説明

飲料ディスペンサ

【課題】飲料ディスペンサにおいて、冷凍装置の可燃性冷媒が漏出してもハウジングの下部に滞留して発火する危険な濃度とならないようにする。
【解決手段】飲料ディスペンサ10は、ハウジング11内に冷却水槽20と、冷凍装置30とを収容し、冷凍装置30は冷却水槽20内の蒸発器35の周囲に所定の厚みの氷を形成するように断続的に作動するように制御されたものであり、ハウジング11内には冷凍装置30の可燃性冷媒の漏出を検出する冷媒漏出検出手段37と、冷凍装置30から漏出した可燃性冷媒をハウジング11外に拡散させる拡散手段32bとを備え、この冷媒漏出検出手段37の検出に基づいて拡散手段32bの作動を制御した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可燃性冷媒を冷媒として用いた冷凍装置を備えた飲料ディスペンサに関する
ものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハウジング内に収容された冷却水を貯える冷却水槽と、同ハウジング内に収容されてこの冷却水槽内の冷却水を冷却する冷凍装置と、冷却水槽内に設けられて飲料を冷却する飲料冷却管と、この飲料冷却管の流出端部に設けられて飲料を注出する注出コックとを備えた飲料ディスペンサが開示されている。この飲料ディスペンサにおいては、冷凍装置は、冷媒を圧送する圧縮機と、この圧縮機から圧送される冷媒を凝縮液化させる冷却ファンを備えた凝縮器と、冷却水槽の内周壁に沿って螺旋状に配設されて凝縮器から送出される液化冷媒を気化させることで冷却水を冷却する蒸発器とが順次連結されて、冷却水槽内の蒸発器の周囲に所定の厚みの氷を形成するようにその作動が制御されている。
【0003】
このような飲料ディスペンサの冷凍装置は、これまでオゾン層の破壊のおそれの少ないHFC系冷媒であるR134aが広く用いられてきた。しかし、このHFC系冷媒は、大気に放出された場合、地球温暖化を促進する物質であり、冷蔵庫のような他の機器では、近年このようなHFC系冷媒に代えて地球温暖化の影響の小さい炭化水素系冷媒であるイソブタン(R600a)等が用いられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−045503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような特許文献1に記載の飲料ディスペンサにおいて、冷凍装置の冷媒に上述したような炭化水素系冷媒を用いると地球温暖化の影響を小さくすることができる。しかし、炭化水素系冷媒は可燃性の冷媒であって空気より比重が高いので、可燃性冷媒が冷媒通路から漏出するとハウジングの下部またはハウジングの周囲に溜まって発火する危険な濃度となって危険であった。そこで、本発明は、このような問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するため、ハウジング内に収容されて冷却水を貯える冷却水槽と、同ハウジング内に収容されてこの冷却水槽内の冷却水を冷却する冷凍装置と、冷却水槽内に設けられて飲料を冷却する飲料冷却管と、この飲料冷却管の流出端部に接続されて飲料を注出する注出機構とを備え、冷凍装置は、可燃性冷媒を圧送する圧縮機と、この圧縮機から圧送される可燃性冷媒を凝縮液化させる凝縮器と、冷却水槽内に配設されて凝縮器から送出される液化された可燃性冷媒を気化させることで冷却水を冷却する蒸発器とが順次連結されて、冷却水槽内の蒸発器の周囲に所定の厚みの氷を形成するように断続的に作動するように制御された飲料ディスペンサにおいて、ハウジング内には冷凍装置の可燃性冷媒の漏出を検出する冷媒漏出検出手段と、冷凍装置から漏出した可燃性冷媒をハウジング外に拡散させる拡散手段とを備え、この冷媒漏出検出手段の検出に基づいて拡散手段の作動を制御したことを特徴とする飲料ディスペンサを提供するものである。
