説明

食物繊維澱粉の製造及びドレッシング/液状食品としての有用性

本発明は、食物繊維澱粉を用いて乳化安定性が改善された低カロリー/低脂肪ドレッシング及びマヨネーズ組成物に関するものである。さらに詳しくは、澱粉の架橋結合させている間に高温熱処理と超音波処理を並行することによって、食物繊維含量と乳化安定性が増加され、澱粉の粒子サイズが減少された食物繊維澱粉を添加して脂肪含量を落とし、乳化安定性が改善された低カロリー/低脂肪ドレッシング及びマヨネーズ組成物に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状食品に適合するように澱粉を架橋結合させている間に高温熱処理及び超音波処理することによって、食物繊維含量と乳化安定性が増加し、粒子サイズが減少された食物繊維澱粉を用いて乳化安定性が改善された低カロリードレッシング、フレンチドレッシング、及びマヨネーズ組成物のような食品に関するものである。このような低カロリー液状食品は、カロリー及びコレステロールの摂取が多くて肥満や動脈硬化が心配される人に好適である。
【背景技術】
【0002】
澱粉は地球上で最も豊富なエネルギー源であって、人間の生活に必要なエネルギーを供給する。一方では、高カロリーの食飲料摂取による肥満、成人病の原因になっており、エネルギー摂取量の調節などを通じた澱粉素材の適切な利用が必要である。澱粉は摂取後、20分以内に小腸で迅速に消化されるRDS(Rapidly digestible starch)、20分から120分以内に小腸内でゆっくり、しかし完全に消化されるSDS(Slowly digestible starch)、人の小腸では消化されないRS(Resistant starch;抵抗澱粉)に分類される(Englyst et al.、1992;Eerlingen, 1993)。さらに詳しくは、RSは人体の小腸で消化吸収はされないが、腸内細菌によって分解される澱粉や澱粉加水分解物であって、形態によって4つに分類される。部分的に搗精された粒や種子のように物理的に酵素の接近が難しいRS1、糊化されない生澱粉であって、バナナ、じゃが芋澱粉のようにB型の結晶型を有するRS2、食品加工の結果で糊化された澱粉が老化して形成されたRS3、そして化学的に変性させたRS4がある(非特許文献1)。その中でRS3とRS4は物理化学的な処理によって製造される抵抗澱粉であり、とうもろこし澱粉や小麦澱粉を用いて抵抗澱粉を製造し、収率を増加させようとする研究が進められてきた(非特許文献2〜6)。しかし、米澱粉を用いた抵抗澱粉の製造及び適用性に関する研究は今までなされたことがない。
【0003】
抵抗澱粉は大腸内で腸内微生物によって発酵され、酢酸、プロピオン酸、及びブタン酸などのような単鎖脂肪酸の生成を増加させて、大腸癌の抑制に効果があるだけでなく、便秘予防、血糖低下など、食物繊維素とほぼ類似した生理活性を有するとともに(非特許文献7〜11)、製造方法によって理化学的特性を調整することができ、むしろ食品加工特性が食物繊維素より良いため、食品産業を初めとする多様な分野に適用することができる。本明細書では、抵抗澱粉中の総食物繊維含量(TDF, total dietary fiber)が50%以上で、食物繊維の活性が高い澱粉を食物繊維澱粉(Fibrous fiber)と名付けて使用する。
【0004】
今まで開発されたとうもろこしや小麦の食物繊維澱粉は、澱粉質を土台とした固体食品類である製菓、製パン、製麺類には多様に適用されてきたが、液状食品類では分離されやすいという短所があり、多様な適用が難しかった。既存の米素材を用いて食物繊維澱粉を製造した研究例はないが、米食物繊維澱粉の粒子サイズは顕著に小さく(1-3mm)、柔らかい食感を与え、かつ澱粉粒子が乳化機能を有するため、液状食品の食感を改善し、食物繊維澱粉の乳化力を用いて脂肪含量を落とすなど、多様な適用が可能である。
【0005】
米は粒の長さや模様によって長粒種、中粒種、短粒種に区分される。長粒種は粒が長くて細く、粘りのない米で、約25%程度のアミロースを含有しており、短粒種は粒が丸くて短く、粘り強い米で、アミロース含量が17〜20%程度である。アミロースがアミロペクチンと比べて水をより少なく吸収するため、アミロースの含量によって炊飯米の弾力、粘性、糊化度、老化度、貯蔵性などの特性が変わってくる。また、米の種類やアミロース含量によって加工適性が異なるため、食品の種類によって他の用途に使用されることができる(非特許文献12)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Asp 1992, Englyst et al. 1992
