説明

飲食物において安定した負の酸化還元電位を生成するための組成物および方法

飲食物において安定した負の酸化還元電位を生成するための、還元剤と担体との組成物について開示および特許請求する。本発明の組成物は、例えば食品、飲料、化粧品などの各種飲食物の水分補給剤および抗酸化剤としての価値の向上において適用可能である。本発明の組成物は、水処理、農業、および、科学研究の各応用分野でも適用可能である。この組成物の使用および製造方法も、本発明の技術的範囲内である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願件に関する記述〕
本願は、米国特許仮出願第61/187,381(出願日2009年6月16日)に基づいて優先権を主張し、該特許仮出願の内容は全て参照によってここに引用されるものとする。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、小売業、農業、保健医療、化粧品・美容、水処理、および、科学研究の各応用分野で使用する物質において負の酸化還元電位を生成するための組成物に関する。
【0003】
〔背景技術〕
生体を負の酸化還元電位条件に曝すことには、健康に関する複数の利点がある。例えば、ヒトの消化管中の有益な嫌気性菌は、還元条件下ではより良好に成長する(Curr. Tr. Options in Gastr. 2007, 10: 312-321)。ある文献によれば、負の酸化還元電位(“NORP”または“負のORP”: negative oxidation reduction potential)には、大腸炎および炎症性腸疾患の治療における炎症反応の調節においても利点があることが示唆されている(Aliment Pharmacol Ther 2006, 24:701-714)。
【0004】
NORP条件には、ビタミンおよび酵素(例えばスーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、および、グルタチオンペルオキシダーゼ)と同様の抗酸化性を有するという利点があるとも考えられている。したがって、NORP物質はフリーラジカルを含めた活性酸素種の捕捉剤として機能すると考えられる(J. of App. Electrochem. 2001 31: 1307-1313)。負のORPを有する水に、糖尿病およびメタボリックシンドロームの治療において利点があることも報告されている(Cytotech. 2002, 40: 139-142; Nutr. Res. 2008; 28:137-143)。
【0005】
NORPを有する飲料水を生成するための市販の装置が開発されたことは驚くに値しない。水の電気分解装置(例えば米国特許第6,623,615号明細書に開示されている装置)は例えば電流を使用して、NORPを有するアルカリ性飲料水を家庭で生成する。これらの装置には2つの短所がある。まず、電気分解装置が生成するNORPは不安定であり、該装置で処理した水は時間が経つとNORPが減少する。したがって、NORPの利点を享受するためには、電解処理した飲料水は、処理後すぐに飲まなければならない。次に、電解装置はサイズが大きく、電源および水道水への接続を必要とするので、持ち運んで使用するには実用的ではない。
【0006】
還元飲料水を生成するための別の手段が、米国特許第7,189,330号明細書(Hayashi et al.)の主題である。この特許文献には、セラミック製筐体内にスティックの形態で納められた粒状のマグネシウムおよび銀元素を備えた装置について記載されている。実施に使用する際には、該スティックを飲料水中に入れて、「水素に富む」NORPを有する飲料水を生成する。
【0007】
本出願人は、上記Hayashi et al.の装置には複数の制約があることを見い出した。まず1つ目に、上記Hayashi et al.の装置で処理した飲料水は、約−50mV〜−100mVのNORPしか生成できなかった。2つ目に、本出願人ことを見い出した上記Hayashi et al.の装置は、このわずかに上昇したに過ぎないNORPを生成するのに数時間を要した。本出願人が見い出した3つ目の欠点は、上記Hayashi et al.の装置が生成したNORPは不安定であったことである。処理した水は、装置を取り外すと間もなく初期の酸化還元状態に戻ってしまったのである。4つ目に、本出願人は、装置が内蔵するマグネシウムおよび銀粒子が酸化するので、上記Hayashi et al.の装置は有効寿命が限られていることを見い出した。5つ目に、上記Hayashi et al.の装置は複数の用途に合わせて設計されており、複数の人の飲料水の処理に使用されることもあり得るので、微生物による相互汚染を引き起こす可能性がある。
【0008】
本出願人は、上記のような理由から、当該技術分野において必要とされているのは、微生物が混入する可能性がほぼ皆無である、飲料水およびその他の飲食物において強力で安定したNORPを素早くかつ効率よく生成するための持ち運び可能な手段であることを発見した。
【0009】
〔発明の概要〕
本出願人の発明は、小売業、農業、保健医療、化粧品・美容、下水処理、および、科学研究の各応用分野で使用するために、安全で安定化された添加物を提供することによって、有益なNORPを生成するための公知の方法および装置が有する欠点を解消する。
【0010】
1つの態様において、本発明は、飲食物においてNORPを生成するための添加物であって、少なくとも1つの還元剤と少なくとも1つの担体との混合物を含有し、上記担体が水溶性かつ無毒である添加物を提供する。
【0011】
別の態様において、本発明は、飲食物においてNORPを生成するための添加物であって、少なくとも1つの還元剤と少なくとも1つの担体との混合物を含有し、飲食物において約−200mV〜−800mVの負の酸化還元電位を生成する添加物を提供する。
【0012】
もう1つの態様において、本発明は、飲食物においてNORPを生成するための添加物であって、上記混合物が、(a)有機還元剤、無機還元剤、および、これらの組み合わせからなる群より選択される還元剤と、(b)塩基、糖類、アスコルビン酸類似体、EDTA類似体、および、これらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの担体とを含有する、添加物を提供する。
【0013】
もう1つの態様において、本発明は、飲食物においてNORPを生成するための添加物であって、上記混合物が、(a)マグネシウム、カルシウム、亜鉛、鉄、銅、コバルト、マンガン、および、これらの組み合わせからなる群より選択される金属元素の粒子を含有する還元剤を含有する、添加物を提供する。
