説明

飲料組成物

【課題】本発明は、低カロリー甘味料を含有する飲料組成物において、低カロリー甘味料に特有の味質(甘味のピーク、厚み)を、ショ糖に近い甘味へと改善することを目的とする。
【解決手段】低カロリー甘味料を含有する飲料組成物に、親油性成分とシクロデキストリンとの複合体を配合することにより、低カロリー甘味料に特有の甘味を、ショ糖に近い甘味へと改善することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甘味が改善された低カロリー甘味料含有飲料組成物、低カロリー甘味料含有飲料組成物における甘味の改善方法、及び、低カロリー甘味料含有飲料組成物における甘味の改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイエット等を目的とした低カロリー飲料(例えば製品100ミリリットル当たりの総カロリーが好ましくは20キロカロリー以下である飲料)では、カロリーの低減を目的として、ショ糖を配合せず、糖アルコールや高甘味度甘味料等の低カロリー甘味料のみが配合されることが多い。
【0003】
しかしながら、低カロリー甘味料のみで甘味を付与する場合には、低カロリー甘味料に特有の味質(甘味のピーク、厚み)によりショ糖に近い自然な甘さを提供することが困難であるという問題がある。
【0004】
低カロリー甘味料の甘味を改善することを目的とした従来技術としては、特許文献1及び特許文献2が挙げられる。特許文献1ではスクラロース含有飲料において、リンゴ酸を添加することにより、甘味の後引きを改善する技術が開示されている。特許文献2では、甘味料を含有する低カロリーデザート食品において、コラーゲンペプチドと食塩とを組み合わせて配合することによりコクや旨味を付与する技術が開示されている。
【0005】
一方、油脂、油溶性香辛料成分、植物ステロール等の親油性成分とシクロデキストリンとを水の存在条件において混合して複合体化する技術が知られている。この技術は、親油性成分の水分散性を向上させることや、親油性成分の刺激を有する味や香りを抑制することを目的として開発されている。例えば特許文献3には、苦味や辛味などの刺激のある味及び/又は香りを有する親油性成分と、植物ステロールエステルと、シクロデキストリンとを含む複合体が開示されている。この複合体は、刺激のある味及び/又は香りを有する親油性成分の刺激を抑制することができる。特許文献4にもまた、親油性成分と、植物ステロール等と、シクロデキストリンとの複合体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3803065号公報
【特許文献2】特開2011−155870号公報
【特許文献3】国際公開WO2009/005005号
【特許文献4】国際公開WO2011/074163号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
低カロリー甘味料の甘味を改善することを目的とした従来の技術は必ずしも満足できるものではなかった。
【0008】
前述のように、従来、親油性成分とシクロデキストリンとの複合体は、親油性成分の水分散性を向上させることや、親油性成分の刺激を有する味や香りを抑制することを目的として開発されており、上記の複合体のもつ甘味改善作用については検討されていない。
【0009】
本発明は、低カロリー甘味料を含有する飲料組成物において、低カロリー甘味料に特有の味質(甘味のピーク、厚み)を、ショ糖に近い甘味へと改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明らは驚くべきことに、低カロリー甘味料を含有する飲料組成物に、親油性成分とシクロデキストリンとの複合体を配合することにより、低カロリー甘味料に特有の甘味を、ショ糖に近い甘味へと改善することが可能であることを見出した。
(1)低カロリー甘味料、親油性成分とシクロデキストリンとの複合体、及び水を含有することを特徴とする飲料組成物。
(2)低カロリー甘味料として、糖アルコール及び高甘味度甘味料の各々を1種以上含有する(1)に記載の飲料組成物。
(3)糖アルコールとして、エリスリトールを含有する(1)又は(2)に記載の飲料組成物。
(4)高甘味度甘味料として、スクラロース、アセスルファムカリウム及びアスパルテームを組み合わせて含有する(1)〜(3)のいずれかに記載の飲料組成物。
(5)親油性成分とシクロデキストリンとの複合体として、植物性ステロールエステルと他の親油性成分とシクロデキストリンとを含む複合体を含有する(1)〜(4)のいずれかに記載の飲料組成物。
