説明

食用油ろ過用多層ろ紙

【課題】揚げ物用食用油をろ過する際、目詰まりすることなくろ過が出来る多層ろ紙を提供する。
【解決手段】極薄吸水性パルプろ紙厚さ10μから300μを2枚から300枚程度多層に重ね、ろ紙全体の体積を増加させることにより、油が通過する空孔面積を増大させ、層全体で不純物の捕捉を図ることにより表面の目詰まりを少なくし、安定的にろ過作業が行われ、油品質を著しく改善することにより、揚げ物の旨味を向上させることが出来ることを特徴とする多層ろ紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は揚げ物用食用油のろ過を行う際に使用されるろ紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
揚げ物を行った食用油中には、微細な揚げかすや天かす更には揚げ物から溶出した脂肪分や血液などの鉄分など様々な不純物や沈殿物が混在している。それらを除去することが揚げ物の風味を良くし、更に油も延命する効果がある。それらの除去方法として、金網や不織布やパルプカーボンろ紙などのろ過方法があるが、これらは単に大きな揚げかすを除去するだけの効果しかなく、油の品質向上には殆ど効果はない。
【0003】
そこで油の酸価を抑制し脱臭や脱色を目的としたシリカ・マグネシア系ゲルや珪藻土、活性炭などの原料からなるろ過剤を使用しろ過する方法があり、これには電動式ろ過装置を使う場合と、小規模店舗など油量が約10リッター以下と少ない場合、自然落下式ろ過方式が導入されている。スーパーや居酒屋などで使われているフライヤーの油量が1フライヤー18リッターから40リッター程度であり、フライヤーの数は1槽から6槽多いところでは8槽ほどあることから、電動式ろ過装置を用いてろ過を行っている。
【0004】
しかしろ過する槽が1〜2槽目あたりまではろ過吐出量には問題ないものの、処理するろ過槽数と共にろ過回数が進むにつれ、不純物等がろ紙の表面を覆い目詰まりを起こす。それによりろ過速度が低下し吐出量が少なくなり、更に行うとろ紙全体が目詰まりすることによりろ過ができない事態に至る。
【0005】
目詰まりによるろ過機吐出量の低下は、不純物の捕捉能力が低下していることであり居り、諸望の油性能改善が低下することとなる。
従って油を確保するには長時間のろ過時間が必要となるが、ろ過のためだけに時間を費やすることは不経済で不可能なことから、ろ過作業時間を短縮することが不可欠である。
【0006】
コンビニなどの小規模店舗や個人使用のフライヤーなどの場合、油量が10リッター以下のところが多く少量の油をろ過することから、金網、不織布、ろ紙を通過させ、粗い天かすを除去している。
これらは通す網目が粗いため、ろ過する時間には何ら問題はないが、その分大きな不純物の捕捉しか出来ないため、当然油の劣化は避けられないのが現状である。
【0007】
そこで油の延命を目的に酸価を抑制、脱臭や脱色を目的としたシリカ・マグネシア系ゲルや珪藻土、活性炭などの混合物からなるろ過剤を使用し、自然落下式ろ過方式を用いる場合、動力ポンプを使ってないため、ろ過時間に多くの時間を費やし、一日経ってもろ過できない場合がある。
【0008】
電動式ろ過機や自然落下式ろ過機などを用いて油の品質向上やコストダウンを目的とする場合、シリカ・マグネシア系ろ過剤が使用され、それら不純物をろ過するために、セルロースをスラリー状にし成形→圧縮→乾燥した一層型ろ紙が使用されているが、目詰まりすることによりろ過能力が低下する。
【0009】
この一層型ろ紙の目詰まりする原因は、ろ紙表面の微細な空孔がろ過剤の微粉末や揚げかすの浮遊物などの不純物を補足するが、ろ過処理が進むにつれ油通過に有したろ紙表面の無数の微小空孔よりも、不純物やろ過剤が過剰な状態に至った場合、空孔が塞がれ、油落下孔として有した表面空孔も目詰まりすることから、ろ過速度が著しく低下しろ過不能に至るのである。
【0010】
更にろ過に及ぼす悪影響として、ろ過時間の経過と共に油温の低下は避けられず、それと共に油の粘性が上がることにより流れ抵抗が増しろ過性能低下の一因となっている。油の粘性は、温度が高いほど粘性は低いものの、ろ過時間と共に油温は下がり粘性は上がる。
【0011】
例えば業務用大豆新油温度175℃の場合、粘度4.9mPa・sであったものが、20℃の場合60.3mPa・sと約12倍以上粘性が上がり流れ抵抗が増すことから、油温低下と共にろ過時間の長時間化は進み、結果ろ過性能も低下に繋がることから出来るだけ短時間のろ過処理が要求される。
【0012】
