説明

飲料ディスペンサー

【課題】泡持ちの優れた穀類分解物含有発泡性飲料を提供しうる、飲料ディスペンサーの提供。
【解決手段】穀類分解物含有発泡性飲料の貯蔵タンク3と、貯蔵タンク3中の穀類分解物含有発泡性飲料を注出する飲料注出手段5a、5bとを備えた飲料ディスペンサー1において、外気ガス成分により穀類分解物含有発泡性飲料を発泡体させる発泡手段10が設置され、該発泡手段10から注出される穀類分解物含有発泡性飲料の発泡体と、飲料ディスペンサー1から注出される穀類分解物含有発泡性飲料とを混合できるようにしてなる、飲料ディスペンサー1を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀類分解物含有発泡性飲料の泡持ちを簡易かつ効果的に向上させうる、飲料ディスペンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビール、ノンアルコールビール、発泡酒等などの様々な穀類分解物含有発泡性飲料の開発が検討されている。このような穀類分解物含有発泡性飲料の泡は、炭酸ガスの逃げを防止するとともに、弾ける音の心地良さ、泡持ちによる香り立ち、見た目の美味しさ等を付与する機能を有している。また、グラスやジョッキに注いだ穀類分解物含有発泡性飲料の泡には酸化防止効果がある。
【0003】
穀類分解物含有発泡性飲料の香味および美観向上等を勘案して、泡持ちの向上が従前検討されている。穀類分解物含有発泡性飲料の泡持ちを改善させる方法として、例えば、ビールに窒素ガスを添加する方法が報告されております(例えば、特開平10−287393号公報(特許文献1)参照)。この方法では、ビール内に溶存する窒素ガスを発泡させることにより泡持ちの向上を実現している。しかしながら、穀類分解物含有発泡性飲料に窒素ガスを添加するためには大規模な装置が必要であり、コスト面および設備面の負担が問題となる。
【0004】
また、ビールの泡持ちを改善する別の手法として、起泡剤を添加する手法が報告されている(特許文献2:特開2006−314282号公報)。しかしながら、起泡剤は、穀類分解物含有発泡性飲料本来の成分とは異なるため、香味等への影響が問題となりうる。
【0005】
このような技術状況下、穀類分解物含有発泡性飲料の泡持ちを簡易かつ効果的に向上させる手段が依然として求められているといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−287393号公報
【特許文献2】特開2006−314282号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、今般、穀類分解物含有発泡性飲料の泡持ちを簡易かつ効果的に向上させうる、新規な飲料ディスペンサーを見出した。本発明は、かかる知見に基づくものである。
【0008】
したがって、本発明は、穀類分解物含有発泡性飲料の泡持ちを簡易かつ効果的に向上させうる、新規な飲料ディスペンサーの提供をその目的としている。
【0009】
本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)穀類分解物含有発泡性飲料の貯蔵タンクと、貯蔵タンク中の穀類分解物含有発泡性飲料を注出する飲料注出手段とを備えた飲料ディスペンサーにおいて、穀類分解物含有発泡性飲料をその凍結温度よりも高い温度で外気ガス成分を用いて発泡させる発泡手段が設置され、該発泡手段から注出される穀類分解物含有発泡性飲料の発泡体と、前記飲料ディスペンサーから注出される穀類分解物含有発泡性飲料とを混合できるようにしてなる、飲料ディスペンサー。
(2)発泡前の穀類分解物含有発泡性飲料と比較した、発泡後の穀類分解物含有発泡性飲料の体積膨張率が1超過3.5以下となるように、穀類分解物含有発泡性飲料を外気ガス成分を用いて発泡させる、(1)に記載の飲料ディスペンサー。
(3)貯蔵タンク中の穀類分解物含有発泡性飲料に加圧して、飲料ディスペンサーの飲料注出手段から穀類分解物含有発泡性飲料を注出させる第一のガス注入手段をさらに備えてなる、(1)または(2)に記載の飲料ディスペンサー。