【非特許文献2】Sievert, D., Pomeranz, Y. (1990) Cereal Chem., 67, 217-221
【非特許文献3】Woo, K.S., Seib, P.A.(2002). Cereal Chem., 79, 819-825
【非特許文献4】Leeman, A.M., Karlsson, M.E.,Eliasson, A.C., Bjorck, I.M.E. (2006) Carbohydrate Polymers, 65. 306-3113
【非特許文献5】Sang. Y., Seib, P.A. (2006) Carbohydrate Polymers, 63, 167-175
【非特許文献6】Gonzalez-Soto, R.A., Mora-Escobedo, R., Hernandez-Sanchez, H., Sanchez-Rivera, M., Bello-Perez, L.A.(2007). Food Research International, 40, 304-310
【非特許文献7】Phillips, J., Muir, J.G., Birkett, A., Lu, Z.X., Jones, G.P., O’Dea, K., Young, G.P.(1995). Am. J. Clin. Nutr., 62, 131-130
【非特許文献8】Livesey, g., Wilkinson, J.A., Roe, M., Faulks, R., Clark, S., Brown, J.C., Kennedy, H., Elia, M,(1995). Am. J. Clin. Nutr., 61, 75-81
【非特許文献9】Silvestar, K.R., Englyst, H.N., Cummings, J.H.(1995). Am. J. Clin. Nutr.,62, 403-411
【非特許文献10】Skrabanja, V., elmstahl, H.G.M.L., Kreft, I and Bjorck, I.M.E.(2001). J. Agric. Food Chem., 49, 490-496
【非特許文献11】Fassler, C., Arrigoni, E., Venema, K., Brouns, F., Amado R.(2006). Mol. Nutr. Food Res., 50, 1220-1228
【非特許文献12】辛ら、食品と調理科学、139〜162p, 2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのため、本発明者らは、米澱粉の利用性を高め、食品及びバイオ産業の原料として供給して米の消費を促進し、米澱粉に機能性を付与して高付加価値の新しい機能性素材として開発するために本発明を推進した。多様なアミロース含量を有する国内産及び輸入産米澱粉を用いて研究を行った結果、米澱粉の架橋結合させている間に高温熱処理と超音波処理を並行させると、食物繊維含量及び乳化安定性が増加され、澱粉の粒子サイズが減少されて、食品に混合したとき、テクスチャーや官能的特性に及ぼす影響が少なく、ドレッシングのような液状食品などにも用いることができると考え、本発明を完成した。
【0008】
従って、本発明の目的は、食物繊維含量及び乳化安定性が増加され、澱粉の粒子サイズが減少された食物繊維澱粉の製造方法を提供することである。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、食物繊維含量が高く、乳化安定性が改善された低カロリー/低脂肪ドレッシング及びマヨネーズ組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような目的を達成するために、本発明は、米澱粉を架橋結合させている間に高温熱処理及び超音波処理することによって、食物繊維含量及び乳化安定性が増加され、粒子サイズが減少された米食物繊維澱粉の製造方法を提供する。
【0011】
