説明

飲食品及び抗疲労剤

【課題】 精神的ストレスの緩和を行うことが容易な飲食品及び抗疲労剤を提供する。
【解決手段】 飲食品は焙煎されたコーヒー豆の抽出物を含有し、経口摂取により精神的ストレスを緩和させる作用を有し、精神的ストレスの緩和のために用いられるものである旨の表示が付されている。この飲食品は、経口摂取により体液中への精神的ストレスマーカーの分泌を抑制する作用をさらに有している。前記精神的ストレスマーカーはクロモグラニンAが好ましい。抗疲労剤剤は焙煎されたコーヒー豆の抽出物からなり、経口摂取により経口摂取により精神的ストレスを緩和させる作用を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内で精神的ストレスの緩和を行う飲食品及び抗疲労剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コーヒー飲料等の飲食品は肉体的ストレスに対する緩和作用を期待され、肉体的疲労の抑制や回復の促進を目的として広く摂取されている。コーヒー飲料等に含有されているカフェインは、骨格筋に対する作用を介して肉体的ストレスを緩和する作用を有している。また、特許文献1及び2並びに非特許文献1には、生体が受ける精神的ストレスを評価する方法として、唾液中のクロモグラニンAの分泌量を測定する方法が開示されている。さらに、非特許文献2には、精神的ストレスを緩和する方法としてマイナスイオンを摂取する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2002−228657号公報
【特許文献2】特許第3420027号公報
【非特許文献1】中根 英雄、新規精神的ストレス指標としての唾液中クロモグラニンA、豊田中央研究所R&Dレビュー、Vol.34, No.3, 17-22, 1999.9.
【非特許文献2】中根 英雄、マイナスイオンのストレス緩和効果(Stress-Reducing Effect of Negative Air Ions)、R&D Review of Toyota CRDL, Vol.38, No.2, 50-54.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、本研究者らによる鋭意研究の結果、焙煎されたコーヒー豆の抽出物に精神的ストレスに対する高い緩和作用があることを見出したことによりなされたものである。その目的とするところは、精神的ストレスの緩和を行うことが容易な飲食品及び抗疲労剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の飲食品は、焙煎されたコーヒー豆の抽出物を含有し、経口摂取により精神的ストレスを緩和させる作用を有することを要旨とする。
【0005】
請求項2に記載の発明の飲食品は、焙煎されたコーヒー豆の抽出物を含有し、経口摂取により体液中への精神的ストレスマーカーの分泌を抑制する作用を有することを要旨とする。
【0006】
請求項3に記載の発明の飲食品は、焙煎されたコーヒー豆の抽出物を含有し、経口摂取により精神的ストレスを緩和させる作用を有し、精神的ストレスの緩和のために用いられるものである旨の表示が付されていることを要旨とする。
【0007】
請求項4に記載の発明の飲食品は、焙煎されたコーヒー豆の抽出物を含有し、経口摂取により精神的ストレスを緩和させる作用を有し、車両の運転時の精神的ストレスの緩和のために用いられるものである旨の表示が付されていることを要旨とする。
【0008】
請求項5に記載の発明の飲食品は、請求項1、請求項3又は請求項4に記載の発明において、経口摂取により体液中への精神的ストレスマーカーの分泌を抑制する作用をさらに有することを要旨とする。
【0009】
請求項6に記載の発明の飲食品は、請求項2又は請求項5に記載の発明において、前記精神的ストレスマーカーがクロモグラニンAであることを要旨とする。
