説明

食用油の再生方法およびその濾過装置

【課題】予め油中の不純物を分離(分解)しておくことで不純物の吸着効率を高め、しかも、吸着後の不純物を迅速に回収することができる食用油の再生方法を提供する。
【解決手段】油温を100℃以上に加熱した使用済みの食用油に弱アルカリ水を噴霧して、前記食用油の酸性値を中和方向に還元すると共に、該弱アルカリ水の蒸発および加水分解により油中の不純物を分離する中和分解工程と、中和分解処理後の食用油に吸着剤を投入・撹拌して前記不純物を吸着する吸着工程と、吸着処理後の食用油から前記吸着剤と共に前記不純物を回収する濾過工程とからなり、濾過工程は、前記吸着剤を沈殿させた状態でその上澄みの食用油を濾過フィルターに通過させる。濾過工程は、一端にフロートを設けたサイフォンの他端から上澄みを濾過フィルター側に移す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、天ぷらやフライ類等に揚油として使用した食用油を再生する方法および当該再生方法に用いる食用油の濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食用油を天ぷらやフライ類等の揚油として使用すると、熱と揚げ種に含まれる水分により油脂が加水分解して遊離脂肪酸を生成すると共に、この遊離脂肪酸が熱酸化して過酸化物等を生成し、食用油が劣化(酸敗)することが広く知られている。このようにして揚げ物使用により劣化した食用油(古油)は、風味が損なわれ、異臭を放ち、また色も黄褐色から焦げ茶に黒ずむばかりか、粘性も高まり、揚げ種の種類や数にもよるが、調理中または調理後に単に揚げカスを除去するだけでは、せいぜい数回の揚げ物調理で使用に耐えなくなる。
【0003】
ここで油脂の劣化度を示す主な指標として酸価(AV)と過酸化物価(POV)があるが、例えば、揚げ物調理を行う食品営業者を対象とした国の指針「弁当およびそうざいの衛生規範」によれば、酸価が2.5を越えたものは、その全てを新しい油脂に交換することとある。しかしながら、上記基準を超えるなど、劣化した食用油を全て廃棄処分としたのでは、資源の有効活用や地球環境の保全といった近年の趨勢に反することになる。
【0004】
そこで、食用油の劣化進行を抑えて使用期間を実質的に延長する手段として、従来から揚げ物調理後の食用油を濾過して再生する試みが数多く提案されている。その代表的なもものとしては、濾過材に繊維フィルターを用いる他、シリカ(二酸化ケイ素)や活性白土等の吸着剤を用いたものがある。実際、シリカ等に酸化マグネシウム等のアルカリ成分を混合させたものを食用油に投入すれば、その吸着作用により油中の夾雑物が除去され、脱色および酸価低下などの効果が確認されている。ここで吸着剤は、上述したシリカや活性白土以外にも活性炭やゼオライトなどが採用され、より精製効果を高めるために、3種以上の吸着剤を組み合わせた試みもなされている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−213309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した繊維フィルターも吸着剤も油中の夾雑物を組織に付着させて除去する点で同じであり、繊維フィルターはフライヤーに直接設置することで、その排油口を利用して食用油を自然濾過できるという利点があるが、吸着剤よりも目が粗いため夾雑物の除去率が悪い。これに対して、吸着剤はその多孔性により比表面積が大きいため、夾雑物の除去率が高く、特に、吸着剤を粉末化して、食用油にそのまま投入し、撹拌することで、吸着剤と夾雑物との接触機会が増大し、より除去率を高めることができる。
【0007】
