー(EUDRAGIT(登録商標)、Rohm America,Inc.、ニュージャージー州Piscataway)ならびにブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、(2−ジメチルアミノエチル)メタクリレート、および(トリメチルアミノエチル)メタクリレートクロライドのホモポリマーおよびコポリマーなどの他のアクリル酸誘導体が含まれる。
【0110】
また、侵食性マトリックスポリマーは、オスモポリマー、オスマゲン(osmagen)、溶解度増強剤または遅延剤および剤形の安定性または加工性を促進する賦形剤を含めた、薬学分野で知られている添加剤および賦形剤も含有し得る。
【0111】
あるいは、持続放出部分は、非侵食性マトリックスを含み得る。そのような剤形では、ジプラシドンを不活性マトリックス中に分布させる。薬物は、拡散によって不活性マトリックスを介して放出される。不活性マトリックスに適した物質の例には、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー、メチルアクリレート−メチルメタクリレートコポリマー、ポリ塩化ビニル、およびポリエチレンなどの不溶性プラスチック;エチルセルロース、セルロースアセテート、および架橋結合したポリビニルピロリドン(crospovidoneとしても知られる)などの親水性ポリマー;ならびにカルナウバロウ、ミクロクリスタリンワックス、およびトリグリセリドなどの脂肪化合物が含まれる。そのような剤形は、レミントン:製薬の科学および実施(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)、第20版(2000)にさらに記載されている。
【0112】
したがって、一実施形態では、持続放出剤形は、10重量%〜80重量%の溶出速度が改善されたまたは溶解度が改善された形態のジプラシドン、5重量%〜50重量%のマトリックスポリマー、および10重量%〜85重量%の希釈剤を含む。一実施形態では、ジプラシドンは半規則ジプラシドンとポリマーとの固形分散体の形態である。別の実施形態では、ジプラシドンは半規則塩酸ジプラシドンとHPMCASとの固形分散体の形態である。別の実施形態では、ジプラシドンは半規則ジプラシドン遊離塩基とHPMCとの固形分散体の形態である。別の実施形態では、ジプラシドンはメシル酸ジプラシドンとSBECDとの固形分散体の形態である。一実施形態では、マトリックスポリマーはHPMCである。別の実施形態では、希釈剤はラクトース一水和物である。
【0113】
別の実施形態では、剤形は浸透圧剤形である。浸透圧送達装置では、浸透物質(水膨潤性親水性ポリマーまたはオスモゲン(osmogen)もしくはオスマゲント(osmagent))が装置の核内に含まれ、核は半透膜でコーティングされている。膜には、膜の形成中、コーティングプロセス後、またはin situで形成された1つまたは複数の送達口が含まれていても含まれていなくてもよい。送達口は、単一の口から、コーティング中の細孔から構成され得る多数の小さな送達口の範囲であり得る。核内部の浸透物質は、半透性コーティングを通して水を引き出す。水膨潤性親水性ポリマーを含有する核では、核はコーティングを通して水を吸収し、水膨潤性組成物を膨張させて核内の圧力を上昇させ、薬物含有組成物を流動化させる。コーティングは無傷に保たれるため、薬物含有組成物は、1つもしくは複数の送達口またはコーティング中の細孔を通って、使用環境内に押し出される。オスモゲンを含有する核では、水が浸透圧によって装置内に引き出されて薬剤を溶解し、薬剤の溶液が形成される。水の吸収によって引き起こされる体積の増加は、核内の静水圧をわずかに上昇させる。この圧力は、膜孔または送達口を通って装置から出る飽和薬剤溶液または懸濁液の流れによって解放される。したがって、水膨潤性ポリマーまたはオスモゲンを含有する装置からの体積−流速は、膜を通る核への水の流入速度および押し出された流体中の薬物濃度の結果に依存する。多孔性、非対称、対称、または転相膜を使用して水の流入速度を制御、ひいては、浸透圧徐放性装置の薬物放出の速度を制御し得る。
【0114】
また、持続放出構成成分を有する本発明による剤形は、ジプラシドンを含む即時放出部分も有していてもよい。「即時放出部分」とは、広く、持続放出構成成分とは別のジプラシドンの一部分が、胃の使用環境に投与した後、最初の2時間以内に放出されることを意味する。薬物の即時放出は、即時放出コーティング、即時放出層、および即時放出多粒子または顆粒を含めた、薬学分野で知られている任意の手段によって達成し得る。即時放出部分を含む持続放出剤形は当分野で、例えば上記の米国公開特許出願第2007/0190129号に記載されている。
【0115】
また、本発明で有用な剤形は、遅延放出手段も、単独で、または持続放出手段および/もしくは即時放出部分と組み合わせて含み得る。本発明の方法およびキットの持続放出ジプラシドン剤形で使用し得る遅延放出手段の例には、それだけには限定されないが、そのジプラシドンの放出を遅延させる、腸溶コーティングした部分を含む剤形が含まれる。
【0116】
即時放出、持続放出および/または遅延放出構成成分の様々な組合せを含む剤形のいくつかの一般例は、以下のとおりである(これらの説明は、本発明での使用が企図される剤形の範囲を限定することを意図しない):
【0117】
遅延放出コーティングを用いた即時放出核
原理上は、本発明は、ジプラシドンおよび薬学的に許容できる担体を含む即時放出核をとり、所望の遅延放出特徴を提供する(好ましくは全体を覆う)コーティングで、空間的または時間的機構のどちらかによってコーティングすることによって、実施することができる。したがって、任意の即時放出ジプラシドン剤形を核として使用することができ、その後、これを所望の遅延放出コーティングでコーティングし、そのような剤形が本発明の範囲の好ましい実施形態を構成する。
【0118】
剤形は、小腸内に移行した後までジプラシドンの放出が遅延されるようにその使用環境に対して感受性を有することによって、作動することができる。この種類の遅延放出剤形は、胃腸(GI)管に沿った位置に依存した様式で放出し、時間に非依存性であり、本明細書中で「空間的な」剤形、または「空間的遅延放出」を示すという。剤形が小腸内に入った後、これはその残りのジプラシドンを即時様式で放出し、「即時放出」とは、遅延期間が終わった後に意図的に放出を遅らせるまたは減速させる構成成分または手段が剤形中に実装されていないことを意味する。一般に、剤形は、小腸内に移行した後、その中に残ったジプラシドンの少なくとも70%を、1.5時間以内、好ましくは1時間以内に放出するべきである。空間的遅延剤形の例は、pH5.5より高い小腸の環境に入るまでジプラシドンの放出を遅延させる、pH始動剤形である。本発明の空間的遅延剤形は、一般に、胃から出て小腸内に移行した後、約30分以内、好ましくは15分以内にジプラシドンの即時放出を開始する。
【0119】
空間的遅延pH始動コーティングを用いた即時放出
本発明による第1の空間的遅延放出の実施形態は、胃のpHではジプラシドンまで実質的に透過できないが、小腸のpHではジプラシドンまで透過できるようになるポリマーを含む物質でコーティングした即時放出錠剤または錠剤核を含む、「pH依存性コーティングした錠剤」である。空間的遅延剤形に関する「実質的に透過できない」とは、剤形中に含有されるジプラシドンの10%以下しか胃内で放出されない限り、非常に少量のジプラシドンがコーティングを通って放出されることを可能にする。そのようなポリマーは、ジプラシドンが自由に通過できるように、溶解もしくは崩壊または他の様式で破壊されることによって、透過できるようになる。錠剤または錠剤核は、崩壊剤、潤滑剤、充填剤、および/または他の慣用の配合成分などのさらなる賦形剤を含むことができる。そのような成分および/または賦形剤はすべて、具体的な剤形にかかわらず、本明細書中で薬学的に許容できる「担体」と総称する。核は、胃のpHでは実質的に不溶性かつ透過できないが、小腸のpHではより透過性のある物質、好ましくはポリマーでコーティングする。好ましくは、コーティングポリマーは、pH<5.0で実質的に不溶性かつ透過できず、pH>5.0で水溶性または水崩壊性である。pH感受性ポリマーと水不溶性ポリマーとの混合物も使用し得る。錠剤は、ジプラシドン含有錠剤核の重量の3%〜70%を構成する量のポリマーでコーティングする。好ましい錠剤は、ジプラシドン含有錠剤核の重量の5%〜50%を構成する量のポリマーでコーティングする。
【0120】
