説明

飲酒運転抑止システム

【課題】可能な限り安全な手法により飲酒状態の運転者が自発的に運転操作を止めるように促す飲酒運転抑止システムを提供する。
【解決手段】飲酒運転抑止システム10において、エアコンECU26は、アルコール検知センサ12により運転者の飲酒状態が検知されたときは、温度センサ16により検出された外気温が高いほど車室内の温度を高く制御し、温度センサ16により検出された外気温が低いほど車室内の温度を低く制御する。これにより、判断力、反射能力等が低下した飲酒者に対しても感覚的に不快感を与えることができ、車内環境の不快さに耐えかねた運転者に運転操作を続行する意欲を低下させ、自発的に車両を停止させて運転操作を止めることを期待できる。また、車両の運動性能の変更、運転特性の変更及び視界不良を引き起こすものではないため、安全性も担保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飲酒運転抑止システムに関し、特に、運転者が飲酒状態にあるときに運転者に運転操作を止めるように促す飲酒運転抑止システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、盗難された車両の奪回を支援するシステムが提案されている。例えば、特許文献1では、システムが車両の盗難を検知した場合に、警音器の吹鳴、ブレーキ音の発生、窓を開放しての大音量スピーカ出力、空調の変則制御、ブレーキ操作の受付拒否、自律的な急加速等の奪回支援処理を実行することにより、盗難行為者の運転操作の停止を促し、盗難された車両の奪回を支援する技術が提案されている。
【特許文献1】特開2006−264471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年では飲酒運転が社会的に非常に問題となっている。このため、飲酒状態の運転者に対しても、運転操作の停止を促すシステムが望まれている。しかしながら、盗難行為者と異なり、飲酒状態の運転者の場合は運転者の判断力、反射能力等が定常時に比べて低下している。そのため、飲酒運転抑止システムにおいては、可能な限り安全な手法によって自発的に飲酒状態の運転者が運転操作を止めるように促すシステムが望ましい。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、可能な限り安全な手法により飲酒状態の運転者が自発的に運転操作を止めるように促す飲酒運転抑止システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車両を運転する運転者の飲酒状態を検知する飲酒検知手段と、車両の外気温を検出する外気温検出手段と、車両の車室内の温度を制御する車室内温度制御手段と、を備え、車室内温度制御手段は、飲酒検知手段により運転者の飲酒状態が検知されたときは、外気温検出手段により検出された外気温が高いほど車室内の温度を高く制御し、外気温検出手段により検出された外気温が低いほど車室内の温度を低く制御する、飲酒運転抑止システムである。
【0006】
この構成によれば、車室内温度制御手段は、飲酒検知手段により運転者の飲酒状態が検知されたときは、外気温検出手段により検出された外気温が高いほど車室内の温度を高く制御し、外気温検出手段により検出された外気温が低いほど車室内の温度を低く制御する。そのため、判断力、反射能力等が低下した飲酒者に対しても感覚的に不快感を与えることができ、車内環境の不快さに耐えかねた運転者に運転操作を続行する意欲を低下させ、自発的に車両を停止させて運転操作を止めることを期待できる。また、この構成によれば、車両の運動性能の変更、運転特性の変更及び視界不良を引き起こすものではないため、安全性も担保される。
【0007】
車両の車窓の開閉を行う車窓開閉手段をさらに備え、車窓開閉手段は、外気温検出手段が検出した外気温が低温閾値未満のときは、車両の車窓を開くことが好適である。
【0008】
この構成によれば、車窓開閉手段は、外気温検出手段が検出した外気温が低温閾値未満のときは車両の車窓を開くため、飲酒状態の運転者に寒さにより運転操作を続行する意欲を低下させ、運転操作を止めることを期待できる。
【0009】
この場合、車窓開閉手段は、車両の左側及び右側それぞれに備えられた車窓の開く度合いが異なるように車両の車窓を開くことが好適である。
【0010】
この構成によれば、車窓開閉手段は、車両の左側及び右側それぞれに備えられた車窓の開く度合いが異なるように車両の車窓を開くため、車室内の風の通り抜けを加速させて運転者の体感温度を寒くでき、飲酒状態の運転者に寒さにより運転操作を続行する意欲を低下させることを期待できる。
【0011】
一方、車両の車室内の湿度を増加させる加湿器をさらに備え、加湿器は、外気温検出手段が検出した外気温が高温閾値以上のときに車室内の湿度を増加させることが好適である。
【0012】
