説明

飲料及びその製造方法、添加用組成物

【課題】香味が効果的に増強された飲料及びその製造方法、飲料の香味を効果的に増強する添加用組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る飲料の製造方法は、ホップに由来する香味成分を含有する飲料の製造方法であって、低級脂肪酸又はそのエステルを添加することを含む。また、本発明に係る飲料の製造方法は、モノテルペンアルコールを含有する飲料の製造方法であって、低級脂肪酸又はそのエステルを添加することを含む。この場合、モノテルペンアルコールは、例えば、リナロール及び/又はゲラニオールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料及びその製造方法、添加用組成物に関し、特に、飲料における香味の増強に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、ミルク入り飲料にイソ吉草酸エチルを0.1〜25ppb添加することで、オフフレーバーがマスキングされ、ミルク成分のコクを付与できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−75178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、ホップを原料の一部として使用する飲料の製造においては、当該ホップの種類や量等、当該ホップの使用条件によって、当該ホップに由来する香味の強さが変動する。この点、例えば、ホップの使用条件を変更することなく、飲料における当該ホップに由来する香味の強さを増強させることができれば有用である。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、香味が効果的に増強された飲料及びその製造方法、飲料の香味を効果的に増強する添加用組成物を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る飲料の製造方法は、ホップに由来する香味成分を含有する飲料の製造方法であって、低級脂肪酸又はそのエステルを添加することを含むことを特徴とする。本発明によれば、香味が効果的に増強された飲料の製造方法を提供することができる。
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る飲料の製造方法は、モノテルペンアルコールを含有する飲料の製造方法であって、低級脂肪酸又はそのエステルを添加することを含むことを特徴とする。本発明によれば、香味が効果的に増強された飲料の製造方法を提供することができる。この場合、前記モノテルペンアルコールは、リナロール及び/又はゲラニオールであることとしてもよい。
【0008】
また、上記製造方法において、前記低級脂肪酸は、炭素数が2〜9の脂肪酸であることとしてもよい。この場合、前記低級脂肪酸は、イソ吉草酸、イソ酪酸、2−メチル酪酸、吉草酸及び酪酸からなる群より選択される1種又は2種以上であることとしてもよい。
【0009】
また、上記製造方法において、前記低級脂肪酸は、炭素数が5の脂肪酸であり、前記低級脂肪酸又はそのエステルを0.001ppm以上添加することとしてもよい。この場合、前記低級脂肪酸は、イソ吉草酸、2−メチル酪酸及び吉草酸からなる群より選択される1種又は2種以上であることとしてもよい。
【0010】
また、上記製造方法において、前記低級脂肪酸は、炭素数が4の脂肪酸であり、前記低級脂肪酸又はそのエステルを0.1ppm以上添加することとしてもよい。この場合、前記低級脂肪酸は、イソ酪酸及び酪酸からなる群より選択される1種又は2種以上であることとしてもよい。
【0011】
また、上記製造方法は、酵母を使用してアルコール発酵を行うことを含むこととしてもよい。この場合、前記低級脂肪酸又はそのエステルを前記アルコール発酵の後に添加することとしてもよい。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る飲料は、前記いずれかの製造方法により製造されたことを特徴とする。本発明によれば、香味が効果的に増強された飲料を提供することができる。
【0013】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る飲料は、ホップに由来する香味成分を含有する飲料であって、低級脂肪酸又はそのエステルが添加されたことを特徴とする。本発明によれば、香味が効果的に増強された飲料を提供することができる。
【0014】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る飲料は、モノテルペンアルコールを含有する飲料であって、低級脂肪酸又はそのエステルが添加されたことを特徴とする。本発明によれば、香味が効果的に増強された飲料を提供することができる。この場合、前記モノテルペンアルコールは、リナロール及び/又はゲラニオールであることとしてもよい。
【0015】
また、上記飲料において、前記低級脂肪酸は、炭素数が2〜9の脂肪酸であることとしてもよい。この場合、前記低級脂肪酸は、イソ吉草酸、イソ酪酸、2−メチル酪酸、吉草酸及び酪酸からなる群より選択される1種又は2種以上であることとしてもよい。
【0016】
また、上記飲料において、前記低級脂肪酸は、炭素数が5の脂肪酸であり、上記飲料は、前記低級脂肪酸又はそのエステルを0.001ppm以上含有することとしてもよい。この場合、前記低級脂肪酸は、イソ吉草酸、2−メチル酪酸及び吉草酸からなる群より選択される1種又は2種以上であることとしてもよい。
【0017】