【0007】
上記のように構成した飲料ディスペンサにおいては、ハウジング内には冷凍装置の可燃性冷媒の漏出を検出する冷媒漏出検出手段と、冷凍装置から漏出した可燃性冷媒をハウジング外に拡散させる拡散手段とを備え、この冷媒漏出検出手段の検出に基づいて拡散手段の作動を制御したので、可燃性冷媒が冷凍装置から漏出しても、冷媒漏出検出手段の検出により拡散手段が作動するので、可燃性冷媒がハウジング内またはその周囲に滞留して発火する危険な濃度とならない。
【0008】
上記のように構成した飲料ディスペンサにおいては、拡散手段は凝縮器を構成する冷却ファンであるのが好ましく、このようにしたときには、拡散手段のために新たに部品を追加するコストを抑制することができる。また、凝縮器の冷却ファンは、冷凍装置の作動及び冷凍装置から漏出した冷媒を拡散させるときに作動するので、冷却ファンを冷媒の漏出の有無に関わらず連続運転させるときと比べてその寿命を長くすることができる。
【0009】
上記のように構成した飲料ディスペンサにおいては、拡散手段はハウジング内にさらに設けた送風ファンであってもよく、このようにしたときには、凝縮器が水冷式または自然冷却式のように冷却ファンを用いないものであっても、送風ファンにより冷凍装置から漏出した可燃性冷媒を拡散させることができる。また、凝縮器の冷却ファンを用いたときと比べて、送風ファンを冷媒の漏出の可能性の高いところや冷媒の滞留しやすい箇所の近傍に自由に配置することができる。
【0010】
上記のように構成した飲料ディスペンサにおいては、一実施形態として、冷媒漏出検出手段にハウジング内に設けられた可燃性冷媒を検出するガスセンサを用い、このガスセンサによる可燃性冷媒の検出に基づいて拡散手段の作動を制御してもよい。また、他の実施形態として、冷媒漏出検出手段に冷凍装置の冷媒通路に設けられてこの冷媒通路の圧力を検出する圧力センサを用い、この圧力センサによる冷媒通路内の圧力の低下の検出に基づいて拡散手段の作動を制御したり、冷媒漏出検出手段に冷凍装置の冷媒通路の外側に設けられてこの冷媒通路の外側の温度を検出する温度センサを用い、この温度センサによる冷媒通路の外側の温度の低下の検出に基づいて拡散手段の作動を制御したり、冷媒漏出検出手段に圧縮機に供給される電流を検出する電流検出器を用い、この電流検出器による電流の低下の検出に基づいて拡散手段の作動を制御してもよい。
【0011】
上記のように構成した飲料ディスペンサにおいては、冷凍装置の可燃性冷媒の漏出を報知する報知器をさらに備え、冷媒漏出検出手段によって可燃性冷媒の漏出を検出したときに、報知器により可燃性冷媒の漏出を報知するのが好ましく、このようにしたときには、冷凍装置から可燃性冷媒が漏出したことをいち早く知ることができ、飲料ディスペンサを設置した部屋の換気や火気の使用に注意を払うことができるとともに、可燃性冷媒が不足して冷却能力が低下する期間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による飲料ディスペンサの一実施形態であるビールディスペンサを示す(a)側断面図であり、(b)底面図である。
【図2】第1実施形態の冷凍装置の概略図である。
【図3】第1実施形態の制御装置のブロック図である。
【図4】第1実施形態のビールディスペンサの作動を示すフローチャートである。
【図5】第2実施形態の冷凍装置の概略図である。
【図6】第2実施形態の制御装置のブロック図である。