胃のpHでは比較的不溶性かつ透過できないが、小腸および結腸のpHではより可溶性または崩壊性または透過性のあるpH感受性ポリマーには、ポリアクリルアミド、フタレート誘導体、例えば炭水化物の酸フタレート、アミロースアセテートフタレート、セルロースアセテートフタレート、他のセルロースエステルフタレート、セルロースエーテルフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルエチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルアセテートハイドロジェンフタレート、ナトリウムセルロースアセテートフタレート、デンプン酸フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートトリメリテート、スチレン−マレイン酸ジブチルフタレートコポリマー、スチレン−マレイン酸ポリビニルアセテートフタレートコポリマー、スチレンとマレイン酸とのコポリマー、アクリル酸とアクリルエステルとのコポリマーなどのポリアクリル付加物誘導体、ポリメタクリル酸およびそのエステル、ポリアクリルメタクリル付加物コポリマー、シェラック、および酢酸ビニルとクロトン付加物とのコポリマーが含まれる。
【0121】
好ましいpH感受性ポリマーには、シェラック、フタレート誘導体、特にセルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート;ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート;セルロースアセテートトリメリテート;ポリアクリル酸誘導体、特にアクリル酸と少なくとも1つのアクリル酸エステルとを含むコポリマー、アクリル付加物およびアクリルエステルコポリマーと混合したポリメチルメタクリレート;ならびに酢酸ビニルとクロトン付加物とのコポリマーが含まれる。
【0122】
pH感受性ポリマーの特に好ましい群には、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メタクリル酸とメチルメタクリレートとの陰イオン性アクリルコポリマー、およびアクリル酸と少なくとも1つのアクリル付加物エステルとを含むコポリマーが含まれる。
【0123】
ジプラシドン含有錠剤が胃を出るまではジプラシドンの遅延放出をもたらすために、セルロースアセテートフタレート(CAP)をジプラシドン剤形に施用し得る。CAPコーティング溶液は、ジエチルフタレート、ポリエチレングリコール−400、トリアセチン、クエン酸トリアセチン、プロピレングリコール、および当分野で知られている他のものなどの、1つまたは複数の可塑化剤も含有し得る。好ましい可塑化剤はジエチルフタレートおよびトリアセチンである。CAPコーティング製剤は、ポリソルベート−80などの1つまたは複数の乳化剤も含有し得る。
【0124】
メタクリル酸とメチルメタクリレートとの陰イオン性アクリルコポリマーも、錠剤が胃から遠位の胃腸管内の位置に移動するまではジプラシドン含有錠剤からのジプラシドンの放出を遅延させる、特に有用なコーティング物質である。この種類のコポリマーは、RoehmPharma Corpから商標Eudragit(登録商標)−LおよびEudragit(登録商標)−Sの下で入手可能である。Eudragit(登録商標)−LおよびEudragit(登録商標)−Sは、メタクリル酸とメチルメタクリレートとの陰イオン性コポリマーである。遊離カルボキシル基対エステルの比は、Eudragit(登録商標)−Lでは約1:1であり、Eudragit(登録商標)−Sでは約1:2である。Eudragit(登録商標)−LおよびEudragit(登録商標)−Sの混合物も使用し得る。ジプラシドン含有錠剤をコーティングするためには、これらのアクリルコーティングポリマーを、有機溶媒もしくは有機溶媒の混合物に溶解させるか、または水性媒体に懸濁させることができる。この目的のために有用な溶媒は、アセトン、イソプロピルアルコール、および塩化メチレンである。一般に、アクリルコポリマーのコーティング製剤中に5〜20%の可塑化剤を含めることが賢明である。有用な可塑化剤には、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ヒマシ油、クエン酸トリエチル、およびトリアセチンが含まれる。Eudragit(登録商標)−Lは、腸管のpHで比較的素早く溶解するので好ましい。
【0125】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートのコーティングも、剤形が胃を出るまではジプラシドンの遅延放出をもたらすために、剤形に塗布し得る。
【0126】
上述のように、コーティングは、コーティングしていない錠剤核の重量の3%〜70%を構成し得る。好ましくは、コーティングは、錠剤核の重量の5%〜50%、より好ましくは5%〜40%を構成する。
【0127】
空間的遅延ジプラシドン剤形のさらなる実施形態、すなわち「pH依存性コーティングしたビーズ」では、ジプラシドンおよび担体を含む直径0.4〜2.0mmのビーズを、前述のpH感受性ポリマーの1種または複数でコーティングする。コーティングしたビーズは、カプセル内に入れるか、または、錠剤の圧縮中に個々のビーズ上のポリマーコーティングを破損すること避けるように注意しながら錠剤へと圧縮し得る。好ましいコーティングしたビーズは、前述のように、ビーズが胃を出るまでは剤形からのジプラシドンの放出を本質的に示さず(すなわち10%未満)、したがって、最小限のジプラシドンしか胃内で放出されないことを保証するものである。コーティングは、コーティングしていないビーズ核の重量の5%〜200%を構成し得る。好ましくは、コーティングは、ビーズ核の重量の10%〜100%を構成する。
【0128】
多粒子空間的遅延ジプラシドン剤形のさらなる実施形態、すなわち「pH依存性コーティングした粒子」では、剤形は、小さなジプラシドンおよび直径0.1〜0.4mmの担体粒子を含む。粒子を、前述のpH感受性ポリマーの1種または複数でコーティングする。コーティングした粒子を用いて、単位用量のパックを作製するか、またはカプセル内に入れるか、または、錠剤の圧縮中に個々の粒子上のポリマーコーティングを破損することを避けるように注意しながら錠剤へと圧縮し得る。
【0129】
さらに別の実施形態では、多粒子空間的遅延ジプラシドン剤形は、ジプラシドン、造粒賦形剤、および腸溶ポリマーを含む腸溶コーティングした顆粒を含む。これらの顆粒の直径は0.1〜1mmであり、当分野で知られている技術を用いて作製することができる。一実施形態では、溶出速度が改善されたまたは溶解度が改善された形態のジプラシドンを結合剤および腸溶ポリマーと混合し、慣用の造粒機器を用いて顆粒化する。
【0130】
好ましいコーティングした粒子は、粒子が胃を出るまでは剤形からのジプラシドンの放出を本質的に示さず(すなわち10%未満)、したがって、最小限のジプラシドンしか胃内で放出されないことを保証するものである。pH感受性ポリマーと水不溶性ポリマーとの混合物も含まれる。好ましいジプラシドン含有粒子は、コーティングしていないジプラシドン含有粒子核の重量の15%〜200%を構成する量のポリマーでコーティングする。
【0131】
pH感受性ポリマーと水不溶性ポリマーとの混合物も含まれる。ジプラシドン含有錠剤および粒子およびビーズを、様々なpHで溶解度が異なるポリマーの混合物でコーティングし得る。例えば、好ましいコーティングは、Eudragit(登録商標)−L、または9:1〜1:4のEudragit(登録商標)−L/Eudragit(登録商標)−Sを含む。
【0132】
空間的遅延ジプラシドン剤形のさらなる実施形態は、pH依存性コーティングした錠剤、pH依存性コーティングしたビーズ、およびpH依存性コーティングした粒子の実施形態の変更を構成する。ジプラシドン含有核の錠剤、ビーズ、または粒子を最初にバリアーコーティングでコーティングし、その後、pH依存性コーティングでコーティングする。バリアーコーティングの機能は、ジプラシドンをpH依存性コーティングから分離することである。ジプラシドンは塩基であるため、核内でのジプラシドンの水和はpH依存性コーティングの微小環境内でpHを上昇させる役割を果たすことができ、したがってpH依存性コーティングの透過処理または溶解を時期尚早に開始させ、その結果、ジプラシドン用量の一部または全体が胃内で時期尚早に放出される。バリアーコーティングは、そのような時期尚早な放出を防止する。適切なバリアーコーティングは、スクロースなどの糖、またはヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性ポリマー等の水溶性物質からなる。ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンが好ましい。バリアーコーティングは、コーティングしていないジプラシドン含有の錠剤、ビーズまたは粒子の核の重量の1%〜20%、好ましくは2%〜15%を構成し得る。
