説明

飲酒検出装置

【課題】手袋の装脱着やハンドル持ち位置等の制約がない高精度な飲酒検出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】アルコール検出部11を人体の足の一部分に当接するように装着し、前記足の皮膚から発せられる汗中のアルコール濃度を検出するようにしたので、手袋の装着時やハンドル持ち位置等の制約がない上に車両起動時や運転中に関わらず飲酒を判断でき、さらに装着検出スイッチ19と温湿度センサ21によりアルコール検出部11の装着を判断しているので、非装着による不正を検出できる上、アルコール検出部11が運転席近傍にあるときのみ車両側の送電装置51より送電される電力をアルコール検出部11の受電手段38が受電しているので、受電していれば運転者がアルコール検出部11を装着していると判断でき、運転者の飲酒を高精度に判断可能な飲酒検出装置を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に運転者の飲酒状態を検出する車両用の飲酒検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、飲酒運転による事故を低減するために、運転者の飲酒状態を検出する飲酒検出装置が開発されている。また、この飲酒検出装置の出力によって、自動車(以下、車両という)の起動や動作を制御するシステムも各種検討されている。
【0003】
このような飲酒検出装置としては、呼気中のアルコール濃度をアルコールセンサで検出するものが一般的である。これは、飲酒により増大した血中アルコール濃度が呼気中のアルコール濃度と比例関係にあることを利用したもので、飲酒運転取り締まり時の飲酒状態検出にも用いられている。しかし、この方法で運転者の飲酒を検出すると、非飲酒の他人による呼気や、風船に詰めた非飲酒時の呼気を飲酒検出装置に吹き込むという不正を排除できない可能性がある。さらに、飲酒検出装置を車内に設置した場合は、同乗者の呼気中アルコールや、芳香剤中のアルコール等によって運転者の飲酒を誤検出する可能性もある。
【0004】
これに対し、呼気中アルコール濃度と同様に、血中アルコール濃度と比例関係にある汗中アルコール濃度を検出する飲酒検出装置が下記特許文献1に提案されている。図9はこのような飲酒検出装置の概略構成図である。
【0005】
図9において、車両の運転席に配置されるハンドル101と変速ギア103には、それぞれ掌が接触する部分にアルコールを検出するセンサ素子105が設けられている。センサ素子105は一対の電極と、それらを覆うアルコール感応膜からなり、アルコール成分の感応膜への付着により抵抗値が変化するものである。従って、掌から発生した汗の蒸気がセンサ素子105に至ることにより汗中アルコール濃度を検出することができる。これらのセンサ素子105から得られた出力信号はアルコール濃度測定部107に伝達され、アルコール濃度が求められる。アルコール濃度測定部107で求めたアルコール濃度出力は飲酒運転判定部109に伝達され、ここで運転者の飲酒状態が判定される。判定結果は後段処理部111に伝達され、もし運転者が飲酒状態であれば、飲酒運転の抑制、警告、防止、制御等の後段処理が行われる。具体的には、車両が起動できないようにロックしたり、走行中であれば速度を抑制する制御を行う。
【0006】
このように、運転者が操作するハンドルや変速ギアにセンサ素子105を設けたので、運転者の汗中アルコール濃度を検出することができる。従って、呼気によるアルコール検出に比べ不正や誤検出の可能性が低減される。
【特許文献1】特開2005−224319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような飲酒検出装置は確かに呼気中アルコール濃度検出に比べ高精度に運転者の飲酒を検出できるのであるが、特に不正に対しては依然として以下のような問題があった。
【0008】
1)運転者が非通気性の手袋をはめた状態で起動、運転した場合
2)非通気性の布等でセンサ素子105を塞いだ状態で運転した場合
3)運転者がセンサ素子105の配置されていない部分を触って運転した場合
以上、いずれの場合も汗中アルコール濃度が検出されないので、運転手は非飲酒と判断されてしまう。これに対し従来の構成では、車両の起動時には運転者が手袋を装着せずにセンサ素子105に掌を置き、汗中アルコール濃度を測定しなければならないようにしている。また、運転中にもアルコール濃度を検出する場合、上記1)〜3)のいずれかの状態であれば、いずれもセンサ素子105からの出力が変化しなくなるため、飲酒検出装置は、ある設定時間の間に出力変化がなければ飲酒運転と判断するようにしている。これらのことから、運転者は必ずいずれかのセンサ素子105に掌を置いた状態で車両起動、および運転を行わなければならない。
【0009】
このような制約があると、特に職業運転者が手袋を装着して運転する場合に、車両起動毎に手袋を外してセンサ素子105に掌を置き、非飲酒と判断されて車両が起動した後に再度手袋を装着するという煩わしさがあるという課題があった。さらに、運転中も飲酒を検出する場合はセンサ素子105に掌を置く必要があるので、特に個人差の大きいハンドル持ち位置が拘束されることにより運転しにくくなる場合があるという課題があった。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、手袋の装脱着やハンドル持ち位置等の制約がない高精度な飲酒検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明の飲酒検出装置は、人体の足の一部分に当接するよう配され、前記足の汗蒸気を取り込む汗蒸気導入口と、前記汗蒸気導入口に配した透湿膜と、前記汗蒸気導入口に吸気側を接続したポンプと、前記ポンプの排気側に設けたアルコールセンサと、足裏の一部分に当接するよう配された装着検出スイッチと、車両との交信を行う送受信回路と、前記ポンプ、アルコールセンサ、装着検出スイッチ、および送受信回路が接続された制御回路と、前記制御回路、および送受信回路に接続され、それぞれに電力を供給する蓄電部と、前記蓄電部と前記制御回路に接続された充電回路と、前記充電回路に接続された受電手段とを内蔵し、前記足に装着されるアルコール検出部、および、前記受電手段が運転席近傍にある時のみ電力を送る送電手段と、前記送電手段に接続された送電回路と、前記送電回路に電力を供給するように接続された車両用バッテリとからなる送電装置により構成され、前記制御回路は、前記装着検出スイッチがオンの時に前記アルコール検出部が前記足に装着されていると判断し、この状態で、前記送電装置より送電される電力を前記受電手段が受電しており、かつ、前記ポンプで吸引した前記汗蒸気に対する前記アルコールセンサの出力が飲酒規制値以上であれば、運転者が飲酒していると判断するようにしたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アルコール検出部を人体の足に装着し、足の皮膚から発せられる汗中のアルコール濃度を検出するようにしたので、手袋の装着時やハンドル持ち位置等の制約がない上に、車両起動時や運転中に関わらず飲酒を判断できる。さらに、装着検出スイッチによりアルコール検出部の装着を判断しているので、非装着による不正を検出できる上、アルコール検出部が運転席近傍にある時のみ車両側の送電装置より送電される電力をアルコール検出部の受電手段が受電しているので、受電していれば運転者がアルコール検出部を装着していると判断できる。これらのことから、運転者の飲酒を高精度に判断可能な飲酒検出装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における飲酒検出装置のアルコール検出部の断面図であり、(a)は全体断面図を、(b)は足裏の先が当接する部分の靴底における拡大断面図を、それぞれ示す。図2は本発明の実施の形態1における飲酒検出装置のブロック回路図である。図3は本発明の実施の形態1における飲酒検出装置の車両使用時での電力供給模式図である。図4は本発明の実施の形態1における飲酒検出装置の車両非使用時でのアルコール検出部の動作を示すフローチャートである。図5は本発明の実施の形態1における飲酒検出装置の車両起動時でのアルコール検出部の動作を示すフローチャートである。図6は本発明の実施の形態1における飲酒検出装置の車両使用時でのアルコール検出部の動作を示すフローチャートである。
【0015】
図1(a)において、アルコール検出部11は靴に内蔵された構成としている。これにより、運転者に負担にならずにアルコール検出部11を足に装着することができる。なお、本実施の形態1では特に右足の靴にアルコール検出部11を内蔵する構成としている。これは、車両運転時に右足は必ずアクセルペダルやブレーキペダルを操作するため、右足の位置が運転席周りで限定されるためである。これにより、後述するように送電手段からの電力をアルコール検出部11がより確実に受電できる上、確かに運転者がアルコール検出部11を内蔵した靴を装着していると判断できる。これに対し、左足の靴の場合は、特に自動変速機を搭載した車両では左足をどこに置くかは運転者によって異なる可能性が大きい。ゆえに、前記した受電と運転者の靴装着判断が不確実になる。従って、アルコール検出部11は右足の靴に内蔵される構成が望ましい。
【0016】