請求項7に記載の発明の抗疲労剤は、焙煎されたコーヒー豆の抽出物からなり、経口摂取により精神的ストレスを緩和させる作用を有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の飲食品及び抗疲労剤によれば、精神的ストレスの緩和が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
一実施形態の飲食品は焙煎されたコーヒー豆の抽出物を含有している。この飲食品は直接経口摂取される、又は他の飲食品の原料として該飲食品中に混合されて経口摂取される。この飲食品の形態としては、液状、粒状、粉状、固形状や半固形状が挙げられる。液状の飲食品の具体例としては、コーヒー飲料、ミルク入りコーヒー飲料等の飲料品、ディスペンサー用の濃縮エキス等が挙げられる。コーヒー飲料の好適な具体例としては株式会社ポッカコーポレーション製の商品名ポッカコーヒードライバーが挙げられる。粒状、粉状、固形状又は半固形状の飲食品の具体例としては、インスタントコーヒー、ケーキ、和菓子、スナック菓子等が挙げられる。
【0012】
前記抽出物は精神的ストレス(情動ストレス)に対する高い緩和作用を有している。精神的ストレスとは、車両の運転や各種試験等の精神的なものをストレス作因とした生体の防御反応のことをいう。精神的ストレスの具体例としては、車両の運転時に運転者が感じる緊張感等が挙げられる。精神的ストレスに対する緩和作用とは、前記防御反応に対する抑制作用のことをいう。
【0013】
飲食品は、抽出物が有する前記緩和作用により、経口摂取させた生体が受ける精神的ストレスを緩和する(軽減する)作用を有している。生体が精神的ストレスを受けるとは、生体に前記ストレス作因が加わり生体の防御反応が起きることをいう。生体は、精神的ストレスを受けると前記防御反応に起因して精神的疲労が蓄積される。加えて、飲食品は、抽出物が有する前記緩和作用により、経口摂取させた生体において唾液等の体液中への精神的ストレスマーカーの分泌を抑制する作用を有している。
【0014】
精神的ストレスマーカーは様々な内分泌器官内に存在している。精神的ストレスマーカーの分泌は生体が精神的ストレスを受けると増加し、精神的ストレスが緩和されると減少する。精神的ストレスマーカーは特に限定されないが、唾液中に分泌されるクロモグラニンAが好ましい。唾液中のクロモグラニンAの分泌量(濃度)は、生体が受ける精神的ストレスに敏感に応答して増加するが、生体が受ける肉体的ストレスに対してはほとんど応答しない。このため、クロモグラニンAは、精神的ストレスに対する敏感な、かつ選択的な精神的ストレスマーカーである。肉体的ストレスとは、精神的なもの以外(大気の温度変化や運動等)をストレス作因とした生体の防御反応のことをいう。さらに、クロモグラニンAは、唾液を検体として分泌量を容易かつ非侵襲的に測定することができるために、血液中や尿中にのみ分泌される精神的ストレスマーカーに比べて分泌量を容易に測定することができる。
【0015】
前記抽出物は焙煎されたコーヒー豆を原料とし、その原料から蒸気抽出や水抽出等の公知の方法に従って抽出されることにより得られる。例えば、水抽出により得られる抽出物(水抽出物)には、前記原料の香りのもととなる香気成分を含む揮発性成分の他に、カフェイン等の揮発しにくい成分、及び揮発しない成分が含有されている。カフェインは骨格筋に対する作用を介して肉体的ストレスを緩和する作用を備えていることが知られている。肉体的ストレスを緩和する作用とは、精神的なもの以外をストレス作因とした生体の防御反応に対する抑制作用のことをいう。
【0016】
一実施形態の香気成分及びカフェインは精神的ストレスに対する緩和作用を有しており、抽出物は主にこれら香気成分及びカフェインにより緩和作用を発揮する。香気成分は、カフェインに比べて精神的ストレスに対する緩和作用を速やかに(例えば経口摂取から5〜15分程度で)発揮する。これは、抽出物を経口摂取する場合、カフェインが小腸等の消化器官から生体内に吸収されるのに対して、香気成分が胃及び鼻の粘膜から生体内に吸収されるために、香気成分がカフェインに比べて速やかに生体内に吸収されるためと推察される。また、香気成分は、生体内に吸収されることにより精神的ストレスに対する緩和作用を発揮する他に、鼻の感覚神経を介した脳への刺激によっても精神的ストレスに対する緩和作用を発揮する。このため、抽出物を経口摂取した場合は、香気成分は体内に吸収されるとともに鼻の感覚神経を介して脳を刺激することができる。従って、香気成分の精神的ストレスに対する緩和作用は、抽出物を経口摂取した場合の方が抽出物の香りを嗅ぐ場合に比べて高い。