【図7】第2実施形態のビールディスペンサの作動を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明による飲料ディスペンサの一実施形態としてビールを注出するためのビールディスペンサを図面を参照して説明する。本発明のビールディスペンサ10は、ハウジング11内に収容されて冷却水を貯える冷却水槽20と、ハウジング11内に収容されてこの冷却水槽20内の冷却水を冷却する冷凍装置30と、冷却水槽20内に設けられてビールを冷却する飲料冷却管21と、この飲料冷却管21の流出端部21aに接続されてビールを注出する注出機構22とを備え、冷凍装置30は、可燃性冷媒を圧送する圧縮機31と、この圧縮機31から圧送される可燃性冷媒を凝縮液化させる凝縮器32と、冷却水槽20内に配設されて凝縮器32から送出される液化された可燃性冷媒を気化させることで冷却水を冷却する蒸発器35とが順次連結されて、冷却水槽20内の蒸発器35の周囲に所定の厚みの氷を形成するように断続的に作動するように制御されたものである。而して、このビールディスペンサ10は、ハウジング11内には冷凍装置30の可燃性冷媒の漏出を検出する冷媒漏出検出手段37と、冷凍装置30から漏出した可燃性冷媒をハウジング11外に拡散させる拡散手段32b(38)とを備え、この冷媒漏出検出手段37の検出に基づいて拡散手段32b(38)の作動を制御したものである。以下に、ビールディスペンサ10の各実施形態について詳述する。
【0014】
(第1実施形態)
図1に示すように、ビールディスペンサ10は、上面の開口を蓋体12により覆うようにした略直方体形状のハウジング11の前部に冷却水槽20を備え、冷却水槽20の後側の機械室11aに冷凍装置30を備えている。ハウジング11の左右両側壁の後側上部と後壁の上部には冷凍装置30を収容した機械室11a内の通気(主として排気)を行うための通気口11b(図1では正面から見て左側壁の後側上部の通気口11bのみを示す)が形成されている。また、ハウジング11の底壁には機械室11a内の通気(主として吸気)を行うための通気開口11cが形成されており、この通気開口11cにはフィルター11dが取り付けられている。ハウジング11の前面には、後述する冷凍装置30の冷媒の漏出を報知する報知器13が設けられている。この報知器13は、ランプを点灯することで冷凍装置30の冷媒の漏出を報知するものである。なお、報知器13は、ランプの点灯に代えてブザーにより、またはランプの点灯とともにブザーにより冷媒の漏出を報知してもよい。
【0015】
冷却水槽20内には、ハウジング11外のガスボンベ(図示しない)から送出される炭酸ガスの圧力によってビア樽(図示しない)から圧送されるビールを冷却するコイル状の飲料冷却管21が設けられており、この飲料冷却管21の流出端部21aにはビールを注出するための注出コック(注出機構)22が接続されている。注出コック22の操作レバー22aを傾動させと、ビア樽内のビールが炭酸ガスの圧力によって送られ、飲料冷却管21を通過するときに冷却水槽20内の冷却水によって熱交換されて冷却され、注出コック22の注出ノズル22bからジョッキ等の容器に注出される。冷却水槽20の上側には、冷却水槽20内の冷却水を撹拌するための撹拌モータ23が設けられており、この撹拌モータ23の出力軸23aの先端に設けられた撹拌羽根24が回転することで冷却水が撹拌される。
【0016】
冷凍装置30は、冷却水槽20内の冷却水を冷却するためのものであり、本実施形態の冷凍装置30は、地球温暖化の影響を小さくするためにイソブタン(R600a)(以下、単にイソブタンとも記す)よりなる可燃性冷媒(以下、単に冷媒ともいう)を用いている。なお、このイソブタンは気化したときの比重が空気より重い物質である。
【0017】
図2に示すように、冷凍装置30は、圧縮機31と、凝縮器32と、ドライヤ33と、キャピラリーチューブ34と、蒸発器35とを冷媒管(冷媒通路)30aにより順次連結したものである。圧縮機31は、機械室11aの下部に設けられて冷媒を圧縮して凝縮器32に送るものである。凝縮器32は、圧縮機31の上側に設けられて冷媒を凝縮液化するものである。凝縮器32は、金属製管部材を蛇行するように折り曲げて形成した熱交換器32aと、熱交換器32aの上側に設けられて熱交換器32aを通過する冷媒を冷却する冷却ファン32bとから構成されている。冷却ファン32bは、機械室11a下部から吸い上げた空気を熱交換器32aを通すことで、熱交換器32aを通過する冷媒を冷却する。冷却ファン32bを作動させたときには、ハウジング11の下側の空気が通気開口11cから機械室11aの下部に流入し、流入した空気は機械室11aを上昇してハウジング11の上部の通気口11bからハウジング11外に排出される。このように冷却ファン32bはハウジング11の機械室11aの下部の空気をハウジング11外に広く拡散させるものであり、特許請求の範囲に記載の拡散手段として機能するものである。
