説明

飲料ディスペンサ

【課題】炭酸飲料を適宜円滑に過冷却飲料として供給することを可能とする飲料ディスペンサを提供する。
【解決手段】本発明は、炭酸水を製造するためのカーボネータ51と、該カーボネータ51にて製造された炭酸飲料を外部に供給するための飲料供給回路7と、過冷却用熱交換器16と、一次冷却装置13とを備え、カーボネータ51において、加圧された炭酸ガスを供給するガスレギュレータ54から供給される炭酸ガスと、シロップと、希釈水とを混合して炭酸飲料を製造すると共に、過冷却用熱交換器16により、飲料供給回路7を流れる炭酸飲料の温度を凝固点以下の過冷却状態まで冷却し、外部で過冷却状態を解除させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝固点以下の過冷却状態とされた炭酸飲料を供給し、外部で過冷却状態を解除させることにより、シャーベット状の炭酸飲料を製造する飲料ディスペンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、カップ等に飲料を供給する飲料ディスペンサでは、飲料原料としてのシロップが充填されたタンクからシロップ供給ラインが引き出されると共に、当該シロップを所定の割合にて希釈する希釈水供給ラインも設けられている。これらシロップ供給ライン及び希釈水供給ラインは、それぞれシロップ冷却コイル及び希釈水冷却コイルが介設されており、これらは、冷却水を貯留する水槽に浸漬されることにより、当該コイル内を流入するシロップや希釈水を所定の温度に冷却するものである。これにより、所定の冷却温度に冷却されたシロップ及び希釈水は、それぞれノズルにて混合されて目的飲料としてカップに排出される。
【0003】
上記構成により供給される飲料は、全て液体の状態でカップ内に貯留されるものであるため、別途氷片をカップ内に投入することによって、ある程度の時間、一定の冷却温度を維持することができる状態で顧客に飲料が提供されていた。
【0004】
しかしながら、カップに供給された氷片では、当該浮遊する氷片付近の飲料のみが融解熱によって冷却されることになるため、カップ内全体の飲料を均一に冷却することは困難である。また、氷片が融解するに従って飲料の濃度が薄まってしまうため、適切な冷却状態で飲料を供給することは困難であった。
【0005】
そこで、従来では、供給する飲料を当該飲料の凝固点以下の温度まで冷却し、過冷却状態のままカップに飲料を吐出することにより、その衝撃によって当該飲料を一瞬に氷へと相変化させ、シャーベット状の飲料を提供する装置が開発されている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−325656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した如き装置を用いて炭酸飲料の過冷却飲料を製造する場合には、炭酸飲料の原料であるシロップ等の被希釈原料と、希釈水とをそれぞれ別の供給回路に設けられる過冷却用熱交換器において、過冷却状態とし、炭酸飲料供給口となるノズルにて混合し、外部に配置されるカップ等の容器内に当該炭酸飲料を供給することが考えられる。
【0007】
この場合、シロップ等の被希釈原料は、低温になると極端に粘性が増加してしまうため、ノズルにて過冷却状態の希釈水と混合することは困難であった。また、シロップ等の被希釈原料は、その凝固点以下という極低温にするとガラス化して固化状態となってしまうため、飲料の供給を実現することができないという問題が生じる場合もある。
【0008】
そこで、本発明は従来の技術的課題を解決するためになされたものであり、炭酸飲料を適宜円滑に過冷却飲料として供給することを可能とする飲料ディスペンサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の飲料ディスペンサは、炭酸水を製造するためのカーボネータと、該カーボネータにて製造された炭酸飲料を外部に供給するための飲料供給回路と、冷却手段とを備え、カーボネータにおいて、加圧された炭酸ガスを供給する炭酸ガス源から供給される炭酸ガスと、被希釈原料と、希釈水とを混合して炭酸飲料を製造すると共に、冷却手段により、飲料供給回路を流れる炭酸飲料の温度を凝固点以下の過冷却状態まで冷却し、外部で過冷却状態を解除させることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明の飲料ディスペンサは、上記発明において、冷却手段は、飲料供給回路を流れる炭酸飲料の温度を凝固点以下の過冷却状態まで冷却するための過冷却用熱交換器と、一次冷却装置とを備え、該一次冷却装置によりカーボネータを氷点付近まで冷却することを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明の飲料ディスペンサは、上記発明において、被希釈原料をカーボネータに供給する被希釈原料供給回路と、希釈水をカーボネータに供給する希釈水供給回路とを備え、一次冷却装置により被希釈原料供給回路内の被希釈原料と希釈水供給回路内の希釈水を、氷点付近まで冷却することを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明の飲料ディスペンサは、上記発明において、炭酸ガス源からカーボネータへの供給圧力を変更可能とされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の飲料ディスペンサによれば、炭酸水を製造するためのカーボネータと、該カーボネータにて製造された炭酸飲料を外部に供給するための飲料供給回路と、冷却手段とを備え、カーボネータにおいて、加圧された炭酸ガスを供給する炭酸ガス源から供給される炭酸ガスと、被希釈原料と、希釈水とを混合して炭酸飲料を製造するので、カーボネータにより、これら炭酸ガスと、被希釈原料と、希釈水との混合に必要とされる空間を確保することができ、効率的に所定の被希釈原料濃度、ガスボリューム値にて炭酸飲料を製造することが可能となる。
【0014】
また、炭酸ガスと、被希釈原料と、希釈水との混合は、同時にカーボネータにて行うため、格別に被希釈原料と希釈水との混合を行うための手段を設ける必要がなく、精度よく所定濃度の炭酸飲料を製造することが可能となる。
【0015】
また、上述の如く製造され、飲料供給回路を流れる炭酸飲料は、冷却手段によりその温度を凝固点以下の過冷却状態まで冷却され、外部で過冷却状態を解除させることで、当該過冷却状態とされた炭酸飲料が外部におけるカップ等の容器内に注入される衝撃によって、該飲料を瞬間的に氷へと相変化させることができ、最終供給状態をシャーベット状態として飲料を供給することが可能となる。
【0016】
請求項2の発明によれば、上記発明に加えて、冷却手段は、飲料供給回路を流れる炭酸飲料の温度を凝固点以下の過冷却状態まで冷却するための過冷却用熱交換器と、一次冷却装置とを備え、該一次冷却装置によりカーボネータを氷点付近まで冷却することにより、カーボネータにおいて氷点付近まで冷却された炭酸飲料を、過冷却用熱交換器においてその凝固点以下に冷却させることにより、効率的に炭酸飲料を凝固点以下の過冷却の状態にまで冷却することが可能となる。
【0017】
請求項3の発明によれば、上記発明に加えて、被希釈原料をカーボネータに供給する被希釈原料供給回路と、希釈水をカーボネータに供給する希釈水供給回路とを備え、一次冷却装置により被希釈原料供給回路内の被希釈原料と希釈水供給回路内の希釈水を、氷点付近まで冷却するので、カーボネータに供給される被希釈原料と希釈水の温度を氷点付近とすることができ、カーボネータにおける温度条件を一定とすることができる。従って、炭酸ガス源からカーボネータへの供給圧力を一定とすることで、所定のガスボリュームの炭酸飲料を適切に製造することが可能となる。
【0018】
これにより、当該炭酸飲料のガスボリュームを一定とすることが可能となるため、過冷却用熱交換器にてその凝固点以下の温度にまで冷却される過程において、炭酸飲料中に気泡が発生し、当該気泡が氷核となり当該過冷却用熱交換器内にて過冷却状態が解除されてしまい、凍結を生じる不都合を未然に回避することが可能となる。
【0019】
請求項4の発明によれば、上記発明において、炭酸ガス源からカーボネータへの供給圧力を変更可能とされるので、任意にカーボネータにて製造される炭酸飲料のガスボリューム値を変更することが可能となる。
【0020】
従って、最終供給状態であるシャーベット状態の炭酸飲料のガスボリューム値を変更することができ、供給飲料の多様化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、図面に基づき本発明の実施形態としての飲料ディスペンサ1について詳述する。本実施例における飲料ディスペンサ1は、レストランや喫茶店などで使用されるディスペンサであって、強弱炭酸系の目的飲料を過冷却状態にて供給し、カップ等の容器内にてシャーベット状の飲料として提供する装置である。