本発明はまた、前記米食物繊維澱粉を利用して、食物繊維含量が高く、乳化安定性が改善された低カロリー/低脂肪ドレッシング及びマヨネーズ組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法によって食物繊維含量が増加されるか、粒子サイズが減少され、液状食品に使用するのに好適な食物繊維澱粉を提供することができ、このような食物繊維澱粉を用いて乳化安定性が改善された低脂肪ドレッシング、フレンチドレッシング、及び低脂肪マヨネーズのような低カロリー/低脂肪ダイエット食品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】走査電子顕微鏡による米澱粉及び食物繊維澱粉の粒子形態を示したものである(A:ドンジン1号米澱粉及び食物繊維澱粉、B:タイ産米澱粉及び食物繊維澱粉、1:生澱粉、2:50℃で熱処理された食物繊維澱粉、3:95℃で2分間高温熱処理された食物繊維澱粉、4:酸処理された食物繊維澱粉)。
【図2】澱粉粒子の大きさ分布を示したものである(生澱粉(native starch)、架橋結合された食物繊維澱粉(RS4)、架橋結合させている間に超音波処理された食物繊維澱粉(RS4 with sonication)、酸処理された食物繊維澱粉(RS4 with acid hydrolysis))。
【図3(a)】多様な澱粉類の食物繊維澱粉を添加して製造したドレッシングの粘度及び安定性を示したものである。ブルックフィールド粘度計(Brookfield viscometer)によって測定された時間別粘度。
【図3(b)】貯蔵期間によるドレッシングの貯蔵安定性(分離度)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、米澱粉を架橋結合させている間に高温熱処理と超音波処理することによって、食物繊維含量及び乳化安定性が増加され、澱粉粒子サイズが減少された米食物繊維澱粉の製造方法を提供する。
【0015】
本発明において前記食物繊維澱粉は、抵抗澱粉中の総食物繊維含量(TDF, total dietary fiber)が50%以上で、食物繊維の活性が高い澱粉である。
【0016】
本発明の米澱粉を用いた米食物繊維澱粉の製造方法は、(a)米を蒸留水又はアルカリ浸漬して澱粉を分離する工程と、(b)米澱粉を熱処理する工程と、(c)米澱粉に硫酸ナトリウム(Na2SO4)と架橋結合剤を添加する工程と、(d)pHを調整した後、超音波処理する工程と、(e)超音波処理後、反応させる工程と、(f)前記工程の架橋結合反応後、酸を添加して中和させる工程と、(g)前記工程の澱粉試料を水洗して乾燥させる工程を含む。
【0017】
本発明において、澱粉は穀物の粉末を使用することができ、好ましくは米澱粉を使用することができ、とうもろこし澱粉を含んだ澱粉類にも拡大適用して同一な効果を得ることができる。本発明において、米澱粉は全羅南道潭陽郡金城農協の米穀処理場から得たドンジン1号を使用し、輸入米はタイ米を得て使用した。前記ドンジン1号及びタイ米は蒸留水に水浸させるか、アルカリ浸漬法で澱粉を純粋分離して使用した。
【0018】
前記工程で分離された澱粉の濃度は25〜60%にして使用し、好ましくは40%にして使用する。澱粉の濃度は澱粉の種類によって異なるように設定し、攪拌が困難でない範囲での高濃度の澱粉液は高い食物繊維含量を示す傾向がある。
【0019】
前記澱粉液を80〜95℃で1分〜10分間振動させて熱処理を実施する。好ましくは90〜95℃で2分間実施する。高温における短時間熱処理は澱粉粒子の一部分を無定形に変えて、さらなる体積の増加なく安定した構造を有するようにし、膨潤程度を調節することができる。
【0020】
次の工程で、前記熱処理された澱粉液を架橋結合剤を用いて架橋結合させる。前記架橋結合剤は、トリメタリン酸ナトリウム(sodium trimetaphosphate, STMP 99.0〜99.9%)とトリポリリン酸ナトリウム(sodium tripolyphosphate, STPP 0.1〜1.0%)を澱粉基準で10%添加する。ここで、架橋結合剤を澱粉液に添加する前に、澱粉の糊化を抑制するために、澱粉乾燥重量に対して10〜12%の硫酸ナトリウムを添加する。
【0021】
前記架橋結合剤を添加した後、塩基を添加してpHを10〜12、好ましくはpH11.8となるようにして超音波処理をする。前記超音波処理は10〜40分間処理し、好ましくは30分間処理する。超音波処理は澱粉粒子の大きさを最小化するための工程であって、平均的に食物繊維含量が最も高く示される条件を適用する。このとき、塩基は一般的な塩基を使用することができ、好ましくはNaOHを添加する。
【0022】