また、アルコール検出部11は、運転者が車両に接近すれば車両との交信により車両を開錠し、車両から遠ざかれば施錠を行うことができる機能を有している。従って、車両使用時に鍵を所持する必要がなくなり運転者にとって利便性が向上する上に、車両運転時にアルコール検出部11の装着が必須となる。その結果、飲酒検出の確実性が向上する。さらに、アルコール検出部11の装着が必須となることにより、車両の運転に不適切なサンダルやヒール等の履物を運転者が履くことがなくなるため、安全性の向上効果も得られる。
【0017】
次に、アルコール検出部11の詳細について説明する。まず、アルコール検出部11には人体の足から発せられる汗蒸気を取り込むために、足の一部分に当接する汗蒸気導入口15が設けられている。本実施の形態1では、アルコール検出部11が靴に内蔵された構成であるので、足において多くの汗蒸気を発する足裏に当接する部分に汗蒸気導入口15を設けている。
【0018】
なお、一般に靴を履く時には靴下を履いているが、前記したように足裏部分に汗蒸気導入口15を設けているので、足裏から発せられた汗は靴下を通って汗蒸気導入口15に至ることができる。この際、足裏部分は靴によって密閉に近い状態であるので、外部空気による汗蒸気の希釈が低減され、より高精度に飲酒を検出できる。但し、足を完全に密閉すると蒸れるので、靴の側面や上部の素材としてある程度の通気性を有する素材を用いている。
【0019】
ここで、汗蒸気導入口15が配されている靴底16の構成をわかりやすくするために、図1(a)の太点線で示した部分の拡大断面図を図1(b)に示す。汗蒸気導入口15には透湿膜17が配されている。透湿膜17は図1(b)のドットで示した領域に配される。これは足裏の皮膚からの汗蒸気のみを通し、液体の汗を通さない役割を有する。これにより、後述するアルコールセンサが濡れることによりアルコール濃度が検出できなくなる不具合を低減している。このような透湿膜17として例えば延伸多孔質フッ素系樹脂を用いることができる。
【0020】
汗蒸気導入口15の近傍には装着検出スイッチ19が設けられている。装着検出スイッチ19はアルコール検出部11が足に装着されているか否かを検出するためのもので、例えば機械的なスイッチを用いることができる。すなわち、アルコール検出部11を足に装着すると(図1(a)の靴を履くと)、装着検出スイッチ19が足裏により押されてオンになることにより装着を判断している。
【0021】
さらに、図1(b)において汗蒸気導入口15の近傍には足裏の一部に当接するように温湿度センサ21が設けられている。温湿度センサ21は足裏の温度と湿度を検出するものであり、例えばマイクロマシン技術で作製された周辺回路込みの1チップ温湿度センサを用いることができる。これは、温度と相対湿度をそれぞれ測定してデジタル信号を出力するものであり、超小型で靴に内蔵できる上、出力信号がデジタル変換されているので耐ノイズ性も良好であり高精度化が可能となる。
【0022】
このような構成とすることにより、装着検出スイッチ19がオンであり、温湿度センサ21の出力が既定の温度、湿度の範囲内にある時に、アルコール検出部11が人体の足に装着されていると判断するので、装着判断の確度を向上することができる。すなわち、装着検出スイッチ19のみで足への装着を判断すると、装着検出スイッチ19にテープ等を貼付してオンにすることにより、装着していないにも関わらず装着しているように見せかけることができるが、この場合、靴内の温度や湿度が足への装着時と大きく異なるため、このような不正を判断することができる。なお、本実施の形態1では足への装着判断の確度を上げるために温度と湿度の両方を検出するようにしているが、これはいずれか一方でも構わない。
【0023】
汗蒸気導入口15には、透湿膜17を通って導入された汗蒸気を後述するアルコールセンサまで導く汗蒸気導入管23が設けられている。汗蒸気導入管23は、まず図1(a)に示すように靴底16に沿って靴の踵部25に内蔵されたポンプ27の吸入側に接続されている。これにより、汗蒸気導入口15付近の汗をポンプ27により吸入することができる。なお、汗蒸気導入口15とポンプ27の間には、圧力センサ29が設けられている。圧力センサ29は周辺回路も含めマイクロマシン技術で作製されているものを用いた。この圧力センサ29を設けたことにより、飲酒検出を回避しようと不正に透湿膜17がテープ等で閉塞されていても、ポンプ27の動作中における圧力センサ29の圧力出力が既定圧力以下となるので、前記不正を判断することができる。
【0024】
ポンプ27の排気側には、汗蒸気導入管23を介してガス室30が接続されている。ガス室30にはアルコールセンサ31が設けられているので、ポンプ27の排気がアルコールセンサ31に至る構成となる。これにより、足裏の汗蒸気からアルコール濃度を検出している。
【0025】
アルコールセンサ31は、例えばシリコンをマイクロマシン技術により加工して作製したマイクロヒータ上に、薄膜の半導体素子を設けた構成からなる。半導体素子はアルコールを検出するために一般的に用いられる酸化スズ等の薄膜からなり、マイクロヒータによりアルコール検出に適した温度(半導体素子の材料に依存するが、数100℃程度)に加熱された状態でアルコール濃度を検出している。但し、このような高温状態に半導体素子を維持するには多くの電力を消費するので、靴に内蔵される蓄電部(後述)の電力がすぐになくなってしまう。そこで、マイクロヒータ上に半導体素子を設ける構成としている。これにより、アルコールセンサ31の熱容量が極めて小さくなるので、低電流(例えば数mA)で短時間(例えば0.1秒以下)に設定温度まで昇温することができる。
【0026】
また、アルコール濃度の検出は常時行う必要はなく、例えば既定の時間間隔毎に行えばよいので、前記マイクロヒータにパルス電流を流すことによりアルコール濃度を検出するようにしている。すなわち、例えば7mAの電流を0.2秒流すだけで昇温が完了し、アルコール濃度を検出することができるので、アルコールセンサ31の消費電力を低減できる。これにより、前記蓄電部の電力がすぐになくなることを回避している。
【0027】
なお、アルコールセンサ31の低消費電力特性を活かし、アルコール濃度を検出する前にも前記パルス電流を流すようにしている。これにより、半導体素子の表面に付着した水分等の不純物を加熱により除去し、半導体素子の表面が清浄な状態でアルコール濃度を検出することができるので、高精度化が図れる。
【0028】
これらのアルコールセンサ31に対するパルス電流の制御は、全てアルコール検出部11の制御を司る制御回路(後述)によって行われる。
【0029】
なお、アルコールセンサ31には前記半導体素子を複数個有する構成としてもよい。これは、マイクロヒータがマイクロマシン技術により極めて小さく作製されているので、これを活かし、1つのアルコールセンサ31に複数個のマイクロヒータを一括して作製し、それぞれに薄膜半導体素子を形成すればよい。このように複数個の半導体素子があれば、ある1つの半導体素子が劣化や断線等の故障を起こした時、他の正常な半導体素子に切り替えることで、アルコールセンサ31の寿命を延ばすことができる。さらに、前記制御回路により、アルコール濃度の検出毎に複数の半導体素子を順次切り替えるようにしてもよい。この場合は、複数個の半導体素子の劣化度合いが平均化される上に、1個当たりの使用頻度が減るので寿命が延びる。従って、個々の半導体素子の出力バラツキを抑制しつつアルコールセンサ31の長寿命化が図れる。
【0030】
ここで図1(a)に戻り、前記したようにガス室30にはポンプ27により汗蒸気が導入される構成としている。ここで、ガス室30内の空気をポンプ27から排出される汗蒸気に換気するために、ガス室30の壁面の一部に通気孔35を設けている。通気孔35は図1(a)では1個としているが、複数個あってもよい。なお、水分等の不純物がガス室30に侵入しないようにするために、通気孔35にも透湿膜17と同じ膜が固着されている。これにより、気体成分のみが通気孔35を通ることができ、ガス室30の換気を行いつつ不純物の侵入を低減することができる。
【0031】
また、踵部25には前記した蓄電部や制御回路等から構成される回路部37が内蔵されている。本実施の形態1では、車両の開錠や施錠を行う機能も内蔵しているので、この機能も回路部37に含まれる。
【0032】
このように、踵部25には微小な圧力センサ29やアルコールセンサ31を始め回路部37等の耐振動性が不十分な部品が内蔵されている。従って、踵部25には歩行時の振動を回路部37等にできるだけ伝えないように弾性体を有する構成としている。具体的には、回路部37等を弾性体により覆い、それを踵部25に内蔵する構成としている。これにより、歩行時の振動が弾性体で吸収されるので、回路部37等を振動から保護することができる。
【0033】
靴底16の近傍には前記蓄電部を充電するための受電手段38が内蔵されている。受電手段38は平面コイルで形成され、後述する送電手段から電磁誘導により電力供給が行われる。このような構成とすることにより、例えば就寝時等のようにアルコール検出部11を装着していない時に、前記送電手段を内蔵した充電台(図示せず)にアルコール検出部11を内蔵した靴を載せておくだけで家庭用電源等から前記蓄電部を充電することができる。その結果、アルコール検出部11を装着し、かつ車両の非使用時においてもアルコールセンサ31を動作させることが可能となる。なお、具体的な動作については後述する。
【0034】
また、車両使用中は車両のアクセルペダルやブレーキペダル等に内蔵した前記送電手段から送られてくる電力を受電手段38により受電し、前記蓄電部を充電している。この際、受電手段38が運転席近傍にある時のみ電力が送られる構成としているので、アルコール検出部11が受電を検出すれば、運転者がアルコール検出部11を装着していると判断できる。ゆえに、非飲酒の同乗者がアルコール検出部11を装着するという不正を検出することが可能となる。なお、これらの構成や動作の詳細についても後で説明する。