【0022】
図1乃至図3を参照して飲料ディスペンサ1について詳述する。図1は本発明を利用した飲料ディスペンサ1の本体2の正面図、図2は飲料ディスペンサ1の本体2の側面図、図3は飲料ディスペンサ1の概略構成図を示している。
【0023】
実施例の飲料ディスペンサ1により供給される炭酸飲料の原料は、炭酸ガスと、被希釈原料、例えば有糖被希釈原料であるシロップ(又は、粉末状原料を溶解用液にて希釈された被希釈原料)と、希釈水である。なお、被希釈原料と希釈水とをあわせて飲料原料とする。
【0024】
本体2の開閉扉28の前面には、詳細は後述する飲料供給ユニット3からの飲料供給を操作する操作部27が設けられており、飲料供給ユニット3から供給される飲料毎に飲料供給量又は飲料供給方法を選択する操作ボタンが設けられている。当該操作部27は、詳細は後述する制御装置Cに接続されているものとする。
【0025】
そして、この開閉扉28の下部後方には、飲料供給ユニット3からの飲料を吐出するためのノズル12(図3に図示する。)が設けられており、当該ノズル12の下方には、テーブル14が設けられ、該テーブル14には、後述する飲料供給回路7からノズル12より外部に吐出された飲料を受容する容器としてカップ5を配置することができる。なお、本実施例では、容器としてカップを挙げているが、これに限定されるものではなく、例えば、グラスや皿、バケツなど飲料を受容可能とするものであればよい。
【0026】
本実施例において、飲料供給ユニット3は、被希釈原料をカーボネータ51に供給するシロップ供給回路(被希釈原料供給回路)72と、希釈水をカーボネータ51に供給する希釈水供給回路74と、カーボネータ51と、飲料過冷却用熱交換器16と、飲料電磁弁10等から成る飲料供給ユニット3を有している。
【0027】
シロップ供給回路72は、被希釈原料としてのシロップを貯留するシロップタンク(被希釈原料タンク)71と、シロップ流量調整器75と、シロップ冷却コイル9とが配管接続されており、シロップ冷却コイル9から出た配管は、制御装置Cにより開閉制御されるシロップ電磁弁76を介してカーボネータ51に接続されている。なお、シロップタンク71内のシロップは、ガスレギュレータ73によりシロップ供給回路72内に送出される。
【0028】
希釈水供給回路74は、上記シロップを目的飲料(目的炭酸飲料)の供給に適した濃度に希釈するための飲料原料としての原水(例えば、水道水)を脱気及び/又は逆浸透膜処理するフィルタ等の原水処理装置70と、水ポンプ77と、希釈水流量調整器78と、希釈水冷却コイル79とが配管接続されており、希釈水冷却コイル79から出た配管は、制御装置Cにより開閉制御される希釈水電磁弁80を介してカーボネータ51に接続されている。
【0029】
各流量調整器75、78は、所定の流量を設定可能で、また何らかの原因により供給回路の圧力が変動した場合でも吐出流量変動を生じさせない機能を有している。これにより、シロップ又は希釈水がシロップタンク71又は水ポンプ77からカーボネータ51に送出され、これらシロップ及び希釈水の供給が制御される。
【0030】
そして、このカーボネータ51には、ガス供給ライン52を介して加圧された炭酸ガスを供給する炭酸ガスボンベ53が接続されている。ガス供給ライン52には、ガスレギュレータ54が介設されている。
【0031】
当該ガスレギュレータ54は、炭酸ガスボンベ53から供給される加圧された炭酸ガスのカーボネータ51への供給圧力を変更可能とする手段であり、本発明における炭酸ガス源を構成する。なお、当該炭酸ガスボンベ53は、市場において流通されるものであり、一般に、設置箇所において別途、当該飲料ディスペンサ1に接続されるものである。ただし、当該炭酸ガスボンベ53は、ガスレギュレータ54を介してカーボネータ51に加圧された炭酸ガスを供給するものであり、当該ガスレギュレータ54と共に、炭酸ガス源を構成するものとしてもよい。
【0032】
