説明

飲料組成物

【課題】高濃度のコラーゲンペプチドを含有し、且つ、pH4.0以下のpH範囲において適度な酸味と良好な風味とを有する飲料組成物を提供する。
【解決手段】平均分子量が3000以下の低分子コラーゲンペプチド2000mg/10mL以上と、リン酸を含む2種以上の酸味料と、を含有し、pHが4.0以下の飲料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、ゼラチンとして、食品分野で従来から用いられている動物性蛋白質であるが、真皮や結合組織などの主成分であることから、近年、医療分野や美容分野の面からも特に注目を集めている。また、摂取したコラーゲンを体内で効率的に利用するために、高分子のコラーゲンを低分子量化したコラーゲンペプチド入りの飲食品も開発されている。更には、高い効果を得るために、一本当たり10,000mgのコラーゲンペプチドを配合した飲料が主流になりつつある。
このようなコラーゲンペプチドを用いた飲料には、コラーゲンペプチド独特の臭みを有することに起因した嗜好性の観点での課題が存在する。特に、一本当たり10,000mgのコラーゲンペプチドを配合した場合は、コラーゲンペプチドの濃度が通常よりも高くなることから、特に臭みが強調される。
【0003】
このように不快臭を有するコラーゲンペプチドを含む飲料について、例えば、特許文献1には、コラーゲン加水分解物を含む多種の栄養素を含有する飲料において、ハトムギエキス等を含む2種以上のエキスや、酸味剤、フルーツ系フレーバー等を用いることで風味が良好な健康飲料を実現する技術が開示されている。また、コラーゲンペプチドの不快臭の抑制に加えて、果汁を含む飲料において生じるミネラル等による凝集や沈殿を抑えるため、特許文献2には、コラーゲンペプチドに加えて、果汁とリン酸またはリン酸塩とを用いる技術が開示されている。特許文献2では、ブドウ濃縮果汁等の果汁と、メタリン酸ナトリウム等のリン酸塩とを配合して、不快臭が抑制され、風味がよく、保存安定性に優れた液体経口用組成物が得られると記載されている。
【0004】
一方、このようなコラーゲンペプチドを含有する飲料は、清涼飲料水に分類され、殺菌の目的で加熱処理が行われている。殺菌の条件は、大きくは飲料のpHによって区別されており、酸性領域においては酵母又はカビ、中性pH領域では細菌芽胞を、それぞれ殺菌対象としている。日本における食品衛生法には、保存基準がなく殺菌を要するものの製造基準として、pH4.0未満のものの殺菌は、中心部温度を65℃10分間加熱する方法又は同等以上の方法、pH4.0〜4.6のものの殺菌は、85℃30分間加熱する方法又は同等以上の方法、と記載されており、飲料に防腐性を付与し安全な飲料とする目的で飲料自体のpHを低く抑える、という別の課題が存在する。
【0005】
また、このような高濃度のコラーゲンペプチドを含有する飲料に関し、特許文献3には、クエン酸やアスコルビン酸を用いてpH4.0以下に調整した飲料が開示されている。この特許文献では、飲料を冷蔵庫で冷やした状態と室温で保持した状態のテクスチャーをともに良好にする目的で飲料の粘度を最適に保ち、ヨーグルト等のフレーバーにて風味を持たせる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−199855号公報
【特許文献2】国際公開第2007/125888号パンフレット
【特許文献3】特開2011−103822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、コラーゲンペプチドには、pH緩衝能を有することが知られている。高濃度のコラーゲンペプチドを含有する場合は、コラーゲンペプチドが有するpH緩衝能が無視できなくなる。特に、防腐性維持の目的でpH4.0以下という低pHを実現する手段として多くの酸を使用する必要が生じた場合、酸味料の使用量が過剰となり酸味を強く感じてしまい、風味が損なわれるという弊害が生じることが判明した。
従って、本発明においては、高濃度のコラーゲンペプチドを含有し、且つ防腐性に効果のあるpH4.0以下のpH範囲において、適度な酸味と良好な風味を実現した飲料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下のとおりである。
[1] 平均分子量が3000以下の低分子コラーゲンペプチド2000mg/10mL以上と、リン酸を含む2種以上の酸味料と、を含有し、pHが4.0以下の飲料組成物。