超音波処理が終わった後、好ましくは40〜60℃で0.5〜3時間反応させ、さらに好ましくは45℃で1時間反応させる。反応が終わった後、澱粉液に酸を添加して中和させる。このとき、酸は一般的な酸を使用することができ、好ましくはHCIを添加する。中和された澱粉液を水洗して水分含量5%以下に乾燥させた後、粉砕し、80メッシュ(mesh)で篩別することによって、食物繊維含量及び乳化安定性が増加され、かつ粒子サイズが減少された米食物繊維澱粉を得る。
【0023】
本発明はまた、前記米食物繊維澱粉を用いて、食物繊維含量が高く、乳化安定性が改善された低カロリー/低脂肪ドレッシング及びマヨネーズ組成物を提供する。
【0024】
本発明では、従来のドレッシング及びマヨネーズで乳化力を提供していた脂肪を、前記製造方法によって製造され、澱粉粒子の大きさが減少された米食物繊維澱粉に一部代替することにより、食物繊維含有量が高く、乳化安定性が改善された低脂肪ドレッシング、フレンチドレッシング及びマヨネーズ組成物を提供する。
【0025】
前記ドレッシングとマヨネーズは通常の方法によって製造され、食物繊維澱粉の量は5〜40%(w/w)程度添加され得る。好ましくは、ドレッシング製造時に9%の食物繊維澱粉が使用され、マヨネーズ製造時には40%の食物繊維澱粉が使用される。
【0026】
液状食品における安定性は、混合液の層分離が徐々に行われるほど高く、貯蔵安定性が優れているほど、ドレッシング製造に適した素材として認められる。澱粉質が液状食品に適用される場合、分離されやすい欠点のために既存の食物繊維澱粉は製菓、製パン、製麺類の個体食品にのみ制限されて適用されていた。しかし、澱粉粒子に熱処理と超音波処理をして乳化安定性を付与することによって、安定性が強化された米食物繊維澱粉を製造し、固体及び液状食品に多様に適用することができるようになった。
【0027】
以下、本発明を次の実施例によって説明する。しかし、これらは本発明の一例であって、これらが本発明の権利範囲を限定するものではない。
【0028】
<実施例>
実施例1:米食物繊維澱粉製造のための澱粉分離
(1)材料
食物繊維澱粉製造用の澱粉として、国内産米は全羅南道潭陽郡金城農協の米穀処理場から得たドンジン1号を使用し、輸入米はタイ米を得て使用した。前記ドンジン1号及びタイ米を蒸留水に水浸させるか、アルカリ浸漬法で澱粉を分離した。
【0029】
(2)分離された澱粉の一般成分分析
前記分離された米澱粉の水分含量、タンパク質、脂質、灰分含量を測定した。水分含量は水分測定秤(HA-300, Precisa Instruments AG, Switzerland)を使用し、タンパク質はミクロケルダール法、脂質はソックスレー法、灰分は直接灰化法で、550℃の灰化炉で測定した。
【0030】
分離された米澱粉の一般成分を測定した結果を表1に示した。ドンジン1号澱粉とタイ米澱粉の水分含量はそれぞれ12.3%と13.7%であり、灰分は両方とも1%未満で、低い値を示し、粗タンパク含量は長粒種(インディカタイプ)であるタイ米澱粉が、短粒種(ジャポニカタイプ)であるドンジン1号澱粉より高く、粗脂肪はドンジン1号澱粉の方が高かった。
【0031】
【表1】

【0032】
(3)分離された澱粉の理化学的特性
分離された澱粉のアミロース含量、水結合能力、膨潤力と溶解度、損傷澱粉含量など、理化学的特性を測定した。アミロース含量は澱粉の糊化温度及び結晶程度、老化などの特性と関連されており、水結合能力、膨潤力などは澱粉粒子の活性と関連されている。
【0033】
アミロース含量は、ウィリアムスなど(Williams, P.C., Kuzina, F.D. and Hlynka, I., Cereal Chem., 47, 411-420(1970))の方法を修正して測定した。澱粉20mgに0.5N KOHを加えて分散させた後、100mLに希釈して50mL容量フラスコに10mLをとり、0.1N HCI 5mLとヨード液0.5mLを加えて50mLに定量した。680nmで吸光度を測定し、標準曲線式でアミロース含量を計算した。
【0034】
水結合能力はメッドカルフとギレスの方法(Medcalf, D.F. and Gilles, K.A., Cereal Chem. 42, 558-568(1965))によって実施した。澱粉0.5gを50mL遠心分離管に入れ、蒸留水20mLを加えて1時間常温で分散させた後、8,000rpmで30分間遠心分離して沈殿物の重量を測定し、下記の式で計算した。
【0035】
水結合能力(%)
={遠心分離後、沈殿物の重量(g)−試料の重量(g)}×100 / 試料の重量(g)