カーボネータ51は、カーボネータタンク56により構成されており、当該タンク56内に炭酸ガスを導入するための前記ガス供給ライン52が接続されている。タンク56内の下部から上方に延在して、タンク56内で製造された炭酸飲料を導出するためのサイフォンチューブ57が当該タンク56内に連通して設けられていると共に、タンク56内で製造された炭酸飲料の水位を検出するための水位センサ58が設けられている。なお、当該サイフォンチューブ57は、後述する飲料供給回路7の一部を構成している。
【0033】
前記シロップ供給回路72の出口端部及び希釈水供給回路74の出口端部は、タンク56の上面を貫通してタンク56内に延出し、その先端にはスプレーノズル又は小穴を有するノズル部72A、74Aがそれぞれ形成されている。これにより、ノズル部72Aからシロップ供給回路72より供給されたシロップが噴霧又は噴射され、ノズル部74Aから希釈水供給回路74より供給された希釈水が噴霧又は噴射される。
【0034】
タンク56内上部には、上面から前記シロップ供給回路72及び希釈水供給回路74のそれぞれの出口端部を挿通し、かつ、当該タンク56内と連通可能とされて内部に炭酸ガスを充満可能とする容器59が設けられている。そして、この容器59の側面及び底面には、内部で生成された炭酸飲料を流出させる複数の流出孔60が形成されている。また、このタンク56上部には、タンク56内の空気やタンク56内に溜まった窒素や酸素などのガスをタンク56外に排出するための排気弁55が設けられている。
【0035】
上記シロップ冷却コイル9は、シロップタンク71から送出されるシロップを氷点付近の温度にまで冷却するものであり、希釈水冷却コイル79は、原水処理装置70を経て供給される希釈水を氷点付近の温度にまで冷却するものである。本実施例において、当該シロップ冷却コイル9と、希釈水冷却コイル79と、前記カーボネータ51、更に、詳細は後述する再冷却用熱交換器61とは、一次冷却装置(冷却手段)13を構成する同一の水槽17内に交熱的に配設される。
【0036】
即ち、一次冷却装置13は、冷却水を貯留する水槽17と、該水槽17内の冷却水を冷却し、一定割合の冷却水を冷却器22に着氷させる冷媒回路18により構成される。冷媒回路18は、本体2内に配設される圧縮機19と、凝縮器20と、減圧手段としての膨張弁21と、水槽17内の冷却水と交熱的に配設される冷却器22とを冷媒配管23によって環状に接続することに構成される。
【0037】
また、水槽17内には、撹拌モータの駆動により水槽内の冷却水を撹拌する撹拌プロペラ4が設けられていると共に、冷却器22の内側に位置する一対の導線から構成された第1の氷センサ26Aと、冷却器22の外側に位置する一対の導線から構成された第2の氷センサ26Bとを備えている。これら氷センサ26A、26Bは、前記導線間に氷が介在して抵抗値が所定値以上になると氷検出信号を出力するものである。
【0038】
一方、前記カーボネータ51に接続される飲料供給回路7(実際には、当該回路7の一部を構成するサイフォンチューブ57)には、カーボネータ51と後述する過冷却用熱交換器16との間に位置して飲料供給回路7の一部を構成する再冷却用熱交換器61が接続されている。
【0039】
本実施例において、当該再冷却用熱交換器61は、所定の容量(例えば、少なくとも本装置により供給される一杯分の量、本実施例では、管長10m程度)を有する冷却コイルにより構成されている。
【0040】
他方、再冷却用熱交換器61の下流側の飲料供給回路7には、過冷却用熱交換器(冷却手段)16が設けられている。この過冷却用熱交換器16は、二次冷却装置30により炭酸飲料を凝固点以下の過冷却温度にまで冷却するものであり、本実施例では、二重配管により構成されている。当該二重配管は、断熱材34などにより囲繞され、容易には冷熱が外部に漏出されない構成とされている。
【0041】
そして、この二重配管の内側の配管内にカーボネータ51、再冷却用熱交換器61を経た炭酸飲料が流入される構成とされている。なお、本実施例において、この二重配管の内側の配管内部は、カップ5の約一杯分、例えば約200cc程度の炭酸飲料によって満たされる容量とされている。
【0042】
本実施例において、二次冷却装置30は、不凍液が循環されるブライン回路31と、当該ブライン回路31内の不凍液を、炭酸飲料の凝固点以下の過冷却温度、例えば−5℃乃至−10℃にまで冷却する冷媒回路35により構成される。
【0043】