【0017】
コーヒー豆(コーヒー生豆)の種類は、香気成分の含有量が高いことから、アラビカ種、カネフォーラ種ロブスタ、コニュロン又はリベリカ種が好ましいが、特に限定されない。コーヒー生豆の焙煎条件は、焙煎度L*値が飲料品や食品に使用される範囲内であることが好ましいが、特に限定されない。焙煎方法については、遠赤外線焙煎、熱風焙煎、直火焙煎、炭焼焙煎の何れの方法でもよく、またこれら焙煎方法を組み合わせ、同時処理、併用処理を行ってもよい。原料は単独の種類のコーヒー豆から構成されてもよいし、複数種類のコーヒー豆のブレンドにより構成されてもよい。さらに、原料は、香気成分の損失を抑えるために、焙煎直後のコーヒー豆により構成されることが好ましい。原料の使用は焙煎後1ヶ月以内が好ましく、焙煎後10日以内がより好ましい。さらに、保存方法により品質劣化速度が異なるため、焙煎後直ぐに使用できない場合は不活性ガス雰囲気下や低温にて保存することが望ましい。原料の形態は前記水抽出等が可能な形態であれば特に限定されないが、抽出物の抽出効率が高いことから破砕物又は粉砕物であることが好ましい。前記破砕物又は粉砕物の粒度やホール形状等は特に限定されない。
【0018】
原料からの抽出は窒素ガスや希ガス等の不活性ガス雰囲気下、即ち、脱酸素雰囲気下で行われることが好ましく、この場合には酸化劣化に起因する抽出物中の香気成分の含有量の減少を抑制することができる。原料からの抽出を不活性ガス雰囲気下で行う場合には、抽出物の回収を始めとしてその他全ての製品製造工程、例えばコーヒー生豆の焙煎工程や飲食品の製造工程等においても同様に、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。抽出物は液状、又は粒状、粉状、固形状、半固形状等の諸形態で回収される。その抽出物は、密閉容器内で保存されるか、或いは飲食品中に添加して利用される。飲食品中に添加される抽出物の形態は、飲食品の形状に即して最も簡便かつ経済的なものが適宜選択されることが好ましい。
【0019】
飲食品は、公知の添加物を添加しながら製造されても構わないが、前記抽出物のみから製造されるか、又は、抽出物の精神的ストレスに対する緩和作用を抑制する添加剤が添加されずに製造されることが好ましい。抽出物の精神的ストレスに対する緩和作用を抑制する添加物が添加されていない飲食品の好適な具体例としては、株式会社ポッカコーポレーション製の商品名ポッカコーヒードライバーブラック、ポッカコーヒードライバーブレンドが挙げられる。添加物としては、牛乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、クリーム等の乳成分;果汁;シナモン等の香辛料;ハーブ;焙煎させたタンポポ、チコリ、大豆等の抽出物からなる疑似コーヒー液;砂糖、糖アルコール等の甘味料;重曹等のpH調整剤;ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤;香料;カラギーナン等の安定剤が挙げられる。これらの添加物は単独で使用してもよく、複数種類を組み合わせて使用してもよい。飲食品は、調合から充填及び容器内に至るまで全て不活性ガス雰囲気下で製造されることが好ましく、使用する原料水や添加物も脱酸素状態のものが使用されることが好ましい。
【0020】
