説明

飲料の製造方法

【課題】販売形態が発達した現代では、飲料は様々な条件にて流通されるが、保存中油脂の乳化状態が不安定になり乳脂肪分の浮上によるクリーミングの発生、乳脂肪分の凝集固化、乳化破壊による油滴の浮上等商品価値を低下させる様々な現象が発生し問題となることが多い。本発明は乳化剤及び油脂を含有する飲料にあって、均質化工程の均質加圧を10MPa以下で処理し、含有する油脂の平均粒子径を1μm〜10μmとすることで風味がよく、且つ安定性の良い飲料の製造工程及びその工程により製造された飲料を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明者らは、乳化剤及び油脂を含有する飲料の製造工程にて、均質化工程の均質化圧を10MPa以下で処理することで課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飲料の製造工程に関するものであり、詳しくは乳化剤及び油脂を含有する飲料にあって、均質化工程の均質加圧を10MPa以下で処理し、含有する油脂の平均粒子径を1μm〜10μmとすることを特徴とする風味がよく、且つ安定性の良い飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市販されている飲料には風味向上、コク味付与、テクスチャー付与等様々な目的に油脂を配合されることがある。
【0003】
販売形態が発達した現代では、飲料は様々な条件にて流通されるが、保存中油脂の乳化状態が不安定になり乳脂肪分の浮上によるクリーミングの発生(以下クリーミングの発生)、乳脂肪分の凝集固化(以下油脂の固化)、乳化破壊による油滴の浮上(以下油滴浮上)等商品価値を低下させる様々な現象が発生し問題となることが多い。
【0004】
こういった品質劣化現象を抑制することを目的として、従来より行われている対処方法として、飲料の均質化圧を高く設定し、飲料中に含有される油脂の平均粒子径を細かくすることで乳化状態を安定化することが多かった。
【0005】
例えば生クリームに乳化剤を添加配合した後、この生クリームと乳化剤とを含む組成物を高圧均質処理することにより、平均粒子径が1μm以下の乳化粒子からなる乳化物とし、飲料などの缶飲料に添加配合することを特徴とする技術がある(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、本技術は確かに飲料保存中の安定性は向上するが、含有する油脂の平均粒子径が小さくなることにより油脂の持つコク味の低下は否めない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-175621号公報(第1−2頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は飲料の製造工程に関するものであり、詳しくは乳化剤及び油脂を含有する飲料にあって、風味がよく、且つ安定性の良い飲料を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前述の現状に鑑み、風味がよく、且つ安定性の良い飲料の製造方法を確立すべく鋭意研究の結果本発明に至った。本発明は乳化剤及び油脂を含有する飲料の製造工程にて、均質化工程の均質加圧を10MPa以下で処理し、含有する油脂の平均粒子径を1μm〜10μmとすることを特徴とする風味がよく、且つ安定性の良い飲料の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は乳化剤及び油脂を含有する飲料にあって、均質化工程の均質加圧を10MPa以下で処理し、含有する油脂の平均粒子径を1μm〜10μmとすることで風味がよく、且つ安定性の良い飲料の製造工程及びその工程により製造された飲料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は乳化剤及び油脂を含有する飲料にあって、風味がよく、且つ安定性の良い飲料の製造方法に関するものである。
【0011】
本発明の対象となる油脂を含有する飲料とは、油脂を含有する飲料にコーヒー、紅茶、果汁、ココア、抹茶、豆乳、卵等嗜好品、甘味料、香料等の副原料で構成されているものであれば特に限定されるものではないが、特にコーヒー、紅茶等の弱酸性飲料は賞味期限も長く、また高温販売、いわゆるホットベンダー販売される機会が多いため、より不安定化する傾向が強く、その意味では油脂含有のコーヒー、紅茶、ココア等の弱酸性飲料を対象とする事が好ましい。
【0012】
