説明

食肉スライサにおける刃物の回転駆動装置

【課題】刃物との釣合角度位置に備えるバランスウエートの取り付けと、勾玉形の刃物との釣合位置の微調整が容易にでき、かつ、スライサ本体と刃物軸の長尺化を回避して十分な大きさを備えたバランスウエートを取り付けられるようにする。
【解決手段】機台F上に、勾玉形の刃物6を取り付けて回転する刃物軸4と平行に横架されて、モータ1に駆動され、上記刃物軸を1:1の回転比で回転する駆動軸2上に、回転中の刃物と刃物軸とに生ずる振動を互いに打ち消し合う釣合位置にバランスウェート11を固定したことを特徴とするスライサにおける刃物の回転駆動装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、勾玉形の刃物を比較的に高速に回転させるようにした食肉スライサの刃物の回転駆動装置に関し、主として、高速で回転する際に発生する刃物と刃物軸の振動(振れ回り)をバランスウエートで抑制するようにしたことを特長とする。
【背景技術】
【0002】
この種のスライサにおいて、回転する刃物軸に固定されている刃物は、勾玉形であるから軸芯から刃先までの半径が角度位置によって長短の差があり、最大径と最小径の差が大きい。そのため、高速で回転する場合に、刃物と刃物軸に上記のような振動を生ずる。
この振動を抑制するために、従来のスライサにあっては、勾玉形の刃物の最大径の位置(重心位置)とほぼ対向する刃物軸上の角度位置にバランスウエートを取り付けて、刃物とバランスウエートとの回転を釣り合わせ、高速回転時の振動を抑制するようにしていた。
【0003】
しかしながら、刃物とバランスウエートとの釣合位置が、勾玉形の刃物の最小径部分にあたるので、刃物と十分に釣り合う大きさのバランスウエートを取り付けると、該ウエートの外周部分が刃物軸に最大限近接して開口している肉箱の内側の角に臨出して、材料食肉塊の収容幅と送りを妨げるおそれが生じて、不十分な大きさのバランスウエートを取り付けなければならいという矛盾があった。
【0004】
上記のようなバランスウエートの取付け位置の矛盾を解消する手段として、特許文献1がある。
特許文献1の発明は、刃物軸に比較的に長尺の回転軸を用い、モータに駆動される駆動軸との回転伝達部をほぼ中央にして、一方の外端に勾玉形の刃物を固定し、該刃物と振分けになる他方の内端に、左右一対の円板の間に釣合方向で半円柱形をなし、回転径を短径に形成して、釣合う重量に見合うよう比較的に長いバランスウエート(図中、符号51で示される)を具えるようにしている。そのため、この先願の発明には、刃物軸の全体構造が長くなる上に、刃物との釣合位置の微調整がし難い、効率の良い大径のバランスウエートは取り付け難いという欠点がある。
【0005】
【特許文献1】韓国実用新案出願公開97−53171号公報(例えば、図2、3参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のことから、本発明が解決しようとする課題は、刃物との釣合角度位置に備えるバランスウエートの取り付けと、勾玉形の刃物との釣合位置の微調整が容易にできて、かつ、スライサ本体と刃物軸の長尺化を回避して十分な大きさを備えたバランスウエートを取り付けられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明は、上記の課題を解決するために、スライサの機台上に、勾玉形の刃物を取り付けて回転する刃物軸と互いに平行に横架されてモータに駆動され、かつ、上記刃物軸を1:1の回転比で回転する駆動軸上に、回転中の刃物と刃物軸とに生ずる振動を互いに打ち消し合う釣合位置にバランスウェートを固定したことを特徴とするスライサにおける刃物の回転駆動装置を提供するものである。
【0008】
本願請求項2の発明は、バランスウェートを、中心を勾玉形の刃物との釣合方向に合わせて円弧形をなす扇形に形成する一方、駆動軸に嵌着されるバランスウェート取付け用のボス部には、中心を上記バランスウェートの扇形部分にほぼ一致させ、かつ、バランスウェートの扇形部分を適宜に上回る角度の扇形部分を具えた取付け板を一体に設け、両扇形部分の外周縁の円周方向に沿って互いに結合位置の変更を可能にした共通の締結手段を設け、取付け板側の扇形部分と、バランスウェート側の扇形部分とを軸方向で重ね合わせ、重ね合わせた両扇形部分を上記締結手段を介して、両扇形部分の結合位置をバランスウェートとの釣合位置に整合させるように微調整できるように構成したことを特徴とする。