膨潤力と溶解度はスコーチの方法(Schoch, T.J. and Leach, w. Whole starches and modified starches. In:Method in Carbohydrate Chemistry. Vol. II. Whistler, R.L. (ed). Academic Press, New York, NY, USA, p.106-108)1964))を用いて30℃と80℃で測定した。試料0.25gに蒸留水20mLを50mL遠心分離管に入れ、マグネチックバーを入れて分散させ、一定温度で30分間分散させた後、8,000rpmで30分間遠心分離した。遠心分離後、沈殿された澱粉の重量を測定して膨潤力を計算した。上澄液は予め加重して乾燥させた容器に注いで105℃で乾燥した。乾燥重量から次の式を用いて溶解度を計算した。
【0036】
溶解度(%)=上澄液の乾燥重量(g)×100/試料の重量(g)
膨潤力=沈殿された澱粉の重量(g)×100/{試料の重量(g)×(100-%溶解度)}
損傷澱粉はAACC(American Association of Cereal Chemistry)方法によって、損傷澱粉分析酵素キット(K-SDAM, Megazyme International Ireland Ltd.,Irelanad)を使用して分析した。試料100mgを遠心管に入れて予熱した後、カビアルファ−アミラーゼ(fungal α-amylase;50U/mL) 1mLを入れて40℃恒温水槽で10分間反応させた後、0.2%硫酸8.0mLを入れて反応を停止させた。3,000rpmで5分間遠心分離した後、上澄液から0.1mLをとり、アミログルコシダーゼ (amyloglucosidase;2 U/0.1mL) 0.1mLを入れて、40℃で10分間反応させた後、GOPOD試薬(Glucose determination reagent) 4mLを入れ、20分後、510nmで吸光度を測定した。損傷澱粉の含量は次の式によって計算した。
【0037】
損傷澱粉(%)=酵素反応液の吸光度×F/W×8.1
F=150(グルコースのμg)/150μgのグルコースの吸光度
W=試料の重量(mg)
澱粉のアミロース含量、水結合能力、損傷澱粉、膨潤力と溶解度を測定した結果は、表2に示した。アミロース含量においてインディカタイプであるタイ米澱粉は36.8%で、高アミロース澱粉であって、ジャポニカタイプであるドンジン1号は15.4%で、普通の粳米澱粉であった。澱粉のアミロース含量は品種によって多様であり、アミロース含量は澱粉の理化学的特性や糊化、及び老化特性に影響を与え得る(Varavinit, S.,Shobsngob, S., Varanyanond, W., Chinachoti, P., Naivikul, O. Starch, 55, 410-415(2003))。
【0038】
水結合能力は両澱粉が類似しており、損傷澱粉はドンジン1号澱粉がタイ米澱粉より高かった。30℃と80℃における膨潤力と溶解度は加熱温度の増加によって大きく増加し、30℃では膨潤力と溶解度が類似していたが、80℃では試料間に差異があって、澱粉の一般成分とアミロース含量、損傷澱粉の含量の差異が膨潤力と溶解度に影響を与えたことが分かった。
【0039】
ジャポニカタイプとインディカタイプの澱粉は一般成分と理化学的特性が異なるため、澱粉の構造も異なると考えられ、食物繊維澱粉の製造時に架橋結合がなされる程度にも差異が生じると予測された。
【0040】
【表2】

【0041】
(4)走査電子顕微鏡を用いた食物繊維澱粉の粒子形態観察
ドンジン1号とタイ産米澱粉から製造された食物繊維澱粉の形態を観察するために、米澱粉と食物繊維澱粉の粒子を分散させ、金でメッキして電導性を持つようにした後、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope, SEM, JEOL JSM-7500F, Japan)で2,000倍拡大して観察した。
【0042】
図1に示したように、両方の澱粉とも生澱粉(A1, B1)であるとき、丸いか、角をなす多角形模様の粒子が多かった。
【0043】
実施例2:架橋結合反応前の高温熱処理による澱粉粒子の安定化
米澱粉液の濃度を40%(w/w)にして用意し、95℃水槽で2分間加熱処理した。熱処理された澱粉液に攪拌が満遍なくなされるように、澱粉濃度が35%となるように水を添加した。高温における短時間熱処理は、澱粉粒子の部分的糊化によって澱粉粒子が安定した構造を有するようにし、全体の食物繊維含量を増加させた(表3)。
【0044】
【表3】

【0045】