ブライン回路31は、不凍液循環ポンプ32と、過冷却用熱交換器16と、不凍液タンク33とを環状に接続して、内部に所定量の不凍液を充填して成る。本実施例では、ブライン回路31を流れる不凍液が、過冷却用熱交換器16を構成する二重配管の外側の配管と内側の配管との間に流入する構成とされる。また、本実施例では、炭酸飲料の流通方向に対し、不凍液の流通方向が対向して流れるように配管接続されている。これにより、不凍液は、過冷却用熱交換器16の飲料供給回路7下流側から流入し、当該熱交換器16の飲料供給回路7上流側から流出する構成とされる。
【0044】
冷媒回路35は、本体2内に配設される圧縮機36と、凝縮器37と、減圧手段としての膨張弁38と、不凍液タンク33内の不凍液と交熱的に配設される冷却器39とを冷媒配管40によって環状に接続することで構成される。
【0045】
また、過冷却用不凍液タンク33内には、当該タンク33内に貯留される不凍液の温度を検出するための温度センサ42及び、当該タンク33内の不凍液の温度を均一とするための撹拌プロペラ29が設けられている。
【0046】
なお、図3では、シロップタンク71と、シロップ冷却コイル9と、カーボネータ51から構成されるシロップ供給回路72と、カーボネータ51と、再冷却用熱交換器61と、過冷却用熱交換器16、飲料電磁弁10とから構成される飲料供給回路7は、それぞれ一ラインのみ図示しているが、これに限定されるものではなく、操作部27に設けられる飲料の種類ごとにシロップ供給回路72及び飲料供給回路7が設けられているものとする。なお、この場合において、一次冷却装置13を構成する水槽17は、それぞれのシロップ冷却コイル9、希釈水冷却コイル79、カーボネータ51、再冷却用熱交換器61を冷却するものとして使用し、また、二次冷却装置30を構成する不凍液タンク33も同様に、それぞれの飲料供給回路7を冷却するものとして使用しても良いものとする。ただし、ブライン回路31は、それぞれの飲料供給回路7の過冷却用熱交換器16ごとに設けることが望ましい。
【0047】
次に、図4の電気ブロック図を参照して制御装置Cについて説明する。当該制御装置Cは、汎用のマイクロコンピュータにより構成されており、入力側には、操作部27と、第1、第2の氷センサ26A、26Bと、水位センサ58と、温度センサ42が接続されている。また、出力側には、各シロップ電磁弁76と、希釈水電磁弁80と、飲料電磁弁10と、水ポンプ77と、一次冷却装置13を構成する圧縮機19と、膨張弁21と、二次冷却装置30を構成する不凍液循環ポンプ32と、冷媒回路35を構成する圧縮機36と、膨張弁38とが接続されている。
【0048】
以上の構成により、当該飲料ディスペンサ1の動作について説明する。
(1)飲料供給準備(冷却)
まず、制御装置Cは、飲料の供給待機状態とし、一次冷却装置13の水槽17内の冷却水の冷却及び、二次冷却装置30の不凍液タンク33内の不凍液の冷却を行う。
【0049】
水槽17内の冷却水の冷却は、まず、制御装置Cにより一次冷却装置13の圧縮機19等を運転し、冷却器22によって冷却作用を発揮させる。これにより、当該冷却器22を構成する冷媒配管により水槽17内の冷却水を冷却し、更に冷却器22の表面に氷を形成する。そして、氷センサ26A、26Bによる氷検出信号に基づき水槽17内の冷却水が十分に着氷しているか否かを判断し、これに基づき一次冷却装置13の圧縮機19等の運転を制御する。従って、当該水槽17内の冷却水に浸漬される各シロップ冷却コイル9、希釈水冷却コイル79、カーボネータ51、再冷却用熱交換器61は、氷点付近の温度に冷却され、これらを流通する飲料も氷点付近の温度に冷却される。
【0050】
不凍液タンク33内の不凍液の冷却は、まず、制御装置Cにより二次冷却装置30圧縮機36等を運転し、冷却器39によって冷却作用を発揮させる。これにより、不凍液タンク33内の不凍液が冷却される。そして、温度センサ42の検出温度に基づき不凍液タンク33内の不凍液が所定の冷却温度、本実施例では、−5℃〜−8℃程度となるように、二次冷却装置30の圧縮機36等の運転を制御する。従って、不凍液タンク33内の不凍液は、常時−5℃〜−8℃程度の冷却温度に冷却される。
(2)飲料供給準備(カーボネーション)
上述した如き冷却動作を行っている間に、制御装置Cは、カーボネータ51における水位センサ58によりカーボネータ51内の飲料原料の水位を検出し、所定の水位に満たない場合には、希釈水及びシロップの供給動作を行い、炭酸飲料の製造を実行する。