(6)親油性成分とシクロデキストリンとの複合体における前記他の親油性成分として、刺激のある味及び/又は香りを有する親油性成分を含有する(1)〜(5)のいずれかに記載の飲料組成物。
(7)水と混合することにより(1)〜(6)のいずれかに記載の飲料組成物を調製するための固体飲料組成物。
(8)低カロリー甘味料及び水を含有する飲料組成物において、親油性成分とシクロデキストリンとの複合体を更に配合することにより、前記飲料組成物における甘味を改善する方法。
(9)低カロリー甘味料、及び親油性成分とシクロデキストリンとの複合体を含有することを特徴とする食品組成物。
(10)低カロリー甘味料として、糖アルコール及び高甘味度甘味料の各々を1種以上含有する(9)に記載の食品組成物。
(11)糖アルコールとして、エリスリトールを含有する(9)又は(10)に記載の食品組成物。
(12)高甘味度甘味料として、スクラロース、アセスルファムカリウム及びアスパルテームを組み合わせて含有する(9)〜(11)のいずれかの食品組成物。
(13)親油性成分とシクロデキストリンとの複合体として、植物性ステロールエステルと他の親油性成分とシクロデキストリンとを含む複合体を含有する(9)〜(12)のいずれかの食品組成物。
(14)親油性成分とシクロデキストリンとの複合体における前記他の親油性成分として、刺激のある味及び/又は香りを有する親油性成分を含有する請求項9〜13のいずれかに記載の食品組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低カロリー甘味料を含有する飲料組成物において、低カロリー甘味料に特有の味質(甘味のピーク、厚み)を、ショ糖に近い甘味へと改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<低カロリー甘味料>
低カロリー甘味料としては、糖アルコール、高甘味度甘味料が挙げられる。より具体的には、糖アルコールとしては、エリスリトール、ソルビトール、マルトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール、トレハロース等が挙げられ、エリスリトールが好ましい。高甘味度甘味料としては、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ソーマチン、ステビア、甘草等が挙げられ、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテームが好ましい。糖アルコール又は高甘味度甘味料は各々を1種以上用いることが好ましい。高甘味度甘味料は、2種以上を組み合わせて用いることが好ましく、スクラロース、アセスルファムカリウム及びアスパルテームを組み合わせて用いることがより好ましい。
【0013】
低カロリー甘味料の含有量は特に限定されないが、糖アルコールの含有量は合計で飲料組成物100ml当たり400〜13000mgであることが好ましく、高甘味度甘味料の含有量は合計で飲料組成物100ml当たり1〜45mgであることが好ましい。本発明の飲料組成物は、この量の範囲内の糖アルコール及び高甘味度甘味料の一方のみを含有してもよいし、両方を含有してもよい。本発明の飲料組成物が、高甘味度甘味料としてスクラロース、アセスルファムカリウム及びアスパルテームを組み合わせて含有する場合には、飲料組成物100ml当たりスクラロースの含有量は1〜15mg、アセスルファムカリウムの含有量は4〜45mg、アスパルテームの含有量は2〜45mgであることが好ましい。
【0014】
<親油性成分とシクロデキストリンとの複合体>
本発明では、低カロリー甘味料の風味の改善のために、親油性成分と、シクロデキストリンとの複合体が用いられる。
【0015】
親油性成分としては、油脂や、油脂に溶解可能な成分が挙げられる。油脂に溶解可能な成分としては、刺激のある味及び/又は香りを有する親油性成分や、植物性ステロールエステルが挙げられる。親油性成分は、単一の成分からなるものであってもよいし、複数種の成分が組み合わされたものであってもよい。
【0016】
油脂としてはトリアシルグリセリドを含む動植物由来の油脂や、動植物由来の油脂をエステル交換、分別処理、水素添加等により更に加工した油脂等が挙げられる。油脂の具体例としては中鎖脂肪酸トリアシルグリセリドが挙げられる。中鎖脂肪酸トリアシルグリセリドとは、炭素数8の脂肪酸であるオクタン酸又は炭素数10の脂肪酸であるデカン酸である中鎖脂肪酸をその構成成分とするトリグリセリドである。
【0017】
刺激のある味及び/又は香りを有する親油性成分を種々の有益な生理活性を利用する等の目的で用いることができる。刺激のある味及び/又は香りを有する親油性成分は、シクロデキストリンとともに複合体化することにより、刺激のある味及び/又は香りが効果的に抑制されるため、飲料組成物として摂取することが容易な形態となる(国際公開WO2009/005005)。