この構成によれば、加湿器は、外気温検出手段が検出した外気温が高温閾値以上のときに車室内の湿度を増加させるため、飲酒状態の運転者に蒸し暑さにより運転操作を続行する意欲を低下させ、運転操作を止めることを期待できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の飲酒運転抑止システムによれば、飲酒状態の運転者に自発的に車両を停止させて運転操作を止めることを期待でき、安全性も担保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る飲酒運転抑止システムについて添付図面を参照して説明する。図1は実施形態に係る飲酒運転抑止システムの構成を示すブロック図である。本実施形態の飲酒運転抑止システムは、自動車に内蔵され、飲酒状態の運転者に対し自発的に車両を停止させて運転操作を止めることを促すように構成されている。図1に示すように、本実施形態の飲酒運転抑止システム10は、アルコール検知センサ12、車速センサ14、温度センサ16、妨害制御装置18、加湿器20、ウィンドウ開閉アクチュエータ22、開閉式ウィンドウ24、エアコンECU26及びエアコン28を備えて構成されている。
【0015】
アルコール検知センサ12は、運転者の飲酒状態を検知するためのものであり、特許請求の範囲に記載の飲酒検知手段として機能する。アルコール検知センサ12としては、半導体を用いたもの、燃料電池を用いたもの、赤外線を用いたものを適用することができる。
【0016】
半導体を用いたアルコール検知センサは、半導体の中にもともと流れている電子の量が、車室内の空気中のアルコールにより吸収され、変化する特性を利用する。この原理のアルコール検知センサでは、半導体内の電子の量が変化することにより、センサ内の電気抵抗も変化するため、その電気抵抗の強さからアルコールの有無や運転者の呼気中アルコール濃度を推定することができる。
【0017】
燃料電池を用いたアルコール検知センサは、車室内の空気中のアルコールから電子を作り出すことのできる燃料電池の特性を利用する。この原理のアルコール検知センサでは、アルコールにより作り出された電子の多さが、電気の流れの強さになるため、その電流の強さから、アルコールの有無や運転者の呼気中アルコール濃度を推定することができる。
【0018】
赤外線を用いたアルコール検知センサは、赤外線が、車室内の空気中のアルコールにより吸収されることによる特性を利用する。この原理のアルコール検知センサでは、アルコールにより吸収された赤外線を、光検出器で電気信号に変換し、電気信号をマイクロプロセッサーで解析することにより、アルコールの有無や運転者の呼気中アルコール濃度を推定することができる。
【0019】
なお、業務用車両におけるアルコール検知センサ12としては、運転者の呼気中や血液中のアルコール濃度を直接測定するものとしても良い。
【0020】
車速センサ14は、車両の車速を測定するもので、既存のセンサを用いることができる。
【0021】
温度センサ16は、車両の外気温を検出するためのもので、特許請求の範囲に記載の外気温検出手段として機能する。
【0022】
妨害制御装置18は、アルコール検知センサ12、車速センサ14及び温度センサ16からの情報に基づいて、加湿器20、ウィンドウ開閉アクチュエータ22、エアコンECUに指令信号を与えるためのもので、物理的にはECU(Electric Control Unit)等のマイクロコンピュータのハードウェアおよびソフトウェアを利用して構成されている。
【0023】
加湿器20は、車両の車室内の湿度を増加させるためのものである。
【0024】
ウィンドウ開閉アクチュエータ22は、車両の開閉式ウィンドウ類24を開閉するためのもので、特許請求の範囲に記載の車窓開閉手段として機能する。
【0025】
エアコンECU26は、車両のエアコン28を駆動させるためのもので、上述した妨害制御装置18と合わせて、特許請求の範囲に記載の車室内温度制御手段として機能する。
【0026】
次に、図2〜4を参照して、本実施形態の飲酒運転抑止システムの動作について説明する。本実施形態の飲酒防止システム10は、運転者がエンジンを始動した状態から動作を開始する。図2に示すように、まず、アルコール検知センサ12が運転者の飲酒状態の検知を行う(S10)。もし、アルコール検知センサ12が運転者の飲酒状態を検知した場合は、車速センサ14は車両の車速を検出する(S12)。車速センサ14が車速が0km/hより大きいことを検出し、車両が走行している場合は(S13)、温度センサ16は車両の外気温を取得する(S14)。
【0027】
図3に示すように、外気温が20℃(高温閾値)以上と高いときは(S20)、ウィンドウ開閉アクチュエータ22は開閉式ウィンドウ類24を全て閉め切る(S21)。なお、この閾値とする温度は適宜変更することができる。エアコンECU26は、車室内温度が外気温より高くなるようにエアコン28を暖房にし、最高温度かつ強風の設定で動作させる(S22)。また、加湿器20は最大加湿量となるように動作する(S23)。この間において、エアコンECU26は、エアコン28による湿気除去動作を行わないように動作させる(S24)。
【0028】
一方、外気温が20℃未満のときは、図4に示すように、外気温が15℃(低温閾値)以上と平均的であるときは(S30)、ウィンドウ開閉アクチュエータ22は、車両の左右いずれか一方の側の開閉式ウィンドウ類24を完全に開放させ(S31)、もう一方の側の開閉式ウィンドウ類24は中程度の開度で開放させる(S32)。エアコンECU26は、車室内温度が外気温より低くなるようにエアコン28を冷房にし、最低温度かつ強風の設定で動作させる(S33)。外気温が15℃未満と低いときは(S30)、ウィンドウ開閉アクチュエータ22は、開閉式ウィンドウ類24を全て開放させ(S34)、エアコンECU26は、車室内温度が外気温より低くなるようにエアコン28を冷房にし、最低温度かつ強風の設定で動作させる(S35)。