また、上記飲料において、前記低級脂肪酸は、炭素数が4の脂肪酸であり、上記飲料は、前記低級脂肪酸又はそのエステルを0.1ppm以上含有することとしてもよい。この場合、前記低級脂肪酸は、イソ酪酸及び酪酸からなる群より選択される1種又は2種以上であることとしてもよい。
【0018】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る添加用組成物は、ホップに由来する香味成分と、低級脂肪酸又はそのエステルと、を含有することを特徴とする。本発明によれば、飲料の香味を効果的に増強する添加用組成物を提供することができる。
【0019】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る添加用組成物は、モノテルペンアルコールと、低級脂肪酸又はそのエステルと、を含有することを特徴とする。本発明によれば、飲料の香味を効果的に増強する添加用組成物を提供することができる。この場合、前記モノテルペンアルコールは、リナロール及び/又はゲラニオールであることとしてもよい。
【0020】
また、上記添加用組成物において、前記低級脂肪酸は、炭素数が2〜9の脂肪酸であることとしてもよい。この場合、前記低級脂肪酸は、イソ吉草酸、イソ酪酸、2−メチル酪酸、吉草酸及び酪酸からなる群より選択される1種又は2種以上であることとしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、香味が効果的に増強された飲料及びその製造方法、飲料の香味を効果的に増強する添加用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る実施例において、イソ吉草酸によるアルコール飲料の香味を増強する効果を確認した結果の一例を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る実施例において、イソ酪酸によるアルコール飲料の香味を増強する効果を確認した結果の一例を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る実施例において、2−メチル酪酸によるアルコール飲料の香味を増強する効果を確認した結果の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る実施例において、イソ吉草酸によるノンアルコール飲料の香味を増強する効果を確認した結果の一例を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る実施例において、イソ酪酸によるノンアルコール飲料の香味を増強する効果を確認した結果の一例を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る実施例において、2−メチル酪酸によるノンアルコール飲料の香味を増強する効果を確認した結果の一例を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る実施例において、イソ吉草酸によるリナロール及びゲラニオールの香味を増強する効果を確認した結果の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
【0024】
本発明の発明者は、鋭意検討を重ねた結果、ホップに由来する香味成分を含有する飲料の製造方法において、低級脂肪酸又はそのエステルを添加することにより、当該飲料における当該香味成分の香味が効果的に増強されるという知見を得た。
【0025】
したがって、本実施形態に係る飲料の製造方法(以下、「本方法」という。)は、例えば、ホップに由来する香味成分を含有する飲料の製造方法であって、低級脂肪酸又はそのエステルを添加することを含む方法である。すなわち、本方法においては、低級脂肪酸又はそのエステルを外的に添加することにより、飲料におけるホップに由来する香味成分の香味を増強する。
【0026】
さらに、本発明の発明者は、鋭意検討を重ねた結果、より具体的に、ホップに由来する香味成分を含有する飲料の製造方法において、低級脂肪酸又はそのエステルを添加することにより、当該香味成分の一種であるモノテルペンアルコールの香味が効果的に増強されるという知見も得た。
【0027】
したがって、本方法は、例えば、モノテルペンアルコールを含有する飲料の製造方法であって、低級脂肪酸又はそのエステルを添加することを含む方法である。すなわち、本方法においては、低級脂肪酸又はそのエステルを外的に添加することにより、飲料におけるモノテルペンアルコールの香味を増強する。
【0028】
ここで、モノテルペンアルコールは、例えば、リナロール、ゲラニオール、α−テルピネオール、ネロール及びシトロネロールからなる群より選択される1種又は2種以上であり、好ましくはリナロール及び/又はゲラニオールである。なお、ホップに由来する香味成分(いわゆる精油成分)としては、上述のモノテルペンアルコール以外に、例えば、ミルセン、フムレンが挙げられる。
【0029】
本方法により製造される飲料は、ホップに由来する香味成分の香味及び/又はモノテルペンアルコールの香味を有する飲料であれば、特に限られない。
【0030】
すなわち、本方法は、例えば、発泡性飲料を製造する方法である。本実施形態において、発泡性飲料は、炭酸ガスを含有する飲料であって、例えば、グラス等の容器に注いだ際に液面上部に泡の層が形成される泡立ち特性と、その形成された泡が一定時間以上保たれる泡持ち特性と、を有する飲料である。
【0031】