【0014】
もう1つの態様において、本発明は、飲食物を準備し、少なくとも1つの還元剤と少なくとも1つの担体とを含有する添加物を準備し、該飲食物においてNORPを生成するために適した条件下で、飲食物を該添加物に接触させることを含み、上記飲食物は食品、飲料、補助食品、ダイエット食品および栄養補助食品、動物用飼料、園芸に使用する物質、または、科学研究のための物質である、飲食物においてNORPを生成する方法を備えている。
【0015】
もう1つの態様において、本発明は、少なくとも1つの還元剤と少なくとも1つの担体との混合物を含有する、廃水を処理するための組成物を提供する。
【0016】
もう1つの態様において、本発明は、(a)下水を準備し、(b)少なくとも1つの還元剤と少なくとも1つの担体とを含有する添加物に下水を接触させることによって下水においてNORPを生成し、こうすることによって下水中の混入物質を沈殿させ、(c)沈殿した混入物質を下水から除去することを含む、下水を処理する方法を提供する。
【0017】
〔定義〕
本明細書において、「添加物」または「還元性添加物」という用語は、少なくとも1つの還元剤と少なくとも1つの担体とを含有し、水性飲食物に接触させると飲食物において負の酸化還元電位を生成する混合物を指す。
【0018】
本明細書において、「飲食物」という用語は、生体の成長または代謝のための栄養を供給する任意の物質を指す。
【0019】
本明細書において、「水性飲食物」という用語は、還元剤に接触させると負の酸化還元電位の増加を達成するために十分な量の水を含有する飲食物を指す。「水性飲食物」という用語には他の物質を含有しない水を含めるが、この例に限定されるものではない。
【0020】
本明細書において、「生物価」という用語は、生体が飲食物を摂取することによって得る還元電位(還元能)、水和ポテンシャル、および/または、抗酸化ポテンシャルを指す。「生物価の増加」とは、ここに開示する添加物に飲食物を接触させた結果として発生する飲食物の生物価の測定可能な増加を指す。
【0021】
本明細書において、「処理」または「処理する」という用語は、ある物質(例えば飲食物)を添加物に接触させる(例えば添加物と組み合わせる)ことによって、該物質の負の酸化還元電位の測定可能な増加を発生させることを意味する。「処理」という用語には、ここに開示する添加物に接触させた結果として飲食物の生物価を増加させることを含めるが、この例に限定されるものではない。
【0022】
本明細書において、「無毒」という用語は、植物および動物を含めた生体(好ましくは哺乳類、より好ましくはヒト)が摂取しても安全な物質を意味している。
【0023】
本明細書において、「還元剤」および「還元体」という用語は、同時に別の物質を還元することによって自らは容易に酸化される物質を指す。還元剤には電子供与体、水素化物供与体、および、水素供与体を含める。
【0024】
「酸化剤」および「酸化体」という用語は、ここでは互換的に使用して、(a)酸素原子を容易に与える化学物質、または、(b)酸化還元化学反応において電子を得る物質のいずれかを指す。どちらの場合においても、プロセスにおいて、酸化剤は還元される。
【0025】
本明細書において、「酸化還元電位におけるシフト」、「ORPにおけるシフト」、「酸化還元電位のシフト」、および、「ORPのシフト」という用語は、物質の酸化還元電位の測定可能な変化を指すために使用する。例えば、物質における+200mVから−200mVへの変化は、酸化還元電位が400mVシフトしたことになる。
【0026】
本明細書において、「目標とするNORP」という用語は、選択物質(例えば飲食物)における所望の負の酸化還元電位または負の酸化還元電位の範囲を指す。
【0027】
本明細書において、「負の酸化還元電位を生成」または「NORPを生成」という用語は、物質をここに開示する添加物に接触させることによって、該物質(例えば飲食物)の負の酸化還元電位を増加または維持することを指す。負の酸化還元電位の増加とは、物質が還元剤(例えば添加物)に接触することが原因となって生じる、該還元剤に接触していない状態での物質の負の酸化還元電位に対して相対的な、物質の負の酸化還元電位の測定可能な純増加を指す。同様に、物質の負の酸化還元電位の維持とは、薬剤(例えば添加物または還元剤)の欠如が原因となって生じる物質(例えば飲食物)の酸化還元電位の減少に比べて相対的な、負の酸化還元電位の減少を防止または阻害する該薬剤の能力を指す。
【0028】
本明細書において、「水溶液」、「水性環境」、または、「水性物質」という用語は、物質を還元剤(例えば添加物)に接触させた際に、該物質が負の酸化還元電位を発生させることを可能にするために十分な量の水を含有する任意の物質(例えば水性飲食物)を指す。水性物質には液体(例えば粘稠性を有する液体)、ゲル、ゾル、および、ペーストを含めるが、これらの例に限定されるものではない。
【0029】
本明細書において、「塩基」という用語は、水に溶解させると、純水の水素イオン活性より低い水素イオン活性(つまり標準状態でpH値が7.0より高い)を有する溶液を生成する任意の化学物質または物質を指す。塩基にはアルカリおよび有機塩基(例えばアミノ基を含有する化合物)を含めるが、これらの例に限定されるものではない。
【0030】
本明細書において、「アルカリ性」または「塩基性」という用語は、純水の水素イオン活性より低い水素イオン活性(つまり標準状態でpH値が7.0より高い)を指す。
【0031】
本明細書において、「アルカリ」または「アルカリ性の薬剤」という用語は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩基、イオン性塩、酸化物、または、水酸化物を指す。
【0032】
本明細書において、「担体」という用語は、ここに開示するように、飲食物においてNORPを生成するために還元剤とともに調製され得る任意の物質を指す。このような担体には、例えば、形態が液体、粉末、ゲル、ゾル、または、ペーストであってもかまわない。本発明の担体には(i)塩基、(ii)バッファ、(iii)本発明の添加物の体積を増やすための不活性物質(例えば、賦形剤、膨張性薬剤、および、結合剤)、(iv)還元剤と組み合わせると、還元剤が環境条件によって(例えば空気中の湿気に曝されることによって)酸化されることを阻害または防止する化合物、(v)還元された飲食物の負の酸化還元電位の維持を補助する物質、および、(vi)これらの組み合わせを含めるが、これらの例に限定されるものではない。担体は水に可溶性であっても、不溶性であってもよい。
【0033】