【0018】
刺激のある味及び/又は香りを有する親油性成分としては、典型的には親油性の辛味成分の1つであるカプサイシン類が挙げられる。このカプサイシン類の中には、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、バニリルノナンアミド、バニリルブチルエーテルが含まれる。トウガラシオレオレジンなどのトウガラシ抽出物は、カプサイシンを多く含み、カプサイシン類を含む原料として好適に使用することができる。
【0019】
また、カプサイシン類以外の、刺激のある味及び/又は香りを有する親油性成分としては、ショウガの辛味成分である(6)-ジンゲロール、(6)-ショウガオール、ジンゲロン、(8),(10)-ショウガオール、コショウの辛味成分であるピペリン、ピペラニン、サンショウの辛味成分であるサンショオール、ワサビや西洋ワサビ、カラシなどの辛味成分であるアリルイソチオシアネートが挙げられる。ショウガ、コショウ、サンショウの辛味成分を含む原料としては、コショウ抽出物、ショウガ抽出物、サンショウ抽出物を夫々好適に使用することができる。
【0020】
また、刺激のある味及び/又は香りを有する親油性成分としては、辛味成分の他にも、苦味のある親油性成分を含むウコン抽出物といった親油性の苦味成分であってもよい。
【0021】
新油性成分として用いることができる植物性ステロールエステルは、植物性ステロールのステロール骨格中の水酸基に脂肪酸がエステル結合することによって得られる物質である。植物性ステロールエステルの製造方法としては、例えば酵素を利用した酵素方法などが挙げられる。酵素方法としては、触媒としてリパーゼなどを利用し、植物性ステロールと脂肪酸とを混合し、反応(30〜50℃で48時間程度)させることによって植物性ステロールエステルを得る方法などが挙げられる。また、その他の合成方法としては、大豆などから生成された植物性ステロールを菜種油、コーン油などから得られた脂肪酸で、触媒の存在下で脱水することにより、エステル化して植物性ステロールエステルを得る方法などが挙げられる。
【0022】
植物性ステロールとしては、植物油脂中に含まれるステロールなどが挙げられ、例えば大豆、菜種、綿実などの植物油脂から抽出・精製されたものであり、具体的には、β−シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、フコステロール、ジメチルステロールなどの植物性ステロールの1種又は2種以上の混合物である。例えば、大豆ステロールには、53〜56%のシトステロール、20〜23%のカンペステロール及び17〜21%のスチグマステロールが含まれる。植物性ステロールとして、「フィトステロール F」(タマ生化学工業株式会社製)として市販されているものを使用することもできる。
【0023】
脂肪酸としては、植物由来のもの、例えば菜種油、パーム油由来のものであってもよく、又は動物由来のものであってもよい。例えば、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、アラキドン酸、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、パルミトオレイン酸、ラウリン酸などの脂肪酸が挙げられる。
【0024】
好ましい植物性ステロールエステルとしては、大豆由来の植物性ステロールと菜種油由来の脂肪酸から得られる植物性ステロールや大豆及び菜種由来の植物性ステロールとパーム油由来の脂肪酸から得られる植物性ステロールなどが挙げられる。前者には、三栄源エフ・エフ・アイ(株)の「サンステロールNO.3」などがあり、後者には、タマ生化学(株)の「植物ステロール脂肪酸エステル」などがある。
【0025】
本発明で用いられるシクロデキストリンとは、ブドウ糖を構成単位とする環状無還元マルトオリゴ糖のことである。シクロデキストリンとしては、ブドウ糖の数が6つのα−シクロデキストリン、7つのβ−シクロデキストリン、8つのγ−シクロデキストリンの何れも使用できるが、人の消化酵素で分解されると共に水への溶解性が高く飲料に使用しやすいという点からγ−シクロデキストリンが好ましい。
【0026】
複数の親油性成分を組み合わせる場合の配合比は特に限定されない。親油性成分が、油脂及び/又は植物性ステロールエステルと、カプサイシン類等の刺激のある味及び/又は香りを有する親油性成分との組合せである場合には、カプサイシン類等の刺激のある味及び/又は香りを有する親油性成分1重量部に対して、油脂及び/又は植物性ステロールエステルの合計が30〜30000重量部であるのが好ましい。このとき、油脂及び植物性ステロールエステルは少なくとも一方が用いられればよい。
