説明

食用油を用いて調理した魚介類の調理品の臭みを評価する方法

【課題】食用油を用いて調理した魚介類の調理品の臭みや魚介類の調理に用いた食用油の劣化度を、客観的且つ簡便に評価する方法を提供すること。
【解決手段】本発明の魚介類の調理品の臭みを評価する方法は、食用油を用いて調理した魚介類の調理品の臭みを評価する方法であって、上記調理品を30〜100℃の温度にて加熱し、揮発する成分の量を測定することを特徴とする。また、本発明の魚介類の調理に用いた食用油の劣化度を評価する方法は、食用油を用いて調理した魚介類の調理品から揮発する1−ペンテン−3オールの量を測定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用油を用いて調理した魚介類の調理品の臭みを評価する方法及び魚介類の調理に用いた食用油の劣化度を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食用油を用いて調理した魚介類の調理品は、品質の低下に伴い、魚介類由来の臭いが強くなる場合がある。そのため、上記調理品の品質を評価する方法として、この臭いを指標とする官能評価法が多く用いられている。ところが、ヒトの嗅覚に頼る官能評価は、評価能力に個人差があったり、同じヒトであっても一貫した評価ができるとは限らなかったりするため、客観的ではなく正確性に欠けるという問題があった。
【0003】
これまで、臭いを客観的に評価する品質評価法としては、これまで数多くの報告がなされている。例えば、特許文献1には、魚介類の養殖臭の原因がジオスミンであることを見出し、このジオスミンの量を測定することにより、魚介類の養殖臭の有無を判別する方法が報告されている。また、特許文献2には、加熱した油脂の油臭さと、油脂を加熱した際に発生する揮発性成分中に存在する短鎖アルデヒドの量とが相関することを見出し、この短鎖アルデヒドの量を測定することにより、調理に用いた食用油の品質を判断する方法が報告されている。
【0004】
しかしながら、食用油を用いて調理した魚介類の調理品の品質を客観的に評価する方法について言及したものはない。そのため、上記調理品の品質を客観的に評価できる方法の開発が所望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3963306号公報
【特許文献2】特開2001−305127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、食用油を用いて調理した魚介類の調理品の臭みや魚介類の調理に用いた食用油の劣化度を、客観的に評価する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねたところ、食用油を用いて調理した魚介類の調理品の臭みと、上記調理品から揮発する成分の量との間に相関性があることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、以下のようなものを提供する。
【0008】
(1)食用油を用いて調理した魚介類の調理品の臭みを評価する方法であって、上記調理品を30〜100℃の温度にて加熱し、揮発する成分の量を測定することを特徴とする魚介類の調理品の臭みを評価する方法。
【0009】
(2)上記揮発する成分が、1−ペンテン−3−オール、2−エチル−フラン及び2,4−ヘプタジエナールからなる群より選ばれる少なくとも1種である(1)に記載の方法。
【0010】
(3)上記揮発する成分が、1−ペンテン−3オールである(1)に記載の方法。
【0011】
(4)上記調理の方法は、フライ調理である(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
【0012】
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の方法に基づいて、魚介類の調理品に由来する臭みが少ない食用油を選択する方法。
【0013】
(6)(1)〜(4)のいずれかに記載の方法に基づいて、魚介類の調理品の廃棄時期を判断する方法。
【0014】
(7)食用油を用いて調理した魚介類の調理品から揮発する1−ペンテン−3オールの量を測定することにより、上記魚介類の調理に用いた食用油の劣化度を評価する方法。
【0015】