本明細書において、「精製済み」または「純粋」という用語は、物質が少なくとも95%(乾燥重量比またはモル比による)は他の物質を含まないことを意味する。
【0034】
〔詳細な説明〕
本発明は、小売業、農業、保健医療、化粧品・美容、水処理、および、科学研究の各応用分野で使用するための、物質において安定したNORPを素早くかつ効率よく生成するための添加物に関する。本発明には、この添加物を用いて、飲食物の栄養価および健康に関する利点を増加させる方法を含める。本発明は、本発明の添加物を製造する方法にも関する。
【0035】
いくつかの態様において、本発明の添加物は、還元剤と担体との混合物を含有する。この混合物は、少なくとも1つの還元剤および少なくとも1つの担体を用いて調製されてもかまわない。本発明の添加物は、無機還元剤、有機還元剤、または、これらの組み合わせを用いて調製されてもかまわない。
【0036】
本発明は、ここに開示するように、水性物質に接触すると負のORPを生成することができる任意の無機還元剤を用いて実施されてもかまわない。適切な無機還元剤の一例としては金属元素があげられる。このような金属元素には、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、および、これらの組み合わせを含めるが、これらの例に限定されるものではない。いくつかの態様において、上記添加物は、動物またはヒトが飲食することを意図していない物質を還元するために調製される。例えば、添加物は、ここに記載するように、下水や園芸分野において使用するために調製されてもよい。このような添加物には、ヒドラジン(例えばヒドラジン塩)、水素化ホウ素[例えばLiBH、NaBH、NaBHCN、KBH]、亜硫酸塩剤、および、これらの組み合わせを含めた還元剤を含めるが、これらの例に限定されるものではない。これらの還元剤は単独で使用されても、上述の1つ以上の金属元素と組み合わせて使用されてもかまわない。
【0037】
本発明の添加物は有機還元剤を用いて調製されてもかまわない。このような還元剤には、ここに記載するように、水性物質(例えば飲食物)に接触するとNORPを生成する任意の有機還元剤を含める。本発明の添加物は、ヒドラジンおよび/またはジヒドロピリジンの有機誘導体を用いて調製されてもかまわない。本発明に使用するために適切な有機還元剤には、アミノグアニジン、ジヒドロピロール誘導体、ジヒドロフラン誘導体、ジヒドロピリジン誘導体、1,4−ジヒドロピリジン誘導体(ジヒドロ−トリゴネリン−DHT)、および、これらの組み合わせを含めるが、これらの例に限定されるものではない。
【0038】
上述のように、本発明の添加物は1つ以上の担体を用いて調製される。本発明に使用するための担体は、好ましくは、還元剤および担体を互いに組み合わせても還元剤の酸化を引き起こしたり、これに寄与したりしない。当業者であれば、担体の選択は添加物を適用する特定の応用事例に依存する(還元剤の選択も同様である)ことが理解できるであろう。例えば、可溶性の担体または非可溶性の担体が望ましいと考えられる。本発明に使用するための担体には、塩基、糖類、アスコルビン酸類似体、EDTA、EDTA類似体、および、これらの組み合わせを含めるが、これらの例に限定されるものではない。
【0039】
本発明に使用するための担体には、アルカリを含める。「アルカリ」または「アルカリ性担体」という用語は、本明細書において使用するように、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩基、イオン性塩、酸化物、または、水酸化物を指す。本発明の添加物を、アルカリ性担体を用いて調製することによって、NORPを同時に生成しながら、添加先の物質(例えば飲食物)のpH値を調節できるようになる。本発明に使用するためのアルカリには、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、および、これらの組み合わせを含めるが、これらの例に限定されるものではない。
【0040】
本発明には、有機塩基を含有する添加物も含める。本発明に使用するために適切な有機塩基には、アミン、脱プロトン化アミノ酸、および、これらの組み合わせを含めるが、これらの例に限定されるものではない。
【0041】
いくつかの態様において、本発明の添加物は、1つ以上の糖類(例えば炭水化物)である担体を用いて調製される。他の形態の担体と同様に、糖類担体は還元剤を酸化、または、物質(例えば飲食物)において負のORPを生成する還元剤の能力に悪影響を及ぼすべきではない。本発明に使用するための糖類には、単糖類、二糖類、オリゴ糖、多糖類、糖アルコール類、および、これらの組み合わせを含めるが、これらの例に限定されるものではない。本発明に使用するための一部の糖には、果糖、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、ショ糖、イヌリン、デキストラン、および、これらの組み合わせを含めるが、これらの例に限定されるものではない。適切な糖アルコール類の一部の非限定的な例としては、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、ズルシトール、キシリトール、アラビトール、および、これらの組み合わせなどがあげられる。本発明には、人工甘味料を含有する担体を用いた還元剤の調製も含める。適切な人工甘味料には、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、アセルファムK、および、これらの組み合わせを含めるが、これらの例に限定されるものではない。
【0042】
本発明の態様において、添加物は、還元剤を十分な量の担体と組み合わせて還元剤の還元電位を安定化することによって調製される。つまり、ここに開示するように、還元剤を十分な量の担体と組み合わせることによって、添加物が物質(例えば飲食物)の処理に使用できるようになる前に添加物が酸化することを防止または阻害してもかまわない。例えば、還元剤を十分な量の1つ以上の担体と組み合わせて、大気中の酸素に曝されることによって還元剤が酸化されることを防止してもよい。同様に、十分な量の担体と組み合わせることによって、強力な還元剤をNORPの生成において安全に使用できるようにしてもかまわない。例えば、微細に分割したマグネシウム(例えば−35メッシュ未満の粒子)が非制御下において燃焼するリスクを、該マグネシウムを十分な量の担体と組み合わせることによって解消してもよい。このような調製法の非限定的な一例としては、マグネシウム粒子(約37μm〜500μm)を炭酸水素カリウムと約1:4および1:50(マグネシウム:炭酸水素カリウム)の重量比で組み合わせることがあげられる。
【0043】
