説明

飲料サーバシステムの定流量弁装置

【課題】均質な飲料を提供するためにサーバ内の飲料流圧を安定させ得る定流量弁装置を開示する。
【解決手段】飲料樽に加圧ガスを印加して飲料を供給可能に構成される飲料サーバシステムの流路途中に設けられ、一次側に遮断部と、二次側に定流量部とを互いの弁室を連通して一体的に備え、前記遮断部は、飲料よりも比重が小さく、且つ、ガスよりも比重が大きい球形のフロート弁を有すると共に、その弁室の室内上部に前記フロート弁の定置スペースを設けてなる一方、前記定流量部は、弁室の二次側に一次側の流入口よりも小径のオリフィスを形成し、この弁室に、前記オリフィスに進入可能な円錐面に通水口を形成したニードル弁をスライド可能に収容すると共に、このニードル弁を前記オリフィスから離間可能に付勢するスプリングを収容してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、飲料サーバシステムにおいて、通常稼働時は飲料の注出圧を安定させると共に、樽に飲料がなくなったときは流路を閉止する定流量弁装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来一般的な飲料サーバシステムは、図3に示すように、飲料樽BTにディスペンサヘッドDHを介してガスボンベGBおよび冷却装置(熱交換装置)CAが接続され、ガスボンベGBから所定圧力に減圧された加圧ガスを飲料樽BT内の液面に印加することで飲料を冷却装置CAに圧送し、コックCを開けることで冷却された飲料をグラスやジョッキに注出するように構成されている。
【0003】
ところで、上記一般的な飲料サーバシステムでは飲料が樽に残っていて正常に機能しているときはよいが、飲料の残量がなくなったときには泡と炭酸ガスが勢いよくサーバ側に放出されることになり、不都合である。そこで、飲料をジョッキなどに注ぐ者は飲料残量がなくなったことを経験的に知覚し、素早くコックCを閉止している。しかしながら飲料は1気圧以上の炭酸ガスで加圧されているので、最後のほうは泡がノズルから多量に噴出することを回避することは困難である。そのために飲料残量がなくなった場合には自動的に炭酸ガスの供給を停止することも考えられるが、弁機構が複雑になってコストが嵩んでしまうという問題がある。
【0004】
この種の問題を解決するため、例えば特許文献1〜3に開示される給液遮断弁が知られている。かかる給液遮断弁は、弁室内に供給液体よりも比重の小さいフロート弁が設けられており、弁室内に液体の適正な渦流が形成されている場合には、フロート弁がその渦流に引き込まれ弁室内の所定位置で回転しながら安定する。そしてタンクの液体残量がなくなるとフロート弁はガス圧によって弁座に着座して液体の供給を自動停止する機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−46797号公報
【特許文献2】特開2005−163811号公報
【特許文献2】特開2007−1635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3の給液遮断弁は、その使用状態において初期の目的を有効に果たすが、圧力を調整する機能は有しないため、それ単独で飲料の品質を安定させるものではない。即ち、例えばビールでは、グラスやジョッキに注いだときの泡の量やキメが品質に重要な影響を与えるため、ビールを一定圧で注出する必要があるが、サーバ内におけるビールの流圧は温度雰囲気や樽内のビール残量等によって変化する。従来、この圧力変化に対応するために、経験や勘に頼って、その都度、コックの開度を調整していたため、所定品質のビールを提供するにはある程度の熟練が必要であった。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、均質な飲料を提供するためにサーバ内の飲料流圧を安定させ得る定流量弁装置を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために本発明装置は、飲料樽に加圧ガスを印加して飲料を供給可能に構成される飲料サーバシステムの流路途中に設けられ、一次側に遮断部と、二次側に定流量部とを互いの弁室を連通して一体的に備え、前記遮断部は、飲料よりも比重が小さく、且つ、ガスよりも比重が大きいフロート弁を有すると共に、その弁室の室内上部に飲料の通流時に前記フロート弁が浮上する定置スペースを設けてなる一方、前記定流量部は、弁室の二次側に一次側の流入口よりも小径のオリフィスを形成し、この弁室に、前記オリフィスに進入可能な円錐面に通水口を形成したニードル弁をスライド可能に収容すると共に、このニードル弁を前記オリフィスから離間可能に付勢するスプリングを収容してなる。
【0009】
本発明において遮断部と定流量部は一体的に設けられ、その配置は上下左右の何れの関係でもよいが、互いの弁室を同軸上に設けることで、飲料の通水損失を小さくできて好ましい。
【0010】
