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食用油脂凝固剤

【目的】 食用油脂、特に廃食油の処理に当たり、安価な上に常温下で安全かつ迅速に行なうことができる食用油脂凝固剤を提供する。
【構成】 (1)酢酸ビニルと炭素数12以上の脂肪酸のビニルエステルおよび/または炭素数12以上のアルキル鎖を有するアルキルアクリレートとの共重合体と、(2)炭素数22以下の脂肪酸および/またはその誘導体の混合物よりなる食用油脂凝固剤。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、食用油脂を常温下で凝固させるための凝固剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、これまでの産業企業型の公害から消費生活型の公害が取り沙汰されるようになり、特に栄養素に富んだ生活排水による河川、湖沼の汚染が深刻な社会問題となっている。このような生活排水の中には、家庭の台所から排出される食用油の廃液が多分に含まれているため、環境保護の観点から、調理に使用した後の廃食油を直接流しに捨てず、固化、回収しようという動きが高まっている。このような廃食油の処理については、例えば、12−ヒドロキシステアリン酸を廃食油に添加し、加熱溶解した後、冷却固化させる方法(特開昭55−106298他)、廃食油に親水性高分子化合物と界面活性剤と水を混合してペースト状にする方法(特開平4−72394他)、合成高分子を用いて50℃程度に加熱、溶解して固める方法(特開平5−311191)、12−ヒドロキシステアリン酸を特殊な溶剤にあらかじめ溶解して、常温で固化させる方法(特開平6−80986)等が使用あるいは提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記の従来法において、12−ヒドロキシステアリン酸単独では、80℃以上の食用油脂にしか完全溶解しないため、一旦使用後に食用油脂を冷ましてしまうと、固化させるために再加熱が必要となる。これが元で往々にして火災を引き起こし、社会的な問題として取り沙汰されている。また、廃食油に親水性高分子化合物と界面活性剤と水を混合してペースト状にする方法は、火災の危険は小さいものの、処理時の廃棄物の嵩高さとペースト状であることから、取り扱いにくい難点が生ずる。さらに、合成高分子を用いて50℃程度に加熱、溶解して固める方法も、低温であるとは言え、体温以上の温度であるため、結果的に再加熱が必要となり火災の一因となる。12−ヒドロキシステアリン酸を特殊な溶剤にあらかじめ溶解して、常温で固化させる方法の提案は、火災、取り扱いの点では改善されているものの、アルキルピロリドン、アルキルイミダゾリジノンといった窒素を含む特殊な溶剤が必要であり、アミン臭などの不快な匂いを有していたり、廃棄処分する際に焼却したりすると、窒素酸化物などの有毒ガスを生成したりして、二次的公害を引き起こす。
【0004】本発明は、食用油脂、特に廃食油の処理に関する上記の問題点を解決し、安価な上に常温下で安全かつ迅速に処理が可能な食用油脂凝固剤を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、酢酸ビニルと炭素数12以上の脂肪酸のビニルエステルまたは炭素数12以上のアルキル鎖を有するアルキルアルキレートとの共重合体、もしくはこれら3種のモノマーの共重合体と、炭素数22以下の脂肪酸もしくはその誘導体よりなる混合物を食用油脂に添加すると、常温でも速やかに凝固させ強固なゲルを形成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】すなわち、本発明は、(1)酢酸ビニールと炭素数12以上の脂肪酸のビニルエステルおよび/または炭素数12以上のアルキル鎖を有するアルキルアクリレートとの共重合体と、(2)炭素数22以下の脂肪酸および/またはその誘導体の混合物よりなることを特徴とする食用油脂凝固剤である。
【0007】本発明において、炭素数12以上の脂肪酸のビニルエステルを用いるのは、炭素数12以下の脂肪酸、例えば酢酸ビニル単独の重合体では食用油脂との相溶性が悪く、凝固剤として機能しないからである。炭素数12以上であれば、食用油脂との相溶性も良く、凝固剤に適している。これについては、アルキルアクリレートも同様のことが言える。
【0008】さらに、本発明においては、炭素数22以下の脂肪酸を該共重合体に混合しているが、これは、例えば炭素数24のテトラコサン酸は融点が84.2℃であり、本発明の目的とする常温での食用油脂の凝固には適さないばかりでなく、共重合体の融点よりも高く、かえって加熱することが必須条件となってしまうからである。