還元剤は、比例して増加する量の担体を用いて調製することによって安定化されてもかまわない。還元剤を安定化するいくつかの適切な比には、約1:4〜約1:50(還元剤:担体)の重量比またはモル比を含めるが、これらの例に限定されるものではない。当業者であれば、本発明の添加物が、例えば大気条件下で添加物の酸化を阻害または防止する、還元剤と担体との任意の比を用いて調製されてもかまわないことが理解できるであろう。
【0044】
還元剤と組み合わせるための担体は、物質(例えば飲食物)において負のORPを生成および/または維持するために、還元剤の能力を向上させる能力によって選択されていてもよい。このような担体をここでは「NORP向上担体」と称することもある。NORP向上担体は、ともに調製される還元剤が、飲食物において、このようなNORP向上担体の非存在下より大きなNORPを生成および/または維持することを可能にする。NORP向上担体は飲食物がNORPを維持する期間を長くしてもよい。例えば、マグネシウム錯化剤を使用して、飲食物において負のORPを生成および維持するマグネシウムの能力を増加させてもよい。このようなマグネシウム錯化剤には、アスコルビン酸塩、EDTA、EDTA状配位子(例えばEDTA類似体)、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、単糖類、オリゴ糖類(例えばマンニトールおよびイヌリン)、および、これらの組み合わせを含めるが、これらの例に限定されるものではない。
【0045】
本発明に使用するための担体には、さらに、クエン酸ナトリウム、第二リン酸カルシウム、賦形剤もしくは増量剤(例えば、澱粉、ラクトース、ショ糖、グルコース、マンニトール、および、ケイ酸)、結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、ショ糖、キサンタンガム、アロエゲル、および、アカシア)、崩壊剤(例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ、または、タピオカ澱粉、アルギン酸、ケイ酸、および、炭酸ナトリウム)、バッファ剤、および、これらの組み合わせも含めるが、これらの例に限定されるものではない。
【0046】
本発明の1つの態様は、本発明の添加物(つまり混合物)を調製するために使用される還元剤と担体との比に関する。本発明の添加物は、添加物が物質(例えば飲食物)において所望のNORPおよび/またはpH値を生成することを可能にするために、還元剤と担体との任意の比を用いて調製されてもかまわない。当業者であれば、使用する還元剤および担体の相対的な量が多数の変数に依存すること、また、このような変数には還元剤の強度、担体の化学的性質、所望のNORPレベル(つまり目標とするNORP)、添加物における還元剤の所望の濃度、還元したい飲食物におけるNORPの初期レベル、処理したい飲食物における所望のpH値、および/または、還元剤を安定化するために必要な担体の量を含めるが、これらの例に限定されるものではないことが理解できるであろう。
【0047】
本発明の添加物は、対象とする飲食物において所望のNORPレベル達成するために調製されてもかまわない。本明細書において、「対象とする飲食物」という用語は、本発明の添加物を用いて処理(つまり還元)しようとする飲食物を指す。同様に、対象とする飲食物は、本発明の添加物に対して特定の還元電位を規定するために使用される参照試料であってもかまわない。蒸留水および逆浸透(“RO”: reverse osmosis)水は、このような参照試料の例であるが、これらの例に特に限定されるものではない。飽くまでも非限定的な一例をあげると、添加物は、蒸留水1L当たり約0.2g〜0.5gの濃度で、目標とする約−200mV〜−800mVのNORPを生成するように調製されてもかまわない。当業者であれば、担体および還元剤の割合および量は、選択される特定の還元剤、および、所望のORPの負のシフトに応じて異なることが理解できるであろう。
【0048】
本発明のいくつかの態様では、添加物は、ヒトが飲食するための食品および飲料において目標とするNORPを達成するために調製される。本発明の添加物は、飲食物において約−200mV〜−800mV(または少なくとも−200mV)の目標とするNORPを生成するために調製されてもかまわないが、この例は本発明をNORPのいかなる特定の範囲または値に限定するものでもない。一部の実施形態では、本発明の添加物は、約−600mVの負のORPシフトを生成するように調製される。所望のNORPシフトレベルは、対象とする飲食物(例えば食品または飲料)の自然なNORP値、および、所望のNORPレベルに依存してもかまわない。例えば、対象とする飲食物は、+100mVの自然な(つまり初期または安定状態の)ORPを有してもよい。対象とする飲食物の目標とするNORPが約−600mVであるとすれば、添加物は約−700mVの負のNORPシフトを生成するように調製される。このような添加物の調製法は、処理したい対象とする飲食物の体積、および、飲食物と組み合わせられる添加物の量に依存してもかまわない。例えば、添加物は、選択される量の添加物を用いて、1Lの飲料当たり−700mVのシフトを生成するように調製されてもかまわない。当業者であれば、目標とするNORPが、対象とする飲食物の自然なORPの平均値を求めて、添加物中の還元剤の濃度を調節する、または、選択される体積の対象とする飲食物に接触する添加物の量を調節することによって達成されてもよいことが理解できるであろう。
【0049】
食品および飲料においてNORPを生成するための添加物が、還元剤と塩基を含有する担体とを用いて調製されてもかまわない。このような添加物が、約−200mV〜−800mV(または少なくとも−200mV)の目標とするNORP、および、約8〜10のpH値を達成するために調製(および使用)されてもかまわない。
【0050】
本発明のいくつかの態様では、添加物は少なくとも1つの金属元素および少なくとも1つの担体を用いて調製され、この担体は比例して増加する量(重量比またはモル比)で使用される。このような比の例としては、例えば、約1:4〜約1:50の金属元素と担体との比があげられる。当業者であれば、ここに開示するように、本発明は、本発明の添加物が飲食物を還元できる、還元剤と担体との任意の比を用いて実施されてもよいことが理解できるであろう。本発明の添加物調製法の非限定的な一例としては、マグネシウム粒子および少なくとも1つの担体(例えば糖類、塩基、EDTA、アスコルビン酸類似体、または、これらの組み合わせ)を約1:4〜1:50の比(モル比または重量比)で含有する混合物があげられる。
