説明

飲料容器用フィッティング改造方法

【課題】従来の飲料容器を有効に利用して、低コストで一体型フィッティングと同等のフィッティングに改造することができる飲料容器用フィッティング改造方法を提供する。
【解決手段】内周側に雌ねじが形成された口金91が取り付けられている飲料容器のフィッティングを改造する方法であって、円周上に配置された鉛直の3本以上の吊下部251の上端側が自由端とされており、当該吊下部の下端側が底部252で互いに連結されている支持枠部25の上端部を、前記口金の内周下部に接合する手順と、前記雌ねじに螺合する雄ねじが上部外周側に設けられた取付部本体2aを、前記口金に螺合させて取り付ける手順と、前記取付部本体と前記口金とを一体に接合する手順とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビール樽等の飲料容器の口金に固定されて、ディスペンスヘッドと接続するための飲料容器用フィッティングの改造方法に関するものであり、さらに詳しくは、口金と取付部材との間隙をなくし異物や雨水等の侵入を完全に防止するとともにメインテナンス作業を軽減することのできる飲料容器用フィッティングにするための改造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のビール樽等の飲料容器では、飲料容器に口金が溶接等によって固定されており、その口金にフィッティングがねじ込まれて取り付けられている。そして、そのフィッティングにディスペンスヘッドが接続される。このディスペンスヘッドを介して飲料容器内に二酸化炭素等の圧力ガスを供給し、飲料容器内の飲料を容器外に注出する。従来のフィッティングと口金の取り付け状態を、図10および図11を参照して説明する。
【0003】
図10は、従来のフィッティングを飲料容器に取り付けた状態を示す正面からの断面図である。図11は、フィッティングおよび口金の部分を示す拡大断面図である。図10は、飲料は生ビールであり、飲料容器はビール樽の場合である。ビール樽9の上部に設けられた口金91の内側には、フィッティングの取付部材2がねじ込まれて固定されている。また、取付部材2にはばねで上方に付勢されたダウンチューブ5が取り付けられている。
【0004】
ダウンチューブ5の上端部にはガス弁3が固定されており、また、ダウンチューブ5の上端内部にはビール弁4が上方に付勢されて設けられている。ガス弁3およびビール弁4は、コイルばねによる付勢力によって閉状態となっている。口金91および取付部材2にはディスペンスヘッドが取り付け可能である。ディスペンスヘッドと取付部材2とは、係合突起22による接続機構によって容易に結合することができる。
【0005】
ディスペンスヘッドは、ガス弁3およびビール弁4を操作し、二酸化炭素ガス等の圧力ガスをビール樽9内に供給し、ビール樽9の内圧を高めて生ビールを容器外に注出させるための装置である。生ビールはダウンチューブ5およびビール弁4を通して容器外に注出される。口金91と取付部材2との間からのガス漏れを封止するために、口金91の下部内面と取付部材2との間にはパッキン92が設けられている。
【0006】
飛び出し防止部材8は、取付部材2を口金91から取り外す際に、ビール樽9内のガス圧により取付部材2が飛び出してくるのを防止するものである。ストッパ81が口金91下面に当接することにより、飛び出しを防止する。取り外し工具によりガス弁3を下に押し下げた状態にすると、ビール樽9内から圧力ガスが抜け出るとともにストッパ81が内側に引っ込み、取付部材2が口金91から取り外し可能となる。
【0007】
このような構成のフィッティングは、口金91に取付部材2がねじ込み固定されているとはいえ、口金91と取付部材2との間に微少な隙間が存在する。その隙間から雨水や生ビールが侵入する。隙間から侵入したそれらの汚水は、パッキン92によりビール樽9内への侵入は阻止されるが、口金91と取付部材2との間に長くとどまり、衛生上好ましいものではない。
【0008】
ビール樽を洗浄し高温殺菌する際に、この隙間内の汚水が沸騰して噴出することから、この隙間内に汚水が溜まっていることを確認することができる。この隙間内の汚水は、ビール樽を炎天下に放置した場合などには、熱膨張して隙間からしみ出てくるおそれがあり、さらには口金内に侵入して生ビールを汚染するおそれもある。
【0009】
図10、図11に示すような従来のフィッティングでは、口金91と取付部材2との間に異物や汚水等が侵入して溜まってしまい衛生上好ましくない。さらに、パッキン92は、ゴム等の柔軟性材料であるため摩耗や腐食等による劣化が避けられず、定期的な交換が必要である。このように、従来はフィッティングのメインテナンスとして、殺菌・洗浄作業やパッキン92の交換作業を定期的に行う必要があった。