【0009】本発明の常温での食用油脂凝固の機構は、未だ解明されていないが、次のようなことが考えられる。まず、酢酸ビニルを必須としているが、酢酸ビニルモノマーは重合時にラジカルの連鎖移動を伴いやすく、これにより単なる直鎖の共重合体でなく、枝分かれした共重合体を形成するのに役立ち、先に提案されている合成高分子を用いて50℃程度に加熱、溶解して固める方法(特開平5−311191)と比較しても、ゲル強度が高くなり、実質的に使用量が少なくて済む利点が出てくるものと推定される。また、共重合体の融点は、およそ30〜60℃の範囲にあるが、これに炭素数22以下の脂肪酸を混合することによって、共重合体の可塑剤のような働きをして、全体の軟化点を下げ、常温の食用油脂に分散しやすくし、速やかに食用油脂が凝固するものと推定される。
【0010】本発明において、炭素数12以上の脂肪酸のビニルエステルとしては、ビニルラウレート、ビニルトリデシレート、ビニルミリステアレート、ビニルペンタデシレート、ビニルセチレート、ビニルヘプタデシレート、ビニルステアレート、ビニルオレート等があり、これらは単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0011】本発明において、炭素数12以上のアルキル鎖を有するアルキルアクリレートとは、炭素数12以上の直鎖または分岐状の飽和または不飽和のアルキル基を有するアルキルアクリレートが挙げられる。この具体例としては、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ミリスチルアクリレート、ペンタデシルアクリレート、セチルアクリレート、ヘプタデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、オレイルアクリレート等があり、これらは単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0012】本発明において、炭素数22以下の脂肪酸もしくはその誘導体としては、ベヘニン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、カプロン酸、デカン酸、ノナン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸等と、その誘導体としては、エステル化物、モノグリセライド、ジグリセライドが挙げられ、その中から常温で液状のものを選択すればよく、これらは単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0013】本発明における酢酸ビニルと炭素数12以上の脂肪酸のビニルエステルまたは炭素数12以上のアルキル鎖を有するアルキルアクリレートの共重合体、もしくはこれら3種のモノマーの共重合体の製法としては、上記に例示した各構成モノマーを通常用いられるラジカル開始剤の存在下で、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法等で重合する方法が挙げられる。本発明の凝固剤によって凝固させることのできる食用油脂としては、ナタネ油、大豆油、紅花油、胡麻油、パームカーネル油、パーム油、ヤシ油、コーンオイル等の植物油、牛脂油、魚油、豚脂油等の動物油、またはそれらの混合油等が挙げられる。
【0014】本発明の凝固剤の使用方法は極めて簡便であり、凝固しようとする食用油脂に対して該凝固剤を添加し、攪拌、分散した後、放置することにより、速やかに食用油脂を凝固させることができる。さらに、寒冷地において凝固剤が固化した状態である場合は、これを体温あるいは温水で温め、液状にした後、同様の操作を行えば、食用油脂を加熱することなく速やかに凝固させることができる。
【0015】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、こららの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例において、部は全て重量部を示す。
(実施例1)酢酸ビニル10部、トリデシルアクリレート100部をトルエン150部に溶解し、アゾビスイソブチルニトリル2部を加えて窒素気流下60℃、8時間反応させた後、トルエンを留去し、本発明の共重合体を得た。この共重合体100部に対し、ノナン酸100部を加熱混合し、常温で液状の本発明の食用油脂凝固剤を得た。
【0016】(実施例2)酢酸ビニル10部、ステアリルアクリレート100部をトルエン150部に溶解し、アゾビスイソブチルニトリル2部を加えて窒素気流下70℃、8時間反応させた後、トルエンを留去し、本発明の共重合体を得た。この共重合体100部に対し、エナント酸メチル100部を加熱混合し、常温で液状の本発明の食用油脂凝固剤を得た。
【0017】(実施例3)酢酸ビニル30部、ビニルセチレート50部、オレイルアクリレート50部をトルエン150部に溶解し、アゾビスイソブチルニトリル2部を加えて窒素気流下70℃、8時間反応させた後、トルエンを留去し、本発明の共重合体を得た。この共重合体100部に対し、オクタン酸100部を加熱混合し、常温で液状の本発明の食用油脂凝固剤を得た。
【0018】(実施例4)酢酸ビニル30部、ビニルラウレート100部をエタノール80部と水20部の混合溶媒に加え、これにペルオキソ二硫酸カリウム2部を加えて、85℃で還流下2時間懸濁重合を行った。濾過により回収した反応物をメタノール洗浄後、溶媒を留去して共重合体を得た。得られた共重合体100部に対し、パルミチン酸30部を加熱混合し、本発明の食用油脂凝固剤を得た。