しかしながら、シリカや活性白土を粉末化した吸着剤は、放置すれば最密充填の状態で沈殿し、油底にまるで水溶き片栗粉のような沈殿層を形成する。従って、粉末状の吸着剤をそのままフライヤーやこれに接続した循環式ろ過器に直接投入すると、その排油口を目詰まりさせてしまう。これは、排油口に繊維フィルターを設置している場合も同じである。このため、粉末状の吸着剤を用いる場合は、フライヤーから使用済みの食用油を一度別の容器に移し替え、この別の容器で吸着処理を行った後、吸着剤が完全に沈殿するまで待って、上澄みの食用油だけを汲み取り、フライヤーに戻すといった手間が生ずる。また、上記別の容器は次回も利用するため、上澄みの食用油をフライヤーに戻した後に、当該別の容器から沈殿した吸着剤を除去する手間もある。
【0008】
この点、特許文献1には、粉末状の吸着剤を不織布からなる袋に詰め込んでカートリッジ化することが記載されており、この場合、処理後の吸着剤(カートリッジ)を簡単に除去することができるが、吸着剤を油中に拡散することはできないため、粉末とすることで高まった夾雑物の除去率が犠牲になる。また、当該カートリッジを油中に放置すれば粉末状の吸着剤が袋内で締め固まるから、やはり繊維フィルターのように排油口を利用して食用油を自然濾過することができない。
【0009】
本発明は、上述した従来の課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、予め油中の不純物を分離(分解)しておくことで当該不純物の吸着効率を高め、しかも、当該吸着後の不純物を迅速に回収することができる食用油の再生方法とその濾過装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明では、油温を100℃以上に加熱した使用済みの食用油に弱アルカリ物質を投入して当該食用油の酸性値を中和方向に還元する中和分解工程と、当該中和分解処理後の食用油に吸着剤を投入・撹拌して前記不純物を吸着する吸着工程と、当該吸着処理後の食用油から前記吸着剤と共に前記不純物を回収する濾過工程とからなり、当該濾過工程は、前記吸着剤を沈殿させた状態でその上澄みの食用油を濾過フィルターに通過させるという手段を用いた。中和分解工程における弱アルカリ物質の具体的投入例としては、弱アルカリ水を噴霧する方法と、吸着工程の吸着剤を予め弱アルカリ性に調整しておき、これを投入する方法とがある。なお、弱アルカリ性に調整した吸着剤の取得方法は、例えばセルロースに弱アルカリ水を噴霧し、これを乾燥させたものがある。
【0011】
当該手段によれば、先ず、弱アルカリ水を比較的高温の食用油に直接噴霧することにより、または弱アルカリ性に調整した吸着剤を投入することにより、繰り返しの揚げ物使用により酸化値が高くなった食用油が中和方向に還元され、且つ、油中の不純物が分離されるので、後段の吸着処理が促進される。アルカリ物質のPHは7.5〜10.5を予定しているが、この範囲に限定するものではない。吸着工程においては、基本的に吸着剤が前記分離した不純物等を吸着するが、弱アルカリ性の吸着剤を使用することで、当該吸着工程でも食用油を中和還元することができる。また、当該吸着処理後の食用油を再利用するには、食用油から吸着剤を除去する必要があるが、本発明では吸着剤を沈殿させ、その上澄みだけを濾過するようにしたので、吸着剤を完全に除去でき、純度の高い再生食用油を得ることができる。この濾過工程においては、吸着剤のほか、油かすや吸着剤で吸着できなかった各種不純物(夾雑物)も濾過することができるのはもちろんである。
【0012】
なお、吸着剤は、油中の夾雑物を吸着する作用を行うが、その具体的組成としては、セルロースを必須成分として2種以上の粉末状の吸着剤を混合したものが好ましい。この場合、セルロース粉体は、混合時に、その静電引力によって他の吸着剤と結合させることで、空気中に飛散しにくい濾過材とすることができる。他の吸着剤としては、シリカ、(活性)白土、活性炭、珪藻土、ゼオライト等を例示でき、これらの中から1種を選定したもの、あるいは2種以上を選定し混合したものを採用することができるが、人体に衛生上の影響がなく、食用油に投入することで油中の夾雑物を吸着するものであれば、他の成分を採用してもよい。また、酸化マグネシウム等のアルカリ成分を同時に混合した吸着剤により吸着処理する方法も本発明に含まれる。
