説明

食物繊維および食物繊維の調製方法

本発明はパイナップルから得られた可溶性抗酸化食物繊維および可溶性抗酸化繊維を提供するためのパイナップルパルプの処理方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食物繊維および食物繊維の調製方法に関する。より特定的には、本発明は高い抗酸化活性を有する可溶性食物繊維の調製に関する。
【背景技術】
【0002】
医学会において、果物、野菜および全粒シリアルは、比較的大きく関連する食物繊維の摂取のために、健康的な食生活に重要であるとして広く受け入れられている。食物繊維のコレステロールの減少、心疾患、脳卒中、2型糖尿病および多くの他の慢性疾患のリスクの低減に対する効果は確立している。果物、野菜および全粒粉の豊富な食生活の効果の一つは、特にヒドロキシケイ皮酸およびフラボノイドのような食物ポリフェノールの比較的大きく関連する摂取にも、部分的に起因している。ポリフェノールの摂取は、心疾患、脳血管疾患、2型糖尿病、肺および前立腺がん、および他の慢性疾患のリスク減少に有益である。食物ポリフェノールの抗酸化および抗炎症性の特性は、酸化的ストレスまたは炎症を含む他の慢性疾患に対しても有益であるとも考えられている。
【0003】
精製フィトケミカルを含む補助食品を用いて、野菜、全粒穀物および果物の健康および食事療法の効果を再現する試みが行われている。一方、近年、Liu(J. Nutr. 134 (2004) 3479S-3485S)を含めた多くの著者が、相互作用を完全に再現できないことを明らかにしている。完全に分かっていないものの、食物繊維と疾患の予防との間の関係は、食物繊維抗酸化物質と他の生物学的活性成分との間の相互作用によるものと考えられている。
【0004】
米国心臓協会は、補助食品ではなく食物からの1日当たり25−30グラムの総食物繊維の摂取を推奨している。近年の米国での成人の食物繊維摂取は、前記推奨量の約半分である。この、一般的に“ファイバーギャップ”と呼ばれている相違は、公衆衛生にとって深刻な問題である。
【0005】
消費者は1日の消費量の重要な構成要素として、果物および野菜ジュースに頼り勝ちである。これらの製品は健康的で、丸ごとの果物や野菜に比べてより簡便であるように思われるが、米国心臓協会は搾汁工程の間に果物および野菜の栄養価が失われると警告し、医療関係者がジュースの消費を強調すべきではないと勧告している。たとえば、リンゴジュースの準備中に、ほとんどの食物繊維およびポリフェノールはジュースに移行するより、むしろ絞りかすに維持される。丸1個のリンゴに関係する食物繊維およびポリフェノールを消費するためには、したがって3本の250ml入りアップルジュースを飲む必要がある。
【0006】
食物繊維の損失の補助として、果物飲料に食物繊維を添加することが提案されている。イヌリンなどの一般的な食物繊維のいくつかは、低いpHおよび高温の条件下で不安定であるという不利な点がある。したがって、これらは低温殺菌の間に加水分解される。KlewickiはFood Science Technology 40 (2007) 1259-1265の中で、果物および野菜飲料の準備におけるイヌリンの使用は、予想よりも低い繊維レベルと予想よりも高い糖類レベルをもたらすと報告している。
【0007】
試みは、補助食物ポリフェノールにも行われている。しかしながら、植物系フェノール、フラボノイド、イソフラボノイド、テルペン(turpenes)およびグルコースイノレート(glucose inolates)はほとんど常に苦み、刺激臭または渋みがある。したがって加工添加物は消費者にとって魅力的でなく、食品産業にとってジレンマとなっている。
【0008】
果物や野菜から抗酸化食物繊維を分離する試みもなされている。しかしながら、近年入手可能な加工果物繊維製品は、本当の意味で可溶性ではないという問題に直面している。全ての現行製品は、目下、30%から50%の不溶性繊維を含む“果物粉末”の形態である。これはどろどろ、ざらざらした粗い飲料となる傾向にあり、消費者にとって美味しさや受け入れ可能性が少ないものである。
【0009】
本明細書中における、文献、行為、原料、装置、記事およびこのようなものに対する議論は、本発明の内容を提供する目的のみのために含まれる。本発明に関する分野の先行技術の部分を形成し、または一般常識であったこれらの事項のいずれかまたは全ては、本出願のそれぞれの請求項の優先日より前に存在していたことを意味し、または示すものではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
我々は、パイナップルパルプを、パルプを酸性pHで加熱して抽出することで、フェノール性抗酸化物質を抽出できることを見出した。
【0011】
したがって、我々はパイナップルを準備してパルプを105℃から150℃、より好ましくは110℃から145℃、もっとも好ましくは120℃から140℃の範囲内の温度に加熱する工程と、可溶性繊維成分を除去する工程とを含む、水溶性抗酸化食物繊維を準備する方法を提供する。
【0012】
好ましくは前記パルプは少なくとも30秒間、好ましくは3分間から5時間、より好ましくは5分間から2時間加熱され得る。好ましい実施の形態において、パルプは加熱工程後に、固形物から可溶性繊維を分離するために、機械的または超音波処理される。
【0013】
一実施の形態において、加熱工程は、温度を少なくとも10分間、好ましくは10分間から5時間の間、90℃から150℃の範囲内の温度に維持する工程を含み、これは前記温度を105℃から150℃、より好ましくは110℃から145℃、およびもっとも好ましくは120℃から140℃の範囲内で、少なくとも30秒間、好ましくは3分間から5時間、より好ましくは5分間から2時間維持する工程を含む。
【0014】
前記工程は、遊離糖類を除去する工程と、抗酸化繊維を濃縮する工程とをさらに含むことができる。
【0015】
特に好ましい実施の形態において、本発明は抗酸化食物繊維を準備する方法を提供し、該方法は、
パイナップルパルプを105℃から150℃、好ましくは110℃から145℃、もっとも好ましくは120℃から140℃の範囲内の温度で、少なくとも30秒間、好ましくは3分間から5時間、もっとも好ましくは5分間から2時間加熱する工程と、
オートクレーブ処理されたパイナップルパルプのpHを3.2から6.5、より好ましくはpHを3.5から4.5の範囲内にする工程と、
加熱された原料を、固形原料からの可溶性原料の除去を促進するために、機械的または超音波処理する工程と、
可溶化繊維を不溶性原料から分離する工程と、
遊離糖類を少なくとも部分的に除去する工程と、
可溶性抗酸化繊維を濃縮する工程とを含む。
【0016】
さらなる一観点において、本発明はパイナップルから得られた可溶性抗酸化繊維を提供する。前記可溶性抗酸化食物繊維は、パイナップルパルプを、105℃から150℃、より好ましくは110℃から145℃の範囲内の温度で、pH3.2から6.5、好ましくはpH3.5から5.6、もっとも好ましくはpH3.5から4.5の範囲内のpHとなるようにオートクレーブすることにより得ることを特徴とすることが好ましい。原料は抗酸化食物繊維の少なくとも一部を可溶化するのに十分な時間オートクレーブすることができ、好ましくは少なくとも30秒間、より好ましくは3分間から5時間である。
【0017】
一実施の形態において、加熱工程は90℃から150℃の範囲内の温度を少なくとも10分間、好ましくは10分間から5時間維持する工程を含むことができ、105℃から150℃、より好ましくは110℃から145℃、もっとも好ましくは120℃から140℃の範囲内の温度を、少なくとも30秒間、好ましくは3分間から5時間、より好ましくは5分間から2時間維持する工程を含む。少なくとも105℃から150℃、より好ましくは110℃から145℃、もっとも好ましくは120℃から140℃の温度で少なくとも30秒間(好ましくは少なくとも3分間、より好ましくは少なくとも5分間)がパルプからの抗酸化食物繊の除去の促進にとって重要である一方、90℃から150℃の範囲内の温度で追加の期間維持することは、分離の最適化および/または可溶化原料を不溶性原料から分散させることができるために有用である。
【0018】
本明細書の記述および特許請求の範囲を通じて、“含む(comprise)”ならびに“含む(comprising)”および“含む(comprises)”などの派生語は、他の添加剤、成分、整数または工程を除外することを意図しない。
【0019】
詳細な説明
本発明はパイナップルから得られる可溶性食物繊維およびパイナップルから可溶性食物繊維を得る方法に関する。我々は、パイナップルは果物および野菜の中で、可溶性食物繊維中に高レベルの抗酸化活性を得ることができるという点で比類のないものであることを見出した。
【0020】
すでに、可溶性食物繊維および関連するフェノール化合物は、Hartleyによってさまざまな果物、野菜および穀物ふすまから抽出された[Am. J. Clin. Nutr. 31 (1978) S90-S93]。抽出は窒素下の1N 水酸化ナトリウム中において、20℃で20時間行われた。Hartleyは試験された全ての原料の中で、パイナップルの細胞壁が最も高レベルのフェノール化合物を含んでいたと報告している。パイナップルはヘミセルロースが非常に豊富であると報告されている[Vidal-Valverdeら、J. Food Sci. 47 (1982) 1840-1845]。パイナップルのヘミセルロースはエステル結合したフェルラ酸を含むことが知られているが[Smith and Harris、Plant Physiol. 107 (1995) 1399-1409]、パイナップルの抗酸化物質の含有量は、一般的に他の果物や野菜に比べて低く位置づけられている。たとえばSunら[J. Agric. Food Chem. 50 (2002) 7449-7454]、Guoら[Nutr. Res. 23 (2003) 1719-1726]、Wuら[J. Agric Food Chem. 52 (2004) 4046-4037]、およびgarcia-Alonsoら[Food. Chem. 84 (2004) 13-18]。
【0021】
歴史的に、“ヘミセルロース”という用語はペクチン以外の非セルロース壁多糖類に適用されており、これは典型的には1−4Mのアルカリ性溶液中で抽出できる[Huismanら、Carbohydr. Polym. 42 (2000) 185-191]。ヘミセルロースは、キシログルカン、グルコ−およびガラクトグルコマンナン、ガラクトマンナン、(1→3)−ベータ−グルカンおよびグルクロノアラビノキシランを含む様々な多糖類を含むことが知られている。
【0022】
グルクロノアラビノキシラン(通常は略して“アラビノキシラン”と呼ばれる)は、しばしばフェルラ酸やp−クマル酸などのフェノール酸も含む。多糖類の主鎖に沿ってエステル結合からアラビノース側鎖に通じて共有結合が存在する[Saulnier & Thibault、J. Sci. Food Agric. 79 (1999) 396-402]。たとえば、小麦アラビノキシランはフェルラ酸が豊富で、オート麦およびトウモロコシアラビノキシランは十分な割合のフェルラ酸およびp−フェルラ酸の両方を含み、一方、オオバコアラビノキシランは検出可能なフェノール酸を含まない[Gioacchini et al、 J. Chromatogr. A 730 (1996) 31-37]。
【0023】
細胞壁に存在するフェノール酸は、多糖類を、リグニン、蛋白質および他の多糖類を含む他の細胞壁成分と結合するのに重要な役割を果たすと考えられている。このような結合反応は、細胞壁結合ペルオキシダーゼがおそらく触媒作用を及ぼし、消化性が悪いであろう架橋マトリックス構造を形成する。穀物アラビノキシランに結合しているフェノール酸は、穀物ふすまに関連する抗酸化活性の少なくともいくつかの原因となっている[Liyana-PathiranaおよびShahidi、J Agric. Food Chem. 54 (2006) 1256-1264]。
【0024】
抗酸化物質の豊富な可溶性食物繊維は、熱水抽出によって穀物ふすまから回収できるが、収率が非常に低い[Bunzelら、J. Sci. Food Agric. 81 (2001) 653-660]。ヘミセルロース酵素での処理はフェルロイル化オリゴ糖を産生するが、高分子量の食物繊維ではない(Yuanら、Food Chem. 90 (2005) 759-764)。穏やかなアルカリ条件下での抽出によってフェルロイル化アラビノキシランを放出できるが、収率が低い。アルカリ条件下では、ヘミセルロースが抽出されるよりも速い速度で、フェルラ酸がヘミセルロース骨格から取り除かれることが一般的に知られている[Mandalariら、J. Cereal Sci. 42 (2005) 205-212]。穏やかな酸性条件下でのヘミセルロースの抽出は、ヘミセルロース骨格からフェルロイル化アラビノース側鎖の開裂をもたらすことが知られ、これは抗酸化活性の損失の原因となる。抗酸化物質が豊富な側鎖は、天然酸性ヘミセルロースを煮ることを通じて[Whistler & Corbett、J. Am. Chem. Soc. 77 (1995) 6328-6330]、またはpH2で煮ることを通じて[Wallaceら、Carbohydr. Res. 272 (1995) 41-53]自己消化させて遊離することができる。
【0025】
我々はパイナップルパルプから可溶性食物繊維であって、共有結合性のフェルラ酸およびp−クマル酸の存在に由来する、1グラム当たり150−650mgのビタミンEに相当する抗酸化活性を有するような繊維を抽出できることを見出した。驚くべきことに、フェルラ酸基の大きな含有量は、穀物ふすまの強固に接合した、密度の高い構造に関与すると考えられることを考慮すると、対照的に、パイナップルパルプは、柔らかく、開放的な構造を有し、抗酸化物質の含有量が低いと報告されている。
【0026】
我々はパイナップル食物繊維の製造は、高温の穏やかな酸性条件下で行うことができることも見出した。これも驚くべきことで、なぜなら先行技術にはフェルロイル化アラビノース側鎖は、このような条件下でヘミセルロース骨格から取り除かれうると示唆されているからである。
【0027】
本発明はパイナップルパルプを105℃から150℃の範囲内の温度に加熱して、加熱済みパルプがpH3.2から6.5の範囲内のpHを有する、可溶性抗酸化食物繊維の準備に関する。
【0028】
本発明の目的に使用されるパイナップルパルプは、果物、茎、葉および根を含むパイナップル植物のいずれの部分からも得ることができる。もっとも好ましくは、パルプは廃棄された皮または遠心清澄スラッジなどの、商業用搾汁操作の食品等級副産物である。
【0029】
本発明の目的のために用いられるパイナップルパルプは、そのままの残余ジュースを含むものを用いることができ、また抽出前にジュースを回収するために洗浄することができる。パルプを洗浄するか否かは、抽出工程の効果に無関係である。しかしながら、商業的価値または残余パルプジュースの廃棄の容易さには密接な関係があるだろう。
【0030】
我々の経験では、抽出前に全ての可溶性糖類などを完全に洗浄することは実用的ではない。なぜならパイナップルパルプ組織はかなりの拡散障壁を示すからである。非常に大量の洗浄量および長時間の接触時間を用いることによってのみ、糖類などを完全に抽出することが実現可能であるが、これは商業的には現実的ではない。したがって、未洗浄パイナップルパルプを抽出し、後続の工程で遊離糖類などを可溶性繊維から分離することが好ましい。
【0031】
一方、皮の絞り汁中の高比率の糖およびフェノール化合物が、抽出および後続の工程の間に浅黒い化合物の形成をもたらす。色形成の程度は、抽出前にパルプを洗浄することにより低減することができる。この場合、抽出糖類などは別の流れとして収集することができ、任意で洗浄済みパルプ流れに添加できる。
【0032】
原料源にもよるが、パイナップルパルプはスラリーとして大量に投入できるように、サイズを小さくする処理が必要だろう。これは製粉、スライスまたは破砕のようないずれの簡便な方法によって達成できる。一般的に、抽出工程は粒子サイズが小さいほど、拡散限界が減少するためより効率的となる。しかしながら、パルプを超微粒子とすることは、不溶性残留物から可溶化繊維を分離するのがより困難となるために好ましくない。パイナップルパルプの粒子サイズは0.5mmから50mmの範囲とすることができ、最良の結果は2mmから20mmの時であり、より好ましくは5mmから10mmである。
【0033】
パイナップルパルプを大量投入可能なスラリー状にするための適切な量の水と混合する。許容可能な水のパルプに対する比率は、0:1から100:1であるが、経済的および実用的理由から、0.5:1から5:1の範囲が好ましく、1:1から2:1の範囲が最も好ましい。
【0034】
我々は、パイナップルパルプまたは代替的に水とパルプのスラリーに添加する前に、水にアルカリを添加することによって、抽出効率を向上できることを見出した。これはいずれの適切なアルカリを用いて行うことができ、限定されるものではないが水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、アンモニア溶液または重炭酸ナトリウムを含む。食品等級の繊維製品には、食品許可を受けたアルカリを使用する。
【0035】
天然パイナップルパルプのpHは約3.7であり、主にパイナップル中のクエン酸およびリンゴ酸、主要な有機酸に由来する。クエン酸は3つのカルボン酸基を有し、一方マレイン酸は2つ有し、したがってパイナップルパルプ中の酸の混合物は、水酸化ナトリウムのような強アルカリの存在中で非常に複雑な解離行動を有する。我々は、相当量の水酸化ナトリウムを添加した後であっても、パイナップルパルプのpHが酸性領域に維持されていることを見出した。たとえば、等量のパイナップルパルプおよびpH10のNaOH溶液の混合物は、pH5.9の平衡に達する。
【0036】
我々は、初期pHが3から約12に調節された水を用いることによる、繊維抽出効率への大きな影響がないことを見出した。これは平衡pH値を約3.4から約6.5の範囲に下げる天然酸の解離特性に由来するものと考えられる。
【0037】
可溶性抗酸化繊維の抽出における最も良い結果は、pHが3.2から6.5、好ましくは3.5から5.6の範囲内という結果となった。好ましいpHの範囲は3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5および5.6を含む。
【0038】
しかしながら、我々はアルカリを抽出スラリーに添加することに不都合な点があることを見出した。不都合な点の一つは、抽出繊維の色が添加アルカリの量の増加にしたがって次第にに濃くなることである。また、添加アルカリは繊維抽出物中に塩の形態で残り、続いて取り除かなければならず、潜在的な廃棄物処理問題を生じる。
【0039】
したがって、我々はアルカリの使用を完全に避け、パイナップルパルプを天然pHの3.7当たりで抽出することが好都合であることを見出した。しかしながら、天然pHでの抽出の簡便さに関わらず、アルカリを添加し高いpHで抽出することには、追加のコストが含まれるにもかかわらず有利な点が存在し得ることを見出した。たとえば、抽出pHは製品中の測定可能な食物繊維の分子量および粘度および割合を調節するのに使用できる。抽出pHは繊維中の抗酸化物質含有量の最適化にも用いることができ、果物の品質の季節の変化に応じることもできる。
【0040】
抽出方法はパイナップルパルプを105℃から150℃の範囲内の温度に加熱する工程を含む。パイナップルパルプを圧力下で110℃から145℃の範囲内の温度に加熱するのが特に好ましく、120℃から140℃の範囲内がもっとも好ましい。好ましい温度範囲は、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃および145℃を含む。パイナップルパルプは圧力下で加熱されるのが好ましく、たとえば密閉容器中で、温度は120℃から140℃の範囲内である。
【0041】
パイナップルパルプを加熱する期間は、一般的には少なくとも30秒であるが、実用的な目的から該期間は少なくとも3分および5時間未満が好ましい。最適な加熱期間は選択された加熱温度に依り、より高温では短い時間が必要である。145℃では3分間から10分間の加熱時間で十分であり、120℃では1時間から2時間が好ましく、一方105℃では5時間という長時間が好ましいだろう。
【0042】
抽出はバッチ処理または連続処理のいずれでも可能であり、直接水蒸気圧入法、間接蒸気加熱またはマイクロ波照射によってもたらすことができる。
【0043】
我々は選択されたpHでパイナップルパルプを加熱することで水溶性抗酸化繊維の準備が可能になることを見出したが、一方水溶性繊維の収率は、固体からの可溶性原料の除去促進のために、その後パルプに、超音波または機械的処理する工程を行うことで、非常に増加する。超音波処理は、加熱処理工程中または加熱処理工程後に行うことができるが、加熱済みパルプスラリーを、流水式超音波チャンバ内で連続的に処理することにより行うことがもっとも有利である。このようなチャンバを1回以上通過することが、所望の繊維の可溶化の程度を達成するために必要だろう。軟化実質組織は、ディスクミル、プレート精製機、ハンマーミルまたはスライサーのような機械的方法を用いて、油溶性繊維残余物から分離することもできる。しかしながら、このような方法は不溶性繊維の粒子サイズの減少に不都合な点を有し、後に除去しなければならない不溶性微粒子を作り出す。超音波処理は、可溶性繊維を不溶性残余物を大きく変化させることなく分離するため、特に有利である。
【0044】
本発明の工程は、不溶性原料からの可溶化繊維の分離を含む。当該分野で公知の様々な分離技術を、可溶性および不溶性原料の分離を達成するために用いることができる。適切な方法の例は、加圧(たとえばねじプレス、水圧プレス)、ろ過(たとえばドラムフィルター、ディスクフィルター、バスケット遠心分離機、ベルトフィルター)、および重力沈降(たとえばハイドロサイクロン、デカンター遠心分離機、清澄遠心分離機)を含む。適切な方法の選択は、スラリーの粒子サイズおよび不溶性微粒子の充填量に依存する。資本コストおよび廃棄物処理限界も、考慮すべき重要な問題である。たとえば、可溶化繊維の澄明な溶液は加熱済みスラリーを珪藻土をろ過助剤として用いてろ過することによって生産されるが、該ろ過助剤の廃棄は問題となるであろう。可溶化繊維の清澄な溶液はデカンター遠心分離機および清澄遠心分離機の組合せを用いて生産できるが、含まれる資本コストは比較的高い。我々の好ましい選択は、パルプからの繊維溶液の分離を、ねじプレスで行い、微粒子の除去を清澄遠心分離機で行うことである。
【0045】
我々は不溶性繊維成分が、抗酸化物質が豊富なリグニンを含むことを見出した。したがって、本工程から得られる不溶性繊維成分は、可溶性が必ずしも必要でない場合に、抗酸化物質として有用である。