【0133】
即時放出コーティングを用いた遅延放出の即時放出核
本発明で使用するジプラシドン剤形に有用であることが企図される別の組合せの例は、ジプラシドンの即時放出をもたらす核を含む固体経口剤形であり、その核は、上に説明したように、核の内容物の放出を遅延させる物質でコーティングされている(「遅延放出コーティング」)。その後、ジプラシドンの即時放出のためのこの遅延放出核を、ジプラシドンの即時放出をもたらすジプラシドンを含む層でコーティングする。
【0134】
キット:
本発明はまた、有効量のジプラシドンを含む本明細書中に記載の固体経口剤形を含む、ヒトにおいてCNS障害を治療するためのキットも提供し、固体経口剤形は、ヒトが絶食状態の場合でも、CNS障害の治療に有効な血清ジプラシドン濃度レベルをもたらす。したがって、キットには、食物と共に投与することを指定しない投与の指示も含まれる。
【0135】
一実施形態では、本発明は、
a)有効量のジプラシドンおよび薬学的に許容できる担体を含む固体経口剤形と、
b)食物と共に投与することを指定しない、(a)の剤形を経口投与するための指示と
を含み、前記固体経口剤形が、絶食状態のヒトに投与した場合に、そのヒトに、摂食状態のヒトに同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを投与した結果もたらされるジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%、好ましくは75%〜130%、より好ましくは80%〜125%である血清ジプラシドンAUC0〜infをもたらす
キットを提供する。
【0136】
別の実施形態では、本発明は、
a)有効量のジプラシドンおよび薬学的に許容できる担体を含む固体経口剤形と、
b)(a)の剤形を食物と共にまたは食物なしで投与し得ることを指示する、(a)の剤形を経口投与するための指示と
を含み、前記固体経口剤形が、絶食状態のヒトに投与した場合に、そのヒトに、摂食状態のヒトに同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを投与した結果もたらされるジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%、好ましくは75%〜130%、より好ましくは80%〜125%である血清ジプラシドンAUC0〜infをもたらす
キットを提供する。
【0137】
別の実施形態では、本発明は、
a)有効量のジプラシドンおよび薬学的に許容できる担体を含む固体経口剤形と、
b)食物と共に投与することを指定しない、(a)の剤形を経口投与するための指示と
を含み、前記固体経口剤形が、絶食状態のヒトに投与した場合に、そのヒトに、同一のジプラシドン固体経口剤形を摂食状態のヒトに投与した結果もたらされるジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%、好ましくは75%〜130%、より好ましくは80%〜125%である血清ジプラシドンAUC0〜infをもたらす
キットを提供する。
【0138】
別の実施形態では、本発明は、
a)有効量のジプラシドンおよび薬学的に許容できる担体を含む固体経口剤形と、
b)(a)の剤形を食物と共にまたは食物なしで投与し得ることを指示する、(a)の剤形を経口投与するための指示と
を含み、前記固体経口剤形が、絶食状態のヒトに投与した場合に、そのヒトに、同一のジプラシドン固体経口剤形を摂食状態のヒトに投与した結果もたらされるジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%、好ましくは75%〜130%、より好ましくは80%〜125%である血清ジプラシドンAUC0〜infをもたらす
キットを提供する。
【0139】
好ましくは、本発明のキット中の固体経口剤形中のジプラシドンは、上述のように、ジプラシドンの溶出速度が改善された形態および/またはジプラシドンの溶解度が改善された形態である。
【0140】
本明細書中で用語「キット」とは、固体経口剤形および指示の任意の組合せをいう。指示は記録された形態であり得る。記録は、例えば、手書き、印刷、ビデオ録画、または音声録音であり得る。指示は、消費者への薬物の販売に伴う政府規制機関によって認可されたラベル、添付文書、または他の記録された情報の一部であり得る。組合せは、固体経口剤形および例えば印刷または書面の形態の指示が、薬局によって医師、健康管理機関または患者に提供される同じパッケージの一部となるようなものであり得る。
【0141】
したがって、キットは市販に適することができ、容器、本明細書中に記載のジプラシドンの固体経口剤形、および剤形を食物と共にまたは食物なしで摂取することができるかどうかに関して非限定的である付随する書面(例えば印刷)文書を含むことができる。書面文書は、医師、薬剤師または患者への情報および/または指示を含有する種類のものである。書面文書は、剤形を食物と共にまたは食物なしで摂取することができるかどうかに関する記載が含まれない、すなわち、記載は食物の効果に関して触れないことによって、「剤形を食物と共にまたは食物なしで摂取することができるかどうかに関して非限定的である」ことができる。あるいは、書面文書は、使用者(例えば、患者、薬剤師、または医師)に、前記経口剤形は、患者が摂食または他の方法で食物を吸収したかどうかにかかわらず患者に摂取させるまたは投与することができることを積極的に通知する、1つまたは複数の記載を含有することによって、非限定的であることができる(例えば、「食物の種類または量にかかわらず」等と記載していてもよい)。書面文書は、本発明のジプラシドン剤形を、摂食状態の対象に投与するまたは少なくとも250カロリーもしくはそれより多くを用いて投与することを要するという言葉を含有することができない。言い換えれば、指示、例えば書面文書は、「本ジプラシドン剤形は食物と共に摂取しなければならない」または「本ジプラシドン剤形は患者が食事または間食を摂取した後にのみ与え得る」などと記載することができない。
【0142】
容器は、薬学的に許容できる物質、例えば、紙もしくは段ボールの箱、ガラスもしくはプラスチックのボトルもしくはジャー、再封可能なバッグ(例えば、異なる容器に入れるための錠剤の「詰め替え」を入れるためのもの)、または個々の用量を治療スケジュールに従ってパックから押し出すブリスターパックからなる、当分野で知られている任意の慣用の形状または形態であることができる。複数の容器を単一のパッケージで一緒に用いて、単一の剤形を販売できることも可能である。例えば、錠剤は、箱内に含有されるボトル内に含有され得る。
【0143】
指示、例えば印刷または他の書面文書の指示は、ジプラシドン剤形を販売するパッケージに付随する。用語「付随する」には、指示が医薬品に付随することができるすべての様式が含まれることを意図する。例えば、書面文書は、ラベル上に書く(例えば、処方箋ラベルまたは別のラベル)、ジプラシドン剤形を含有するボトルに貼付する;単位用量パケットを含有する箱の中などに書面の添付文書として容器内に含める;箱の横に印刷するなど容器に直接適用する;または縛るまたはテープで接着するなどによって、例えば、糸、コードまたは他の紐、ラニヤードもしくはロープの装置を介してボトルの首に添付した指示カードとして付着させることによって、容器に付随させることができる。書面文書は、単位用量のパックまたはブリスターパックまたはブリスターカード上に直接印刷し得る。
【0144】
指示をジプラシドン固体経口剤形に「付随」させ得る別の例は、電子的によるものである。指示は、例えば、製造者によって、ジプラシドン固体経口剤形に関連して製造者が消費者に提供するウェブサイト上で提供し得る。
【0145】
以下の実施例は本発明を例示する。これらの実施例中に提示する情報を、単独で、または当分野で一般に知られている技術を組み合わせて使用して、本発明のさらなる実施形態を調製し得る。これらの実施例は本発明を例示するために提供し、したがって、本出願の明細書全体および特許請求の範囲に完全に記載した、本発明の意図する範囲を限定するものと解釈されるべきでない。
【実施例】
【0146】