【0009】
本願請求項3の発明は、バランスウェートと取付け板との結合位置を固定する締結手段は、両扇形部分の外周縁の円周方向に沿って適宜の間隔でそれぞれ穿孔した多数の取付け穴と、両取付け穴を挿通して螺合するボルトとからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るスライサーにおける刃物の回転駆動装置は、モータに連なって刃物軸を1:1の回転比で駆動する駆動軸上にバランスウェートを取り付けるので、バランスウェートを刃物の回転位置に軸方向でごく接近した位置に備えることができる。
また、バランスウェートを駆動軸上に備えることによって、肉箱の開口部および内側壁から十分に離れた位置に、比較的に大径で、必要十分な重量を具えたバランスウェートを取り付けることができる。
さらに、本発明に係る刃物の回転駆動装置は、刃物軸と駆動軸と共にスライサを長尺化することなくコンパクトに形成でき、構造が簡単でコストダウンができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
スライサの機台上に、勾玉形の刃物を取り付けて回転する刃物軸と、モータに駆動されて刃物軸を1:1の回転比で回転する駆動軸を互いに平行に横架して、この駆動軸上に、回転中の刃物と刃物軸とに生ずる振動を互いに打ち消し合う釣合位置にバランスウェートを固定するとともに、その固定位置を回転方向に沿って微調整できるようにしたことを特徴とするスライサにおける刃物の回転駆動装置。
【実施例】
【0012】
図面は、本発明の実施例を示すもので、図1は、実施例を付設したチョッパースライサの側面図、図2は、本発明の要部であるバランスウエートの取付け位置を示すチョッパースライサの一部切欠正面図、図3は、駆動軸部分の側面図、図4は、駆動軸部分の斜視図、図5は、駆動軸部分の正面図である。
【0013】
実施例を示す図において、1は、チョッパースライサSの機台F上に設置した刃物駆動用のモータ、2は、モータ1にカップリング3を介して直結した駆動軸、4は、駆動軸2の上方に該軸2と平行に横架した刃物軸、5は、駆動軸2と刃物軸4との間に掛け渡され、両軸2、4を1;1の回転比で回転する回転伝動機構、6は、刃物軸4の先端(図1の右手)に固定した勾玉形の刃物、7は、刃物軸4の先端と刃物6を囲む刃物カバー、8は、図2に示すように刃物カバー7の内壁に開口部9を臨ませて、機台F上の側方に設置した肉箱、10は、刃物カバー7の外側方に接続されて、刃物6が切り落とすスライス片を受け取る受取り部である。
【0014】
このスライサSに備えた刃物6は、図2に示すように勾玉形であるから、軸芯から刃先までの半径が角度位置によって長短の差があり、最大径と最小径の差が大きく、重心は偏芯している。
そして、刃物6の最小径の刃先6’は、材料肉塊への切込みを良くするために、刃物6を刃物軸4に取り付けるボス6aと同径で、肉箱8の開口部9より軸芯側にあり、最大径の刃先6”は、肉箱8の幅に見合う幅の材料肉塊を切り落とせるように、開口部9の外側(図2中右手)に届く長さを有する。
【0015】
上記のように、勾玉形の刃物6は重心が大きく偏芯しているので、毎分数百回転させると刃物6及び刃物軸4に振動が生ずる。この振動を打ち消すべき大きさ(重さ)のバランスウエートを刃物軸4に取り付けようとしても、刃物6とか開口部9に接近した位置にはその余裕がない。
前述の特許文献はこの不都合を解消すべく刃物軸を長くして、比較的に長尺に形成したバランスウエートを採用したわけである。
【0016】
上記従来技術の欠点を除去すべく本発明は、図4に示すように、刃物軸4を1;1の回転比で駆動する駆動軸2にバランスウエート11を取り付けたものである。
本発明に係るバランスウェート11は、図2に示すように、正面で刃物軸4、肉箱の開口部9から十分に離れた位置にあり、図2に示すように、側面では刃物6に接近している。したがって、刃物6の偏芯に見合う大径で重量を具え、かつ、軸方向には比較的に薄肉のバランスウェートを用いることができるとともに、勾玉形の刃物6の振動を打ち消す効果を最大限発揮できる位置(例えば、実施例のように駆動軸2の端部)に取り付けることができる。
【0017】