【0046】
本発明の方法は水溶性繊維成分の濃縮を含む。これは、エバポレーションまたは精密ろ過、限外ろ過、ナノろ過および逆浸透などの膜処理を用いて行うことができる。精密ろ過または限外ろ過を用いることの利点は、このような方法は繊維の濃縮を、糖類、酸および灰分成分の除去と同時にでき、このため乾燥がより容易な、より純粋な繊維製品を生産できることである。適切な精密ろ過膜は、0.1ミクロンから1ミクロン、好ましくは0.2ミクロンから0.45ミクロンの間の孔サイズを有する。我々の経験では、精密ろ過での成功は非常に厳密な膜厚の管理に依存し、その場合でも、最大分子量の繊維のみが保持される。繊維製品のより大きな収率は、1,000から100,000の範囲内、好ましくは10,000から20,000の範囲内の分画分子量を有する精密ろ過膜を用いて達成できる。
【0047】
本発明の方法は、好ましくは、たとえばダイアフィルトレーションによって可溶性繊維組成物から遊離糖類を少なくとも部分的に除去する工程を含む。これはパイナップル繊維を無含水粉末まで乾燥させることのできる、糖類濃度の減少という利点を有する。ダイアフィルトレーションは、濃縮工程で使用されたのと同種類の膜を用いてもっとも有利に行うことができる。ダイアフィルトレーションは、好ましくは、パイナップル繊維製品の灰分レベルが乾燥物質基準で1%から5%の間の程度となるまで行われるべきである。これはパルプが加熱前に洗浄されているかどうかに応じて、バッチ式ダイアフィルトレーションの間に3から5の体積変化率に相当する水を用いて達成することができる。
【0048】
この方法で、水溶性抗酸化繊維は、溶液の粘度に応じて、20%から40%w/wの間に濃縮することができる。濃縮溶液は、必要であればさらに殺菌され、食品成分の形態で使用できる。
【0049】
濃縮可溶性抗酸化繊維は、好ましくは微粒子状固体を形成するように乾燥される。適切な乾燥方法は、噴霧乾燥、凍結乾燥およびドラム乾燥などを含む。さらなる一実施の形態において、本発明は抗酸化物質を含み、パイナップルパルプから得られた微粒子状固体水溶性繊維を提供する。
【0050】
本発明の方法は、処理中の繊維の褐色化を防ぐための添加剤および安定剤の添加を含むことができる。HSO3-、SO32-のような硫黄(iv)オキシアニオン形態の二酸化硫黄を添加することが特に好ましい。驚くべきことに、我々はオートクレーブ工程の前にパイナップルパルプにメタ重亜硫酸ナトリウムを添加することが、褐色化形成の防止または実質的減少に十分であることを見出した。メタ重亜硫酸ナトリウムの添加量は、好ましくは10から1,000ppmの範囲内であり、もっとも好ましくは100から300ppmの範囲内である。我々は清澄な繊維溶液にアスコルビン酸を添加することで、濃縮、ダイアフィルトレーションおよび乾燥中の酸化的褐色化をさらに防止できることも見出した。アスコルビン酸の添加量は10から2,00ppmの範囲内が好ましいだろう。我々は500から1,000ppmを繊維溶液に添加することが好ましく、一方10から50ppmをさらにダイアフィルトレーション水にさらに添加することも有利であることを見出した。アスコルビン酸を工程中に用いた場合、pHを適切なアルカリ剤、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、アンモニア溶液または重炭酸ナトリウムなど、を用いて適宜調節する必要があるだろう。
【0051】
本発明の方法は前記の添加剤または安定剤の使用の代替として、またはこのような使用に追加して、褐色化を防止する追加の手段を含むことができる。このような追加の手段は酸化を防止するために窒素のような不活性雰囲気下での処理、または繊維溶液から遊離フェノール化合物を除去するために活性炭を使用することを含む。我々は、フェノール成分の吸着を最大にし、繊維の吸着を最小にする炭素グレードを選択することに注意を払わなければならないものの、活性炭を可溶性繊維溶液から遊離可溶性フェノール成分の除去のために、うまく用いることができることを見出した。
【0052】
本発明のさらなる一観点は、本発明の方法にしたがって準備された微粒子状可溶性繊維を提供する。本発明の可溶性繊維製品は、乾燥重量を基準として、75%から99%の炭水化物と、0.5%から5%のリグニンと、0.5%から5%の脂質と、1%から10%の蛋白質と、1%から5%の灰分とからなり、もっとも好ましくは80%から95%の炭水化物と、1.5%から3.5%のリグニンと、1%から4%の脂質と、2%から7%の蛋白質と、1.5%から3%の灰分とからなる。前記炭水化物成分は、(AOAC公定分析法991.43で測定された)60%から90%の総食物繊維および10%から40%の糖類およびオリゴ糖を含み、好ましくは70%から90%の総食物繊維、もっとも好ましくは80%の総食物繊維を含む。総食物繊維は、(AOAC公定分析法991.43で測定された)90%から100%の可溶性食物繊維および0%から10%の不溶性食物繊維、好ましくは95%から100%の可溶性繊維および0%から5%の不溶性繊維を含む。
【0053】
本発明のパイナップル繊維製品の炭水化物成分は、好ましい一実施の形態において、モルパーセントを基準として、40−80%のキシロースと、5−25%のアラビノースと、2−15%のガラクトースと、0.1−15%のグルコースと、0.1−10%のマンノースと、0−2%のラムノース/フコースと、5−25%のウロン酸とを含む。
【0054】
本発明に係るパイナップル繊維製品の炭水化物成分は、フェノール酸、フェルラ酸およびp−クマル酸も含み、割合および総量は原料および抽出方法によって決まる。典型的には、可溶性食物繊維は0.5%から1%(w/w)の総フェノール酸を含み、該フェノール酸は0.005%から0.02%の遊離酸形態と、炭水化物成分のヘミセルロース側鎖に共有結合している残りとを含む。総フェノール酸含有量は、Ouら(J. Agric. Food Chem. 49 (2001) 4619-4626)によるORAC法で測定された、繊維1グラム当たり、50マイクロモルより大きいトロロックス当量、好ましくは、繊維1グラム当たり、200−800マイクロモルのトロロックス当量の抗酸化活性との関係を有する。この抗酸化活性は、繊維1グラム当たり、150−650mgのビタミンEと同等である。
【0055】
本発明の実施例を添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、様々な食物源の繊維の抗酸化物質(AOX)含有量と可溶性とを比較した概略表である。
【図2】図2は、実施例7で報告された異なるせん断率における、実施例6の組成物Cの粘度応答を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例7に記載された25℃における、実施例6の異なる濃度の組成物Cの、15sec-1のせん断率での様々な粘度を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例10に記載されたリンゴジュース中の12g/L濃度の商業的入手可能な食物繊維を含む組成物Cの粘度の変化とせん断を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明に係る可溶性食物繊維製品は、抗酸化物質および可溶性繊維の両方が豊富である、入手可能な唯一の食物繊維製品であるという点で特徴的である。これは、本発明に係る製品と、他の商業的入手可能な製品とを比較した図1において強調されている。この比較は、各製品が抗酸化物質含有量と溶液中での可溶性の両者の観点から、どのような位置づけとされるか示して作製され、4つの別個の象限を形成している。
【0058】
抗酸化物質が豊富だが、可溶性の低い商品の例として、穀物ふすま、および洗浄済みまたは未洗浄の果物および野菜粉末がある。可溶性が高いが、抗酸化活性が欠如している商品の例として、ペクチン、ベータグルカン、イヌリン、グアー、メチルセルロースおよび難消化性デンプンなどの植物ガムがある。不溶性で抗酸化活性が欠如している商品の例として、セルロースがある。
【0059】
本発明に係る可溶性食物繊維製品は、水中で、小さなせん断速度時はシヤスィニングであり、約10sec-1のせん断速度時はニュートン流体である低粘度溶液を形成する。25℃において、粘度は、1.2%w/vでは0.5−1mPa.s、2.4%w/vでは3mPa.s、4.8%w/vでは20mPa.s、10%w/vでは40−50mPa.sである。溶液は40%w/vの高濃度において、注ぐのが可能な液体状態を維持している。
【0060】
他の観点において、本発明は、本明細書中に記載される可溶性食物繊維を含む食品成分を提供する。このような食品は、飲料、乳製品、豆乳および穀物ミルク、スープ、焼いた食品およびスナックバー、肉製品、乳化食用油、カプセル化食用油、インスタント飲料、インスタントデザートおよびスープミックスを含むことができる。
【0061】
本発明に係る可溶性食物繊維を含む飲料組成物は、果物および野菜ジュース、乳飲料、豆乳、ライスミルク、ドリンクヨーグルトおよび他の酸性乳飲料のような、任意の適切な飲料であり得る。
【0062】
好ましい一実施の形態は、果物または野菜ジュースである。消費者が微粒子状繊維原料を飲料に加えることができ、または代替的に、本発明の特定の組成物を、果物および野菜ジュースなどの保存に安定した飲料を作製するために用いることができる。可溶性繊維製品は、果物および野菜ジュースの食物繊維含有量を、生理学的に有益なレベルまで強化するのに用いることができ、これは食物製造者が、飲料に栄養機能表示を付することを可能とする。たとえば、一食当たり1.5gの濃度で可溶性繊維製品を添加すると“繊維源”となり、一食当たり3gで“良好な繊維源”となり、一食当たり6グラムで“優れた繊維源”となる。
【0063】
本発明に係る可溶性食物繊維の重要な利点の一つは、当該製品を生理的に有益な濃度で添加することが、天然の野菜または果物ジュースの外観および味を損なわないことである。これは一般的に、飲料の粘度に過度に影響を与えず、またはペクチンまたはベータグルカンに関連する魅力的でない食感、または紅茶またはアップルポリフェノールに関連する刺激性のある味を与えない。これは一般的に飲料の色に過度に影響を与えず、中間色の雲効果を与える。
【0064】
本発明に係る可溶性繊維の他の重要な利点は、保存安定性を有する果物および野菜ジュースの製造および保存に関連するpHおよび温度条件下において、安定であることである。これは安定な繊維処方をもたらし、このような条件下で迅速に分解するイヌリンとは異なっている。
【0065】
さらに本発明に係る可溶性繊維の他の重要な利点は、果物および野菜飲料に顕著な追加の抗酸化能を補うことである。これはいくつかの方法において有用と思われる。たとえば、果物および野菜飲料中に存在する天然の抗酸化物質の安定性を維持するのを補助すること、消化工程において、ビタミンCやEなどの天然抗酸化物質を保護すること、および進行性の酵素的加水分解を通じた大腸における持続的な抗酸化物質の放出を提供することである。
【0066】
本発明に係る可溶性食物繊維は、乳化食用油の形態で果物および野菜ジュースに採用することもでき、これは飲料をオメガ3脂肪酸のような有益な含有物で強化することを可能にする。
【0067】
本発明に係る可溶性食物繊維の特徴的な利点は、乳化剤および天然抗酸化物質の両方として機能することであり、その結果、食品用途において繊細な食用油の形成および安定性を補助する。
【0068】
一般的に、本発明に係る微粒子状可溶性食物繊維は、飲料に1リットル当たり少なくとも0.1グラム、および典型的には1リットル当たり100グラム以下が添加されるだろう。
【0069】
好ましい一実施の形態は、乳飲料である。本発明に係る可溶性食物繊維はミルクと相溶性があり、層分離や凝乳を引き起こさない。可溶性食物繊維は、乳製品の食物繊維含有量を強化するために、安定剤として用いることができ、または乳化食用油のキャリアおよび安定剤として用いることができる。
【0070】
一般的に、本発明に係る微粒子状可溶性食物繊維は、乳飲料に1リットル当たり少なくとも0.1グラム以上、および典型的には1リットル当たり100グラム以下が添加されるだろう。粉末状繊維製品は、典型的には均質化および低温殺菌の前にミルクに混合され得る。
【0071】
好ましい一実施の形態は大豆または穀物飲料(たとえば、ライスミルク)である。本発明に係る可溶性食物繊維のこのような適用は、乳飲料での使用と同様の方法および濃度となり得る。
【0072】
好ましい一実施の形態は発酵した乳製品および大豆製品においてである。本発明に係る微粒子状組成物は、乳および大豆ヨーグルト、ドリンクヨーグルト、酸性乳飲料およびチーズなどの製品を作製するのに用いることができる。このような適用において、本発明に係る可溶性食物繊維は、食物繊維源として、安定剤として、脂肪代替品として、またはプレバイオティクス原料として機能することができる。このような適用における本発明に係る食物繊維の重要な利点は、質感や色に悪影響をあたえず、一方でこのような発酵製品中の乳酸に関連する風味プロファイルを平滑化することである。
【0073】
一般的に、本発明に係る微粒子形状可溶性食物繊維は、このような適用において1リットル当たり少なくとも0.1グラム以上、および典型的には1リットル当たり100グラム以下の量が用いられるだろう。
【0074】
いくつかの実施の形態において、食物繊維はスープ製品に用いられる。このような適用において、本発明に係る可溶性食物繊維は、ほとんどの野菜スープと関係する低食物繊維含有量を補う食物繊維源として機能することができる。このような適用における本発明に係る食物繊維の重要な利点は、質感や色に悪影響を与えないことである。
【0075】
一般的に、本発明に係る微粒子形状可溶性食物繊維は、このような適用において1リットル当たり少なくとも0.1グラム以上、および典型的には1リットル当たり100グラム以下の量が用いられるだろう。
【0076】
いくつかの実施の形態において、食物繊維は焼いた食品に用いられる。本発明に係る微粒子状組成物は、パン、朝食シリアル、クッキー、マフィンなどの製品を作製するために用いることができる。このような適用における本発明に係る食物繊維の重要な利点は、焼付け温度を切り抜ける、高い抗酸化能を提供することである。このような適用において、本発明に係る可溶性食物繊維は、果物に関連するいくつかの栄養的利点を、焼いた食品の色、香りおよび質感に大きな影響を与えることなく提供できる。本発明に係る可溶性食物繊維は、焼いた食品中の繊細な食用油の形成および安定性を促進するために、乳化剤またはカプセル剤の形態でも用いることができる。
【0077】
一般的に、本発明に係る微粒子形状可溶性食物繊維は、このような適用において1キログラム当たり少なくとも0.1グラム以上、および典型的には1キログラム当たり100グラム以下の量が用いられるだろう。
【0078】
いくつかの実施の形態において、食物繊維は一つ以上のシリアル製品、種および果物を含むようなスナックバーに用いられる。このような適用において、本発明に係る可溶性食物繊維は、果物に関連するいくつかの栄養的利点を、製品の色、香りおよび質感に大きな影響を与えることなく提供できる。
【0079】
一般的に、本発明に係る微粒子形状可溶性食物繊維は、このような適用において1キログラム当たり少なくとも0.1グラム以上、および典型的には1キログラム当たり100グラム以下の量が用いられるだろう。
【0080】
他の好ましい実施の形態は、食物繊維の、生の魚肉および鶏肉ならびに加工肉のような肉製品における使用を含む。このような食品において、本発明に係る可溶性食物繊維は、酸敗臭の開始を防止するための天然抗酸化物質として作用することができる。
【0081】
一般的に、本発明に係る微粒子形状可溶性食物繊維は、このような適用において1キログラム当たり少なくとも0.1グラム以上、および典型的には1キログラム当たり100グラム以下の量が用いられるだろう。
【0082】
また、他の実施の形態は、食物繊維を乾燥プレミックス製品に用いることを含む。このような適用は、インスタント飲料、デザートミックスおよびスープミックスを含む。このような食品において、可溶性食物繊維は、食物繊維源、天然混濁化剤、カプセル化剤または酸敗臭の開始を防止するための天然抗酸化物質として作用することができる。
【0083】
一般的に、本発明に係る微粒子形状可溶性食物繊維は、このような適用において1キログラム当たり少なくとも0.1グラム以上、および典型的には1キログラム当たり100グラム以下の量が用いられるだろう。
【0084】
いくつかの実施の形態において、食物繊維は食用油の封入剤として用いられる。このような適用は、魚油、微細藻類油、単細胞オメガ3脂肪酸、香味料および芳香料などの油を含むことができる。このような食品において、本発明の可溶性食物繊維は、乳化剤、封入剤および酸敗臭の開始を防止するための天然抗酸化物質として作用することができる。
【0085】
一般的に、本発明に係る微粒子形状可溶性食物繊維は、このような適用において1キログラム当たり少なくとも100グラム以上、および典型的には1キログラム当たり950グラム以下の量が用いられるだろう。
【0086】
また、本発明の他の一観点は、本明細書中に記載されるように、可溶性食物繊維を含む補助食品を提供する。
【0087】
また、本発明の他の一観点は、本明細書中に記載されるように、可溶性食物繊維を含む化粧品組成物を提供する。
【0088】
また、本発明の他の一観点は、本明細書中に記載されるように、可溶性食物繊維を含む医薬品組成物を提供する。
【0089】
本発明を下記の実施例を参照して記載する。該実施例は本発明を説明するために提供されるものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0090】
比較例1
パイナップルの芯は増量剤の原料として用いられており、小麦粉、脂肪および/または糖類のような高カロリー原料の一部を置き換えるのに有用である[Altomareら、米国特許第4431577、1984年2月14日]。該プロセスは刻んだパイナップルの芯を、水、その後アルコールで洗浄するステップと、続いて乾燥および挽くステップとを含んでいた。製品は30−40%のセルロース、25−35%のヘミセルロース、3−10%のペクチン、15−25%のリグニン、2−8%の蛋白質、および1−5%の灰分を含むと報告された。得られた繊維製品は、本質的には不溶性で、水中で混濁液を形成し、静置すると沈降する[Prakongpanら、J. Food Sci. 67(2002) 1308-1313]。
【0091】
同様に、我々はパイナップルパルプを90℃で1分間漂白し、続いて2質量同等量の50℃の水で3回洗浄した後、凍結乾燥した。乾燥パルプはクロスビーターミルを用いて微粒子粉末にされ、65−200メッシュの篩サイズの篩にかけた。
【0092】
この粉末を市販のアップルジュースに12g/L濃度で添加した。アップルジュースを初めにマイクロウエーブで60℃まで加熱し、続いて粉末をキッチンブレンダーを用いてジュース内に分散させた。ジュース混合物を冷蔵して1週間保存した。その後、パイナップル粉末は容器の底に濃縮スラッジとして完全に安定化した。
【0093】
比較例2
Chan & Moy [J. Food Sci. 42(1977) 1451-1453]はパイナップルジュースの商業運転から採集した遠心分離スラッジからのヘミセルロース−Bの抽出を報告する。かれらの工程では、パルプをアセトン続いて沸騰水で洗浄し、その後4N水酸化ナトリウムを用いて、室温、窒素条件下で24時間抽出した。Hartley 1978は、このタイプの条件下で関連するフェノールが除去されると報告している。
【0094】
同様に、我々は漂白および洗浄されたパイナップルパルプを同様の条件下で抽出し、続いて混合物を硝酸でpH8まで中和した。抽出された繊維をろ布を用いて不溶残渣から分離した。ろ液を10kDカットオフのアミコンポリスルフォン(Amicon polysulfone)限外ろ過膜で濃縮し、続いて残渣糖および塩を除去するために、5体積変化の水で回文式透析ろ過を行った。得られた洗浄後繊維溶液を凍結乾燥した。
【0095】
乾燥パイナップル繊維を比較例1に記載の方法でアップルジュースに添加した。得られた混合物は不透明な灰−緑色であり、商業的に受け入れられないだろう。1週間の冷蔵保存後、濃い粘着性のない沈殿物が容器の底に形成されたが、ジュースのバルクは灰−緑色のままであった。
【0096】
実施例1
パイナップルパルプを90℃で1分間漂白し、続いて50℃の2倍質量の水で3回洗浄した。漂白され、洗浄されたパルプを2倍質量同等量の水に懸濁し、続いて120℃で1分間オートクレーブした。約50℃まで冷却した後、キャラコ布を用いて手動でろ過および圧縮し、続いて微粒子を除去するために遠心分離した。ろ液のpHは3.7であった。精製ろ液を3kDカットオフのアミコン酢酸セルロース限外ろ過膜で濃縮し、続いて残渣糖および塩を除去するために、5体積変化の水で回文式透析ろ過を行った。得られた洗浄後繊維溶液を凍結乾燥した。
【0097】
乾燥パイナップル繊維を比較例1に記載の方法でアップルジュースに添加した。繊維はジュースを薄い金−茶色にし、若干もやがかかっていた。1週間の冷蔵保存後は、観察可能な沈殿物はなかった。
【0098】
乾燥パイナップル繊維の食物繊維含有量をBR Research Pty Ltd (シドニー、ニューサウスウェールズ州、オーストラリア)でAOAC公定分析法991.43を用いて分析した。総食物繊維含有量は64.4%であり、2.1%の不溶性繊維と62.3%の可溶性繊維を含んでいた。したがって、pH3.7でパイナップルから抽出された食物繊維は>95%可溶性繊維であった。
【0099】
乾燥繊維の抗酸化活性をSouthern Cross University (リズモア、ニューサウスウェールズ州、オーストラリア)で、酸素ラジカル吸着能(ORAC: the Oxygen Radical Absorbance Capacity)アッセイ[Ouら、J. Agric. Food Chem. 49 (2001) 4619-4626]を用いて分析した。存在するフェノール成分をHPLCで検出し、フェルラ酸として数量化した。“遊離”フェノール成分をメタノール/アセトン/水(7:7:6 v/v/v)を用いて抽出した。繊維結合フェノール成分を含む“総”フェノール成分は、Abdel-Aalら[J. Agric. Food Chem. 49 (2001) 3559-3566]に記載されているように、窒素条件下の室温で2N水酸化ナトリウム内で消化し、続いてジメチルエーテル/酢酸エチル(1:1 v/v)で抽出して遊離した。
【0100】
抽出されたパイナップル繊維の分析結果を、比較例1および比較例2で作製されたサンプルのデータとともに表1に示す。
【0101】
【表1】