【0018】
ドライヤ33は、凝縮器32にて液化された冷媒中の水分を除去するものである。キャピラリーチューブ34は、高圧の液化冷媒を減圧して蒸発器35に送るためのものである。蒸発器35は、冷却水槽20の内周壁に沿って螺旋状に配設されており、キャピラリーチューブ34により減圧された液化冷媒を気化させることで冷却水槽20内の冷却水を冷却するものである。蒸発器35で液化冷媒が気化すると、冷却水槽20内の冷却水は蒸発器35の周囲で冷却されて漸次凍結する。螺旋状に巻回された蒸発器35の内周側の少し離れた位置には、蒸発器35の周囲に形成された所定厚の氷を検出する氷厚センサ36が設けられており、この氷厚センサ36は支持部材(図示しない)を介して冷却水槽20に取り付けられている。氷厚センサ36は、互いに離間して設けられた2つの電極間の電気抵抗値が氷の形成により高くなることで、蒸発器35の周囲に所定厚の氷が形成されたことを検知するものである。機械室11aの下部には冷媒に用いたイソブタンを検出するガスセンサ(冷媒漏出検出手段)37が設けられている。冷媒に用いたイソブタンは冷凍装置30から漏出するとハウジング11の下部に流れるので、ガスセンサ37は冷凍装置30からの冷媒の漏出を早期に検出可能とするためにハウジング11の機械室11aの下部に設けられている。
【0019】
このビールディスペンサ10は制御装置40を備えており、図3に示すように、この制御装置40には報知器13、撹拌モータ23、圧縮機31、冷却ファン32b、氷厚センサ36及びガスセンサ37が接続されている。制御装置40はマイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続されたCPU、RAM、ROM及びタイマ(いずれも図示省略)を備えている。CPUは、氷厚センサ36及びガスセンサ37の各検出に基づいて、報知器13、圧縮機31及び冷却ファン32bの作動を制御するプログラムを実行する。
【0020】
次に、上記のように構成したビールディスペンサ10の作動を図4に示すフローチャートを用いて説明する。図4に示すように、制御装置40は、ステップ101において、撹拌モータ23を作動させて、冷却水槽20内の冷却水を撹拌して水温を均一にするとともに、飲料冷却管21を通過するビールが冷却水と熱交換されやすくする。制御装置40は、ステップ102において、氷厚センサ36の検出により蒸発器35の周囲に所定厚の氷が形成されたか否かを判定し、所定厚の氷が形成されていないときには、「NO」と判定して、ステップ103に進める。制御装置40は、ステップ103において、圧縮機31と、凝縮器32の冷却ファン32bを作動させる。これにより、圧縮機31から圧送された冷媒は、凝縮器32、ドライヤ33、キャピラリーチューブ34、蒸発器35を通り、再び圧縮機31に戻る冷凍サイクルを繰り返すことで、冷却水槽20内の冷却水は蒸発器35の周囲で冷却されて漸次凍結する。次に、制御装置40は、ステップ104において、ガスセンサ37の検出に基づいて冷凍装置30から冷媒が漏出しているか否かを判定する。冷凍装置30から冷媒が漏出していなければ、制御装置40は、ステップ104において、「NO」と判定してステップ102に戻す。
【0021】