(8)(7)に記載の方法に基づいて、食用油の廃棄時期を判断する方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の魚介類の調理品の臭みを評価する方法によれば、食用油を用いて調理した魚介類の調理品の臭みを、上記調理品から揮発する成分の量を基準として、客観的に評価することができる。また、本発明の食用油の劣化度を評価する方法によれば、魚介類の調理に用いた食用油を、該食用油を用いて調理した魚介類から揮発する成分の量を基準として、間接的に評価することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0018】
本発明の第1の方法は、食用油を用いて調理した魚介類の調理品の臭みを評価する方法である。この方法では、上記調理品を30〜100℃の温度にて加熱し、揮発する成分の量を測定することにより、魚介類の調理品の臭みを評価することを特徴とする。
【0019】
食用油を用いた魚介類の調理品は、調理後、一定の期間が経過すると、品質の低下に伴い、魚介類由来の臭いが強くなる場合がある。そのため、上記調理品の品質は、この臭いの強弱を指標とする官能評価により判定している。しかしながら、ヒトの嗅覚に頼る官能評価は、客観的な評価法ではないため、正確性に欠け、信頼性が低い。発明者らは、上記臭いが、上記調理品を30〜100℃の温度にて加熱することで揮発する成分に由来することを見出し、その揮発する成分の量を測定することにより、上記調理品の臭みを客観的に評価することとした。
【0020】
本発明の第1の方法では、食用油は、特に限定されるものではなく、例えば、大豆油、菜種油、紅花油、ヒマワリ油、綿実油、パーム油、オリーブ油、ゴマ油、シソ油、エゴマ油、亜麻仁油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、ボラージ油、小麦胚芽油、藻類油、魚油、牛脂、豚脂等の油脂、及びこれらのエステル交換油、分別油、硬化油が挙げられ、これらを1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0021】
また、本発明の第1の方法では、魚介類は、特に限定されるものではなく、例えば、アジ、イワシ、サケ、マグロ、カツオ、アナゴ等の魚類やエビ、カニ等の甲殻類が挙げられる。なお、上記魚介類の調理方法は、食用油を用いるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、生食(和える)、焼く、炒める、揚げる等の調理方法が挙げられる。魚介類を食用油にて揚げる、から揚げ、竜田揚げ、カツ類、フリッター等のフライ調理品は、調理後すぐに食べるだけでなく、時間が経ってから食べることも多くあり、食べるまでに経時的な劣化が起きている。本発明の第1の方法によれば、このようなフライ食品の経時的な変化を追うことができる。
【0022】
本発明の第1の方法では、食用油を用いて調理した魚介類の調理品を30〜100℃、好ましくは40〜90℃、より好ましくは50〜80℃の温度にて加熱し、揮発する成分の量を測定することにより、魚介類の調理品の臭みを評価する。上記揮発する成分としては、1−ペンテン−3−オール、2−エチル−フラン及び2,4−ヘプタジエナールが好ましい。なお、これらいずれの成分も、魚介類や食用油にもともと含まれているものではなく、魚介類と食用油との反応により生じるものと考えられる。
【0023】
本発明の第1の方法において、上記揮発する成分の量は、例えば、以下の方法により測定することができる。食用油を用いて調理した魚介類の調理品を、フードミキサー等を用いて粉砕し、ミンチにする。次いで、該ミンチをバイアル瓶に入れ、ふたをした後、30〜100℃にて加温しながら、5〜20分間振とうする。その後、バイアル瓶のヘッドスペースの揮発成分をGC−MSにて分析し、調理品から揮発した成分のピーク面積を測定する。なお、GC−MS条件は、特に限定されるものではなく、例えば、カラムにDB−WAXに用いる後述の実施例に記載の条件にて分析することができる。また、揮発した成分の捕集方法は、上記のようなヘッドスペース法に限定されない。
【0024】
本発明の第1の方法では、食用油を用いて調理した魚介類の調理品を30〜100℃の温度にて加熱し、揮発する成分の量を測定し、その量をもって、魚介類の調理品の臭みを評価するものである。そのため、あらかじめ上記の揮発する成分の量と、調理してから時間が経過した魚介類の調理品の臭み、例えば、サンプル数が多く信頼性の高い官能検査の結果との相関関係を求めておくことにより、上記の揮発する成分の量の測定値をもって、上記魚介類の調理品の臭みを評価することができる。
【0025】