【0102】
このデータは、比較例1の洗浄後パイナップルパルプにおいて、多数のフェノール成分は細胞壁多糖類に結合した固定された形態で存在することを示す。遊離フェノール成分の割合は低く、これは洗浄工程の効果のためであると思われる。比較例2のアルカリ抽出パイナップル繊維は検出可能なフェノール成分を含まず、本質的に抗酸化活性を有しなかった。対照的に、pH3.7でオートクレーブ抽出されて作製されたパイナップル繊維は、高レベルの繊維結合抗酸化活性を保持した。
【0103】
サンプルの抗酸化活性を1グラム当たりのマイクロモルトロロックス当量として表わす。ビタミンE(アルファ−トコフェロール)は半分のトロロックスORAC値を有し[Huangら、J. Agric. Food Chem. 50 (2002) 1815-1821]、分子量は430.7g/モルである。したがって、実施例1の繊維の総抗酸化活性は1グラム当たり250mgのビタミンEと同等であると表現できるだろう。このような高い抗酸化値は、可溶性食物繊維ではこれまで先例がない。
【0104】
“遊離”および“総”分画の両方のフェノール成分および関連する抗酸化活性が報告されたのは、パイナップルでは初めてである。我々は、洗浄パイナップルパルプは、これまで適切に説明されてこなかった細胞壁結合抗酸化フェノール成分を、比較的高比率で含むことを見出した。これはパイナップルに由来する比較的低い抗酸化活性を説明するのに役立つ。なぜなら先行報告は容易に抽出可能な“遊離”フェノール成分にのみ基づいているからである。
【0105】
本研究はまたChan & Moy 1977によって抽出されたパイナップルヘミセルロースBは、ごくわずかな抗酸化活性を有することを示す。したがって、最初に、pH3.7でオートクレーブ抽出を用いてパイナップルパルプから抗酸化力の豊富な可溶性食物繊維を作製できることを示す。これは驚くべきことであり、アラビノキシランヘミセルロースの弱酸性抽出は、フェルロイル化アラビノース側鎖を取り除き、結果として抗酸化活性がほとんどまたは全くない繊維となることを教示する先行技術から予期できないものである。
【0106】
実施例2:抽出pHの影響
抽出条件の収率および抗酸化活性への影響を評価するために、一連の小規模抽出試験を行った。パイナップルパルプを、硝酸または水酸化ナトリウムでpHを2から12に調節した2倍質量等量の水と混合した。続いてパルプスラリーを120℃で1時間オートクレーブし、その後50℃に冷却してチーズクロスでろ過した。ろ液を4倍容量の冷却イソプロパノールで沈殿させ、一晩冷蔵した。続いて混合物を遠心分離し、上澄みを移し、ペレットを60℃で一晩乾燥した。アルコール−不溶性固形物の収率を未洗浄パルプの初期生重量の百分率で示した。
【0107】
より大きなサンプルを、原料のより大きなバッチをオートクレーブし、実施例1に記載された方法で限外ろ過、ダイアフィルトレーションおよび凍結乾燥をして繊維製品を回収して準備した。繊維サンプルのフェノール成分含有量および抗酸化活性をSouthern Cross University (リズモア、ニューサウスウェールズ州、オーストラリア)で分析した。
【0108】
得られた結果を表2に示す。
【0109】
【表2】