臨床試験に関する以下の実施例では、それぞれの研究は、摂食条件下でのGEODON/ZELDOX(商標)市販カプセルならびに摂食条件下および絶食条件下での試験ジプラシドン剤形の生体利用度を、いずれも40mgの単回投与後に試験するための、無作為化、非盲検、3期間、6シーケンス、クロスオーバー試験であった。
【0147】
すべての対象は健康で18歳以上であり、体重指数(BMI)は約18〜30kg/m2であり、全体重は>50kg(110lb)であった。
【0148】
第1期間の1日目に、対象を6つの処置シーケンスのうちの1つに無作為化した。投与した3つの処置は、試験ジプラシドン剤形(絶食)、試験ジプラシドン剤形(摂食)および市販カプセル(摂食)であった。それぞれの処置期間は、最低3日間のウォッシュアウト間隔によって隔てた。
【0149】
試験製剤(絶食)処置では、少なくとも10時間の終夜の絶食後に、対象に薬物を240mL(8液量オンス)の水と共に投与した。試験製剤(摂食)および市販カプセル(摂食)処置では、少なくとも10時間の終夜の絶食後に、対象に朝食を提供した。朝食を20分間にわたって摂取させ、食事完了後5分以内に薬物を240mL(8液量オンス)の水と共に投与した。
【0150】
薬物動態学評価:ジプラシドンの薬物動態学(PK)分析のために最低2mLの血清を提供するために十分な血液試料(5mL)を、適切に標識したレッドトップチューブ(任意の血清セパレーターまたは他の添加剤を何も含有しない)に、以下の時間、すなわち、時間0(1日目の朝の投薬前)、ならびに薬物投薬の1、2、4、6、8、10、12、16、24および36時間後に採取した。
【0151】
妥当性確認した液体クロマトグラフィー/二重質量分析(LC/MS/MS)アッセイを用いて、血清試料をジプラシドンについてアッセイした。WinNonlin、バージョン3.2を用いて、濃度−時間データの標準の非区画分析によって、PKパラメータをそれぞれの対象について計算した。観測最大血清濃度(Cmax)およびTmax(Cmaxが最初に発生した時間)を、実験データ(血清濃度対時間)から直接観測した。時間0から外挿したinfの時間までの血清濃度−時間プロフィールの下の面積(AUCinf)および時間0から最終の定量可能な濃度の時間までの血清濃度−時間プロフィールの下の面積(AUClast)を、線形台形近似によって推定した。
【0152】
以下のPKパラメータを製剤および摂食状態によって要約した。AUCinfおよびCmaxについては、個々の対象パラメータも製剤および摂食状態によってプロットした。
パラメータ 要約の統計
AUCinf、AUClast、Cmax N、相加平均、中央値、変動係数(CV%)、標準偏差(SD)、最小、最大、相乗平均
Tmax N、中央値、最小、最大
t1/2 N、相加平均、中央値、CV%、標準偏差(SD)、最小、最大
【0153】
(実施例1)
SBECDで可溶化したジプラシドン
ジプラシドン試験製剤の調製:ジプラシドン試験製剤は、メシル酸ジプラシドン−SBECD凍結乾燥粉末を、HPMCASと合わせて、約1:6:2の質量比で含有していた。この製剤は、以下に概要を示した手順に基づいて調製した。SBECDを、注射用水(WFI)を含有するフラスコに入れ、溶液が得られるまで加熱した。その後、メシル酸ジプラシドンをフラスコに入れ、溶液が得られるまで加熱した。溶液を冷却し、35〜40Cに保った後、0.45ミクロンのKleenpak Ultipro N66フィルターを通して保持容器内に濾過した。その後、溶液をトレイに移した。溶液を少なくとも−40℃まで冷却した後、凍結乾燥サイクルを開始した。数週間の期間にわたって温度を上昇させた。最終乾燥サイクルにより水分含量を2%未満まで減らした。その後、凍結乾燥粉末を粉砕した。176.2mgの粉砕した凍結乾燥粉末(これは20mgのジプラシドンに相当する)を50mgのHPMCAS(MFグレード)と混合し、ゼラチンカプセルに充填した。
【0154】
2個のジプラシドンカプセル(試験製剤)を投薬して(2×20mg)、40mg用量のジプラシドンを得た。
【0155】
ジプラシドン試験製剤の情報を表1に示す。
【0156】
【表1】
【0157】
結果:合計16人の対象を処置に割り当て、12人が試験を完了した。4人の対象が、参加に気が進まないとの理由により試験を中止した。試験を中止する前、これらの対象のうち3人が試験製剤(摂食)を受け、1人が市販カプセル(摂食)を受けた。
【0158】
摂食および絶食状態下の実施例1の試験製剤ならびに摂食状態下の市販カプセルの単回投与後の要約を、表2に要約する。これらのデータは、試験製剤の絶食のAUCinfは試験製剤の摂食のAUCinfの92%であり、試験製剤の絶食のAUCinfは接触の市販カプセルの105%であったことを示している。
【0159】
【表2】
【0160】
(実施例2)
ジプラシドンナノ粒子
候補製剤の調製:本明細書中で製剤Bと呼ぶこの試験製剤は、ナノ粒子の形態のジプラシドン遊離塩基を含有していた。製剤は以下に概要を示した手順に基づいて調製した。8.85gmのジプラシドン遊離塩基を100mlの粉砕チャンバ内に48.89gmの粉砕媒体(500ミクロンのポリスチレンビーズ)と共に入れることによって、粗い懸濁液を調製した。これに、それぞれ4.2mlのPluronic(登録商標)F108、Tween(登録商標)80の10%溶液および5%のレシチン溶液を加えた。さらに、23.8mlの注射用水を粉砕チャンバに加えた。均一な懸濁液が得られるまで上記混合物を攪拌した。その後、この懸濁液を30分間、2100RPMで、Nanomill−1(製造者Elan Drug Delivery,Inc.)内で粉砕し、粉砕中の温度を4Cに維持した。生じた懸濁液を真空下で濾過して粉砕媒体を除去した。適切な体積の懸濁液(ジプラシドンの40mg用量に対応)を60mlの水で希釈し、懸濁液として投薬した。
【0161】
試験薬の情報を表3に示す。
【0162】
【表3】
【0163】
結果:合計14人の対象を処置に割り当て、12人が試験を完了した。2人の対象(製剤B(絶食)群で1人、市販カプセル(摂食)群で1人)が第1期間の投薬後に試験を中止した。1人の対象は胃腸炎により中止し、もう1人はスポンサーによって中止させられた。
【0164】
摂食および絶食状態下の製剤Bならびに摂食状態下の市販カプセルの単回投与後のPKパラメータの要約を、表4に要約する。これらのデータは、試験製剤の絶食のAUCinfは試験製剤の摂食のAUCinfの78%であり、試験製剤の絶食のAUCinfは接触の市販カプセルの89%であったことを示している。
【0165】
【表4】
【0166】
(比較実施例3)
ジプラシドンHCl
沈殿阻害ポリマーHPMCASでコーティングした35%の活性塩酸ジプラシドン一水和物を含む、ジプラシドンでコーティングした結晶を、上記の米国公開特許出願第2007/0190129号に記載のように調製した。
【0167】
実施例3のこの試験ジプラシドン製剤(「製剤C」と呼ぶ)は、カプセル中の散剤として投薬した(1×40mg)。試験薬物の情報を表5に示す。
【0168】
【表5】
【0169】
結果:摂食および絶食状態下の試験製剤ならびに摂食状態下の市販カプセルの単回投与後のPKパラメータの要約を、表6に要約する。これらのデータは、試験製剤の絶食のAUCinfは試験製剤の摂食のAUCinfの57%であり、試験製剤の絶食のAUCinfは接触の市販カプセルの62%であったことを示している。
【0170】
【表6】
【0171】
(比較実施例4)
沈殿阻害剤(HPMCAS)を用いたメシル酸ジプラシドン
本明細書中で製剤A2と呼ぶ本製剤は、沈殿阻害剤、具体的にはHPMCASとの単純な物理的な混合物中でメシル酸ジプラシドンを含有するヒプロメロースを含むマトリックス錠であった。製剤A2の錠剤の組成は以下のとおりであった:
【0172】
【表7】
【0173】
USP−2によって試験した場合;900ml(0.05MのNa2HPO4、2%のSDS、pH7.5)、37C、100RPMで攪拌した)、製剤A2の溶出プロフィールは以下のとおりであった。
【0174】
【表8】
【0175】
合計18人の対象を、製剤A2を用いた処置に割り当て、17人の対象を、対照GEODON/ZELDOX(商標)市販カプセル(摂食)に割り当てた。18人が製剤A2(絶食)の試験を完了し、17人の対象がそれぞれ製剤A2(摂食)およびGEODON/ZELDOX(商標)市販カプセル(摂食)を完了した。
【0176】
結果:40mgの単回投与後の、絶食条件下または摂食条件下での製剤A2および摂食条件下でのGEODON/ZELDOX(商標)市販カプセル後の平均血清PKパラメータを、表7に要約する。これらのデータは、試験製剤の絶食のAUCinfは試験製剤の摂食のAUCinfの56%であり、試験製剤の絶食のAUCinfは接触の市販カプセルの37%であったことを示している。