[2] 前記リン酸の濃度が、前記組成物の容量に対して、20mg/10mL〜200mg/10mLである[1]に記載の飲料組成物。
[3] 前記酸味料が、リン酸と、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、乳酸、コハク酸、及びフマル酸からなる群より選択された少なくとも1種とを含有する[1]又は[2]に記載の飲料組成物。
[4] リジン、プロリン及びオルニチンからなる群より選択された少なくとも1種のアミノ酸を含有する[1]〜[3]のいずれかに記載の飲料組成物。
[5] アスパルテーム、ソーマチン、ステビア、スクラロース、及びアセスルファムカリウムからなる群より選択された少なくとも1種の高甘味度甘味料を含む[1]〜[4]のいずれかに記載の飲料組成物。
[6] [1]〜[5]のいずれか記載の飲料組成物を含む容器詰飲料。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高濃度のコラーゲンペプチドを含有し、且つ、pH4.0以下のpH範囲において適度な酸味と良好な風味とを有する飲料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明にかかる飲料組成物は、平均分子量が3000以下の低分子コラーゲンペプチド2000mg/10mL以上と、リン酸を含む2種以上の酸味料と、を含有し、pHが4.0以下の飲料組成物である。
本発明によれば、所定の平均分子量を有する低分子コラーゲンペプチドを2000mg/10mL以上という高濃度で含み、且つ、酸味料として、リン酸と他の酸味料とを含むので、pH4.0以下であっても、適度な酸味と良好な風味とを有するコラーゲンペプチド飲料組成物を提供することができる。
これを詳細に説明すれば、前記飲料組成物では、酸味料の一部をリン酸とすることで、平均分子量が3000以下の低分子コラーゲンペプチドを2000mg/10mL以上の高濃度で含有した飲料組成物をpH4.0以下に調整した場合に、コラーゲンペプチドがpH緩衝能を有しているとしても、過剰な酸味を抑え、かつ防腐性を維持することが可能となる。
【0011】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
また、本発明において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
また、本発明において、組成物中の各成分の量又は濃度について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
以下、本発明について説明する。
【0012】
前記コラーゲンペプチドは、平均分子量3000以下の低分子量コラーゲンペプチドである。平均分子量3000以下とすることにより、飲食品として摂取したときのコラーゲンペプチドの吸収性が高くなり、また、室温と冷蔵での粘性に大きな差が生じることを回避できる傾向がある。前記コラーゲンペプチドの平均分子量は、500〜3000であることが好ましく、1000〜3000であることが更に好ましい。平均分子量を500以上とすることにより好ましいテクスチャーを有する粘性が得られる傾向がある。
【0013】
コラーゲンペプチドの平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:ポリエチレングリコール(PEG)標準)にて測定した値を意味するが、市販品の場合には、供給元から提供される製品情報に従えばよい。
GPCで平均分子量を求めるには、あらかじめ分子量が既知で異なるポリエチレングリコール(PEG)数種を同条件で測定して得られたリテンションタイムと分子量の関係の検量線を元に算出する。本発明における平均分子量とは、この手法に従ってPEG換算で算出した重量平均分子量を指す。
【0014】
前記コラーゲンペプチドは、ゼラチンを酵素や酸で加水分解して得られたものであり、グリシンを多く含むタンパク質であり、市販品としても入手可能である。コラーゲンとしては、哺乳類のコラーゲン組織から抽出したコラーゲンであっても、魚類のコラーゲン組織から抽出したコラーゲンであっても、特に限定されるものではない。近年、商品イメージや安全性等の観点から、魚類由来のコラーゲンであることが好ましい。魚類由来のコラーゲンの原料としては、海水魚であっても淡水魚であってもよく、マグロ(キハダ)、サメ、タラ、ヒラメ、カレイ、タイ、テラピア、サケ、ナマズ等の皮が挙げられる。これらの魚類由来のコラーゲンは、魚類の鱗や皮から抽出したものであり、ヒトや他の動物のコラーゲンに比較してプロリンやリジン等の含有量が少ない特徴がある。哺乳類由来のコラーゲンの原料としては、ブタ、牛などが挙げられる。