【0035】
次に、飲酒検出装置全体の回路構成について、図2を用いて説明する。なお、図2において太線は電力系配線を、細線は制御系配線を、それぞれ示す。また、図2の回路部37はアルコール検出部11に関する部分のみを示し、開錠、施錠機能等に関する部分は省略している。
【0036】
まず、アルコール検出部11は、前記した装着検出スイッチ19、温湿度センサ21、ポンプ27、圧力センサ29、およびアルコールセンサ31が接続された制御回路39を有する。制御回路39はマイクロコンピュータと周辺回路から構成され、アルコール検出部11の全体制御を司る。なお、装着検出スイッチ19のオンオフ状態はオンオフ信号SWにより、温湿度センサ21の温度出力と湿度出力はデジタル変換された温湿度信号T、Hにより、圧力センサ29の圧力出力は圧力信号Pにより、アルコールセンサ31の出力はアルコール濃度信号Ceにより、それぞれ制御回路39に入力される。
【0037】
なお、ポンプ27は制御回路39から発せられるポンプ制御信号Pcにより動作が制御される。この際、ポンプ27の駆動電力も制御回路39を経由して供給される。
【0038】
また、制御回路39には車両との交信を行う送受信回路41が接続されている。これは、車両用制御回路(図示せず)に対して飲酒検出結果や開錠、施錠状態等の様々な情報を交信する役割を担う。交信されるデータはデータ信号dataにより制御回路39に入出力される。なお、交信はアルコール検出部11の内蔵アンテナ43(送受信回路41に接続されている)と、車両側アンテナ(図示せず)を介して行われる。
【0039】
制御回路39、および送受信回路41の駆動電力は蓄電部45によって供給されている。蓄電部45は二次電池を用いた。これにより、主に車両非使用時に蓄電部45を充電しておくことができるので、電池切れにより飲酒検出ができなくなる可能性が低減される。
【0040】
蓄電部45には、充電を制御するための充電回路47が接続されている。充電回路47は制御回路39にも接続されているので、制御回路39は充電回路47から蓄電部45の充電状態信号cndを読み込み、それに応じて充電制御を行うための充電制御信号contを充電回路47に送信する。これにより、蓄電部45の満充電を制御している。
【0041】
また、充電回路47には受電手段38も接続されている。受電手段38は前記したように平面コイルで構成されている。なお、受電手段38は靴底16に内蔵される構成であるので、歩行時等の靴底16の変形に対応できるように、自在に曲げることが可能な樹脂製のフレキシブル基板上に平面コイルを形成した構造としている。
【0042】
受電手段38は車両使用時に送電手段(後述する)から送電される電力を電磁誘導により受電するものであり、これにより、車両使用中にも蓄電部45の充電が可能となるため、蓄電部45の電池切れ可能性を低減できる。なお、受電手段38を形成する平面コイルは、コイル長が長いほど受電エネルギーを増すことができるので、フレキシブル基板上でできるだけ長くなるようにパターン形成されている。
【0043】
次に、受電手段38に電力を供給するための送電装置51について説明する。送電装置51は送電手段53、送電回路55、および車両用バッテリ57により構成される。なお、車両用バッテリ57は送電装置51のための専用品ではなく、他の電装品にも電力を供給する一般的なものであるが、ここでは他の電装品への配線等を省略している。
【0044】
送電手段53は電磁誘導によって受電手段38に電力を供給するため、送電手段53もコイルから構成されている。送電手段53は運転中に必ず右足の靴で操作するアクセルペダルとブレーキペダルの少なくともいずれかに内蔵されていればよいが、本実施の形態1ではできるだけ充電を多く行うために両方に内蔵している。
【0045】
送電手段53には電磁誘導を発生させるための交流電力を生成する送電回路55が接続されている。この交流電力は車両用バッテリ57の電力を基に得ているので、送電回路55は車両用バッテリ57と接続されている。なお、電磁誘導によって送電手段53から受電手段38に至る磁力線を図2の点線矢印で示しているが、この詳細については図3を用いて説明する。
【0046】
図3は、車両使用時に電磁誘導により送電手段53から受電手段38に電力が供給される状態を表した模式図である。アルコール検出部11は人体61の右足の一部分に装着されている。運転者が車両を加速、または定速運転している時は、踵部25の角を車両床62に当接させることで前記角を支点とし、アルコール検出部11を内蔵した靴でアクセルペダル63を踏んでいるので、アルコール検出部11とアクセルペダル63の位置関係は図3に示すようになる。
【0047】
ここで、アクセルペダル63には送電手段53であるコイルが、靴底16には受電手段38である平面コイルが、それぞれ図3の太点線で示したように内蔵されている。車両使用中には送電装置51が動作しているので、送電手段53からは図3の点線矢印で示した磁力線が発生する。この磁力線の一部は受電手段38に至るので、受電手段38で誘導起電力が発生する。これにより、送電手段53から受電手段38に電力が供給されたことになる。
【0048】
なお、図3では省略しているが、送電手段53はブレーキペダルにも内蔵されているので、運転者が減速時にブレーキペダルを踏んでいる間も受電手段38に電力が供給される。
【0049】
このようにして得られた電力は、前記したようにアルコール検出部11に内蔵した蓄電部45に充電されるが、同時に、受電できたという事実からアルコール検出部11がアクセルペダル63、またはブレーキペダルの近傍にあることを検出できる。これは、図3に示すように運転者が正規にアクセルペダル63やブレーキペダルを操作している時に、送電手段53から発生する磁力線が受電手段38に至るような磁力線強度としているためである。従って、もし非飲酒の同乗者がアルコール検出部11の内蔵された靴を履くという不正を行ったとすると、運転中に前記同乗者がアクセルペダル63やブレーキペダルを操作しなければ電力供給が行われないことになる。しかし、このようにして運転することは不可能なので、アルコール検出部11が電力供給を受けていれば、運転者がアルコール検出部11を装着していると判断できる。
【0050】
なお、平面コイルを靴底16と、アクセルペダル63やブレーキペダルに内蔵しているので、送電手段53と受電手段38が対向する位置関係となる。その結果、極めて効率的に電磁誘導による電力供給が行われるとともに、運転者がアルコール検出部11を装着しているか否かを判断することも可能となる。すなわち、送電手段53と受電手段38が離れると電力供給の効率が急激に悪くなるので、この性質を利用し、運転席の特にアクセルペダル63やブレーキペダルの近傍にのみ電力供給できるようにすることで、運転者の装着判断を可能としている。
【0051】
以上のように、送電手段53は受電手段38が運転席近傍(アクセルペダル63やブレーキペダルの近傍)にある時のみ電力を送ることができるようにしているので、運転者のアルコール検出部11の装着判断精度が向上する。
【0052】
なお、運転中は常にアクセルペダル63やブレーキペダルを操作し続けるわけではなく、惰性走行時やクルーズコントロール中はいずれのペダルも操作しない場合がある。この際には、アクセルペダル63やブレーキペダルと、アルコール検出部11の距離が離れるので磁力線が到達せず、運転者がアルコール検出部11を装着していないと誤判断する可能性がある。そこで、アクセルペダル63やブレーキペダルが位置する運転席の車両床62にも送電手段53を内蔵する構成としてもよい。また、受電が途切れても既定時間以内に再度受電できれば非装着と判断しないようにすることで、さらに誤判断する可能性を低減できる。なお、これらの詳細な動作については後述する。
【0053】
また、アルコール検出部11は運転中も飲酒検出を行っているので、その結果は車両側アンテナ(図示せず)に送信されている。
【0054】
次に、飲酒検出装置の動作について、図4〜図6のフローチャートを用いて説明する。なお、これらのフローチャートはいずれもメインルーチン(図示せず)から必要に応じて実行されるサブルーチンである。
【0055】
まず、車両非使用時のアルコール検出部11の動作を図4により述べる。アルコール検出部11の制御回路39は、車両用制御回路(図示せず)との交信を試みることで車両の非使用状態を知ることができる。すなわち、交信ができなければ、アルコール検出部11が車両から遠く離れているので、制御回路39は車両非使用時と判断できる。また、交信ができれば、前記車両側制御回路は現在車両が非使用状態であることを返信するので、この場合も制御回路39は車両非使用時と判断できる。これらの場合は前記メインルーチンから図4のサブルーチンが実行される。なお、図4のサブルーチンは車両非使用の間、既定時間毎(例えば10分毎)に定期的に実行される。
【0056】
図4のサブルーチンが実行されると、まず飲酒フラグをオンにする(ステップ番号S1)。この飲酒フラグは飲酒判断結果を記憶するメモリであり、制御回路39に内蔵されている。飲酒フラグがオンであればアルコール検出部11の装着者が規制値以上の飲酒をしていることを示す。ここでは、まだ飲酒判断を行っていないので、初期値として飲酒フラグをオンにしている。
【0057】