実施例3:架橋結合反応中の超音波処理による食物繊維澱粉の製造
米澱粉35%懸濁液に10% Na2SO4と12% STMPとSTPPを入れ、1N NaOHでpHを11.8に調節した後、食物繊維澱粉の大きさを調節するために30分間超音波処理をした。
【0046】
この澱粉混合液を45℃で3時間反応させた後、1N HCIを使用してpH6.0に中和させ、蒸留水で4回洗って遠心分離した後、40℃で乾燥して粉砕し、100メッシュ篩を通過させて最終的に食物繊維澱粉を製造した。
【0047】
実施例4:製造された米食物繊維澱粉の食物繊維含量及び特性測定
(1)公認されたAOAC方法による食物繊維の含量測定
前記実施例3で製造した本発明の米食物繊維澱粉の食物繊維含量を調査した。実験方法はAOAC方法で分析した。
【0048】
1.0gの試料に40mLのリン酸緩衝溶液(pH6.0)を入れてよく分散させ、アミラーゼ(heat stable α-amylase, Cat No. A-3306, Sigma) 0.1mLを入れて、沸いている水槽(100℃)でかき回しながら15分間反応させた後、直ちに室温で冷却させた。ここに0.275N NaOHを入れてpH7.5となるように調整した後、プロテアーゼ (protease, Cat No.P-3910, Sigma) 0.1mL(50mg/mL phosphate buffer)を入れて60℃恒温振盪機で30分間反応させた。0.325M HCIを入れてpH4.0〜4.6となるように調整した後、アミログルコシダーゼ(amyloglucosidase, Cat No. A-9913, Sigma) 0.1mLを加え、引き続いて60℃で30分間反応させた。反応を止めるために総アルコール濃度が80%となるようにエタノールを添加して1時間以上放置した後、予め乾燥させて恒量にしておいたセライト(celite)が入ったるつぼ(2G3, IWAKI)で濾過させた。るつぼに入っている試料を95%、78%エタノールとアセトンの順で洗浄し、不溶性残渣を105±0.1℃オーブンで16時間乾燥させた後、重量を測定して濾過前と濾過後のるつぼの重量の差異で食物繊維含量を計算した。
【0049】
実験の結果、表4に示したように、食物繊維の含量はそれぞれ、超音波を処理しなかった食物繊維澱粉が43.61%、超音波処理後に製造した食物繊維澱粉の場合が63.61〜61.96%で、食物繊維の含量が1.4〜1.5倍増加した。超音波処理は澱粉と架橋結合剤を入れてpHを11.8に調整した後行い、超音波処理の間に澱粉と架橋結合剤が満遍なく分散されて架橋結合が効率的になされたため、食物繊維の含量が増加された。
【0050】
【表4】

【0051】
(2)超音波処理によって製造された食物繊維澱粉の粒度分析
生澱粉と超音波処理された食物繊維澱粉の粒子サイズ分布を調査するために、粒度分析器(BT-9300S, Dandong BAITE Instruments Ltd., China)を用いて測定した。試料を水に分散させて超音波を1分間処理した後、測定した。
【0052】
生澱粉と超音波処理後に製造した食物繊維澱粉の粒子サイズ分布を図2に示した。生澱粉の粒子サイズは殆ど1〜10μmの範囲に分布したが、リン酸架橋結合によって製造された食物繊維澱粉の粒子サイズは、生澱粉より粒子サイズが大きい領域(10〜100μm)で主要分布を示した。しかし、超音波処理後に製造された食物繊維澱粉の粒子サイズは減少して、殆ど1〜10μmの粒度分布を示した。
【0053】
実施例5:食物繊維澱粉が添加されたドレッシングの製造と粘度及び安定性測定
前記例のように高温熱処理及び超音波処理によって製造された食物繊維澱粉を用いてドレッシングを製造し、粘度と貯蔵安定性を測定した。
【0054】
食酢20mL、食物繊維澱粉3.5g、砂糖5g、0.6%ガム溶液10mLを混合、均質化して無脂肪低熱量ドレッシングを製造した。ドレッシングの粘度はブルックフィールド粘度計(Brookfield viscometer)を用いてスピンドルナンバー2(spindle No.2), 12rpmで測定し、ドレッシングの安定性は1ヶ月間貯蔵しながら分離された程度を測定した。分離率は、分離されたドレッシングの上澄液の体積とドレッシング全体の体積の比率を百分率で示した。ドレッシング製造に使用したガムはキタンサンガムであり、その他にアルギン酸、ジェランガム、グアーガム、アラビアガム、カラギーナン、セルロースガムなどを使用することができる。
【0055】