【0010】
そこで、本発明の発明者により、下記の特許文献1に記載されたフィッティングが提案されている。特許文献1のフィッティングは、口金の下部内面と取付部材との間の間隙を封止する第1封止部材に加えて、フィッティングの最上部にも第2封止部材を設け、口金と取付部材との間隙に異物や雨水等が侵入しにくくしたものである。
【0011】
しかし、特許文献1のようなフィッティングでも異物や汚水等の侵入を完全に防止することは困難である。また、第1封止部材と第2封止部材もゴム等の柔軟性材料であるため摩耗や腐食等による劣化が避けられず、定期的な交換が必要である。したがって、特許文献1のフィッティングでも、メインテナンス作業の頻度を減少させることはできるが、殺菌・洗浄作業や第1封止部材と第2封止部材の交換作業を定期的に行う必要があった。
【0012】
そこで、本発明の発明者により、下記の特許文献2,3のようなフィッティングが提案されている。特許文献2,3には、口金と取付部材を一体として、口金と取付部材との間隙をなくし、異物や汚水等の侵入を完全に防止するとともにメインテナンス作業を軽減することのできる飲料容器用フィッティングが記載されている。この飲料容器用フィッティングの断面図を図12に示す。
【0013】
図10、図11に示すフィッティングは、口金91の内周にフィッティングの取付部材2をねじ込んで固定したものであったが、図12のフィッティングでは口金と取付部材が一体となっている。その取付部材を一体とした口金93が、ビール樽9に溶接によって接続固定されて密封容器となっている。口金93には一体的に取付部94が形成されており、口金93の内周側には弁座部95が形成されている。
【0014】
取付部94にはばねで上方に付勢されたダウンチューブ5が支持されている。ダウンチューブ5の上端部にはガス弁3が固定されており、また、ダウンチューブ5の上端内部にはビール弁4が上方に付勢されて設けられている。ガス弁3はダウンチューブ5とともにコイルばね6によって上方に付勢されており、口金93内周側の弁座部95に押し付けられている。ビール弁4は、コイルばね7による付勢力によってガス弁3下部の弁座部分に押し付けられている。ガス弁3およびビール弁4は通常状態が閉状態である。
【0015】
口金93にはディスペンスヘッドが取り付け可能である。口金93の上部内周側には内方に突出する係合突起22が設けられており、ディスペンスヘッドと口金93とは、係合突起22による接続機構によって容易に結合することができる。ディスペンスヘッドにより、ガス弁3およびビール弁4を操作し、二酸化炭素ガス等の圧力ガスをビール樽9内に供給し、ビール樽9の内圧を高めて生ビールをダウンチューブ5およびビール弁4を通して容器外に排出させることができる。
【0016】
ガス弁3は全体形状が環状に形成されており、使用状態では中心軸が垂直方向に向くように配置されている。このガス弁3は、ゴム等の柔軟性部材からなる弁部材32がステンレス材等からなる芯金31と一体に成形されたものである。従来のガス弁では、この芯金の外周縁が円形であったが、図12のようなフィッティングでは、ガス弁3を弁座部95の中央孔を通して交換する必要があるため、芯金31の形状を従来とは異なるものとしている。
【0017】
図13は、ガス弁3を上方から見た平面図である。芯金31の外周縁には、中心に対して対称な2位置に互いに平行な平坦部が設けられている。このため平坦部が設けられた位置での芯金31の直径(短径=平坦部間の距離)は、これと直交する方向の直径(長径)に比較して小さくなっている。この平坦部が設けられた部分は、弁座部95の中央孔を通過可能な寸法となっている。すなわち、芯金31の短径寸法は弁座部95中央孔の直径よりも小さく、芯金31の長径寸法は弁座部95中央孔の直径よりも大きくなっている。
【0018】
このような構成のガス弁3は長径方向に傾斜させて弁座部95中央孔を上下に通過させることができる。芯金31の上面には長径方向を表示するための刻印が設けられている。ガス弁3を長径方向に傾斜させて弁座部95の中央孔を通過させることにより、ガス弁3をダウンチューブ5の上端部に容易に取り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2000−79991号公報
【特許文献2】特開2007−55612号公報
【特許文献3】国際公開第2007/023748号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