【0110】
オートクレーブされたスラリーの色はpHによって変化することがわかった。最終pH2の時、スラリーは強い赤錆色となり、フェノール成分の遊離および酸化を示した。色は、最終pH3の時に開始時の外観にもっとも近く、pHが上昇するにしたがって徐々に茶色がかっていた。
【0111】
可溶性繊維の収率はpH3以下の時にもっとも高いことがわかった。しかしながら、最終pHがパイナップルの天然pHである3.7未満の時、抗酸化フェノール成分の含有量は実質的に損失した。pH3のサンプルはpH3.7よりも良好な色を有していたが、繊維の抗酸化活性は非常に低かった。
【0112】
パルプを天然pHでオートクレーブした時、繊維の収率、抗酸化活性および粘度は最大であった。これはこれらの条件では繊維へのダメージが最小であることを示している。
【0113】
最終pH3.7での抽出は粘度の大きな減少を引き起こす。推定上、このような条件下での繊維の加水分解は分子量の減少をもたらし、アルコール沈殿による回収効率を減少させる結果となる。回収繊維の収率は最終pHが6.9に達するまでは実質的に変化せず、この点において若干の減少が指摘された。しかしながら、繊維はpHが上昇した時、徐々に暗い茶色を呈した。これは最終pH4.1を超えた時の結合抗酸化物質含有量の減少に対応していた。推定上、遊離フェノール成分が酸化され茶色となり、疎水性相互作用を介して繊維に吸収された。
【0114】
抗酸化活性がpH3.7のオートクレーブ抽出でもっとも高いことを見出したことは非常に驚きであった。一般的にはこのような“弱酸性”条件下での抽出はフェルロイル化アラビノース側鎖を開裂し、抗酸化活性の損失をもたらすと考えられている。代わりに、これらの結果は、120℃のパイナップルパルプで、側鎖の損失はpH値が3.7未満で生じ、一方で分子量の損失を伴う主鎖の開裂はpH値が4.0より大きい時に生じることを示している。
【0115】
得られた結果から、最適な抽出条件は、最終pHが天然pHまたは天然pHより若干高い時であると思われる。この段階で、この証拠は最も高い抗酸化活性は最終pHが3.7から約4.1の範囲にわたって得られることを示している。
【0116】
実施例3:抽出時間および温度の影響
パイナップルパルプを90℃で1分間漂白し、続いて50℃の2倍質量の水で3回洗浄した。漂白され、洗浄されたパルプを2倍質量同等量の水に懸濁し、続いて異なる時間および温度の範囲を用いてオートクレーブした。約50℃まで冷却した後、混合物をキャラコ布を用いて手動でろ過および圧縮し、続いて微粒子を除去するために遠心分離した。実施例1に記載された方法で限外ろ過、ダイアフィルトレーションおよび凍結乾燥をして繊維成分を回収した。繊維サンプルのフェノール成分含有量および抗酸化活性をSouthern Cross University (リズモア、ニューサウスウェールズ州、オーストラリア)で分析した。サンプルの総繊維含有量をBR Research Pty Ltd (シドニー、ニューサウスウェールズ州、オーストラリア)でAOAC公定分析法991.43を用いて分析した。
【0117】
オートクレーブ時間および温度の繊維の抽出収率および抗酸化物質含有量への影響を表3に示す。
【0118】
【表3】

