説明

飲料原料含有カプセルの識別

本発明は、カプセル識別部材(6)を有する飲料原料含有カプセル(1)と、飲料原料含有カプセルを受容する飲料生成装置とを備える飲料生成システムであって、飲料生成装置が、カプセル識別部材の情報を読み取るようにカプセル識別部材(6)に物理的に接触する接触手段(8)と、接触手段に接続されるとともに、読み取り情報に応じて飲料生成装置(11)の動作を制御するように設計されている制御手段とを備え、接触手段(8)が、カプセル識別部材(6)に機械的に接触する少なくとも1つの変位可能な検出子(81)と、一方の側で検出子に接触しているとともに他方の側で回路(9)に関連付けられる弾性支持部材(82)とを備え、弾性支持部材のうち一方の側で検出子に接触している部分が、検出子から力が加えられると、力が加えられる方向と部分的に交差するように変形可能に形成されている、飲料生成システムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料生成装置によるカプセルの識別に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2008/090122号には、関連する飲料生成装置の動作パラメータを制御するために外側から物理的に接触されるように設計された識別部材が設けられている飲料原料カプセルが記載されている。識別部材は、バイナリコード状態(0又は1)に対応する孔又は窪みを形成している。識別部材は、外側から視認されないようにカバー手段により覆われることが好ましい。飲料生成装置は、存在する孔又は窪みの影響を受け易い領域でカバー手段を貫通でき、変形させることができ、変位させることができる変位可能な検出子を有している。孔又は窪みとの接触に応じた検出子の変位の程度は、カプセルに関する情報に関連付けられる。変位可能な検出子は、飲料生成装置の制御手段の回路から少し離れて弾性的に位置付けられ、窪み又は孔との接触により回路に選択的に接触する。検出子と回路の接触は、バイナリコード(0又は1)を形成する。変位可能な検出子は、非接触位置への復帰を可能にするように検出子に弾性をもたらすとともに、カプセル由来の湿気から回路を絶縁するように、回路に関連付けられた弾性支持部材により回路から少し離れて弾性的に位置付けられる。弾性支持部材をエラストマ部材、好適にシリコーン部材とすることができる。支持部材の座部に埋め込まれた基部又は挿入された基部を有するピンとして検出子を形成できる。例えば、カプセルの内部へ供給される液体の温度等の飲料生成条件を読み取り情報に応じて制御するように制御手段を設計できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常、識別部材は、顧客がカプセルを内側に導入した後にカプセルケージを閉じる手動操作により移動されて検出子に対して押し付けられる。カプセルと飲料生成装置を上記のように実装する場合、この部材が多くの孔(又は窪み)を摩耗させるか否かに応じて、カプセル識別部材が有する情報を転送するために必要な力が異なることが分かっている。カプセル識別部材の表面に孔が殆どない場合又は多くの窪みがある場合、孔又は窪みの形状を用いることによって、これら情報の全てを取り込むために大きな力を要し、しばしば識別フェーズ中にカプセル識別部が折り曲がってしまう。また、カプセル識別部材の表面に多くの孔がある場合又は窪みが殆どない場合、この部材にはより小さな力が加えられるが、この場合でも、これらの孔全ての存在又は窪みの不存在を検知できなければならない。
【0004】
よって、解決すべき課題は、いずれのケースでも検知エラーを生じずに、表面に多くの孔がある(又は窪みが殆どない)カプセル識別部材又は孔が殆どない(又は多くの窪みがある)カプセル識別部材を同様に読み取ることができる飲料生成装置を提供することにある。
【0005】
他の課題は、カプセル識別部材に同部材を折り曲げずに大きな力を加えることを可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、本発明は、カプセル識別部材を有する飲料原料含有カプセルと、飲料原料含有カプセルを受容する飲料生成装置とを備える飲料生成システムであって、飲料生成装置が、