次に、制御回路39は装着検出スイッチ19の出力(オンオフ信号SW)から装着検出スイッチ19のオンオフ状態を判断する(S3)。もし、オフであれば(S3のNo)、アルコール検出部11を人体61に装着していないと考えられる。従って、そのまま図4のサブルーチンを終了し、メインルーチンに戻る。この時、飲酒フラグはオンのままなので、メインルーチンは飲酒に限らず、アルコール検出部11の非装着という不具合が発生していると判断できる。その結果、この状態で車両を起動しようとしても、既に不具合がわかっているので、メインルーチンにより運転者に対して警告等を行うことができる。警告は例えば回路部37に内蔵した発音部(図示せず)により、アラームを鳴らすことで行う。但し、ここでは車両非使用時であるので、仮に何らかの不具合があっても単にそれを警告するに留め、車両に対する制御は行わない。なお、図4のサブルーチンにおいて、例えば非装着であることを示すフラグをオンにするように制御することで、メインルーチンが既定回数以上、非装着を検出すれば、アルコール検出部11を内蔵した靴を脱いで放置している状態と判断し、アラームを鳴らさないよう制御してもよい。また、アルコール検出部11を内蔵した靴を充電台に載せて充電している場合も、明らかに車両非使用時であるので、アラームを鳴らさないようにしてもよい。
【0058】
一方、装着検出スイッチ19がオンであれば(S3のYes)、アルコール検出部11が人体61に装着されていると考えられるが、装着検出スイッチ19を粘着テープ等で常にオンにするような不正が行われている可能性もある。この場合は装着していないにも関わらず装着していると判断してしまう。そこで、制御回路39は温湿度センサ21の温湿度信号T、Hを読み込み(S5)、この内、温度出力Tが既定温度の範囲内、すなわち体温範囲内であるか否かを判断するようにしている(S7)。なお、体温範囲は温湿度センサ21の位置等によって変化するので、実際の体温範囲をあらかじめ決定しておきメモリに記憶している。本実施の形態1では、図1に示すように足指の付根付近に温湿度センサ21を配しているので、その部分の体温範囲を30〜40℃とした。
【0059】
もし、温度出力Tが体温範囲内になければ(S7のNo)、不正に装着検出スイッチ19をオンにしており、アルコール検出部11が人体61に装着されていない状態であると考えられるので、図4のサブルーチンを終了し、メインルーチンに戻る。この時も飲酒フラグはオンであるので、メインルーチンはS3でNoの場合と同様にアラーム警告を行う。
【0060】
一方、温度出力Tが体温範囲内であれば(S7のYes)、次に湿度出力Hが既定湿度範囲内であるか否かを判断する(S9)。なお、既定湿度範囲は温湿度センサ21の位置等によって変化するので、実際の湿度範囲をあらかじめ決定しておきメモリに記憶している。本実施の形態1では、図1に示すように足指の付根付近に温湿度センサ21を配しているので、その部分の既定湿度範囲を80〜100%RH(RHは相対湿度)とした。なお、このように高い相対湿度となるのは、通常、靴内部の換気が十分でない上に、人体61において足の裏は掌と同様に最も汗腺の多い部分だからである。
【0061】
もし、湿度出力Hが既定湿度範囲内になければ(S9のNo)、S7のNoの場合と同様に、不正に装着検出スイッチ19をオンにしており、アルコール検出部11が人体61に装着されていない状態であると考えられるので、図4のサブルーチンを終了し、メインルーチンに戻る。この時も飲酒フラグはオンであるので、メインルーチンはS3でNoの場合と同様にアラーム警告を行う。このように、温度出力Tと湿度出力Hの両方でアルコール検出部11の人体61への装着判断を行うことで、判断精度を向上することができるが、温度出力Tと湿度出力Hのいずれか一方のみで装着判断を行ってもよい。
【0062】
一方、湿度出力Hが既定湿度範囲内であれば(S9のYes)、アルコール検出部11が人体61に装着されていると判断する。このように、装着検出スイッチ19がオンで温度出力Tが既定温度の範囲内(=体温範囲内)にあり、かつ湿度出力Hが既定湿度範囲内である時に、初めてアルコール検出部11が人体61に装着されていると判断するので、装着判断精度が極めて向上する。
【0063】
次に、制御回路39はポンプ27を駆動し(S11)、汗蒸気導入口15近傍の空気を吸引する。なお、ポンプ27の駆動電力は制御回路39を介して供給される。その後、既定吸引時間が経過したか否かを判断する(S13)。ここで、既定吸引時間はガス室30の空気を全て置換するために必要なポンプ27の駆動時間である。もし、既定吸引時間が経過していなければ(S13のNo)、S13に戻って既定吸引時間が経過するまで待つ。既定吸引時間が経過すれば(S13のYes)、次に圧力センサ29の出力(圧力信号P)を読み込む(S15)。その後、ポンプ27を停止し(S17)、圧力信号Pが既定圧力以下であるか否かを判断する(S19)。ここで、既定圧力は絶対圧力で0.5気圧とした。これにより、もし不正に汗蒸気導入口15を閉塞してアルコール検出を免れようとすると、汗蒸気導入口15とポンプ27の間に配置した圧力センサ29の圧力出力が既定圧力以下に小さくなる。従って、圧力信号Pを監視することにより前記不正を判断することができる。
【0064】
もし、圧力信号Pが既定圧力以下であれば(S19のYes)、汗蒸気導入口15を閉塞する等の不正が行われている可能性があるため、圧力異常をアラームで警告し(S21)、図4のサブルーチンを終了する。この時も車両非使用時であるので、警告のみに留めている。
【0065】
一方、圧力信号Pが既定圧力より大きければ(S19のNo)、正常に足裏近傍の汗蒸気をガス室30に導入できたので、次に制御回路39はガス室30に設けたアルコールセンサ31のアルコール濃度出力Ceを読み込み(S23)、汗蒸気中のアルコール濃度出力Ceが飲酒規制値以上であるか否かを判断する(S25)。なお、飲酒規制値は飲酒運転取締り時の酒気帯び判定用呼気中アルコール濃度(2007年時点で呼気1リットル当たり0.15mg)に相当する汗蒸気中のアルコール濃度としている。この値は足裏に対する汗蒸気導入口15の位置や将来的な酒気帯び判定濃度の変更等により変わるので、あらかじめ汗蒸気導入口15の位置における現在の酒気帯び判定濃度に相当する飲酒規制値を決定しておき、制御回路39のメモリに記憶しておく。
【0066】
もし、アルコール濃度出力Ceが飲酒規制値未満であれば(S25のNo)、アルコール検出部11が人体61に不正なく装着されている上に、飲酒していないと判断できるので、飲酒フラグをオフにして(S27)、図4のサブルーチンを終了し、メインルーチンに戻る。
【0067】
一方、アルコール濃度出力Ceが飲酒規制値以上であれば(S25のYes)、アルコール検出部11を人体61に装着した状態で飲酒していると判断できる。この場合は、次に車両側アンテナとの交信を試みることにより、アルコール検出部11がデータ信号dataの送受信可能範囲にあるか否かを判断する(S28)。もし、送受信可能範囲外であれば(S28のNo)、たとえ飲酒をしていても車両から遠く離れているため、現時点で飲酒運転を行うことはできないと判断する。従って、そのまま図4のサブルーチンを終了してメインルーチンに戻る。但し、S1で飲酒フラグがオンになっているので、メインルーチンでは飲酒をしている可能性があると判断することができる。
【0068】
一方、アルコール検出部11がデータ信号dataの送受信可能範囲にあれば(S28のYes)、制御回路39は飲酒した状態でこれから運転を行う可能性が高いと判断し、飲酒していることをアラームで警告する(S29)。その後、図4のサブルーチンを終了し、メインルーチンに戻る。これにより、飲酒運転を事前に防止する可能性が高まるという効果が得られる。なお、この時も飲酒フラグはオンであるので、メインルーチンはS3でNoの場合と同様の動作を行う。
【0069】
以上の動作を定期的に繰り返すことにより、車両の非使用時においても飲酒判断、および飲酒時の警告を行っている。
【0070】
なお、メインルーチンにおいて制御回路39は、アルコール検出部11が人体61(足)から取り外された時のアルコールセンサ31の出力をアルコール非検出値(0点)としている。これにより、非装着時にアルコールセンサ31の0点を補正することができるので、アルコール濃度検出精度が向上する。ここで、アルコール検出部11が人体61から取り外されたことは、例えば装着検出スイッチ19がオフで、かつ靴を充電台に載せて蓄電部45を充電している時に判断できる。なお、蓄電部45への充電は、充電回路47から発せられる充電状態信号cndを制御回路39が監視することで知ることができる。
【0071】
次に、車両起動時の動作について図5を用いて説明する。図5のサブルーチンは、アルコール検出部11が車両に接近した状態で開錠動作が行われた時に実行される。まず、制御回路39は内蔵メモリに記憶している警告回数をクリアする(S31)。この警告回数は、後述する運転中の動作において、何らかの不具合により警告を発した回数を示す。その詳細動作は図6にて説明するが、ここではまだ運転が行われておらず、これから運転する段階であるので、警告回数を0にクリアしている。
【0072】
次に、飲酒フラグの状態を判断する(S33)。飲酒フラグは図4で説明したもので、もし車両起動時(図5)の段階で既に飲酒フラグがオンであれば(S33のYes)、アルコール検出部11が装着されていなかったり、不正が行われていたり、あるいはアルコール検出部11の装着者が飲酒状態にあることになる。いずれの状態であっても、飲酒運転を防止するためには車両を起動しないように制御している。具体的には、アルコール検出部11の制御回路39は車両側アンテナを介して車両用制御回路にイグニションロック信号を送信する(S35)。これを受け、車両用制御回路は運転者がイグニションスイッチをオンにしてもエンジンがかからないように制御する。また、この時にアルコール検出部11のアラームにより車両起動不可を知らせる。