【0051】
一部の実施形態では、本発明の添加物は、粒子(例えば粉末)の形態の還元剤を用いて調製される。例えば、添加物には、有機還元剤、金属元素、および、これらの組み合わせを含めた粒子を含めるが、これらの例に限定されるものではない。使用する粒子のサイズは、還元剤の強度、および、物質(例えば飲食物)において目標とするNORPを達成するために必要な所望の時間の長さに依存してもよい。粒径が小さければ還元剤の表面積が増加し、したがって、目標とするNORPを達成するために必要な時間が短縮され、また、物質の最終的なNORP値が増加する。ただし、これは一般論であって、どの特定の理論に限定されるものでもない。本発明を実施するために適切な粒径の例としては、約−400メッシュ〜−35メッシュ(つまり約37μ〜500μm)の範囲の粒子があげられるが、この例に限定されるものではない。本発明の一態様では、添加物が約45μmのマグネシウム粒子を用いて調製される。この粒子には、一様なサイズの粒子を含めても、異なるサイズの粒子の混合物を含めてもかまわない。ここでは特定の範囲の粒径について記載するが、本発明には、ここに開示するように、飲食物において本発明の添加物がNORPを生成することができる任意の粒径(またはサイズ)の使用を含める。
【0052】
本発明の添加物は、粉末、液体、ゲル、ゾル、および、スラリーを含めた複数の互いに異なる形態を取ってもよいが、これらの例に限定されるものではない。本発明のいくつかの態様では、添加物は乾燥調製物(つまり乾燥添加物)である。このような乾季形態には、物質(例えば飲食物)と組み合わせるために調製されてもよいカプセル、錠剤、発泡性錠剤を含めるが、これらの例に限定されるものではない。また、乾燥添加物が、偏平な粉末状ビーズまたは粉末状エアロゾルとして調製されてもかまわない。乾燥添加物は、さらに、炭酸水素ナトリウム、クエン酸などを含めた公知の調製物を用いて発泡性組成物として調製されてもかまわない。本発明の添加物は、環境による酸化に対抗できるように包装されてもよい。これは、例えば、箔製袋(例えば棒状包装材(stick−pack))またはプラスチック製容器などの気密パッケージを用いて達成すればよい。
【0053】
本発明の添加物は、添加物の使用を介して素早くかつ効率的な様式で、物質に対して還元特性を提供することが望ましい任意の分野において適用可能である。このような応用分野には小売業、農業、保健医療、化粧品・美容、水処理、および、科学研究の各応用分野を含めるが、これらの例に限定されるものではない。
【0054】
本発明のいくつかの態様では、添加物が飲食物において負のORPを生成するために使用される。このような飲食物には、食品、飲料、菓子、デザート、補助食品、ならびに、ダイエット食品および栄養補助食品を含めるが、これらの例に限定されるものではない。上述のように、大きな負のORP(例えば約−200mV〜−800mVのORP)を有する食品および飲料の摂取には、健康に関する複数の利点がある。本発明の添加物を使用して、例えば、水(例えば泉から採取した水、井戸から採取した水、氷河の水、蒸留水、逆浸透水、および、濾過水)、ジュース、コーヒー飲料、茶飲料、味付け飲料(例えば麦芽飲料、人工的に風味を付けたおよび自然な風味の果実飲料、味付け水など)、栄養(例えばミネラル)補給水、エネルギー補給飲料、水分補給用イオンスポーツ飲料、乳、および、これらの組み合わせなどの、ヒトが飲食するための飲料のNORPを生成しても(例えば増加させても)かまわない。飲料においてNORPを生成するための適切な形態には、発泡性粉末および発泡性錠剤を含めた、水溶性錠剤および水溶性粉末を含めるが、これらの例に限定されるものではない。このような発泡性粉末と非発泡性粉末とを小袋に入れて包装してもよい。
【0055】
さらに、本発明の添加物を使用して、任意の摂取可能食品の健康に関する利点増加させてもかまわない。例えば、本発明の添加物を使用して、乳製品、果実、穀粒を基にした食品、香辛料、甘味料(例えば砂糖や砂糖の代用品)、香辛料、ソース、および、これらの組み合わせのNORPを増加させてもよい。さらに、本発明の添加物を使用して、補助食品、ダイエット食品および栄養補助食品、ならびに、飲料用ミックス(drink mix)においてNORPを生成してもよい。例えば、本発明の添加物を、粉末タンパク質、ビタミンおよびミネラル補助食品(丸剤、カプセル、抽出物、および、飲料用ミックスの形態のもの)、食品およびスナックバー、ハーブ系サプリメント、清浄剤(cleanse)および食事代替シェーク(meal replacement shake)と組み合わせてもかまわない。この態様において使用する添加物は、調理済み食品(例えばインスタント食品)として供給されてもよく、飲食直前に食品に添加されてもよい。
【0056】
本発明の態様において、添加物は、飲食物において添加物がNORPを生成できるだけの十分な水を含有しない物質(例えば飲食物)と組み合わせられる。これは任意の乾燥飲食物にも当てはまり、このような乾燥飲食物の例としては、乾燥食品、凍結乾燥食品、飲料用ミックス、乾燥型化粧品(例えば粉末、スティック、脱臭剤)、小麦粉、トウモロコシ澱粉、ベーキング食品(例えばパンケーキミックス、パン用ミックス、ケーキミックス)を作るための調整済みミックス、および、栄養補助食品(例えば粉末タンパク質、飲料用ミックス)などがあげられる。このような乾燥飲食物を添加物に接触させても、水がないのでNORPを生成することはないが、このような処理済み食品は、一旦水に接触させるとNORPを生成する潜在的能力を有して提供される。したがって、「NORPを生成する」という表現には、水に接触させるとNORPを達成する潜在的能力を有する乾燥物質を提供することを含める。
【0057】
本発明の添加物は、化粧品・美容用品におけるNORPの生成においても適用可能である。本明細書において、「化粧品・美容用品」および「化粧品」という用語は、皮膚または毛髪の外見を美化、保存、復元、向上、清浄、または改善することを目的として、皮膚または毛髪に適用される任意の製品を指す。このような化粧品には、メーク用品、石鹸、シャンプー、コンディショナー、ヘアートニック、洗浄剤、化粧水、ローション、日焼け止め、クリーム、ミルク、オイル、エッセンス、芳香剤、抽出物、口腔洗浄薬、脱臭剤、制汗剤、シェービングクリーム、シェービングローション、シェービングジェル、および、アフターシェーブ剤を含めるが、これらの例に限定されるものではない。この態様において使用する添加物は、調製済み化粧品・美容用品(例えばそのままで使用できる化粧品・美容用品)として事前調製されてもよく、使用直前に化粧品・美容に添加されてもよい。例えば、添加物の持つ有益な還元電位が使用直前まで保存できるように、添加物を、皮膚を洗浄および/または化粧を落とす直前に洗浄剤または石鹸に添加してもよい。本発明の添加物は、婦人用衛生用品におけるNORPの増加においても適用可能である。