【先行技術文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−190906
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来揚げ物用食用油のろ過剤を、電動式ろ過機や自然落下方式ろ過機で一層型ろ紙を使用し行っているが、ろ紙表面が目詰まりしろ過出来ない状態に至っていた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前述の如き課題を解消するために発明されたものであって、極薄吸水性パルプろ紙厚さ10μから300μを2枚から300枚程度を多層に重ねることにより、ろ紙全体の体積を増加させ、油が通過する空孔面積を増大させ層全体で不純物の捕捉を図ることにより表面の目詰まりを少なくし、安定的にろ過作業が行われることにより、油品質を著しく向上させ、揚げ物の旨味を改善し作業効率も向上させることを特徴とする多層ろ紙である。
【0016】
例えば電動式ろ過装置を使った場合、極薄の紙を多層にすることにより、一部の表面の空孔が微粉により塞がれ目詰まりしても、その下の空孔は健全な状態に保持されて居り、そこで更に浮遊物は捕捉され、またそこが詰まってもその他の空孔で捕捉することが出来るのである。これは極薄ろ紙を積層に重ねることにより、従来の一層型ろ紙の表面だけでろ過する考えに比し、立体的な構造となっていることから空孔の数が格段に増すことにより浮遊物の捕捉能力が向上するのである。
【0017】
また自然落下式ろ過の場合、ろ紙の中央部を円柱の油落下孔を設けることにより、ろ紙側面がらの毛細管現象を有効に活用することが可能となる。
これは極薄パルプ紙を多積層に重ね、上面を金属治具で抑えることにより、側面から毛細管を不純物を含有した油が通過するため、不純物は毛細管内に捕捉させ、ろ過された油は中央部に設けた落下孔より滴下し、下部の油槽に溜まる方法で、重力と毛細管現象を有効に活用した多層ろ紙である。
【0018】
これは、常にフィルター側面と中心部側壁との毛細管の吸引圧力差を生じさせることにより起こる現象であり、立体型多層になっていることから、一毛細管が詰まったとしても、その他の毛細管が健全であれば何ら問題なく安定的にろ過することが可能であり、従ってろ過性能とろ過時間の改善を図ることを提供するものである。
【0019】
当然中央部に円柱の落下孔を設けることなく、平面でのろ過使用でも十分にろ過性能は確保できる。
【発明の効果】
【0020】
使用済油に含まれる微細な浮遊物や沈殿物をろ過除去する際、本発明の多層ろ紙を使用することにより、安定的にろ過ができ油の品質が向上することにより油の寿命が延びると共に、揚げ物の風味のバラつきが改善することを特徴とする多層ろ紙を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】電動式用多層ろ紙の概略図である。
【図2】自然落下方式用円形多層ろ紙の横断面図である。
【図3】図2の断面図である。
【図4】フライヤーと電動式ろ過機のセット図である。
【図5】自然落下式ろ過機のセット図である。
【符号の説明】
【0022】
1 電動式用多層ろ紙
2 自然落下方式用丸型多層ろ紙
3 油落下孔
4 フライヤー側壁
5 ろ過前食用油
6 ヒーター
7 ろ過用金網
8 ろ過機側壁
9 ろ過前食用油
10 ろ過剤
11 多層ろ紙押え治具
12 多層ろ紙
13 金網
14 ろ過後食用油
15 ポンプ側壁
16 吸引ポンプ
17 油輸送パイプ
19 バルブ
20 不織布
21 ろ過剤
22 ろ過前油
23 多層ろ紙押え治具
24 自然落下用多層ろ紙
25 落下孔
26 自然落下装置油貯め下槽
27 ろ過後油
28 自然落下装置ろ過用上槽
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の使用済油をろ過する際使用される多層ろ紙に付いて、実施例に形態を図面と共に詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
フライヤー4にて大豆白絞油5の新油18リッター5を175度で過熱後、一定量の揚げ物60gr/ケを1000ケを揚げ、油5はマッハ機器株式会社製MF25ろ過機8に総てを注入後、ろ過を行いながらフライヤー4に油を戻す。
その際のろ過に要した時間を測定し、本実験を10回繰り返すことによりろ過性能を測定した。
【0025】
使用される多層ろ紙12の厚みは10μ〜300μの極薄パルプ紙を2枚〜30枚、望ましくは20枚を多層に重ねろ過機8にセットし押え治具11にて固定する。