【0051】
まず、希釈水電磁弁80を開放し、水ポンプ77により原水処理装置70にて処理された水道水を希釈水流量調整器78、希釈水冷却コイル79が設けられる希釈水供給回路74を介してカーボネータ51に流入させる。
【0052】
これと同時に、制御装置Cは、シロップ電磁弁76を開放する。これにより、ガスレギュレータ73は常に開放されていることから、シロップ供給回路72の下流側に位置するシロップ電磁弁76が開放されることで、炭酸ガスボンベ53から所定の圧力の炭酸ガスが供給され、シロップ供給回路72にシロップが送出される。これにより、シロップタンク71から供給されるシロップをシロップ流量調整器75、シロップ冷却コイル9が設けられるシロップ供給回路72を介してカーボネータ51に流入させる。
【0053】
このとき、制御装置Cは、希釈水電磁弁80及びシロップ電磁弁76を開閉制御することにより、カーボネータ51に供給されるシロップは、希釈水により所定割合にて希釈され、所定濃度の飲料原料とすることができる。
【0054】
なお、この場合、カーボネータ51内には、ガスレギュレータ54が介設されるガス供給ライン52より、所定の加圧圧力(例えば、0.15MPa)の炭酸ガスが供給されており、当該加圧圧力の炭酸ガスが充満されているものとする。
【0055】
そのため、この状態で、シロップ電磁弁76及び希釈水電磁弁80が開放されることにより、シロップ供給回路72から供給されるシロップは、タンク56内にて開放されるノズル部72Aより噴霧又は噴射され、希釈水供給回路74から供給される希釈水は、タンク56内にて開放されるノズル部74Aより噴霧又は噴射される。
【0056】
これにより、当該噴霧又は噴射されたシロップ及び希釈水は、タンク56内に充満していた炭酸ガスと混合され、当該炭酸ガスが希釈水によって希釈されたシロップに溶解される。このとき、シロップ及び希釈水は、容器59内に噴霧又は噴射されるため、当該容器59内をこれらシロップ及び希釈水が混合されて循環し、この過程にて、十分に炭酸ガスがこれらにより形成される飲料原料に溶解され、当該圧力にて飽和状態の炭酸飲料が製造される。
【0057】
この際、カーボネータ51(カーボネータタンク56)により、これら炭酸ガスと、被希釈原料であるシロップと、希釈水との混合に必要とされる空間を確保することができ、効率的に所定のシロップ濃度、ガスボリューム値にて炭酸飲料を製造することが可能となる。
【0058】
また、炭酸ガスと、シロップと、希釈水との混合は、同時にカーボネータ51にて行うため、格別にシロップと希釈水との混合を行うための手段(例えば、混合用のタンク)を設ける必要がなく、精度よく所定濃度の炭酸飲料を製造することが可能となる。
【0059】
特に、本実施例では、カーボネータ51に供給されるシロップは、シロップ冷却コイル9を経る過程において一次冷却装置13の水槽17より氷点付近まで冷却されていると共に、同様にカーボネータ51に供給される希釈水も、希釈水冷却コイル79を経る過程において、同様の水槽17により氷点付近まで冷却されているので、カーボネータ51における温度条件を一定とすることができる。
【0060】
従って、炭酸ガス源を構成するガスレギュレータ54からカーボネータ51への炭酸ガスの加圧圧力(供給圧力)を一定とすることで、所定のガスボリュームの炭酸飲料を適切に製造することが可能となる。
【0061】
そして、容器59内にて炭酸ガスが溶け込まれた飲料原料(カーボネーションされた飲料原料。炭酸飲料)は、容器59の側面及び底面に形成された流出孔60から流出し、タンク56内に貯留される。これにより、タンク56内には、所定の高ガスボリュームの炭酸飲料が貯留される。なお、このとき、カーボネーションされた飲料原料は、一旦容器59にて受容された後、徐々に流出孔60からタンク56内下部に貯留される構成とされているため、タンク56内下部において安定化されている炭酸飲料が、再び、噴霧又は噴射されるシロップ等によって活性化される不都合を抑制することができる。
【0062】
その後、制御装置Cは、前記水位センサ58が満水位を検出すると、シロップ電磁弁75及び希釈水電磁弁80を閉鎖し、カーボネーションを終了する。
(3)飲料供給待機