【0013】
本発明において、濾過工程は、一端にフロートを設けたサイフォンの他端から上澄みを濾過フィルター側に移すという手段を用いる。この手段では、サイフォンはフロートを設けた一端が食用油の吸込口として油面と連動して下降しながら当該油面近くの食用油の上澄みを吸い込み、他端から排油する。このように当該手段によれば、吸着剤の沈殿後は、単に食用油を放置するだけで、全くの静置状態でサイフォンによって上澄みだけを濾過フィルターに移すことができる。なお、サイフォンは両端の差圧を利用して液体を移すものであり、本発明でもその意味で使用するが、本発明の場合、他端は一端よりも常に低位置に固定されるとしても、一端は上述のように油面と連動して位置が変位するため、必ずしも下向きU字のサイフォンだけを示すものではない。
【0014】
さらに、本発明において濾過フィルターは、少なくとも吸着剤を補足可能な上フィルターとしての濾紙と、これよりも目の細かい下フィルターとしてのろ材とを順に配するという手段を用いる。このときの食用油は吸着剤がほぼ除去されているので、濾紙とろ材の2段濾過によって、吸着剤および夾雑物を完全に除去することができる。
【0015】
ここで、ろ材は、繊維状または粉末状のセルロース、繊維状のパルプ、または前記セルロースと前記パルプを混合したものを固形状に成型したものであることが好ましい。セルロース繊維等が高い吸着率を実現し、しかも、固形状に成型することで、投入および使用後の回収など、取扱いが容易だからである。
【0016】
ところで、上述した使用済み食用油の再生方法において、弱アルカリ水の噴霧による中和分解工程は、フライパンやフライヤー上で行うことができる。ただし、前記噴霧時に油跳ねが生じるため、フライパンやフライヤーの上部に防護柵を設けることが好ましい。また、吸着工程は、フライヤー等から高温の油を受け入れ可能な容器にて行うことができる。その容器は、最も簡単には、もともと食用油が入っていた一斗缶をそのまま使用することができる。一方、濾過工程で使用する濾過装置として、本発明では、底部の排油口にサイフォン他端を接続した上澄み回収容器と、底部を開口した容器の前記開口にろ材を配したうえ、当該容器内部に濾紙を配した濾し取り容器とからなるものを使用することとした。何れの容器も、最も簡便には、上述した一斗缶を加工して使用することができる。
【0017】
さらに、当該装置において濾紙は、濾し取り容器に着脱可能に設置される脚付き網の上部に配するようにした。これにより、濾し取り容器と濾紙の間には脚の長さ分の隙間ができるため、濾紙が濾し取り容器内壁と密着した状態とするよりも、濾過速度がはるかに速い。さらに、濾し取り容器に対する濾紙の装着が簡単になり、また、濾し取り後の濾紙の撤去も網ごと行えるので、手を汚すこともない。なお、この脚付き網の網部分は平網やその周囲を立ち上げた網かごによって構成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の再生方法によれば、先ず、中和分解工程にて使用済み食用油に弱アルカリ物質を投入するという簡単な方法で、食用油が中和方向に還元され、吸着工程では、酸敗の原因となる夾雑物を吸着除去して、脱色、臭いの低減、酸価促進を抑えることができ、結果、食用油の寿命を長くすることができる。しかも、本発明では、吸着剤が沈殿した上澄みを濾過することで、吸着剤や不純物が完全に除去された純度の高い再生食用油が得られる。特に、上澄みはサイフォンによって濾過工程に移されるので、使用者は吸着工程後は単に食用油を放置するだけでよく、従来のように上澄みを汲み取ったり、ポンプで吸い上げるといった手間が一切ない。さらに、濾過フィルターを濾紙とろ材の二重構造としたため、より確実に吸着剤等を完全除去できる。さらにまた、ろ材として、繊維状等のセルロースまたはパルプやこれらを混合したものを固形状に成型したものを使用するようにしたので、セルロースによって高い吸着能力が得られながら、取り扱いやすいろ材とすることができた。