本発明に使用される油脂としては、一般的に食品用途で公知とされているもの及び今後食品用途で市販されるものであれば特に限定するものではない。具体的にはアボガド油、アマニ油、オリーブ油、カカオ脂、サフラワー油、米油、牛脂、豚脂、やし油、ゴマ油、小麦胚芽油、菜種油、大豆油、綿実油、コーン油、パーム油、パーム核油、ピーナッツ油、乳脂、ラード、MCT、魚油、更にこれら油脂を化学処理した硬化油、エステル交換油、分別油等が挙げられる、これらの油脂を1種、あるいは2種以上併用して使用しても良い。また、これら油脂を含んだ食品、例えば乳脂の場合、生乳、生クリーム、全脂粉乳、濃縮乳、加糖練乳、チーズ、バター、乳等を主原料とする食品等、あるいは油脂を原料とし予め加工された水中油型乳化物を使用しても良い。
ここで言う水中油型乳化物とは連続相である水の中に油脂が分散している状態を指す。この場合連続相として水の代わりにグリセリン、糖、糖アルコールなどの多価アルコールを用いても良い。また本水中油型乳化物は、どの様な工程によって調製がなされるかについてなんら制限を受けるものではない。一般的な調整方法としては攪拌・ホモジナイザー処理・超音波処理などの物理的方法、PIT乳化法、反転乳化法、液晶乳化法、D相乳化法、三相乳化法などが挙げられる。
【0013】
油脂を含有する飲料の包装形態として缶、瓶、ボトル缶、ペット容器、紙パック、プラスチック容器、チアパック等があげられ、密封された容器であれば容器形態には特に制限を受ける物ではないが、最近の傾向として、缶、ペットボトル、ボトル缶等の容器形態が高温販売、いわゆるホットベンダー販売される機会が多く、また長期保管される機会も多いためより不安定になる傾向が高いため、缶、ペットボトル、ボトル缶の容器形態が好ましい。
【0014】
本発明にて実施される均質化工程には高圧ホモジナイザーを用い、その均質加圧を10MPa以下にて処理されることにより風味が良好となることを特徴とする。均質加圧を5MPa以下で処理すると更に風味が良好となり好ましい。ここで言う高圧ホモジナイザーとは、均質クリアランス部に高圧力をかけて均質、乳化物を得る均質機を意味しており、高圧力をかけることで、より微細な乳化物を得ることができる。
【0015】
均質化された後の飲料に含有される油脂の平均粒子径は1〜10μmとすることが好ましく、更には1.5〜6μmとすることが良い。下限以下であると風味が悪くなり、上限以上であると安定性が悪く好ましくない。
【0016】
本発明に使用される乳化剤は食品用途で使用されるものであれば特に限定するものではない。一例を挙げるとモノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、酢酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン酸脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、リゾレシチン、ステアロイル乳酸カルシウム、ポリソルベート、ユッカ抽出物、サポニン等があげられるが、好ましくはポリグリセリン脂肪酸エステル、コハク酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステルが良く、更に好ましくはポリグリセリン脂肪酸エステルがよい。乳化剤のエステルを構成する脂肪酸としては特に制限は無いが、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸が好ましく、風味の観点からパルミチン酸、ステアリン酸が更に好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルの場合ポリグリセリンの重合度がその性質に大きく影響を及ぼすため重合度情報は重要である。ポリグリセリンの平均重合度は2〜30のものが好ましく、更に好ましく4〜12が良い。ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルの場合HLB9以上のものが好ましい。また、エステル化率は0.1〜3の範囲が好ましい。
【0017】
添加量は乳化剤総量として0.001〜10%、好ましくは0.005%〜5%、更には0.01〜1%の範囲が好ましい。下限未満では安定化効果が不十分であり、上限以上では風味が悪くなることがあり好ましくない。
【0018】
