説明

食用油及び当該食用油を含有する食品

【課題】耐冷性に優れ、かつ、オリーブオイルの良好な風味が保持できる、未精製のオリーブオイルを含有する食用油及び当該食用油を含有する食品を提供する。
【解決手段】本発明の食用油は、未精製のオリーブオイルを45〜70質量%及び高オレイン酸低リノレン酸菜種油を55〜30質量%含有し、本発明の食品は、当該食用油を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用油及び当該食用油を含有する食品に関するものであり、特に、未精製のオリーブオイルを含有する食用油及び当該食用油を含有する食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
未精製のオリーブオイルは、その風味の良さから、様々な料理に使用されるほか、ドレッシング等の食品にも利用されている。また、未精製のオリーブオイルは、精製オリーブオイルと質量比約1:9〜3:7(前者:後者)でブレンドされたピュアオリーブオイルとして用いられることもあり、質量比3:7でブレンドされたピュアオリーブオイルなどが一般的に流通している。
【0003】
しかし、オリーブオイルは、低温で白濁してしまう、すなわち耐冷性に劣るという問題がある。日本においては、室温でも固形脂が析出していることが多く、その場合、加温するなどの溶解作業が必要になる。一般的には、この加温時に、風味の劣化を引き起こす。
【0004】
この耐冷性の問題を解決することを目的とした方法として、例えば、オリーブオイルにレシチンを含み、かつ親水性乳化剤を含ませないことで低温雰囲気でも透明性を維持し得るとする方法が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
オリーブオイルを利用したドレッシングのタイプとしては、乳化タイプや分離タイプのドレッシングがある。例えば、上層が食用油からなり、下層が酸性水中油型乳化物からなるドレッシングであって、上層の食用油にオリーブオイルが3〜5%含まれているセパレートドレッシングが知られている(特許文献2参照)。この上層の食用油には、オリーブオイルのほか、大豆油、綿実油、コーン油、コメ油、ゴマ油等の食用に供しうる液状油を用いることができることが記載されている(特許文献2の段落〔0008〕参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−139348号公報
【特許文献2】特開2000−197467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1のオリーブオイルは、レシチンを必須成分としなければならないという不都合があり、また、特許文献2のドレッシングは、オリーブオイルの良好な風味を保持できるものとは言い難い。
【0008】
従って、本発明の目的は、耐冷性に優れ、かつ、オリーブオイルの良好な風味が保持できる、未精製のオリーブオイルを含有する食用油及び当該食用油を含有する食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、未精製のオリーブオイルを45〜70質量%及び高オレイン酸低リノレン酸菜種油を55〜30質量%含有することを特徴とする食用油を提供する。
【0010】
また、本発明は、上記目的を達成するために、上記本発明の食用油を含有することを特徴とする食品を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、耐冷性に優れ、かつ、オリーブオイルの良好な風味が保持できる、未精製のオリーブオイルを含有する食用油及び当該食用油を含有する食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔本発明の実施の形態に係る食用油〕
本発明の実施の形態に係る食用油は、未精製のオリーブオイルを45〜70質量%及び高オレイン酸低リノレン酸菜種油を55〜30質量%含有することを特徴とする。
【0013】
(未精製のオリーブオイル)
本発明の実施の形態に係る食用油に含有される未精製のオリーブオイルとしては、エキストラバージンオリーブオイル、バージンオリーブオイル、オーディナリーバージンオリーブオイル等(名称は国際オリーブオイル協会の定めた基準によるもの)を用いることができる。
【0014】
未精製のオリーブオイルと精製オリーブオイルをブレンドしたオリーブオイルを食用油に含有させるオイルの一部として用いることもできる。そのブレンドの質量比は限定されるものではないが、例えば、未精製のオリーブオイルと精製オリーブオイルをブレンドしたピュアオリーブオイル(未精製のオリーブオイル:精製のオリーブオイル=約1:9〜3:7)を用いることができる。
【0015】
未精製のオリーブオイルは、酸度3.3以下のものが好ましく、中でも、エキストラバージンオリーブオイル及び/又はバージンオリーブオイルを用いることが好ましい。エキストラバージンオリーブオイルを用いることが風味の点で特に好ましい。
【0016】
未精製のオリーブオイルは選別・洗浄されたオリーブ果実を粉砕・攪拌し、油と絞り粕に分離することで、製造することができる。分離には現在主流になっている「遠心分離法」に加え、昔ながらの伝統的製法である「圧搾法」も用いることができる。
なお、未精製オリーブオイルは必要に応じて、ろ過が行われるが、脱酸処理、脱色処理、脱臭処理を経ていないオリーブオイルである。
【0017】
未精製のオリーブオイルの原料に使用するオリーブ果実は、特に限定されるものではなく、国産であっても欧州等の外国産であっても使用できる。
