説明

食用油製品およびその使用

この食用油製品は、ターニップ菜種油または菜種油を主成分とする。この油は、トコフェロール酸化防止剤と、この酸化防止剤用の再生剤として、アルファリポ酸とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ターニップ菜種油または菜種油を主成分とし、酸化防止剤を含有する食用油製品に関する。本発明は、特に、製パンおよび食品加工において、バター、マーガリン、および小麦粉の処理剤に代わるターニップ菜種または菜種を主成分とした食用油製品に関する。また本発明は、食用油製品の使用にも関する。
【0002】
硬化したターニップ菜種油または菜種油は、最も健康的な植物性脂肪の選択肢である。この植物油は、その組成に基づけば、たとえばオリーブ油よりも良好である。
【0003】
油の問題は酸敗臭を放つようになることであり、これは油を含有する食品も傷める。酸敗臭は、特に食品の香りと味とに影響を与え、それ故に消費者の満足感にも直接影響する。この問題は、たとえば製品を長期間保存するときに生じる。また、製品が室温で保存される場合、より早く酸敗臭を放つようになる。市場には、ターニップ菜種油または菜種油を主成分とした食用油が複数あり、酸化防止剤を使って酸敗臭の防止力を高める努力が成されている。
【0004】
食用油の酸敗臭は、有機過酸化物、アルコール、アルデヒド、ケトン化合物、およびカルボニル酸などの反応物を生成する複雑な過程である。起こり得る多様な酸化反応のうち、二重結合を含む脂肪酸内における遊離基の形成が最も一般的であり、この酸化反応は食物には好ましくない。これらの遊離基は、酸素を結合して過酸化物を形成する。これによって連鎖反応が可能になり、有機過酸化物を主産物として生成する。これらの過酸化物は、アルコールおよびカルボニル化合物などの副産物に変形し、さらに酸化してカルボン酸になる。同時に、ターニップ菜種油に含有されるトコフェロールは、その酸化防止特性を失う。酸敗臭は保存状態で生じる可能性があるが、これらの状況には高温および酸素環境が含まれるので、特に食用油の脂肪は、使用方法に関連して、かつこの食用油が完成品に含まれるとき、暴露されて酸敗臭を放つようになる。したがって、食用油の品質は、それによって製造される食品、特にペストリの品質に重大な影響を及ぼす。
【0005】
既知の製品の解決手段では、没食子酸プロピル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、またはアスコリビン酸、またはこれらの化合物のうちいくつかを酸化防止剤として使用する。一般的には、乳化剤としてレシチン乳化剤が使用される。部分的に酵素を含有し、硬化した様々な脂肪内に形成された混合物は、小麦粉のエンハンサとして使用される。
【0006】
ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)およびブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)などの合成抗酸化剤は、1日の服用量を越えると不所望の副作用が生じる可能性がある。天然酸化防止剤への関心が高まっても、これは実際に生じている。
【0007】
本発明の目的は、特に製品の保存性、およびその製品によって製造された食品に関連する問題を取除くこと、および現存の製品よりも極めて長期にわたって酸敗臭を放たず、天然酸化防止剤を主成分とする食用油製品であって、二重結合脂肪酸を含有する食用油製品を提供することである。ここでの天然酸化防止剤とは、自然の中で発見し得る酸化防止剤のことを言うが、天然材料であっても合成によって製造されたものであってもよい。
【0008】
本発明の目的は、多機能に膨張可能であり、かつ酸敗臭を放たない未硬化のターニップ菜種油または菜種油を主成分として不飽和脂肪(トリグリセリド)を含有する食用油であって、食品に残留する油として、食品の製造、特にベーキングオイルとして製パンに使用できる食用油を提供することにも関する。
【0009】
この目的を達成するために、本発明に係る製品は、酸化防止剤用の再生剤として、アルファリポ酸を含有することを主な特徴とする。アルファリポ酸は、トコフェロール酸化防止剤の効果を維持しながら完成品の酸敗臭を長期間防ぐので、食用油によって製造される製品の保存性の観点から見て特に重要である。
【0010】