図12に示したようなフィッティングは、口金と取付部材との間隙をなくし、異物や汚水等の侵入を完全に防止するとともにメインテナンス作業を軽減することのできる非常に有用なフィッティングであるが、図10、図11に示す従来のフィッティングとは、口金の構成が異なるため、口金を新しく製造して飲料容器に取り付ける必要がある。図10に示す従来の飲料容器に、図12のような一体型フィッティングを取り付けるには、改造のための加工コストとともに、新しい口金の製造コストが加算され、改造に必要なコストがかなり大きくなるという問題点があった。
【0021】
そこで、本発明は、従来の飲料容器を有効に利用して、低コストで一体型フィッティングと同等のフィッティングに改造することができる飲料容器用フィッティング改造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために、本発明の飲料容器用フィッティング改造方法は、内周側に雌ねじが形成された口金が取り付けられている飲料容器のフィッティングを改造する方法であって、円周上に配置された鉛直の3本以上の吊下部の上端側が自由端とされており、当該吊下部の下端側が底部で互いに連結されている支持枠部の上端部を、前記口金の内周下部に接合する手順と、前記雌ねじに螺合する雄ねじが上部外周側に設けられた取付部本体を、前記口金に螺合させて取り付ける手順と、前記取付部本体と前記口金とを一体に接合する手順とを有するものである。
【0023】
また、上記の飲料容器用フィッティング改造方法において、前記支持枠部は、前記吊下部を3本備えたものであることが好ましい。
【0024】
また、上記の飲料容器用フィッティング改造方法において、3本の前記吊下部によって規定される窓部は、それぞれの縦寸法が横寸法の略1/2以上となるものであることが好ましい。
【0025】
また、上記の飲料容器用フィッティング改造方法において、3本の前記吊下部によって規定される窓部は、それぞれの横寸法が略30mm、縦寸法が略15mm以上となるものであることが好ましい。
【0026】
また、上記の飲料容器用フィッティング改造方法において、3本の前記吊下部によって規定される窓部は、それぞれの開口面積の合計が略1330mm2 以上のものであることが好ましい。
【0027】
また、上記の飲料容器用フィッティング改造方法において、前記口金と前記取付部本体の上面の接続部を封止する手順を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、以上のように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0029】
従来のフィッティングが取り付けられていた飲料容器を有効に利用して一体型のフィッティングに改造することができるので、一体型フィッティング導入のコストを大幅に低減できるとともに、資源の有効利用が可能となる。すなわち、従来の口金に部品を固着するだけで、一体型フィッティング用の口金を新しく製造することなく、一体型フィッティングに改造することができる。
【0030】
また、フィッティングの形状が従来品と同等となり、従来品との互換性も十分となる。従来の飲料容器に使用していた飲料充填機、容器洗浄機、飲料注出用器具(ディスペンスヘッド等)なども、一体型フィッティングに改造した飲料容器にそのまま使用することができる。また、支持枠部側面の吊下部の間が広く開放されているので支持枠部内に支持された各部材の洗浄作業が容易になる。さらに、発泡性飲料を飲料容器内に充填する際の飲料の発泡を抑えることができる。
【0031】
吊下部を3本としたものでは、最小限の本数の吊下部により、吊下部の間が最も広く開放されることとなり、支持枠部内に支持された各部材の洗浄作業がさらに容易になる。さらに、窓部の縦寸法を横寸法の略1/2以上とし、窓部のそれぞれの開口面積の合計を略1330mm2 以上とすることにより、ビールの充填を問題なく行うことができる。具体的には、窓部の横寸法が略30mm、縦寸法が略15mm以上であればよい。
【0032】
口金本体と取付部本体の上面の接続部を封止しているので、口金と取付部本体の上面に間隙がなく、その間隙への異物や汚水等の侵入は発生しない。これによって、口金部の殺菌処理や異物の除去作業等を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1はビール樽9の口金91の構成を示す断面図である。
【図2】図2は本発明の改造方法に使用する取付部本体2aの構成を示す断面図である。
【図3】図3は改造方法に使用する支持枠部25の構成を示す図である。
【図4】図4は支持枠部25を上方から見た平面図である。
【図5】図5は改造方法の手順を示す図である。
【図6】図6は改造によりできた一体型フィッティングの構成を示す断面図である。
【図7】図7は他の形状の口金91aの構成を示す断面図である。
【図8】図8は口金91aに支持枠部25を接合した状態を示す図である。
【図9】図9は窓部254の形状を示す図である。