【0119】
これらの結果は可溶性繊維の収率および抗酸化物質含有量は、抽出時間および温度の両方の影響を受けることを示す。高い温度および長い時間は、総食物繊維含有量を減少させながら、繊維の抗酸化活性を上昇させる傾向がある。145℃で60分間の抽出は、総食物繊維含有量および抗酸化活性の両方の減少を引き起こし、これは繊維がこれらの条件下で分解されることを示している。
【0120】
このデータはまた、抽出反応への拡散律速成分が存在することを示している。たとえば、120℃で60分間または130℃で40分間のいずれの抽出も、繊維の収率は同様の結果であった。しかしながら、より高い温度でより短い時間での抽出は収率および食物繊維含有量の両方の減少をもたらした。これは効率的な抽出は、組織構造を弱めるための十分な温度および可溶性繊維を組織マトリックス外へ拡散させるための十分な時間が必要であることを示している。
【0121】
この考えについて、皮を高い温度で短時間(145℃で5分間)の条件に置き、続いて低い温度で長時間(95℃で60分間)の条件に置いて試験を行った。そのままでは、高温処理は最大収率の約70%のみしか遊離しないと予測され、一方95℃での処理はいずれかの可溶性繊維を抽出するのにまったく不十分である。しかしながら、この組み合わせた処理は標準の抽出条件(120℃、60分)と同様に効果的であることが分かった。
【0122】
実施例4:超音波処理の予備評価
パイナップルパルプを90℃で1分間漂白し、続いて50℃の2倍質量の水で3回洗浄した。漂白され、洗浄されたパルプを同質量等量の水に懸濁し、3つの選択肢の処理を行った:(a)加熱処理なし;(b)100℃で1時間煮沸;または(c)120℃で1時間オートクレーブ。次に3つのサンプルを、それぞれ1分間ずつ超音波処した。超音波エネルギーはHielscher社製の22mm 集束ソノトロード付(focussed sonotrode)1 KW Model UIP1000を用いて供給された。超音波ユニットは18kHzで操作し、約0.4kWのプロセスエネルギーを供給した。
【0123】
超音波処理の後、3つのサンプルを視覚的および、どれだけ容易に液体を固体からキャラコ布で絞って分離できるかの観点の両方から評価した。結果を表4に示す。
【0124】
【表4】

【0125】
超音波処理は典型的には細胞壁を破壊して抽出を促進するために使用される。しかしながら、我々は未処理パイナップルパルプは現実的な時間枠(ベンチスケールで1−5分)での超音波処理に対して非常に耐性があることを見出した。たとえ100℃で1時間加熱しても、後続の超音波処理によって破壊するほど、パルプ組織構造を十分に軟化するには不十分であった。しかしながら、パルプを120℃で1時間オートクレーブして、続いて超音波処理をすることは、オートクレーブ処理のみよりもより効果的であることが証明された。
【0126】
我々は驚くべきことに、可溶化繊維の回収は、オートクレーブ処理されたパルプを超音波処理することによって非常に向上することを発見した。視覚的には、不溶性繊維残余物はクリーナーであり、より少ない残余実質組織が付着していることが分かる。機能的には、これはパルプは加圧がより容易で、加圧液体のより大きな回収および可溶性繊維のより高い比率を意味する。回収されたアルコール不溶性固体の量は49%上昇した。
【0127】
実施例5:機械的処理
予備的実験はオートクレーブ処理されたパルプスラリーを家庭用フーロプロセッサーで混合することを含んだ。この処理は、スラリーの平均粒子サイズを減少させ、微細不溶性粒子の割合を大きくすることが分かった。これらの微粒子は繊維布を詰まらせ、可溶性繊維抽出物を不溶性残余物から分離するのを困難にした。このような粒子は遠心分離によって除去できるが、商業スケールでのこのような粒子の割合の上昇は遠心分離処理能力を低下させ、または代わりに、一定の処理能力を維持するために遠心分離サイズの増大が必要となるだろう。したがって、大雑把な機械的処理を通じての粒子の作製は、後続プロセスに関連するコストを増大させる。
【0128】
実施例6:パイロットスケール試験(超音波処理を含む)
パイナップルパルプ抽出プロセスのパイロットスケール試験をFood Science Australia (ウェリビー、ビクトリア州、オーストラリア)で実施した。
【0129】
この試験では、200kgの冷凍パイナップルパルプをボールカッターで約1−5mmの粒径の粉末にした。粉末化されたパルプを水(pH5.5)と1:1の質量割合で混合し、3.5リットル缶に密封した。混合物のpHは3.9であった。この缶を120℃で3時間レトルトした。缶内の温度は120℃で約1.5時間であった。この缶を冷却し、内容物を貯蔵タンクに静かに移した。オートクレーブ処理された混合物のpHは3.7であった。
【0130】
Hielscher社製の8kW超音波ユニットでの初期試験は、一部のパルプスラリーを、1回および2回通過のために、超音波チャンバを通じて2つの異なる流量(12リットル/分および25リットル/分)でポンプで注入する工程を含んだ。各事例において、3.7kWの処理電力入力が超音波チャンバに供給された。
【0131】
処理済パルプのサンプルをキャラコ布を通過させてろ過し、続いて微粒子を除去するために遠心分離した。精製ろ液を3kDカットオフのアミコン酢酸セルロース限外ろ過膜で濃縮し、続いて残余糖および塩を除去するために、5体積変化の水でバッチ式ダイアフィルトレーションを行った。得られた洗浄済み繊維溶液を凍結乾燥した。回収された繊維の収率を表5に示す。
【0132】
【表5】

【0133】
このパイロットスケール評価において、回収された繊維の収率は、6リットル/分の1回通過または12リットル/分の2回通過のいずれかを使用した超音波処理によって35%上昇することが分かった。対照的に、予備的な実験室スケール評価(実施例4に記載)は、超音波処理は繊維の収率を49%増加できることを示した。この相違は限外ろ過膜上に形成された極性ゲル層における繊維の損失に起因する可能性があり、より大きなスケールの操作では低下するだろう。
【0134】
分析のためのこれらのサンプルの準備に続いて、パルプスラリーのバルクを電力入力3.7kWで12リットル/分で超音波チャンバを2回通過させた。処理済スラリーを続いてチーズクロスでろ過して、Westfalia disc-stack 遠心分離機を用いて遠心分離した。茶色の抽出物を次に10kDカットオフのKochポリスルフォン限外ろ過膜を用いて10倍濃縮した。濃縮された繊維を12体積分の水でダイアフィルターして洗浄した。5体積分後に全ての糖が除去されることが分かった。
【0135】
組成物Aを濃縮物の少量サンプルを凍結乾燥して準備した。
組成物Bを濃縮物をロータリーアトマイザー付のNiro Production Minor dryerを用いて、空気流入温度180℃および空気流出温度85℃でスプレードライして準備した。液体は非常に粘度が低く乾燥が容易であり、基本的に完全な回収であった。この方法において、150gの非吸湿性粉末が生成された。組成物Bの110℃で一晩乾燥させて測定された水分含有率は9%であった。
【0136】
2つのサンプルのフェノール含有率および抗酸化活性をSouthern Cross University (リズモア、ニューサウスウェールズ州、オーストラリア)で測定した。表6に示す通りである。
【0137】
【表6】

【0138】
これらの結果はパイナップル繊維の抗酸化活性特性はスプレードライプロセスの間に損傷されないことを示す。
【0139】
組成物Bの食物繊維の含有量をAOAC公定分析法991.43を用いて分析した。総食物繊維含有量は68.7%であり、0.2%の不溶性繊維および68.4%の可溶性繊維を含むことが分かった。したがって、パイロットプラントで抽出されたパイナップル繊維は>99%が可溶性繊維であった。
【0140】
実施例7:パイロットスケール試験(ねじプレス処理を含む)
第二のパイロットスケール試験を、抽出処理済みパルプから可溶性繊維を分離するための、超音波処理ではなく、ねじプレスの使用の可能性を評価するために実施した。
【0141】
パイナップルパルプ(700kg)を準備し、Food Science Australia (ウェリビー、ビクトリア州、オーストラリア)で実施例6に記載の方法で抽出した。レトルト後、缶をAlbright & Wilson (オーストラリア) Ltd (Yarrabille、ビクトリア州、オーストラリア)の他のパイロットプラントに移した。Vincent model VP-6ねじプレスを用いて、抽出パルプから液体を加圧した。可溶性繊維溶液を、Westfalia model SB7-01-076 disc-stack遠心分離機、続いて5μm研磨フィルターカートリッジに通過させて精製した。繊維溶液を20kDカットオフの30m2Kock ポリスルフォン限外ろ過膜を用いて濃縮し、続いて5体積変化分の逆浸透精製水でダイアフィルターした。精製繊維溶液をNiro Production Minor dryerを用いて、空気流入温度190℃および空気流出温度80℃でスプレードライした。
【0142】
このプロセスの結果として6.96kgの非吸湿性、黄褐色粉末(組成物C)が製造され、これはもとのパイナップルパルプからの1%の繊維の収率を示している。実施例6の結果に基づいて、わずか約2−3kgの粉末が予測された。これはねじプレスに含まれる機械力は、超音波処理および手動プレスの組合せの使用よりも、非常に効果的であることを示唆した。したがって、ねじプレスを使用する際は、超音波処理からの利点は存在しない。
【0143】
組成物Cの総食物繊維含有量をBRI Research Pty Ltd (シドニー、ニューサウスウェールズ州、オーストラリア)によってAOAC公定分析法991.43を用いて分析した。総食物繊維含有量は75.5%であり、0%の不溶性繊維および75.5%の可溶性繊維を含むことが分かった。したがって、このパイロットプラント試験で抽出された食物繊維は100%の可溶性繊維からなることがわかった。
【0144】
組成物Cの近似分析をDairy Technical Services Ltd (ケンジントン、ビクトリア州、オーストラリア)で行い、脂肪、蛋白質、灰分および水分含有量のデータを得た。炭水化物含有量(リジンを含む)を差によって予測した。
【0145】
組成物の炭水化物画分の分析をSchool of Botany, University of Melbourne (パークビル、ビクトリア州、オーストラリア)で行った。単糖類組成を、Albersheimら、Carbohydr. Res. 5 (1967) 340-345、Blakeneyら、Carbohydr. Res 113 (1983) 291-299およびSaemanら、Methods Carbohydr. 3 (1983) 54-69の方法にしたがって、硫酸加水分解およびTFA加水分解を用いて測定した。ウロン酸を修正比色分析法(Fillisetti-Cozzi & Carpita Analyt. Biochem. 197 (1991) 157-162)によってグルクロン酸を標準として測定した。リグニン分析をKlason法にしたがって実施した。
【0146】
組成物Cの化学分析の統合結果を表7に示す。
【0147】
【表7】

【0148】
パイナップルのヘミセルロース分画はおもにグルクロノアラビノキシランとともにキシログルカン、および少量のグルコマンナンからなることが知られている(SmithおよびHarris. Plant Physiol. 107(1995) 1399-1409)。表7の結果は、組成物Cの可溶性繊維画分は約83%のヘミセルロースと16%のペクチンからなることを示している。
【0149】
組成物Cのフェノール成分含有量および抗酸化活性をSouthern Cross University (リズモア、ニューサウスウェールズ州、オーストラリア)で測定した。表8に示す通りである。
【0150】
【表8】