有利な実施形態に係る添加剤の系統によって、膨張可能で未硬化の脂肪を含む初の植物油製品が開発可能である。この製品は、ターニップ菜種油および/または菜種油を主成分として含み、酸化防止剤としてトコフェロール、乳化剤としてレシチン(E322)、ならびに脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリド(E471)、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドの酢酸エステル(E472a)、または脂肪酸のショ糖エステル(E473)も含む。酸性の調節のためにクエン酸(E330)が使用可能である。アルファリポ酸は、酸化防止剤としてのトコフェロール混合物(E306)用の再生剤として使用される。食品の原材料(製パンの場合は小麦粉)の長鎖有機物成分を分割できる酵素として、アミラーゼおよび/またはペントサナーゼ、場合によってはヘミセルロースなどが使用される。これは、パン製品の構造を軽量化するため、および氷点下の貯蔵に対する耐久性を向上させるために、たとえばAspergillus niger、 Trichoderma longibrachiatum、および Aspergillus oryzaeを主成分とする酵素であってもよい。前記酵素を添加することで、別に添加した酵素を含有する小麦粉のエンハンサに代えることが可能であり、それ故に、この製品はイースト生地(イーストで膨らまされた生地)および冷凍生地に特に適している。香料は、もし使用するのであれば、脂肪可溶性の香料類から必要に応じて選択する。たとえばバター香料が使用可能である。
【0011】
添加剤の好適な系統によって、このように多機能性を向上させることができる。1以上の酵素を使用する場合、膨張可能であり、かつ酸敗臭を放たない未硬化のターニップ菜種油または菜種油を主成分として、不飽和脂肪(トリグリセリド)を含有するベーキングオイルが提供される。同時にこのベーキングオイルは小麦粉のエンハンサとしても作用し、それ故に粉末または別で添加される他の調剤である従来の小麦粉のエンハンサに代わるベーキングオイルである。1以上の酵素を含有するこの種のベーキングオイルは、冷凍生地にも適する。前記に加えてバター香料がこの製品に使用されると、焼き上がった完成品にもバターの香りを与えるベーキングオイルが提供される。完成品に他のなんらかの香りが望まれる場合は、他のなんらかの脂肪可溶性香料を使用することも可能である。バター香料または他のなんらかの脂肪可溶性香料も酵素なしで使用可能である。
【0012】
以下、複数の実施例によって本発明をより詳細に説明するが、この実施例は本発明を限定するものではない。
【0013】
この製品はすべてターニップ菜種を主成分として作られた。この油の主原料は、Mildola社が薬品を使用せずに抽出したターニップ菜種油であった。油の天然トコフェロールのレベルは、約25mg/kgであった。この製品の実施例は、以下の表に示す(量は重量パーセント)。
【0014】
【表1】

【0015】
製品1では大豆レシチンが乳化剤として使用され、製品2ではターニップ菜種レシチンが使用される。製品3では、乳化剤が脂肪酸のショ糖エステル(E473)である。製品4〜7では、乳化剤が、酢酸エステルと、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドのモノアセチル酒石酸エステルおよびジアセチル酒石酸エステル(E472a+E472e)との混合物である。製品5〜7では、アルファアミラーゼおよびペントサナーゼが酵素の添加物として使用される。製品5では、これらに加えて、ヘミセルロース/アミラーゼ酵素(ペントサナーゼ/アルファアミラーゼ:Nutrilife CS 16、ヘミセルロース/アミラーゼ:Nutrilife k-FQ10、アルファアミラーゼ:Nutrilife AM17。これらはすべてGrunau lllerliseen GmbH社製)が使用される。製品7では、バター香料が使用される。すべての製品は、酸化防止剤として、アルファトコフェロールとガンマトコフェロールとデルタトコフェロールとの混合物を(製品4〜7にはより多く)、トコフェロール酸化防止剤用の再生剤としてアルファリポ酸を(製品4〜7にはより多く)含む。すべての製品は、pHコントローラおよび金属イオンのキャッチャーとしてクエン酸(E330)も含む。トコフェロールの量は、製品に添加されたトコフェロールとして表に記載されている。また、このトコフェロールの量は、これらに加えて、主成分であるターニップ菜種油からの天然トコフェロールも含むことに留意されたい。添加されたトコフェロール混合物は、通常5〜10重量パーセントのアルファトコフェロール、40〜65重量パーセントのガンマトコフェロール、25〜55重量パーセントのデルタトコフェロールを含む。この種のトコフェロール混合物は、製品のトコフェロール(この油に本来含有されているものも含む)が少なくとも全部で0.02重量パーセントになる程度まで添加されるのが好都合である。