具体的に、発泡性飲料は、例えば、EBC(European Brewery Convention:欧州醸造協会)法によるNIBEM値が50秒以上を示す飲料である。NIBEM値は、例えば、ビールの泡持ちを示す指標値として使用されている。NIBEM値は、発泡性飲料を所定の容器に注いだ際に形成された泡の高さが所定量減少するまでの時間(秒)として評価される。NIBEM値が高いほど、発泡性飲料の泡持ち特性が高い(泡持ちが優れている)ことになる。また、本方法は、上述のような泡特性(泡立ち特性及び泡持ち特性)を有しない非発泡性飲料を製造する方法であってもよい。
【0032】
また、本方法は、例えば、アルコール飲料を製造する方法である。本実施形態において、アルコール飲料は、エタノールを1体積%以上の濃度で含有する飲料である。アルコール飲料は、例えば、上述のような泡特性を有する発泡性アルコール飲料である。発泡性アルコール飲料は、例えば、ホップを原料の一部として使用して製造されたものであり、ホップ及び麦芽を含む原料を使用して製造されたものであってもよい。
【0033】
具体的に、発泡性アルコール飲料は、例えば、ホップ及び麦芽を含む原料(例えば、麦芽を66.7重量%以上含む原料)を使用して製造されるビール、又は、ホップと、ビールに比べて少ない量の麦芽と、を含む原料(例えば、麦芽を1.0重量%以上、66.7重量%未満含む原料)を使用して製造される発泡酒、当該発泡酒とスピリッツとを混合することにより製造される発泡性アルコール飲料(日本の酒税法で定義されるリキュール(発泡性))、麦芽を使用せずホップと酵母が資化可能な窒素源及び炭素源とを含む原料を使用して製造される発泡性アルコール飲料である。また、アルコール飲料は、上述のような泡特性を有しない非発泡性アルコール飲料であってもよい。
【0034】
また、本方法は、例えば、ノンアルコール飲料を製造する方法である。本実施形態において、ノンアルコール飲料は、エタノールの含有濃度が1体積%未満の飲料である。ノンアルコール飲料は、例えば、上述のような泡特性を有する発泡性ノンアルコール飲料である。発泡性ノンアルコール飲料は、例えば、ホップを原料の一部として使用して製造されたものであり、ホップ及び麦芽を含む原料を使用して製造されたものであってもよい。また、ノンアルコール飲料は、上述のような泡特性を有しない非発泡性ノンアルコール飲料であってもよい。
【0035】
本方法において使用される低級脂肪酸又はそのエステルは、最終的に得られる飲料におけるホップに由来する香味成分の香味及び/又はモノテルペンアルコールの香味を増強するものであれば特に限られない。
【0036】
すなわち、低級脂肪酸は、例えば、炭素数が2〜9の脂肪酸である。この場合、低級脂肪酸は、例えば、炭素数が3〜7の脂肪酸であってもよく、炭素数が4〜5の脂肪酸であってもよい。これらの低級脂肪酸は、分岐鎖脂肪酸であってもよく、直鎖脂肪酸であってもよい。
【0037】
具体的に、低級脂肪酸は、例えば、イソ吉草酸、イソ酪酸、2−メチル酪酸、吉草酸及び酪酸からなる群より選択される1種又は2種以上である。
【0038】
また、低級脂肪酸のエステルは、例えば、イソ吉草酸エチル、イソ酪酸エチル、2−メチル酪酸エチル、吉草酸エチル及び酪酸エチルからなる群より選択される1種又は2種以上であり、好ましくはイソ吉草酸エチル、イソ酪酸エチル及び2−メチル酪酸エチルからなる群より選択される1種又は2種以上である。
【0039】
本方法において、低級脂肪酸及び/又はそのエステルの添加量は、最終的に得られる飲料において、ホップに由来する香味成分の香味及び/又はモノテルペンアルコールの香味が増強される範囲であれば特に限られない。
【0040】
例えば、低級脂肪酸が、炭素数が5の脂肪酸である場合には、当該低級脂肪酸又はそのエステルを0.001ppm以上添加することが好ましい。すなわち、本方法においては、最終的に得られる飲料の重量に対する、外的に添加される低級脂肪酸又はそのエステルの重量の割合が0.001ppm以上となるように、当該低級脂肪酸又はそのエステルを添加する。
【0041】
また、本方法においては、最終的に得られる飲料の重量に対する、当該飲料に含有される低級脂肪酸又はそのエステルの重量の割合が0.001ppm以上となるように、当該低級脂肪酸又はそのエステルを添加してもよい。なお、添加前の飲料に含有される低級脂肪酸又はそのエステルの量が十分に小さい場合には、添加後の飲料に含有される当該低級脂肪酸又はそのエステルの量は、添加された当該低級脂肪酸又はそのエステルの量に実質的に一致する。
【0042】
上述の濃度は、例えば、0.001〜0.1ppmとしてもよく、0.003〜0.1ppmとしてもよく、0.003〜0.08ppmとしてもよく、0.005〜0.08ppmとしてもよい。低級脂肪酸又はそのエステルの濃度が上述の範囲を下回ると、十分な香味増強効果が得られない場合がある。また、低級脂肪酸又はエステルの濃度が上述の範囲を上回ると、当該低級脂肪酸又はエステル自身の香味の影響が大きくなりすぎる場合がある。
【0043】
炭素数が5の脂肪酸は、例えば、イソ吉草酸、2−メチル酪酸及び吉草酸からなる群より選択される1種又は2種以上である。
【0044】
また、例えば、低級脂肪酸が、炭素数が4の脂肪酸である場合には、当該低級脂肪酸又はそのエステルを0.1ppm以上添加することが好ましい。
【0045】
すなわち、本方法においては、最終的に得られる飲料の重量に対する、外的に添加される低級脂肪酸又はそのエステルの重量の割合が0.1ppm以上となるように、当該低級脂肪酸又はそのエステルを添加する。
【0046】
また、本方法においては、最終的に得られる飲料の重量に対する、当該飲料に含有される低級脂肪酸又はそのエステルの重量の割合が0.1ppm以上となるように、当該低級脂肪酸又はそのエステルを添加してもよい。
【0047】