【0058】
本発明の一態様では、添加物を使用して化粧品においてNORPを生成し、強力な抗酸化性を有する化粧品を提供する。抗酸化性NORP化粧品には、例えば、酸化ストレスの中性化、抗老化作用、水分補給改善などを含めた複数の利点がある。したがって、皮膚の健康および外見を向上させるために、NORP化粧品を使用してもかまわない。本明細書において、「NORP化粧品」という用語は、還元された化粧品、または、本発明の添加物に接触(つまり混合)することによって水性環境を還元する潜在的能力を獲得した乾燥型化粧品を指す。皮膚に適用された乾燥型NORP化粧品は、皮膚が蒸散または拡散によって水を放出し水性環境を提供するにつれて、有益なNORPを生成すると考えられる。NORP化粧品は、抗老化作用、皮膚の湿気および膨圧の改善、線や皺の減少、黒点の減少、日焼けおよび皮膚アレルギーの処理、薬品による怪我および熱傷の処理、ならびに、虫刺されおよび有毒植物との接触によって生じる外傷の処理のために使用されてもかまわない。
【0059】
本発明の添加物は、還元剤を、塩基を含有する担体と組み合わせて用いて調製されてもかまわない。このような添加物は、約−200mV〜−800mV(または少なくとも−200mV)の目標とするNORP、および、約8〜10のpH値が達成できるように調製されてもかまわない。
【0060】
本発明の添加物は、医薬品および保健医療分野においても適用可能である。例えば、本発明の添加物を使用して、例えば、点眼薬、点鼻薬、点耳薬、舌下薬(sublingual drops)、吸入薬、静注液、および、経口投与薬(例えば咳シロップ)などの医薬品グレードの水溶液においてNORPを増加させてもかまわない。本発明の添加物は、さらに、局所的薬物の調製において使用されてもかまわない。このような局所的薬物には、抗生物質、抗炎症性薬物、および、抗真菌薬を含めるが、これらの例に限定されるものではない。このような局所的調製物は、例えば、単独で適用されても、含浸済み包帯または経皮性パッチの形態で適用されてもかまわない。食品、飲料、および、化粧品の場合と同様に、局所的調製物が本発明の添加物とともに事前調製されても、使用直前に添加物が局所的薬物に適用されてもかまわない。
【0061】
本発明の添加物は農業分野において適用可能である。例えば、添加物は、家畜用飲料水を処理するために大量に生成されてもよい。本発明の添加物は、さらに、動物用の飲料水においてNORP(および/または目標とするpH値)を生成するために使用されてもかまわない。このような動物には、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、および、鳥類(例えばニワトリ、アヒル、および、ガチョウ)を含めるが、これらの例に限定されるものではない。本発明の添加物は、同様に、家畜用飼料においてNORPを生成するために使用されてもかまわない。つまり、少なくとも1つの還元剤と少なくとも1つの担体との混合物を動物用飼料に添加して、飼料の生物価を向上させてもかまわない。添加物が乾燥(つまり非水性の)飲食物に適用される他の分野と同様に、添加物は、水性環境に導入されると、乾燥飲食物の潜在的能力を増加させてNORPを生成するという点において、該添加物はこのような物質においてNORPを生成すると言ってもよい。
【0062】
本発明の添加物を使用して目標とするNORP(および/またはpH値)を生成し、園芸で使用してもよい。例えば、添加物を使用して、食品生成植物および装飾性植物の健康を増進させてもかまわない。本発明の添加物を使用して、例えば(植物に水をやるための)水、肥料、および、葉に噴霧するスプレーなどの水溶液においてNORPを生成してもかまわない。これはどの特定の実施形態に限定されるものでもない。本発明の添加物は、さらに、土壌の栄養値(つまり生物価)を増加させるための手段として土壌に添加されてもかまわない。
【0063】
本発明の添加物は、濾過後の飲食物においてNORPを生成する(および/またはpH値を増加させる)ことが望ましい濾過(例えば水フィルタ)においても適用可能である。この適用例は、少なくとも1つの還元剤と少なくとも1つの担体とを含有する添加物を含浸するフィルタ部材、該添加物でコーティングしたフィルタ部材、または、該添加物から製造したフィルタ部材を用いて実施されてもよい。本明細書において、「フィルタ部材」という用語は、流体が濾過装置を通過する際に流体に接触する任意のフィルタ部を指す。フィルタ部材には、流体を通す多孔体(例えばスクリーンや線維性のパッキング材)を含めるが、これらの例に限定されるものではない。フィルタ部材には、濾過装置内に収納することもできる固体成分(例えば、ロッド、ディスク、または、ビーズ)を含めると考えてもよい。フィルタ部材が、濾過する流体に接触する濾過装置の壁を備えていてもかまわない。フィルタ部材を添加物に含浸させたり、添加物でコーティングしたり、および/または添加物から製造したりしてもよい。例えば、フィルタ部材は、乾燥添加物を圧縮してフィルタ部材の形状および形態にすることによって、添加物から製造されてかまわない。
【0064】
本発明の特定の非限定的な方法では、飲料水は、本発明の添加物を備えたフィルタ部材を備えた濾過装置を用いて濾過される。このような方法は、一般に、(1)添加物から製造したフィルタリング部材、添加物を含浸するフィルタリング部材、または、添加物でコーティングしたフィルタリング部材を準備し、(2)飲料水が目標とするNORPおよび/または所望のpH値を達成するために適した条件下で、該フィルタリング部材を飲料水に接触させ、(3)濾過後の飲料水を収集することを含む。
【0065】
フィルタ部材をコーティング、含浸、または、製造するための添加物は、飲食物が添加物を通って流れると、または、添加物の上を流れると、飲食物において目標とするNORPおよび/または所望のpH値を生成するために十分な溶解性(つまり水溶性)を有する。フィルタ部材をコーティング、含浸、または、製造するための添加物は、さらに、該添加物を徐々に放出する高分子マトリクスで被包されてもよく、こうすることによって、次の適用時に目標とするNORPおよび/または高いアルカリ度を生成する能力を維持しながら、フィルタリング部材を複数回使用できるようになる。本発明の添加物を被包するための物質には、その場で架橋結合を構築可能な任意の高分子材を含める。適切な被包材には、アルギン酸、キサンタンガム、ポリ乳酸などを含めるが、これらの例に限定されるものではない。被包を達成するために適した化合物には、米国特許第3,375,933号明細書、6,444,316号明細書、6,527,051号明細書、および、7,309,429号明細書の開示が教唆する化合物を含めるが、これらの例に限定されるものではない。なお、これらの特許文献の開示内容は全て参照によって引用されるものとする。