【0151】
このデータはフェルラ酸が組成物C中の可溶性繊維に関する主要なフェノール成分であることを示している。組成物Cの抗酸化活性は前記のパイロットプラントバッチ(実施例6の組成物B)で得られた値と一致している。
【0152】
25℃の水中での濃度の関数として、組成物Cの粘度をSC4-18/13R小体積スピンドルを有するBrookfield DVII+ viscometerを用いて測定した。図2はパイナップル繊維は約10sec-1のせん断率で強力にシヤスィニングであり、高いせん断率では基本的にニュートン挙動であることを示す。
【0153】
このデータをより詳細に示すために、せん断率15sec-1で測定した粘度を濃度の関数として図3に示す。
【0154】
組成物Cの粘度は濃度の上昇とともに急激に上昇している。それにもかかわらず、アラビアゴムを除くほとんどの他の天然野菜のガムに比べて濃度が非常に低い。濃度10%においても、粘度はたったの50mPa・sであり、これは同じせん断率でのアラビアゴムの30%溶液と同等である(Islamら、Food Hydrocolloids 11 (1997) 493-505)。
【0155】
40%濃度の組成物Cは注ぐことのできる液体状態を維持し、これは本発明の可溶性繊維製品の商業量を液体濃縮物の形態で提供することが現実的であり得ることを示唆している。これは繊維製品を液体食品により容易に組み込むことを促進するだろう。
【0156】
実施例8:色の減少
我々の経験では、本発明の食物繊維の現実的な適用の主要な障壁は、抽出および続く工程の間に生じる色である。我々は色は2つの別個のメカニズムによって生じることを見出した。高温抽出プロセスの間に、茶色のメイラード色素が、糖類と、蛋白質およびアミノ酸との反応の結果として形成する。続く下流のプロセスの間に、赤褐色の着色が遊離可溶性フェノール成分の酸化によって生じる。
【0157】
我々は、色素成分は一度形成されると、ダイアフィルトレーションまたはアルコール沈殿のいずれによっても繊維から容易に分離することができないことを見出した。これは着色化組成物は比較的疎水性であり、溶液中で繊維に吸着する傾向があることを示唆している。我々の経験では、色の発生を防止することは、後から繊維を洗浄しようとするよりも良い。
【0158】
非酵素的な褐色化反応は、通常食物の調理の間に生じる。非酵素的な褐色化反応は、“キャラメライゼーション”と呼ばれる糖類(アミン関与のない)の熱誘導分解反応、またはメイラード反応として知られる非環状糖類のカルボニル基が、蛋白質、ペプチドおよびアミノ酸の塩基性アミノ基と縮合する反応のいずれかを含む。メイラード反応で形成される茶色色素はメラノイジンとして知られている。メラノイジンの形成はSO2によって、メラノイジンの前駆体と亜硫酸および亜硫酸水素イオンとの反応を通じて阻害され、茶色化する可能性が減少した商品を形成することが知られている(Wedzicha & Kaputo Int. J. Food Sci. Technol. 22 (1987) 743-651)。
【0159】
オートクレーブ抽出中のメラノイジンの形成は、パイナップルパルプスラリーにメタ重亜硫酸ナトリウムを10ppmから1,000ppm、好ましくは50ppmから500ppmおよびもっとも好ましくは100ppm、200ppmまたは300ppmの濃度で添加することによって阻害することができる。メタ重亜硫酸ナトリウムの利点は、比較的安価でありスラリーのpHを変化させないことである。メタ重亜硫酸カリウムも適しており、ただしより高価である。二酸化硫黄も用いることができるが、結果として生じるpHの降下を中和するためにアルカリの添加が必要となるだろう。
【0160】
遊離可溶性フェノール成分の酸化は3つの異なる方法を、単独または組み合わせて防止することができる:全てのプロセスを窒素下の無酸素環境で行う;プロセスの間に犠牲抗酸化剤を使用する、または遊離フェノール類を完全に除去する。
【0161】
商業スケールにおいて、パイナップルフルーツの搾汁および可溶性繊維製品の乾燥の間の時間を最小にすることによって、酸化をもっとも良好に調節することができる。窒素雰囲気下での処理もまた有益である。しかしながら、これらの選択肢のいずれも実験またはパイロットスケールで容易に実施できない。
【0162】
小スケールの研究ために、我々は溶けやすいフェノール成分の酸化は、精製繊維溶液にアスコルビン酸を添加することによって防止することができることを見出した。アスコルビン酸の添加量は10ppmから2,000ppm、好ましくは500ppmから1,000ppmの範囲だろう。もしアスコルビン酸が処理中に使用されたら、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、アンモニア溶液または重炭酸ナトリウムなどの適切なアルカリ剤を用いて、pHを適宜調節する必要があるだろう。
【0163】
アスコルビン酸をダイアフィルトレーション水に添加することもまた、ダイアフィルトレーション中のアスコルビン酸の損失を補うために有益である。この場合、10ppmから100ppmの濃度が有利であり、好ましくは20ppmから50ppmである。
【0164】
溶けやすいフェノール成分の酸化の防止のもっとも望ましい方法は、それらを溶液から全て除去することである。これは繊維溶液を精製ステップののちにできる限り迅速に活性炭で処理して、色形成の機会を最小にすることによって達成できる。
【0165】
たとえば、パイナップルパルプを90℃で1分間漂白し、続いて50℃の2倍質量の水で3回洗浄した。漂白され、洗浄されたパルプを2倍質量同等量の水に懸濁し、120℃で1時間オートクレーブした。約50℃まで冷却した後、混合物をキャラコ布を用いて手動でろ過および圧縮した。得られた溶液を開放タンクから蠕動ポンプを用いて4時間再循環させ、大気存在中での延長プロセスの影響をシュミレートした。この間、繊維用液の色が次第に茶色になるのが観察された。
【0166】
着色化溶液を一連の活性炭サンプルのフェノール成分除去効果を評価するために使用した。全ての活性炭サンプルは、Cuno Pacificにより、ZetaPlus製品系列の一部として供給された。それぞれのサンプルは40mm×6mmディスク形状の"Biocap"として供給された。それぞれの活性炭サンプルを200mLの着色化繊維溶液の処理に使用した。色の除去効果を、視覚的および波長範囲300nmから400nmでの吸光度の測定の両方で評価した。表9に示されるように、色減少のためのさまざまなサンプルの相対的効力を0から5スケールにランク付けした。
【0167】
【表9】

【0168】
これらの結果は活性炭を可溶性繊維溶液から色形成フェノール成分を除去するために用いることができること、しかしながら適切なグレードの選択が成功に欠かせないことを示唆している。
【0169】
実施例9:パイロットスケール試験(連続加熱)
第3のパイロット試験を、バッチレトルトではなく、連続加熱プロセスの使用の可能性を評価するために実施した。加熱は、Gold Peg International Pty Ltd (Moorabbin、ビクトリア州、オーストラリア)において特注試験施設を使用して、直接水蒸気圧入法によって行った。
【0170】
700kgの半冷凍パイナップルパルプをReitzパイロットスケールハンマーミルを用いて粉砕した。パルプを500ppmの重亜硫酸ナトリウムを含む2倍等量の水道水と混合し、続いて145℃で3分間加熱した。温度を50℃まで低下させ、加熱済みパルプスラリーをAlbright & Wilson (オーストラリア) Ltd (Yarrabille、ビクトリア州、オーストラリア)のパイロットプラントに移送するために200リットルドラムに密封した。そこで、可溶性繊維を実施例7に記載の方法で回収した。
【0171】
このプロセスは、3.4kgのスプレードライ粉末(組成物D)をもたらし、0.49%の収率を示した。これは実施例7のレトルトプロセスの収率のわずか半分であり、表3のデータと整合性がある。
【0172】
加えて、清澄遠心分離から排出された不溶性スラッジからサンプルを収集した。遊離糖類および水溶性食物繊維を除去するために、この物質を逆浸透精製水で繰り返し洗浄し、続いて凍結乾燥した。得られた粉末の組成物Eは、パイナップルパルプから抽出されたであろう不溶性繊維成分を示す。
【0173】
組成物Dは61.0%の総食物繊維を含有することが分かり、このうち96%は可溶性食物繊維であった。対照的に、組成物Eは51.5%の総食物繊維を含み、これは全て不溶性食物繊維からなっていた。
【0174】
組成物DおよびEの化学分析を実施例7に記載の方法で行った。結果を表10および11に示す。
【0175】
【表10】

【0176】
【表11】

【0177】
表10および表11と表7および表8の比較は、本試験で抽出された可溶性繊維は、前者の製品と微妙に異なることを示している。組成物CおよびDのヘミセルロース成分は、組成物Cに比べて、より高い比率のキシロース骨格に関連する親水性アラビノース側鎖基を含んでいた。組成物Dも組成物Cに比べてより小さいフェノール基の比率を有し、総抗酸化活性が低かった。ともに、これらの結果は145℃で3分間抽出されたヘミセルロースは、120℃で1.5時間抽出されたものよりもより水溶性であり、これは関連フェノール基から遊離したアラビノース側鎖がより高い比率で存在することに由来することを示唆している。
【0178】
組成物Dは組成物Cと比べて、わずかに多くの水溶性のペクチンを含むことも分かった。
【0179】
対照的に、組成物Dの単糖類は大部分がグルコースであり、部分的にアラビノース、キシロースおよびウロン酸であることが分かった。これは組成物Eは不溶性セルロース、ヘミセルロースおよびセルロースマトリックス内に捕捉された少量のペクチンから構成されていることを示唆している。
【0180】
比較的低いヘミセルロースレベルにも関わらず、組成物Eはかなりの量の抗酸化フェノール成分を含むことが分かった。組成物Eはまた特にリグニンが豊富であり、リグニンは非晶質、樹脂様フェノール性ポリマーであり、細胞壁多糖類のマトリックス内の空間を充填する。リグニンは抗酸化活性を有することが知られている(Barclayら、J. Wood Chem. Techno;. 17 (1997) 73-90)。
【0181】
本実施例は、缶のバッチレトルトに代わって、連続的、高温加熱が実行可能なプロセスであることを示すのに役立っている。これは商業的な実施のためにもっとも適切な方法であろう。
【0182】
本実施例はまた、第2の製品を、おもに高比率の抗酸化活性の豊富なリグニンを有する不溶性食物繊維からなる、可溶性繊維抽出物の副産物として製造できることを示す。このような製品は、可溶性が必須の特徴でない抗酸化フルーツ繊維として適用されるだろう。たとえば、加工フルーツ断片、スナックバーおよび加熱製品に適用されるだろう。
【0183】
実施例10:ジュースでの適用
組成物Cを市販のアップルジュースに12g/Lの濃度で、比較例1に記載の方法で添加した。繊維はジュースに薄い金−茶色および若干の“曇り”を与えたが、強化ジュースは基本的には明らかな粘度の上昇はなく、ねばねばした口当たりも示さなかった。代わりに、パイナップル繊維は口当たりの良い、滑らかな稠度を与え、かなりはっきりとしたアップルジュースの風味を柔らかくする傾向にあった。
【0184】
強化ジュースは非常に安定的で、数週間後にも沈殿物は見られなかった。
比較として、同様のジュース調整物を、3つの市販食物繊維製剤をすべてアップルジュースに12g/L入れて準備した。この濃度は“良好な食物繊維源”を提供するために選択され、250mL当たり3gに相等する。3つの市販製品はGlucagel (大麦ベータグルカン)、Herbapekt SF02-LV(粘度を20倍減少させたペクチン)およびHerbapekt SF50-A-LV(粘度を50倍減少させたアップルペクチン)であった。
【0185】
全ての3つの市販製品はアップルジュースの粘度を顕著に上昇させ、結果として不快な‘ぬるぬるした’または‘ねばねばした’口当たりをもたらすことが分かった。対照的に、パイナップル繊維はとてもより好ましい口当たりを有し、粘液性の特性を全く有していなかった。
【0186】
Surmacka SzczesniakおよびFarkas[J. Food Sci. 27 (1962) 381-385]は、口内で非常に粘液性であるガムはニュートン様レオロジー挙動を示すことで特徴付けることができると報告しているが、高いシヤスィニングを示すガムは非粘液性である。したがって、4つのアップルジュースの調製物の粘度はせん断率の機能として、SC4-18/13R小体積スピンドルを有するBrookfield DVII+ viscometerを用いて測定された。得られた粘度プロファイルを図4に示す。
【0187】
これらの結果は、4つの全ての繊維溶液は非常に低いせん断率では強力なシヤスィニングを示し、一方これら全ては約10sec-1より大きいせん断率ではニュートン様挙動を示すことを表わしている。これは4つの全ての繊維は実際条件下において、同様の‘ねばねばした’口当たりを有することを示唆している。しかしながら、商業的にジュースに使用され得る典型的な濃度では、パイナップル繊維はもっとも低い粘度を有していた。この特性は味覚試験で報告された優れた口当たりに明白に関与している。
【0188】
我々は本発明の可溶性繊維に関連する抗酸化活性は、食物繊維クレームを作製するのに適切なレベルを添加した場合に、市販のフルーツジュースの総抗酸化活性能に大きな相違をもたらすか調べることに興味を持った。
【0189】
したがって、市販の貯蔵安定性を有するフルーツジュースのサンプルを、250mL当たり3gの抗酸化繊維(組成物C)で強化した。サンプルを冷凍して、総ORAC値およびアスコルビン酸含有量(HPLCによって)を分析するために、Southern Cross University (リズモア、ニューサウスウェールズ州、オーストラリア)に送付した。
【0190】
それぞれの市販ジュースを総抗酸化活性に寄与するアスコルビン酸で強化した。フェノール性成分の抗酸化効力のみに焦点をあてるため、OARC値をアスコルビン酸の寄与に対して補正した。コントロールサンプルである水中のアスコルビン酸を分析して、必要な補正因子を構築した。コントロールおよび強化ジュースの補正ORAC値を表12に示す。
【0191】
【表12】