【0073】
その後、アルコール検出部11により車両の施錠動作が行われたか否かを判断する(S37)。もし、施錠されていなければ(S37のNo)、S37に戻り施錠されるまで待つ。一方、施錠されれば(S37のYes)、図5のサブルーチンを終了してメインルーチンに戻る。このような動作により、不正防止や飲酒運転防止を行っている。また、たとえS37で施錠されるまで待つ間に不正状態を直したり、汗蒸気中のアルコール濃度が下がっても、一旦施錠しなければ再起動できないようにしている。これにより、再度図4の飲酒判断サブルーチンを実行するので、不正防止や飲酒運転防止の確実性が増す。
【0074】
なお、例えばアルコール検出部11の装着者が飲酒状態であっても、単に非使用状態の車両から荷物を出す等の理由で車両を開錠することが想定される。この場合もS37で施錠されるまで待つルーチンを実行することになるが、アルコール検出部11の装着者は車両に対する用事が終われば施錠するので、図5のサブルーチンを終了することができる。
【0075】
ここでS33に戻って、飲酒フラグがオンでなければ(S33のNo)、再度図4の飲酒判断サブルーチンを実行する(S39)。これは、車両非使用時においては図4のサブルーチンが既定時間毎(ここでは10分毎)にしか実行されないためである。従って、車両起動時に改めて図4のサブルーチンを実行することにより、運転直前の飲酒判断が可能となる。
【0076】
その後、飲酒フラグがオンであれば(S41のYes)、アルコール検出部11が非装着であるか、不正状態や飲酒状態のいずれかであるので、前記したS35にジャンプする。これにより、車両起動がロックされるので、飲酒運転を未然に防止できる。
【0077】
一方、飲酒フラグがオンでなければ(S41のNo)、運転者がアルコール検出部11を正しく装着し、飲酒状態でもないので、次にイグニションスイッチがオンになったか否かを判断する(S43)。なお、イグニションスイッチのオンオフ状態は車両側アンテナと内蔵アンテナ43の交信により、送受信回路41を介して制御回路39に入力される。もし、オンになっていなければ(S43のNo)、アルコール検出部11により車両の施錠動作が行われたか否かを判断する(S45)。施錠動作がされなければ(S45のNo)、S43に戻ってイグニションスイッチの状態判断以降の動作を繰り返す。これは、運転者が車両を開錠してから車内に乗り込み、シートベルトを装着する等の動作を行っている間は、イグニションスイッチがオンにならないので、オンになるまで待つ動作に相当する。
【0078】
一方、施錠動作が行われると(S45のYes)、運転者は単に車両を開錠して荷物を取り出すなどの用事を済ませ、その後施錠したと想定されるので、この時点で車両を走行させることはない。従って、図5のサブルーチンを終了してメインルーチンに戻る。なお、本実施の形態1の車両は、例えば車速感応自動施錠装置が装着されており、車両運転時に運転者の施錠操作が不要な場合を想定している。従って、もし前記車速感応自動施錠装置が装着されていなければ、運転者がイグニションスイッチをオンにする前に施錠操作を行うことが考えられる。この場合は、S45のYesの後に、例えば車両用制御回路(図示せず)から運転者のシートベルト装着信号を受信して、装着していればS43に戻る動作を追加すればよい。
【0079】
ここで、S43に戻りイグニションスイッチがオンになれば(S43のYes)、制御回路39は送受信回路41、および内蔵アンテナ43を介してイグニションオン許可信号を車両用制御回路に送信する(S47)。これを受け、車両用制御回路は車両の起動(エンジン始動等)を行うことができる。このようにして、アルコール検出部11が車両の起動制御を行っている。その後、図5のサブルーチンを終了してメインルーチンに戻る。
【0080】
次に、車両使用時の動作について図6を用いて説明する。図6のサブルーチンは、車両使用時、すなわちエンジンがかかっている時に既定時間(例えば3分)毎に実行される。これにより、運転者が運転中に飲酒したことをタイムリーに判断できる。なお、既定時間は短いほど早く飲酒を検出できるが、あまり短くすると受電手段38で受電した電力を充電しているものの蓄電部45の電力が早期になくなる可能性があるので、既定時間は両者のバランスを考慮して適宜決定すればよい。
【0081】
図6のサブルーチンが実行されると、まず制御回路39は飲酒フラグをオンにする(S51)。ここでの飲酒フラグは、飲酒の有無だけでなく非装着や不正等を検出した時にもオンにすることにより、メインルーチンで何らかの不具合を知ることができるようにしている。
【0082】
次に、制御回路39は装着検出スイッチ19の出力(オンオフ信号SW)から装着検出スイッチ19のオンオフ状態を判断する(S53)。もし、オフであれば(S53のNo)、運転者が車両を起動した後に、アルコール検出部11を内蔵した靴を脱いだと考えられる。この場合は、運転者に警告するために、後述するS71にジャンプする。
【0083】
一方、装着検出スイッチ19がオンであれば(S53のYes)、運転者のアルコール検出部11の装着をさらに確実に検出するために、温湿度センサ21の温湿度信号T、Hを読み込み(S55)、この内、温度出力Tが既定温度の範囲内、すなわち体温範囲内であるか否かを判断する(S57)。ここで、体温範囲は図4のS7で説明した通りである。もし、温度出力Tが体温範囲内になければ(S57のNo)、粘着テープ等で不正に装着検出スイッチ19をオンにしており、アルコール検出部11が人体61に装着されていない状態であると考えられるので、運転者に警告するために、後述するS71にジャンプする。
【0084】
一方、温度出力Tが体温範囲内であれば(S57のYes)、次に湿度出力Hが既定湿度範囲内であるか否かを判断する(S59)。なお、既定湿度範囲は図4のS9で説明した通りである。もし、湿度出力Hが既定湿度範囲内になければ(S59のNo)、S57のNoの場合と同様に、不正に装着検出スイッチ19をオンにしており、アルコール検出部11が人体61に装着されていない状態であると考えられるので、運転者に警告するために、後述するS71にジャンプする。
【0085】
一方、湿度出力Hが既定湿度範囲内であれば(S59のYes)、アルコール検出部11が人体61に装着されていると判断する。このような三重の判断によって、図4で説明したようにアルコール検出部11の人体61への装着判断精度が向上する。
【0086】
次に、制御回路39は送受信回路41、内蔵アンテナ43を介して車両用制御回路より車速信号を受信する(S61)。もし、車速が0であれば(S63のYes)、車両は信号待ち等で停車状態にあるので、この時点で運転者はアクセルペダル63はもちろん、ブレーキペダルからも足を離している場合がある。従って、車速が0でない時の動作、すなわち受電手段38からの電力出力有無による運転者のアルコール検出部11の装着判断を正しく行えない可能性がある。ゆえに、車速が0の場合は受電手段38によるアルコール検出部11の装着判断を行わずに後述するS77にジャンプする。なお、この場合は非飲酒の同乗者がアルコール検出部11を装着する不正を判断できないが、車両が走行し始めた時に受電手段38によるアルコール検出部11の装着判断を行っているので、これにより前記不正を判断できる。この詳細を以下に説明する。
【0087】
S63で車速が0でなければ(S63のNo)、制御回路39は受電手段38から電力出力があるか否かを判断する(S65)。なお、受電手段38からの電力出力有無は充電回路47から発せられる充電状態信号cndによって検出される。もし、受電手段38から電力出力があれば(S65のYes)、運転者が図3に示すようにアクセルペダル63、またはブレーキペダルを操作していると想定されるので、同乗者ではなく運転者がアルコール検出部11を装着していると判断できる。従って、後述するアルコール濃度検出以降の動作(S77)にジャンプする。
【0088】
一方、受電手段38から電力出力がなければ(S65のNo)、同乗者がアルコール検出部11を装着しているか、または運転中に運転者がアクセルペダル63とブレーキペダルのいずれからも足を離していると想定される。特に、後者の場合は両ペダルを踏み替えているか、惰性走行で足を車両床62に置いている状態が考えられる。ここでは、後者の場合を考慮して、受電手段38から電力出力がなくても既定時間(ここでは10秒とした)待ち(S67)、その後S65の判断を既定回数(ここでは6回とした)行っていなければ(S69のNo)、S65に戻るようにした。これにより、S65の判断を1分間にわたり10秒毎に行うことになる。ここで、もし運転者が1分以内に両ペダルの踏み替え、または惰性走行を終え、アクセルペダル63、またはブレーキペダルに足を戻せば、S65でYesになるので、同乗者がアルコール検出部11を装着するという不正は行われていないと判断できる。その後はS77にジャンプする。なお、クルーズコントロール機能が装備された車両の場合は、車両床62に足を置いた状態で走行し続けることがあるので、車両床62にも送電手段53を配すればよい。これにより、足を車両床62に置いていても受電手段38から電力出力が得られるので、S65でYesとなり、S77にジャンプする。