飲食品は袋や缶等の容器に収容された状態で製品化されており、精神的ストレスの緩和のために用いられるものである旨の表示、又は車両の運転時の精神的ストレスの緩和のために用いられるものである旨の表示が付されている。ここで、飲食品に表示を付すとは、飲食品を飲食することによって車両の運転等により受ける精神的ストレスが緩和されること、又はこの効果を類推できるようなことを、前記容器の表面、パンフレットやインターネットのホームページ等の広告媒体、商品説明書、技術資料、又は取引書類に表示することをいう。表示する方法としては、文字による表示、音声による表示、又は映像による表示が挙げられる。これにより、飲食品が精神的ストレスの緩和効果を有していることが製品の購買者に示される。飲食品は、香気成分の損失を低減させるために、密閉状態の容器内に封入された状態で製品化されることが好ましい。前記密閉状態の容器としては袋、缶、瓶が挙げられ、容器の材質としてはポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂材料、アルミニウム等の金属材料、紙、その他の包装材料が挙げられる。
【0021】
一実施形態の抗疲労剤は前記抽出物からなり、その抗疲労剤は該抽出物に起因して経口摂取させた生体が受ける精神的ストレスを緩和する作用を有している。さらに、抗疲労剤は、前記抽出物に起因して経口摂取させた生体において、体液中の精神的ストレスマーカーの分泌を抑制する作用を有している。抗疲労剤は、飲食品中に添加して利用され得る。
【0022】
従って、一実施形態の飲食品は前記抽出物を含有していることから、精神的ストレスの緩和が容易である。また、一実施形態の抗疲労剤は、有効成分として前記抽出物を含有し、経口摂取により精神的ストレスを緩和させる作用を有していることから、精神的ストレスの緩和が容易である。このため、飲食品及び抗疲労剤は、車両の運転時に運転手が受ける精神的ストレスを緩和するために好適に使用される。さらに、飲食品及び抗疲労剤は、精神的ストレスの緩和により、生体に精神的疲労が蓄積されるのを抑制する、又は生体に蓄積された精神的疲労の回復を促進させることができる。
【実施例1】
【0023】
(試験例1)
焙煎されたコーヒー豆から脱酸素雰囲気下での水抽出(水の温度:90℃)によって抽出物を得ることにより、該抽出物を含有する缶入りコーヒー飲料(株式会社ポッカコーポレーション製の商品名ポッカコーヒードライバーブラック、コーヒー飲料中のカフェインの濃度:70mg/100ml)を製造した。
【0024】
<精神的ストレスの緩和に関する試験1>
唾液中のクロモグラニンAの分泌量は、生体が精神的ストレスを受けることにより増加し、その精神的ストレスが緩和されることにより減少する。このことを利用し、車両の運転時に運転手が受ける精神的ストレスの緩和に関する試験を行った。即ち、被験者に自動車専用道及び県道からなる約1時間の道程を運転させた。ここで、運転開始直前及び運転終了直後に被験者の唾液をそれぞれ採取した。運転終了後、被験者に試験例1のコーヒー飲料185gを経口摂取させた。コーヒー飲料の摂取に要する時間は5分以内とした。コーヒー飲料の摂取後、被験者を休息させ始めた。そして、休息開始15分後及び30分後に被験者の唾液をそれぞれ採取した。一方、比較例として、試験例1のコーヒー飲料を摂取させずに被験者を休息させ、それ以外は前記と同様にして被験者の唾液を採取した。
【0025】
採取した唾液について、YK070ヒト・クロモグラニンA EIAキット(矢内原研究所社製)を用いて精神的ストレスマーカーとしてのクロモグラニンAの分泌量を測定した。唾液の採取及びクロモグラニンAの分泌量の測定は1群5名として行い、これら分泌量の平均値を求めた。その結果を図1(a)に示す。図1(a)において、運転開始直前のクロモグラニンAの分泌量を精神的ストレス度1とする。さらに、運転終了直後、休息開始15分後及び30分後の精神的ストレス度は、それらの分泌量の運転開始直前の分泌量に対する相対値でそれぞれ示す。
【0026】
この結果、運転により高められた精神的ストレス度は試験例1のコーヒー飲料の摂取により速やかにかつ大きく低減されており、試験例1のコーヒー飲料は精神的ストレスに対する速効的な、かつ高い緩和作用を有していることが明らかとなった。コーヒー飲料は嗜好性が高い。このため、コーヒー飲料の経口摂取により精神的ストレスが緩和されたという、コーヒー飲料を愛用している人々の体験談が存在するが、この体験談は非科学的である。これに対して、コーヒー飲料が精神的ストレスに対する高い緩和作用を有していることは、本研究において初めて科学的に明らかとなった。