【0177】
【表9】
【0178】
(実施例5)
シクロデキストリンとの噴霧乾燥分散体中のメシル酸ジプラシドン
以下のように、シクロデキストリンスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン(SBECD)との噴霧乾燥分散体中のメシル酸ジプラシドンを含有する、2つの製剤を調製した。最初に、7.8重量%のメシル酸ジプラシドン三水和物、30.9重量%のSBECDからなり、すべて水に75℃で溶解した噴霧溶液を調製した。供給溶液を、圧力ノズル(Schlick1.0圧力ノズル)を備えた、噴霧乾燥機(液体供給プロセス容器を備えたNiro型XP携帯用噴霧乾燥機)(「PSD−1」)にポンピングした。PSD−1は、9インチ(22.7cm)チャンバの拡張を備えていた。噴霧乾燥機は、乾燥用ガスを噴霧乾燥チャンバ内に導入するためのDPHガス分散器も備えていた。噴霧溶液は、約54g/分、約1000psigの圧力で噴霧乾燥機にポンピングした。乾燥用ガス(例えば窒素)は、DPHの蓋を通して、約2000g/分の流速、約145℃の導入口温度で噴霧乾燥機内に導入した。蒸発した水および乾燥用ガスは、約75℃の温度で噴霧乾燥機から出た。15%Aのジプラシドンを含有する生じた分散体をサイクロンで回収した。
【0179】
第2の製剤は、以下の例外を用いて上述のように調製した。噴霧溶液は、すべて水に75℃で溶解した6.1重量%のメシル酸ジプラシドン三水和物、31.8重量%のSBECDからなっていた。噴霧溶液は、約47g/分、約800psigの圧力で噴霧乾燥機にポンピングした。乾燥用ガス(例えば窒素)は、DPHの蓋を通して、約2000g/分の流速、約140℃の導入口温度で噴霧乾燥機内に導入した。蒸発した水および乾燥用ガスは、約70℃の温度で噴霧乾燥機から出た。12%Aのジプラシドンを含有する生じた分散体をサイクロンで回収した。
【0180】
製剤A3、製剤A4、および製剤A5と呼ぶ3つの固体経口剤形を試験した。製剤のうちの1つには、沈殿阻害剤HPMCASも含めた。製剤を表8に示す。
【0181】
【表10】
【0182】
製剤A3、A4、およびA5の溶出プロフィールを以下に示す。
【0183】
【表11】
【0184】
【表12】
【0185】
【表13】
【0186】
(in vitro実施例)
以下の試験を用いて様々なジプラシドン製剤を評価した。最初に、固形製剤(例えば、散剤、ビーズ)では、別段に指定しない限り、すべてのジプラシドンが溶解した場合はジプラシドンの濃度が200μgA/mLとなるような量の製剤をガラス製溶解フラスコ内に正確に秤量した。その後、製剤を含有するフラスコを37℃の水浴内に入れ、50mLの0.01NのHCl模擬胃緩衝液、pH2.0をフラスコに加えた。フラスコは攪拌パドルを備え、100rpmで攪拌した。フラスコは、既知の濃度のジプラシドン標準物質で較正したUVプローブも備えていた。模擬胃緩衝溶液をフラスコに加えた際にタイマーを0に設定した。その後、UVプローブを用いて320nmでのUV吸光度を経時的に測定した。これらのデータから、溶解したジプラシドンの濃度を計算した。その後、標準技術を用いて、MDCおよびAUC90をこれらのデータから決定した。
【0187】
対照1
対照として、GEODON/ZELDOX(商標)市販カプセル(すなわち、約5ミクロン〜約30ミクロンの体積平均直径(VMD)粒子径を有する結晶塩酸ジプラシドン一水和物)の形態の塩酸ジプラシドン一水和物の溶解性能を、上記試験手順を用いて決定した。MDCおよびAUC90を表9に記載する。
【0188】
【表14】
【0189】
ジプラシドンの様々な高エネルギー塩形態を、当分野で周知の標準の分析技術を用いて調製し、上述のin vitro溶出試験で評価した。実施例6はメシル酸ジプラシドンからなり、実施例7はジプラシドン遊離塩基からなり、実施例8はトシル酸ジプラシドンからなり、実施例9は酒石酸ジプラシドンからなり、実施例10はアスパラギン酸ジプラシドンからなり、実施例11はクエン酸ジプラシドンからなり、実施例12はコハク酸ジプラシドンからなっていた。
【0190】
これらの試験の結果を表9に表す。これらのデータから、ジプラシドンの高エネルギー塩形態により、対照1の1.3〜5.5倍のMDC値、および対照1の1.5〜5.5倍のAUC90値がもたらされることが示され、これらの塩形態が、ジプラシドンの溶出速度が改善されたまたは溶解度が改善された形態であることが示された。
【0191】
(実施例13)
実施例1に記載のジプラシドン形態(ジプラシドン−SBECDの凍結乾燥複合体)を、上述の溶出試験で試験した。表9に要約したこの試験の結果から、凍結乾燥粉末により対照1の7.8倍のMDC、対照1の9.5倍のAUC90値がもたらされることが示された。したがって、凍結乾燥粉末は、ジプラシドンの溶出速度が改善されたおよび/または溶解度が改善された形態である。
【0192】
(実施例14)
実施例2に記載のジプラシドン形態(ジプラシドンナノ粒子)を、上述のin vitro溶出試験で評価した。表9に要約したこの試験の結果から、ジプラシドンナノ粒子により対照1の6.5倍のMDC、対照1の6.8倍のAUC90値がもたらされることが示された。したがって、ジプラシドンナノ粒子は、ジプラシドンの溶出速度および/または溶解度が改善された改善された形態である。
【0193】
(実施例15)
結晶化した噴霧乾燥した分散体(CSDD)としても知られるHPMCAS−Hマトリックス中の半規則塩酸ジプラシドンからなるジプラシドン形態を、以下の手順に従って調製した。最初に、以下の手順を用いて、メタノール中の0.2重量%の塩酸ジプラシドン一水和物および1重量%のHPMCAS−HGからなる噴霧溶液を調製した。メタノールを、上部搭載のミキサーを備えたステンレス鋼タンクに加えた。次に、ジプラシドンをタンクに動揺しながら加えた。タンクのヘッドスペースに窒素をパージして、ジプラシドンの酸化分解を防止するために酸素を除去した。その後、タンクを50℃まで加熱してジプラシドンを溶解した。その後、HPMCASをタンクに加え、1時間混合して噴霧溶液を形成し、これを室温まで冷却した。
【0194】
噴霧溶液を、250μmのフィルターを通して濾過し、その後、高圧ポンプを用いて、圧力ノズル(SK79−16 Pencil Point圧力ノズル)を備えた噴霧乾燥機(液体供給プロセス容器を備えたNiro型XP携帯用噴霧乾燥機)(「PSD−1」)にポンピングした。PSD−1は、9インチ(22.7cm)チャンバの拡張を備えていた。噴霧乾燥機は、乾燥用ガスを噴霧乾燥チャンバ内に導入するためのDPHガス分散器も備えていた。噴霧溶液は、約120g/分、約200psigの圧力で噴霧乾燥機にポンピングした。乾燥用ガス(例えば窒素)は、DPHの蓋を通して、約1925g/分の流速、約150℃の導入口温度で噴霧乾燥機内に導入した。蒸発した溶媒および湿った乾燥用ガスは、約53℃の温度で噴霧乾燥機を出た。
【0195】
生じた噴霧乾燥分散体(SDD)をサイクロンで回収し、その後、約1cm以下の粉末の深さで、40℃および15%の相対湿度(RH)で少なくとも4時間稼働させた対流トレイ乾燥機内で乾燥させた。その後、SDDを50℃および90%の相対湿度に24時間曝露することによって、CSDDをトレイ乾燥機内で形成した。PXRD、DSC、およびTEMによるCSDDの分析により、CSDD中のジプラシドンが半規則であり、結晶ドメインの大きさが50nm〜200nmの桁であることが示された。
【0196】
生じたCSDDを、上述のin vitro溶出試験で評価した。表9に要約したこの試験の結果から、15%AのCSDDにより対照1の1.5倍のMDC、対照1の1.4倍のAUC90値がもたらされることが示された。したがって、15%AのCSDD製剤は、ジプラシドンの溶出速度が改善されたおよび/または溶解度が改善された形態である。
【0197】
(実施例16)
25%Aの塩酸ジプラシドン:HPMCAS−H CSDDからなるジプラシドン形態は、以下の例外を用いて、実施例15に概要を示した手順を用いて形成した。噴霧溶液は、メタノール中の0.2重量%の塩酸ジプラシドン一水和物および0.5重量%のHPMCAS−Hからなっていた。生じたCSDDを、上述のin vitro溶出試験で評価した。表9に要約したこの試験の結果から、25%AのCSDDにより対照1の2.1倍のMDC、対照1の2.1倍のAUC90値がもたらされることが示された。したがって、25%AのCSDD製剤は、ジプラシドンの溶出速度が改善されたおよび/または溶解度が改善された形態である。