【0015】
前記コラーゲンペプチドの濃度は2000mg/10mL以上である。2000mg/10mL以上とすることにより、コラーゲンペプチドを体内で効率的に利用することができる。前記コラーゲンペプチド濃度は、前記飲料組成物の容量に対して2000mg/10mL以上であれば特に制限はないが、2000mg/10mL以上〜4000mg/10mLが好ましく、2500mg/10mL〜3500mg/10mLがさらに好ましい。4000mg/10mL以下とすることにより、飲料として許容可能な範囲内の粘度にすることができる。
【0016】
前記飲料組成物は、リン酸を含む2種以上の酸味料を含有する。これにより、酸味を抑えつつ溶液のpHを4.0以下にすることができ、適度な酸味及び良好な風味を実現することができる。前記飲料組成物において使用可能なリン酸は、飲食品として使用可能であれば特に制限なく使用することができる。ただし、メタリン酸ナトリウムなどのリン酸塩では、適度な酸味と良好な風味を維持しつつ、前記飲料組成物のpHをpH4.0以下にすることができない。
前記飲料組成物におけるリン酸の濃度としては、前記飲料組成物の容量に対して20mg/10mL〜200mg/10mLが好ましく、25mg/10mL〜130mg/10mLがより好ましい。20mg/10mL以上とすることにより、適度な酸味が得られる傾向があり、200mg/10mL以下とすることにより、不自然な苦みを抑えやすい傾向がある。
【0017】
リン酸以外の前記酸味料としては、飲料に対して使用可能な酸味料、特に清涼飲料水に対する使用が好適な酸味料であれば特に制限はなく使用できる。その中で、本発明において好ましい風味を実現できる前記酸味料は、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、乳酸、コハク酸、又はフマル酸であり、中でも飲料としての刺激と清涼感のバランスの観点からクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、又はアスコルビン酸がより好ましく、pH調整能の観点から、クエン酸、酒石酸、又はリンゴ酸が更に好ましい。リン酸以外のこれらの酸味料は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
前記飲料組成物における、リン酸以外の前記酸味料の濃度としては、前記飲料組成物の容量に対して、10mg/10mL〜800mg/10mLが好ましく、20mg/10mL〜350mg/10mLがより好ましい。10mg/10mL以上とすることにより、リン酸と共に使用して適度な酸味を得ることができ、800mg/10mL以下とすることにより、過度な酸味や刺激を充分に抑えることができる傾向がある。
【0019】
前記リン酸を含む酸味料の総量については、前記コラーゲンペプチドの濃度に応じて変更可能である。本発明においては、前記コラーゲンペプチドの濃度が2000mg/10mL以上であることを特徴とするものであり、前述したようにこの濃度範囲のコラーゲンペプチドが強いpH緩衝能を有するために、コラーゲンペプチドの濃度に応じて、酸味料の総量を適宜設定することができる。リン酸を含む酸味料の総量は、前記飲料組成物の容量に対して、50mg/10mL〜600mg/10mLであることが好ましく、80mg/10mL〜500mg/10mLであることがより好ましく、100mg/10mL〜400mg/10mLであることが更に好ましい。50mg/10mL以上とすることにより、飲料組成物の風味を良好にする傾向があり、600mg/10mL以下とすることにより、適度な酸味を実現できる傾向がある。
【0020】
また、前記コラーゲンペプチドの濃度を変更する場合には、コラーゲンペプチド独特の臭みとバランスをとり良好な風味を付与するために、リン酸に対するリン酸以外の酸味料の割合を変更することが好ましい。前記飲料組成物におけるコラーゲンペプチドの濃度、使用される酸味料の種類等によって異なるが、リン酸の含有率は、例えば、酸味料全体の9質量%〜85質量%の範囲内で設定することができる。
【0021】
前記飲料組成物は、リジン、プロリン及びオルニチンからなる群より選択された少なくとも1つのアミノ酸を含有することが好ましい。アミノ酸の一種であるリジン、プロリン及びオルニチンは、コラーゲンの構成成分又はコラーゲンの合成促進成分として知られており、体内でのこれらの追加アミノ酸を添加することによって、体内におけるコラーゲンの生成効率及び利用効率がいっそう高まることが期待される。なお、本発明において用いられるアミノ酸は、L体のみ用いられる。