【0016】
添加された合成トコフェロールは、感度が高く、高速の酸化防止剤として作用する。添加された合成トコフェロールは、少なくともガンマトコフェロールとデルタトコフェロールとの混合物であるのが好都合である。
【0017】
また、脂肪酸のショ糖エステルは、加熱されると茶色になる効果があり、この方法では、砂糖を添加することなくペストリーの表面に茶色/茶色がかった色を付けることができるので、製パンには望ましい。
【0018】
酵素は、油の中で充分に保護され、小麦粉に含有される成分に触れると、食品環境において作用し始める。したがって、製パンにおいて小麦粉のエンハンサを別々に添加する必要はない。酵素を含有する製品が冷凍生地を製造するために使用される場合、冷凍中、生地に含まれるイーストの作用を減少させるように補償できる。
【0019】
アスコルビン酸によって、酸化防止剤の効果をさらに高めることが可能である。製品がアスコルビン酸を含む場合、水環境でアルファリポ酸の効果を向上させる。すなわち水分を含む食品において、食用油が酸敗臭を放つのを防ぐ。したがって、アスコルビン酸の効果は、たとえば製パン中、生地に食用油を添加する場合などに、食用油が食品の原料に含まれる水分に触れると発揮される。このように、実際に食品の酸敗臭は、アスコルビン酸によって防止可能である。
【0020】
アスコルビン酸は、キャリア物質に溶解した場合に添加されるのが好都合である。このキャリア物質は、脂肪可溶性であり、食用油製品に均等にアスコルビン酸を配分する。このように脂肪可溶性のアスコルビン酸誘導体を使うことなく、水溶性の天然アスコルビン酸が使用可能である。キャリア物質は、短鎖アルコールであり、プロピレングリコールまたはエタノールが好都合である。 より好都合な物質は、EUにおいて食品に使用するキャリア物質として認められており、引火点が高いプロピレングリコール(プロパン−1,2−ジオール)である(EコードE1520)。キャリア物質は、アスコルビン酸の濃度が15〜30重量パーセントである場合、その油製品におけるアスコルビン酸の所望の濃度に相当する量を食用油製品に添加できる。この濃度は、たとえば製品の重量の0.02〜0.2重量パーセントであり、0.05〜0.1重量パーセントが好都合である。このように供給される脂肪可溶性の酸化防止剤は、不飽和脂肪を含有する食用油製品の酸敗臭傾向を大幅に減少させることによって、既に油相で有利に作用している。ターニップ菜種油などの植物油へのアスコルビン酸の使用は、参照として本明細書に組込まれるフィンランド特許出願公開第20031190号明細書でより詳細に説明されている。
【0021】
乳化剤がターニップ菜種レシチンである場合、それに伴ってトコフェロールの酸化防止効果をさらに高めることが可能である。また、ターニップ菜種レシチンはアレルギーがない。添加されたレシチンは、加水分解されたレシチンであるのが好都合である。ターニップ菜種油も本来レシチンを含有しており、この添加によって、レシチン含有量を所望のレベルまで上げる。
【0022】
ターニップ菜種油または菜種油成分は、他の全成分のキャリア物質として機能する役割があり、公知の方法では、主に長鎖脂肪酸のトリグリセリドから成り、不飽和脂肪酸のトリグリセリドを含有する。油成分の量は、一般的に95重量パーセント以上である。
上述の表の製品2および公知の食用油製品が試験で検査された。
【0023】
油のサンプルの検査は、スイスのMetrohm社製の機器Rancimat743で行った。使用した方法は、一般的に「Rancimat法」と呼ばれる(Laubli, M.W and Bruttel, P.A. Determination of the oxidative stability of fats and oils; comparison between the active oxygen method (AOCS Cd 12-57) and the rancimat method. J. Am. Oil Chem. Soc. 63: 792-795 (1986))。
【0024】
試験では、6グラムのサンプルが反応槽にかけられて、120℃まで加熱された。20l/hの継続的な気流をサンプルに向けた。電気伝導度は、試験槽から60mLの蒸留水が投与されるまで測定された。