【0019】
また、本発明方法に使用する濾過装置は、底部の排油口にサイフォン他端を接続した上澄み回収容器と、底面開口の容器内部に濾紙を配し、前記底面開口にろ材を配した濾し取り容器とからなり、これら容器自体は空き容器に排油のための開口等を加工して得ることができるため、非常に簡単な構成とすることができる。しかも、濾紙は脚付き網の上部に配した状態で濾し取り容器に投入するので、濾過速度が速く、また濾紙として例えば大きなシート状のものを使用する場合でも簡単に濾し取り容器に設定でき、濾過時の濾紙の浮き上がりも防止され、そのうえ、濾過後は網ごと濾紙を回収することができるので、簡単且つ手を汚すといった不都合もない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のフローチャート
【図2】中和分解工程と吸着工程を実現する構成の概念図
【図3】濾過工程を実現する濾過装置の概念図
【図4】濾過装置における上澄み回収容器の断面図
【図5】濾過装置における濾し取り容器の断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を添付した図面に従って説明する。図1は、本発明の方法を工程順に示したフローチャートであって、先ず準備工程として再生対象となる食用油を100℃以上に昇温させる。次の中和分解工程で油中の不純物(過酸化物等)を分離するためである。ただし、あえて昇温させずとも、調理終了後の高温状態にある食用油を対象とすることもできる。なお、昇温の目標値は特に限定するものではないが、通常の揚げ温度(160〜180℃)に設定することが好ましい。そして中和分解工程では、昇温した食用油に弱アルカリ水を噴霧することで、食用油を中和方向に還元すると共に、油中の不純物を分離する。このように、予め不純物を分離しておくことで、この次の吸着処理が効率よく行われる。なお、比較的高温の食用油に弱アルカリ水を噴霧すると、小さな水蒸気爆発に似た蒸発現象が起き、また食用油の加水分解によって不純物を分離することが、本発明者の経験から確認されている。ただし、この中和分解工程は、酸化値の高い食用油を中和還元するアルカリ物質を投入するものであれば、弱アルカリ水の噴霧に代えて、後段の吸着工程で用いる吸着剤を予め弱アルカリ性に調整しておき、この調整後の吸着剤を食用油に投入することも可能である。次に、吸着工程では、中和分解処理後の食用油に吸着剤を投入し、撹拌することで前記吸着剤に前工程にて分離させた不純物を吸着させる。このときの油温や吸着剤の材質・投入量は、食用油の劣化度に応じて変更できる。目安としては、油温150℃、酸価0.5の食用油に対して、シリカやセルロース等を混合してなる吸着剤(粉末)を1〜10wt%投入する。そして、最終工程である濾過工程では、吸着剤とまだ油中に残存・浮遊する不純物を回収する。具体的には、吸着処理後の食用油を濾過フィルターにかけることで実現できる。この濾過フィルターは、少なくとも吸着剤を補足できるものであればよいが、好ましくは濾紙を上フィルター、下フィルターにセルロース製ろ材を採用した二重濾過構造とする。この濾過工程にて再生食用油が得られ、図1に示した最後の保存工程は本発明の必須の要件ではないが、濾過済みの再生食用油をフライヤーに戻して保存することで酸化しにくいことが、本発明者の経験から確認されている。
【0022】
続いて、各工程を実現するための装置等の具体的構成について説明する。図2は、中和分解工程と吸着工程を実現するための構成例を示し、図中、1はフライヤー、2はフライヤー1から落とし込まれる食用油を一時的に貯油する受け容器である。また、3は弱アルカリ水を入れた霧吹きなどの噴霧器である。即ち、フライヤー1で昇温した高温の食用油に対して受け容器2上で噴霧器3を用いて弱アルカリ水を直接噴霧することで中和分解処理が完了する。なお、家庭用であれば、フライヤー1は揚げ物用フライパンなどの調理器具が該当する。このように、本発明の中和分解工程は、従来の器具をそのまま用い、別途に用意する噴霧器3により弱アルカリ水を噴霧するだけで実現可能である。ただし、この中和分解工程では、弱アルカリ水の噴霧に代えて、上述のように弱アルカリ性に調整した吸着剤を投入することもあり、この場合も吸着剤の投入タイミングは受け容器2上で行う。