【0018】
食用油中の未精製のオリーブオイルの含有量は、45〜70質量%である。当該含有量は、45〜65質量%であることが好ましく、50〜65質量%であることがより好ましく、55〜65質量%であることがさらに好ましい。
【0019】
(高オレイン酸低リノレン酸菜種油)
本発明の実施の形態に係る食用油に含有される高オレイン酸低リノレン酸菜種油(HOLL菜種油)は、高オレイン酸低リノレン酸キャノーラ油とも言い、全脂肪酸組成に含まれるオレイン酸の割合が65質量%以上であり、リノレン酸の割合が6.0質量%以下である菜種油を指す。より好ましくは、全脂肪酸組成に含まれるオレイン酸の割合が68質量%以上であり、リノレン酸の割合が4.0質量%以下である菜種油を用いる。
【0020】
食用油中の高オレイン酸低リノレン酸菜種油の含有量は、55〜30質量%である。当該含有量は、55〜35質量%であることが好ましく、50〜35質量%であることがより好ましく、45〜35質量%であることがさらに好ましい。
【0021】
高オレイン酸低リノレン酸菜種油は、公知の製造方法により製造できる。例えば、オレイン酸含量が65質量%以上に品種改良された菜種の種子に、搾油処理および精製処理を施すことにより得ることができる。搾油処理は物理的な圧搾法と有機溶剤を用いる抽出方法とがあり、一方または両方を使用できる。精製処理は一般の製油工程に施される脱ガム処理、アルカリ脱酸処理、活性炭や白土による脱色処理、および減圧脱臭処理を適宜採用できる。本発明の目的を達成させるためには十分に精製されていることが望ましい。
【0022】
(食用油)
本発明の実施の形態に係る食用油は、公知の方法により製造した未精製のオリーブオイル45〜70質量%と、公知の方法により製造した高オレイン酸低リノレン酸菜種油55〜30質量%とをブレンドすることにより製造できる。この時、上記範囲内で、別の植物油を配合することができる。特に、精製オリーブオイルを配合することができるが、耐冷性の観点から、未精製のオリーブオイルと精製オリーブオイルの合計量は、70質量%以下が好ましい。なお、精製オリーブオイルは未精製のオリーブオイルに精製処理を施して得られる食用油である。精製処理は一般の製油工程に施される脱酸処理、活性炭や白土による脱色処理、および減圧脱臭処理を適宜採用できる。
【0023】
〔本発明の実施の形態に係る食品〕
本発明の実施の形態に係る食品は、上述の本発明の実施の形態に係る食用油を含有することを特徴とする。
【0024】
本発明の実施の形態に係る食品としては、特に限定されるものではないが、例えば、マヨネーズ、マーガリン、ファットスプレット、分離型ドレッシング、乳化ドレッシング、アイスクリーム、クリーム等の乳化油脂組成物、カツ、コロッケ、天ぷら、フライドチキン、フライドポテトなどの揚げ物のほか、野菜炒め、チャーハンなどの炒め物、洋菓子類、麺類、飲料が挙げられる。特に、ドレッシング等の生食用が好ましく、分離型ドレッシングに好ましく適用される。これらの食品は、それぞれ通常の製法にて製造することができる。
【0025】
また、食品中における本発明の食用油の使用量は、食品中に加えられる油脂の60〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは70〜100質量%であり、さらに好ましくは80〜100質量%である。最も好ましくは90〜100質量%である。
【0026】
〔本発明の実施の形態の効果〕
本発明の実施の形態によれば、耐冷性に優れ、かつ、オリーブオイルの良好な風味が保持できる、未精製のオリーブオイルを含有する食用油及び当該食用油を含有する食品を提供することができる。
また、本発明の好ましい実施の形態によれば、上記効果を奏するとともに、雑臭や劣化臭が少ない、未精製のオリーブオイルを含有する食用油及び当該食用油を含有する食品を提供することができる。
また、本発明の好ましい実施の形態によれば、上記効果を奏するとともに、レシチンを必須の成分とする必要が無いため、レシチンを不要とできる分、低コストで製造することが可能となる。
【0027】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
〔食用油の耐冷性評価〕
表1に記載の配合にて食用油(試料)を製造し、それぞれについて、以下の手順で耐冷性の評価を行なった。評価結果を表1に示す。また、表2に記載の対照油についても同じ評価を行なった。評価結果を表2に示す。
【0029】
<耐冷性の評価手順>
(1)試料はビーカーの中であらかじめ120℃で5分間加熱した後、約30℃に放冷した。
(2)試料を試料瓶(100〜120ml、直径約50mm)の80〜90%程度まで入れて栓をした後、ポリエチレンシートで栓及び瓶の口部を覆い、ゴム輪で固く締めた。
(3)試料瓶を水槽に入れ、水槽に氷水を加え、試料瓶を0℃に保った。
(4)0℃に保ったままで3日間(72時間)経過した後に、試料瓶を取り出し、試料の状態を素早く観察した。計4名のパネルが目視で試料の外観を観察し、下記の6段階で評価した。透明容器に充填された食用油を棚に陳列し、一瞥した際に、透明に見える下記の4と5は問題がないため、平均4.0点以上を合格とした
5:清澄、4:結晶浮遊、3:くもり、2:白濁、1:沈殿、0:固化
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
表1及び表2に記載の原料は以下の表3の通りであり、いずれも日清オイリオグループ株式会社製である。
【0033】
【表3】