カプセル識別部材の情報を読み取るようにカプセル識別部材に物理的に接触する接触手段と、
接触手段に接続されるとともに、読み取り情報に応じて飲料生成装置の動作を制御するように設計されている制御手段とを備え、接触手段は、
カプセル識別部材に機械的に接触する少なくとも1つの変位可能な検出子と、
一方の側で検出子に接触しているとともに他方の側で回路に関連付けられる弾性支持部材とを備え、
弾性支持部材のうち一方の側で検出子に接触している部分が、検出子から力が加えられると、力が加えられる方向と部分的に交差するように変形可能に形成されている、飲料生成システムに関する。
【0007】
本発明のシステムでは、外側から物理的に接触されるように設計された識別部材がカプセルに設けられる。識別部材は、(視覚的なバーコードとは対照的に)構造的な方法で情報を符号化する。より正確には、識別部材は、所定の局部的な複数の接触面受け部を備えることができ、同受け部それぞれは、外部の検出部材との接触が形成されるか否かに対応する2つの異なる表面高さ、つまりバイナリコード状態(0又は1)から選択される。表面高さには、例えば、局部的な複数の窪み/孔の深さ又は突出部材の高さの差を対応させることができる。一実施形態では、第1及び第2の接触受け部が設けられる。第1接触受け部を同一深さの孔又は窪みとすることができ、第2接触受け部をより浅い孔又は窪みとすることができ、充填し又はわずかに浮き彫りにしてもよい。可能な変形例では、第1接触受け部は、同一高さの突出要素とされ、第2接触受け部は、より高い突出要素とされる。識別部材を外側から視認できないようにし、かつ飲料生成装置の関連する検出手段により物理的に接触される前に外部に露出しないようにすることが好ましい。この点に関して、識別部材をカバー部材により外側に対して覆うことができ、カバー手段及び/又は識別部材は、例えば、関連する飲料生成装置から検出手段により貫通され、変形され、変位されることにより、被覆状態から識別読み取り状態へ移行できるように設計される。例えばカプセルの識別面に孔又は窪みを設けて、カプセル面の表面構造を変調することにより識別部材を符号化することが好ましい。カプセルの識別面をプラスチック層、アルミニウム層、又はプラスチック−アルミニウム積層等の変位可能、変形可能又は穿孔可能なフィルムにより覆うことができる。カバーは、外側から選択的に穿孔されるように、あるいは孔又は窪みに重なる部分で選択的に変形されるように設計される。他方、カバーは、孔又は窪みに重ならない領域で支持されることにより、少なくともある程度の穿孔又は変形に抵抗できる。あるいは、カバー部材を変化させないままでも、識別被覆状態から識別読み取り状態へカプセルを移行させるように識別部材を操作(変位等)できる。好適な実施形態では、カプセルの蓋の正面に識別部材を形成できる。蓋は、カプセルのカップ状本体に関連付けられ、飲料形成原料を収容する空洞を画定する。蓋の一体部として識別部材を形成できる。例えば、蓋を成形プラスチックで作ることができ、その上に識別部材が成形される。検出システムに必要となる空間を制限するために、蓋の正面に非線形パターンで所定の局部的な複数の接触受け部を配することができる。例えば、蓋の面を覆う実質的に多角形状、星状又は湾曲パターン、あるいは実質的に閉鎖された不規則なパターンで受け部をグループ化することができる。
【0008】
本発明によれば、飲料生成装置は、前述した飲料原料含有カプセルと共に使用するために設計される。飲料生成装置は、カプセルの情報を読み取るためにカプセルに物理的に接触する手段を備える。さらに、飲料生成装置には、接触手段に接続され、読み取り情報に応じて飲料生成装置の動作パラメータを制御するように設計された制御手段が設けられる。
【0009】
接触手段は、カプセル識別部材に機械的に接触する少なくとも1つの変位可能な検出子を備える。制御手段は、カプセル識別部材との接触に応じた検出子の変位の程度に関連して識別情報を検出する少なくとも1つの検出子を伴って構成される。より具体的に、少なくとも1つの変位可能な検出子は、制御手段の回路から少し離れて弾性的に配され、カプセルとの接触に応じて回路と選択的に接触する。検出子と回路の接触は、所定のバイナリコード状態(0又は1)を形成し、検出子と回路の非接触は、他のバイナリコード状態を形成する。