上述の濃度は、例えば、0.1〜10ppmとしてもよく、0.1〜8ppmとしてもよく、0.1〜6ppmとしてもよく、0.2〜6ppmとしてもよく、0.3〜6ppmとしてもよく、0.3〜5ppmとしてもよい。低級脂肪酸又はそのエステルの濃度が上述の範囲を下回ると、十分な香味増強効果が得られない場合がある。また、低級脂肪酸又はエステルの濃度が上述の範囲を上回ると、当該低級脂肪酸又はエステル自身に由来する香味の影響が大きくなりすぎる場合がある。
【0048】
炭素数が4の脂肪酸は、例えば、イソ酪酸及び酪酸からなる群より選択される1種又は2種以上である。
【0049】
本方法において、低級脂肪酸及び/又はそのエステルを添加する方法は、最終的に得られる飲料において、ホップに由来する香味成分の香味及び/又はモノテルペンアルコールの香味が増強される方法であれば特に限られない。
【0050】
すなわち、本方法においては、例えば、低級脂肪酸及び/又はそのエステルを所定の濃度で含有する溶液等の液状組成物や、当該低級脂肪酸及び/又はそのエステルを含有する粉末、錠剤等の固形組成物を添加する。
【0051】
また、本方法においては、例えば、本実施形態に係る添加用組成物(以下、「本組成物」という。)を添加することにより、低級脂肪酸及び/又はそのエステルを添加することもできる。
【0052】
本組成物は、飲料の製造方法において当該飲料の香味を増強するために添加される組成物であって、低級脂肪酸又はそのエステルと、当該低級脂肪酸又はそのエステルによって増強される香味を生じさせる成分と、を含有する。
【0053】
すなわち、本組成物は、例えば、ホップに由来する香味成分と、低級脂肪酸又はそのエステルと、を含有する。ホップに由来する成分は、例えば、ホップ抽出物として得られる。すなわち、本組成物は、例えば、ホップ抽出物と、低級脂肪酸又はそのエステルと、を含有することとしてもよい。ホップ抽出物は、ホップを溶媒で抽出することにより得られる。溶媒としては、例えば、水(冷水又は温水)、超臨界二酸化炭素(CO)、エタノールが好ましく使用される。
【0054】
また、本組成物は、例えば、モノテルペンアルコールと、低級脂肪酸又はそのエステルと、を含有する。モノテルペンアルコールは、例えば、リナロール、ゲラニオール、α−テルピネオール、ネロール及びシトロネロールからなる群より選択される1種又は2種以上であり、好ましくはリナロール及び/又はゲラニオールである。なお、ホップに由来する香味成分(いわゆる精油成分)としては、上述のモノテルペンアルコール以外に、例えば、ミルセン、フムレンが挙げられる。
【0055】
本組成物に含有されるホップに由来する香味成分、テルペンアルコール、低級脂肪酸又はそのエステルの量は、特に限られず、飲料の製造方法において当該本組成物を添加することで香味の増強効果が得られるよう、適宜調整される。本組成物は、例えば、溶液等の液状組成物であり、また、粉末、錠剤等の固形組成物であってもよい。
【0056】
本方法において、低級脂肪酸及び/又はそのエステルを添加するタイミングは、最終的に得られる飲料において、ホップに由来する香味及び/又はモノテルペンアルコールに由来する香味が増強されるタイミングであれば特に限られない。
【0057】
すなわち、例えば、本方法が酵母を使用してアルコール発酵を行うことを含む方法である場合には、低級脂肪酸及び/又はそのエステルを添加するタイミングは、当該アルコール発酵前又は当該アルコール発酵後であり特に限られないが、最終的に得られる飲料における香味を確実に調整するという点で、当該低級脂肪酸又はそのエステルを当該アルコール発酵の後に添加することが好ましい。
【0058】
低級脂肪酸及び/又はそのエステルをアルコール発酵後に添加する場合、低級脂肪酸及び/又はそのエステルを添加するタイミングは、例えば、当該アルコール発酵後であって、当該アルコール発酵後の発酵液から酵母を除去した後である。
【0059】
ここで、本方法の具体的な一例として、本方法が酵母を使用してアルコール発酵を行うことを含む場合について説明する。すなわち、この場合、本方法は、例えば、ホップを原料の一部として使用して発酵前液を調製する工程(以下、「発酵前工程」という。)と、当該発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う工程(以下、「発酵工程」という。)と、を含む。
【0060】
発酵前工程においては、ホップを準備する。ホップの種類は、特に限られず、任意の1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。ホップの形態は特に限られず、保存や輸送等の目的に応じて適切に加工された任意の形態のものを使用することができる。すなわち、例えば、乾燥させたホップの毬花を圧縮して得られるプレスホップ、乾燥させたホップの毬花を粉砕して得られるホップパウダー、当該ホップパウダーをペレット状に圧縮成形して得られるホップペレット、ホップを水等の溶媒で抽出して得られたホップ抽出物を使用することができる。
【0061】
また、酵母が資化できる窒素源及び炭素源も準備する。すなわち、例えば、麦芽を準備する。麦芽としては、大麦麦芽及び/又は小麦麦芽が好ましく、大麦麦芽が特に好ましい。原料に占める麦芽の割合は、最終的に得られる飲料に付与されるべき特性に応じて任意に決定される。
【0062】
窒素源として、例えば、豆類やコーン等の穀物由来のタンパク質又はペプチドの分解物を使用してもよい。炭素源としては、例えば、コーン等の穀類由来のデンプンの分解物(液糖等)を使用してもよい。これらの分解物を使用する場合、麦芽を使用しないこととしてもよい。
【0063】
発酵前工程においては、上述の原料を使用して発酵前液を調製する。すなわち、まず、原料の全部又は一部と水とを混合することにより原料液(いわゆるマイシェに相当)を調製する。原料が麦芽を含む場合には、さらに、原料液中で麦芽に含まれる分解酵素を作用させる処理(いわゆる糖化処理)を行う。糖化処理後の原料液(いわゆる麦汁に相当)は、濾過し、煮沸する。ホップは、この煮沸の際に添加することが好ましい。