多層ろ紙は一枚、一枚が極薄なものを重ね合せ多層にしていることにより立体構造となっていることから、空孔や多くの毛細管が一枚型ろ紙より格段に多く存在し、加えて吸油力が高いことから、ろ過能力が格段に向上するのである。
【0026】
なを多層ろ紙の厚みが10μ以下だと薄過ぎて取扱いに不便であり、300μ以上だと厚過ぎてろ過性能に支障を来たす。
【0027】
使用されるろ過剤は、水澤化学工業株式会社製ろ過剤ミズカライフ(特願2003−171307)10を油量に対し0.5重量%〜3重量%、望ましくは2重量%360grを多層ろ紙上に配設しろ過を行う。その際使用されるろ過剤は特に水澤製ろ過剤に拘るものではない。
【0028】
一方比較試験を行う一層ろ紙は、安曇製ろ紙厚み0.73m/m透気度15.7(s/300ml・cm)直径、濾水時間40(t/100ml)を使用し同じような実験を行った。
【実施例2】
【0029】
ろ過後の清掃を改善する方法として、多層ろ紙上面2枚程をめくりろ紙とろ紙との層間に所定量のろ過剤360grを配置し、めくったろ紙2枚を再度重ね上部からろ紙を抑えることにより、ろ過後のろ過剤分散を防ぎ清掃を簡略化するろ過方法にて試験を行った。
【0030】
使用方法は実施例と同様、フライヤー4にて大豆白絞油5の新油18リッター5を175度で過熱後、一定量の揚げ物60gr/ケを1000ケを揚げ、油5はマッハ機器株式会社製MF25ろ過機8に総てを注入後、ろ過を行いながらフライヤー4に油を戻す。その際のろ過に要した時間を測定し、本実験を10回繰り返すことによりろ過性能を測定した。
【実施例3】
【0031】
自然落下式ろ過装置図4の如く、ろ過用上う槽28に多層ろ紙24を上部より押え治具23と共にセットし袋状にした不織布20内にろ過剤21、100grを入れ、貯め下槽26上部へ置き、小型フライヤーにて大豆白絞油の新油3リッターを175度で過熱後一定量の揚げ物60gr/ケを100ケを揚げた後、油は一旦ろ剤上槽28、貯め下槽26に分かれた自然落下式ろ過機図4に注入しろ過時間を測定した。本実験は同一方法にて多層ろ紙を交換せずに2回行った。
【0032】
使用される多層ろ紙は50枚から300枚望ましくは200枚を重ねた円形ろ紙の中央部に円柱の油落下孔を設けることにより、ろ紙側面からの毛細管現象を有効に活用しろ過することが可能となりる。
これは極薄パルプ紙を多積層に重ね、上面を金属治具で抑えることにより、側面から毛細管を通じ間隙を不純物を含有した油が通過するが、不純物は毛細管内に捕捉させ、ろ過された油は中央部に設けた落下孔より滴下し、下部の油槽に溜まる方法で、重力と毛細管現象を有効に活用したろ過が可能となる。
【0033】
これは、常にフィルター側面と中心部側壁との吸引圧力差を生じさせることにより起こる現象であり、更に立体型多層になっていることから、例え一毛細管が詰まったとしても、その他の毛細管が健全であれば何ら問題なく安定的にろ過することが可能であり、従ってろ過性能とろ過時間の改善を図ることを提供することが出来るのである。
次に、本実施例における多層ろ紙を使用した実験結果について説明する。
【0034】
表1に実施例1で行った今回発明品の多層ろ紙と現行の一層ろ紙にてろ過を行い、ろ過時間の測定を行った。その結果多層ろ紙はろ過回数が増えるにつれ、ややろ過時間はかかったものの、一層ろ紙は4回ろ過までで5回目以降についてはろ過出来なかった。これは明らかに、ろ紙表面の目詰まりによりろ過出来ない状況に至ったものである。
【0035】
表2に実施例2のろ過時間を示す。
ろ過時間が特段長くなることはなく、問題なくろ過は行われた。その後清掃を行ったが一層型ろ紙の場合と比べ、ろ過剤の飛散が少なく非常に清掃がやり易いことを確認した。
【0036】
表3に実施例3のろ過時間を示す。
多層ろ紙を変えずに同一方法にて2回ろ過したが、ろ過時間には問題無くろ過が行われた。
【表1】

【表2】

【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ紙一枚の厚みが10μ〜300μで吸水性を具備したパルプ紙を積層した食用油ろ過用多層ろ紙。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−224530(P2011−224530A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111508(P2010−111508)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(510133193)株式会社ケイニー (1)
【Fターム(参考)】