(4)発泡手段に外気ガス成分を注入する第二のガス注入手段をさらに備えてなる、(1)〜(3)に記載の飲料ディスペンサー。
(5)発泡手段が、穀類分解物含有発泡性飲料の収容容器と、穀類分解物含有発泡性飲料を発泡させる発泡装置とを備えてなる、(1)〜(4)のいずれかに記載の飲料ディスペンサー。
(6)発泡装置が、振動装置、気体注入装置、または撹拌装置である、(5)に記載の飲料ディスペンサー。
(7)発泡装置が、穀類分解物含有発泡性飲料を外気ガス成分の雰囲気下で撹拌する撹拌装置である、(5)に記載の飲料ディスペンサー。
(8)撹拌装置における撹拌速度が10,000rpm以上である、(5)〜(7)のいずれかに記載の飲料ディスペンサー。
(9)発泡手段が、発泡温度を調節するためのセンサをさらに備えてなる、(1)〜(8)のいずれかに記載の飲料ディスペンサー。
(10)外気ガス成分の窒素含有割合が1〜100%である、(1)〜(9)のいずれかに記載の飲料ディスペンサー。
(11)発泡が大気圧またはそれ以上の気圧下で行われる、(1)〜(10)のいずれかに記載の飲料ディスペンサー。
(12)穀類分解物含有発泡性飲料がビール系飲料である、(1)〜(11)のいずれかに記載の飲料ディスペンサー。
(13)混合が、発泡体を穀類分解物含有発泡性飲料に添加することにより行われる、(1)〜(12)のいずれかに記載の飲料ディスペンサー。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の飲料ディスペンサーの一実施形態の模式図である。
【0011】
本発明によれば、顕著に泡持ちを向上した穀類分解物含有発泡性飲料を簡便かつ効率的に提供することができる。
【発明の具体的説明】
【0012】
本発明の飲料ディスペンサーは、上述の通り、穀類分解物含有発泡性飲料をその凍結温度よりも高い温度で外気ガス成分を用いて発泡させる発泡手段を設置したことにより、泡持ちの顕著に向上した発泡体を得ることができる。
【0013】
また、本発明の好ましい態様によれば、上記発泡手段においては、発泡工程前の穀類分解物含有発泡性飲料と比較した、発泡工程後の穀類分解物含有発泡性飲料の体積膨張率を、好ましくは1超過3.5以下、より好ましくは、2以上3.5以下、さらに好ましくは2以上2.5以下となるように、穀類分解物含有発泡性飲料を外気ガス成分を用いて発泡させる。このような体積膨張率を指標として得られた発泡体が、顕著な安定性を有することは意外な事実である。なおここで、体積膨張率は、発泡後に得られた穀類分解物含有発泡性飲料および発泡体の体積の総和を、発泡前の穀類分解物含有発泡性飲料の体積で除することにより得られる値を意味する。
【0014】
以下、本発明を図面に例示した好ましい実施形態に基づいて説明する。
図1は、本発明の飲料ディスペンサー1の模式図である。
まず、第一のガス注入手段4aから炭酸ガス等のガスが供給ラインを通じて、穀類分解物含有発泡性飲料の貯蔵タンク3に供給される。ガスが供給されると穀類分解物含有発泡性飲料の貯蔵タンク3内の空洞内部の気圧が高まり、穀類分解物含有発泡性飲料の液面が押される。これにより、ディスペンスヘッド15を開くと、貯蔵タンク3から穀類分解物含有発泡性飲料が供給ラインを通じて飲料ディスペンサー本体2に供給される。さらに、飲料ディスペンサー本体2では、その内部の供給ラインを通って飲料注出手段5aに向けて、穀類分解物含有発泡性飲料が流れ、ジョッキ9に注ぎ出される。
【0015】
また、穀類分解物含有発泡性飲料が飲料ディスペンサー本体2中の供給ラインを通過している間に、穀類分解物含有発泡性飲料を冷却器8により冷却することができる。この冷却器8を調整することにより、穀類分解物含有発泡性飲料またはその発泡体の温度を一次的に調節することができる。なお、冷却器8には、コンプレッサー16を適宜接続していてもよい。
【0016】
また、図1の飲料ディスペンサー1には、外気ガス成分を用いて穀類分解物含有発泡性飲料を発泡させる発泡手段10が設置されている。そして、発泡手段10は、穀類分解物含有発泡性飲料の収容容器11と穀類分解物含有発泡性飲料を発泡させる発泡装置12とを備えている。