また、フロート弁は球形であることが好ましい。通常の通流時に、フロー弁が定置スペースに安定して定置するからである。さらに、一の弁函の一次側・二次側それぞれに遮断部および定流量部の弁室を一体成形したものであることが好ましい。遮断部と定流量部を別部材として作成し一体化するよりも、シーリング箇所を最小限にでき、また本発明装置の生産性を高めることができるからである。
【0011】
さらに、本発明装置は飲料サーバシステムの流路途中であれば任意の箇所に取り付けることができるが、飲料サーバシステムが飲料を注出するコックを備える場合は、このコックに定流量部を接続可能とすることが好ましい。本発明装置を飲料サーバシステムの末端に取り付けることで、最終段階で飲料の流圧(流量)を安定化することができるからである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、飲料サーバシステムの使用環境等の影響により飲料の送出圧が一定しない場合でも、定流量部がこれを吸収して二次側の飲料注出圧(注出量)を安定させるため、コック等を用いた飲料の注出操作に熟練がない者でも常に均質な飲料を提供することができる。また、飲料樽に飲料がなくなれば、遮断部が流路を遮断して、自動的に加圧ガスや泡の不用意な噴出が防止されるため、飲料樽の残量を気にせず飲料の注出作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る定流量弁装置の通常稼働時の状態を示した断面図
【図2】同、遮断状態を示した断面図
【図3】従来、一般的な飲料サーバシステム全体を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1は、図3の飲料サーバシステムの冷却装置CAよりも下流にあって、本発明装置をレバー式のコックCに直付けした態様を説明するものである。本発明装置は、コックCの中心線CL上に、冷却装置CA側(一次側)には遮断部10、コックC側(二次側)には定流量部20を同軸に備えるもので、この実施形態では、一の弁函(ケーシング)1を加工して、それぞれの弁室11・12を一体成形すると共に、両端に冷却装置CAおよびコックCとの接続部2・3を形成している。遮断部10と定流量部20の弁室11・21は、連通孔4によって連通している。
【0015】
本発明装置における遮断部10は、弁函1の一次側に形成された弁室11の中心線CL上に、接続部2を介して冷却装置CAより流れてくる飲料の流入口12と、連通孔4と連通して、飲料を定流量部12に通流する流出口13を開設すると共に、その内部にフロート弁14を収容してなる。フロート弁14は、例えばプラスチックなど、飲料よりも比重が小さく、ガスよりも比重が大きい性質の素材を加工し、前記流出口13に着座して閉弁可能な大きさの球形に形成している。また、このフロート弁14を浮力や渦流によって浮上し、流入出口12・13が同時に開口する上位置に停留させるよう、弁室11を上方に延成して定置スペース15を形成している。
【0016】
一方、定流量部20は、弁函1の二次側接続部3の内側に形成された円孔5に収容可能な円筒状の箱22の内部を弁室21として、当該弁箱22の一次側に連通孔4を介して遮断部10から飲料を受け入れる流入口23を形成すると共に、二次側に流入口23よりも小径のオリフィス24を形成している。また、弁箱22には、ニードル弁25を通水方向にスライド可能に収容すると共に、オリフィス24周囲の弁箱壁をバネ受けとして、ニードル弁25を開弁方向、即ちオリフィス24から離間する方向に付勢するスプリング26を収容している。
【0017】
ニードル弁25の構造を更に詳しく説明すると、円錐面に通水穴25aを複数形成した中空円錐状の弁体25bを中央に有し、その周囲に弁箱22の内径と対応する外径の筒状ガイド部25cを設けてなる。通水穴25aは120度間隔で3つを設ける予定であるが、その数はこれに限定されない。そして、円錐状弁体25bの一次側凹部は一次圧の受圧部として機能し、二次側凸部はオリフィス24に進入する開度調整部として機能する。この結果、ニードル弁25は、遮断部10を通り抜けた飲料の通水圧を一次側の変動圧、スプリング26の付勢力を二次側の固定圧として、両者が拮抗するように弁室21内を軸方向にスライドすることでオリフィス24の開度を調整し、飲料の二次圧を安定させる。
【0018】
なお、この実施形態では、定流量部20の二次側にコックCを袋ナットNによって接続するものとし、弁箱22を円孔5に挿入したコックCの接続端部C1により円孔5に押し込んで定置させている。
【0019】
次に、本発明装置の動作を説明すると、まず、飲料樽に残量があって、通常どおり、飲料が供給可能な場合、遮断部10の弁室11は飲料で満たされており、フロート弁14が浮力や弁室11を通過する飲料の渦流によって定置スペース15に停留した状態となる。その結果、流入出口12・13は同時に開口するため、そのまま定流量部20に飲料が通過する。
【0020】