本発明に係るバランスウェート11は、図4に示すように、中心を勾玉形の刃物6との釣合方向に合わせて円弧形をした扇形に形成され、このバランスウェート11を取り付ける駆動軸2には、バランスウェート11の扇形部分11aを適宜に上回る角度の扇形部分13aを具えた取付け板13を一体に具えた取付け用のボス部12を嵌着、固定し、両扇形部分11a、扇形部分13aの外周縁の同一円周上には、互いに適宜の間隔を置いてそれぞれ穿孔した複数個の取付け孔14b、15bと、同孔を螺合する締結用のボルト16とからなる締結手段17を設けて、駆動軸2上のバランスウェート11を刃物6との釣合方向に固定する。
【0018】
締結手段17は、同一円周上に配置した取付け孔14bと15bとの整合位置をバランスウェート11側で左右にずらすことによって、個々の勾玉形の刃物6が有する重心と最適な釣合位置に近づける微調整をすることができる。なお、締結手段17の態様は、取付け孔とボルトのみに限らず、扇形部分の円周方向に沿って菊座のような凹凸を設けてより細かに微調整できるようにする場合もある。
【0019】
上記のようにして、駆動軸2上に取り付けられたバランスウェート11は、刃物軸4と刃物6の回転と、肉箱8と開口部9の大きさとに干渉されない位置にあって、駆動軸2を挟んで勾玉形の刃物6の重心と対向し、偏芯した勾玉形の刃物6の回転に起因する振動を抑制する。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明に係る刃物の回転駆動装置は、水平送り型のチョパースライサに限らず、傾斜型のスライサにも採用できる。また、刃物の回転駆動装置の形態は、本発明の目的に沿って実施例の態様に限らない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例を付設したチョッパースライサの側面図である。
【図2】本発明の要部であるバランスウエートの取付け位置を示すチョッパースライサの一部切欠正面図である。
【図3】駆動軸部分の側面図である。
【図4】駆動軸部分の斜視図である。
【図5】駆動軸部分の正面図である。
【符号の説明】
【0022】
F 機台
S チョッパースライサ
1 モータ
2 駆動軸
3 カップリング
4 刃物軸
5 回転伝動機構
6 刃物 (6’ 最小径部、6” 最大径部、6a ボス)
7 刃物カバー
8 肉箱
9 開口部
10 受取り部
11 バランスウエート (11a 扇形部分)
12 ボス部
13 取付け板 (13a 扇形部分)
14(14b) 取付け孔
15(15b) 取付け孔
16 ボルト
17 締結手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライサの機台上に、勾玉形の刃物を取り付けて回転する刃物軸と互いに平行に横架されてモータに駆動され、かつ、上記刃物軸を1:1の回転比で回転する駆動軸上に、回転中の刃物と刃物軸とに生ずる振動を互いに打ち消し合う位置にバランスウェートを固定したことを特徴とするスライサにおける刃物の回転駆動装置。
【請求項2】
前記バランスウェートは、中心を前記勾玉形の刃物との釣合方向に合わせて円弧形をなす扇形に形成され、前記駆動軸にバランスウェートを取り付ける取付け用のボス部には、中心を上記バランスウェートの扇形部分にほぼ一致させ、かつ、バランスウェートの扇形部分を適宜に上回る角度の扇形部分を具えた取付け板を一体に設け、両扇形部分の外周縁の円周方向に沿って互いに結合位置の変更を可能にした共通の締結手段を設け、取付け板側の扇形部分と、バランスウェート側の扇形部分とを軸方向で重ね合わせるとともに、上記締結手段を介して両扇形部分の結合位置をバランスウェートとの釣合位置に整合させるように微調整できるように構成したことを特徴とする請求項1記載のスライサにおける刃物の回転駆動装置。
【請求項3】
前記締結手段は、前記両扇形部分の外周縁の円周方向に沿って適宜の間隔でそれぞれ穿孔した多数の取付け穴と、両取付け穴を挿通して螺合するボルトとからなることを特徴とする請求項2記載のスライサにおける刃物の回転駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−994(P2006−994A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182253(P2004−182253)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 平成16年6月8日から6月11日 社団法人日本食品機械工業会開設の「2004国際食品工業展」に出品
【出願人】(591076028)株式会社なんつね (27)