制御装置40は、冷却水槽20内の冷却水が蒸発器35の周囲で所定厚の氷となるまでステップ102〜104の処理を繰り返し実行しているなかで、蒸発器35の周囲に所定厚の氷が形成されると、ステップ102において、氷厚センサ36の検出に基づいて「YES」と判定し、ステップ105に進める。制御装置40は、ステップ105において、圧縮機31と、凝縮器32の冷却ファン32bを停止させて、冷凍装置30による冷却水槽20内の冷却を停止させる。次に、制御装置40は、ステップ106において、ガスセンサ37の検出に基づいて冷凍装置30から冷媒が漏出しているか否かを判定する。冷凍装置30から冷媒が漏出していなければ、制御装置40は、ステップ106において、「NO」と判定してステップ102に戻す。
【0022】
このように、制御装置40は、ステップ104または106において、冷凍装置30から冷媒が漏出しているか否かを判定しながら、蒸発器35の周囲に所定厚の氷が形成されるようにステップ102〜106の処理を繰り返し実行しているなかで、ステップ103により圧縮機31と凝縮器32の冷却ファン32bとを作動させているときに、冷凍装置30の冷媒が漏出すると、制御装置40は、ステップ104において、ガスセンサ37の検出に基づいて「YES」と判定して、ステップ107に進める。制御装置40は、ステップ107において、圧縮機31を停止させるが、冷却ファン32bを停止させずに引き続き所定時間として30分間作動させる。また、制御装置40は、報知器13のランプを点灯させることで冷凍装置30の冷媒の漏出を報知させる。
【0023】
また、制御装置40は、上述したようにステップ102〜106の処理を繰り返し実行しているなかで、ステップ105により圧縮機31と凝縮器32の冷却ファン32bとを停止させているときに、冷凍装置30の冷媒が漏出すると、制御装置40は、ステップ106において、ガスセンサ37の検出に基づいて「YES」と判定して、ステップ108に進める。制御装置40は、ステップ108において、冷却ファン32bを所定時間として30分間作動させる。また、制御装置40は、報知器13のランプを点灯させることで冷凍装置30の冷媒の漏出を報知させる。
【0024】
このように、蒸発器35の周囲に所定厚の氷が形成されるように圧縮機31と凝縮器32の冷却ファン32bとを断続的に作動させているときに、冷凍装置30の冷媒がハウジング11内に漏出しても、漏出した冷媒は冷却ファン32bにより機械室11aの上部に吸い上げられて各通気口11bからハウジング11外に広く拡散される。これにより、漏出した冷媒がハウジング11内の下部に滞留したり、ハウジング11の下部から通気開口11cを通ってハウジング11の下側と接地面との間で滞留して発火する危険濃度とならない。また、凝縮器32の冷却ファン32bは冷凍装置30から漏出した冷媒を検出したときに所定時間作動させるように制御されているので、冷却ファン32bを冷媒の漏出の有無に関わらず連続運転させるときと比べてその寿命を長くすることができる。また、冷凍装置30の冷媒の漏出を報知器13により報知されるので、ビールディスペンサ10を設置した部屋の換気や火気の使用について注意を喚起することができる。また、冷媒の漏出が報知器13により報知されるので、冷媒の減少による冷凍装置30の冷却効率の低下を早期に知ることができ、修理の対応が早くなる。
【0025】
(第2実施形態)
第2実施形態のビールディスペンサ10Aは、図5に示すように、第1実施形態のビールディスペンサ10のハウジング11の機械室11aの下部に送風ファン38をさらに備えたものである。この送風ファン38は、冷凍装置30から冷媒が漏出したときに、漏出した冷媒をハウジング11外に広く拡散させるためのものである。このビールディスペンサ10Aの他の構成は、上述した第1実施形態と同様である。
【0026】