【0064】
その後、原料液から不溶性成分を除去し、当該原料液を冷却する。こうして、発酵前工程においては、続く発酵工程における酵母の添加に適した無菌状態の冷却された発酵前液(いわゆる冷麦汁に相当)を調製する。
【0065】
発酵工程においては、発酵前工程で調製された発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う。すなわち、発酵工程においては、例えば、前発酵と後発酵(貯酒)とを行う。
【0066】
具体的に、まず、予め温度が所定の範囲内(例えば、0℃〜40℃)に調整された無菌状態の発酵前液に酵母を添加して発酵液を調製する。酵母は、アルコール発酵を行うことができるものであれば特に限られず、任意の種類のものを適宜選択して使用することができる。すなわち、例えば、下面発酵酵母や上面発酵酵母等のビール酵母を使用することができ、下面発酵酵母を好ましく使用することができる。発酵開始時の発酵液における酵母の密度は適宜調節することができ、例えば、1×10個/mL〜3×10個/mLの範囲内とすることができる。
【0067】
そして、この発酵液を所定の温度(例えば、6〜15℃)で所定の時間だけ維持することにより前発酵を行う。後発酵は、前発酵後の発酵液をさらに所定の温度(例えば、マイナス3℃〜20℃)で所定の時間だけ維持することにより行う。
【0068】
こうして発酵工程においては、酵母により生成されたエタノールや香味成分を含有する発酵後液を得ることができる。発酵後液に含まれるエタノールの濃度は、例えば、1〜20体積%とすることができ、好ましくは、1〜10体積%とすることができ、より好ましくは、3〜10体積%とすることができる。
【0069】
そして、上述の発酵工程により得られた発酵後液にろ過や殺菌等の所定の処理を施すことにより、最終的な飲料を得る。すなわち、例えば、ビールや発泡酒等の発泡性アルコール飲料が得られる。
【0070】
また、本方法においては、上述のようにして得られた発泡酒にスピリッツを添加することにより発泡性アルコール飲料を製造してもよい。この場合、スピリッツは、穀物を原料として製造されたものが好ましい。すなわち、スピリッツは、例えば、大麦、小麦、米、蕎麦、馬鈴薯、サツマイモ、トウモロコシ、サトウキビを原料として製造された蒸留酒であり、大麦又は小麦を原料として製造された蒸留酒が好ましい。スピリッツに含有されるエタノールの濃度は、例えば、20〜90体積%である。
【0071】
また、本方法においては、アルコール発酵により得られた発泡性アルコール飲料に含まれるエタノールの濃度を低減する処理や、当該発泡性アルコール飲料からエタノールを除去する処理を行うことにより、エタノールの含有濃度が1体積%未満の発泡性ノンアルコール飲料を製造してもよい。
【0072】
本実施形態に係る飲料(以下、「本飲料」という。)は、例えば、ホップに由来する香味成分を含有する飲料であって、低級脂肪酸又はそのエステルが添加された飲料である。すなわち、本飲料は、上述した低級脂肪酸又はそのエステルが外的に添加されることにより、ホップに由来する香味成分の香味が増強された飲料である。
【0073】
また、本飲料は、例えば、モノテルペンアルコールを含有する飲料であって、低級脂肪酸又はそのエステルが添加された飲料である。すなわち、本飲料は、上述した低級脂肪酸又はそのエステルが外的に添加されることにより、上述したモノテルペンアルコールの香味が増強された飲料である。
【0074】
本飲料は、本方法について上述したとおり、ホップに由来する香味成分の香味及び/又はモノテルペンアルコールの香味を有する飲料であれば、特に限られない。すなわち、本飲料は、例えば、発泡性飲料又は非発泡性飲料である。また、本飲料は、例えば、アルコール飲料又はノンアルコール飲料である。また、本飲料は、例えば、発泡性アルコール飲料又は発泡性ノンアルコール飲料である。また、本飲料は、例えば、非発泡性アルコール飲料又は非発泡性ノンアルコール飲料である。
【0075】
本飲料が発泡性アルコール飲料である場合、本飲料は、例えば、ホップを原料の一部として使用して製造されたものである。この場合、本飲料は、例えば、ホップ及び麦芽を含む原料を使用して製造された発泡性アルコール飲料であってもよい。具体的に、本飲料は、例えば、ビール、発泡酒又は当該発泡酒とスピリッツとを混合することにより製造される発泡性アルコール飲料である。
【0076】
本飲料が発泡性ノンアルコール飲料である場合、本飲料は、例えば、ホップを原料の一部として使用して製造されたものである。この場合、本飲料は、例えば、ホップ及び麦芽を含む原料を使用して製造された発泡性ノンアルコール飲料であってもよい。
【0077】
本飲料が含有する低級脂肪酸及び/又はそのエステルの量は、ホップに由来する香味成分の香味及び/又はモノテルペンアルコールの香味が増強される範囲であれば特に限られない。
【0078】
すなわち、例えば、低級脂肪酸が、上述した炭素数が5の脂肪酸又はそのエステルである場合、本飲料は、当該低級脂肪酸又はそのエステルを0.001ppm以上含有する。
【0079】
上述の濃度は、例えば、0.001〜0.1ppmとしてもよく、0.003〜0.1ppmとしてもよく、0.003〜0.08ppmとしてもよく、0.005〜0.08ppmとしてもよい。低級脂肪酸又はそのエステルの濃度が上述の範囲を下回ると、十分な香味増強効果が得られない場合がある。また、低級脂肪酸又はエステルの濃度が上述の範囲を上回ると、当該低級脂肪酸又はエステル自身の香味の影響が大きくなりすぎる場合がある。
【0080】