【0022】
特に、前記コラーゲンペプチドとして、魚由来の低分子量コラーゲンペプチドを用いた場合には、より効果的なコラーゲンの利用効率を高めるために、前記アミノ酸の併用が好ましく、中でも、リジンの併用が更に好ましい。
【0023】
前記アミノ酸の前記飲料組成物における濃度は、前記飲料組成物の容量に対して10mg/10mL〜200mg/mLが好ましく、30mg/10mL〜100mg/mLがより好ましい。前記アミノ酸の濃度が10mg/10mL以上であれば、コラーゲンペプチドが効果的に利用される傾向があり、200mg/10mL以下であれば、アミノ酸特有の風味を抑えることができる。
【0024】
前記飲料組成物は、更に好ましい風味の飲料に調整するために、高甘味度甘味料及び高甘味度甘味料以外の甘味料からなる群より選択された少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0025】
前記高甘味度甘味料とは、砂糖の数十倍〜数千倍の甘みを有する合成甘味料または天然甘味料の総称である。前記高甘味度甘味料の例としては、風味を好ましく調整できる範囲において制限はないが、本発明においては、アスパルテーム、ソーマチン、ステビア、スクラロース、又はアセスルファムカリウムを好ましく使用でき、更には、アセスルファムカリウム、又はスクラロースが好ましい。前記高甘味度甘味料は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記飲料組成物における前記高甘味度甘味料の濃度としては、1mg/10mL〜50mg/10mLが好ましく、3mg/10mL〜25mg/10mLがより好ましい。1mg/10mL以上であれば、適度な甘味を実現できる傾向があり、50mg/10mL以下であれば、適度な風味を実現できる傾向がある。
【0026】
前記高甘味度甘味料以外の前記甘味料としては、糖類、糖アルコール及び粉糖を挙げることができる。前記糖類としては、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、異性化糖等の単糖類;砂糖、乳糖、パラチノース等の二糖類;フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等のオリゴ糖類などを挙げることができる。前記糖アルコールとしては、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等の単糖アルコール類;マルチトール、イソマルチトール、ラクチトール等の二糖アルコール類;マルトトリイトール、イソマルトトリイトール、パニトール等の三糖アルコール類;オリゴ糖アルコール等の四糖以上アルコール類;粉末還元麦芽糖水飴等の糖アルコールなどが挙げられる。前記甘味料としては、ブドウ糖、粉糖、エリスリトール、キシリトール、ソルビトールがより好ましく、更にはエリスリトールが最も好ましい。これらの甘味料は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせ使用してもよい。
【0027】
前記飲料組成物における高甘味度甘味料以外の前記甘味料の濃度としては、100mg/10mL〜5000mg/10mLが好ましく、300mg/10mL〜2500mg/10mLがより好ましい。前記甘味料は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい
また、前記飲料組成物は、前記高甘味度甘味料及びそれ以外の甘味料をそれぞれ単独で使用してもよく、これらを組み合わせて使用してもよい。前記飲料組成物としては、好ましくは、高甘味度甘味料、及び高甘味度甘味料以外の甘味料を併用して用いることができる。
【0028】
前記飲料組成物は、風味を調整するために、更に香料を好ましく含むことができる。前記香料としては、ヨーグルト、シュガー、ライチ、ピーチ、マンゴー、パイナップル、ラズベリー、ブルーベリー、クランベリー、ペアーのいずれかの香料が好ましい。
前記飲料組成物における前記香料の濃度としては、10μL/10mL〜200μL/10mLが好ましく、30μL/10mL〜100μL/10mLがより好ましい。
【0029】