本発明の第1の方法は、食用油を用いて調理した魚介類の調理品の臭みに、該調理品を30〜100℃の温度にて加熱することにより揮発する成分の量という明確な指標が存在することを前提とするものであるので、上記揮発する成分の量の測定値に基づいて、魚介類の調理品に由来する臭みが少ない食用油を選択することもできる。また、上記揮発する成分の量の測定値に基づいて、魚介類の調理品の廃棄時期を判断することもできる。例えば、上記揮発する成分の量の測定値が、あらかじめ定めた数値を超えた場合には、臭みが強く、廃棄すべき時期であると判断するとよい。
【0026】
本発明の第2の方法は、魚介類の調理に用いた食用油の劣化度を評価する方法である。この方法は、食用油を用いて調理した魚介類の調理品から揮発する1−ペンテン−3オールの量を測定することを特徴とする。以下、本発明の第2の方法について詳細に説明する。なお、本発明の第1の方法と重複する部分については、説明を省略する。
【0027】
本発明の第2の方法では、食用油を用いて調理した魚介類の調理品から揮発する1−ペンテン−3オールの量を測定し、その量をもって、魚介類の調理に用いた食用油の劣化度を評価するものであり、あらかじめ、1−ペンテン−3オールの量と、魚介類の調理に用いた食用油の品質、例えば、サンプル数が多く信頼性の高い官能検査の結果や酸価、カルボニル価等の物性との相関関係を求めておくことにより、1−ペンテン−3オールの量の測定値をもって、上記食用油の劣化度を評価することができる。
【0028】
本発明の第2の方法は、魚介類の調理に用いた食用油の劣化度に、1−ペンテン−3オールの量という明確な指標が存在することを前提とするものであるので、上記調理品から揮発する1−ペンテン−3オールの量の測定値に基づいて、上記食用油の廃棄時期を判断することができる。例えば、1−ペンテン−3オールの量の測定値があらかじめ定めた数値を超えた場合には、魚介類の調理に用いた食用油の劣化度が高く、廃棄すべき時期であると判断するとよい。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら限定されるものではない。
【0030】
[製造例1]パームオレイン油の製造方法
パームの原油に対して脱ガム処理、脱色処理を施した後、油に対して約3質量%の水蒸気を530パスカルの真空下、210℃で90分間吹き込み(脱酸・脱臭処理)、得られた油を分別し、RBDパームオレイン油を得た。次いで、該RBDパームオレイン油に対して1.5質量%の活性白土(水澤化学工業株式会社製)を添加し、減圧下110℃で20分間撹拌して色素を吸着させた後、ろ過により白土を除去して脱色油を得た。そして、該脱色油に対して約3質量%の水蒸気を約400パスカルの真空下、250℃で90分間吹き込み(脱臭処理)、パームオレイン油(ヨウ素価:68)を得た。
【0031】
<検討(1)>
[試験例1]
製造例1の方法により製造したパームオレイン油800gを180℃に加熱し、冷凍のアジフライ(日本食研株式会社製,以下、冷凍のアジフライにはこれを使用)1枚を4分間揚げた後、20℃にて2時間保管し、試験例1のアジフライを得た。
【0032】
[試験例2]
大豆油(商品名:日清大豆白絞油,日清オイリオグループ株式会社製)800gを180℃に加熱し、冷凍のアジフライ1枚を4分間揚げた後、20℃にて2時間保管し、試験例2のアジフライを得た。
【0033】
[試験例3]
菜種油(商品名:日清菜種白絞油,日清オイリオグループ株式会社製)800gを180℃に加熱し、冷凍のアジフライ1枚を4分間揚げた後、20℃にて2時間保管し、試験例3のアジフライを得た。
【0034】
[試験例4]
製造例1の方法により製造したパームオレイン油800gを180℃に加熱し、冷凍のコロッケ(商品名:衣がサクサク男爵コロッケ,ニチレイ株式会社製)3枚を4分間揚げた後、20℃にて2時間保管し、試験例4のコロッケを得た。
【0035】
[試験例5]
菜種油(商品名:日清菜種白絞油,日清オイリオグループ株式会社製)800gを180℃に加熱し、冷凍コロッケ(商品名:衣がサクサク男爵コロッケ,ニチレイ株式会社製)3枚を4分間揚げた後、20℃にて2時間保管し、試験例5のコロッケを得た。
【0036】
<官能評価:臭気及び風味>
試験例1〜3のアジフライについて、臭気(魚臭さ)及び風味(おいしさ)の評価を行った。また、試験例4,5のコロッケについて、風味(おいしさ)の評価を行った。評価は、10名の専門パネラーにより行った。臭気及び風味は、専門パネラーが常温状態の形を保ったアジフライ又はコロッケを1口食し、表1に示す評価基準(1〜5の5段階評価)に従って、評価した。そして、パネラー全員の評価点数の平均値を算出し、小数点第1位を四捨五入して評価点とした。結果を表2に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