また、例えば、低級脂肪酸が、上述した炭素数が4の脂肪酸又はそのエステルである場合、本飲料は、当該低級脂肪酸又はそのエステルを0.1ppm以上含有する。
【0081】
この含有濃度は、例えば、0.1〜10ppmとしてもよく、0.1〜8ppmとしてもよく、0.1〜6ppmとしてもよく、0.2〜6ppmとしてもよく、0.3〜6ppmとしてもよく、0.3〜5ppmとしてもよい。低級脂肪酸又はそのエステルの濃度が上述の範囲を下回ると、十分な香味増強効果が得られない場合がある。
【0082】
また、低級脂肪酸又はエステルの濃度が上述の範囲を上回ると、当該低級脂肪酸又はエステル自身の香味の影響が大きくなりすぎる場合がある。
【0083】
なお、本飲料が上述した本方法により製造されたものである場合、上述した低級脂肪酸又はそのエステルの含有濃度は、その製造過程において外的に添加された当該低級脂肪酸又はそのエステルの量に対応する濃度である。
【0084】
本発明によれば、ホップに由来する香味成分の香味及び/又はモノテルペンアルコールの香味が効果的に増強された飲料及びその製造方法を実現することができる。すなわち、例えば、ホップを原料の一部として使用して飲料を製造する場合に、当該ホップの使用条件を変更することなく、最終的に得られる飲料における当該ホップに由来する香味成分の香味を所望のレベルまで効果的に増強させることができる。
【0085】
また、例えば、ホップの使用の有無にかかわらず、モノテルペンアルコールを含有する飲料を製造する場合に、当該モノテルペンアルコールの使用条件を変更することなく、最終的に得られる飲料における当該モノテルペンアルコールの香味を所望のレベルまで効果的に増強させることができる。
【0086】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0087】
[イソ吉草酸によるアルコール飲料の香味増強効果]
ホップ及び麦芽を原料の一部として使用して製造された市販の発泡性アルコール飲料(いわゆる発泡酒)を準備した。そして、この発泡酒に対して、0.005ppm、0.01ppm、0.02ppm、0.04ppm又は0.08ppmの濃度(発泡酒の重量に対する、添加されたイソ吉草酸の重量の割合)でイソ吉草酸を添加した。
【0088】
次に、10人のパネリストの各々に、イソ吉草酸が上記いずれかの濃度で添加された1つの発泡酒及びイソ吉草酸が添加されていない2つの発泡酒からなる群から、香味を有すると感じた発泡酒を1つ選択させる試験を行った。
【0089】
さらに、イソ吉草酸が添加された発泡酒を選択したパネリストによって、当該イソ吉草酸が添加された発泡酒において、イソ吉草酸が添加されていない発泡酒に比べて、香味の強度が増加しているか、及び不快臭が増加しているかを評価した。
【0090】
この評価は、「A(大きく増加した)」、「B(やや増加した)」及び「C(僅かに増加した)」の3段階で行った。評価Aには3ポイント、評価Bには2ポイント、及び評価Cには1ポイントを割り当てた。
【0091】
そして、上記の濃度でイソ吉草酸が添加された各発泡酒について、得られた評価のポイントの合計を、上記試験で当該発泡酒を選択したパネリストの人数で除して算出された「平均ポイント」を得た。
【0092】
図1には、その結果を示す。図1において、横軸は発泡酒に添加されたイソ吉草酸の濃度(ppm)を示し、縦軸は各濃度でイソ吉草酸が添加された場合に得られた平均ポイントを示し、黒塗りの棒グラフは香味強度を評価した結果を示し、白抜きの棒グラフは不快臭を評価した結果を示す。
【0093】
図1に示すように、全ての濃度範囲で、香味が増強する効果が得られた。また、イソ吉草酸の添加濃度が増加するにつれて、香味が増強する傾向が得られた。一方、イソ吉草酸の添加濃度が増加するにつれて、不快臭も強くなる傾向が見られた。香味の増強効果と不快臭の回避というバランスの点から、イソ吉草酸を0.08ppm未満の濃度で添加することが好ましいと考えられた。
【実施例2】
【0094】
[イソ酪酸によるアルコール飲料の香味増強効果]
上述の実施例1と同様、市販の発泡酒を準備した。そして、この発泡酒に対して、0.31ppm、0.625ppm、1.25ppm、2.5ppm又は5ppmの濃度でイソ酪酸を添加した。次に、上述の実施例1と同様の評価試験を行った。
【0095】
図2には、その結果を示す。図2において、横軸は発泡酒に添加されたイソ酪酸の濃度(ppm)を示し、縦軸は各濃度でイソ酪酸が添加された場合に得られた平均ポイントを示し、黒塗りの棒グラフは香味強度を評価した結果を示し、白抜きの棒グラフは不快臭を評価した結果を示す。
【0096】
図2に示すように、イソ酪酸を0.31ppmより高い濃度で添加することにより、香味が増強する効果が得られた。また、イソ酪酸の添加濃度が増加するにつれて、香味が増強する傾向が得られた。一方、イソ酪酸の添加濃度が増加するにつれて、不快臭も強くなる傾向が見られた。香味の増強効果と不快臭の回避というバランスの点から、イソ酪酸を0.31ppmより高い濃度で添加することが好ましいと考えられた。
【実施例3】
【0097】
[2−メチル酪酸によるアルコール飲料の香味増強効果]
上述の実施例1と同様、市販の発泡酒を準備した。そして、この発泡酒に対して、0.005ppm、0.01ppm、0.02ppm、0.04ppm又は0.08ppmの2−メチル酪酸を添加した。次に、上述の実施例1と同様の評価試験を行った。
【0098】
図3には、その結果を示す。図3において、横軸は発泡酒に添加された2−メチル酪酸の濃度(ppm)を示し、縦軸は各濃度で2−メチル酪酸が添加された場合に得られた平均ポイントを示し、黒塗りの棒グラフは香味強度を評価した結果を示し、白抜きの棒グラフは不快臭を評価した結果を示す。
【0099】