前記飲料組成物には、機能性油性成分を含んでもよい。前記機能性油性成分とは、生体へ適用した場合に、適用された生体において所定の生理学的効果の誘導が期待され得る油性成分を意味する。前記機能性油性成分の例としては、β−カロテン、アスタキサンチン、ルテイン、リコピン等のカロテノイド類;リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、スクワレン、スクワラン、これらを含有する魚油等の不飽和脂肪酸;コエンザイムQ10などを挙げることができる。
【0030】
前記飲料組成物には、その他の添加成分を含有してもよい。このような添加成分としては、各種ビタミン、ミネラル、着色料、酸化防止剤、安定剤、保存料、乳化剤、消泡剤などを挙げることができる。
【0031】
前記飲料組成物の粘度は、室温(25℃)においては10mPa・s〜35mPa・sの範囲に、また4℃においては20mPa・s〜50mPa・sの範囲にあること好ましい。この範囲内であれば、室温のまま飲用した場合でも冷蔵して飲用した場合でも良好なテクスチャーを実現するために望ましい。室温において10mPa・s又は4℃において20mPa・s以上とすることにより、さらっとし過ぎることがなく、食したときのテクスチャーとしての充分な満足感が得られる粘度となる傾向がある。また室温において35mPa・s又は4℃において50mPa・s以下とすることにより、飲みやすい粘度となる傾向がある。すなわち、上記範囲内とすることにより、良好なテクスチャーを実現できる傾向がある。
なお、前記飲料組成物の粘度は、回転式粘度計により測定することができる。
【0032】
前記飲料組成物のpHは4.0以下である。pH4.0を超えると、防腐性の効果が減少する。なお、pH4.0を超える飲料組成物の場合には、食品衛生法により製造工程においてより強い加熱処理が必要となり、風味が損なわれる傾向や、成分が劣化する傾向がある。前記飲料組成物のpHは、3.0〜4.0であることが好ましく、pH3.4〜4.0であることが更に好ましい。pHを3.0以上とすることにより、pH調整の際に使用する酸味料の量の増加を抑制できる傾向がある。
【0033】
前記飲料組成物の製造方法は、平均分子量が3000以下の低分子コラーゲンペプチド2000mg/10mL以上と、リン酸を含む2種以上の酸味料と、を混合すること(混合工程)、及び、pHを4.0以下に調整すること(pH調整工程)を含む。
これにより、前述した本発明にかかる前記飲料組成物を調製することができる。
【0034】
混合工程では、前記飲料組成物を構成する各成分を混合することを含む。各成分は、好ましい水性媒体に対して混合すればよい。用いられる水性媒体としては、通常、水が用いられる。各成分の混合については、特に制限はなく、各成分が十分に溶解する温度、例えば、20℃〜80℃の温度範囲内で行われる。前記混合は、撹拌しながら行うことが好ましい。また、各成分の添加順序については、各成分が均一に混合される範囲内であれば、特に制限はない。
【0035】
上述したように、前記飲料組成物は、リン酸と前記酸味料とを含むことによって所定のpH範囲内に調整される必要があるために、pH調整工程は、前記混合工程と同時に行ってもよい。また、前記pH調整工程は、必要に応じて、混合工程の後に別個独立に行われてもよい。
【0036】
前記飲料組成物の製造方法は、必要に応じて、上記以外の他の工程を含むことができる。このような追加の工程としては、粘度調整工程、濾過工程等を挙げることができる。粘度調整工程及び濾過工程等は、当業界で公知の方法を適用すればよい。
【0037】
また、前記飲料組成物は、当該組成物を含む容器詰飲料としてもよい。前記容器詰飲料は、前記飲料組成物を容器詰めすることにより得られる。本容器詰飲料に使用される容器としては、通常飲料用容器として使用されているものであればよく、例えば、PETボトル、紙パック、ガラス容器、アルミ缶、スチール缶、パウチ等を挙げることができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。しかしながら、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0039】
(飲料組成物の調製)
[実施例1]
平均分子量2700のコラーゲンペプチド10000mgに、L−リジン200mg、エリスリトール1000mg、スクラロース7.2mg、アセスルファムカリウム8.4mgを加え、更にL−アスコルビン酸を400mg、クエン酸250mg、L−酒石酸350mg、リン酸130mgを加えた。これに水を15mL加え50℃で加温溶解し、溶解後に香料を加えたのち追加で水を加え、全体の容量を30mLに調整し、飲料組成物を調製した。