本発明には乳化剤及び油脂以外にも安定剤、蛋白質、有機酸及び/又はその塩類等を併用することに制限を設けない。安定剤としてカラギナン(κカラギーナン、ιカラギーナン、λカラギーナン)、寒天、ジェランガム、ネイティブジェランガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、グルコマンナン、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ローカストビーンガム、グアーガム、タラガム、タマリンドガム、キサンタンガム、ペクチン、結晶セルロース、食物繊維(難消化性デキストリン、ポリデキストロース、酵素分解グアーガム、水溶性大豆多糖類等)、澱粉、加工澱粉等があげられる。蛋白質としてはカゼインナトリウム、カゼインカルシウム、乳清蛋白、植物蛋白(大豆蛋白質、小麦蛋白質等)、有機酸及び/又はその塩類としてはリン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、塩酸、塩酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、フィチン酸等があげられる。
【0019】
本発明における飲料の殺菌処理は、殺菌条件や殺菌装置等によって特に制限されず、一般的に使用される殺菌条件が広く採用できる。通常は、約120〜125℃で約20〜40分処理するレトルト殺菌が用いられるが、特にこれに限定されず、プレート殺菌、オートクレーブ殺菌等、食品に採用される種々の殺菌処理を挙げることができる。
以下、本発明の態様を実施例によりさらに詳細に記載し開示するが、この実施例は、単なる本発明の例示であり、何ら限定を意味するものではない。
【実施例】
【0020】
実施例1〜6及び比較例1〜2
表1に示す処方に従い、コーヒー抽出液(Bx3.0)500g、脱脂粉乳20g、グラニュー糖60g、油脂、添加物、及び水を適量加え混合溶解し、重曹1.5g、さらに水を加え全量を1000gとした。調合されたコーヒーミックスを65〜70℃に昇温し、高圧ホモジナイザーで均質化し缶容器に充填した。充填された缶容器は121℃、30分間レトルト殺菌を行い、コーヒー飲料を調製した。殺菌後の飲料のpHは6.3であった。
【0021】
【表1】

【0022】
試験例
実施例1〜6及び比較例1〜2で得られたコーヒー飲料を、I.油脂固化評価:40℃2週間保存のあと5℃2週間保存、II.油滴発生評価:55℃4週間保存、の保存を行い、保存後内容物をビーカーに移し目視確認を行い、以下の評価基準により油脂の固化及び油滴の発生を評価した。また、それぞれの保存後官能検査にて風味評価を行った。結果を表2に示す。
【0023】
<油脂の固化の評価基準>
5:油脂の固化が発生しない。
4:油脂の固化が僅かに発生するが、軽く振盪することにより分散消失する。
3:油脂の固化が発生するが、軽く振盪することにより分散消失する。
2:油脂の固化が発生し、軽く振盪しても分散しない。
1:油脂の固化の発生量が多く、振盪により分散しない。
【0024】
<油滴発生の評価基準>
5:油滴が発生しない。
4:油滴が僅かに発生する。
3:油滴が発生する。
2:油滴が多く発生する。
1:油滴が激しく発生する。
【0025】
<官能評価>
5:コク、ボディー感良好。
4:コク、ボディー感が比較的感じられる。
3:コク、ボディー感がある。
2:コク、ボディー感が劣る。
1:コク、ボディー感が無い。
【0026】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の製造方法により風味がよく、且つ安定性の良い飲料の製造工程及びその工程により製造された飲料を提供することができ産業上貢献大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化剤及び油脂を含有する飲料の製造工程にて、均質化工程の均質化圧を10MPa以下で処理することを特徴とする風味がよく、且つ安定性の良い飲料の製造方法。
【請求項2】
含有する油脂の平均粒子径を1μm〜10μmとすることを特徴とする請求項1記載の飲料の製造方法。
【請求項3】
乳化剤がポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及び有機酸モノグリセリドからなる群より選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1記載又は2記載の飲料の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかの記載の製造方法によって製造された飲料。

【公開番号】特開2013−34456(P2013−34456A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175418(P2011−175418)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】