このビールディスペンサ10Aは制御装置40を備えており、図6に示すように、この制御装置40には報知器13、撹拌モータ23、圧縮機31、冷却ファン32b、氷厚センサ36、ガスセンサ37及び送風ファン38が接続されている。制御装置40はマイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続されたCPU、RAM、ROM及びタイマ(いずれも図示省略)を備えている。CPUは、氷厚センサ36及びガスセンサ37の各検出に基づいて、報知器13、圧縮機31、冷却ファン32b及び送風ファン38の作動を制御するプログラムを実行する。
【0027】
次に、上記のように構成したビールディスペンサ10Aの作動を図7に示すフローチャートを用いて説明する。図7に示すように、制御装置40は、ステップ201において、撹拌モータ23を作動させて、冷却水槽20内の冷却水を撹拌して水温を均一にするとともに、飲料冷却管21を通過するビールが冷却水と熱交換しやすくする。制御装置40は、ステップ202において、氷厚センサ36の検出により所定厚の氷が形成されたか否かを判定し、所定厚の氷が形成されていないときには、「NO」と判定して、ステップ203に進める。制御装置40は、ステップ203において、圧縮機31と、凝縮器32の冷却ファン32bを作動させる。これにより、圧縮機31から圧送された冷媒は、凝縮器32、ドライヤ33、キャピラリーチューブ34、蒸発器35を通り、再び圧縮機31に戻る冷凍サイクルを繰り返すことで、冷却水槽20内の冷却水は蒸発器35の周囲で冷却されて漸次凍結する。次に、制御装置40は、ステップ204において、ガスセンサ37の検出に基づいて冷凍装置30から冷媒が漏出しているか否かを判定する。冷凍装置30から冷媒が漏出していなければ、制御装置40は、ステップ204において、「NO」と判定してステップ202に戻す。
【0028】
制御装置40は、冷却水槽20内の冷却水が蒸発器35の周囲で所定厚の氷となるまでステップ202〜204の処理を繰り返し実行しているなかで、蒸発器35の周囲に所定厚の氷が形成されると、ステップ202において、氷厚センサ36の検出に基づいて「YES」と判定し、ステップ205に進める。制御装置40は、ステップ205において、圧縮機31と、凝縮器32の冷却ファン32bを停止させて、冷凍装置30による冷却水槽20内の冷却を停止させる。次に、制御装置40は、ステップ206において、ガスセンサ37の検出に基づいて冷凍装置30から冷媒が漏出しているか否かを判定する。冷凍装置30から冷媒が漏出していなければ、制御装置40は、ステップ206において、「NO」と判定してステップ202に戻す。
【0029】
このように、制御装置40は、ステップ204または206において、冷凍装置30から冷媒が漏出しているか否かを判定しながら、蒸発器35の周囲に所定厚の氷が形成されるようにステップ202〜206の処理を繰り返し実行しているなかで、ステップ203により圧縮機31と凝縮器32の冷却ファン32bとを作動させているときに、冷凍装置30の冷媒が漏出すると、制御装置40は、ステップ204において、ガスセンサ37の検出に基づいて「YES」と判定して、ステップ207に進める。制御装置40は、ステップ207において、圧縮機31と冷却ファン32bを停止させ、送風ファン38を所定時間として30分間作動させる。また、制御装置40は、報知器13のランプを点灯させることで冷凍装置30の冷媒の漏出を報知させる。
【0030】
また、制御装置40は、上述したようにステップ202〜206の処理を繰り返し実行しているなかで、ステップ205により圧縮機31と凝縮器32の冷却ファン32bとを停止させているときに、冷凍装置30の冷媒が漏出すると、制御装置40は、ステップ206において、ガスセンサ37の検出に基づいて「YES」と判定して、ステップ208に進める。制御装置40は、ステップ208において、送風ファン38を所定時間として30分間作動させる。また、制御装置40は、報知器13のランプを点灯させることで冷凍装置30の冷媒の漏出を報知させる。
【0031】