【0010】
基部を有するピンとして検出子を形成できる。基部は、弾性支持部材に支えられていることが好ましい。検出子の先端は、識別部材を覆うカバーの穿孔を目的とすることができる。接触手段は、カプセルの所定の局部的な複数の接触受け部に接触する同一の変位可能な複数のピンを備える。通常、少なくとも1つの変位可能な検出子は、ピンである。ピンは、鋭利な傾斜端部を形成することが好ましい。この形状は、識別部材が再び覆われるときにカバーの穿孔を容易にする。
【0011】
接触手段は、一方の側で少なくとも1つの検出子に接触しており他方の側で回路に関連付けられる弾性支持部材を備える。この弾性支持部材は、非接触位置への復帰を可能にする弾性を検出子にもたらすとともに、カプセル由来の湿気からの回路の絶縁をもたらす。弾性支持部材を、例えば、好適にはシリコーン又はEPDM(エチレンプロピレンジエンモノマー)ゴムで作られたエラストマ部材とすることができる。弾性支持部材が他方の側で回路に関連付けられるので、制御手段の回路の関連する接触を選択的に開放するように検出子を変位させることができる。識別システムのサイズを著しく低減するために、識別回路を印刷回路とすることができる。印刷回路を数mmの幅とすることができ、飲料生成装置のうちカプセルの筐体に隣接する僅かな空間に挿入することができる。例えば、印刷回路の厚さは、0.5〜3mmである。印刷回路は、例えば、符号化された状態をもたらすように複数の検出子により選択的に開成又は閉成される複数の印刷回路を備える。
【0012】
本発明によれば、弾性支持部材のうち検出子に接触している部分が、検出子から力が加えられると、力が加えられる方向と部分的に交差するように変形可能に形成されている。弾性支持部材のうち検出子に接触している部分は、検出子から力が加えられると、検出子から力が加えられる長手方向に沿って変形した後に、力が加えられる方向と交差する方向に沿って変形可能に形成されていることが好ましい。
【0013】
弾性支持部材のうち検出子に接触している部分の横方向の変形によって、カプセル識別部材を折り曲げずに検出子により弾性支持部材に大きな力を加えることができる。実際のところ、力が大きくなるほど弾性支持部材の横方向の変形が大きくなる。この横方向の変形は、力の一部を吸収し、カプセル識別部材の折り曲げを回避させる。
【0014】
多くの孔の存在(又は窪みの不存在)によって、より小さな力が同部材に加えられると、弾性支持部材のうち孔の不在(又は窪みの存在)に面する部分は、力が加えられた少なくとも長手方向に沿って変形して回路に接触する。
【0015】
飲料生成装置の接触手段が複数の検出子を備える場合、弾性支持部材のうち各検出子に接触している各部分は、部分的に横方向に変形できる同一の形状を形成している。
【0016】
好適な態様によれば、弾性支持部材のうち検出子に接触している部分の一方の側は中空円柱部を形成しており、弾性支持部材のうち回路に関連付けられる部分の他方の側は円錐部を形成している。弾性支持部材は、シートであり、
弾性支持部材上では、弾性支持部材のうち検出子に接触している部分の一方の側に中空円柱部が突出しており、
弾性支持部材内では、弾性支持部材のうち回路に関連付けられる部分の他方の側に円錐部が刳り貫かれていることが好ましい。力が加えられなくなると直ぐに初期の形状及び位置に容易に復帰できるように円錐部と中空部をシートに取り付けることが好ましい。このため、中空円柱部と円錐部の接続部の面では、中空円柱部の方向にシートを傾けることが好ましい。
【0017】
通常、接触手段は、弾性支持部材と回路の間に導電手段を備える。導電手段は、弾性支持部材と回路の間に配された層に固定された不連続導電部を備えることができる。不連続導電部は、好ましくは層のうち回路に面する側に固定されており、より好ましくは回路のうち短絡可能な領域に面している。
【0018】
第1の態様によれば、層はエラストマ材、好ましくはシリコーン又はEPDMゴムで作られており、導電部は黒鉛で作られている。このような層は、カプセル内で生成され得る湿気から回路を絶縁させる利点を有する。