【0029】
本実施形態によれば、エアコンECU26は、アルコール検知センサ12により運転者の飲酒状態が検知されたときは、温度センサ16により検出された外気温が高いほど車室内の温度を高く制御し、温度センサ16により検出された外気温が低いほど車室内の温度を低く制御する。そのため、判断力、反射能力等が低下した飲酒者に対しても感覚的に不快感を与えることができ、車内環境の不快さに耐えかねた運転者に運転操作を続行する意欲を低下させ、自発的に車両を停止させて運転操作を止めることを期待できる。また、この構成によれば、車両の運動性能の変更、運転特性の変更及び視界不良を引き起こすものではないため、安全性も担保される。
【0030】
また、本実施形態によれば、外気温が20℃以上の高いときに、加湿器20は、温度センサ16が検出した車室内の湿度を増加させる。さらに、ウィンドウ開閉アクチュエータ22は開閉式ウィンドウ類24を全て閉め切り、エアコンECU26はエアコン28を最高温度及び強風の設定で動作させ、除湿動作も行わせないため、飲酒状態の運転者に蒸し暑さにより運転操作を続行する意欲を低下させ、運転操作を止めることを期待できる。
【0031】
また、本実施形態によれば、温度センサ16が検出した外気温が15℃未満の低いときは、ウィンドウ開閉アクチュエータ22は、車両の開閉式ウィンドウ類24を全て開放し、エアコンECU26はエアコン28を最低温度及び強風の設定で動作させるため、飲酒状態の運転者に寒さにより運転操作を続行する意欲を低下させ、運転操作を止めることを期待できる。
【0032】
加えて、本実施形態によれば、温度センサ16が検出した外気温が20℃未満15℃以上の中程度のときは、エアコンECU26はエアコン28を最低温度及び強風の設定で動作させるとともに、ウィンドウ開閉アクチュエータ22は、車両の左側及び右側それぞれに備えられた開閉式ウィンドウ類24の開く度合いが異なるように開閉式ウィンドウ類24を開くため、車室内の風の通り抜けを加速させて運転者の体感温度を冬場並みに寒くでき、飲酒状態の運転者に寒さにより運転操作を続行する意欲を低下させることを期待できる。
【0033】
さらに、本実施形態によれば、夏場であれば車室内をサウナの一種としても使用でき、発汗により飲酒状態の運転者の酒気を除去することを支援することができる。
【0034】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施形態に係る飲酒運転抑止システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係る飲酒運転抑止システムの動作を示すフロー図である。
【図3】実施形態に係る飲酒運転抑止システムの動作を示すフロー図である。
【図4】実施形態に係る飲酒運転抑止システムの動作を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0036】
10…飲酒運転抑止システム、12…アルコール検知センサ、14…車速センサ、16…温度センサ、18…妨害制御装置、20…加湿器、22…ウィンドウ開閉アクチュエータ、24…開閉式ウィンドウ、26…エアコンECU、28…エアコン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を運転する運転者の飲酒状態を検知する飲酒検知手段と、
前記車両の外気温を検出する外気温検出手段と、
前記車両の車室内の温度を制御する車室内温度制御手段と、
を備え、
前記車室内温度制御手段は、前記飲酒検知手段により運転者の飲酒状態が検知されたときは、前記外気温検出手段により検出された外気温が高いほど前記車室内の温度を高く制御し、前記外気温検出手段により検出された外気温が低いほど前記車室内の温度を低く制御する、飲酒運転抑止システム。
【請求項2】
前記車両の車窓の開閉を行う車窓開閉手段をさらに備え、前記車窓開閉手段は、前記外気温検出手段が検出した外気温が低温閾値未満のときは、前記車両の車窓を開く、請求項1に記載の飲酒運転抑止システム。
【請求項3】
前記車窓開閉手段は、前記車両の左側及び右側それぞれに備えられた車窓の開く度合いが異なるように前記車両の車窓を開く、請求項2に記載の飲酒運転抑止システム。
【請求項4】
前記車両の車室内の湿度を増加させる加湿器をさらに備え、前記加湿器は、前記外気温検出手段が検出した外気温が高温閾値以上のときに前記車室内の湿度を増加させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の飲酒運転抑止システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−184047(P2008−184047A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19649(P2007−19649)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】