【0089】
一方、S65を既定回数判断すると(S69のYes)、1分間に渡って足を車両床62に置いて惰性走行をしているか、または同乗者がアルコール検出部11を装着していると判断できる。従って、制御回路39は運転者に対してアルコール検出部11を正しく装着するとともにアクセルペダル63かブレーキペダル付近への足の位置を配置するよう、警告信号を車両用制御回路に送信する(S71)。これを受け、車両用制御回路は車両のメータ内等に前記警告を表示する。なお、この警告はS53、S57、およびS59でNoの場合にも行われる。
【0090】
その後、警告回数を1回分加算し(S73)、警告回数が既定値以上になったか否かを判断する(S75)。ここで、既定値は3回とした。もし、既定値以上になれば(S75のYes)、再三の警告にも関わらず、それを無視して車両を走行させ続けていることになるので、強制的な車両制御を行うために後述するS99にジャンプする。一方、警告回数が既定値未満であれば(S75のNo)、警告だけに留めて図6のサブルーチンを終了し、メインルーチンに戻る。
【0091】
ここで、S63で車速が0であった場合(S63のYes)、または受電手段38から出力があった場合(S65のYes)は、次に制御回路39はポンプ27を駆動し(S77)、汗蒸気導入口15近傍の空気を吸引する。その後、既定吸引時間が経過したか否かを判断する(S79)。なお、既定吸引時間は図4のS13で説明した通りである。もし、既定吸引時間が経過していなければ(S79のNo)、S79に戻って既定吸引時間が経過するまで待つ。
【0092】
既定吸引時間が経過すれば(S79のYes)、次に圧力センサ29の出力(圧力信号P)を読み込む(S81)。その後、ポンプ27を停止し(S83)、圧力信号Pが既定圧力以下であるか否かを判断する(S85)。なお、既定圧力は図4のS19で説明した通りである。もし、圧力信号Pが既定圧力以下であれば(S85のYes)、汗蒸気導入口15を閉塞する等の不正が行われている可能性があるため、圧力異常をアラームで警告し(S87)、運転者への圧力異常警告信号を車両用制御回路に送信する(S89)。これを受け、車両用制御回路は車両のメータ内等に前記警告を表示する。その後、前記したS73にジャンプする。
【0093】
一方、圧力信号Pが既定圧力より大きければ(S85のNo)、正常に足裏近傍の汗蒸気をガス室30に導入できたので、次に制御回路39はガス室30に設けたアルコールセンサ31のアルコール濃度出力Ceを読み込み(S91)、アルコール濃度出力Ceが飲酒規制値以上であるか否かを判断する(S93)。なお、飲酒規制値は図4のS25と同じである。
【0094】
もし、アルコール濃度出力Ceが飲酒規制値未満であれば(S93のNo)、アルコール検出部11が運転者に不正なく装着されている上に、飲酒していないと判断できるので、飲酒フラグをオフにし(S94)、警告回数をクリアして(S95)、図6のサブルーチンを終了し、メインルーチンに戻る。
【0095】
一方、アルコール濃度出力Ceが飲酒規制値以上であれば(S93のYes)、アルコール検出部11を人体61に装着した状態で飲酒していると判断できる。この場合は、飲酒していることをアラームで警告する(S96)とともに、制御回路39は運転者への飲酒警告信号を車両用制御回路に送信する(S97)。これを受け、車両用制御回路は運転者に対して車両のメータ内等に前記警告を表示する。
【0096】
その後、飲酒状態での運転継続は危険であるので、制御回路39は車両制御信号を車両用制御回路に送信する(S99)。これを受け、車両用制御回路は例えば車両を強制的に減速したり一定以上の速度が出ないように制御して、運転者に対し車両を安全に停止する動作を促す。その後、図6のサブルーチンを終了し、メインルーチンに戻る。
【0097】
この動作をまとめると、アルコール検出部11が人体61に装着されていると判断された状態で、運転中(車速が0でない場合)に、送電装置51より送電される電力を受電手段38が受電しており、かつポンプ27で吸引した汗蒸気に対するアルコールセンサ31の出力が飲酒規制値以上であれば、運転者が飲酒していると判断するということになる。
【0098】
以上の構成、動作により、アルコール検出部11の非装着や、同乗者装着、不正改造等を検出できる上に、アルコール検出部11を人体61に装着し、装着部分(足裏)の皮膚から発せられる汗中のアルコール濃度を検出するので、運転者の飲酒を高精度に判断可能な飲酒検出装置を実現できる。
【0099】
なお、本実施の形態1では、アルコールセンサ31をマイクロヒータ上に設けた薄膜の半導体素子からなる構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば接触燃焼式のアルコールセンサでもよい。これは、マイクロヒータ上に触媒を設けた構成で、触媒をアルコール検出に適した温度に加熱してアルコールを燃焼させることによる温度変化を検出する原理のものである。これによっても小型で低消費電力のアルコールセンサが得られる。
【0100】
また、本実施の形態1では、送電手段53からアルコール検出部11の受電手段38への電力供給は電磁誘導により行っているが、これは放射電磁波(例えばミリ波やマイクロ波)で行ってもよい。ここで、送電手段53は車両床62に内蔵する構成となる。これにより、送電手段53は車両床62を順次スキャンして受電手段38の位置を確定するので、電磁誘導に比べピンポイントで電力供給を行うことができる。従って、電力供給効率が増すとともに、アルコール検出部11の位置検出精度も向上する。ゆえに、高精度に運転者のアルコール検出部11の装着を判断できる。
【0101】
また、本実施の形態1では、アルコール検出部11を靴に内蔵した構成としたが、これは靴の中敷きに内蔵する構成としてもよい。この場合は、ある程度の大きさを有するポンプ27をマイクロマシン技術により構成し薄型化するとともに、蓄電部45も例えば可撓性のある薄型二次電池を用いればよい。これにより、様々なサイズやデザインの靴に対してもアルコール検出部11を取り付けることができる。
【0102】
(実施の形態2)
図7は本発明の実施の形態2における飲酒検出装置のブロック回路図である。図8は本発明の実施の形態2における飲酒検出装置の車両使用時でのアルコール検出部の動作を示すフローチャートである。なお、本実施の形態2の飲酒検出装置の構成において、実施の形態1と同じ構成には同じ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0103】
すなわち、図7において、本実施の形態2の特徴となる構成は、人体61における足とアルコール検出部11との接触部分に脈波検出手段71を設けた点である。本実施の形態2では、脈波検出手段71を圧電体フィルムからなる構成とし、これを靴における足指尖部に対応した位置に設けている。これにより、靴を履くことにより足指尖部に脈波検出手段71が当接することになる。その結果、足指尖部における脈波が脈波検出手段71により検出される。なお、図示していないが、脈波検出手段71の脈波出力Pbはアルコール検出部11の制御回路39に入力される。また、靴を履く際に靴下も履いている場合が考えられるので、脈波検出手段71として光学的な原理に基づくものは適用できない。そこで、本実施の形態2では圧電体からなる脈波検出手段71としている。
【0104】
また、実施の形態1の図2では図示を省略していたが、アルコール検出部11の内蔵アンテナ43との交信は、図7に示すように車両側アンテナ73と行われる。なお、車両側アンテナ73は運転席近傍の、例えば車両床62の内部に配置されている。また、車両側アンテナ73は車両側送受信回路75を介して車両用制御回路77に接続される。車両用制御回路77はマイクロコンピュータと周辺回路から構成されており、車両全体の制御を司る。車両側送受信回路75と車両用制御回路77の駆動電力は車両用バッテリ57から供給される。また、車両用制御回路77は送電装置51の送電回路55を制御するための送電制御信号Pcontを出力する。上記以外の構成は実施の形態1と同じである。
【0105】
次に、本実施の形態2の動作について説明する。まず、車両非使用時、および車両起動時の動作はそれぞれ図4、図5で説明したものと同じであるので、説明を省略する。次に、車両使用時の動作について、本実施の形態2の特徴となる部分を中心に図8を用いて説明する。
【0106】
制御回路39は車両使用時にメインルーチン(図示せず)から既定時間毎に図8のサブルーチンを実行する。なお、既定時間は実施の形態1と同じく3分である。
【0107】
図8のサブルーチンにおいて、S101からS125までの動作は、それぞれ図6のS51からS75までの動作と全く同じであるので、詳細な説明を省略する。ここでは、S113で車速が0であった場合(S113のYes)、またはS115で受電手段38からの電力出力があった場合(S115のYes)以降の動作を説明する。
【0108】
S113、またはS115でYesの時、制御回路39は脈波検出手段71の脈波出力Pbを読み込み、脈波特性を検出する(S127)。次に、得られた脈波特性f(xi)に対し、リアプノフ指数λを計算し、制御回路39のメモリに記憶する(S129)。ここで、リアプノフ指数λは関数f(xi)の誤差の指数関数的増大速度を表すもので、脈波特性f(xi)に対してはλが正となりカオス的挙動を示す。リアプノフ指数λの具体的表現は例えば(数1)で表される。
【0109】
【数1】

【0110】