【0019】
第2の態様によれば、層がフィルムであり、不連続導電部がフィルムに付着されており、弾性支持部材と層の間に防水材層が配されている。この第2の態様では、フィルムは、空気を通過させる小さな孔が形成されることになる単一のプラスチックフィルムとすることができる。防水材層をPET/アルミニウム/PP、PE/EVOH/PP、PET/金属化(Metallised)/PP、アルミニウム/PPの積層から選択できる。
【0020】
制御手段は、読み取り情報に応じて、例えばカプセルの内部へ供給される液体の温度等の飲料生成条件を制御するように設計される。接触手段は、所定パターンを形成してカプセルの所定の局部的な面受け部に選択的に機械的に接触する複数の変位可能なピンを備えることができる。制御手段は、カプセルに対するピンの変位の程度により識別情報を検出するように設計できる。制御手段は、読み取り情報に応じて飲料生成温度及び/又は淹出中断時間を制御するように設計されることが好ましい。特に、制御手段は、異なる特性及び/又は産地の茶葉原料を収容するカプセルに応じた異なる淹出茶飲料を淹出する際の水温パラメータ、流量及び/又は淹出中断時間を変化させるように設計される。
【0021】
飲料生成装置を茶、コーヒー及び/又は他の飲料を生成するように設計できる。
【0022】
本発明の特徴及び利点は、以下の図面に関連してより良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】飲料原料含有カプセルから識別情報を読み取るように設計された本発明に係るシステムを示す概観図である。
【図2】検出手段に関連付けられ得る印刷回路基板を示す図である。
【図3】本発明のシステムに用いられる弾性支持部材を示す正面斜視図である。
【図4】本発明のシステムに用いられる弾性支持部材を示す背面斜視図である。
【図5a】検出子の力に屈した弾性支持部材がどのように変形するかを示す図である。
【図5b】検出子の力に屈した弾性支持部材がどのように変形するかを示す図である。
【図5c】検出子の力に屈した弾性支持部材がどのように変形するかを示す図である。
【図5d】検出子の力に屈した弾性支持部材がどのように変形するかを示す図である。
【図6】関連する導電手段を伴う図4の弾性支持部材の正面斜視図に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一態様では、一般に、飲料生成装置11の飲料生成位置に配されたカプセル1から飲料を生成するように飲料生成装置11が設計されている。図1に示すように、カプセルは、飲料原料5を収容する専用隔室を有している。飲料生成装置11の制御部10により制御された液体は、カプセルに収容された原料5と相互作用するようにカプセル1に入れられる。飲料生成装置11からは、相互作用の結果、つまり生成された飲料又は液状食品4を得ることができる。液体3と原料5の間の相互作用の典型例は、淹出、混合、抽出、溶解等である。飲料隔室には様々な種類の原料が存在し得、カプセルでは様々な種類の相互作用が生じ得る。図1に示すようなシステムには、読み取られた識別データを制御部10へ転送するために、カプセル1から識別データを検索する(「読み取る」)手段が設けられている。制御部10は、読み取られた識別データの内容に応じて飲料生成装置11の後続する生成サイクルの動作を制御できる。識別データは、カプセル及び/又は原料のパラメータを参照できる。本発明に係るカプセル1には、符号化された識別情報を伴う識別部材6が設けられている。カプセル1の表面構造の変調により情報を符号化することが好ましい。例えば、孔又は窪みにより1つの論理状態(「0」等)を表すことができ、他の表面状態(「窪みなし」又は「孔なし」)により他の論理状態(「1」等)を表すことができる。識別部材6を外側に露出せず、通常は外側から視認できないようにカプセル1に配することが好ましい。この点に関して識別部材6用のカバー7を設けることができる。カバー7は、識別部材6に関して美観及び/又は保護の目的を果たす。カバー7と識別部材6は、カプセルの一部であり、当初は識別部材を保護する状態に配されている。