【0025】
この結果のうち、上述の酸化防止パケットによって、Rancimat試験において結果61.7hを得たことが記載できる。これは、水素化(二重結合を含まない)ターニップ菜種油ラフィネート(Akorex, Karlshamn)とほぼ同じ範囲である。一方、酸化防止剤を含有する公知のターニップ菜種油製品に同じ試験をすると、1.0〜18.2hという値を得た。酸化防止パケット(トコフェロールおよびアルファリポ酸)の濃度が製品2における上述の濃度の半分まで減少したとき、なお56.6hという値に達していた。
【0026】
アルファリポ酸の効果は、アルファリポ酸を伴わない合成トコフェロール混合物0.024重量パーセントを主成分のターニップ菜種に添加する場合の製品と比較することで最も明らかとなる。トコフェロールの量が同程度であっても、値はたったの17.0hであった。
【0027】
本発明に係る製品は、液体として使用可能であり、製パン用のマーガリンとバターに代わる膨張可能なベーキングオイルである。このベーキングオイルは、生地の生重量の1〜15重量パーセントの量で、生地に使用できる。酵素を含有する製品がベーキングオイルとして使用されて冷凍生地の製作に使用されるとき、その量は生地の生重量の0.5〜2.0重量パーセント、通常は約1.0重量パーセントである。
【0028】
本発明に係る油は、ロールパン、菓子パンおよび食パンを焼くとき、イースト生地にベーキングオイルとして添加するのが特に適しているが、本発明はこれらに限定されない。
【0029】
また、本発明は、製パンのみに限定されず、他の食品の製造にも、特に食品中で油が水分に触れて製造工程に加熱が含まれる状況で、使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターニップ菜種油または菜種油を主成分とし、トコフェロール酸化防止剤を含有する食用油製品であって、酸化防止剤用の再生剤としてアルファリポ酸を含有することを特徴とする食用油製品。
【請求項2】
トコフェロール酸化防止剤は、添加された合成トコフェロールを含有することを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項3】
トコフェロールは、少なくともガンマおよびデルタトコフェロールを含有することを特徴とする請求項2記載の製品。
【請求項4】
少なくとも0.02重量パーセントのトコフェロールおよび少なくとも0.002重量パーセントのアルファリポ酸が存在することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製品。
【請求項5】
ターニップ菜種レシチンを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製品。
【請求項6】
アスコルビン酸を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の製品。
【請求項7】
アミラーゼ、ペントサナーゼおよび/またはヘミセルロースなどの酵素を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の製品。
【請求項8】
食品の製造、特に製パンにおける、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製品の使用。
【請求項9】
加熱中、食品が食品に含有される水分に触れるような食品の製造、特に製パンにおける、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製品の使用。

【公表番号】特表2006−508674(P2006−508674A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558129(P2004−558129)
【出願日】平成15年12月10日(2003.12.10)
【国際出願番号】PCT/FI2003/000943
【国際公開番号】WO2004/052116
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(505038782)オイ ベガオイルズ リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】OY VEGAOILS LTD
【住所又は居所原語表記】PL 25 Hollola Finland
【Fターム(参考)】