【0027】
油脂と植物性ステロールエステルとを組み合わせ親油性成分する場合(更に必要に応じて刺激のある味及び/又は香りを有する親油性成分を組み合わせる場合も含む)の、油脂と植物性ステロールエステルとの配合比は特に限定されない。
【0028】
本発明で用いられる複合体は、水の共存下において、親油性成分と、シクロデキストリンとを混合することにより得ることができる。水とシクロデキストリンを含む水系に、親油性成分を分散させることによりこの複合体が形成される。分散は、ホモジナイザーによるホモゲナイズ処理や、ニーダ等のせん断力の強い混合装置を使用した混合処理により行うことができる。シクロデキストリンの量は、例えば親油性成分の総量1重量部に対して0.00135〜135重量部であり、ホモジナイザーによりホモゲナイズ処理する場合には0.00135〜15重量部であるのが好ましい。また、複合体を製造する場合に共存させる水の量としては、例えばシクロデキストリン1重量部に対して0.01〜100重量部であるのが好ましく、0.1〜10重量部であるのがより好ましい。また、本発明の複合体を製造する場合、混合は好ましくは40〜90℃、より好ましくは50〜85℃に加温して行うのがよい。
【0029】
本発明の複合体は、より具体的には、次の(1)〜(3)のいずれの方法でも製造することができるが、親油性成分が、刺激のある味及び/又は香りを有する親油性成分を含む場合には、味、香りをより効果的に抑制する上で(1)の方法が特に好ましい。
(1)シクロデキストリン及び水を含む混合物を調製し、親油性成分を前記混合物に混合する。親油性成分が複数種の成分を含む場合は、前記混合物との混合の前に予め複数の親油性成分同士を混合して溶解させておく。
(2)親油性成分が、油脂及び/又は植物ステロールエステルと、刺激のある味及び/又は香りを有する親油性成分とを含む場合には、シクロデキストリン、水並びに油脂及び/又は植物ステロールエステルを含む混合物を調製し、刺激のある味及び/又は香りを有する親油性成分並びに水を前記混合物に混合する。
(3)親油性成分が、油脂及び/又は植物ステロールエステルと、刺激のある味及び/又は香りを有する親油性成分とを含む場合には、刺激のある味及び/又は香りを有する親油性成分並びにシクロデキストリンを含む混合物を調製し、水並びに油脂及び/又は植物ステロールエステルを前記混合物に混合する。
【0030】
これらの方法のうち、前記(1)の方法についてより具体的に説明すると、次の通りである。
【0031】
複数の親油性成分を溶解する場合には、複数の親油性成分の混合物を40〜80℃、好ましくは50〜70℃に加温して溶解すればよい。或いは、油脂及び/又は植物ステロールエステルと、刺激のある味及び/又は香りを有する親油性成分とを溶解させる場合には、予め油脂及び/又は植物ステロールエステルを40〜80℃、好ましくは50〜70℃に加温し、これに刺激のある味及び/又は香りを有する親油性成分を加えて溶解させてもよい。
【0032】
シクロデキストリン及び水を含む混合物を調製する工程において、シクロデキストリン及び水の量は、後に複合体を形成できるような量であれば特に制限はないが、例えばシクロデキストリンの量は、親油性成分の総量1重量部に対して0.00135〜135重量部であり、ホモジナイザーによりホモゲナイズ処理する場合には0.00135〜15重量部であるのが好ましい。また、水の量としては、例えばシクロデキストリン1重量部に対して0.01〜100重量部であり、0.1〜10重量部であるのが好ましい。
【0033】
親油性成分を前記混合物に混合する工程では、複合体が形成されるまで混合する。このようにして形成された複合体は、混合を停止してしばらく静置すると水中の下方に粒状物として沈殿する。尚、ここでの混合は、これらをしっかりと混練して複合体を形成する上で、ホモジナイザーによるホモゲナイズ処理や、ニーダ等のせん断力の強い混合装置を使用した混合処理がよい。
【0034】
得られた複合体は任意の形態とすることができ、例えば賦形剤を使用するなどして、粉状物や顆粒状物にすることもできる。また、水などの溶媒に分散又は乳化させた液状物やペースト状物の形態であってもよい。
得られた複合体は飲料中で分散することができる。
【0035】
本発明の飲料組成物中での、複合体の含有量は特に限定されないが、好ましくは、低カロリー甘味料100重量部に対して複合体が6.5〜7000重量部である。低カロリー甘味料が糖アルコールを含む場合には、当該糖アルコール100重量部に対して複合体が6.5〜70重量部であることが好ましい。低カロリー甘味料が高甘味度甘味料を含む場合には、当該高甘味度甘味料100重量部に対して複合体が200〜7000重量部であることが好ましい。