【0027】
<精神的ストレスの緩和に関する試験2>
被験者に対して精神的ストレスを与えるために、40分間のストループテスト及び30分間のクレペリンテストを連続して実施した。ここで、テスト開始30分前及びテスト開始60分後に被験者の唾液をそれぞれ採取した。テストを開始して70分経過した時点でテストを終了し、その直後に被験者に試験例1のコーヒー飲料185gを経口摂取させた。コーヒー飲料の摂取に要する時間は5分以内とした。コーヒー飲料の摂取後、被験者を休息させ始めた。そして、休息開始60分後に被験者の唾液を採取した。一方、比較例として、試験例1のコーヒー飲料を水に変更した以外は前記と同様にして唾液を採取した。
【0028】
採取した唾液について、前記<精神的ストレスの緩和に関する試験1>と同様にして精神的ストレス度を測定した。唾液の採取及びクロモグラニンAの分泌量の測定は1群6名として行い、これら分泌量の平均値を求めた。その結果を図1(b)に示す。図1(b)において、テスト開始30分前のクロモグラニンAの分泌量を精神的ストレス度1とする。さらに、テスト開始60分後及び休息開始60分後の精神的ストレス度は、それらの分泌量のテスト開始30分前の分泌量に対する相対値でそれぞれ示す。この結果、各テストにより高められた精神的ストレス度は試験例1のコーヒー飲料の摂取により大きく低減されており、試験例1のコーヒー飲料は精神的ストレスに対する高い緩和作用を有していることが明らかとなった。
【実施例2】
【0029】
(試験例2及び3)
試験例2では、焙煎されたコーヒー豆(浅煎り焙煎豆、焙煎度L*値27.5)から大気雰囲気下での水抽出(水の温度:90℃)によって抽出物を得ることにより、その抽出物を含有する缶入りコーヒー飲料を製造した。試験例3では、焙煎されたコーヒー豆(深煎り焙煎豆、焙煎度L*値19.5)から大気雰囲気下での水抽出(水の温度:90℃)によって抽出物を得ることにより、その抽出物を含有する缶入りコーヒー飲料を製造した。
【0030】
<香気成分の含有量の測定1>
試験例2及び3の缶入りコーヒー飲料について、下記GC/MS(ガスクロマトグラフィ/質量分析)条件による香気成分の含有量の測定を行った。その結果を図2(a)に示す。
【0031】
GC/MS条件
GC−MS:HEWLETT PACKARD社製Hewlett-Packard 6890 Mass Selective Detector
カラム:J&W Scientific社製DB-WAX(60m×0.25mm内径)
カラム温度:50−240℃
昇温:5℃/分
注入口温度:250℃
インターフェース温度:280℃
カラム中のインサート:SPELCO社製SPME Fiber Assembly 極細
測定方法:バイアルに10mLのサンプルと3gのNaClとを加えて溶解させた後45℃で5分間静置し、さらにSPME(Solid Phase Micro Extraction)をバイアルにさして45℃で15分間静置後に香気成分の含有量を測定した。
【0032】
この結果、コーヒー豆を浅煎り焙煎することにより、コーヒー飲料中の香気成分の含有量が有意に高くなることが明らかとなった。
<精神的ストレスの緩和に関する試験3>
試験例1の缶入りコーヒー飲料を試験例2又は3の缶入りコーヒー飲料に変更した以外は前記<精神的ストレスの緩和に関する試験1>と同様にして、運転終了直後、休息開始15分後及び30分後の精神的ストレス度を測定した。ここで、被験者の各コーヒー飲料の経口摂取は、被験者の目隠しによる二重盲検法を用いて行った。その結果を図2(b)に示す。図2(b)において、運転終了直後のクロモグラニンAの分泌量を精神的ストレス度1とする。さらに、休息開始15分後及び30分後の精神的ストレス度は、それらの分泌量の運転終了直後の分泌量に対する相対値でそれぞれ示す。この結果、コーヒー飲料中の香気成分の含有量が多いほど、精神的ストレス度の低下が長時間にわたって持続し、よって、香気成分は精神的ストレスに対する持続的な緩和作用を有していることが明らかとなった。