このように、蒸発器35の周囲に所定厚の氷が形成されるように圧縮機31と凝縮器32の冷却ファン32bとを断続的に作動させているときに、冷凍装置30の冷媒がハウジング11内に漏出しても、漏出した冷媒は送風ファン38により各通気口11bまたは通気開口11cからハウジング11外に広く拡散される。これにより、漏出した冷媒がハウジング11内の下部に滞留したり、ハウジング11の下側と接地面との間で滞留して発火する危険濃度とならない。また、冷凍装置30の冷媒が漏出したことが報知器13により報知されるので、ビールディスペンサ10を設置した部屋の換気や火気の使用について注意を喚起することができる。また、冷媒の漏出が報知器13により報知されるので、冷媒の減少による冷凍装置30の冷却効率の低下を早期に知ることができ、修理の対応が早くなる。また、この実施形態では、冷凍装置30から冷媒が漏出したときに、送風ファン38を作動させて冷媒を拡散させているが、凝縮器32の冷却ファン32bを同時に作動させればさらに冷媒の拡散の効率を高めることができる。また、この実施形態では、凝縮器32は冷却ファン32bによる空冷式のものであるが、冷媒が漏出したときの送風ファン38を備えたので、凝縮器に水冷式または自然冷却式のものを用いても、冷凍装置30から漏出した冷媒を拡散させることができる。また、送風ファン38は凝縮器32の冷却ファン32bを用いたときと比べて設置場所の制限が少ないので、送風ファン38を冷媒の漏出の可能性の高い冷媒管の溶接箇所や冷媒の滞留しやすい箇所の近傍に自由に配置することができる。
【0032】
上記の各実施形態では、特許請求の範囲に記載の冷媒漏出検出手段としてガスセンサ37を用いたもので説明したが、本発明は冷媒漏出手段はガスセンサ37による検出に限られるものでない。例えば、冷凍装置30から冷媒が漏出すると冷媒通路である冷媒管30aの圧力が低下するので、冷媒管30aに圧力センサを設け、制御装置40は圧力センサの検出圧力の低下に基づいて冷媒漏出を検出し、拡散手段(冷却ファン32b、送風ファン38)の作動を制御するようにしてもよい。また、他の例としては、冷凍装置30から冷媒が漏出すると、漏出箇所近傍の温度が漏出時に気化する冷媒により低下するので、例えば冷媒管30a凝縮器32の出口部近傍に温度センサを設け、制御装置40はこの温度センサの検出温度の低下に基づいて冷媒漏出を検出し、拡散手段(冷却ファン32b、送風ファン38)の作動を制御するようにしてもよい。また、他の例としては、冷凍装置30から冷媒が漏出すると圧縮機31の負荷が低下することから、圧縮機31の電流を検出する電流検出器を設け、制御装置40はこの電流検出器の検出電流の低下に基づいて冷媒漏出を検出し、拡散手段(冷却ファン32b、送風ファン38)の作動を制御するようにしてもよい。
【0033】
本実施形態では、冷凍装置30の冷媒にイソブタンを用いて説明したが、本発明はこれに限られるものでなく、ブタン等の他の可燃性冷媒を用いても同様の作用効果を得ることができる。また、本実施形態では、冷凍装置30の冷媒に用いたイソブタンは空気より比重の高いので、漏出した冷媒はハウジング11の下部に滞留する。そのために、ガスセンサ37をハウジング11の下部に設置し、冷却ファン32b、送風ファン38によりハウジング11の下部に滞留した冷媒を拡散させるようにしているが、例えば空気より比重の低い冷媒を用いたときには、ガスセンサ37をハウジング11の上部に設置すると漏出した冷媒を早期に検出することができる。また、このときには、送風ファン38の設置場所を変更する等してハウジング11の上部の空気をハウジング11外に排出させれば、ハウジング11の上部に冷媒が滞留しないようになる。
【符号の説明】
【0034】