【0036】
本発明における親油性成分とシクロデキストリンとの複合体、及びこれを含有する飲料組成物に係る内容には、国際公開WO2009/005005号及び国際公開WO2011/074163号に記載された内容を含むものとする。
【0037】
<飲料組成物>
本発明の第一の実施形態は、低カロリー甘味料、親油性成分とシクロデキストリンとの複合体、及び水を含有する飲料組成物に関する。
【0038】
低カロリー甘味料の飲料組成物中の量の好適な範囲は上述した通りである。複合体の量の好適な範囲は、低カロリー甘味料に対する相対量として上述した通りである。
【0039】
本発明の飲料組成物は、DL−リンゴ酸等の酸味料や、クエン酸三ナトリウム、グルコン酸ナトリウム等のpH緩衝剤、乳酸カルシウム、L−カルニチン、L−カルニチンの塩(例えばL−カルニチンL−酒石酸塩、L−カルニチンフマル酸塩等)、L−シトルリン等の、飲料として許容される任意の生理活性成分や機能性成分を含有することができる。
【0040】
本発明の飲料組成物には、上記成分のほかに、飲料として許容される他の成分が適宜配合されてもよい。飲料として許容される他の成分としては、低カロリー甘味料以外の甘味料、環状オリゴ糖、酸味料、増粘剤、ビタミン類、香料、香辛料抽出物、酸化防止剤、乳化剤等が挙げられる。
【0041】
低カロリー甘味料以外の甘味料としては、ショ糖、果糖、ブドウ糖、液糖、はちみつ等の糖類が挙げられる。ただし、低カロリー甘味料以外の甘味料は含まれないことが好ましい。
【0042】
酸味料としては、リンゴ酸の他に、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、リン酸、或いはこれらの塩等が挙げられる。
【0043】
増粘剤としては、ジェランガム、発酵セルロース、キサンタンガム、アラビアガム、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、タラガム、寒天、ゼラチン、ペクチン、大豆多糖類、CMC(カルボキシメチルセルロース)、カラギナン、微結晶セルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の増粘多糖類が挙げられる。
【0044】
ビタミン類としては、ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンE、ナイアシン、イノシトール等が挙げられる。
【0045】
酸化防止剤としては、ビタミンC、ビタミンE、酵素処理ルチン、カテキン等が挙げられる。
【0046】
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン、植物性ステロール、サポニン等が挙げられる。
【0047】
本発明の飲料組成物において、水は、本発明の飲料組成物から、低カロリー甘味料、及び、親油性成分とシクロデキストリンとの複合体、並びに、場合により添加される上記の他の成分を除いた部分を構成する。
【0048】
本発明の飲料組成物は典型的には、室温(20℃)におけるpH値が4.0未満である酸性の飲料組成物である。
【0049】
本発明の飲料組成物は適当な容器に収容された状態で製品として提供されることができる。容器の種類、容量は特に限定されないが、典型的には100ml〜500mlの容量の缶や、PETボトルが挙げられる。
【0050】
本発明の飲料組成物は、例えば、必要な原料を配合し、pHを4.0未満とし、65℃〜100℃に加熱して殺菌処理を施し、容器に充填密封することにより加熱殺菌済みの容器入り飲料として製造することができる。
【0051】
<固体飲料組成物>
本発明の第二の実施形態は、低カロリー甘味料、及び、親油性成分とシクロデキストリンとの複合体を含有する、水と混合することにより飲料組成物を調製するための固体飲料組成物に関する。
【0052】
本発明の固体飲料組成物は、水と混合することにより、上述の本発明の第一の実施形態に係る飲料組成物を調製することができる組成物であることが好ましい。本発明の固体飲料組成物は、混合すべき水の量を示した文書と組み合わされたキットとして提供されることができる。
【0053】
本発明の固体飲料組成物は、粉末、顆粒、錠剤等の任意の形態であることができる。
【0054】
本発明の固体飲料組成物中では、低カロリー甘味料の含有量は、水混合後の飲料組成物中での含有量が<低カロリー甘味料>の欄で例示した含有量となる量に設定されていることが好ましい。
【0055】