そして、定流量部20においては、ニードル弁25に作用する通水圧に応じて、ニードル弁25の位置が決まり、その結果、オリフィス24の開度も決定する。つまり、ニードル弁25の位置は、当該ニードル弁25に作用する通水圧と、スプリング26の弾発力とが拮抗するところに定められる。よって、通水圧(一次圧)が高まればニードル弁25はスプリング26を圧縮しながら前進し、弁体25bの先端側がオリフィス24に進入することによってオリフィス24の開度が小さくなる。逆に、一次圧(通水圧)が下がればスプリング26の弾発力によってニードル弁14はオリフィス24から離間する方向に後退し、その結果、オリフィス24の開度が大きくなる。このようにニードル弁25に作用する通水圧(流速)の上下に応じてオリフィス24の開度(流水断面積)が調整されるため、一次圧の変化を吸収して二次圧を一定に保つことができる。なお、一次圧が異常に高まれば、弁体25bがオリフィス24を完全にはまり込み、流路を緊急遮断する作用も行う。
【0021】
このような定流量部20による一次圧の変動吸収作用によって、その二次圧、即ちコックからの飲料注出圧(飲料注出量)は一定となるので、飲料の品質も安定させることができる。特に飲料がビールである場合は、コックス操作に熟練がない者でも、泡立ちや泡のきめ細かさに優れた高品質のビールを提供できるようになる。
【0022】
一方、飲料樽が空になったときはサーバ流路にはガスだけが流れることになり、遮断部10の弁室11もガスで充満するが、フロート弁14はガスよりも比重が大きいため、定置スペース15から落下すると同時に、図2に示すように、ガス圧によってフロート弁14を流出口13に着座させる。これによって、ガスのみの通流は当該遮断部10、即ちコックCの手前で遮断され、樽が空になったとしても、コックCからガスや泡が噴出することがない。
【0023】
なお、定流量部20におけるニードル弁25の弁体25bの形状は、ニードル弁25のスライド量とオリフィス24の開度が相関するように、円錐形とすることが好ましいが、他の形状であってもよい。また、遮断部10についても、フロート弁14の形状は完全な球形であることが好ましいが、飲料の通流時には定置スペースに停留し、ガスのみの通流時には流出口13(弁孔)に着座して、その通流を遮断するものであれば、フロート弁14の形状は、完全な球形に限定されない。さらに、上記実施形態では本発明装置をコックCに直付けしたが、本発明装置の取付位置は、これに限定されず、飲料サーバシステムの流路途中の任意の箇所に取り付けることができる。さらにまた、遮断部10と定流量部20は、上記実施形態では同軸上に横並びに配置したが、一次側に遮断部10、二次側に定流量部20が位置するのであれば、別の配置態様とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、飲料サーバシステム、特にビールサーバに適用することが最適であるが、液体を加圧ガスにより送出する、他の液体供給(圧送)装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 弁函
2・3 接続部
4 連通孔
10 遮断部
11 遮断部の弁室
14 フロート弁
15 定置スペース
20 定流量部
21 定流量部の弁室
22 弁箱
24 オリフィス
25 ニードル弁
26 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料樽に加圧ガスを印加して飲料を供給可能に構成される飲料サーバシステムの流路途中に設けられ、一次側に遮断部と、二次側に定流量部とを互いの弁室を連通して一体的に備え、前記遮断部は、飲料よりも比重が小さく、且つ、ガスよりも比重が大きいフロート弁を有すると共に、その弁室の室内上部に飲料の通流時に前記フロート弁が浮上する定置スペースを設けてなる一方、前記定流量部は、弁室の二次側に一次側の流入口よりも小径のオリフィスを形成し、この弁室に、前記オリフィスに進入可能な円錐面に通水口を形成したニードル弁をスライド可能に収容すると共に、このニードル弁を前記オリフィスから離間可能に付勢するスプリングを収容してなることを特徴とした飲料サーバシステムの定流量弁装置。
【請求項2】
遮断部と定流量部は、互いの弁室を同軸上に設けた請求項1記載の飲料サーバシステムの定流量弁装置。
【請求項3】
フロート弁は球形である請求項1または2記載の飲料サーバシステムの定流量弁装置。
【請求項4】
一の弁函の一次側・二次側それぞれに遮断部および定流量部の弁室を一体成形した請求項2または3記載の飲料サーバシステムの定流量弁装置。
【請求項5】
飲料サーバシステムは飲料を注出するコックを備え、このコックに定流量部を接続可能とした請求項1から4のうち何れか一項記載の飲料サーバシステムの定流量弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−111540(P2012−111540A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263763(P2010−263763)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(509219073)株式会社リード (8)
【Fターム(参考)】