【0192】
組成物Cは464.6μmol TE/gの総抗酸化物質含有量を有するため(表8)、3g/250mLでの強化は、それぞれのジュースをORAC値5.58μmol TE/g分上昇させると予測できる。表12に示される結果は広くこの予測と整合しているが、かなりの分散度を示しており、これはORAC分析の実験エラーに由来するであろう。
【0193】
このデータは250mL当たり3gの抗酸化繊維でアップルジュースおよびパイナップルジュースを強化することは、それぞれのジュースの抗酸化活性を事実上2倍にすることを示唆している。得られた抗酸化活性は、豊富な食物抗酸化物質源として宣伝されているクランベリージュースよりも大きい。クランベリージュースの強化はこのような大きな効果を有しておらず、これはより高い抗酸化活性のベースラインレベルからはじまるためである。
【0194】
商業的な適用において、繊維製品が予測される保存期間の間、安定を維持することが重要である。これは広く使用されている食物繊維のイヌリンにとって特に問題であり、イヌリンは低温殺菌および酸性ジュース製品の保存の間に直面する温度およびpHの条件下で、フルクトースに加水分解することが知られている[Blecker et al J. Agric. Food Chem. 50 (2002) 1602-1607]。これは食物繊維含有量の漸次減少および、延長された保存期間の間の甘味の漸次上昇をもたらす。
【0195】
パイナップル繊維の保存安定性を評価するために、上述の通り組成物Cを12g/Lでアップルジュースに処方した。比較として、市販の短鎖イヌリンのBeneo GRを有する同様のジュース混合物も準備した。加速保存試験を実施し、これはサンプルを80℃で2日間まで加熱することを含んだ。これらの試験条件はアップルジュース中のフェノール成分は、25℃で9ヶ月間保存することによって半分になる[Spanosら、J.Agric.Food Chem. 38 (1990) 1572-1579]、および同様の減少が80℃で2日間で達成される[Van der Sluisら、J.Agric.Food Chem. 53 (2005) 1073-1080]という観察結果に基づく。したがって、アップルジュースを80℃で2日間加熱することは室温で9ヶ月間保存することと同等である。
【0196】
サンプルを毎日採取し、食物繊維含有量をBRI Research Pty Ltd (シドニー、ニューサウスウェールズ州、オーストラリア)で分析した。サンプルの組成物Cを含む総食物繊維含有量をAOAC公定分析法991.43を用いて測定した。イヌリン(フルクタン)の含有量をAOAC公定分析法997.08を用いて測定し、フルクトースの含有量をHPLCを用いて測定した。サンプルはフェルラ酸の含有量も、Southern Cross University (リズモア、ニューサウスウェールズ州、オーストラリア)においてHPLC測定によって分析した。
【0197】
繊維およびイヌリン分析結果を表13に示す(2つのサンプルの平均値)。
【0198】
【表13】

【0199】
これらの結果は、組成物Cはアップルジュース(pH3.4)中で80℃で2日間安定していることを示している。対照的に、イヌリンの濃度は1日目で75%低下し、2日目までには検出限界未満であった。
【0200】
組成物Cで強化されたジュースサンプル中のフェルラ酸(遊離およびトータル)含有量を表14に示す。
【0201】
【表14】

【0202】
これらの結果は組成物Cのフェルラ酸成分は80℃で2日間加熱している間に共有結合を維持して、ジュース内に検出可能なフェルラ酸の遊離がないことを示している。これはアップルジュースベースのフェノール成分と対照的であり、フェノール成分はこの処理によって濃度が半分になることが知られている。
【0203】
本実施例は本発明の可溶性繊維に関連する抗酸化物質は室温で9ヶ月の保存まで安定であると思われること、および低温殺菌によっても損傷されず存在することを証明している。
【0204】
本実施例での加速保存試験結果は、本発明の可溶性食物繊維の食物繊維および抗酸化成分の両方とも酸性ジュース飲料中で非常に安定的であり、長期保存を保証するために低温殺菌されたものは特に安定的であることを示している。このように、本製品は酸性条件下において迅速に分解するイヌリンおよび時間の経過とともにジュース内で分解する遊離フェノール性抗酸化物質に対して利点を提供する。
【0205】
実施例11:ミルクでの適用
組成物Cをキッチンブレンダーを用いて12g/L濃度で冷たいミルクに分散して、冷凍下で保存した。保存7日後においても相分離の兆候はなかった。この予備結果はパイナップル繊維とミルクとの間に現実的な相の不整合が存在しないことを示唆している。したがって、本発明の可溶性繊維はさまざまなミルク製品の原料、食物繊維サプリメントまたはプレバイオティクス原料として使用できることが予測され得る。
【0206】
実施例12:ヨーグルトでの適用
組成物Cを“繊維源”を提供するために十分な量であり、200mL当たり1.5g等量の濃度、たとえば7.5g/L、で天然に固められたヨーグルトに処方した。
【0207】
ヨーグルトを30gのスキムミルク粉末および7.5gの組成物Cを1Lの生鮮全乳に添加して準備した。ミルクをマイクロウェーブによって90℃に加熱した。該ミルクをゆっくりと42℃まで冷却し、その時点で市販のaBc(アシドフィルス菌、ビフィズス菌、カセイ菌)ヨーグルト(Jalna Natural Yoghourt)を混合した。混合物を固めるために42℃で6時間インキュベートして、その時点でヨーグルトを冷凍した。組成物Cを含有しないコントロールヨーグルトも準備した。サンプルを評価前に7日間冷凍条件下で保存した。
【0208】
2つのヨーグルトの物理的構造の完全性をAryana[Int.J.Dairy Technol. 56 (2003) 219-222]にしたがって離漿を測定して評価した。それぞれのヨーグルトの300gのサンプルを漏斗上部に設置された微細ナイロンメッシュふるいに置き、22℃で2時間水気を切れるようにした。収集されたホエイの量を離漿の指標とした。分析を2回行った。結果を表15に示す。
【0209】
【表15】

【0210】
離漿は、コントロールヨーグルトにおいて、パイナップル繊維を含むヨーグルトよりも20%大きいことが観察された。この相違の理由は不明であるが、パイナップル繊維の水結合能またはカゼイン粒子の合体を阻害する繊維の存在に起因する可能性がある。
【0211】
2つのサンプル間の関連する相違についてさらなる洞察を得るために、2つのヨーグルトのサンプルを2人の訓練されていない試験者によって試験した。両方のヨーグルトとも口当たりは同等になめらかであると報告された。しかしながら、コントロールヨーグルトは鋭い乳酸味を有し、一方パイナップル繊維を含むヨーグルトはより滑らかで、鋭さおよび乳酸味が著しく小さいと報告された。
【0212】
これらの結果は本発明の可溶性繊維は天然に固められたヨーグルト、濃縮ポンプヨーグルト(thickened pumping yoghurts)、ドリンクヨーグルトおよび他の酸性化乳飲料中の繊維サプリメントまたはプレバイオティクス原料として有益に使用できることを示唆している。
【0213】
実施例13:焼いた食品での適用
焼いた食品でのパイナップル繊維の適用の例として、組成物Cをマフィンに処方した。比較のために、4つの異なるバッチのマフィンを、表16に示すレシピにしたがって準備した。バッチ1はコントロールであり、食物繊維は添加されていない。バッチ2はマフィン1つ当たり1.5gの組成物Cをもたらすように処方された。バッチ3はマフィン1つ当たり5つのブルーベリーを含むように処方された。バッチ4はマフィン1つあたり1.5gの小麦ふすまを含むように処方された。
【0214】
【表16】

【0215】
各事例において、乾燥原料を一緒にふるいにかけて、続いて卵、ミルク、溶かしバターおよびバニラエッセンスとともに泡立てた。バッチ3については、ブルーベリーを湿った混合物に慎重に織り込んだ。混合物を油を塗ったマフィンパンに分配し、200℃に予熱した強制ファンガスオーブンで焼いた。4つの全てのバッチを17分間焼いた。
【0216】
それぞれのバッチの6つのマフィンを一晩冷却して凍結し、凍結乾燥機に移した。乾燥されたマフィンの重量を測り、家庭用フードプロセッサーで粉砕し、その後抗酸化活性分析のためにSouthern Cross University (リズモア、ニューサウスウェールズ州、オーストラリア)に送付した。結果を表17に示す。
【0217】
【表17】

【0218】
結果は、コントロールマフィン(バッチ1)はかなりの水準の抗酸化活性を有していることを示している。このいくつかは精製精白小麦粉に存在するフェノール成分に由来し得るが、多くの割合は加熱プロセスの間に形成されたメイラード反応生成物にも由来するだろう[Yilmaz & Toledo Food Chem. 93 (2005) 273-278]。
【0219】
組成物Cを含むマフィン(バッチ2)は、同量の小麦ふすまを含むマフィン(バッチ4)と同等の抗酸化活性を有することが分かった。興味深いことに、ブルーベリーを含むマフィン(バッチ3)はコントロールと同等の抗酸化活性を有し、これはブルーベリーのアントシアニンは加熱中に破壊されることを示唆している。このような高い程度の熱的不安定性は、マフィン内で加熱された紫色小麦ふすまアントシアニンでも指摘されている[Liら、Food Chem. 104 (2007) 1080-1086]。
【0220】
本発明の可溶性食物繊維内の共有結合性フェルラ酸の熱的安定性は、焼かれた食品中の不安定なベリーアントシアニンに対して、現実的な利点を提供する。焼かれた食品において、本発明の可溶性食物繊維の抗酸化活性は、同量の小麦ふすまと同等である。これは焼いた製品に本発明の抗酸化物質の豊富な可溶性繊維を添加することは、小麦ふすまに関連する健康効果のいくつかをもたらすことを示唆する。
【0221】
これらの結果は、本発明の可溶性食物繊維は、果物源からの熱的安定性を有する抗酸化能をもたらすために、焼いた食品中に使用できることを示している。
【0222】
実施例14:乳化特性
小麦ふすまから抽出されたヘミセルロース(Schooneveld-Bergmansら、J. Cereal Sci. 29 (1999) 49-61)およびトウモロコシから抽出されたヘミセルロース(Yadavら、Food Hydrocoll. 21 (2007) 1022-1030; Carvajal-Millanら、Carbohydr. Polym. 69 (2007) 280-285)が乳化特性を有することが示されているが、このような結果はパイナップルヘミセルロースでは報告されていない。
【0223】
本発明の可溶性食物繊維の乳化特性を実証するために、さまざまな水中の魚油のエマルジョンを準備した。コントロールとして市販のとうもろこし繊維製品であり、関係する抗酸化活性を有しないTate & Lyle(ロンドン、英国)社製のPromitor可溶性トウモロコシ繊維を使用した。
【0224】
魚油はNU-MEGA INCREGIENTS Pty Ltd(アルトナノース、ビクトリア州、オーストラリア)社製の精製マグロ油(HiDHA(登録商標)25N Food)であった。表18に示す6つの異なるエマルジョン処方を作製するために、マグロ油を組成物CまたはPromitor可溶性トウモロコシ繊維の40%w/w溶液で乳化した。
【0225】
【表18】

【0226】
エマルジョンを50gバッチ内に、Ystral社製のYS3910Fヘッドを有するT 1500 高せん断ミキサーを用いて、設定値8で60秒間操作して準備した。エマルジョンの安定性の予備的評価を水滴の初期顕微鏡評価によって実施し、続いて室温で一晩経過後に行った。
【0227】
エマルジョン1は非常に小さい水滴の均一な懸濁液からなることが顕微鏡的に観察された。一晩経過後に油分離の兆候はなかった。エマルジョン2は大多数の小さな水滴と、少ない割合の大きな水滴との混合物であると観察された。一晩経過後に、油分離は明確に分からなかった。エマルジョン3は大部分が大きな水滴であることが観察された。一晩経過後にエマルジョンからマグロ油の薄い層が分離した。エマルジョン4,5および6はすべて大きな水滴からなることが観察され、これは観察の間においても安定的でなかった。一晩経過後に、3つのエマルジョンの油から薄いマグロ油の層が分離した。
【0228】
本予備調査は14%w/wの組成物Cおよび30%w/wのマグロ油のエマルジョンは安定な傾向であることを示唆している。7%の組成物Cを含むエマルジョンもいくつかの適用では安定であるが、時間の経過とともに安定性が低下する可能性があるだろう。3.5%の組成物Cを含むエマルジョンは明らかに非安定的であった。Promitor可溶性トウモロコシ繊維を含むエマルジョンはいずれも安定であることが観察されなかった。
【0229】
本予備調査に続いて、本発明の可溶性食物繊維とともに準備された魚油の安定性のより正式な評価を実施した。本事例では、Promitor可溶性トウモロコシ繊維を含むエマルジョンを、エマルジョンの安定性を保証するために、界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)で補った。保存料としてソルビン酸カリウムを添加した。それぞれの繊維のエマルジョンを、二ナトリウムEDTA有り、または無しのいずれかで準備した。エマルジョンの処方を表19に示す。
【0230】
【表19】

【0231】
エマルジョンを上記のとおり高せん断ブレンドで準備した。エマルジョンの安定性の評価のために、エマルジョンを40℃で4週間保存した。エマルジョン中の水滴のサイズ分布をUniversity of Melbourne(パークビル、ビクトリア州、オーストラリア)のChemical and Biomolecular Engineering学部で、488nmのアルゴンイオンレーザーを有するMalvern Series 4700 spectrometer (Malvern Instruments Ltd, Malvern UK)を用いて、10mWでの操作で測定した。
【0232】
各エマルジョンの初期および40℃で4時間後のそれぞれの平均水滴サイズを表20に示す。
【0233】
【表20】