飲料生成装置の接触手段8は、システムのカバー手段/識別部材を被覆状態から識別読み取り状態とするように、システムのカバー手段/識別部材を操作できる。識別読み取り状態では、検出手段は、識別部材内に符号化された情報を視覚的に、又は機械的接触により読み取ることができる。操作は、識別部材6及び/又はカバー手段7に関して生じ得る。カバー7は、検出プロセスが実行されない限り、完全な被覆機能のみを果たす。検出プロセスとともに、後述するように、例えば少なくとも部分的にカバー7を除去し、変位させ、変形させ、又は穿孔することができる。あるいは、カバー7は、情報読み取りプロセス中に、カバーの下に配された識別部材の表面形状に従うように撓まされる。この点に関して、カバー7の下に配された識別部材6の表面構造を読み取るために外側から撓ませることができる柔軟なカバー7を採用できる。飲料生成装置11には、識別部材6の表面構造を変調することにより符号化された情報を読み取るように設計された接触手段8が設けられている。このような検出を物理的な機械的接触を用いて行うことが好ましい。この点に関して、好適には、接触手段8は、情報読み取りプロセス中に、カプセル1の識別部材6に対して押し付けられる変位可能な複数のピン81を有することができる。ピン81と識別部材6の間の接触領域における識別部材の表面構造の具体的な形状に応じて、ピン81は、カプセル1に向けて多少突出することができる。
【0025】
ピン81は、好適にはシリコーン等の電気的絶縁材の層で作られた弾性支持部材82を用いて電子回路基板9から絶縁されている。この部材82は、カプセルに向けてピン81をわずかに押し付けてカプセルの識別部材の頂部に設けられたカバーを穿孔し、又は変形させるために必要な押し付け力をもたらす。各ピン81には支持部材82の一部に接触しているフランジ83を設けることができる。ピンは、弾性支持部材82よりも硬いことが好ましい。ピンを金属又は硬質プラスチックで作ることができる。ピン81の相対変位は、その正面でピン81に接触している弾性支持部材82に伝達される。弾性支持部材82は、その後面で回路9に関連付けられている。ピンの機械的変位は、電子信号に変換される。生成された電気検出信号を制御部10により処理できる。制御部10は、カプセルから読み取られた識別データの関数として、例えば供給される液体3の流量及び温度並びに相互作用時間等(但し、これらに限定されない。)の飲料生成プロセス用パラメータを設定する。
【0026】
図1に示す状態では、図示される1つのピン81だけが識別部材6の孔61に面している。よって、この特定のピンが読み取り中に後方へ押されないので、印刷回路基板9の専用部分の電気的短絡を選択的に生成するように設計された電気的マイクロスイッチが作動しない。対照的に、他の3つのピンは、識別部材6の孔に面しておらず、識別部材6の表面構造へ摺動できない。よって、3つのピンがわずかに後方へ(図1では左側へ)押されるので、フランジ83に接触している弾性支持部材82のシリコーン材料の部分を押して導電性マイクロスイッチを印刷回路基板9に向けて作動させる(つまり導電状態に移行させる。)。この点に関して、弾性支持部材82と印刷回路基板9の間には、スイッチの閉成に対応する所定の短絡を印刷回路基板9上で選択的に生成できる導電手段12、121を挿入できる。図1では、図示される導電手段は、例えばシリコーンで作られた層12であり、層12のうち印刷回路基板9に面する一側は、弾性支持部材82の変形可能部分及び印刷回路基板9の短絡し得る領域に面する位置に導電部分121を形成している。
【0027】
図2は、印刷回路基板9の詳細を示している。参照符号91は、選択的に短絡し得る領域を示している。
【0028】
図3は、本発明に実装され得る弾性支持部材82を示している。この弾性支持部材82は、一方の側821で検出手段に接触可能であり他方の側で回路9に関連付けられた6つの部分を形成する弾性材料の平坦なシート823である。この側821で検出手段に接触可能な部分の全ては、弾性支持部材のシート823から突出する中空円柱部822を形成している。円柱部の直径は、ピンが中空円柱部822の縁部全てに力を分散できるように、通常、ピン81のフランジ82のサイズに適合されている。
【0029】