【図10】図10は従来のフィッティングをビール樽に取り付けた状態を示す正面からの断面図である。
【図11】図11は従来のフィッティングを示す拡大断面図である。
【図12】図12は一体型フィッティングの構成を示す断面図である。
【図13】図13はガス弁3と芯金31の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。飲料は生ビールであり、飲料容器はビール樽の場合である。図1から図6は、本発明により従来のフィッティングを備えたビール樽を一体型フィッティングに改造する改造方法の各手順を示す図である。
【0035】
まず、図11に示すような従来のビール樽9の口金91から、取付部材2、ダウンチューブ5、ガス弁3、ビール弁4およびコイルばね6,7を取り外し、パッキン92も除去する。図1は、フィッティングの各部材を取り外した状態の口金91を示す断面図である。口金91の内周面の上部には雌ねじ911が形成されている。また、口金91の下端部近傍にはシール面912が設けられている。シール面912はパッキン92と密着してビール樽9を密封するものである。
【0036】
図2から図4に本発明の改造方法に使用する各部材を示す。図2は、口金91に取り付けるための取付部本体2aの構成を示す断面図である。取付部本体2aは、従来のフィッティングにおける取付部材2の上部本体部に相当する形状とされている。上部外周に形成された雄ねじ21は、口金91の雌ねじ911と螺合可能なものである。また、係合突起22は、ディスペンスヘッドと係合するための構造である。
【0037】
図3は、口金91内周面の最下部に接続固着するための支持枠部25の構成を示す正面図である。そして、図4は支持枠部25を上方から見た平面図である。支持枠部25は、従来のフィッティングにおける取付部材2の下部支持枠部に相当する機能を持つように別途製作された部材である。
【0038】
支持枠部25の底部252上面にコイルばね6を支持し、これによりダウンチューブ5、ガス弁3、ビール弁4などを支持する。支持枠部25は、底部252の外周縁から鉛直方向に上方に立設した吊下部251を備えている。吊下部251の上端側は自由端とされており、吊下部251の下端側は底部252により互いに一体に連結されている。
【0039】
図4に示すように、吊下部251は底部252の外周縁上に等間隔で3本形成されている。また、底部252の中央には貫通孔253が形成されている。ダウンチューブ5の下部は貫通孔253を通過して下方に垂下される。吊下部251の間の開放空間は、支持枠部25を口金91に取り付けた際の窓部254となる。このように、支持枠部25は、側面の3本の吊下部251の間が広く開放されているので支持枠部25内に支持された各部材の洗浄作業が容易になる。
【0040】
また、ビールをビール樽9内に充填する際には、開口部である窓部254を通過してビールが容器内に流入するが、窓部254の開口面積が大きいため充填時のビールの泡立ちを抑えることができる。なお、ここでは吊下部251を3本形成するようにしたが、4本以上の任意の本数とすることもできる。
【0041】
次に、図5に示すように、支持枠部25の吊下部251の上端部を口金91の下部内周面に配置し、吊下部251の上端部と口金91を溶接等により接合する。接合部Aの位置はシール面912位置より所定量(1〜数mm程度)下方とする。なお、図5では1本の吊下部251のみを表示しているが、3本の吊下部251の上端部の全てを同様に口金91と接合する。
【0042】
次に、図6に示すように、取付部本体2aを口金91内にねじ込んで固定する。この状態で、口金91のシール面912内周端および取付部本体2a下端が互いに接触し図示のようにほぼ同一円周上に位置している。これらの2部材が接触する円周上を内面から溶接等により密封接合する。この接合部Bは内周全周にわたるものであり、これにより口金91および取付部本体2aが互いに密封接合される。
【0043】
さらに、口金91と取付部本体2aのねじ結合部の上面にも封止処理がなされる。封止処理は溶接や封止材料の接着などにより行われ、図6には封止部Cとして示している。封止部Cによりねじ結合部上面からの異物や汚水等の侵入が完全に防止される。図6の封止部Cは溶接によって形成されたものである。
【0044】
このように改造されたフィッティングは、図12に示す一体型のフィッティングと同等の機能を有する。支持枠部25にフィッティングの各部品(ダウンチューブ5、ガス弁3、ビール弁4等)を組み付ければよい。ガス弁としては、図13に示すようなガス弁3を長径方向に傾斜させて組み付けることができる。なお、ガス弁は、図13に示すような構造のもの以外でも、一体型のフィッティングに組み付けることができるものであればよい。
【0045】