【0066】
本発明の態様において、添加物は、例えばカップ、ビン、グラス、ボール、プレート、ポット、鍋、ピッチャーなどの飲料容器および食品容器の内面をコーティングするために使用されてもよい。このような容器は、水性飲食物が容器に接触する(つまり、容器内に入れられる)と水性飲食物においてNORPを生成する。このような添加物を用いたコーティングに適した調製物については上述した。このようなコーティングは、一回きりの使用に用いて素早く溶解するコーティングであっても、時間とともに放出する性質を有して容器が複数回の使用にわたってNORPを生成することができるコーティングであってもよい。
【0067】
本発明の添加物は下水処理において使用されてもよい。つまり、本発明の添加物は混入物質を下水から除去するために調製および使用されてもかまわない。一般に、このような適用例は、ある体積の下水を準備し、下水中の酸化混入物質を還元して沈殿させるために適したNORPレベルを生成するために十分な量の添加物に、この下水を接触させ、さらに、下水から沈殿した粒子を除去することによって実施される。沈殿粒子は、粒子を下水から分離するために適した任意の方法(例えば、沈降、濾過、遠心分離など)で除去されればよい。添加物を下水処理に用いることによって、自治体の下水処理および農業下水処理を含めた適用分野において、任意の形態の酸化混入物質を下水から除去してもかまわない。なお、該適用分野は、これらの具体例に限定されるものではない。ここに開示するように、下水処理は、下水中の酸化混入物質を還元し、粒子を収集および除去できる様式で沈殿させる任意の添加物を用いて実施されてもかまわない。本発明の添加物を用いて下水を処理するために適したNORP値には、約−50mV〜−750mVの範囲のNORPを含めるが、これらの例に限定されるものではない。
【0068】
安定化されたNORPを生成するためのいくつかの非限定的な例としての添加物を、以下の実施例において示す。また、これらの例としての調製物のpH値およびNORP活性についても開示する。これらの実施例(および、その相対的な還元電位およびpH値)は例示として提供されているに過ぎないのであって、本発明の添加物をいかなる特定の調製物または活性に何ら限定するものではない。当業者であれば、これらの調製物が修正されても、本発明の精神から逸脱するものではないことが理解できるであろう。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
【表3】

【0072】
【表4】

【0073】
【表5】

【0074】
【表6】

【0075】
実施例7:マグネシウム系NORP調製物
600gのNORP生成混合物を以下のように調製した:
KHCO:275g(45.83%)
Mg粉末(350メッシュ):25g(4.16%)
アスコルビン酸(AA):100g(16.66%)
(調製物の活性ORP部)
マンニトール:175g(29.16%)
イヌリン:25g(4.16%)。
【0076】
1gの上記混合物を1Lの蒸留水に溶解させた。溶解して15分後に、混合物は約−300mVのNORPを生成した。さらに1時間〜2時間放置すると、混合物は−450mV〜−550mVのNORPを生成した。
【0077】
実施例8:ジヒドロ−トリゴネリンの調製
第1のステップでは、標準的なメチル化剤(例えばジメチル硫酸)を当該技術分野において周知の手順で使用することによって、β−ニコチン酸アミド(ナイアシン、ビタミンB−3)またはβ−ニコチン酸をN−メチル化して、高収率のN−メチル誘導体(トリゴネリン−T−誘導体および/または対応するT−誘導体)を調整する。
【0078】
第2のステップでは、このN−メチル誘導体を当該技術分野において公知の方法によって、好ましくはジヒドロ亜硫酸ナトリウムを用いて部分的に還元し、1,4−ジヒドロピリジン誘導体(ジヒドロ−トリゴネリン−DHT)を調整する。この還元形態(DHT)は、水溶液(例えば水)に溶解すると負のORPを生成し、さらに、濃度に応じて約−50mV〜−300mVのNORP値を生成する。
【0079】
実施例9:シリカ−水素化ホウ素の調製およびその使用
メタケイ酸ナトリウムの五水和物(sodium metha−silicate penta−hydrate)(分子量212;50g)を、500mlの蒸留水に溶解させる。約9〜10のpH値を得るために十分な量のクエン酸(または酒石酸またはリンゴ酸)を添加する。このような酸性化を行うと、不溶シリカは見えない(シリカはコロイド性水溶液のままであると考えられる)。この溶液に、5gの水素化ホウ素ナトリウムを添加する。そして、マンニトール(20g)を添加し、得られた溶液を凍結および凍結乾燥する。この結果得られる物質は「シリカ−水素化ホウ素」の白色の固体残留物であって(収量は約80g)、これは水(50mg/L)に溶解すると約−600mVの負のORPを生成することができる。
【0080】
実施例10:NORPシロップ
約50%の液糖を、ショ糖、グルコース、果糖、キシリトール、エリスリトール、または、他のさまざまな食用の糖、および、GRASが承認した糖を用いて水中で調整する。この溶液に、まず多糖(例えば、リンゴペクチン、キサンタンガムなど)を添加して液糖の濃度を上げ、次に1L当たり十分な量(通常約0.5g〜1g)のKHCO−Mg(12:1)を添加する。このシロップは、特に冷蔵庫で+4℃で保存すれば、最大で3ヶ月安定である。このシロップのORPは通常約−500mVである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲食物において負の酸化還元電位を生成するための添加物であって、
a.少なくとも1つの還元剤と、
b.少なくとも1つの担体との混合物を含有し、
c.飲食物において約−200mV〜−800mVの負の酸化還元電位を生成する、添加物。
【請求項2】
上記少なくとも1つの還元剤が無機還元剤、有機還元剤、および、これらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
上記少なくとも1つの担体が塩基、糖類、アスコルビン酸類似体、EDTA類似体、および、これらの組み合わせから選択される、請求項2に記載の混合物。
【請求項4】