図4は、同一の弾性支持部材82の他方の側を示している。この側で回路9に関連付けられ得る6つの部分の全ては、弾性材料の平坦なシート823を刳り貫いた円錐部825を形成している。平坦なシート823のコーナの孔826とシート823の縁部全周のリップ827は、カプセルの識別部材を受容する飲料生成装置の一部に対する弾性支持部材82の取付けを可能にする。
【0030】
図6は、弾性支持部材82と回路の間に配された不連続導電部121の位置を示している。円錐部825の移動は、これら導電片121の移動と、短絡し得る回路の領域との接触をもたらす。これら不連続導電部121は、弾性支持部材82と回路の間に配された層12(点線で示されている。)に固定されている。不連続導電部は、回路に接触できるように層のうち回路に面する側に固定されている。
【0031】
図5a、5b、5c及び5dは、弾性支持部材82の縦断面図であり、検出子に接触している弾性支持部材の6つの部分の1つが検出子81の力に屈するときにどのように変形するかを示している。
【0032】
図5aは、静止状態の弾性支持部材を示しており、検出手段82に面する側821では、弾性支持部材の平坦なシート823から突出する中空円柱部822は、フランジ83を伴うピン81により表された検出手段に接触していない。導電層12に面する側824では、円錐部825は、印刷回路基板9に対して導電層12、121を押し付けていない。
【0033】
図5bは、カバー7により覆われた識別部材6と接触し始める検出手段81に接触する弾性支持部材を示している。この図では、検出手段81は、識別部材6の孔61に面している。検出手段81の鋭利な先端811によって、孔61の上方のカバー7を穿孔して識別部材6を右側から左側へ移動させるのに小さな力のみが必要となる。中空円柱部822の端部の力fは、弾性支持部材を変形させるのに十分なほど強くない。
【0034】
図5cは、識別部材6の孔61に面していない検出手段81に接触する弾性支持部材を示している。右側から左側への識別部材6の移動は、図5bの状態で加えられる力fよりも大きな力Fをもたらす。この力F1は、円錐部825の長手方向の移動をもたらし、短絡される領域91の面で印刷回路基板9に対して層12及び導電部121を押し付け、そして印刷回路基板9で電気的接触を作り出すことができる。
【0035】
図5dは、例えば識別部材に孔が殆どない場合に弾性支持部材82に大きな力F2が加えられなければならないときに、識別部材6の孔61に面していない検出手段81に接触する弾性支持部材82を示している。この大きな力F2は、中空円柱部822を横方向に変形させる。従来技術とは対照的に、弾性支持部材が力に抵抗せず、識別部材が折り曲げられない。
【0036】
静止状態、つまり、弾性支持部材82に力が加えられないときには(図5a及び5bに示されるように)、中空円柱部822と円錐部825との接続部827では、中空円柱部の方向にシートが傾斜していることを見て取ることができる。この傾斜によって、弾性支持部材82に加えられる力F1、F2(図5a及び5bに示すように)が無くなると、円錐部は、図5aに示すような静止位置へ直ちに戻る。
【0037】
本発明では、力の一部が力の方向と交差する方向に発散することにより、カプセル識別部材を折り曲げずに同部材に大きな力を加えることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル識別部材(6)を有する飲料原料含有カプセル(1)と、前記飲料原料含有カプセルを受容する飲料生成装置とを備える飲料生成システムであって、前記飲料生成装置が、
前記カプセル識別部材の情報を読み取るように前記カプセル識別部材(6)に物理的に接触する接触手段(8)と、
前記接触手段に接続されるとともに、前記読み取り情報に応じて前記飲料生成装置(11)の動作を制御するように設計されている制御手段とを備え、前記接触手段(8)が、
前記カプセル識別部材(6)に機械的に接触する少なくとも1つの変位可能な検出子(81)と、
一方の側で前記検出子に接触しているとともに他方の側で回路(9)に関連付けられる弾性支持部材(82)とを備え、