これを、脈波特性f(xi)にあてはめると、脈波特性f(xi)の変化量(微分値)の大きさを対数計算して平均化した時の極値を求めることになる。このλが前回値より上がる傾向にあると疲労度が増大していると考えられる。ゆえに、本実施の形態2ではリアプノフ指数λを計算することで疲労度を求めるようにしている。
【0111】
従って、S129で計算した今回のリアプノフ指数λが前回計算したλよりも既定割合以上に上昇していれば(S131のYes)、運転者が疲労していることになるので疲労フラグをオンにする(S133)。また、既定割合以上に上昇していなければ(S131のNo)、運転者が疲労していないと判断し、疲労フラグをオフにする(S135)。このことから、制御回路39はリアプノフ指数λによって疲労度を計算し、この疲労度が既定値以上である時、すなわちλが前回値より既定割合以上に上昇している時に、運転者が疲労状態にあると判断していることになる。
【0112】
なお、前記既定割合は実際に運転者が疲労を訴える時のリアプノフ指数λの変化割合をあらかじめ求めておき、制御回路39のメモリに記憶している。本実施の形態2では、前記検討の結果、既定割合を約15%とした。すなわち、λが前回値より15%以上高くなれば運転者が疲労していると判断している。
【0113】
S133とS135の後、制御回路39はポンプ27を駆動し(S137)、汗蒸気導入口15近傍の空気を吸引する。その後、既定吸引時間が経過したか否かを判断する(S139)。なお、既定吸引時間は図4のS13で説明した通りである。もし、既定吸引時間が経過していなければ(S139のNo)、S139に戻って既定吸引時間が経過するまで待つ。
【0114】
既定吸引時間が経過すれば(S139のYes)、次に圧力センサ29の出力(圧力信号P)を読み込む(S141)。その後、ポンプ27を停止し(S143)、圧力信号Pが既定圧力以下であるか否かを判断する(S145)。なお、既定圧力は図4のS19で説明した通りである。もし、圧力信号Pが既定圧力以下であれば(S145のYes)、汗蒸気導入口15を閉塞する等の不正が行われている可能性があるため、圧力異常をアラームで警告し(S147)、運転者への圧力異常警告信号を車両用制御回路77に送信する(S149)。これを受け、車両用制御回路77は車両のメータ内等に前記警告を表示する。その後、S123にジャンプする。
【0115】
一方、圧力信号Pが既定圧力より大きければ(S145のNo)、正常に足裏近傍の汗蒸気をガス室30に導入できたので、次に制御回路39はガス室30に設けたアルコールセンサ31のアルコール濃度出力Ceを読み込み(S151)、アルコール濃度出力Ceが飲酒規制値以上であるか否かを判断する(S153)。なお、飲酒規制値は図4のS25と同じである。
【0116】
もし、アルコール濃度出力Ceが飲酒規制値未満であれば(S153のNo)、アルコール検出部11が運転者に不正なく装着されている上に、飲酒していないと判断できるので、次に疲労フラグの状態を判断する(S155)。もし、疲労フラグがオンであれば(S155のYes)、運転者は飲酒していないものの疲労している状態なので、制御回路39は運転者への疲労警告信号を車両用制御回路77に送信する(S157)。これを受け、車両用制御回路77は運転者に対して車両のメータ内等に前記警告を表示する。その後、S123にジャンプし、警告回数の加算以降の動作を行う。このように、本実施の形態2では、飲酒していなくても疲労状態にあれば警告を行い、既定回数以上警告を受ければ車両制御を行って安全な停車を促すように動作する。この動作の詳細は実施の形態1と同じである。なお、この時に脈波が病的に異常であれば、運転者が発作等を起こしたと考えられるので、車両から救急施設へ自動的に通報するという制御を行ってもよい。
【0117】
一方、疲労フラグがオンでなければ(S155のNo)、運転者は非飲酒で疲労もしていない正常状態である。ゆえに、飲酒フラグをオフにし(S159)、警告回数をクリアして(S161)、図8のサブルーチンを終了し、メインルーチンに戻る。
【0118】
ここで、S153に戻りアルコール濃度出力Ceが飲酒規制値以上であれば(S153のYes)、アルコール検出部11を人体61に装着した状態で飲酒していると判断できる。この場合は、まず飲酒していることをアラームで警告する(S163)。次に、疲労フラグの状態を判断し(S165)、もし疲労フラグがオンでなければ(S165のNo)、飲酒をしているものの疲労度は小さい状態と考えられる。これは、一般的には飲酒量が増えるほど人体61への負担が大きくなり疲労度が上がると考えられるので、S165のNoの場合は飲酒しているものの疲労度が小さいことから飲酒量がそれほど多くないと推定できる。従って、制御回路39は図6のS97と同様に、運転者への飲酒警告信号を車両用制御回路77に送信する(S167)。これを受け、車両用制御回路77は運転者に対して車両のメータ内等に前記警告を表示する。その後、S171にジャンプする。
【0119】
一方、疲労フラグがオンであれば(S165のYes)、運転者は飲酒している上に疲労もしていると考えられる。このことから、運転者は強度の飲酒状態にあると推定されるので、制御回路39は運転者への強度の飲酒を警告する信号を車両用制御回路77に送信する(S169)。これを受け、車両用制御回路77は運転者に対して車両のメータ内等に前記警告を表示するとともに、強度の飲酒状態であることを光や音等で警報する。このように疲労度を検出するようにしたことで、飲酒の強度をある程度推定することができ、それに応じた警告を発することが可能となる。なお、飲酒の程度はアルコールセンサ31の出力からも推定できるが、本実施の形態2では、さらに疲労度も加味することで推定精度を向上している。但し、上記動作から明らかなように、飲酒判断はあくまでもアルコールセンサ31の出力によって行い、疲労度は飲酒程度を推定する手段としての位置付けとしている。
【0120】
その後、S167の状態(軽度の飲酒状態)であっても、S169の状態(強度の飲酒状態)であっても、飲酒状態での運転継続は危険であるので、制御回路39は車両制御信号を車両用制御回路77に送信する(S171)。これを受け、車両用制御回路77は例えば車両を強制的に減速したり一定以上の速度が出ないように制御して、運転者に対し車両を安全に停止する動作を促す。その後、図8のサブルーチンを終了し、メインルーチンに戻る。
【0121】
この動作をまとめると、実施の形態1の動作に加え、脈波特性より疲労度を計算し、疲労度が既定値以上であり、かつアルコールセンサ31の出力が飲酒規制値以上であれば、運転者が強度の飲酒状態であると判断するということになる。また、非飲酒状態でも疲労度が既定値以上なら疲労警告を行うようにしている。
【0122】
以上の構成、動作により、アルコール検出部11に脈波検出手段71を設け、それにより疲労度を求める構成を付加したので、運転者の疲労度を加味した上で飲酒を高精度に判断可能な飲酒検出装置を実現できる。
【0123】
なお、本実施の形態2では、疲労度の指標としてリアプノフ指数λを用いたが、これは例えば脈波検出手段71により得られる脈波から心拍数と血圧に相当する情報を得て、血圧−心拍数間の最大相互相関係数ρmaxを求めてもよい。これにより、飲酒による血圧と心拍数の増大や、乗り物酔い等の影響により、血圧−心拍数間の最大相互相関係数ρmaxが低下するので、飲酒度合いや疲労度に応じた情報が得られる。なお、脈波から心拍数を得るには、脈波の立ち上がり時間間隔FFIを求め、60をFFIで割ればよい。また、血圧に相当する情報を得るには、例えば1心拍中の脈波特性を積分して前記FFIで割ることによる規格化拍内積分値NPWを求めればよい。規格化拍内積分値NPWは血圧と負の比例関係にあるため、前記NPWから血圧に相当する情報が得られる。なお、血圧相当情報は他にも脈波伝播時間や脈波ピークの時間差からも得られる。
【0124】
また、本実施の形態2では、疲労度の検出に脈波検出手段71を用いたが、これに替わって図7に示す視線検出手段79を用いてもよい。視線検出手段79は、例えば運転席のダッシュボードに設置され、運転者の視線を検出する車室内カメラが適用できる。視線検出手段79は車両用制御回路77に接続され、運転者の視線信号Veyeを出力する。
【0125】
この構成では脈波特性に替わって、車両用制御回路77が運転者の視線移動特性を検出することになる。これは、運転者の疲労度に応じて視線移動特性が変化することに基く。疲労度は、例えば得られた視線移動特性をf(xi)として、(数1)によりリアプノフ指数λを求めることで計算される。但し、この場合はアルコール検出部11の制御回路39で疲労度を求めることができないので、車両用制御回路77が求めた疲労度の結果を、車両側送受信回路75、車両側アンテナ73、内蔵アンテナ43、および送受信回路41を介してアルコール検出部11の制御回路39に送信するようにしている。
【0126】
このような構成とすることにより、アルコール検出部11に脈波検出手段71を内蔵しなくてもよくなり、アルコール検出部11の構造を簡略化できる。
【0127】
さらに、視線検出手段79に替わって、運転席81に重量センサ83を設ける構成としてもよい。重量センサ83は例えばロードセルのように重量を歪として検出する構成のものが適用できる。図7では重量センサ83を運転席81の四隅にそれぞれ設ける構成としており、運転者の運転操作等による運転席81の四隅にかかるそれぞれの重量変化特性を検出している。4つの重量センサ83はいずれも車両用制御回路77に接続されているので、各重量センサ83の出力は重量信号Wi(i=1〜4)として車両用制御回路77に入力される。