ここで、カーボネータ51は、一次冷却装置13により冷却される水槽17内に配設されているため、カーボネータ51にて製造された炭酸飲料は、所定の冷却温度、本実施例では、氷点付近の温度にまで冷却されている。
【0063】
上記カーボネーションが終了し、且つ、水槽17内の冷却水が氷点付近の温度に冷却され、不凍液タンク33内の不凍液が所定の冷却温度にまで冷却されたことを検出した後、制御装置Cは、炭酸飲料の販売が可能な状態、即ち、操作部27に設けられる各飲料の供給を行う操作ボタンによる操作が可能な状態とする。
(4)飲料供給
係る状態において、操作部27に設けられるいずれかの操作ボタンが操作されると、制御装置Cは、対応する飲料供給回路7を冷却するブライン回路31の不凍液循環ポンプ32を駆動する。当該循環ポンプ32が駆動されてから所定時間(熱交換器冷却待機時間)、例えば5秒程度遅延させて、対応する飲料電磁弁10を開放する。
【0064】
このとき、飲料電磁弁10が開放されることで、炭酸ガスボンベ53内の炭酸ガスがガスレギュレータ54より所定の圧力とされてカーボネータ51に供給されているため、カーボネータ51内に貯留されていた炭酸飲料は、再冷却用熱交換器61が介設される飲料供給回路7に送出される。
【0065】
そのため、カーボネータ51内の炭酸飲料は、再冷却用熱交換器61内へと流入し、当該熱交換器61を経る過程において、炭酸飲料が安定化される。このとき、再冷却用熱交換器61内に充填されていた炭酸飲料は、カーボネータ51から再冷却用熱交換器61への炭酸飲料の流入によって、過冷却用熱交換器16に押し出され、次回の炭酸飲料の供給に備え待機状態とされる。
【0066】
このようにして過冷却用熱交換器16の二重配管の内側の配管内に流入した炭酸飲料は、ブライン回路31内を循環する−5℃〜−8℃の過冷却温度に冷却された不凍液と熱交換することにより、当該炭酸飲料の過冷却温度にまで冷却される。
【0067】
なお、本実施例の如く飲料供給の指示が行われた後、熱交換器冷却待機時間が経過するまで、不凍液循環ポンプ32を先に駆動し、遅延させて飲料電磁弁10を開放することで、過冷却用熱交換器16における飲料供給回路7内に充填される炭酸飲料を適切に−5℃〜−8℃の炭酸飲料の過冷却温度にまで冷却することが可能となる。
【0068】
このように、一次冷却装置13の水槽17に配設されるカーボネータ51、再冷却用熱交換器61にて氷点付近まで冷却された炭酸飲料を、過冷却用熱交換器16において当該飲料の凝固点以下に冷却された不凍液と熱交換させることにより、当該炭酸飲料を短時間で効率的にその凝固点以下の過冷却の状態にまで冷却することが可能となる。
【0069】
過冷却用熱交換器16において当該炭酸飲料の過冷却温度にまで冷却された炭酸飲料は、過冷却状態とされているので、ノズル12から外部に吐出されカップ5等の容器に注入される衝撃によって、該炭酸飲料を瞬間的に氷へと相変化させることができ、最終供給状態をシャーベット状態として炭酸飲料を供給することが可能となる。
【0070】
なお、本実施例では、シロップ及び希釈水は、温度を一定、実際には、シロップ冷却コイル9及び希釈水冷却コイル79において、一次冷却装置13の水槽17により氷点付近にまで冷却された状態で、カーボネータ51に供給されて炭酸飲料を製造しているため、上述したように、当該炭酸飲料のガスボリュームを一定とすることが可能となる。
【0071】
そのため、過冷却用熱交換器16にてその凝固点以下の温度にまで冷却される過程において、炭酸飲料中に気泡が発生し、当該気泡が氷核となり当該過冷却用熱交換器16内にて過冷却状態が解除されてしまい、凍結を生じる不都合を未然に回避することが可能となる。
【0072】
なお、本実施例におけるカーボネータ51への炭酸ガスの供給圧力は、ガスレギュレータ54によって、任意に変更可能とされている。そのため、カーボネータ51において炭酸飲料を製造する際に、タンク56内に充填する炭酸ガスの供給圧力を変更することで、製造される炭酸飲料のガスボリューム値(ガス吸収割合)を変更することが可能となる。
【0073】
図5は、カーボネータタンク56の圧力に対する製造炭酸飲料のガスボリューム値を示している。シロップと希釈水を所定割合にて混合して構成される飲料原料から炭酸飲料を製造した実験値と、0℃の水に炭酸ガスが溶解する割合を(株)光琳書院発行の書籍「ソフト・ドリンクス」の表1.4炭酸ガス吸収係数表を用いて示している。
【0074】