前記弾性支持部材のうち一方の側で前記検出子に接触しているとともに他方の側で前記回路(9)に関連付けられる部分が、前記検出子から力が加えられると、前記力が加えられる方向と部分的に交差するように変形可能に形成されている、飲料生成システム。
【請求項2】
前記弾性支持部材のうち前記検出子に接触している前記部分が、前記検出子から力が加えられると、前記検出子から力が加えられる長手方向に沿って変形した後に、前記力が加えられる方向と交差する方向に沿って変形するように形成されている、請求項1に記載の飲料生成システム。
【請求項3】
前記弾性支持部材(82)がエラストマ材料で作られている、請求項1又は2に記載の飲料生成システム。
【請求項4】
前記弾性支持部材がシリコーン又はEPDMゴムで作られている、請求項3に記載の飲料生成システム。
【請求項5】
前記弾性支持部材のうち前記検出子に接触している前記部分の一方の側が中空円柱部を形成しており、前記弾性支持部材のうち前記回路に関連付けられる前記部分の他方の側が円錐部を形成している、請求項1〜4のいずれか一項に記載の飲料生成システム。
【請求項6】
前記弾性支持部材がシートであり、
前記弾性支持部材上では、前記弾性支持部材のうち前記検出子に接触している前記部分の一方の側に中空円柱部が突出しており、
前記弾性支持部材内では、前記弾性支持部材のうち前記回路に関連付けられる前記部分の他方の側に円錐部が刳り貫かれている、請求項4に記載の飲料生成システム。
【請求項7】
前記接触手段が、前記弾性支持部材(82)と前記回路(9)の間に配された層(12)に固定された不連続導電部(121)を備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の飲料生成システム。
【請求項8】
前記不連続導電部(121)が、前記層(12)のうち前記回路(9)に面する側に固定されている、請求項7に記載の飲料生成システム。
【請求項9】
前記不連続導電部(12)が、前記回路(9)のうち短絡可能な領域(91)に面している、請求項8に記載の飲料生成システム。
【請求項10】
前記層が、エラストマ材、好適にはシリコーン又はEPDMゴムで作られており、前記不連続導電部(121)が黒鉛で作られている、請求項7〜9のいずれか一項に記載の飲料生成システム。
【請求項11】
前記層(12)がフィルムであり、前記不連続導電部(121)が前記フィルムに付着されており、前記弾性支持部材(82)と前記層(12)の間に防水材層が配されている、請求項7〜9のいずれか一項に記載の飲料生成システム。
【請求項12】
前記飲料生成装置が、前記カプセル(1)との接触に応じた前記検出子の変位の程度に関連して識別情報を検出する少なくとも1つの前記検出子(81)を伴って構成される制御手段(8)を備える、請求項1〜11のいずれか一項に記載の飲料生成システム。
【請求項13】
少なくとも1つの変位可能な前記検出子(81)と、前記弾性支持部材のうち前記検出子に結合される前記部分とが、前記カプセルに対する前記検出子の接触に応じて選択的に移動し、関連付けられた前記回路に接触し、前記検出子の接触、前記弾性支持部材と関連する前記回路の結合が所定のバイナリコード状態(0又は1)を形成し、前記検出子の非接触、前記弾性支持部材と関連する前記回路の結合が他のバイナリコード状態(1又は0)を形成している、請求項1〜12のいずれか一項に記載の飲料生成システム。
【請求項14】
前記接触手段が、前記カプセルの所定の局部的な接触受け部に接触する同一で変位可能な複数のピンを備える、請求項1〜13のいずれか一項に記載の飲料生成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−514820(P2013−514820A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543845(P2012−543845)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070269
【国際公開番号】WO2011/076750
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】