図3に示すように、2−メチル酪酸を0.005ppmより高い濃度で添加することにより、香味が増強される効果が得られた。一方、2−メチル酪酸の添加濃度が増加するにつれて、不快臭も強くなる傾向が見られた。香味の増強効果と不快臭の回避というバランスの点から、2−メチル酪酸を0.005ppmより高い濃度で添加することが好ましく、0.04ppm未満の濃度で添加することがより好ましいと考えられた。
【実施例4】
【0100】
[イソ吉草酸によるノンアルコール飲料の香味増強効果]
ホップ及び麦芽を原料の一部として使用して製造され、エタノールを1.0体積%未満の濃度で含有する市販の発泡性ノンアルコール飲料(いわゆるビールテイストのノンアルコール飲料)を準備した。そして、このノンアルコール飲料に対して、0.005ppm、0.01ppm、0.02ppm、0.04ppm又は0.08ppmのイソ吉草酸を添加した。次に、上述の実施例1と同様の評価試験を行った。
【0101】
図4には、その結果を示す。図4において、横軸はノンアルコール飲料に添加されたイソ吉草酸の濃度(ppm)を示し、縦軸は各濃度でイソ吉草酸が添加された場合に得られた平均ポイントを示し、黒塗りの棒グラフは香味強度を評価した結果を示し、白抜きの棒グラフは不快臭を評価した結果を示す。
【0102】
図4に示すように、イソ吉草酸を0.005ppmより高い濃度で添加することにより、香味が増強する効果が得られた。また、イソ吉草酸の添加濃度が増加するにつれて、香味が増強する傾向が得られた。一方、イソ吉草酸の添加濃度が増加するにつれて、不快臭も僅かに強くなる傾向が見られた。ただし、不快臭の増加は僅かであり、イソ吉草酸による香味増強効果が顕著であった。すなわち、イソ吉草酸を0.005ppmより高い濃度で添加することにより、不快臭を回避しつつ、香味を顕著に増強するという効果が得られた。
【実施例5】
【0103】
[イソ酪酸によるノンアルコール飲料の香味増強効果]
上述の実施例4と同様、市販のノンアルコール飲料を準備した。そして、このノンアルコール飲料に対して、0.31ppm、0.625ppm、1.25ppm、2.5ppm又は5ppmのイソ酪酸を添加した。次に、上述の実施例1と同様の評価試験を行った。
【0104】
図5には、その結果を示す。図5において、横軸はノンアルコール飲料に添加されたイソ酪酸の濃度(ppm)を示し、縦軸は各濃度でイソ酪酸が添加された場合に得られた平均ポイントを示し、黒塗りの棒グラフは香味強度を評価した結果を示し、白抜きの棒グラフは不快臭を評価した結果を示す。
【0105】
図5に示すように、全ての濃度範囲で、香味が増強する効果が得られた。また、イソ酪酸の添加濃度が増加するにつれて、香味が増強する傾向が得られた。一方、イソ酪酸の添加濃度が増加するにつれて、不快臭も僅かに強くなる傾向が見られた。ただし、不快臭の増加は僅かであり、イソ酪酸による香味増強効果が顕著であった。すなわち、全ての濃度範囲で、不快臭を回避しつつ、香味を顕著に増強するという効果が得られた。
【実施例6】
【0106】
[2−メチル酪酸によるノンアルコール飲料の香味増強効果]
上述の実施例4同様、市販のノンアルコール飲料を準備した。そして、この発泡酒に対して、0.005ppm、0.01ppm、0.02ppm、0.04ppm又は0.08ppmの2−メチル酪酸を添加した。次に、上述の実施例1と同様の評価試験を行った。
【0107】
図6には、その結果を示す。図6において、横軸はノンアルコール飲料に添加された2−メチル酪酸の濃度(ppm)を示し、縦軸は各濃度で2−メチル酪酸が添加された場合に得られた平均ポイントを示し、黒塗りの棒グラフは香味強度を評価した結果を示し、白抜きの棒グラフは不快臭を評価した結果を示す。
【0108】
図6に示すように、全ての濃度範囲で、香味が増強する効果が得られた。また、2−メチル酪酸の添加濃度が増加するにつれて、香味が増強する傾向が得られた。一方、2−メチル酪酸の添加濃度が増加するにつれて、不快臭も僅かに強くなる傾向が見られた。ただし、不快臭の増加は僅かであり、2−メチル酪酸による香味増強効果が顕著であった。すなわち、全ての濃度範囲で、不快臭を回避しつつ、香味を顕著に増強するという効果が得られた。
【実施例7】
【0109】
モデル溶液として、5体積%のエタノールを含有する炭酸水を調製した。このモデル溶液にリナロールを2.5ppb添加してリナロール溶液を調製した。また、モデル溶液にリナロールを3ppb、及びイソ吉草酸を0.04ppm添加してリナロール/イソ吉草酸溶液を調製した。また、モデル溶液にゲラニオールを5ppb添加してゲラニオール溶液を調製した。また、ゲラニオール溶液にイソ吉草酸を0.04ppm添加してゲラニオール/イソ吉草酸溶液を調製した。
【0110】
そして、12人のパネリストの各々に、1つのリナロール溶液及び2つのモデル溶液からなる群から、香味を有すると感じた溶液を1つ選択させる試験を行い、当該リナロール溶液を選択したパネリストの数を得た。
【0111】
同様に、リナロール溶液に代えて、リナロール/イソ吉草酸溶液(14人のパネリスト)、ゲラニオール溶液(11人のパネリスト)又はゲラニオール/イソ吉草酸溶液(14人のパネリスト)を使用した試験を行い、当該リナロール/イソ吉草酸溶液、ゲラニオール溶液又はゲラニオール/イソ吉草酸溶液を選択したパネリストの数を得た。
【0112】
図7には、試験の結果を示す。図7に示すように、イソ吉草酸が添加されていないリナロール溶液を使用した試験では、12人のパネリスト中、5人のパネリストが当該リナロール溶液を選択した。これに対し、イソ吉草酸が0.04ppm添加されたリナロール/イソ吉草酸溶液を使用した試験では、14人のパネリスト中、11人のパネリストが当該リナロール/イソ吉草酸溶液を選択した。すなわち、リナロール溶液にイソ吉草酸が添加されることで、香味が増強されることが示された。