【0198】
(実施例17)
25%Aのジプラシドン遊離塩基:HPMC CSDDからなるジプラシドン形態は、以下の手順を用いて形成した。最初に、以下のように、95/5(w/w)のテトラヒドロフラン(THF)/水溶媒中の0.85重量%のジプラシドン遊離塩基、2.55重量%のHPMC(E3 Premium LV)、および0.02重量%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)からなる噴霧溶液を形成した。最初に、BHTを、上部搭載のミキサーを備えたステンレス鋼容器に加えた。その後、THFおよび水を加えてBHTを溶解した。その後、ジプラシドンをこの混合物に加え、ヘッドスペースに窒素をパージして酸素を除去した。その後、混合物を少なくとも2時間混合してジプラシドンを溶解した。その後、HPMCを混合物に加え、少なくとも2時間混合して噴霧溶液を形成した。
【0199】
噴霧溶液を、250μmのフィルターを通して濾過し、その後、高圧ポンプを用いて、圧力ノズル(SK78−16 Pencil Point圧力ノズル)を備えた噴霧乾燥機(液体供給プロセス容器を備えたNiro型XP携帯用噴霧乾燥機)(「PSD−1」)にポンピングした。PSD−1は、9インチ(22.7cm)および6フィート(1.83m)のチャンバの拡張を備えていた。噴霧乾燥機は、乾燥用ガスを噴霧乾燥チャンバ内に導入するためのDPHガス分散器も備えていた。噴霧溶液は、約131g/分、約150psigの圧力で噴霧乾燥機にポンピングした。乾燥用ガス(例えば窒素)は、DPHの蓋を通して、約1600g/分の流速、約106℃の導入口温度で噴霧乾燥機内に導入した。蒸発した溶媒および湿った乾燥用ガスは、約42℃の温度で噴霧乾燥機を出た。
【0200】
生じた噴霧乾燥分散体(SDD)をサイクロンで回収し、その後、約1cm以下の粉末の深さで、40℃および50%の相対湿度で少なくとも6時間稼働させた対流トレイ乾燥機内で乾燥させた。その後、SDDを40℃および90%の相対湿度に16〜24時間曝露することによって、CSDDをトレイ乾燥機内で形成した。PXRD、DSC、およびTEMによるCSDDの分析により、CSDD中のジプラシドンが半規則であり、結晶ドメインの大きさが50nm〜200nmの桁であることが示された。
【0201】
生じたCSDDを、上述のin vitro溶出試験で評価した。表9に要約したこの試験の結果から、25%AのCSDDにより対照1の4.8倍のMDC、対照1の6.3倍のAUC90値がもたらされることが示された。したがって、25%AのCSDD製剤は、ジプラシドンの溶出速度が改善されたおよび/または溶解度が改善された形態である。
【0202】
(実施例18〜19)
塩酸ジプラシドン一水和物CSDD錠剤(B1およびB2)
40mgAのジプラシドンを含有する即時放出錠剤を、実施例15および16に記載の塩酸ジプラシドン:HPMCAS−H CSDDを用いて調製した。実施例18の錠剤の組成は以下のとおりであった:
【0203】
【表15】
【0204】
実施例19の錠剤の組成は以下のとおりであった:
【0205】
【表16】
【0206】
(実施例20〜22)
塩酸ジプラシドン一水和物CSDDマトリックス錠−短時間(B3)、中等時間(B4)、長時間
それぞれ40mgAのジプラシドンを含有する持続放出マトリックス錠を、実施例16に記載の25%Aの塩酸ジプラシドン:HPMCAS−H CSDDを用いて調製した。実施例20(B3)の錠剤の組成は以下のとおりであった:
【0207】
【表17】
【0208】
実施例21(B4)の錠剤の組成は以下のとおりであった:
【0209】
【表18】
【0210】
実施例22(長時間錠剤)の錠剤の組成は以下のとおりであった:
【0211】
【表19】
【0212】
実施例20、21および22のin vitro溶出試験の結果を図1に示す。
【0213】
(実施例23〜25)
15%Aの塩酸ジプラシドン一水和物CSDDマトリックス錠−短時間、中等時間、長時間
それぞれ40mgAのジプラシドンを含有する持続放出マトリックス錠を、実施例15に記載の15%Aの塩酸ジプラシドン:HPMCAS−H CSDDを用いて調製した。実施例23(短時間錠剤)の錠剤の組成は以下のとおりであった:
【0214】
【表20】
【0215】
実施例24(中等時間錠剤)の錠剤の組成は以下のとおりであった:
【0216】
【表21】
【0217】
実施例25(長時間錠剤)の錠剤の組成は以下のとおりであった:
【0218】
【表22】
【0219】
2%(w/v)のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を加えた0.05MのNaH2PO4媒体中、pH7.5に調節した、パドルが75rpmの、実施例23、24および25のin vitro溶出試験の結果を、図2に示す。
【0220】
(実施例26)
ジプラシドン遊離塩基CSDD錠剤(D1)
実施例17に記載の25%Aのジプラシドン遊離塩基HPMC CSDD製剤を用いて、40mgAのジプラシドンを含有する即時放出剤形を調製した。錠剤の配合は以下のとおりであった:
【0221】
【表23】
【0222】
製剤D1のin vitro溶出試験の結果を図3に示す。
【0223】
(実施例27)
コーティングしたビーズ
ジプラシドンでコーティングしたビーズは、以下の手順を用いて調製した。最初に、水中の26.67重量%の実施例16に記載の25%Aの塩酸ジプラシドン:HPMCAS−H CSDDおよび3.33重量%のHPMC E3 Premiumからなる溶液を形成して、CSDD粒子の懸濁液を形成した。その後、この溶液を、Willy A Bachofen(WAB)DynoMillモデルKDL動揺機−ビーズ粉砕機を用いて、ワンパス立体配置で湿式粉砕した。粉砕チャンバの体積は0.3Lであり、0.15mmのガス分離器を備えていた。研磨用ビーズは0.7〜1.0mmの鉛を含まないガラスであり、バルク体積が250mLであった。粉砕プロセス中、懸濁液を5℃まで冷却した。粉砕速度は4200rpmであり、粉砕時間は懸濁液1kgあたり29分であった。生じた粉砕した懸濁液を、溶解したHPMCを含有する水で希釈して、12重量%のCSDD、3重量%のHPMC、および水からなる噴霧懸濁液を形成した。
【0224】
その後、還元ボウル(reduced−bowl)(例えばMP−1)Precision Coater挿入を備えたNiro MP−2流動床を用いて、噴霧懸濁液を20/25のメッシュ糖球上に55重量%のコーティング重量レベルまでコーティングした。コーティング条件は以下のとおりであった。流動床は、高さ250mm、30mmの旋回挿入、および20mmの仕切り高さギャップの80mmのカラムを備えていた。噴霧ノズルは、1.2mmの挿入および3.0mmのスペーサーを有するSchlick970であった。流体化空気は、65℃の導入口温度、11℃の露点温度、および90m3/時の流速に設定した。床の温度は32℃に保った。噴霧懸濁液の供給速度は16g/分であり、微粒化圧力は1.5bargであった。
【0225】
生じたジプラシドンでコーティングしたビーズは、44重量%のCSDD、11重量%のHPMC、および45重量%の糖球からなり、約11重量%Aのジプラシドンを含有していた。
【0226】
(実施例28)
Eudragit(登録商標)腸溶コーティングしたビーズ(B6形)
実施例27のジプラシドンでコーティングしたビーズを、流動床プロセスにおいて腸溶ポリマーでコーティングした。腸溶コーティング溶液は、15.84重量%のEudragit(登録商標)−L30D−55、1.76重量%のクエン酸トリエチル、および82.40重量%の水からなっていた。この腸溶コーティング溶液を、ジプラシドンでコーティングしたビーズ上に噴霧して、CSDDをビーズ上に噴霧コーティングするために実施例24で用いた条件と同じ条件を使用して10.1重量%のコーティング重量を達成した。生じた腸溶コーティングしたビーズは、約9.89重量%Aのジプラシドンからなっていた。
【0227】
製剤B6のin vitro溶出試験の結果を図4に示す。pH6.0は菱形で表し、pH7.5は丸で表す。
【0228】
(実施例29)
HPMCAS−H腸溶コーティングしたビーズ(B5形)