対照群として、とうもろこし澱粉、じゃが芋澱粉、もち米澱粉、及び小麦澱粉で製造したそれぞれの食物繊維澱粉を添加してドレッシングを製造し、その安定性を測定して、本発明の高温熱処理及び超音波処理した米食物繊維澱粉を添加して製造したドレッシングと比較した。
【0056】
ドレッシングを貯蔵しながら分離された程度を測定した結果、とうもろこし澱粉で製造した食物繊維澱粉を添加したドレッシングは、1週後から一番先に分離されて約80%の分離率を示し、小麦澱粉、じゃが芋澱粉の場合にも、4週後には約40〜50%まで分離された。その反面、粒子サイズの小さい米澱粉ともち米澱粉で製造した食物繊維澱粉を添加したドレッシングは、分離がかなり緩やかに起こり、4週後、約10%程度のみ分離された。じゃが芋澱粉で製造した食物繊維澱粉は、ドレッシングの粘度を高めることはできるが、安定性に劣り、米澱粉で製造した食物繊維澱粉はドレッシングの粘度も高めるとともに貯蔵安定性に優れているため、ドレッシングを製造するのに好適な素材であると判断された(図3)。
【0057】
実施例6:食物繊維澱粉が添加されたフレンチドレッシングの製造と安定性測定
前記例のように高温熱処理及び超音波処理によって製造された食物繊維澱粉を用いてドレッシングを製造し、乳化安定性を測定した。
【0058】
フレンチドレッシングは、油脂40%、食酢40%、食物繊維澱粉10%を添加して、各成分がよく混ざるように混合して製造した。フレンチドレッシングは振った後、静置させると、油脂と澱粉層の2層に分離されるが、ドレッシングの安定性は10回振った後、4日間静置させながら油脂と澱粉層が分離される程度を測定した。ドレッシングの安定性は次の式を用いて油脂分離率を計算した。
【0059】
フレンチドレッシングの油脂分離率(%)
=分離された油脂層の高さ×100/ドレッシング全体の高さ
表5は、とうもろこし、小麦、米から分離した澱粉で製造した食物繊維澱粉を添加してフレンチドレッシングを製造し、振って混合した後、澱粉層と分離される油脂の量を測定した結果である。フレンチドレッシングの安定性はとうもろこしと小麦澱粉で製造した食物繊維澱粉を添加した場合が一番悪かった。小麦澱粉の場合、初期10分間の油脂分離率がとうもろこしより高く、4時間後からはとうもろこし同等の値を示したが、これは小麦澱粉粒子のうち、大きな部分が先に沈んだ後、徐々に小さな粒子が沈んだからである。
【0060】
架橋結合工程で高温熱処理及び超音波処理を並行して製造した米食物繊維澱粉は、とうもろこしや小麦澱粉と比べてドレッシングの安定性をさらに良くした。表5に示したように、米澱粉で製造した食物繊維澱粉は、澱粉層と油脂の分離が全て徐々に起こることが分かった。二重超音波処理をした食物繊維澱粉は超音波処理をしなかった米食物繊維澱粉より油脂の分離がさらに多くなされるように見えるが、これは、超音波処理によって小さくなった粒子が沈まずに油脂層に分散され、油脂と澱粉層の境界がさらに下に下がったためである。
【0061】
食物繊維澱粉を添加した場合、ドレッシングの安定性は澱粉粒子のサイズからかなり大きな影響を受け、他の種類の澱粉より米食物繊維澱粉は粒子が小さく、ドレッシングの安定性を増加させるのに非常に効果的であることが分かった。特に超音波処理によって粒子をさらに小さくすると、ドレッシングの安定性をさらに増加させることができた。しかし、今まで一般米澱粉を用いた液状食品の製造に対しては深く研究されたことがない。
【0062】
【表5】

【0063】
実施例7:食物繊維澱粉が添加されたマヨネーズの製造と粘度及び乳化安定性の測定
表6のような条件で食物繊維澱粉が添加されたマヨネーズを製造し、レオメーター(Rheometer, Compac-100, Sun Sci. Co., Japan)を用いて粘性を測定した。添加した食物繊維澱粉(10%、w/w)は熱処理及び超音波処理した食物繊維澱粉を使用し、ガム溶液は0.9%キタンサンガムを使用し、その他にアルギン酸、ジェランガム、グアーガム、アラビアガム、カラギーナン、セルロースガムなどを使用することができる。
【0064】
【表6】

【0065】
表7は、米澱粉から超音波処理して製造された食物繊維澱粉を添加したマヨネーズを製造し、レオメーターを用いて粘度を対照群と比較した結果である。各試料の粘性を6回繰り返して測定した後、平均値を計算した。測定条件は次のようである。:Press/Traction, Press; Mode, 20;Dia of probe, 25mm; Sample size, φ30×15mm; Load cell, 2.0kg; Table speed, 60.0 mm/min.