【0019】(実施例5)酢酸ビニル10部、ビニルステアレート100部をエタノール60部と水40部の混合溶媒に加え、これにペルオキソ二硫酸カリウム2部を加えて、85℃で還流下2時間懸濁重合を行った。濾過により回収した反応物をメタノール洗浄後、溶媒を留去して共重合体を得た。得られた共重合体100部に対し、オレイン酸メチル20部を加熱混合し、本発明の食用油脂凝固剤を得た。
【0020】(実施例6)実施例2において、ステアリルアクリレートの代わりにラウリルアクリレートを、また、エナント酸メチルの代わりにミリスチン酸メチルを使用した他は同様に実施して、本発明の食用油脂凝固剤を得た。
(実施例7)実施例5において、ビニルステアレートの代わりにビニルオレートを、また、オレイン酸メチルの代わりにカプロン酸エチルを使用し、さらに、酪酸10部を加えた他は同様に実施して、本発明の食用油脂凝固剤を得た。
【0021】(実施例8)実施例3において、ビニルセチレートの代わりにビニルトリデシレートを、また、オレイルアクリレートの代わりにセチルアクリレートを、さらに、オクタン酸の代わりにイソ吉草酸エチルを使用した他は同様に実施して、本発明の食用油脂凝固剤を得た。
【0022】(実施例9)実施例3において、ビニルセチレートの代わりにビニルペンタデシレートを、オレイルアクリレートの代わりにイソステアリルアクリレートを、オクタン酸の代わりにベヘニン酸を使用し、さらに、酪酸イソアミル20部を加えた他は同様に実施して、本発明の食用油脂凝固剤を得た。
【0023】(実施例10)実施例2において、ステアリルアクリレートの代わりにミリスチルアクリレートを、また、エナント酸メチルの代わりに吉草酸メチルを使用し、さらに、デカン酸15部を加えた他は同様に実施して、本発明の食用油脂凝固剤を得た。
【0024】(実施例11)食用廃油(使用済みのコーン油、サラダ油、大豆油を混合したもので、液温20℃)100部に、実施例1〜10で得た本発明の食用油脂凝固剤を、それぞれ5部づつ分散溶解させた。その後、室温で1時間放置すると、流動性がなく油の滲み出しも見られない強固なゲルを形成した。これをレオメーターに直径10cmの円柱状アダプターを取り付けて咀嚼試験を行い、ゲル強度を測定した。同時に不快臭の有無を確認した。その結果を表1に示す。
【0025】
【表1】


【0026】(比較例1)12−ヒドロキシステアリン酸3部を、常温の実施例で用いたのと同様の食用廃油100部に分散、放置したが、油に溶解せずゲル化しなかった。不均一な溶液のままの状態であった。結果を表2に示す。
【0027】(比較例2)キサンタンガムとステアリン酸ジエタノールアミドを95/5の比率で混合したもの4部を、常温の食用廃油100部に水100部と共に添加、混合攪拌した。白色クリーム状のペーストが得られたが、ゲル化せず、また、容積も2倍以上となり取り扱いが困難であった。結果を表2に示す。
【0028】(比較例3)ステアリルアクリレート80部およびヒドロキシエチルアクリレート30部をエタノール330部に溶解し、これにアゾビスイソブチロニトリル3部を加え窒素気流下60℃、5時間反応させた後、エタノールを留去して油凝固剤を得た。この油凝固剤4部を常温の食用廃油100部に添加分散した後、1時間放置したが、不均一な溶液のままの状態であった。結果を表2に示す。
【0029】(比較例4)12−ヒドロキシステアンリン酸を38重量%になるようにN−メチルピロリドンに溶解して油凝固剤とした。この油凝固剤4.5部を常温の食用廃油100部に分散、放置した後、ゲル状物を得た。しかし、アミン臭様の不快な臭気があり、台所等の家庭内での作業は困難と思われる。結果を表2に示す。
【0030】(比較例5)酢酸ビニル100部をエタノール330部に溶解し、これにアゾビスイソブチロニトリル3部を加え窒素気流下60℃、5時間反応させた後、エタノールを留去して油凝固剤を得た。この油凝固剤4部を常温の食用廃油100部に添加分散した後、1時間放置したが、不均一な溶液のままの状態であった。結果を表2に示す。
【0031】
【表2】


【0032】
【発明の効果】本発明の凝固剤によれば、食用油脂を常温で凝固させ、強固なゲルを形成すると共に、安全かつ迅速に行うことができるので、特に廃食油の固化、回収処理に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (1)酢酸ビニルと炭素数12以上の脂肪酸のビニルエステルおよび/または炭素数12以上のアルキル鎖を有するアルキルアクリレートとの共重合体と、(2)炭素数22以下の脂肪酸および/またはその誘導体の混合物よりなることを特徴とする食用油脂凝固剤。
【請求項2】 炭素数12以上の脂肪酸のビニルエステルがビニルステアレートである請求項1記載の食用油脂凝固剤。
【請求項3】 炭素数22以下の脂肪酸もしくはその誘導体が融点50℃以下のものである請求項1記載の食用油脂凝固剤。