実施例27のジプラシドンでコーティングしたビーズを、流動床プロセスにおいて腸溶ポリマーでコーティングした。腸溶コーティング溶液は、8重量%のHPMCAS−Hおよび92重量%のアセトンからなっていた。この腸溶コーティング溶液を、ジプラシドンでコーティングしたビーズ上に噴霧して、CSDDをビーズ上に噴霧コーティングするために実施例24で用いた条件と同じ条件を使用して20重量%のコーティング重量を達成した。生じた腸溶コーティングしたビーズは、約8.8重量%Aのジプラシドンからなっていた。
【0229】
製剤B5のin vitro溶出試験の結果を図5に示す。pH6.0は菱形で表し、pH7.5は丸で表す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶食状態のヒトにCNS障害を治療するために有効なジプラシドンの量を含む固体経口剤形を投与することを含み、前記投与後のヒトにおけるジプラシドンの血清濃度対時間曲線下面積(AUC0〜inf)が、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされるジプラシドン血清濃度対時間曲線下平均面積(AUC0〜inf)の70%〜140%である、ヒトにおいてCNS障害を治療する方法。
【請求項2】
絶食状態のヒトにCNS障害を治療するために有効なジプラシドンの量を含む固体経口剤形を投与することを含み、前記投与後のヒトにおけるジプラシドンの血清濃度対時間曲線下面積(AUC0〜inf)が、同じ量のジプラシドンを含有する同一の固体経口剤形を、摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされるジプラシドン血清濃度対時間曲線下平均面積(AUC0〜inf)の70%〜140%である、ヒトにおいてCNS障害を治療する方法。
【請求項3】
有効量のジプラシドンを含む固体経口剤形を絶食状態のヒトに投与することによってヒトにおいてCNS障害を治療する方法であり、前記投与後のヒトにおけるジプラシドンの血清AUC0〜infが、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされる平均ジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%であり、かつ同じ量のジプラシドンを含有する同一の固体経口剤形を摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされる平均ジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%である方法。
【請求項4】
絶食状態で投与した後の最大ジプラシドン血清濃度(Cmax)が、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを摂食状態のヒトに投与した結果もたらされる最大ジプラシドン血清濃度(Cmax)の約140%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
絶食状態のヒトに有効量のジプラシドンを含む固体経口剤形を投与することを含み、絶食状態のヒトに少なくとも20ng/mlの定常状態最小血液ジプラシドン濃度(Cmin)および330ng/ml未満の定常状態最大血液ジプラシドン濃度(Cmax)を提供する、ヒトにおいてCNS障害を治療する方法。
【請求項6】
剤形中のジプラシドンが、溶出速度が改善された形態もしくは溶解度が改善された形態のジプラシドンおよび/または沈殿阻害剤と組み合わせたジプラシドンを含む、請求項1、2、3、4、または5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
剤形中のジプラシドンが、トシル酸ジプラシドン、酒石酸ジプラシドン、またはシクロデキストリンと組み合わせたジプラシドンを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
剤形中のジプラシドンが、ジプラシドンナノ粒子を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
剤形中のジプラシドンが、ジプラシドンとポリマーとの固体混合物を含み、固体混合物中のそのジプラシドンの少なくとも一部分は半規則状態である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
固体経口剤形が、持続放出手段、遅延放出手段、即時放出部分、または任意のその組合せを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
固体経口剤形が、持続放出手段を含み、かつ遅延放出手段および/または即時放出部分を含んでいてもよく、固体経口剤形中のジプラシドンは、ジプラシドンとポリマーとの固体混合物を含み、そのジプラシドンの少なくとも一部分は半規則状態である、請求項1、2、または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
固体経口剤形が即時放出錠剤または持続放出錠剤であり、前記錠剤は、半規則塩酸ジプラシドンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)を含む固体混合物を含む、請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
固体経口剤形が即時放出部分および持続放出部分を含み、持続放出部分は、半規則塩酸ジプラシドンおよびHPMCASを含む固体混合物を含む、請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
絶食状態のヒトが、固体経口剤形を投与する前の少なくとも2時間および投与した後の少なくとも2時間に250カロリー以上を食べていない、請求項1、2、3、4または5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
絶食状態のヒトが、固体経口剤形を投与する前の少なくとも2時間および投与した後の少なくとも2時間に250カロリー以上を食べていない、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
a)有効量のジプラシドンおよび薬学的に許容できる担体を含む固体経口剤形と、
b)(a)の剤形を経口投与するための指示であって、
i)食物と共に投与することを指定しない、または
ii)(a)の剤形を食物と共にもしくは食物なしで投与し得ることを指定する指示と
を含み、前記固体経口剤形が、絶食状態のヒトに投与した場合に、そのヒトに、摂食状態のヒトのコホートに、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを投与した結果もたらされる平均ジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%である血清ジプラシドンAUC0〜infをもたらす
キット。
【請求項17】
a)有効量のジプラシドンおよび薬学的に許容できる担体を含む固体経口剤形と、
b)(a)の剤形を経口投与するための指示であって、
i)食物と共に投与することを指定しない、または
ii)(a)の剤形を食物と共にもしくは食物なしで投与し得ることを指定する指示と
を含み、前記固体経口剤形が、絶食状態のヒトに投与した場合に、そのヒトに、同じ量のジプラシドンを含有する同一のジプラシドン固体経口剤形を、摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされる平均ジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%である血清ジプラシドンAUC0〜infをもたらす
キット。
【請求項18】
ジプラシドンが、溶出速度が改善された形態もしくは溶解度が改善された形態のジプラシドンおよび/または沈殿阻害剤と組み合わせたジプラシドンを含む、請求項16または17に記載のキット。
【請求項19】
薬学的に許容できる担体およびCNS障害の治療に有効な量のジプラシドンを含む固体経口剤形であって、溶出速度が改善された形態または溶解度が改善された形態のジプラシドンを含み、絶食状態のヒトに同じ量のジプラシドンを含有する同一の固体経口剤形を、摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされるジプラシドン血清濃度対時間曲線下平均面積(AUC0〜inf)の70%〜140%であるジプラシドンの血清濃度対時間曲線下面積(AUC0〜inf)をもたらす、固体経口剤形。
【請求項20】
剤形中のジプラシドンの量が20、40、60または80mgAである、請求項19に記載の固体経口剤形。