本発明の固体飲料組成物中での、親油性成分とシクロデキストリンとの複合体の、低カロリー甘味料に対する含有量は、<親油性成分とシクロデキストリンとの複合体>の欄で例示した、低カロリー甘味料に対する含有量であることが好ましい。つまり、水と混合することにより、上述の各好適態様の飲料組成物を調製することができる組成物であることが好ましい。本発明の固体飲料組成物中の各成分は、所定量の水と混合したときに、上述の本発明の第一の実施形態に係る飲料組成物、又は、各好適態様の飲料組成物を調製することが可能な量及び配合割合で含まれることが好ましい。
【0056】
本発明の固体飲料組成物は、本発明の第一の実施形態に係る飲料組成物の水以外の成分を含むものであることが好ましく、更に、粉末、顆粒、錠剤等の形態に製剤化するための、賦形剤等の適切な製剤化用成分を含んでいてもよい。例えば、顆粒の形態であれば麦芽糖等を基材として使用して流動層造粒などの方法で製造すればよいし、錠剤の形態であれば、乳糖等を賦形剤等として加えた粉末や、前記造粒したものを圧縮形成などの方法により製造すればよい。
【0057】
なお、本発明の固体飲料組成物は、水と混合することなく、粉末、顆粒、錠剤等の任意の形態のまま摂取することが可能な食品組成物として提供することも可能である。当該食品組成物の形態であっても、摂取時においては、親油性成分とシクロデキストリンとの複合体による低カロリー甘味料の甘味改善効果を得ることができる。
【0058】
<甘味を改善する方法>
本発明の第三の実施形態は、低カロリー甘味料及び水を含有する飲料組成物において、親油性成分とシクロデキストリンとの複合体を更に配合することにより、前記飲料組成物における甘味を改善する方法に関する。
【0059】
本発明の方法が対象とする飲料組成物は、低カロリー甘味料及び水を含むものである限り特に限定されない。本発明の方法が対象とする飲料組成物100ml当たりの低カロリー甘味料の含有量は<低カロリー甘味料>の欄で例示した量であることが好ましい。
【0060】
親油性成分とシクロデキストリンとの複合体の配合量は、飲料組成物中の低カロリー甘味料の含有量に応じて適宜決定すればよい。本発明の方法における、飲料組成物中の低カロリー甘味料に対する親油性成分とシクロデキストリンとの複合体の配合量は、<親油性成分とシクロデキストリンとの複合体>の欄で例示した、本発明の第一の実施形態に係る飲料組成物中での低カロリー甘味料に対する含有量と同様の量であることが好ましい。つまり、上述の各好適態様の飲料組成物を調製することができるように処方することにより、第三の実施形態を好適に達成することができる。
【0061】
<甘味の改善剤>
本発明の第四の実施形態は、油性成分とシクロデキストリンとの複合体を有効成分として含有する、低カロリー甘味料及び水を含有する飲料組成物の甘味の改善剤に関する。
【0062】
本発明の甘味改善剤が対象とする飲料組成物は、低カロリー甘味料及び水を含むものである限り特に限定されない。本発明の甘味改善剤が対象とする飲料組成物100ml当たりの低カロリー甘味料の含有量は<低カロリー甘味料>の欄で例示した量であることが好ましい。
【0063】
本発明の甘味改善剤における、油性成分とシクロデキストリンとの複合体の含有量は、飲料組成物中の低カロリー甘味料の含有量に応じて適宜決定すればよい。本発明の甘味改善剤における飲料組成物中の低カロリー甘味料に対する前記複合体の含有量は、<親油性成分とシクロデキストリンとの複合体>の欄で例示した、本発明の第一の実施形態に係る飲料組成物中での低カロリー甘味料に対する含有量と同様の量となるように設定されることが好ましい。
【実施例】
【0064】
複合体※1、複合体※2、複合体※3はそれぞれ以下の手順で飲料組成物調製前に予め調製した。
【0065】
香辛料抽出物を食用油脂に加え、撹拌しながら60℃で加温溶解した。別途、シクロデキストリンと60℃の水とを混合して混合物を調製した。この混合物に前記の香辛料抽出物を溶解した食用油脂を加え、乳鉢を用いて60℃で加温しつつ10分間混練して複合体※1、※2を製造した。複合体※3は、前記と同様に調製したシクロデキストリンと水との混合物に食用油脂を加え、前記と同様に混練して製造した。
【0066】
甘味料※2及び甘味料※3の詳細は表3に示すとおりである。
【0067】
表1に示す配合に従って所定の材料を混合して溶解させ、飲料組成物試料として実施例1〜4及び比較例1を調製した。表1中、水の「残量」とは飲料組成物が100mlとなる量であることを指す。
pH値は20℃において測定した。
【0068】
各組成物を12名のパネラーにより官能評価し、各組成物の甘味を含めた風味品質の特徴をまとめた。結果を表1に示す。