【0017】
発泡手段10と、飲料ディスペンサー本体2とは、弁13を介した供給ラインにより接続されている。飲料ディスペンサー本体2に流れる穀類分解物含有発泡性飲料は、弁13を開放すると、供給ラインを介して発泡手段10に供給される。ここで、発泡手段10は、飲料ディスペンサー本体2に代えて、貯蔵タンク3に直接接続してもよい。この場合には、穀類分解物含有発泡性飲料は、貯蔵タンク3から発泡手段10に直接供給することができる。
【0018】
また、発泡手段10は、供給ラインを介して、発泡手段10に外気ガス成分を注入する第二のガス注入手段4bと接続しており、フィルター14を介して、外気ガス成分は発泡手段10に供給される。ここで、図1に示される第二のガス注入手段4bはコンパクトサイズのエアーポンプである。
【0019】
そして、穀類分解物含有発泡性飲料および外気ガス成分が供給された発泡手段10中の収容容器11では、発泡装置12によって、外気ガス成分を用いて発泡が行われる。発泡装置12は、図1に示すように、外気ガス成分の雰囲気下で穀類分解物含有発泡性飲料を撹拌する撹拌装置であってよい。
【0020】
収容容器11中で発生した発泡体は、例えば、第二のガス注入手段4bからの加圧により、第二の飲料注出手段5bから注出される。第二の飲料注出手段5bから注出された発泡体は、ジョッキ9中の穀類分解物含有発泡性飲料と混合することができる。このようにして外気を用いて発生した発泡体と混合した穀類分解物含有発泡性飲料は、泡持ちに優れており、穀類分解物含有発泡性飲料の香味および美観を維持する上で特に有利である。
【0021】
なお、図1において、第一の飲料注出手段5aおよび第二の飲料注出手段5bは、それぞれ注出口(6a,6b)、注出レバー(7a,7b)を備えており、発泡体と穀類分解物含有発泡性飲料をそれぞれ、ジョッキに注ぐことができるように構成されている。
【0022】
本発明の穀類分解物含有発泡性飲料の発泡は、上述の通り、外気ガス成分の雰囲気下で好適に行われる。外気ガス成分としては、窒素含有割合が1〜100%の気体、好ましくは70〜100%の気体であることが好ましい。窒素含有割合が70〜100%の気体中で行う好ましい態様としては、例えば、大気と同一組成(窒素が約78%、酸素が約21%、その他アルゴン、二酸化炭素など)中で行うこともでき、より好ましくは大気および/または窒素により0.01〜0.5MPa、さらに好ましくは0.01〜0.1MPa、中でも0.02〜0.07MPaで加圧して行うことが好ましい。
【0023】
本発明の発泡温度は、外気ガス成分を用いて穀類分解物含有発泡性飲料を発泡させうる限り特に限定されないが、好ましくは、穀類分解物含有発泡性飲料の凍結温度超過40℃以下であり、より好ましくは凍結温度超過10℃以下である。
【0024】
また、本発明の発泡手段における発泡装置は、特に限定されないが、例えば、振動装置、気体注入装置、または撹拌装置等の公知装置が挙げられ、好ましくは撹拌装置である。
【0025】
本発明の撹拌装置は、撹拌羽根を有していてもよい。撹拌羽根は、穀類分解物含有発泡性飲料への金属臭の付着の防止を勘案すれば、セラミックコーティングされていることが好ましい。また、撹拌装置における撹拌羽根の長さは、特に限定されないが、好ましくは穀類分解物含有発泡性飲料の収容容器の半径の1/2〜6/7であり、より好ましくは5/7〜6/7である。ここで、撹拌羽根の長さは、撹拌羽根の回転中心から羽根先までの長さである。また、収容容器の形状は、撹拌羽根の回転を妨げない限り特に限定されないが、収容容器の水平断面は好ましくは円状である。また、収容容器の直径は、例えば、撹拌羽根の回転中心から収容容器の縁までの距離の平均値によって決定することができる。
【0026】
また、撹拌速度は、例えば、10,000rpm以上であり、好ましくは18,000〜22,000rpmである。かかる撹拌速度は、外気ガス成分を効率的に泡内に取り込む上で有利である。
【0027】
穀類分解物含有発泡性飲料の撹拌時間は、特に限定されないが、好ましくは1秒以上であり、より好ましくは4〜10秒である。