【0034】
なお、「エキストラバージンオリーブオイル65〜30質量%、高オレイン酸低リノレン酸菜種油35〜70質量%」では、上記手順と同様にして5日間(120時間)経過した後に観察した場合においても、それぞれ表1と同等の結果(平均4〜5点)が得られた。
【0035】
〔ドレッシングの耐冷性評価〕
表4に記載の配合にて製造した食用油を用いてドレッシング(試料)を製造し、それぞれについて、以下の手順で耐冷性の評価を行なった。評価結果を表4に示す。また、表5に記載の対照油を用いてドレッシング(試料)を製造し、これらについても同じ評価を行なった。評価結果を表5に示す。
【0036】
<耐冷性の評価手順>
(1)表4に記載の配合にて製造した食用油100g、食酢50g、食塩1.6g(事前に食酢に溶解)を試料瓶(200g、PETボトル)に入れ、栓をし、試料瓶を20回よく振り混ぜてドレッシング(試料)を製造した。
(2)試料瓶を0℃の恒温槽にて静置した。
(3)3日間(72時間)経過した後に、試料瓶を取り出し、試料の状態を素早く観察した。計4名のパネルが目視で試料の油層(上層)の外観を観察し、下記の6段階で評価した。ドレッシング使用時に混和することのできる平均5〜2点を合格とした。
5:清澄、4:結晶浮遊、3:くもり、2:白濁、1:沈殿、0:固化
【0037】
【表4】