また、本発明により改造した飲料容器用フィッティングでは、支持枠部25側面の3本の吊下部251の間が広く開放されているので支持枠部25内に支持された各部材の洗浄作業が容易になる。この点では、図12に示す一体型のフィッティングよりも優れている。なお、図12に示す一体型のフィッティングでも、取付部94の構成を本発明の支持枠部25と同様のものとすることにより、同様の利点を付加することができる。
【0046】
次に、他の形状の口金91aに本発明を適用する場合について説明する。図7は他の形状の口金91aの構成を示す断面図である。この口金91aでは、内径が小径となる首部の厚さ寸法Dが図1の口金91に比べて大きくなっている。このような形状の口金91aを備えたビール樽9でも、図1から図6で示した改造方法と同様にして、一体型のフィッティングに改造することができる。
【0047】
改造に使用する取付部本体2aと支持枠部25は、図2から図4に示したものと同様である。ただし、支持枠部25の吊下部251の上下方向の長さは、首部の厚さ寸法Dが大きくなっている分だけ短縮されている。これは、シール面912と支持枠部25の底部252との上下距離がフィッティングの一般的な基準寸法により決められているからである。
【0048】
図8に、口金91aに支持枠部25を接合した状態を示す。支持枠部25の吊下部251の上端部を口金91aの下部内周面に配置し、吊下部251の上端部と口金91aを溶接等により接合する。接合部Aの位置は口金91aの下端近傍位置とする。なお、図8では1本の吊下部251のみを表示しているが、3本の吊下部251の上端部の全てを同様に口金91aと接合する。
【0049】
その後は、図6と同様に、取付部本体2aを口金91a内にねじ込んで固定し、接合部Bおよび封止部Cにより両者を密封接合する。封止部Cによりねじ結合部上面からの異物や汚水等の侵入が完全に防止される。ただし、本発明をこの形状の口金91aに適用した場合、口金91aの首部の厚さ寸法Dが大きいため、どうしても支持枠部25の窓部254の縦寸法が小さくなってしまう。ここで、窓部254は、支持枠部25を口金91aに取り付けた際の側面開口部であり、支持枠部25における吊下部251の間の開放空間である。
【0050】
図9は窓部254の形状を示す図である。図示のように、窓部254は横寸法Eと縦寸法Fを有する支持枠部25の側面開口部である。ここで、横寸法Eは、支持枠部25の円周方向に沿って測った寸法であり、展開図上の寸法である。この窓部254の横寸法Eと縦寸法Fがフィッティングの性能に与える影響について実験した。その結果、特に口金91aでは、縦寸法Fが減少することにより、窓部254の開口面積も減少してしまい、ビール樽9にビールを充填する際に悪影響が出る可能性が判明した。
【0051】
ビール樽9にビールを充填する際には、支持枠部25の窓部254を通ってビールが容器内に流入する。その際、窓部254の寸法によっては、流入するビールの泡立ちが大きくなってしまい、ビールの充填量が不足してしまうという問題点が発生する。このような問題点が発生せず、規定量のビールが問題なく充填できるような窓部254の寸法を実験的に求めることができた。これは、種々の寸法の窓部を有するフィッティングを使用し、充填装置によって実際に充填を行うことにより結果を確認したものである。
【0052】
その結果、窓部254の開口面積の合計値を1330mm2 以上とすることが望ましいことが分かった。窓部254が3個の場合(吊下部251が3本の場合)、1つの窓部254の開口面積は444mm2 以上とすることが望ましい。窓部254の開口面積がこれより小さいと、充填時のビールの泡立ちが大きくなってしまう。また、窓部254は、開口面積だけでなく、その形状にも条件があることが判明した。
【0053】
窓部254が3個の場合、図9に示す窓部254の形状において、縦寸法Fを横寸法Eの1/2以上とすることが望ましいことが分かった。縦寸法Fが横寸法Eの1/2よりも小さい窓部の場合、開口面積の合計値が1330mm2 程度でも充填時のビールの泡立ちが大きくなってしまう。すなわち、窓部254は、横寸法Eが30mm、縦寸法Fが15mm以上であることが望ましい。
【0054】
横寸法E:30mm、縦寸法F:15mmの場合、窓部254の下側の2つの角部が丸形状になっているため、1つの窓部254の開口面積は446mm2 となる。したがって、3個の窓部254の開口面積の合計値は1338mm2 となる。この寸法の窓部254の場合には問題なくビールの充填を行うことができた。
【0055】
なお、図7のような首部の厚さ寸法Dの大きな口金91aの場合には、吊下部251の上下方向の長さが短くなるため、窓部254の縦寸法Fは15mmがほぼ上限値となる。図1のような口金91の場合には、窓部254の縦寸法Fをさらに大きくすることができる。