【0113】
また、イソ吉草酸が添加されていないゲラニオール溶液を使用した試験では、11人のパネリスト中、6人のパネリストが当該ゲラニオール溶液を選択した。これに対し、イソ吉草酸が0.04ppm添加されたゲラニオール/イソ吉草酸溶液を使用した試験では、14人のパネリスト中、12人のパネリストが当該ゲラニオール/イソ吉草酸溶液を選択した。すなわち、ゲラニオール溶液にイソ吉草酸が添加されることで、香味が増強されることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホップに由来する香味成分を含有する飲料の製造方法であって、
低級脂肪酸又はそのエステルを添加することを含む
ことを特徴とする飲料の製造方法。
【請求項2】
モノテルペンアルコールを含有する飲料の製造方法であって、
低級脂肪酸又はそのエステルを添加することを含む
ことを特徴とする飲料の製造方法。
【請求項3】
前記モノテルペンアルコールは、リナロール及び/又はゲラニオールである
ことを特徴とする請求項2に記載された飲料の製造方法。
【請求項4】
前記低級脂肪酸は、炭素数が2〜9の脂肪酸である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載された飲料の製造方法。
【請求項5】
前記低級脂肪酸は、イソ吉草酸、イソ酪酸、2−メチル酪酸、吉草酸及び酪酸からなる群より選択される1種又は2種以上である
ことを特徴とする請求項4に記載された飲料の製造方法。
【請求項6】
前記低級脂肪酸は、炭素数が5の脂肪酸であり、
前記低級脂肪酸又はそのエステルを0.001ppm以上添加する
ことを特徴とする請求項4に記載された飲料の製造方法。
【請求項7】
前記低級脂肪酸は、イソ吉草酸、2−メチル酪酸及び吉草酸からなる群より選択される1種又は2種以上である
ことを特徴とする請求項6に記載された飲料の製造方法。
【請求項8】
前記低級脂肪酸は、炭素数が4の脂肪酸であり、
前記低級脂肪酸又はそのエステルを0.1ppm以上添加する
ことを特徴とする請求項4に記載された飲料の製造方法。
【請求項9】
前記低級脂肪酸は、イソ酪酸及び酪酸からなる群より選択される1種又は2種以上である
ことを特徴とする請求項8に記載された飲料の製造方法。
【請求項10】
酵母を使用してアルコール発酵を行うことを含む
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載された飲料の製造方法。
【請求項11】
前記低級脂肪酸又はそのエステルを前記アルコール発酵の後に添加する
ことを特徴とする請求項10に記載された飲料の製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載された製造方法により製造された
ことを特徴とする飲料。
【請求項13】
ホップに由来する香味成分を含有する飲料であって、
低級脂肪酸又はそのエステルが添加された
ことを特徴とする飲料。
【請求項14】
モノテルペンアルコールを含有する飲料であって、
低級脂肪酸又はそのエステルが添加された
ことを特徴とする飲料。
【請求項15】
前記モノテルペンアルコールは、リナロール及び/又はゲラニオールである
ことを特徴とする請求項14に記載された飲料。
【請求項16】
前記低級脂肪酸は、炭素数が2〜9の脂肪酸である
ことを特徴とする請求項13乃至15のいずれかに記載された飲料。
【請求項17】
前記低級脂肪酸は、イソ吉草酸、イソ酪酸、2−メチル酪酸、吉草酸及び酪酸からなる群より選択される1種又は2種以上である
ことを特徴とする請求項16に記載された飲料。
【請求項18】
前記低級脂肪酸は、炭素数が5の脂肪酸であり、
前記低級脂肪酸又はそのエステルを0.001ppm以上含有する
ことを特徴とする請求項16に記載された飲料。
【請求項19】
前記低級脂肪酸は、イソ吉草酸、2−メチル酪酸及び吉草酸からなる群より選択される1種又は2種以上である
ことを特徴とする請求項18に記載された飲料。
【請求項20】
前記低級脂肪酸は、炭素数が4の脂肪酸であり、
前記低級脂肪酸又はそのエステルを0.1ppm以上含有する
ことを特徴とする請求項16に記載された飲料。
【請求項21】
前記低級脂肪酸は、イソ酪酸及び酪酸からなる群より選択される1種又は2種以上である
ことを特徴とする請求項20に記載された飲料。
【請求項22】
ホップに由来する香味成分と、低級脂肪酸又はそのエステルと、を含有する
ことを特徴とする添加用組成物。
【請求項23】
モノテルペンアルコールと、低級脂肪酸又はそのエステルと、を含有する
ことを特徴とする添加用組成物。
【請求項24】
前記モノテルペンアルコールは、リナロール及び/又はゲラニオールである
ことを特徴とする請求項23に記載された添加用組成物。
【請求項25】
前記低級脂肪酸は、炭素数が2〜9の脂肪酸である
ことを特徴とする請求項22乃至24のいずれかに記載された添加用組成物。
【請求項26】
前記低級脂肪酸は、イソ吉草酸、イソ酪酸、2−メチル酪酸、吉草酸及び酪酸からなる群より選択される1種又は2種以上である
ことを特徴とする請求項25に記載された添加用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−34659(P2012−34659A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179823(P2010−179823)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(303040183)サッポロビール株式会社 (150)
【Fターム(参考)】