【0023】
また、中和分解処理後の吸着工程についても、フライヤー1から適当な受け容器2に食用油を移し替え、この受け容器2にて吸着剤を投入・撹拌するだけで実現できる。受け容器2は、食用油の熱に耐久性を有するものであればよく、最も手軽には、もともと食用油が入っていた一斗缶を使用することができる。
【0024】
図3は、濾過工程を実現するための構成例を示し、図中、4は上澄み回収容器、5は濾し取り容器である。この濾過工程では、吸着処理が済んだ食用油を受け容器2から上澄み回収容器4に移し替えるのであるが、このとき吸着剤の撹拌後、しばらく受け容器2を静置しておき、吸着剤が沈殿してから食用油を移し替えることが好ましい。吸着剤の上澄み回収容器4への移行量を極力減らすことで、濾過工程を効率よく行うためである。このように、受け容器2から移し替えられた食用油は、まず上澄み回収容器4にて吸着剤を沈殿させながら、上澄みだけが濾し取り容器5に落とし込まれ、さらに、当該濾し取り容器5にて残留する吸着剤および不純物が濾し取られたうえで、再生食用油はフライヤー1に戻される。
【0025】
ここで、本実施形態の場合、図3に示すように、上澄み回収容器4および濾し取り容器5を上下に段積みし、さらにこれらをフライヤー1に載せることで、濾過工程から保存工程までの間、使用者に何らの作業も強いられず、ほぼ自動的に当該工程を実現する構成としている。
【0026】
即ち、上澄み回収容器4は、図4に示すように、容器本体4aの底面排油口4bにチューブ4cの下端4d直結固定すると共に、当該チューブ4cの上端4eにフロート4fを設けた構成としている。なお、4gは、未使用時に、チューブ4cの上端を容器本体4aの側壁上縁に引っ掛けて仮止めするフックである。当該構成によれば、チューブ4cの上端4eと下端4dの差圧、即ちサイフォン作用によって、容器本体4aに受け容器2から移し替えられた食用油は、フロート4fによって常に油面付近に位置する前記上端4eの開口から上澄みだけが吸い込まれ、下端4dを介して底面排油口4bから濾し取り容器5に当該上澄みを移し替えることができる。また、チューブ4はフレキシブルな材質からなり、フロート4fによって上端4eの開口を油中に浸漬したまま、油面と連動して下降するので、前記差圧が解消する油量まで、上澄みの落とし込みが可能である。なお、容器本体4aも受け容器2と同様に、最も簡便な構成として、一斗缶を加工して得ることができる。
【0027】
一方、濾し取り容器5は、図5に示すように、容器本体5aの底面に多数の通孔5bを形成し、その上にセルロース製ろ材5cを載置すると共に、内部に濾紙5dを装着した網かご5eを投入した二段濾過構成としている。セルロース製ろ材5cは、セルロース繊維またはセルロース粉末とパルプの混合物を塊状に成型した固形物であるが、油中では浮き上がるため、当該浮き上がり防止のために、本実施形態では周囲を網状とした網かご5eの脚部材5fで当該ろ材5cを押さえている。また、濾紙5dは、網かご5eの内壁に装着され、この網かご5eの上部には容器本体5aの側壁上縁に引っ掛けるフック5gが形成されている。この網かご5eを濾紙5dを装着した状態で容器本体5aに投入することで、濾紙5dの周囲に容器本体5aとの隙間が設けられる。そして、このように濾紙5dおよびセルロース製ろ材5cをセットした容器本体5aに上澄み回収容器4から上澄みを落とし込むことによって、当該上澄みに残留する吸着剤や不純物の大部分が濾紙5dで補足され、次いでさらに細かい不純物等がセルロース製ろ材5cで補足された後、通孔5bを介して再生油が得られる。
【0028】