マヨネーズの粘度は1.48〜1.57×105であり、試料間に差異がなく、食物繊維澱粉の添加がマヨネーズの粘度には影響を与えないことが分かった。
【0066】
【表7】

【0067】
マヨネーズの安定性は、マヨネーズをマイクロチューブに入れ、45℃恒温器で7日間貯蔵し、8,000rpmで15分間遠心分離した後、脂肪が分離される比率を次の式で計算した。
【0068】
マヨネーズの安定性(%)
=遠心分離された後、油脂の重量(g)×100/マヨネーズに含有された油脂の重量(g)
表8は、食物繊維澱粉を添加したマヨネーズの安定性を測定した結果である。マヨネーズの安定性は、マヨネーズに添加した油脂と食物繊維澱粉が添加されたマヨネーズから分離された油脂の比率で測定した。食物繊維澱粉が添加されなかった対照群マヨネーズは油脂が37.3%分離されたが、食物繊維澱粉が添加されたマヨネーズの場合、油脂分離率が17.6%まで減少された。マヨネーズに食物繊維澱粉を添加すると、粘度のような物理的特性は変化せず、乳化液の安定性は大きく向上されることが分かった。
【0069】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)米を蒸留水又はアルカリに浸漬して澱粉を分離する工程と、
(b)分離された米澱粉を高温で短時間熱処理する工程と、
(c)米澱粉に硫酸ナトリウム(NaSO)と架橋結合剤を添加する工程と、
(d)前記(c)工程の澱粉に塩基を添加してpHを調整した後、超音波処理する工程と、
(e)超音波処理後、反応させる工程と、
(f)前記(e)工程での架橋結合反応後、酸を添加して中和させる工程と、
(g)前記(f)工程の澱粉試料を水洗して乾燥させる工程とを含むことを特徴とする、食物繊維澱粉の製造方法。
【請求項2】
前記(b)工程において、澱粉濃度が25〜60%となるように水を添加し、高温熱処理は85〜95℃で2〜10分間処理することを特徴とする、請求項1に記載の食物繊維澱粉の製造方法。
【請求項3】
前記(c)工程において、前記架橋結合剤はトリメタリン酸ナトリウムとトリポリリン酸ナトリウムの混合物を澱粉重量に対し、10〜12%添加し、前記硫酸ナトリウムは澱粉重量に対し、10%添加することを特徴とする、請求項1に記載の食物繊維澱粉の製造方法。
【請求項4】
前記超音波処理は10〜40分間処理することを特徴とする、請求項1に記載の食物繊維澱粉の製造方法。
【請求項5】
前記超音波処理による食物繊維の含量は60〜65%であることを特徴とする、請求項1に記載の食物繊維澱粉の製造方法。
【請求項6】
前記超音波処理による食物繊維澱粉の粒子サイズが1〜10μmであることを特徴とする、請求項1に記載の食物繊維澱粉の製造方法。
【請求項7】
ドレッシング組成物において、
請求項1〜6のいずれかに記載の方法によって製造された食物繊維澱粉を添加して製造されたことを特徴とする、乳化安定性が改善されたドレッシング組成物。
【請求項8】
フレンチドレッシング組成物において、
請求項1〜6のいずれかに記載の方法によって製造された食物繊維澱粉を添加して製造されたことを特徴とする、乳化安定性が改善されたフレンチドレッシング組成物。
【請求項9】
マヨネーズ組成物において、
請求項1〜6のいずれかに記載の方法によって製造された食物繊維澱粉を添加して製造されたことを特徴とする、乳化安定性が改善されたマヨネーズ組成物。
【請求項10】
a)工程の米を小麦粉に代替し、水を0.5〜0.8倍添加してこね粉(dough)を作る工程と、洗浄機で澱粉を分離した後、グルテンを得る工程とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の食物繊維澱粉の製造方法。

【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図1】
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【公表番号】特表2012−503974(P2012−503974A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522895(P2011−522895)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【国際出願番号】PCT/KR2009/004046
【国際公開番号】WO2010/018935
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(508139664)シージェイ チェイルジェダン コーポレーション (12)
【Fターム(参考)】