【実施例3】
【0033】
(試験例4及び5)
試験例4では前記試験例3と同様にして缶入りコーヒー飲料を製造し、試験例5では水抽出を脱酸素雰囲気下で行う以外は試験例3と同様にして缶入りコーヒー飲料を製造した。
【0034】
<香気成分の含有量の測定2>
試験例4及び5の缶入りコーヒー飲料について、前記<香気成分の含有量の測定1>と同様にして香気成分の含有量の測定を行った。その結果を図3に示す。この結果、抽出物の抽出を脱酸素雰囲気下で行うことにより、コーヒー飲料中の香気成分の含有量が有意に高くなることが明らかとなった。ここで、データは示さないが、試験例1の缶入りコーヒー飲料を試験例4又は5の缶入りコーヒー飲料に変更した以外は前記<精神的ストレスの緩和に関する試験1>と同様にして精神的ストレス度を測定したところ、試験例5のコーヒー飲料は試験例4のコーヒー飲料に比べて運転終了後の精神的ストレス度を有意に低減させた。
【0035】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 実施形態の飲食品が前記抗疲労剤を含有するものであってもよい。
・ 実施形態の飲食品に前記表示を付さなくてもよい。
【0036】
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
(1)経口摂取により体液中への精神的ストレスマーカーの分泌を抑制する作用をさらに有する請求項7に記載の抗疲労剤。
【0037】
(2)焙煎されたコーヒー豆の抽出物からなり、経口摂取により体液中への精神的ストレスマーカーの分泌を抑制する作用を有することを特徴とする抗疲労剤。
(3)前記精神的ストレスマーカーがクロモグラニンAである前記(1)又は(2)に記載の抗疲労剤。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】(a)及び(b)は試験例1の精神的ストレスの緩和に関する試験の結果を示すグラフ。
【図2】(a)は試験例2及び3の香気成分の含有量の測定結果を示すグラフ、(b)は試験例2及び3の精神的ストレスの緩和に関する試験の結果を示すグラフ。
【図3】試験例4及び5の香気成分の含有量の測定結果を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙煎されたコーヒー豆の抽出物を含有し、経口摂取により精神的ストレスを緩和させる作用を有することを特徴とする飲食品。
【請求項2】
焙煎されたコーヒー豆の抽出物を含有し、経口摂取により体液中への精神的ストレスマーカーの分泌を抑制する作用を有することを特徴とする飲食品。
【請求項3】
焙煎されたコーヒー豆の抽出物を含有し、経口摂取により精神的ストレスを緩和させる作用を有し、精神的ストレスの緩和のために用いられるものである旨の表示が付されていることを特徴とする飲食品。
【請求項4】
焙煎されたコーヒー豆の抽出物を含有し、経口摂取により精神的ストレスを緩和させる作用を有し、車両の運転時の精神的ストレスの緩和のために用いられるものである旨の表示が付されていることを特徴とする飲食品。
【請求項5】
経口摂取により体液中への精神的ストレスマーカーの分泌を抑制する作用をさらに有する請求項1、請求項3又は請求項4に記載の飲食品。
【請求項6】
前記精神的ストレスマーカーがクロモグラニンAである請求項2又は請求項5に記載の飲食品。
【請求項7】
焙煎されたコーヒー豆の抽出物からなり、経口摂取により精神的ストレスを緩和させる作用を有することを特徴とする抗疲労剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−81513(P2006−81513A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−272430(P2004−272430)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(591134199)株式会社ポッカコーポレーション (31)
【Fターム(参考)】