これによると、タンク56内の圧力が0.1MPaでは、炭酸飲料のガスボリューム値は2.9volであり、炭酸水は3.37volであった。タンク56内の圧力が0.15MPaでは、炭酸飲料のガスボリューム値は3.77vol、炭酸水は、4.20volであった。タンク56内の圧力が0.2MPaでは、炭酸飲料のガスボリューム値は4.5volであり、炭酸水は5.03volであった。タンク56内の圧力が0.25MPaでは、炭酸飲料のガスボリューム値は5.03vol、炭酸水は、5.86volであった。
【0075】
このように、カーボネーションを行う際におけるカーボネータタンク56への供給圧力を上昇させることにより、製造される炭酸水/炭酸飲料のガスボリューム値を上昇させることができる。
【0076】
そのため、カーボネータ51への供給圧力を変更することで、最終供給状態であるシャーベット状態の炭酸飲料のガスボリューム値を変更することができ、供給飲料の多様化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る飲料ディスペンサの本体の正面図である。
【図2】飲料ディスペンサの本体の側面図である。
【図3】飲料ディスペンサの概略構成図である。
【図4】制御装置の電気ブロック図である。
【図5】供給圧力に対する製造炭酸飲料のガスボリューム値を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
C 制御装置
1 飲料ディスペンサ
5 カップ(容器等)
7 飲料供給回路
9 シロップ冷却コイル
10 飲料電磁弁
12 ノズル
13 一次冷却装置(冷却手段)
16 過冷却用熱交換器(冷却手段)
17 水槽
30 二次冷却装置
31 ブライン回路
32 不凍液循環ポンプ
33 不凍液タンク
51 カーボネータ
52 ガス供給ライン
53 炭酸ガスボンベ
54 ガスレギュレータ(炭酸ガス源)
59 容器
71 被希釈原料タンク
72 シロップ供給回路(被希釈原料供給回路)
72A、74A ノズル部
73 ガスレギュレータ
74 希釈水供給回路
75 シロップ流量調整器
76 シロップ電磁弁
78 希釈水流量調整器
79 希釈水冷却コイル
80 希釈水電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸水を製造するためのカーボネータと、
該カーボネータにて製造された炭酸飲料を外部に供給するための飲料供給回路と、
冷却手段とを備え、
前記カーボネータにおいて、加圧された炭酸ガスを供給する炭酸ガス源から供給される炭酸ガスと、被希釈原料と、希釈水とを混合して炭酸飲料を製造すると共に、
前記冷却手段により、前記飲料供給回路を流れる炭酸飲料の温度を凝固点以下の過冷却状態まで冷却し、外部で過冷却状態を解除させることを特徴とする飲料ディスペンサ。
【請求項2】
前記冷却手段は、前記飲料供給回路を流れる炭酸飲料の温度を凝固点以下の過冷却状態まで冷却するための過冷却用熱交換器と、一次冷却装置とを備え、
該一次冷却装置により前記カーボネータを氷点付近まで冷却することを特徴とする請求項1に記載の飲料ディスペンサ。
【請求項3】
前記被希釈原料を前記カーボネータに供給する被希釈原料供給回路と、
前記希釈水を前記カーボネータに供給する希釈水供給回路とを備え、
前記一次冷却装置により前記液体原料供給回路内の被希釈原料と前記希釈水供給回路内の希釈水を、氷点付近まで冷却することを特徴とする請求項2に記載の飲料ディスペンサ。
【請求項4】
前記炭酸ガス源から前記カーボネータへの供給圧力を変更可能とされることを特徴とする請求項3に記載の飲料ディスペンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−270794(P2009−270794A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123270(P2008−123270)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(391026058)ザ・コカ−コーラ・カンパニー (238)
【氏名又は名称原語表記】THE COCA−COLA COMPANY
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】