<揮発成分の測定:総量、1−ペンテン−3−オール、2−エチル−フラン及び2,4−ヘプタジエナール>
試験例1〜3のアジフライ及び試験例4,5のコロッケをそれぞれ、フードミキサー(製品名:フードプロセッサーMK−48,松下電器産業株式会社製,時間:30秒間)を用いてミンチにした。次いで、該ミンチ2gを20mlのバイアル瓶に入れ、70℃の加温下、10分間振とうした後、ヘッドスペースの揮発成分をGC−MSにて分析した。分析条件を以下に示す。なお、ヘッドスペース装置には、ネットワークヘッドスペースサンプラーG1888(アジレントテクノロジー社製)を使用した。そして、試験例1〜3のアジフライ及び試験例4,5のコロッケのそれぞれから揮発した成分の総量、1−ペンテン−3−オール、2−エチル−フラン及び2,4−ヘプタジエナールのピーク面積を測定し、試験例3のアジフライから揮発したこれら成分のピーク面積を1.0としたときの面積比を求めた。結果を表2に示す。
【0039】
(GC−MS分析条件)
GC−MS装置:GC−MSDシステム(アジレントテクノロジー社製)
カラム:DB−WAX(60m×φ0.25mm×0.5μm)
キャリアガス:ヘリウム
カラム温度:35℃(5分間保持)→5℃/分→240℃(10分間保持)
MS検出器:スキャン分析(29−500m/z)
イオン源:230℃
四重極:150℃
エミッション電圧:70eV
【0040】
【表2】

【0041】
アジフライでは、使用した食用油の種類に関係なく、揮発成分の量と、臭気(魚臭さ)及び風味(おいしさ)との間に、相関性が認められた。特に、1−ペンテン−3−オール、2−エチル−フラン、及び2,4−ヘプタジエナールの量と、アジフライの臭気との間には、高い相関性が認められた。これに対して、コロッケでは、1−ペンテン−3−オール、2−エチル−フラン、及び2,4−ヘプタジエナールのいずれも検出されず、これらの成分が、食用油を用いて調理した魚の調理品に含まれる特有の揮発成分であることが確認された。これらの結果より、アジフライから揮発する成分、特に、1−ペンテン−3−オール、2−エチル−フラン、及び2,4−ヘプタジエナールの量を測定することで、アジフライの臭気や風味を評価することができると考えられる。
【0042】
<検討(2)>
[試験例6]
菜種油(商品名:日清菜種白絞油,日清オイリオグループ株式会社製)800gを180℃に加熱し、冷凍のアジフライ1枚を4分間揚げた後、20℃にて10時間保管し、試験例6のアジフライを得た。
【0043】
[試験例7]
菜種油(商品名:日清菜種白絞油,日清オイリオグループ株式会社製)800gを180℃に加熱し、冷凍のアジフライ1枚を4分間揚げた後、20℃にて24時間保管し、試験例7のアジフライを得た。
【0044】
[試験例8]
菜種油(商品名:日清菜種白絞油,日清オイリオグループ株式会社製)800gを180℃に加熱し、冷凍のアジフライ1枚を4分間揚げた後、20℃にて48時間保管し、試験例8のアジフライを得た。
【0045】
[試験例9]
菜種油(商品名:日清菜種白絞油,日清オイリオグループ株式会社製)800gを180℃に加熱し、冷凍のアジフライ1枚を4分間揚げた後、20℃にて72時間保管し、試験例9のアジフライを得た。
【0046】
<官能評価:臭気及び風味>
試験例6〜9のアジフライについて、臭気(魚臭さ)及び風味(おいしさ)の評価を行った。評価方法及び評価基準は、上記検討(1)と同様とした。結果を表3に示す。
【0047】
<揮発成分の測定:1−ペンテン−3−オール>
試験例6〜9のアジフライから揮発した1−ペンテン−3−オールのピーク面積を測定し、試験例3のアジフライから揮発した1−ペンテン−3−オールのピーク面積を1.0としたときの面積比を求めた。1−ペンテン−3−オールのピーク面積の測定方法は、上記検討(1)と同様とした。結果を表3に示す。
【0048】
【表3】

【0049】
アジフライは食用油で揚げた後、保管時間の経過とともに臭気が強くなり、風味も低下した。アジフライの臭気(魚臭さ)及び風味(おいしさ)と、アジフライから揮発した1−ペンテン−3−オールとの間には、相関性が認められた(試験例3,6〜9)。これらの結果より、アジフライから揮発する1−ペンテン−3−オールの量を測定することで、アジフライの臭気や風味を評価することができると考えられる、そして、この評価を利用することで、アジフライが食用に適する状態であるか否か、例えば、調理品の廃棄時期等を判断することもできると考えられる。