上記無機還元剤が、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、鉄、銅、マンガン、コバルト、および、これらの組み合わせから選択された金属元素の粒子を含有する、請求項3に記載の混合物。
【請求項5】
上記有機還元剤がアミノグアニジン、ジヒドロピロール誘導体、ジヒドロフラン誘導体、ジヒドロピリジン誘導体、および、これらの組み合わせから選択される、請求項3に記載の混合物。
【請求項6】
上記塩基が炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、および、これらの組み合わせからなる群より選択される、請求項4に記載の混合物。
【請求項7】
上記塩基が炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、および、これらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5に記載の混合物。
【請求項8】
上記無機還元剤がマグネシウムの粒子を含有する、請求項6に記載の混合物。
【請求項9】
上記少なくとも1つの担体が炭酸水素カリウムを含有する、請求項8に記載の混合物。
【請求項10】
上記マグネシウムの粒子および炭酸水素カリウムが、約−200mV〜−800mVのNORPを生成することができる比および約8〜10のpH値で、上記飲食物内に存在する、請求項9に記載の混合物。
【請求項11】
飲食物において負の酸化還元電位を生成する方法であって、
a.飲食物を準備し、
b.該飲食物を、少なくとも1つの還元剤と少なくとも1つの担体との混合物を含有する添加物に接触させることを含み、
c.該飲食物を該添加物に接触させることによって、飲食物において約−200mV〜−800mVの負の酸化還元電位を生成する、方法。
【請求項12】
上記飲食物が食品、飲料、菓子、香辛料、甘味料、調味料、および、これらの組み合わせから選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上記飲料が水、ジュース、コーヒー飲料、茶飲料、味付け飲料、栄養補給水、エネルギー補給飲料、水分補給用イオンスポーツ飲料、乳、および、これらの組み合わせから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
上記少なくとも1つの還元剤が無機還元剤、有機還元剤、および、これらの組み合わせから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
上記少なくとも1つの担体が塩基、糖類、アスコルビン酸類似体、EDTA類似体、および、これらの組み合わせから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
上記無機還元剤が、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、鉄、銅、マンガン、コバルト、および、これらの組み合わせから選択された金属元素の粒子を含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上記有機還元剤がアミノグアニジン、ジヒドロピロール誘導体、ジヒドロフラン誘導体、ジヒドロピリジン誘導体、および、これらの組み合わせから選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
上記塩基が炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、および、これらの組み合わせからなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
上記塩基が炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、および、これらの組み合わせからなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
上記無機還元剤がマグネシウムの粒子を含有する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
上記少なくとも1つの担体が炭酸水素カリウムを含有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
上記マグネシウムの粒子および炭酸水素カリウムが、約−200mV〜−800mVのNORPを生成することができる比および約8〜10のpH値で、上記飲食物内に存在する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
飲食物において負の酸化還元電位を生成するための添加物であって、
a.マグネシウム元素の粒子と、
b.塩基との混合物を含有し、
c.該マグネシウム元素の粒子のサイズが約500μm未満であり、
d.該マグネシウム元素の粒子および塩基が、約−200mV〜−800mVの負のORPを生成することができる比および約8〜10のpH値で、上記飲食物内に存在する、添加物。
【請求項24】
上記塩基が炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、および、これらの組み合わせからなる群より選択される、請求項23に記載の混合物。
【請求項25】
Mg元素の粒子の炭酸ナトリウムに対する比が約1:5〜1:50である、請求項29に記載の混合物。
【請求項26】
下水から混入物質を除去する方法であって、
a.酸化型混入物質を含有する下水を準備し、
b.該下水を、少なくとも1つの還元剤と少なくとも1つの担体との混合物を含有する添加物に接触させることを含み、
c.該下水を該添加物に接触させることによって、酸化混入物質を還元して沈殿させ、
d.該下水からこの沈殿物を除去する、方法。

【公表番号】特表2012−529909(P2012−529909A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516102(P2012−516102)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/036748
【国際公開番号】WO2010/147751
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(511307421)
【氏名又は名称原語表記】MILJKOVIC,Dusan
【住所又は居所原語表記】4655 Ramsay Ave.,San Diego,CA 92122,United states of America
【Fターム(参考)】