【0069】
低カロリー甘味料を含む比較例1の飲料組成物は、味の厚みがなく、甘くどさが感じられる。シクロデキストリンを、親油性成分と複合体化していない状態で加えても、甘味改善効果が得られないことがわかる。
【0070】
これに対して、油脂−シクロデキストリン複合体を配合することにより味に厚みが付与され、自然な甘味が感じられる(実施例1〜4)。甘味料としてスクラロースのみを用いた場合でも、油脂−シクロデキストリン複合体を配合することにより同様の効果が奏されることが確認された(実施例2)。
【0071】
また、甘味が改善され、同時に油脂−シクロデキストリン複合体によって唐辛子の辛味が感じられない、風味品質の高い飲料組成物が得られた(実施例1〜3)。また、低カロリー甘味料として、エリスリトール、スクラロース、アセスルファムカリウム及びアスパルテームを組み合わせて用いることによって、最も高い甘味改善効果が得られた(実施例1、3)。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
表4に示す配合に従って所定の材料を混合して粉末の固体飲料組成物を調製し、これを袋に定量充填して密封し、容器詰め固体飲料組成物として実施例5〜8を調製した。
【0076】
各組成物を水に溶解させて飲料組成物試料として官能評価し、各組成物の甘味を含めた風味品質の特徴をまとめた。結果を表5に示す。表5中、水の「残量」とは飲料組成物が100mlとなる量であることを指す。
【0077】
【表4】

【0078】
【表5】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
低カロリー甘味料、親油性成分とシクロデキストリンとの複合体、及び水を含有することを特徴とする飲料組成物。
【請求項2】
低カロリー甘味料として、糖アルコール及び高甘味度甘味料の各々を1種以上含有する請求項1に記載の飲料組成物。
【請求項3】
糖アルコールとして、エリスリトールを含有する請求項1又は2に記載の飲料組成物。
【請求項4】
高甘味度甘味料として、スクラロース、アセスルファムカリウム及びアスパルテームを組み合わせて含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の飲料組成物。
【請求項5】
親油性成分とシクロデキストリンとの複合体として、植物性ステロールエステルと他の親油性成分とシクロデキストリンとを含む複合体を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の飲料組成物。
【請求項6】
親油性成分とシクロデキストリンとの複合体における前記他の親油性成分として、刺激のある味及び/又は香りを有する親油性成分を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の飲料組成物。
【請求項7】
水と混合することにより請求項1〜6のいずれか1項に記載の飲料組成物を調製するための固体飲料組成物。
【請求項8】
低カロリー甘味料及び水を含有する飲料組成物において、親油性成分とシクロデキストリンとの複合体を更に配合することにより、前記飲料組成物における甘味を改善する方法。
【請求項9】
低カロリー甘味料、及び親油性成分とシクロデキストリンとの複合体を含有することを特徴とする食品組成物。
【請求項10】
低カロリー甘味料として、糖アルコール及び高甘味度甘味料の各々を1種以上含有する請求項9に記載の食品組成物。
【請求項11】
糖アルコールとして、エリスリトールを含有する請求項9又は10に記載の食品組成物。
【請求項12】
高甘味度甘味料として、スクラロース、アセスルファムカリウム及びアスパルテームを組み合わせて含有する請求項9〜11のいずれか1項に記載の食品組成物。
【請求項13】
親油性成分とシクロデキストリンとの複合体として、植物性ステロールエステルと他の親油性成分とシクロデキストリンとを含む複合体を含有する請求項9〜12のいずれか1項に記載の食品組成物。
【請求項14】
親油性成分とシクロデキストリンとの複合体における前記他の親油性成分として、刺激のある味及び/又は香りを有する親油性成分を含有する請求項9〜13のいずれか1項に記載の食品組成物。

【公開番号】特開2013−78307(P2013−78307A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−208682(P2012−208682)
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【出願人】(000111487)ハウス食品株式会社 (262)
【Fターム(参考)】