【0050】
<検討(3)>
菜種油(商品名:日清菜種白絞油,日清オイリオグループ株式会社製)800gを180℃に加熱し、冷凍のアジフライ3枚を4分間揚げた後、20℃にて2時間保管(フライ工程)し、試験例10のアジフライを得た。次いで、試験例10のアジフライを揚げた菜種油を更に10時間加熱(油の加熱工程)し、試験例10の油を得た。その後、上記フライ工程と上記油の加熱工程とを繰り返し、5回目のフライ工程により得たアジフライを試験例11のアジフライとし、5回目の油の加熱工程により得た菜種油を試験例11の油とした。
【0051】
<加熱臭の評価>
試験例10及び11の油について、加熱臭の評価を行った。評価基準を以下に示す。また、結果を表4に示す。
【0052】
(加熱臭の評価基準)
○:良好
△:不快臭がやや感じられるものの、許容範囲
×:不快臭が強く、使用限界
【0053】
<官能評価:風味>
試験例10及び11のアジフライについて、風味(おいしさ)の評価を行った。評価方法及び評価基準は、上記検討(1)と同様とした。結果を表4に示す。
【0054】
<揮発成分の測定:1−ペンテン−3−オール>
試験例10及び11のアジフライから揮発した1−ペンテン−3−オールのピーク面積を測定し、試験例10のアジフライから揮発した1−ペンテン−3−オールのピーク面積を1.0としたときの面積比を求めた。1−ペンテン−3−オールのピーク面積の測定方法は、上記検討(1)と同様とした。結果を表4に示す。
【0055】
【表4】

【0056】
アジフライを5回繰り返して揚げた油(試験例11)は、加熱による不快臭が強く、かなり劣化が進行していた。また、繰り返し使用した油で揚げたアジフライ(試験例11)は、風味が非常に悪く、食するには適さない状態であった。そして、このアジフライから揮発した1−ペンテン−3−オールのピーク面積は、新油を使用して揚げたアジフライ(試験例10)から揮発したものと比較してかなり大きかった。これらの結果より、油の劣化と、アジフライの風味(おいしさ)と、アジフライから揮発した1−ペンテン−3−オールとの間には、相関性があることが明らかとなった。このことから、アジフライから揮発する1−ペンテン−3−オールの量を測定することで、アジフライを揚げるために使用した油の劣化度合いを評価することができると考えられる。そして、この評価を利用することで、油が使用に適する状態であるか否か、例えば、油の廃棄時期等を判断することもできると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用油を用いて調理した魚介類の調理品の臭みを評価する方法であって、
前記調理品を30〜100℃の温度にて加熱し、揮発する成分の量を測定することを特徴とする魚介類の調理品の臭みを評価する方法。
【請求項2】
前記揮発する成分が、1−ペンテン−3−オール、2−エチル−フラン及び2,4−ヘプタジエナールからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記揮発する成分が、1−ペンテン−3オールである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記調理の方法は、フライ調理である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法に基づいて、魚介類の調理品に由来する臭みが少ない食用油を選択する方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法に基づいて、魚介類の調理品の廃棄時期を判断する方法。
【請求項7】
食用油を用いて調理した魚介類の調理品から揮発する1−ペンテン−3オールの量を測定することにより、前記魚介類の調理に用いた食用油の劣化度を評価する方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法に基づいて、食用油の廃棄時期を判断する方法。

【公開番号】特開2011−185696(P2011−185696A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50289(P2010−50289)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【Fターム(参考)】