【0028】
また、本発明の発泡は、好ましくは大気圧下またはそれ以上で行われる。かかる圧力は、発泡手段における収容容器の容積、第二のガス注入手段からのガス注入量等に基づき容易に調節することができる。
【0029】
また、本発明の発泡手段は、温度をはじめとする上記発泡条件を調節するための公知のセンサを備えていてもよい。
【0030】
また、本発明の発泡手段中の収容容器は、外気ガス成分を用いうる限り特に限定されず、開放状態の容器であってもよく、加圧しうる密閉容器であってもよい。
【0031】
また、第一ガス注入手段は、例えば、エアーポンプ、ガスボンベ等の公知の加圧装置を用いることができる。
また、外気ガス成分を発泡手段に注入する第二のガス注入手段は、外気ガス成分を発泡手段中の収容容器に注入しうる限り特に限定されず、例えば、コンパクトなエアーポンプ等を用いることができる。このようなコンパクトサイズの発泡手段を用いることは、コスト面、設備面での負担軽減のために好ましい。
【0032】
また、第一および第二の飲料注出手段は、穀類分解物含有発泡性飲料または発泡体を注出しうる限り特に限定されず、例えば、図1に示された注出コックの形態でもよく、注出穴の形態であってもよい。また、第一および第二の飲料注出手段は、注出対象の切り替えスイッチを備えた一体的な飲料注出手段として構成してもよい。このような形態は、コンパクトな飲料ディスペンサーを構成する上で有利である。
【0033】
また、本発明の飲料ディスペンサーにおいては、それぞれの構成部位または手段を別体として構成しても、それらを一体的に構成していてもよい。
【0034】
また、本発明の飲料ディスペンサーにおいて、穀類分解物含有発泡性飲料と、発泡体とを混合する順序としては、第一の飲料注出手段から穀類分解物含有発泡性飲料をジョッキに注いだ後、第二の飲料注出手段から穀類分解物含有発泡性飲料上に発泡体を添加することが好ましいが、順序は逆にしてもよい。また、第一の飲料注出手段および第二の飲料注出手段から、穀類分解物含有発泡性飲料および発泡体をジョッキに同時に添加することもでき、本発明にはかかる態様も包含される。
【0035】
本発明の穀類分解物含有発泡性飲料は、穀類の分解物を含む炭酸飲料であればどのような態様の飲料であっても含まれるが、麦芽の分解物を含む飲料であることが好ましい。本発明において、穀類とは、本発明の効果を奏する穀物であれば特に限定されないが、大麦、小麦、大豆、エンドウ豆またはトウモロコシであることが好ましく、より好ましくは大麦である。穀類の分解物の具体的な態様としては、特に限定されないが、大麦、小麦、大豆、エンドウ豆またはトウモロコシの分解物であり、例えば大豆タンパク、エンドウタンパク、コーンタンパク分解物が挙げられる。
【0036】
また、穀類分解物含有発泡性飲料は、泡持ち向上成分を含んでなることが好ましい。泡持ち向上成分は、特に限定されないが、好ましくはタンパク質、糖タンパク質、大豆タンパク質、ホップ由来苦味物質、遷移金属イオン、低分子ポリフェノール、α−グルカン、β−グルカン、およびベントーザンからなる群から選択されるものである。
【0037】
本発明の穀類分解物含有発泡性飲料は、好ましくは麦芽分解物含有炭酸飲料であり、より好ましくはビール系飲料である。ビール系飲料とは、通常にビールを製造した場合、すなわち、酵母等による発酵に基づいてビールを製造した場合に得られるビール特有の味わい、香りを有する飲料をいい、例えば、ビール、発泡酒、リキュール等の発酵麦芽飲料や、その他の醸造酒、もしくは完全無アルコール麦芽飲料等の非発酵麦芽飲料が挙げられる。また、ビール系飲料である限り、麦芽飲料に限定されるものではなく、麦や麦芽を使用しない非麦飲料の形態であってもよい。本発明において「非麦飲料」は炭酸ガス等により清涼感が付与された清涼飲料も含まれるものとする。非麦飲料としては、アルコール含量が0重量% である完全無アルコール飲料のような非発酵飲料や、アルコールを含有するアルコール含有飲料が挙げられるが、アルコールを含む態様が好ましい。このアルコール含有非麦飲料としては、発酵して得られた発酵飲料とアルコールが添加された飲料が挙げられる。非麦飲料としては、また、発酵して得られた発酵飲料からアルコール、その他の低沸点成分や低分子成分を除去して得られた非アルコール発酵飲料が挙げられる。ビール系飲料の好ましい態様としては、ビール、発泡酒、完全無アルコール麦芽飲料、非麦飲料が挙げられ、中でもビールが特に好ましい。本発明の穀類分解物含有発泡性飲料は市販の飲料を用いてもよい。