【0038】
【表5】

【0039】
表4及び表5に記載の原料は前記の表3の通りであり、いずれも日清オイリオグループ株式会社製である。
【0040】
〔食用油の風味の評価〕
表6及び表7に記載の配合にて食用油(試料)を製造し、それぞれについて、以下の手順で風味(生風味及び加熱後の風味)の評価を行なった。生風味の評価結果を表6に示し、加熱後の風味の評価結果を表7に示す。
【0041】
<生風味の評価手順>
(1)計4名のパネルが大さじ1杯の試料を口に含み、オリーブオイルのフルーティな風味、及び残部油脂に由来する雑臭又は劣化臭のそれぞれについて、下記の13段階で評価し、平均値を算出した。
6:極めて強い、5.5:5と6の中間、5:強い、4.5:4と5の中間
4:やや強い、3.5:3と4の中間、3:普通、2.5:2と3の中間
2:やや弱い、1.5:1と2の中間、1:弱い、0.5:0と1の中間
0:極めて弱い
(2)オリーブオイルの風味[A]は、点数が高いほど望ましく、残部油脂に由来する雑臭又は劣化臭[B]は点数が低いほど望ましい。[A]と[B]の差([A]−[B])が2.0点以上の場合、一般的なピュアオリーブオイル(エキストラバージンオリーブオイル30%、精製オリーブオイル70%)と同等以上の風味であり好ましい。一般的なピュアオリーブオイルが2.0点であり、これと同等以上であれば、良好なオリーブ風味であるため、2.0点以上を合格の目安とした。
【0042】
<加熱後の風味の評価手順>
(1)試料瓶(200ml、ビーカー)に試料を50ml入れ、これを180℃で3分間、加熱した。その後、室温で60分間、放冷した。
(2)計4名のパネルが大さじ1杯の試料を口に含み、オリーブオイルのフルーティな風味、及び残部油脂に由来する雑臭又は劣化臭のそれぞれについて、下記の13段階で評価し、平均値を算出した。
6:極めて強い、5.5:5と6の中間、5:強い、4.5:4と5の中間
4:やや強い、3.5:3と4の中間、3:普通、2.5:2と3の中間
2:やや弱い、1.5:1と2の中間、1:弱い、0.5:0と1の中間
0:極めて弱い
(3)オリーブオイルの風味[A]は、点数が高いほど望ましく、残部油脂に由来する雑臭又は劣化臭[B]は点数が低いほど望ましい。[A]と[B]の差([A]−[B])が0.0点以上の場合、一般的なピュアオリーブオイル(エキストラバージンオリーブオイル30%、精製オリーブオイル70%)と同等以上の風味であり好ましい。一般的なピュアオリーブオイルが0.0点であり、これと同等以上の風味を求めたため、0.0点以上を合格の目安とした。
【0043】
【表6】

【0044】
【表7】

【0045】
表6及び表7に記載の原料は前記の表3の通りであり、いずれも日清オイリオグループ株式会社製である。また、表中の「精製オリーブ」は、商品名ボスコ エキストラバージンオリーブオイルを精製することにより製造した精製オリーブオイルである。精製処理は、アルカリ脱酸処理、脱色処理(活性白土1%)、減圧脱臭処理(240℃、90分)を行った。
【0046】
〔食用油を含有する食品の風味の評価〕
表8、表9および表10に記載の配合にて食用油を含有する食品の風味を評価した。セパレートドレッシングの評価結果を表8に示し、マヨネーズの評価結果を表9に示し、揚げ物の評価結果を表10に示す。
【0047】
<セパレートドレッシングの評価手順>
(1)表8に記載の配合にて製造した食用油100g、食酢50g、食塩1.6g(事前に食酢に溶解)を試料瓶(200g、PETボトル)に入れ、栓をし、試料瓶を20回よく振り混ぜてドレッシング(試料)を製造した。
(2)計4名のパネルがドレッシングの風味を評価した。
【0048】
【表8】

【0049】
<マヨネーズの評価>
(1)表9に記載の配合にて製造した食用油180g、卵55g、食酢23g、食塩2g、マスタード1g、砂糖1gをフードプロセッサーを用いよく攪拌してマヨネーズを製造した。
(2)計4名のパネルがマヨネーズの風味を評価した。
【0050】
【表9】

【0051】
<揚げ物の評価手順>
(1)表10に記載の配合にて製造した食用油800gで揚げ物を行った。
(2)計4名のパネルが揚げ物の風味を評価した。
【0052】
【表10】

【0053】
表1,4,6,7,8,9,10より、エキストラバージンオリーブオイル45〜65質量%と高オレイン酸低リノレン酸菜種油55〜35質量%を配合して製造した食用油は、耐冷性に優れ、かつ風味も良好であることが分かる。また、当該食用油を含有するドレッシングの耐冷性も優れ、風味も良好であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未精製のオリーブオイルを45〜70質量%及び高オレイン酸低リノレン酸菜種油を55〜30質量%含有することを特徴とする食用油。
【請求項2】
前記未精製のオリーブオイルを50〜65質量%及び高オレイン酸低リノレン酸菜種油を50〜35質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の食用油。
【請求項3】
前記未精製のオリーブオイルがエキストラバージンオリーブオイルであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の食用油。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の食用油を含有することを特徴とする食品。


【公開番号】特開2011−254707(P2011−254707A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129341(P2010−129341)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【Fターム(参考)】