【0056】
以上のように、窓部254は開口面積の合計値を1330mm2 以上とすることが望ましい。また、窓部254が3個の場合、縦寸法Fを横寸法Eの1/2以上とすることが望ましい。具体的には、横寸法E:30mm、縦寸法F:15mm以上とすることが望ましい。
【0057】
以上のように、従来のフィッティングが取り付けられていたビール樽を有効に利用して一体型のフィッティングに改造することができるので、一体型フィッティング導入のコストを大幅に低減できるとともに、資源の有効利用が可能となる。すなわち、従来の口金に部品を固着するだけで、一体型フィッティング用の口金を新しく製造することなく、一体型フィッティングに改造することができる。また、従来品との互換性も十分であり、従来のビール樽に使用していたビール充填機、樽洗浄機、ビール注出用器具(ディスペンスヘッド等)なども、一体型フィッティングに改造したビール樽にそのまま使用することができる。
【0058】
なお、以上の実施の形態では、飲料として生ビール、飲料容器としてビール樽を例に挙げて説明したが、それ以外の任意の飲料と飲料容器にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、従来のフィッティングを備えた飲料容器を改造することにより、口金と取付部材との間隙が存在しない一体型の飲料容器用フィッティングを低コストで提供することができる。また、従来のフィッティングが取り付けられている飲料容器を資源として有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
2 取付部材
3 ガス弁
4 ビール弁
5 ダウンチューブ
6,7 コイルばね
8 飛び出し防止部材
9 ビール樽
A,B 接合部
C 封止部
21 雄ねじ
22 係合突起
25 支持枠部
2a 取付部本体
31 芯金
32 弁部材
81 ストッパ
91,93,91a 口金
92 パッキン
94 取付部
95 弁座部
251 吊下部
252 底部
253 貫通孔
254 窓部
911 雌ねじ
912 シール面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周側に雌ねじ(911)が形成された口金(91)が取り付けられている飲料容器(9)のフィッティングを改造する方法であって、
円周上に配置された鉛直の3本以上の吊下部(251)の上端側が自由端とされており、当該吊下部(251)の下端側が底部(252)で互いに連結されている支持枠部(25)の上端部を、前記口金(91)の内周下部に接合する手順と、
前記雌ねじ(911)に螺合する雄ねじ(21)が上部外周側に設けられた取付部本体(2a)を、前記口金(91)に螺合させて取り付ける手順と、
前記取付部本体(2a)と前記口金(91)とを一体に接合する手順とを有する飲料容器用フィッティング改造方法。
【請求項2】
請求項1に記載した飲料容器用フィッティング改造方法であって、
前記支持枠部(25)は、前記吊下部(251)を3本備えたものである飲料容器用フィッティング改造方法。
【請求項3】
請求項2に記載した飲料容器用フィッティング改造方法であって、
3本の前記吊下部(251)によって規定される窓部は、それぞれの縦寸法(F)が横寸法(E)の略1/2以上となるものである飲料容器用フィッティング改造方法。
【請求項4】
請求項3に記載した飲料容器用フィッティング改造方法であって、
3本の前記吊下部(251)によって規定される窓部は、それぞれの横寸法(E)が略30mm、縦寸法(F)が略15mm以上となるものである飲料容器用フィッティング改造方法。
【請求項5】
請求項4に記載した飲料容器用フィッティング改造方法であって、
3本の前記吊下部(251)によって規定される窓部は、それぞれの開口面積の合計が略1330mm2 以上のものである飲料容器用フィッティング改造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載した飲料容器用フィッティング改造方法であって、
前記口金(91)と前記取付部本体(2a)の上面の接続部を封止する手順を含む飲料容器用フィッティング改造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−222044(P2010−222044A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73124(P2009−73124)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【出願人】(591036996)フジテクノ株式会社 (31)
【Fターム(参考)】