【0038】
また、本発明の方法によれば、穀類分解物含有発泡性飲料に起泡剤を添加しなくても、穀類分解物含有発泡性飲料の泡持ちを効果的に向上させることができる。したがって、本発明によれば、発泡および混合中または後に、穀類分解物含有発泡性飲料に起泡剤を添加しないで泡持ちを向上させることができる。
【0039】
起泡剤としては、特に限定されないが、好ましくは穀類分解物含有発泡性飲料自体に由来しない成分であり、例えば、卵白ペプタイド、ゼラチン、カゼインナトリウム等の動植物起源のタンパク質、またはそれらの加水分解物、乳化剤等が挙げられる。
【0040】
なお、本発明の方法によって得られる穀類分解物含有発泡性飲料において、泡持ち状態が継続しているか否かの判断は、例えば、ジョッキに穀類分解物含有発泡性飲料を注いで、ジョッキ中の液面全面が泡によって覆われた状態が継続しているか否かによって判断する。より具体的には、ジョッキ中の液面全体が泡によって覆われた状態が継続していれば、泡持ち状態は継続していると判断し、ジョッキ中の液面のうち一部でも泡が消失していれば、泡持ち状態は終了したものと判断する。また、上記判断方法のさらなる詳細は、本願明細書の試験例1の方法に準じるものとする。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0042】
試験例1:撹拌時間および外気成分の穀類分解物含有発泡性飲料の泡持ちに対する影響の検討
4℃の生ビール(商品名:一番搾り、キリンビール社)200mLを発泡手段(SM−M8型ミキサー、サンヨー製;サイズ−撹拌羽根の長さ/ビール収容容器(直径)=5/7〜 6/7、撹拌速度:18,000rpm)を用いて、外気ガス成分として大気を用い、大気圧下で1または5秒間攪拌し、発泡体を得た。
撹拌後、生ビールの体積膨張率をミキサー容器の容量メモリに基づき測定した。
次に、350mLのグラス(高さ14cm、ビール300mLを注いだ際の液面面積176.6cm)に300mLの生ビールを注ぎ、その上に発泡体を添加し、室温にて放置し、泡持ちの持続時間を目視により測定した。
また、外気ガス成分としてNを用い、撹拌時間を5秒のみとする以外上記と同様の手法により、泡持ちの持続時間および体積膨張率を測定した。
また、コントロール(Cont)では、生ビールにビールサーバーを使用して得られた発泡体をそのまま添加する以外、上記と同様の手法により、泡持ちの持続時間を測定した。
【0043】
結果は、表1に示される通りであった。
大気中の場合、撹拌後の生ビールの体積膨張率は、撹拌時間1秒の場合にはコントロールの2倍以上であり、撹拌時間5秒の場合にはコントロールの2.5倍以上であった。
また、大気中の場合、泡持ち時間は、撹拌時間1秒の場合にはコントロールの4倍以上であり、撹拌時間5秒の場合にはコントロールの22倍以上であった。
中の場合、撹拌後の生ビールの体積膨張率は、撹拌時間5秒の場合にはコントロールの2.0倍以上であった。
また、N中の場合、泡持ち時間は、撹拌時間5秒の場合にはコントロールの16倍以上であった。
【0044】
【表1】

【0045】
試験例2:官能試験
試験例1の方法に準じて、撹拌時間3秒、大気開放にて本発明の発泡体を生成し、生ビールに添加し、室温で放置した。
次に、放置後30分の時点で試飲することにより酸化臭強度の官能検査を行った(パネラー8名)。
コントロール(Cont)では、生ビールにビールサーバーを使用して得られた発泡体をそのまま添加する以外、上記と同様の手法により官能試験を行った。
【0046】
その結果、本発明の発泡体を用いた場合、酸化臭を全く感じないパネラーは7名であり、酸化臭を僅かに感じるパネラーは、1名であった。