【請求項1】
絶食状態のヒトにCNS障害を治療するために有効なジプラシドンの量を含む固体経口剤形を投与することを含み、前記投与後のヒトにおけるジプラシドンの血清濃度対時間曲線下面積(AUC0〜inf)が、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされるジプラシドン血清濃度対時間曲線下平均面積(AUC0〜inf)の70%〜140%である、ヒトにおいてCNS障害を治療する方法。
【請求項2】
絶食状態のヒトにCNS障害を治療するために有効なジプラシドンの量を含む固体経口剤形を投与することを含み、前記投与後のヒトにおけるジプラシドンの血清濃度対時間曲線下面積(AUC0〜inf)が、同じ量のジプラシドンを含有する同一の固体経口剤形を、摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされるジプラシドン血清濃度対時間曲線下平均面積(AUC0〜inf)の70%〜140%である、ヒトにおいてCNS障害を治療する方法。
【請求項3】
有効量のジプラシドンを含む固体経口剤形を絶食状態のヒトに投与することによってヒトにおいてCNS障害を治療する方法であり、前記投与後のヒトにおけるジプラシドンの血清AUC0〜infが、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされる平均ジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%であり、かつ同じ量のジプラシドンを含有する同一の固体経口剤形を摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされる平均ジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%である方法。
【請求項4】
絶食状態で投与した後の最大ジプラシドン血清濃度(Cmax)が、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを摂食状態のヒトに投与した結果もたらされる最大ジプラシドン血清濃度(Cmax)の約140%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
絶食状態のヒトに有効量のジプラシドンを含む固体経口剤形を投与することを含み、絶食状態のヒトに少なくとも20ng/mlの定常状態最小血液ジプラシドン濃度(Cmin)および330ng/ml未満の定常状態最大血液ジプラシドン濃度(Cmax)を提供する、ヒトにおいてCNS障害を治療する方法。
【請求項6】
剤形中のジプラシドンが、溶出速度が改善された形態もしくは溶解度が改善された形態のジプラシドンおよび/または沈殿阻害剤と組み合わせたジプラシドンを含む、請求項1、2、3、4、または5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
剤形中のジプラシドンが、トシル酸ジプラシドン、酒石酸ジプラシドン、またはシクロデキストリンと組み合わせたジプラシドンを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
剤形中のジプラシドンが、ジプラシドンナノ粒子を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
剤形中のジプラシドンが、ジプラシドンとポリマーとの固体混合物を含み、固体混合物中のそのジプラシドンの少なくとも一部分は半規則状態である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
固体経口剤形が、持続放出手段、遅延放出手段、即時放出部分、または任意のその組合せを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
固体経口剤形が、持続放出手段を含み、かつ遅延放出手段および/または即時放出部分を含んでいてもよく、固体経口剤形中のジプラシドンは、ジプラシドンとポリマーとの固体混合物を含み、そのジプラシドンの少なくとも一部分は半規則状態である、請求項1、2、または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
固体経口剤形が即時放出錠剤または持続放出錠剤であり、前記錠剤は、半規則塩酸ジプラシドンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)を含む固体混合物を含む、請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
固体経口剤形が即時放出部分および持続放出部分を含み、持続放出部分は、半規則塩酸ジプラシドンおよびHPMCASを含む固体混合物を含む、請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
絶食状態のヒトが、固体経口剤形を投与する前の少なくとも2時間および投与した後の少なくとも2時間に250カロリー以上を食べていない、請求項1、2、3、4または5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
絶食状態のヒトが、固体経口剤形を投与する前の少なくとも2時間および投与した後の少なくとも2時間に250カロリー以上を食べていない、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
a)有効量のジプラシドンおよび薬学的に許容できる担体を含む固体経口剤形と、
b)(a)の剤形を経口投与するための指示であって、
i)食物と共に投与することを指定しない、または
ii)(a)の剤形を食物と共にもしくは食物なしで投与し得ることを指定する指示と
を含み、前記固体経口剤形が、絶食状態のヒトに投与した場合に、そのヒトに、摂食状態のヒトのコホートに、同じ量のジプラシドンを含有する対照ジプラシドン即時放出経口カプセルを投与した結果もたらされる平均ジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%である血清ジプラシドンAUC0〜infをもたらす
キット。
【請求項17】
a)有効量のジプラシドンおよび薬学的に許容できる担体を含む固体経口剤形と、
b)(a)の剤形を経口投与するための指示であって、
i)食物と共に投与することを指定しない、または
ii)(a)の剤形を食物と共にもしくは食物なしで投与し得ることを指定する指示と
を含み、前記固体経口剤形が、絶食状態のヒトに投与した場合に、そのヒトに、同じ量のジプラシドンを含有する同一のジプラシドン固体経口剤形を、摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされる平均ジプラシドン血清AUC0〜infの70%〜140%である血清ジプラシドンAUC0〜infをもたらす
キット。
【請求項18】
ジプラシドンが、溶出速度が改善された形態もしくは溶解度が改善された形態のジプラシドンおよび/または沈殿阻害剤と組み合わせたジプラシドンを含む、請求項16または17に記載のキット。
【請求項19】
薬学的に許容できる担体およびCNS障害の治療に有効な量のジプラシドンを含む固体経口剤形であって、溶出速度が改善された形態または溶解度が改善された形態のジプラシドンを含み、絶食状態のヒトに同じ量のジプラシドンを含有する同一の固体経口剤形を、摂食状態のヒトのコホートに投与した結果もたらされるジプラシドン血清濃度対時間曲線下平均面積(AUC0〜inf)の70%〜140%であるジプラシドンの血清濃度対時間曲線下面積(AUC0〜inf)をもたらす、固体経口剤形。
【請求項20】
剤形中のジプラシドンの量が20、40、60または80mgAである、請求項19に記載の固体経口剤形。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2009−215293(P2009−215293A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−52853(P2009−52853)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52853(P2009−52853)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】
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