【0128】
この構成では、車両用制御回路77が運転席81の重量変化特性を検出することになる。これは、運転者の疲労度に応じて運転操作の応答等が変わることから運転席81にかかる重心の動きが変化し、その結果、重量特性が変化することに基く。疲労度は、例えば得られた重量変化特性をf(xi)として、(数1)によりリアプノフ指数λを求めることで計算される。但し、この場合も視線移動特性検出の場合と同様に、アルコール検出部11の制御回路39で疲労度を求めることができないので、車両用制御回路77が求めた疲労度の結果は、アルコール検出部11の制御回路39に送信されるようにしている。
【0129】
このような構成とすることによっても、アルコール検出部11に脈波検出手段71を内蔵しなくてもよくなり、アルコール検出部11の構造を簡略化できる。さらに、スマートエアバッグ等に用いられている運転席81の重量センサの出力を利用すれば、新たに重量センサ83を設ける必要がなくなる。なお、重量センサ83の個数は4個としたが、これは少ない個数で運転席81にかかる重心の動きの変化を検出できる構造としてもよい。
【0130】
以上述べた脈波検出手段71、視線検出手段79、および重量センサ83は少なくともいずれかを用いれば疲労度を検出できるが、これらを複数組み合わせて用いてもよい。この場合は、疲労度の検出精度を向上することができる。
【0131】
また、他の疲労度検出手段として、例えば声特性等を利用する構成としてもよい。
【0132】
また、実施の形態1、2で述べた飲酒検出装置は、主に自動車用として説明したが、これは鉄道車両や航空機、船舶、建設機械、プラント操作部のように、飲酒により甚大な影響を及ぼす分野に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明にかかる飲酒検出装置は、運転者が飲酒していることを高精度に判断できるので、特に飲酒検出管理が厳格になされておらず、かつ運転者数が多い自家用車の飲酒検出装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の実施の形態1における飲酒検出装置のアルコール検出部の断面図であり、(a)は全体断面図、(b)は足裏の先が当接する部分の靴底における拡大断面図
【図2】本発明の実施の形態1における飲酒検出装置のブロック回路図
【図3】本発明の実施の形態1における飲酒検出装置の車両使用時での電力供給模式図
【図4】本発明の実施の形態1における飲酒検出装置の車両非使用時でのアルコール検出部の動作を示すフローチャート
【図5】本発明の実施の形態1における飲酒検出装置の車両起動時でのアルコール検出部の動作を示すフローチャート
【図6】本発明の実施の形態1における飲酒検出装置の車両使用時でのアルコール検出部の動作を示すフローチャート
【図7】本発明の実施の形態2における飲酒検出装置のブロック回路図
【図8】本発明の実施の形態2における飲酒検出装置の車両使用時でのアルコール検出部の動作を示すフローチャート
【図9】従来の飲酒検出装置の概略構成図
【符号の説明】
【0135】
11 アルコール検出部
15 汗蒸気導入口
17 透湿膜
19 装着検出スイッチ
21 温湿度センサ
27 ポンプ
29 圧力センサ
31 アルコールセンサ
38 受電手段
39 制御回路
41 送受信回路
45 蓄電部
47 充電回路
51 送電装置
53 送電手段
55 送電回路
57 車両用バッテリ
61 人体
62 車両床
63 アクセルペダル
71 脈波検出手段
77 車両用制御回路
79 視線検出手段
81 運転席
83 重量センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の足の一部分に当接するよう配され、前記足の汗蒸気を取り込む汗蒸気導入口と、
前記汗蒸気導入口に配した透湿膜と、
前記汗蒸気導入口に吸気側を接続したポンプと、
前記ポンプの排気側に設けたアルコールセンサと、
足裏の一部分に当接するよう配された装着検出スイッチと、
車両との交信を行う送受信回路と、
前記ポンプ、アルコールセンサ、装着検出スイッチ、および送受信回路が接続された制御回路と、
前記制御回路、および送受信回路に接続され、それぞれに電力を供給する蓄電部と、
前記蓄電部と前記制御回路に接続された充電回路と、
前記充電回路に接続された受電手段と、
を内蔵し、前記足に装着されるアルコール検出部、
および、前記受電手段が運転席近傍にある時のみ電力を送る送電手段と、
前記送電手段に接続された送電回路と、
前記送電回路に電力を供給するように接続された車両用バッテリとからなる送電装置、
により構成され、
前記制御回路は、前記装着検出スイッチがオンの時に前記アルコール検出部が前記足に装着されていると判断し、
この状態で、前記送電装置より送電される電力を前記受電手段が受電しており、
かつ、前記ポンプで吸引した前記汗蒸気に対する前記アルコールセンサの出力が飲酒規制値以上であれば、運転者が飲酒していると判断するようにした飲酒検出装置。
【請求項2】
前記足裏の一部に当接するように、前記制御回路に接続された温度センサを配し、
前記制御回路は、前記装着検出スイッチがオンであり、
かつ、前記温度センサの温度出力が既定温度の範囲内である時に、前記アルコール検出部が前記足に装着されていると判断するようにした請求項1に記載の飲酒検出装置。
【請求項3】
前記足裏の一部に当接するように、前記制御回路に接続された湿度センサを配し、
前記制御回路は、前記装着検出スイッチがオンであり、
かつ、前記湿度センサの湿度出力が既定湿度の範囲内である時に、前記アルコール検出部が前記足に装着されていると判断するようにした請求項1に記載の飲酒検出装置。
【請求項4】
前記汗蒸気導入口と前記ポンプの間に、前記制御回路に接続された圧力センサを設け、
前記制御回路は前記ポンプの動作中における前記圧力センサの圧力出力が既定圧力以下である時に、前記透湿膜が閉塞していると判断するようにした請求項1に記載の飲酒検出装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記アルコール検出部が前記足から取り外された時の前記アルコールセンサの出力をアルコール非検出値とするようにした請求項1に記載の飲酒検出装置。
【請求項6】
前記アルコール検出部は車両の開錠、および施錠機能を有する請求項1に記載の飲酒検出装置。
【請求項7】
前記アルコール検出部が靴に内蔵された請求項1に記載の飲酒検出装置。
【請求項8】
前記アルコール検出部が靴の中敷きに内蔵された請求項1に記載の飲酒検出装置。
【請求項9】
前記受電手段と前記送電手段はコイルからなり、電磁誘導により電力供給を行うようにした請求項1に記載の飲酒検出装置。
【請求項10】
前記送電手段は少なくともアクセルペダルとブレーキペダルのいずれかに内蔵された請求項9に記載の飲酒検出装置。
【請求項11】
前記送電手段から前記受電手段への電力供給は放射電磁波によって行われるようにした請求項1に記載の飲酒検出装置。
【請求項12】
前記送電手段は前記運転席の車両床に内蔵された請求項11に記載の飲酒検出装置。
【請求項13】
前記アルコールセンサはマイクロヒータ上に設けた薄膜の半導体素子からなる請求項1に記載の飲酒検出装置。
【請求項14】
前記制御回路は前記マイクロヒータにパルス電流を流すことによりアルコール濃度を検出するようにした請求項13に記載の飲酒検出装置。
【請求項15】
前記制御回路は前記アルコール濃度を検出する前にも前記パルス電流を流すようにした請求項14に記載の飲酒検出装置。
【請求項16】
前記アルコールセンサは前記半導体素子を複数有する構成とした請求項13に記載の飲酒検出装置。
【請求項17】
前記制御回路は前記アルコール濃度の検出毎に複数の前記半導体素子を順次切り替えるようにした請求項16に記載の飲酒検出装置。
【請求項18】
前記アルコール検出部の前記足との接触部分に脈波検出手段を設け、前記制御回路は飲酒判断時に前記脈波検出手段より脈波特性を検出し、前記脈波特性より疲労度を計算し、前記疲労度が既定値以上であり、かつ前記アルコールセンサの出力が前記飲酒規制値以上であれば、前記運転者が強度の飲酒状態であると判断するようにした請求項1に記載の飲酒検出装置。
【請求項19】
前記脈波検出手段は足指尖部に配された圧電体からなる請求項18に記載の飲酒検出装置。
【請求項20】
前記脈波検出手段に替わって、前記運転席のダッシュボードに前記運転者の視線検出手段を設けるとともに、前記視線検出手段は車両用制御回路に接続される構成を有し、
前記車両用制御回路は前記視線検出手段より視線移動特性を検出し、前記視線移動特性より前記疲労度を計算し、その結果を前記アルコール検出部に送信するようにした請求項18に記載の飲酒検出装置。
【請求項21】
前記視線検出手段に替わって、前記運転席に重量センサを設け、前記車両用制御回路は前記重量センサより重量変化特性を検出し、前記重量変化特性より前記疲労度を計算するようにした請求項20に記載の飲酒検出装置。
【請求項22】
前記疲労度はリアプノフ指数を計算することで求めるようにした請求項18に記載の飲酒検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−403(P2009−403A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165958(P2007−165958)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】