10…ビールディスペンサ(飲料ディスペンサ)、11…ハウジング、13…報知器、20…冷却水槽、21…飲料冷却管、22…注出コック、30…冷凍装置、31…圧縮機、32…凝縮器、32a…拡散手段(冷却ファン)、35…蒸発器、37…冷媒漏出検出手段(ガスセンサ)、38…拡散手段(送風ファン)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に収容されて冷却水を貯える冷却水槽と、同ハウジング内に収容されてこの冷却水槽内の冷却水を冷却する冷凍装置と、前記冷却水槽内に設けられて飲料を冷却する飲料冷却管と、この飲料冷却管の流出端部に接続されて飲料を注出する注出機構とを備え、
前記冷凍装置は、可燃性冷媒を圧送する圧縮機と、この圧縮機から圧送される可燃性冷媒を凝縮液化させる凝縮器と、前記冷却水槽内に配設されて凝縮器から送出される液化された可燃性冷媒を気化させることで冷却水を冷却する蒸発器とが順次連結されて、前記冷却水槽内の蒸発器の周囲に所定の厚みの氷を形成するように断続的に作動するように制御された飲料ディスペンサにおいて、
前記ハウジング内には前記冷凍装置の可燃性冷媒の漏出を検出する冷媒漏出検出手段と、前記冷凍装置から漏出した可燃性冷媒を前記ハウジング外に拡散させる拡散手段とを備え、この冷媒漏出検出手段の検出に基づいて前記拡散手段の作動を制御したことを特徴とする飲料ディスペンサ。
【請求項2】
請求項1に記載の飲料ディスペンサにおいて、
前記拡散手段は前記凝縮器を構成する冷却ファンであることを特徴とする飲料ディスペンサ。
【請求項3】
請求項1に記載の飲料ディスペンサにおいて、
前記拡散手段は前記ハウジング内にさらに設けた送風ファンであることを特徴とする飲料ディスペンサ。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の飲料ディスペンサにおいて、
前記冷媒漏出検出手段は前記ハウジング内に設けられた可燃性冷媒を検出するガスセンサであり、このガスセンサによる可燃性冷媒の検出に基づいて前記拡散手段の作動を制御したことを特徴とする飲料ディスペンサ。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか1項に記載の飲料ディスペンサにおいて、
前記冷媒漏出検出手段は前記冷凍装置の冷媒通路に設けられてこの冷媒通路の圧力を検出する圧力センサであり、この圧力センサによる前記冷媒通路内の圧力の低下の検出に基づいて前記拡散手段の作動を制御したことを特徴とする飲料ディスペンサ。
【請求項6】
請求項1〜3の何れか1項に記載の飲料ディスペンサにおいて、
前記冷媒漏出検出手段は前記冷凍装置の冷媒通路の外側に設けられてこの冷媒通路の外側の温度を検出する温度センサであり、この温度センサによる前記冷媒通路の外側の温度の低下の検出に基づいて前記拡散手段の作動を制御したことを特徴とする飲料ディスペンサ。
【請求項7】
請求項1〜3の何れか1項に記載の飲料ディスペンサにおいて、
前記冷媒漏出検出手段は前記圧縮機に供給される電流を検出する電流検出器であり、この電流検出器による電流の低下の検出に基づいて前記拡散手段の作動を制御したことを特徴とする飲料ディスペンサ。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の飲料ディスペンサにおいて、
前記冷凍装置の可燃性冷媒の漏出を報知する報知器をさらに備え、
前記冷媒漏出検出手段によって可燃性冷媒の漏出を検出したときに、前記報知器により可燃性冷媒の漏出を報知するようにしたことを特徴とする飲料ディスペンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−131548(P2012−131548A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286448(P2010−286448)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000194893)ホシザキ電機株式会社 (989)
【Fターム(参考)】