一方、コントロール(Cont)では、酸化臭を全く感じないパネラーは6名であり、酸化臭を僅かに感じるパネラーは、2名であった。
酸素の存在する大気中にて発泡体を生成した場合、コントロール(Cont)と比較しても、酸化劣化による香味低下は確認されなかった。
【符号の説明】
【0047】
1.飲料ディスペンサー
2.飲料ディスペンサー本体
3.貯蔵タンク
4a.第一のガス注入手段
4b.第二のガス注入手段
5a.第一の飲料注出手段
5b.第二の飲料注出手段
6a.6b.注出口
7a.7b.注出レバー
8.冷却器
9.ジョッキ
10.発泡手段
11.収容容器
12.発泡装置
13.弁
14.フィルター
15.ディスペンスヘッド
16.コンプレッサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀類分解物含有発泡性飲料の貯蔵タンクと、貯蔵タンク中の穀類分解物含有発泡性飲料を注出する飲料注出手段とを備えた飲料ディスペンサーにおいて、穀類分解物含有発泡性飲料をその凍結温度よりも高い温度で外気ガス成分を用いて発泡させる発泡手段が設置され、該発泡手段から注出される穀類分解物含有発泡性飲料の発泡体と、前記飲料ディスペンサーから注出される穀類分解物含有発泡性飲料とを混合できるようにしてなる、飲料ディスペンサー。
【請求項2】
前記発泡前の穀類分解物含有発泡性飲料と比較した、発泡後の穀類分解物含有発泡性飲料の体積膨張率が1超過3.5以下となるように、穀類分解物含有発泡性飲料を外気ガス成分を用いて発泡させる、請求項1に記載の飲料ディスペンサー。
【請求項3】
前記貯蔵タンク中の穀類分解物含有発泡性飲料に加圧して、飲料ディスペンサーの飲料注出手段から穀類分解物含有発泡性飲料を注出させる第一のガス注入手段をさらに備えてなる、請求項1または2に記載の飲料ディスペンサー。
【請求項4】
前記発泡手段に外気ガス成分を注入する第二のガス注入手段をさらに備えてなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の飲料ディスペンサー。
【請求項5】
前記発泡手段が、穀類分解物含有発泡性飲料の収容容器と、穀類分解物含有発泡性飲料を発泡させる発泡装置とを備えてなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の飲料ディスペンサー。
【請求項6】
前記発泡装置が、振動装置、気体注入装置、または撹拌装置である、請求項5に記載の飲料ディスペンサー。
【請求項7】
前記発泡装置が、穀類分解物含有発泡性飲料を外気ガス成分の雰囲気下で撹拌する撹拌装置である、請求項5に記載の飲料ディスペンサー。
【請求項8】
前記撹拌装置における撹拌速度が10,000rpm以上である、請求項5〜7のいずれ一項に記載の方法。
【請求項9】
前記発泡手段が、発泡温度を調節するためのセンサをさらに備えてなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の飲料ディスペンサー。
【請求項10】
前記外気ガス成分の窒素含有割合が1〜100%である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の飲料ディスペンサー。
【請求項11】
前記発泡が大気圧またはそれ以上の気圧下で行われる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の飲料ディスペンサー。
【請求項12】
前記穀類分解物含有発泡性飲料がビール系飲料である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の飲料ディスペンサー。
【請求項13】
前記混合が、前記発泡体を穀類分解物含有発泡性飲料に添加することにより行われる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の飲料ディスペンサー。

【図1】
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