得られた飲料組成物のpHを測定したところ、3.88であった。
【0040】
[実施例2〜47]
各素材及び配合量を表1、表2、表5及び表7に示すように変更した以外は全て実施例1と同様の手順で飲料組成物を調製した。
【0041】
[比較例1〜44]
各素材及び配合量を表3、表4、表6及び表8に示すように変更した以外は全て実施例1と同様の手順で飲料組成物を調製した。
【0042】
(pH測定)
実施例1〜47および比較例1〜44の飲料組成物について、25℃においてpHを測定した。結果を表1〜表8に示す。
【0043】
(風味評価)
実施例1〜47および比較例1〜44の飲料組成物について、pHが4.0以下であったものについて風味の評価を行った。
風味評価は、実施例及び比較例の各飲料を試飲し、酸味の清涼感及び刺激の観点で風味を官能評価した。非常に良好であれば◎◎、清涼感がやや不足だが良好であれば◎、良であれば○、許容されるレベルであれば△、製品として問題がある場合には×と評価した。
結果を表1〜表8に示した。なお、表1〜表8中「○*1」は、やや舌に刺さる感じがあるが、風味としては良であることを意味し、「○*2」は、清涼感、刺激がやや不足しているが風味としては良であることを意味する。「△*1」は、辛味を伴う酸味を感じるが、許容されることを意味する。また、「×*1」は、清涼感、刺激が少なく、あっさりしすぎていることを意味し、「×*2」は、清涼感、刺激が少なく、やや苦っぽさを感じることを意味する。「−」は、pHが4.0を超えているため評価していないことを意味する。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
【表5】

【0049】
【表6】

【0050】
【表7】

【0051】
【表8】

【0052】
表1〜表2に示されるように、コラーゲンペプチド3333mg/10mLを含有する飲料組成物において、リン酸と他の酸味料とを含み、pH4.0以下とした実施例1〜23の飲料組成物は、いずれも適度な酸味と良好な風味を備えた飲料組成物であった。更に、リン酸以外の酸味料として、クエン酸、酒石酸、及びリンゴ酸のうちの少なくとも1種を含有する実施例1〜7、11〜23の飲料組成物の風味がより良好であることが確認された。
【0053】
これに対して表3〜表4の示されるように、比較例1〜7、13〜17は、pHが4.0を超えるため、防腐性の観点で不適であった。特に、メタリン酸ナトリウム等のリン酸塩を用いた比較例13〜17では、リン酸と同じ量で使用し且つ、pH4.0以下となる場合の他の酸味料を同量併用してもpHを4.0以下にすることができなかった。また、pHを調節する酸として、リン酸のみを使用した比較例11及び比較例12では、清涼感に欠けた風味であり、リン酸を使用しない比較例8〜10、18〜21は、酸味の刺激が強くなり、好ましい風味が得られなかった。
【0054】
同様の傾向は、コラーゲンペプチド2500mg/10mLを含有する飲料組成物(表5及び表6、実施例24〜35、比較例22〜33)、並びにコラーゲンペプチド2000mg/10mLを含有する飲料組成物(表7及び表8、実施例36〜47、比較例34〜44)においても同様であった。
【0055】
本発明によれば、高濃度のコラーゲンペプチドを含有し、且つ、pH4.0以下のpH範囲において適度な酸味と良好な風味とを有する飲料組成物が得られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均分子量が3000以下の低分子コラーゲンペプチド2000mg/10mL以上と、
リン酸を含む2種以上の酸味料と、
を含有し、pHが4.0以下の飲料組成物。
【請求項2】
前記リン酸の濃度が、前記組成物の容量に対して、20mg/10mL〜200mg/10mLである請求項1に記載の飲料組成物。
【請求項3】
前記酸味料が、リン酸と、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、乳酸、コハク酸、及びフマル酸からなる群より選択された少なくとも1種とを含有する請求項1又は請求項2記載の飲料組成物。
【請求項4】
リジン、プロリン及びオルニチンからなる群より選択された少なくとも1種のアミノ酸を含有する請求項1に記載の飲料組成物。
【請求項5】
アスパルテーム、ソーマチン、ステビア、スクラロース、及びアセスルファムカリウムからなる群より選択された少なくとも1種の高甘味度甘味料を含む請求項1記載の飲料組成物。
【請求項6】
請求項1記載の飲料組成物を含む容器詰飲料。