【0234】
全てのエマルジョンにおいて、水滴サイズは40℃で4時間保存後に若干大きくなったが、全て遊離油相の兆候なしに安定を維持した。したがって、パイナップル繊維は水中でマグロ油の効果的な乳化剤として機能することが分かった。
【0235】
本実施例は本発明の可溶性食物繊維が水中油型エマルジョンシステムのための効果的な乳化剤として機能することを実証しており、マヨネーズ、サラダドレッシング、飲料および封入剤としての適用が見出せることを示唆している。
【0236】
実施例15:脂質酸化の防止
魚油はドコサヘキサエン酸(DHA)およびエイコサペンタエン酸(EPA)が豊富であり、これらは炭素鎖に複数の二重結合を有するために酸化の影響を受けやすい。水中油型エマルジョンにおける脂質酸化は油滴の界面特性に大きく依存しており、なぜならこの場所では遷移金属および脂質ヒドロペルオキシドが相互作用して損傷を与える遊離ラジカルを形成するからである。親油性抗酸化物質は水中油型エマルジョンにおいて親水性抗酸化物質よりも効果的であり、なぜならそれらは界面で凝縮して遊離ラジカル形成の場所で保護を与えるからである(Frankelら、J.Agric. Food Chem. 42 (1994) 1054-1059)。
【0237】
フェルラ酸は比較的親油性であると知られている(Jacobsenら、J.Agric. Food Chem. 47 (1997) 3601-3610)。したがって、我々は本発明の可溶性食物繊維中の抗酸化フェルラ酸基が魚油エマルジョンの酸化を防止することができるのか確かめることに興味を持った。
【0238】
したがって、表19に記載された4つのマグロ油エマルジョンの複製サンプルを準備した。エマルジョンを実施例14に記載の方法で準備し、加速保存試験を行った。これはエマルジョンを、大きな幅の広い瓶で40℃で暗所で保存することから成る。この瓶は通常は水の蒸発を防ぐために密閉されているが、7日毎に上部空間に新鮮な空気を入れるために開封された。1ヶ月後に瓶をインキュベーターから取り出し、分析まで−20℃で冷凍保存した。
【0239】
平行試験として、市販のアップルジュースのボトルを4つのそれぞれのエマルジョンを3g/lのマグロ油濃度を与える1:10の希釈比率で強化した。ジュースサンプルを密閉ボトルで40℃の暗所で保存した。それぞれについて5つの複製を準備した。各週で、1つのボトルを開封して魚臭を主観的に評価した。
【0240】
現実の条件をシュミレートする追加試験として、それぞれの強化ジュースサンプルのボトルをサンプリング前8週間、冷蔵庫で保存した。
【0241】
冷凍エマルジョンサンプル中の酸化物質の存在をFood Science Australia (ウェリビー、ビクトリア州、オーストラリア)でRichardsらJAOCS 82 (2005) 869-874の方法を用いて定量化した。
【0242】
プロパナールのヘッドスペースガスクロマトグラフィー分析がDHAのようなn−3脂肪酸の酸化の追跡の優れた方法であると報告されている(Boydら、JAOCS 69 (1992) 325-330)。表21は加速試験から採取されたそれぞれのエマルジョン中のプロパナールの相対存在量を示している。
【0243】
【表21】

【0244】
プロパナール濃度はパイナップル繊維を含むエマルジョンで非常に低いことが分かり、これは可溶性繊維に関連する抗酸化基はマグロ油を酸化から効果的に保護できることを示唆している。対照的に、トウモロコシ繊維はこのような保護を与える抗酸化活性を有していない。
【0245】
人間の嗅覚は魚臭または悪臭の検出にとって非常に敏感な道具である。油含有製品が消費者に受け入れられるかどうかに影響し得るのはこの臭いである。加速保存されたジュースサンプルの主観的分析結果を表22に示す。結果を相対用語で評価した。(−)は魚臭が存在しないことを意味し、(+++)は強い魚臭を意味する。
【0246】
【表22】

【0247】
アップルジュースは遊離ラジカルの形成および油の酸化を促進するフェルラ酸を含む。EDTAをフェルラ酸と複合して油の酸化を防止するためにサンプルに添加した。
【0248】
EDTA不存在下では、パイナップル繊維は魚臭の発生に対して完全な保護を提供することができなかった。しかしながら、パイナップル繊維とEDTAの組合せは4週間の加速保存試験の間に魚臭が発生するのを防止できた。
【0249】
対照的に、抗酸化活性を有しないトウモロコシ繊維はEDTAが存在していても魚臭の発生を防止することができなかった。
【0250】
本実施例は本発明の可溶性食物繊維は水中油型エマルジョンシステムにおいて、油酸化および異臭の発生の防止によって実質的な利点を提供できることを示している。これは本発明の可溶性食物繊維は魚油や精油のような繊細なオイルの形成、飲料および香料処方において商業的に有用であり得ることを示唆している。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗酸化食物繊維を準備する方法であって、
パイナップルパルプを105℃から150℃の範囲内の温度に、少なくとも30秒間加熱する工程と、
オートクレーブ処理されたパイナップルパルプのpHを3.2から6.5の範囲内にする工程と、
加熱された原料を、固形原料からの可溶性原料の除去を促進するために、機械的または超音波処理する工程と、
可溶化繊維を不溶性原料から分離する工程と、
遊離糖類を少なくとも部分的に除去する工程と、
可溶性抗酸化繊維を濃縮する工程とを含む、方法。
【請求項2】
前記パイナップルパルプを105℃から150℃の範囲内の温度に、少なくとも30秒間加熱する工程を含み、前記パイナップルパルプを90℃から150℃の範囲内の温度に、少なくとも10分間加熱する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
結果として得られた食物繊維が、共有結合性のフェルラ酸およびp−クマル酸の存在に由来する、1グラム当たり、50マイクロモルより大きいトロロックス当量(ORAC)の抗酸化活性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記パイナップルパルプが、廃棄された皮、芯または遠心清澄スラッジなどの、商業用搾汁操作の食品等級副産物である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
抽出前に、色形成の程度を減少させるパイナップルパルプを洗浄する工程をさらに含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記パイナップルパルプが、0.5mmから50mmの範囲内の大きさのパルプ粒子を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記パイナップルパルプを、水対パルプの重量比が0.5:1から5:1となるような量の水と混合する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記パイナップルパルプを加熱する工程の前に、前記パイナップルパルプにアルカリを添加する工程を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記パルプを加熱する工程を、水蒸気圧入法、間接蒸気加熱またはパルプのマイクロ波照射によって行う、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
固体からの可溶性原料の除去促進のために、加熱する工程中または加熱する工程後に前記パルプを超音波処理する、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記超音波処理を、加熱済みパルプスラリーを、流水式超音波チャンバ内で連続的に処理することにより行う、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
可溶性原料と不溶性原料との分離を、加圧、ろ過、および重力沈降よりなる群から選ばれるいずれかの方法によって行う、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記水溶性繊維を、精密ろ過、限外ろ過、ナノろ過および逆浸透よりなる群から選ばれるいずれかの工程によって濃縮する、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記水溶性繊維を、0.1ミクロンから1ミクロンの間の孔サイズを有する膜を用いる精密ろ過の工程によって濃縮する、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記可溶性繊維の濃縮が、1,000から100,000の範囲内の分画分子量を有する精密ろ過膜を用いる精密ろ過の工程を含む、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記可溶化繊維からの糖類の除去が、パイナップル繊維製品の灰分レベルが乾燥物質基準で1%から5%の間の程度となるまで行われるダイアフィルトレーションを含む、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記水溶性抗酸化繊維が微粒子状固体を形成するように乾燥される、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記水溶性抗酸化繊維が、噴霧乾燥、凍結乾燥およびドラム乾燥よりなる群から選択されるいずれかの方法を用いて乾燥される、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
処理中の繊維の褐色化を防ぐために安定剤を添加する工程をさらに含む、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
硫黄(iv)形態の二酸化硫黄;およびHSO3-、SO32-のようなオキシアニオンよりなる群から選択される少なくとも1つの安定剤を添加する工程をさらに含む、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
オートクレーブ工程の前にパイナップルパルプにメタ重亜硫酸ナトリウム安定剤を添加する工程をさらに含む、請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記メタ重亜硫酸ナトリウムの量が10から1,000ppmの範囲内であり、もっとも好ましくは100から300ppmの範囲内である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
アスコルビン酸安定剤を10から2,000ppmの範囲内の量で添加する工程をさらに含む、請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
遊離フェノール成分を除去するために、前記繊維溶液を活性炭で処理する、請求項1〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記不溶性繊維を前記不溶性原料から分離する工程をさらに含む、請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
パイナップルから得られた可溶性抗酸化繊維。
【請求項27】
共有結合性のフェルラ酸およびp−クマル酸の存在に由来する、1グラム当たり50マイクロモルより大きいトロロックス当量(ORAC)、好ましくは1グラム当たり100から1000マイクロモルの範囲内のトロロックス当量、もっとも好ましくは1グラム当たり200から800マイクロモルの範囲内のトロロックス当量の抗酸化活性を有する、請求項26に記載の可溶性抗酸化繊維。
【請求項28】
本発明に係る可溶性繊維製品が乾燥重量を基準として、75%から99%の炭水化物と、0.5%から5%のリグニンと、0.5%から5%の脂質と、1%から10%の蛋白質と、1%から5%の灰分とからなり、もっとも好ましくは80%から95%の炭水化物と、1.5%から3.5%のリグニンと、1%から4%の脂質と、2%から7%の蛋白質と、1.5%から3%の灰分とからなる、請求項26または27に記載の可溶性抗酸化繊維。
【請求項29】
前記炭水化物成分が、(AOAC公定分析法991.43で測定された)60%から90%の総食物繊維および10%から40%の糖類およびオリゴ糖を含み、好ましくは70%から90%の総食物繊維、もっとも好ましくは80%の総食物繊維を含む、請求項26〜28のいずれかに記載の可溶性抗酸化繊維。
【請求項30】
前記繊維が、(AOAC公定分析法991.43で測定された)90%から100%の可溶性食物繊維および0%から10%の不溶性食物繊維を含む総食物繊維を含む組成物として存在する、請求項26〜29のいずれかに記載の可溶性抗酸化繊維。
【請求項31】
本発明に係るパイナップル繊維製品の炭水化物成分が、モルパーセントを基準として、40−80%のキシロースと、5−25%のアラビノースと、2−15%のガラクトースと、0.1−15%のグルコースと、0.1−10%のマンノースと、0−2%のラムノース/フコースと、5−25%のウロン酸とからなる、請求項25〜30のいずれかに記載の可溶性抗酸化繊維。
【請求項32】
請求項25〜31のいずれかに記載の可溶性食物繊維を含む食品成分。
【請求項33】
前記食品成分が、飲料、乳製品、豆乳および穀物ミルク、スープ、焼いた食品、朝食シリアルおよびスナックバー、肉製品、乳化食用油、カプセル化食用油、インスタント飲料、インスタントデザートおよびスープミックスよりなる群から選ばれる、請求項32に記載の可溶性食物繊維を含む食品成分。
【請求項34】
果物および野菜ジュース、乳飲料、豆乳、ライスミルク、ドリンクヨーグルトおよび他の酸性乳飲料の形態である、請求項32または33に記載の可溶性食物繊維を含む食品成分。
【請求項35】
可溶性食物繊維を含み、前記可溶性食物繊維が、飲料に1リットル当たり少なくとも0.1グラム以上、および典型的には1リットル当たり100グラム以下の量加えられる、請求項32〜34のいずれかに記載の食品成分。
【請求項36】
前記可溶性食物繊維を食用油のための乳化剤として含む、請求項32〜35のいずれかに記載の食品成分。
【請求項37】
前記可溶性食物繊維を食用油のための封入剤として含む、請求項32〜35のいずれかに記載の食品成分。
【請求項38】
前記油が魚油、微細藻類油、単細胞オメガ3脂肪酸、種油、堅果油、精油、香味料および芳香料よりなる群から選ばれる、請求項36または37に記載の食品成分。
【請求項39】
請求項26〜31のいずれかに記載の可溶性食物繊維を含む補助食品。
【請求項40】
請求項26〜31のいずれかに記載の可溶性食物繊維を含む化粧品組成物。
【請求項41】
請求項26〜31のいずれかに記載の可溶性食物繊維を含む医薬品組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−505151(P2011−505151A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536285(P2010−536285)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際出願番号】PCT/AU2008/001790
【国際公開番号】WO2009/070838
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(510157432)ニュートリフィナ・プロプライエタリー・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】NUTRIFINA PTY LTD
【Fターム(参考)】