なお、濾紙5dの素材や目付量は吸着剤等を補足できるものであれば特に限定するものではなく、また、その形状も袋状のものであれば網かご5eへの装着がもっとも簡単であるが、大小のシート状であってもよい。さらに脚部材5fは網かご5eと別体に示したが、両者一体であってもよく、網かご5eに代えて平網を採用することも可能であり、平網を採用する場合は濾紙5dは袋状に製袋したものを採用することが好ましい。さらに、ろ材は、セルロース繊維単独またはパルプ繊維単独から構成することも、セルロース粉末やセルロース繊維にパルプ繊維を混合したものから構成することも可能である。
【0029】
他方、濾し取り容器5は密閉式の圧力容器とすれば加圧状態によって濾過速度を速めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明で再生処理した食用油は繰り返し揚げ物調理に使用でき、最終的には燃料として使用することができる。飲食店で燃料として再利用すれば非常に合理的であるが、ディーゼル車等の代替燃料として使用することも可能である。また、濾過処理後の濾過フィルターは、肥料に使用することも可能で、資源の再利用および環境保全を高度に達成することができる。さらに、精製対象は使用済みの食用油だけでなく、機械油にも応用することが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 フライヤー
2 受け容器
3 噴霧器
4 上澄み回収容器(濾過装置の一部)
5 濾し取り容器(濾過装置の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油温を100℃以上に加熱した使用済みの食用油に弱アルカリ物質を投入して当該食用油の酸性値を中和方向に還元する中和分解工程と、当該中和分解処理後の食用油に吸着剤を投入・撹拌して前記不純物を吸着する吸着工程と、当該吸着処理後の食用油から前記吸着剤と共に前記不純物を回収する濾過工程とからなり、当該濾過工程は、前記吸着剤を沈殿させた状態でその上澄みの食用油を濾過フィルターに通過させることを特徴とした食用油の再生方法。
【請求項2】
中和分解工程は、弱アルカリ物質として弱アルカリ水を食用油に噴霧するものである請求項1記載の食用油の再生方法。
【請求項3】
中和分解工程は、弱アルカリ物質として吸着工程における吸着剤を予め弱アルカリ性に調整したものを食用油に投入するものである請求項1記載の食用油の再生方法。
【請求項4】
濾過工程は、一端にフロートを設けたサイフォンの他端から上澄みを濾過フィルター側に移すものものである請求項1、2または3記載の食用油の再生方法。
【請求項5】
濾過フィルターは、少なくとも吸着剤を補足可能な上フィルターとしての濾紙と、これよりも目の細かい下フィルターとしてのろ材とを順に配してなる請求項1から4のうち何れか一項記載の食用油の再生方法。
【請求項6】
ろ材は、繊維状または粉末状のセルロース、繊維状のパルプ、またはこれらを混合したものを固形状に成型したものである請求項5記載の使用済み食用油の再生方法。
【請求項7】
請求項4から6のうち何れか一項記載の食用油の再生方法における濾過工程で使用する濾過装置であって、底部の排油口にサイフォン他端を接続した上澄み回収容器と、底面開口の容器内部に濾紙を配し、前記底面開口にろ材を配した濾し取り容器とからなる食用油の濾過装置。
【請求項8】
濾紙は濾し取り容器に着脱可能に設置される脚付き網の上部に配した請求項7記載の食用油の濾過装置。
【請求項9】
濾し取り容器は加圧可能な密閉容器を構成する請求項7または8記載の食用油の濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−270192(P2010−270192A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121715(P2009−121715)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(509141888)
【Fターム(参考)】